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JP6451275B2 - ハニカム構造体 - Google Patents

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Description

本発明は、内燃機関から排出される排ガスを浄化するための触媒装置に用いられるハニカム構造体に関する。
自動車等の内燃機関の排ガスを浄化するための触媒装置としては、排ガスを流通する排気管の内側に、格子状に設けられたセル壁とそのセル壁に囲まれて形成された複数のセル孔とを有するハニカム構造体を配置したものが知られている。触媒装置は、高温の排ガスをハニカム構造体のセル孔に流通させることにより、ハニカム構造体に担持された触媒を活性化温度以上に加熱して排ガスの浄化を行う。
このようなハニカム構造体としては、例えば、特許文献1に示されたものがある。特許文献1のハニカム構造体は、セラミックス材料からなるセル壁と、セル壁に囲まれたセル孔とを有している。セル壁には、セル孔間を連通する細孔が形成されており、セル孔の内周面には、セル孔の内側に突出した突起部が形成されている。
特開平2009−154148号公報
しかしながら、特許文献1のハニカム構造体には、以下の課題がある。
特許文献1のハニカム構造体においては、セル壁と突起部とがいずれも同一の材料によって形成されている。そのため、突起部を形成することにより、ハニカム構造体における熱容量が増大し、ハニカム構造体を活性化温度まで昇温するのに時間がかかる。これにより、ハニカム構造体の昇温に遅れが生じる。
本発明は、かかる背景に鑑みてなされたものであり、触媒の早期活性化が可能でかつ、浄化性能を向上することができるハニカム構造体を提供しようとするものである。
本発明の一態様は、複数のセル壁と、該複数のセル壁に囲まれた複数のセル孔とを有し、内燃機関から排出された排ガスを上記複数のセル孔に流通させて浄化するハニカム構造体であって、
当該ハニカム構造体は、上記内燃機関から排出された上記排ガスを浄化するために必要な機械的強度を有しており、
上記複数のセル孔の少なくとも一部には、上記ハニカム構造体の軸方向から見たとき、上記セル壁から上記セル孔の中心側に向かって突出した突起部が形成されており、
上記突起部は、上記排ガスに含まれる炭化水素を吸着するゼオライトである炭化水素吸着材料によって形成されており、
上記突起部の単位体積あたりの熱容量が、上記セル壁の単位体積あたりの熱容量以下となるように形成されており、
上記ハニカム構造体の上記軸方向における全長の中央部と、排ガスが流入する側の端部である上流側端部との間に上記突起部が少なくとも一つ形成されていることを特徴とするハニカム構造体にある。
上記ハニカム構造体は、上記セル孔の内部に上記突起部を備えている。そのため、上記ハニカム構造体における触媒の早期活性化が可能でかつ、浄化性能を向上することができる。
すなわち、突起部を有しないハニカム構造体においては、セル孔の内部を排ガスが流通する際に、排ガスにおける粘性の影響により、セル孔を形成するセル壁の表面に排ガスの流速が低下する境界層が形成される。この境界層においては、熱伝達率や物質伝達率が低下するため、排ガスと上記ハニカム構造体との接触効率が低下する。そのため、上記ハニカム構造体における、排ガスからの受熱量が低下し、触媒の活性化の遅れと浄化性能の低下が生じる。
上記ハニカム構造体においては、上記セル孔の内側に上記突起部を形成することによって、上記セル孔を流通する排ガスの流通方向を変化させ、上記突起部の周囲に乱流を形成することができる。この乱流が、境界層を破壊することで上記セル孔内における排ガスの物質伝達率を回復し、排ガスと上記ハニカム構造体との接触効率を向上することができる。これにより、触媒の早期活性を可能にすると共に、触媒によって排ガスを効率よく浄化し、上記ハニカム構造体における浄化性能を向上させることができる。
また、上記突起部の周囲においては、乱流によって排ガスと上記ハニカム構造体との接触効率を特に大きく向上させることができる。そのため、上記突起部の周囲に配設された触媒を早期に昇温して活性化させると共に、活性化によって生じる反応熱を利用して、上記ハニカム構造体の全体を速やかに活性化させることができる。
また、上記突起部における単位体積あたりの熱容量が、上記セル壁における単位体積あたりの熱容量よりも小さい。そのため、上記突起部における受熱量を低減し、上記触媒層及び上記セル壁を効率よく昇温させることができる。これにより、上記触媒層を早期に活性化することができる。
