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JP6358228B2 - 静電潜像現像用トナー - Google Patents

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Description

本発明は、静電潜像現像用トナーに関し、特にカプセルトナーに関する。
カプセルトナーに含まれるトナー粒子は、コアと、コアの表面を覆うシェル層(カプセル層)とを備える。コアをシェル層で覆うことで、トナーの耐熱保存性を向上させることができる。特許文献1に記載されるトナーでは、第1の熱可塑性樹脂微粒子と第2の熱可塑性樹脂微粒子とがコアの表面に熱的に固定化されている。
特開平2−880号公報
しかしながら、特許文献1に記載されるトナーでは、第1の熱可塑性樹脂微粒子及び第2の熱可塑性樹脂微粒子の各々の粒子径が大きい(1μm程度)ため、トナーの低温定着性が不十分になり易いと考えられる。また、こうした大きい粒子は、現像器内でのストレスなどによってコアから脱離し易いと考えられる。
本発明は、上記実情に鑑みてなされたものであり、低温定着性及び耐熱ストレス性に優れる静電潜像現像用トナーを提供することを目的とする。また、本発明は、優れた帯電安定性を有する静電潜像現像用トナーを提供することを他の目的とする。
本発明に係る静電潜像現像用トナーが、コアと、前記コアの表面を覆うシェル層とを備えるトナー粒子を、複数含む。前記シェル層は、個数平均粒子径60nm以上100nm以下の第1樹脂粒子と、個数平均粒子径10nm以上50nm以下の第2樹脂粒子とを含む。前記第1樹脂粒子の個数平均粒子径から前記第2樹脂粒子の個数平均粒子径を引いた粒子径差は+20nm以上+50nm以下である。前記第1樹脂粒子は電荷制御剤を含有する。前記第1樹脂粒子の軟化点は前記第2樹脂粒子の軟化点よりも高い。前記第1樹脂粒子の質量と前記第2樹脂粒子の質量との合計に対する前記第1樹脂粒子の質量の比率は0.7以上0.9以下である。
本発明によれば、低温定着性及び耐熱ストレス性に優れる静電潜像現像用トナーを提供することが可能になる。また、本発明によれば、この効果に加えて又はこの効果に代えて、優れた帯電安定性を有する静電潜像現像用トナーを提供することが可能になるという効果が奏される場合がある。
本発明の実施形態に係る静電潜像現像用トナーに含まれるトナー粒子(特に、トナー母粒子)の断面構造の一例を示す図である。 図1に示されるトナー母粒子の表面の一部を拡大して示す図である。 本発明の実施例において耐熱ストレス性の評価に用いた評価機の概要を示す図である。
本発明の実施形態について詳細に説明する。なお、粉体(より具体的には、トナーコア、トナー母粒子、外添剤、又はトナー等)に関する評価結果(形状又は物性などを示す値)は、何ら規定していなければ、粉体から平均的な粒子を相当数選び取って、それら平均的な粒子の各々について測定した値の個数平均である。
粉体の個数平均粒子径は、何ら規定していなければ、顕微鏡を用いて測定された1次粒子の円相当径(粒子の投影面積と同じ面積を有する円の直径)の個数平均値である。また、粉体の体積中位径(D50)の測定値は、何ら規定していなければ、ベックマン・コールター株式会社製の「コールターカウンターマルチサイザー3」を用いてコールター原理(細孔電気抵抗法)に基づき測定した値である。また、粉体の体積平均粒子径(MV:Mean Volume diameter)の測定値は、何ら規定していなければ、レーザー回折/散乱式粒度分布測定装置(株式会社堀場製作所製「LA−750」)を用いて測定した値である。また、円形度(=粒子の投影面積と等しい円の周囲長/粒子の周囲長)の測定値は、何ら規定していなければ、フロー式粒子像分析装置(シスメックス株式会社製「FPIA(登録商標)−3000」)を用いて、相当数(例えば、3000個)の粒子について測定した値の個数平均である。また、酸価及び水酸基価の各々の測定値は、何ら規定していなければ、「JIS(日本工業規格)K0070−1992」に従って測定した値である。また、数平均分子量(Mn)及び質量平均分子量(Mw)の各々の測定値は、何ら規定していなければ、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーを用いて測定した値である。また、ゼータ電位は、何ら規定していなければ、pHが4に調整された25℃の水性媒体中でレーザードップラー方式の電気泳動法により測定した値である。また、摩擦帯電量は、何ら規定していなければ、日本画像学会から提供される標準キャリア(アニオン性:N−01、カチオン性:P−01)を用いて測定した値である。