また、上記ハニカム構造体においては、上記突起部を設けることにより、上記ハニカム構造体を特別な形状、例えば、部分的にセル壁をなくして流通抵抗を低減する構造等を用いることなく、触媒の早期活性化と、浄化性能の向上が可能となる。したがって、上記ハニカム構造体における表面積の減少を抑制し、浄化に有効な触媒量を確保することができる。それゆえ、上記ハニカム構造体における最大浄化性能を向上することができる。
以上のごとく、上記ハニカム構造体によれば、触媒の早期活性化が可能でかつ、浄化性能を向上することができる。
実施例1における、触媒装置を示す説明図。 実施例1における、ハニカム構造体を示す説明図。 図1における、III−III矢視断面図。 図1における、IV−IV矢視断面図。 ハニカム構造体における、物質伝達率の変化を示すグラフ。 実施例2における、突起部の第1の形状例を示す拡大断面図。 実施例2における、突起部の第2の形状例を示す拡大断面図。 実施例2における、突起部の第3の形状例を示す拡大断面図。 実施例2における、突起部の第4の形状例を示す拡大断面図。 実施例2における、突起部の第5の形状例を示す拡大断面図。 図10における、突起部の説明図。 実施例2における、突起部の第6の形状例を示す拡大断面図。 実施例2における、突起部の第7の形状例を示す拡大断面図。 実施例2における、突起部の第8の形状例を示す拡大断面図。 実施例3における、(a)突起部の第1の形状例を示す断面図、(b)突起部の第2の形状例を示す断面図、(c)突起部の第3の形状例を示す断面図。 実施例3における、(a)突起部の第4の形状例を示す断面図、(b)突起部の第5の形状例を示す断面図、(c)突起部の第6の形状例を示す断面図。 実施例4における、ハニカム構造体の第1の形状例を示す断面図。 実施例4における、ハニカム構造体の第2の形状例を示す断面図。 実施例4における、ハニカム構造体の第3の形状例を示す断面図。 実施例4における、突起部の形状例を示す説明図。
上記ハニカム構造体において、上記突起部は、上記排ガスに含まれる炭化水素を吸着するゼオライトである炭化水素吸着材料によって形成されている。この構成によれば、上記突起部において、上記排ガスに含まれる炭化水素を吸着し、暖気時におけるエミッションをより低減することができる。
また、上記突起部の表面には、触媒層が形成されていることが好ましい。この場合には、上記ハニカム構造体における、上記触媒層の形成範囲を拡大し、触媒の担持量を増大させたり、触媒の担持量を維持したまま触媒の厚さを低減することができる。これにより、上記ハニカム構造体における、浄化性能を向上することができる。
また、上記突起部と、上記上流側端部との距離が2mm〜30mmであることが好ましい。この場合には、上記セル孔内において、境界層が発達しきる前に、上記突起部によって乱流を形成し、境界層を破壊することができる。これにより、排ガスにおける物質伝達率の低下を効果的に抑制し、排ガスと上記ハニカム構造体との接触効率をより向上することができる。
また、上記各セル孔において、該セル孔を囲む複数の上記セル壁のうち、半分以上の上記セル壁から上記突起部が突出していることが好ましい。この場合には、上記突起部が形成された上記セル孔を囲む上記各セル壁の表面に形成された境界層を効率良く破壊することができる。これにより、排ガスにおける物質伝達率の低下を効果的に抑制し、排ガスとハニカム構造体との接触効率をより向上することができる。
また、上記各セル孔において、該セル孔を囲む複数の上記セル壁の交点に形成される頂点のうち、半分以上の頂点から上記突起部が突出していることが好ましい。この場合には、上記突起部が形成された上記セル孔を囲む上記各セル壁の表面に形成された境界層を効率良く破壊することができる。これにより、排ガスにおける物質伝達率の低下を効果的に抑制し、排ガスとハニカム構造体との接触効率をより向上することができる。
また、複数の上記突起部が上記軸方向においてずれた位置に形成された上記セル孔を有することが好ましい。この場合には、上記ハニカム構造体の上流側に形成された上記突起部において境界層を破壊した後、該突起部の下流側で再度境界層が形成されることを抑制できる。これによって、より広範囲において、排ガスと上記ハニカム構造体との接触効率を向上することができる。
また、上記ハニカム構造体の中心軸側である径方向内側の位置に設けられた上記セル孔内に形成された上記突起部に対して、上記セル孔よりも径方向外側の位置に設けられた上記セル孔内に形成された上記突起部が、上記軸方向において上流側に形成されていることが好ましい。上記ハニカム構造体においては、径方向外側の位置に設けられた上記セル孔における排ガスの流速が、径方向内側の位置に設けられた上記セル孔における排ガスの流速に比べて低速になりやすい。そのため、径方向外側の位置に設けられた上記セル孔においては、上流側の位置で境界層が形成されやすく、上流側の位置に突起部を形成することが境界層の形成を抑制するのに効果的である。したがって、上述のごとく、上記ハニカム構造体の径方向位置を考慮し、上記突起部の位置を調整することで、上記各セル孔における境界層の形成を抑制することができる。これにより、上記ハニカム構造体における早期活性化と浄化性能をさらに向上させることできる。
また、上記軸方向から見たとき、上記突起部の角部、及び上記突起部と上記セル壁との間に形成された角部の少なくとも一方が曲面によって形成されていることが好ましい。この場合には、上記突起部を形成することによる流通抵抗を低減することができる。これにより、上記ハニカム構造体における早期活性化と浄化性能を向上させることできる。
また、上記突起部には、該突起部の上流側の端部から下流側に向かうにつれて徐々に突出量が増大するように形成された上流側傾斜面、又は上記突起部の下流側の端部から上流側に向かうにつれて徐々に突出量が増大するように形成された下流側傾斜面の少なくとも一方が形成されていることが好ましい。この場合には、上記突起部を形成することによる流通抵抗の増大を抑制し、圧損を低減することができる。また、上記突起部の周囲における排ガスの滞留を抑制し、突起部周辺の触媒を有効活用できる。
また、上記ハニカム構造体は、上記ハニカム構造体の中心軸側である径方向内側の位置に設けられた上記セル孔における流通抵抗よりも、該セル孔よりも径方向外側の位置に設けられた上記セル孔における流通抵抗が小さいことが好ましい。この場合には、上記ハニカム構造体の径方向外側の上記セル孔と、径方向内側の上記セル孔との間における、排ガスの流速のバラつきを低減し、均一化することができる。これにより、上記ハニカム構造体のさらなる早期活性化と浄化性能の向上が可能となる。
(実施例1)
上記ハニカム構造体にかかる実施例について、図1〜図4を参照して説明する。
図1及び図2に示すごとく、ハニカム構造体1は、複数のセル壁2と、複数のセル壁2に囲まれた複数のセル孔3とを有し、複数のセル孔3に内燃機関から排出された排ガスを流通させるよう構成されている。
図3及び図4に示すごとく、複数のセル孔3には、ハニカム構造体1の軸方向Xから見たとき、セル壁2からセル孔3の中心側に向かって突出した突起部4が形成されている。突起部4の単位体積あたりの熱容量が、セル壁2の単位体積あたりの熱容量以下となるように形成されており、軸方向Xにおける全長の中央部11と、排ガスが流入する側の端部である上流側端部12との間に少なくとも一つ形成されている。
以下、さらに詳細に説明する。
図1に示すごとく、本例のハニカム構造体1は、自動車のエンジンにおいて発生した排気ガスを浄化するためのものである。ハニカム構造体1は、排気ガスを流通する排気管6の内側に配置されており、ハニカム構造体1と排気管6とによって触媒装置7を形成している。
排気管6は、ハニカム構造体1を内包する配置管61と、配置管61の上流側に設けられた上流側配管62と、下流側に設けられた下流側配管63とを有している。
図2〜図4に示すごとく、ハニカム構造体1は、格子状に配設されたセル壁2によって形成された円柱形状のセラミック担体と、セラミック担体の表面に担持され排気ガスの浄化を行う触媒層5とからなる。セル壁2は、セラミック材料からなり、本例においては、気孔率が30%〜40%のコージェライトを用いている。ハニカム構造体1には、セル壁2によって区画された複数のセル孔3が形成されており、各セル孔3の断面形状は六角形をなしている。また、ハニカム構造体1の軸方向Xから見たとき、単位面積あたりのセル孔3の形成個数を示す形成密度が一様である。尚、セル孔3の断面形状は、六角形以外にも、種々の多角形や円形とすることができるが、四角形又は六角形とした場合、浄化性能及び生産性に優れたハニカム構造体を容易に得ることができる。
本例のハニカム構造体1を構成するすべてのセル孔3には、突起部4を設けてある。