以下、化合物名の後に「系」を付けて、化合物及びその誘導体を包括的に総称する場合がある。化合物名の後に「系」を付けて重合体名を表す場合には、重合体の繰返し単位が化合物又はその誘導体に由来することを意味する。また、アクリル及びメタクリルを包括的に「(メタ)アクリル」と総称する場合がある。また、アクリロイル(CH2=CH−CO−)及びメタクリロイル(CH2=C(CH3)−CO−)を包括的に「(メタ)アクリロイル」と総称する場合がある。
本実施形態に係るトナーは、例えば正帯電性トナーとして、静電潜像の現像に好適に用いることができる。本実施形態のトナーは、複数のトナー粒子(それぞれ後述する構成を有する粒子)を含む粉体である。トナーは、1成分現像剤として使用してもよい。また、混合装置(より具体的には、ボールミル等)を用いてトナーとキャリアとを混合して2成分現像剤を調製してもよい。高画質の画像を形成するためには、キャリアとしてフェライトキャリアを使用することが好ましい。また、長期にわたって高画質の画像を形成するためには、キャリアコアと、キャリアコアを被覆する樹脂層とを備える磁性キャリア粒子を使用することが好ましい。磁性キャリア粒子を作製するためには、磁性材料(例えば、フェライト)でキャリアコアを形成してもよいし、磁性粒子を分散させた樹脂でキャリアコアを形成してもよい。また、キャリアコアを被覆する樹脂層中に磁性粒子を分散させてもよい。高画質の画像を形成するためには、2成分現像剤におけるトナーの量は、キャリア100質量部に対して、5質量部以上15質量部以下であることが好ましい。
本実施形態に係るトナーに含まれるトナー粒子は、コア(以下、トナーコアと記載する)と、トナーコアの表面に形成されたシェル層(カプセル層)とを備える。トナーコアは結着樹脂を含有する。また、トナーコアは、内添剤(例えば、着色剤、離型剤、電荷制御剤、及び磁性粉)を含有してもよい。トナーコア及び/又はシェル層の表面に外添剤が付着していてもよい。なお、必要がなければ外添剤を割愛してもよい。以下、外添剤が付着する前のトナー粒子を、トナー母粒子と記載する。
本実施形態に係るトナーは、例えば電子写真装置(画像形成装置)において画像の形成に用いることができる。以下、電子写真装置による画像形成方法の一例について説明する。
まず、画像データに基づいて感光体(例えば、感光体ドラムの表層部)に静電潜像を形成する。次に、形成された静電潜像を、トナーを含む現像剤を用いて現像する。現像工程では、感光体の近傍に配置された現像スリーブ(例えば、現像器内の現像ローラーの表層部)上のトナー(帯電したトナー)を静電潜像に付着させて、感光体上にトナー像を形成する。そして、続く転写工程では、感光体上のトナー像を中間転写体(例えば、転写ベルト)に転写した後、さらに中間転写体上のトナー像を記録媒体(例えば、紙)に転写する。その後、トナーを加熱して、記録媒体にトナーを定着させる。その結果、記録媒体に画像が形成される。例えば、ブラック、イエロー、マゼンタ、及びシアンの4色のトナー像を重ね合わせることで、フルカラー画像を形成することができる。
本実施形態に係るトナーは、次に示す構成(以下、基本構成と記載する)を有する静電潜像現像用トナーである。
(トナーの基本構成)