突起部4は、炭化水素吸着材料であるゼオライトからなり、その気孔率は、45%〜65%とした。したがって、突起部4は、セル壁2を形成するコージェライトにおける気孔率よりも、大きな気孔率によって形成されている。これにより、材料の持つ比熱の差を考慮しても突起部4における単位体積あたりの熱容量が、セル壁2よりも小さくなる。本例においては、ハニカム構造体1のすべてのセル孔3に突起部4を設けたが、一部のセル孔3のみに突起部4を設けてもよい。また、突起部4は、多孔質材料以外にも、中空となるように形成されていてもよい。
図3に示すごとく、突起部4は、1つのセル孔3に、一対ずつ形成されている。軸方向Xから見たとき、各突起部4は、セル孔3を形成する6つのセル壁2のうち、互いに対向する一対のセル壁2と、一対のセル壁2の各両隣に配設されたセル壁2とに沿って形成されている。一対の突起部4は、いずれも同形状をなしており、セル孔3の中心点Pを通り、対向する一対のセル壁2と平行な仮想線Lに対して、線対称となるように配置されている。また、突起部4の外形における角部41は、滑らかな曲面によって形成されている。尚、図3においては、セル壁2と突起部4とによって形成された角部44は曲面となっていないが、曲面によって形成してもよい。
図4に示すごとく、突起部4は、半楕円形の断面形状をなしている。したがって、突起部4は、その上流側端部12から下流側に向かうにつれて突出量が増大するように形成された曲面状の上流側傾斜面42と、上流側傾斜面42と滑らかにつながり、下流側端部から上流側に向かうにつれて突出量が増大するように形成された曲面状の下流側傾斜面43とを備えている。尚、突起部4の突出方向Zとは、突起部4が形成されたセル壁2の法線方向であり、突起部4が複数のセル壁2にわたって形成されている場合には、各セル壁2における法線方向となる。
突起部4は、ハニカム構造体1における軸方向Xにおいて、中央部11よりも上流側の位置で、かつ上流側端部12と突起部4との距離Sが20mmとなる位置に形成されている。本例においては、軸方向Xにおける突起部4の配設位置は、全てのセル孔3において同一とした。
また、突起部4の表面は、触媒層5によって、全面が被覆されている。
次に、本例の作用効果について説明する。
ハニカム構造体1においては、セル孔3を流通する排ガスの流通方向を変化させ、突起部4の周囲に乱流が形成することができる。この乱流が、境界層を破壊することでセル孔3内における排ガスの物質伝達率を回復し、排ガスとハニカム構造体1との接触効率を向上することができる。これにより、触媒層5の早期活性を可能にすると共に、触媒層5によって排ガスを効率良く浄化し、ハニカム構造体1における浄化性能を向上させることができる。
特に、突起部4の周囲においては、乱流が形成されることでハニカム構造体1と排ガスとの接触効率が大きく向上させることができる。そのため、突起部4の周囲において、ハニカム構造体1とセル壁2との間における熱交換が特に効率良く行われ、突起部4の周囲の触媒層5を早期に活性化させることができる。そして、活性化した触媒層5の反応熱を利用して、ハニカム構造体1の全体を速やかに活性化させることができる。
また、突起部4における単位体積あたりの熱容量が、セル壁2における単位体積あたりの熱容量よりも小さい。そのため、突起部4における受熱量を低減し、触媒層5を効率よく活性化させることができる。
また、ハニカム構造体1においては、突起部4を設けることにより、ハニカム構造体1を特別な形状、例えば、部分的にセル壁をなくして流通抵抗を低減する構造等を用いることなく、触媒層5の早期活性化及び浄化性能の向上が可能となる。したがって、ハニカム構造体1における表面積の減少を抑制し、ハニカム構造体1における触媒層3の担持量を確保することができる。それゆえ、ハニカム構造体1における最大浄化性能を向上することができる。
また、突起部4は、排ガスに含まれる炭化水素を吸着するゼオライトである炭化水素吸着材料によって形成されている。そのため、突起部4において、排ガスに含まれる炭化水素を吸着し、暖気時におけるエミッションをより低減することができる。
また、突起部4の表面には、触媒層5が形成されている。そのため、ハニカム構造体1における、触媒層5の形成範囲を拡大し、触媒層5の厚さ低減をすることができる。さらに、突起部4内部の空間における速度低下につながり、ゼオライトからなる突起部4に吸着した炭化水素の脱離速度を低下することができる。したがって、触媒が活性に達した後に脱離する炭化水素の量を増やすことができ、浄化性能向上が期待できる。これにより、ハニカム構造体1における、浄化性能を向上することができる。
また、突起部4と、上流側端部12との距離が20mmである。図5は、セル孔3を形成するセル壁2の表面近傍における物質移動率の変化を示すグラフであり、縦軸を物質移動率とし、横軸をハニカム構造体1における上流側端部12からの距離Sとした。また、実線G1〜G5においては、ハニカム構造体1におけるセル孔3の形成密度を変化させている。尚、形成密度は、実線G1が、1.86個/mm2、実線G2が、1.16個/mm2、実線G3が、0.93個/mm2、実線G4が、0.62個/mm2、実線G5が、0.31個/mm2である。図5に示すごとく、実線G1〜実線G5のいずれにおいても、突起部4と上流側端部12との距離Sが2mm〜30mmの範囲内において、物質移動率が大幅に低下している。つまり、この範囲内において、境界層が発達している。したがって、突起部4と上流側端部12との距離Sが2mm〜30mmの範囲内に突起部4を形成することにより、セル孔3内において、境界層が発達しきる前に、突起部4によって乱流を形成し、境界層を破壊することができる。排ガスにおける物質伝達率の低下を効果的に抑制し、排ガスとハニカム構造体1との接触効率をより向上することができる。
また、各セル孔3において、セル孔3を囲む複数のセル壁2のうち、半分以上のセル壁2から突起部4が突出している。そのため、突起部4が形成されたセル孔3を囲む各セル壁2の表面に形成された境界層を効率良く破壊することができる。これにより、排ガスにおける熱伝達率及び物質伝達率の低下を効果的に抑制し、排ガスとハニカム構造体1との接触効率をより向上することができる。
また、各セル孔3において、セル孔3を囲む複数のセル壁2の交点に形成される頂点21のうち、半分以上の頂点から突起部4が突出している。そのため、突起部4が形成されたセル孔3を囲む各セル壁2の表面に形成された境界層を効率良く破壊することができる。これにより、排ガスにおける物質伝達率の低下を効果的に抑制し、排ガスとハニカム構造体1との接触効率をより向上することができる。
また、軸方向Xから見たとき、突起部4の角部41が曲面によって形成されている。そのため、突起部4を形成することによる流通抵抗を低減することができる。これにより、ハニカム構造体1における圧損上昇を抑制して早期活性化と浄化性能を向上させることできる。
また、突起部4には、突起部4の上流側の端部から下流側に向かうにつれて徐々に突出量が増大するように形成された上流側傾斜面42と、突起部4の下流側の端部から上流側に向かうにつれて徐々に突出量が増大するように形成された下流側傾斜面43とが形成されている。そのため、突起部4を形成することによる流通抵抗の増大を抑制し、圧損を低減することができる。また、突起部4の周囲における排ガスの滞留を抑制し、排ガスの物質移動率を向上することができる。
以上のごとく、本例のハニカム構造体1によれば、圧損上昇を抑制しつつ触媒の早期活性化が可能でかつ、浄化性能を向上することができる。
(実施例2)
本例は、軸方向Xから見たハニカム構造体における突起部の形状例を示すものである。
図6に示したハニカム構造体1の突起部4は、セル孔3を形成する6つのセル壁2のうち3つのセル壁2に沿うように略長方形状に形成されている。突起部4は、6つのセル壁2に一つ飛ばしで、互いに隣り合うことなく配置されている。つまり、3つの突起部4は、セル孔の中心点Pに対して、120°の点対称となるように配置されている。
図7に示したハニカム構造体1の突起部4は、略扇型をなしており、6つのセル壁2によって形成された6つの頂点21の全てに、それぞれ形成されている。
図8に示したハニカム構造体1の突起部4は、セル壁2よって形成された6つの頂点21のうち、一つ飛ばしで配置された3つの頂点21に形成されている。つまり、3つの突起部4は、セル孔3の中心点Pに対して、120°の点対称となるように配置されている。
図9に示したハニカム構造体1の突起部4は、セル壁2によって形成された6つの頂点21のうちの4つに形成されている。突起部4は互いに対向する3対の頂点21のうちの2対に形成されており、突起部4が形成されていない頂点21同士をつなぐ仮想線Lに対して線対称の形状となる。尚、突起部4は、中心点Pに対して180°の点対称となるように配設した場合も同様の形状が得られる。
図10及び図11に示したハニカム構造体1の突起部4は、セル孔3を形成する6つのセル壁2のうち3つのセル壁2に形成されている。突起部4は軸方向Xから見たとき略L字型をなしている。突起部4は、上流側端部12から下流側に向かって徐々に突出量が増大しつつ、セル孔3の中心点Pに向かうよう形成された曲面を有している。セル孔3には、突起部4が形成された3つの角部41と、突起部4が形成されていない3つの角部41とが交互に配置されている。つまり、3つの突起部4は、セル孔3の中心点Pに対して120°の点対称となるように配置されている。