静電潜像現像用トナーが、トナーコア及びシェル層を備えるトナー粒子を、複数含む。シェル層は、個数平均粒子径60nm以上100nm以下の第1樹脂粒子と、個数平均粒子径10nm以上50nm以下の第2樹脂粒子とを含む。第1樹脂粒子の個数平均粒子径から第2樹脂粒子の個数平均粒子径を引いた粒子径差(以下、第1−第2粒子径差と記載する)は+20nm以上+50nm以下である。第1樹脂粒子は電荷制御剤を含有する。第1樹脂粒子の軟化点(Tm)は第2樹脂粒子の軟化点(Tm)よりも高い。第1樹脂粒子の質量(以下、第1樹脂量MAと記載する)と第2樹脂粒子の質量(以下、第2樹脂量MBと記載する)との合計に対する第1樹脂量MAの比率(以下、第1樹脂比率R1と記載する)は0.7以上0.9以下である。なお、第1−第2粒子径差が正の値であることは、第1樹脂粒子の個数平均粒子径が第2樹脂粒子の個数平均粒子径よりも大きいことを示す。また、第1樹脂比率R1は、式「R1=MA/(MA+MB)」で表される。
なお、第1樹脂粒子及び第2樹脂粒子の各々の個数平均粒子径は、顕微鏡を用いて測定された1次粒子の円相当径(粒子の投影面積と同じ面積を有する円の直径)の個数平均値である。界面活性剤を含む液中で樹脂粒子を形成する場合、界面活性剤の量を変えることで、樹脂粒子の個数平均粒子径を調整できる。界面活性剤の量を増やすほど、形成される樹脂粒子の粒子径が小さくなる傾向がある。
また、第1樹脂粒子及び第2樹脂粒子の各々の軟化点(Tm)の測定方法は、後述する実施例と同じ方法又はその代替方法である。樹脂の軟化点(Tm)は、例えば樹脂の分子量又は架橋性を変えることによって調整できる。樹脂の分子量は、樹脂の重合条件(より具体的には、重合開始剤の使用量、重合温度、又は重合時間等)を変えることによって調整できる。例えば、重合温度(重合時の反応温度)を下げたり、樹脂の合成に使用する材料を溶かす溶媒の量を減らしたり、重合開始剤の使用量を減らしたりすれば、樹脂の分子量を小さくすることができる。なお、重合開始剤の使用量を減らし過ぎると、重合反応が停止して、残留モノマー(未反応のモノマー)が増えることがある。また、樹脂の合成に架橋剤を使用する場合には、架橋剤の使用量を変えることによって、合成される樹脂の架橋性を調整できる。
上記基本構成を有するトナーでは、シェル層が、電荷制御剤を含有する第1樹脂粒子に加えて、第2樹脂粒子も含む。第2樹脂粒子は、第1樹脂粒子よりも低い軟化点(Tm)を有し、第1樹脂粒子よりも小さい個数平均粒子径を有する。
第2樹脂粒子の個数平均粒子径が50nm以下であり、第1−第2粒子径差が+50nm以下であり、かつ第1樹脂比率R1が0.9以下であることで、十分なトナーの低温定着性を確保し易くなることを、発明者が見出した(後述する表1〜表10参照)。トナーの低温定着性が改善された理由の1つは、シェル層中で第2樹脂粒子が圧壊点(シェル層において外力又は加熱により特に破壊され易い部位)になったためであると考えられる。
また、第1樹脂粒子の個数平均粒子径が60nm以上であり、かつ第2樹脂粒子の個数平均粒子径が10nm以上であることで、十分なトナーの耐熱ストレス性を確保し易くなることを、発明者が見出した(後述する表1〜表10参照)。トナーの耐熱ストレス性が改善された理由の1つは、シェル層を構成する樹脂粒子の個数平均粒子径を大きくすることで、シェル層の十分な強度を確保し易くなったためであると考えられる。
また、第1樹脂粒子の個数平均粒子径が60nm以上であり、第1−第2粒子径差が+20nm以上であり、かつ第1樹脂比率R1が0.7以上であることで、十分なトナーの帯電安定性を確保し易くなることを、発明者が見出した(後述する表1〜表10参照)。トナーの帯電安定性が改善された理由の1つは、トナー粒子の表面において第1樹脂粒子が第2樹脂粒子よりも突出して、画像形成装置の現像器において、正帯電性を有する第1樹脂粒子が、キャリア粒子との摩擦によって帯電し易くなったためであると考えられる。また、第1−第2粒子径差が十分大きい場合には、第1樹脂粒子がトナー粒子間でスペーサーとして機能し、トナー粒子同士の凝集を抑制する傾向がある。
トナーの十分な耐熱保存性を確保するためには、トナーコアの表面全域のうち、第1樹脂粒子及び第2樹脂粒子の少なくとも一方が覆う領域(以下、被覆領域と記載する)の面積割合(以下、シェル被覆率RSと記載する)が、90%以上100%以下であることが好ましい。トナーコアの表面全域の面積をSC、被覆領域の面積をSSと記載すると、シェル被覆率RSは、式「RS=100×SS/SC」で表される。被覆領域には、第1樹脂粒子のみで覆われているトナーコアの表面領域と、第2樹脂粒子のみで覆われているトナーコアの表面領域と、第1樹脂粒子及び第2樹脂粒子の両方で覆われているトナーコアの表面領域とが含まれる。シェル被覆率RSは、例えば、電界放射型走査型電子顕微鏡(日本電子株式会社製「JSM−7600F」)で撮影したトナー粒子(予め染色されたトナー粒子)の画像を解析することで測定できる。トナーコアの表面における被覆領域とそれ以外の領域(非被覆領域)とは、例えば輝度値の違いにより区別できる。シェル被覆率RSを十分高くすることで、十分なトナーの耐熱保存性を確保し易くなる。また、上記基本構成を有するトナーでは、シェル被覆率RSが90%以上であっても、第2樹脂粒子が圧壊点として機能することで、十分なトナーの低温定着性を確保し易い。
トナーの耐熱ストレス性及び低温定着性の両立を図るためには、第1樹脂粒子の軟化点から第2樹脂粒子の軟化点を引いた温度差(以下、温度差T12と記載する)が+10℃以上であることが好ましく、+15℃以上であることがより好ましい。また、特殊な設備又は材料を使用せずにトナーの十分な製造容易性を確保するためには、温度差T12が+50℃以下であることが好ましい。
トナーの耐熱ストレス性及び低温定着性の両立を図るためには、第1樹脂粒子の軟化点が120℃以上130℃以下であり、第2樹脂粒子の軟化点が100℃以上110℃以下であることが特に好ましい。
以下、上記基本構成を有するトナーに含まれるトナー粒子の構成の一例について、図1及び図2を参照して説明する。なお、図1は、本実施形態に係るトナーに含まれるトナー粒子(特に、トナー母粒子)の構成の一例を示す図である。図2は、図1に示されるトナー母粒子の一部を拡大して示す図である。
図1に示されるトナー母粒子10は、トナーコア11と、トナーコア11の表面に形成されたシェル層12とを備える。シェル層12は、トナーコア11の表面を覆っている。
トナー母粒子10では、図2に示すように、シェル層12が、球状の第1樹脂粒子12aと、球状の第2樹脂粒子12bとを含む。第1樹脂粒子12aは電荷制御剤(例えば、4級アンモニウム塩)を含有し、第2樹脂粒子12bは電荷制御剤を含有しない。図2に示す例では、第1樹脂粒子12a及び第2樹脂粒子12bが、積層構造を形成せず、同一層に存在する。第1樹脂粒子12a及び第2樹脂粒子12bはそれぞれ、図2に示すように、その一部(底部)がトナーコア11に埋まっていてもよい。
本実施形態に係るトナーは、前述の基本構成で規定されるトナー粒子(以下、本実施形態のトナー粒子と記載する)を複数含む。本実施形態のトナー粒子を含むトナーは、低温定着性、耐熱ストレス性、及び帯電安定性に優れると考えられる(後述する表1〜表10を参照)。こうした効果を得るためには、トナーが、80個数%以上の割合で本実施形態のトナー粒子を含むことが好ましく、90個数%以上の割合で本実施形態のトナー粒子を含むことがより好ましく、100個数%の割合で本実施形態のトナー粒子を含むことがさらに好ましい。本実施形態のトナー粒子に混じって、シェル層を備えないトナー粒子がトナーに含まれていてもよい。
トナーコアが乾式法により作製されることで、上記基本構成に規定されるシェル層と相性の良いトナーコアが得られる傾向がある。乾式法としては、粉砕法が特に好ましい。粉砕法は、複数種の材料(樹脂等)を溶融混練して混練物を得る工程と、得られた混練物を粉砕する工程とを経て、粉体(例えば、トナーコア)を得る方法である。
トナーを用いて高画質の画像を形成するためには、トナー母粒子の円形度が0.950以上0.985未満であることが好ましい。
トナーの耐熱保存性及び低温定着性の両立を図るためには、トナー母粒子の体積平均粒子径(MV)が1μm以上10μm未満であることが好ましい。
次に、トナーコアを形成するための材料(以下、トナーコア材料と記載する)と、シェル層を形成するための材料(以下、シェル材料と記載する)とについて説明する。トナー粒子を形成するために適した樹脂は、以下のとおりである。
<好適な熱可塑性樹脂>