図12に示したハニカム構造体1の突起部4は、セル孔3を形成する6つのセル壁2の全てに形成されている。突起部4は、隣り合う2つのセル壁2にまたがって1つ形成されており、突起部4は、上流側から下流側に向かって徐々に突出量が増大しつつ、セル孔3の中心点Pに向かうよう形成された曲面を有している。3つの突起部4は、セル孔3の中心点Pに対して、互いに120°の点対称となるように配置されている。
ここで、図10〜図12に示したハニカム構造体1における突起部4の形成方法について説明する。
突起部4の形成には、材料スラリーを吐出するための吐出ノズルを備えた突起部形成装置を用いる。吐出ノズルには、外周側面に突起部4の形状と対応した形状をなす成形溝と、成形溝内に開口した吐出口とが形成されている。
まず、吐出ノズルを、突起部4を形成するセル孔3の内側に挿入する。このとき、軸方向Xから見て、セル孔3の中心軸と吐出ノズルの中心軸とを一致させる。また、軸方向Xにおいて、突起部4の形成位置に成形溝を対向させる。
そして、吐出口から成形溝内に材料スラリーを吐出し、成形溝内に材料スラリーを充填する。成形溝内において、材料スラリーが固化した後、吐出ノズルをセル孔3から後退させる。尚、吐出ノズルを後退させる際に、吐出ノズル先端側において突起部4を形成する成形溝の内周面が、突起部4と干渉する場合には、この部位を収納可能な構成とすることで、吐出ノズルを容易に後退させることができる。
図13に示したハニカム構造造体1の突起部4は、セル孔3の内周面における全周から突出して環状に形成されている。したがって、突起部4の外周形状は、セル孔3の外周形状と同一形状の六角形をなしている。また、突起部4の内周形状は、セル孔3の内周形状と相似形状の六角形をなしている。
図14に示したハニカム構造体1の突起部4は、図13に示したハニカム構造体1の変形例である。図14のハニカム構造体1の突起部4における外周形状は、図13に示したハニカム構造体1と同様の六角形であり、内周形状は、円形をなしている。
上述の各突起部4が形成されたハニカム構造体1において、上述以外の構成は実施例1と同様である。尚、本例又は本例に関する図面において用いた符号のうち、実施例1において用いた符号と同一のものは、特に示さない限り、実施例1と同様の構成要素等を表す。
ハニカム構造体1において、突起部4は、セル孔3の中心点Pに対して点対称とするか、又は中心点Pを通る仮想線Lに対して線対称となるように形成してある。この場合には、突起部4によって、セル孔3の内側に乱流を効率良く発生させることができる。
また、図10〜図12に示した突起部4においては、セル孔3の内部を撹拌するように乱流が形成することができる。
また、本例においても、実施例1と同様の作用効果を得ることができる。
(実施例3)
本例は、軸方向X及び突出方向の双方と直交する方向から見たときのハニカム構造体における突起部の形状例を示すものである。
図15(a)に示すハニカム構造体1の突起部4は、セル壁2に沿うように形成された長方形状をなしている。
図15(b)に示すハニカム構造体1の突起部4は、図15(a)の突起部4における先端側の角部41を円弧状に形成してなる。突起部4における上流側の角部は、上流側端部12から下流側に向かうにつれて突出量が増大するように形成された曲面状の上流側傾斜面42である。また、突起部4における下流側の角部は、下流側端部から上流側に向かうにつれて突出量が増大するように形成された曲面状の下流側傾斜面43である。
図15(c)に示すハニカム構造体1の突起部4は、突起部4における上流側の端部から下流側に向かうにつれて突出量が増大するように傾斜した上流側傾斜面42を備えている。上流側傾斜面42の下流側の端部よりも下流側は、セル壁2に沿うように形成されている。
図16(a)に示すハニカム構造体1の突起部4は、突起部4における上流側の端部から下流側の端部まで全長に、上流側から下流側に向かうにつれて突出量が増大するように傾斜した上流側傾斜面42を備えている。
図16(b)に示すハニカム構造体1の突起部4は、突起部4の上流側端部12から軸方向Xにおける中央位置に向かうにつれて突出量が増大するように傾斜した上流側傾斜面42を備えている。また、突起部4は、突起部4の下流側端部から軸方向Xにおける中央位置に向かうにつれて突出量が増大するように傾斜した下流側傾斜面43を備えている。