トナー粒子(特に、トナーコア及びシェル層)を構成する熱可塑性樹脂としては、例えば、スチレン系樹脂、アクリル酸系樹脂(より具体的には、アクリル酸エステル重合体又はメタクリル酸エステル重合体等)、オレフィン系樹脂(より具体的には、ポリエチレン樹脂又はポリプロピレン樹脂等)、ビニル樹脂(より具体的には、塩化ビニル樹脂、ポリビニルアルコール、ビニルエーテル樹脂、又はN−ビニル樹脂等)、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、又はウレタン樹脂を好適に使用できる。また、上記樹脂のいずれかの繰返し単位と同一のモノマーに由来する繰返し単位を1種以上含む共重合体(より具体的には、スチレン−アクリル酸系樹脂又はスチレン−ブタジエン系樹脂等)も、トナー粒子を構成する熱可塑性樹脂として好適に使用できる。
熱可塑性樹脂は、1種以上の熱可塑性モノマー(より具体的には、アクリル酸系モノマー又はスチレン系モノマー等)を縮重合又は共縮重合させることで得られる。なお、熱可塑性モノマーは、単独重合させることで、熱可塑性樹脂になるモノマーである。
スチレン−アクリル酸系樹脂は、1種以上のスチレン系モノマーと1種以上のアクリル酸系モノマーとの共重合体である。スチレン−アクリル酸系樹脂を合成するためには、例えば以下に示すような、スチレン系モノマー及びアクリル酸系モノマーを好適に使用できる。アクリル酸系モノマーを用いることで、スチレン−アクリル酸系樹脂にカルボキシル基を導入できる。また、水酸基を有するモノマー(より具体的には、p−ヒドロキシスチレン、m−ヒドロキシスチレン、又は(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルエステル等)を用いることで、スチレン−アクリル酸系樹脂に水酸基を導入できる。
スチレン系モノマーの好適な例としては、スチレン、アルキルスチレン(より具体的には、α−メチルスチレン、p−エチルスチレン、又は4−tert−ブチルスチレン等)、p−ヒドロキシスチレン、m−ヒドロキシスチレン、ビニルトルエン、α−クロロスチレン、o−クロロスチレン、m−クロロスチレン、又はp−クロロスチレンが挙げられる。
アクリル酸系モノマーの好適な例としては、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸アルキルエステル、又は(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルエステルが挙げられる。(メタ)アクリル酸アルキルエステルの好適な例としては、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n−プロピル、(メタ)アクリル酸iso−プロピル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸iso−ブチル、又は(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシルが挙げられる。(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルエステルの好適な例としては、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸3−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、又は(メタ)アクリル酸4−ヒドロキシブチルが挙げられる。
ポリエステル樹脂は、アルコールとカルボン酸とを縮重合又は共縮重合させることで得られる。ポリエステル樹脂を合成するためのアルコールとしては、例えば以下に示すような、2価アルコール(より具体的には、ジオール類又はビスフェノール類等)又は3価以上のアルコールを好適に使用できる。ポリエステル樹脂を合成するためのカルボン酸としては、例えば以下に示すような、2価カルボン酸又は3価以上のカルボン酸を好適に使用できる。
ジオール類の好適な例としては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,4−ブテンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、ジ1,2−プロパンジオール、ポリエチレングリコール、ポリ1,2−プロパンジオール、又はポリテトラメチレングリコールが挙げられる。