図16(c)に示すハニカム構造体1の突起部4は、突起部4における上流側端部12から下流側に向かうにつれて突出量が増大するように形成された曲面状の上流側傾斜面42である。尚、曲面は、突起部4の内側に向かって凹状に形成されている。
上述の各突起部4が形成されたハニカム構造体1において、上述以外の構成は実施例1と同様である。尚、本例又は本例に関する図面において用いた符号のうち、実施例1において用いた符号と同一のものは、特に示さない限り、実施例1と同様の構成要素等を表す。
また、本例に示した突起部4の形状は、一例を示すものであり、これらの形状以外であってもよい。
また、本例においても、実施例1と同様の作用効果を得ることができる。
(実施例4)
本例は、ハニカム構造体における突起部の位置を、軸方向Xにおいて変化させた例を示すものである。
図17に示すハニカム構造体1は、各セル孔3において互いに対向するように配設された一対の突起部4を備えている。また、ハニカム構造体1の中心軸O側である径方向内側の位置に設けられたセル孔3内に形成された突起部4に対して、これよりも径方向外側の位置に設けられたセル孔3内に形成された突起部4は、軸方向Xにおいて上流側に形成されている。ハニカム構造体1において、径方向外側の位置に設けられたセル孔3においては、径方向内側のセル孔3と比べて上流側の位置で境界層が形成されやすく、上流側の位置に突起部4を形成することが境界層の形成を抑制するのに効果的である。したがって、上述のごとく、ハニカム構造体1の径方向位置を考慮し、突起部4の位置を調整することで、各セル孔3における境界層の形成を効果的に抑制することができる。これにより、ハニカム構造体1における早期活性化と浄化性能をさらに向上させることできる。
図18に示すハニカム構造体1は、各セル孔3において互いに対向するように配設された一対の突起部4を複数備えている。ハニカム構造体1の中心に形成された中心セル孔30には、一対の突起部4がn個、軸方向Xに並んで配設されている。そして、ハニカム構造体1の中心セル孔30から外側に向かうにつれて、下流側に配設された一対の突起部4の個数を減少させている。本例においては、中心セル孔30の周囲を囲むセル孔3には、n−1個の一対の突起部4が形成されており、このセル孔3の径方向外側の位置に設けられたセル孔3には、n−2個の一対の突起部4が形成されている。つまり、径方向外側に向かうにつれて、セル孔3における一対の突起部4の個数が、内側に設けられたセル孔3における一対の突起部4の個数よりも1つずつ減少している。また、ハニカム構造体1の最外周に形成されたセル孔3には、突起部4が形成されていない。
この場合には、ハニカム構造体1のセル孔3における流通抵抗を、ハニカム構造体1の中心軸O側から径方向外側に向かうにつれて低下させることができる。これにより、排ガスの流速が低下しやすい径方向外側のセル孔3における排ガスの流速を増大させ、ハニカム構造体1の径方向外側のセル孔3と、径方向内側のセル孔3との間における、排ガスの流速のバラつきを低減し、流速を均一化することができる。それゆえ、ハニカム構造体1のさらなる早期活性化と浄化性能の向上が可能となる。
また、各セル孔3において最も上流側に配設された突起部4の軸方向Xにおける配設位置は、いずれも同一の位置に形成されている。また、最も上流側に配設された突起部4よりも下流側に配設された突起部4は、径方向外側に向かうにつれて、上流側の位置となるように配設されている。
図19に示すハニカム構造体1は、図18に示したハニカム構造体1の変形例である。
ハニカム構造体1は、軸方向Xにおいて、各セル孔3における最も上流側に配設された突起部4においても、径方向外側に向かうにつれて上流側となるように配設されている。
尚、図17〜図19に示したハニカム構造体1のように、1つのセル孔3において、軸方向Xに複数の突起部4を形成する場合には、軸方向Xから見たとき、上流側に配設された突起部4と、下流側に配設された突起部4との形成位置が異なることが好ましい。例えば、図20に示すごとく、上流側に配設された突起部401に対して、下流側に配設された突起部402を、セル孔3の中心点Pに対して、60°の点対称となる位置に配設することができる。また、実施例2において図6〜図10に示した突起部4を組み合わせることもできる。この場合には、セル壁2表面の境界層を、より効率よく破壊することができる。
また、複数の突起部4を軸方向Xにおいてずれた位置に形成することで、ハニカム構造体1の上流側に形成された突起部4が境界層を破壊した後、下流側で再度形成されることを抑制できる。これによって、より広範囲において、排ガスとハニカム構造体1との接触効率を向上することができる。