ビスフェノール類の好適な例としては、ビスフェノールA、水素添加ビスフェノールA、ビスフェノールAエチレンオキサイド付加物、又はビスフェノールAプロピレンオキサイド付加物が挙げられる。
3価以上のアルコールの好適な例としては、ソルビトール、1,2,3,6−ヘキサンテトロール、1,4−ソルビタン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリペンタエリスリトール、1,2,4−ブタントリオール、1,2,5−ペンタントリオール、グリセロール、ジグリセロール、2−メチルプロパントリオール、2−メチル−1,2,4−ブタントリオール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、又は1,3,5−トリヒドロキシメチルベンゼンが挙げられる。
2価カルボン酸の好適な例としては、マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸、イタコン酸、グルタコン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、シクロヘキサンジカルボン酸、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸、マロン酸、コハク酸、アルキルコハク酸(より具体的には、n−ブチルコハク酸、イソブチルコハク酸、n−オクチルコハク酸、n−ドデシルコハク酸、又はイソドデシルコハク酸等)、又はアルケニルコハク酸(より具体的には、n−ブテニルコハク酸、イソブテニルコハク酸、n−オクテニルコハク酸、n−ドデセニルコハク酸、又はイソドデセニルコハク酸等)が挙げられる。
3価以上のカルボン酸の好適な例としては、1,2,4−ベンゼントリカルボン酸(トリメリット酸)、2,5,7−ナフタレントリカルボン酸、1,2,4−ナフタレントリカルボン酸、1,2,4−ブタントリカルボン酸、1,2,5−ヘキサントリカルボン酸、1,3−ジカルボキシル−2−メチル−2−メチレンカルボキシプロパン、1,2,4−シクロヘキサントリカルボン酸、テトラ(メチレンカルボキシル)メタン、1,2,7,8−オクタンテトラカルボン酸、ピロメリット酸、又はエンポール三量体酸が挙げられる。
以下、トナーコア(結着樹脂及び内添剤)、シェル層、及び外添剤について、順に説明する。トナーの用途に応じて必要のない成分(例えば、内添剤又は外添剤)を割愛してもよい。
[トナーコア]
(結着樹脂)
トナーコアでは、一般的に、成分の大部分(例えば、85質量%以上)を結着樹脂が占める。このため、結着樹脂の性質がトナーコア全体の性質に大きな影響を与えると考えられる。結着樹脂として複数種の樹脂を組み合わせて使用することで、結着樹脂の性質(より具体的には、水酸基価、酸価、Tg、又はTm等)を調整することができる。例えば、結着樹脂がエステル基、水酸基、エーテル基、酸基、又はメチル基を有する場合には、トナーコアはアニオン性になる傾向が強くなり、結着樹脂がアミノ基又はアミド基を有する場合には、トナーコアはカチオン性になる傾向が強くなる。結着樹脂が強いアニオン性を有するためには、結着樹脂の水酸基価及び酸価がそれぞれ10mgKOH/g以上であることが好ましい。
結着樹脂としては、エステル基、水酸基、エーテル基、酸基、及びメチル基からなる群より選択される1種以上の基を有する樹脂が好ましい。このような官能基を有する結着樹脂は、シェル材料と反応して化学的に結合し易い。こうした化学的な結合が生じると、トナーコアとシェル層との結合が強固になる。また、結着樹脂としては、活性水素を含む官能基を分子中に有する樹脂も好ましい。
高速定着時におけるトナーの定着性を向上させるためには、結着樹脂のガラス転移点(Tg)が、20℃以上55℃以下であることが好ましい。高速定着時におけるトナーの定着性を向上させるためには、結着樹脂の軟化点(Tm)が、100℃以下であることがより好ましい。なお、Tg及びTmの各々の測定方法は、後述する実施例と同じ方法又はその代替方法である。樹脂の成分(モノマー)の種類又は量を変更することで、樹脂のTg及び/又はTmを調整することができる。