尚、実施例1〜実施例4に示したハニカム構造体1は、一例を示すものであり、これら以外にも種々の形状とすることができる。
1 ハニカム構造体
2 セル壁
3 セル孔
4 突起部

Claims (11)

  1. 複数のセル壁(2)と、該複数のセル壁(2)に囲まれた複数のセル孔とを有し、内燃機関から排出された排ガスを上記複数のセル孔に流通させて浄化するハニカム構造体(1)であって、
    当該ハニカム構造体(1)は、上記内燃機関から排出された上記排ガスを浄化するために必要な機械的強度を有しており、
    上記複数のセル孔の少なくとも一部には、上記ハニカム構造体(1)の軸方向から見たとき、上記セル壁(2)から上記セル孔の中心側に向かって突出した突起部(4)が形成されており、
    上記突起部(4)は、上記排ガスに含まれる炭化水素を吸着するゼオライトである炭化水素吸着材料によって形成されており、
    上記突起部(4)の単位体積あたりの熱容量が、上記セル壁(2)の単位体積あたりの熱容量以下となるように形成されており、
    上記ハニカム構造体(1)の上記軸方向における全長の中央部(11)と、排ガスが流入する側の端部である上流側端部(12)との間に上記突起部(4)が少なくとも一つ形成されていることを特徴とするハニカム構造体(1)。
  2. 上記突起部(4)の表面に、触媒層(5)が形成されていることを特徴とする請求項1に記載のハニカム構造体(1)。
  3. 上記突起部(4)と、上記上流側端部(12)との距離が2mm〜30mmであることを特徴とする請求項1または2に記載のハニカム構造体(1)。
  4. 上記各セル孔において、該セル孔を囲む複数の上記セル壁(2)のうち、半分以上の上記セル壁(2)から上記突起部(4)が突出していることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載のハニカム構造体(1)。
  5. 上記各セル孔において、該セル孔を囲む複数の上記セル壁(2)の交点に形成される頂点のうち、半分以上の頂点から上記突起部(4)が突出していることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載のハニカム構造体(1)。
  6. 複数の上記突起部(4)が上記軸方向においてずれた位置に形成された上記セル孔を有することを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載のハニカム構造体(1)。
  7. 上記ハニカム構造体(1)の中心軸側である径方向内側の位置に設けられた上記セル孔内に形成された上記突起部(4)に対して、該セル孔よりも径方向外側の位置に設けられた上記セル孔内に形成された上記突起部(4)が、上記軸方向において上流側に形成されていることを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載のハニカム構造体(1)。
  8. 上記軸方向から見たとき、上記突起部(4)の角部(41)、及び上記突起部(4)と上記セル壁(2)との間に形成された角部(44)の少なくとも一方が曲面によって形成されていることを特徴とする請求項1〜7のいずれか一項に記載のハニカム構造体(1)。
  9. 上記突起部(4)には、該突起部(4)の上流側の端部から下流側に向かうにつれて徐々に突出量が増大するように形成された上流側傾斜面(42)、又は上記突起部(4)の下流側の端部から上流側に向かうにつれて徐々に突出量が増大するように形成された下流側傾斜面(43)の少なくとも一方が形成されていることを特徴とする請求項1〜8のいずれか一項に記載のハニカム構造体(1)。
  10. 上記ハニカム構造体(1)の中心軸側である径方向内側の位置に設けられた上記セル孔における流通抵抗よりも、該セル孔よりも径方向外側の位置に設けられた上記セル孔における流通抵抗が小さいことを特徴とする請求項1〜9のいずれか一項に記載のハニカム構造体(1)。
  11. 上記セル壁(2)は、その気孔率が30%〜40%のセラミック材料からなり、
    上記突起部(4)は、その気孔率が上記セル壁(2)のセラミック材料の気孔率よりも大きく、かつ、上記セル壁(2)とは異なる材質からなることを特徴とする請求項1〜10のいずれか一項に記載のハニカム構造体(1)。
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