本実施形態に係るトナーは、前述の基本構成を有する。本実施形態に係るトナーでは、トナーコアが、1種以上のポリエステル樹脂を含有する。トナーコアの結着樹脂はポリエステル樹脂のみであってもよいし、トナーコアは、結着樹脂として、ポリエステル樹脂以外の樹脂(より具体的には、前述の好適な熱可塑性樹脂等)を含有してもよい。トナーコア中の着色剤の分散性、トナーの帯電性、及び記録媒体に対するトナーの定着性を向上させるためには、結着樹脂としてスチレン−アクリル酸系樹脂又はポリエステル樹脂を用いることが好ましい。低温定着性に優れるトナーを得るためには、トナーコアに含有される樹脂のうち、80質量%以上の樹脂がポリエステル樹脂であることが好ましく、90質量%以上の樹脂がポリエステル樹脂であることがより好ましく、100質量%の樹脂がポリエステル樹脂であることがさらに好ましい。
トナーコアの結着樹脂としてポリエステル樹脂を使用する場合、トナーコアの強度及びトナーの定着性を向上させるためには、ポリエステル樹脂の数平均分子量(Mn)が1000以上2000以下であることが好ましい。ポリエステル樹脂の分子量分布(数平均分子量(Mn)に対する質量平均分子量(Mw)の比率Mw/Mn)は9以上21以下であることが好ましい。
(着色剤)
トナーコアは、着色剤を含有してもよい。着色剤としては、トナーの色に合わせて公知の顔料又は染料を用いることができる。トナーを用いて高画質の画像を形成するためには、着色剤の量が、結着樹脂100質量部に対して、1質量部以上20質量部以下であることが好ましい。
トナーコアは、黒色着色剤を含有していてもよい。黒色着色剤の例としては、カーボンブラックが挙げられる。また、黒色着色剤は、イエロー着色剤、マゼンタ着色剤、及びシアン着色剤を用いて黒色に調色された着色剤であってもよい。
トナーコアは、イエロー着色剤、マゼンタ着色剤、又はシアン着色剤のようなカラー着色剤を含有していてもよい。
イエロー着色剤としては、例えば、縮合アゾ化合物、イソインドリノン化合物、アントラキノン化合物、アゾ金属錯体、メチン化合物、及びアリールアミド化合物からなる群より選択される1種以上の化合物を使用できる。イエロー着色剤としては、例えば、C.I.ピグメントイエロー(3、12、13、14、15、17、62、74、83、93、94、95、97、109、110、111、120、127、128、129、147、151、154、155、168、174、175、176、180、181、191、又は194)、ナフトールイエローS、ハンザイエローG、又はC.I.バットイエローを好適に使用できる。
マゼンタ着色剤としては、例えば、縮合アゾ化合物、ジケトピロロピロール化合物、アントラキノン化合物、キナクリドン化合物、塩基染料レーキ化合物、ナフトール化合物、ベンズイミダゾロン化合物、チオインジゴ化合物、及びペリレン化合物からなる群より選択される1種以上の化合物を使用できる。マゼンタ着色剤としては、例えば、C.I.ピグメントレッド(2、3、5、6、7、19、23、48:2、48:3、48:4、57:1、81:1、122、144、146、150、166、169、177、184、185、202、206、220、221、又は254)を好適に使用できる。
シアン着色剤としては、例えば、銅フタロシアニン化合物、アントラキノン化合物、及び塩基染料レーキ化合物からなる群より選択される1種以上の化合物を使用できる。シアン着色剤としては、例えば、C.I.ピグメントブルー(1、7、15、15:1、15:2、15:3、15:4、60、62、又は66)、フタロシアニンブルー、C.I.バットブルー、又はC.I.アシッドブルーを好適に使用できる。
(離型剤)
トナーコアは、離型剤を含有していてもよい。離型剤は、例えば、トナーの定着性又は耐オフセット性を向上させる目的で使用される。トナーコアのアニオン性を強めるためには、アニオン性を有するワックスを用いてトナーコアを作製することが好ましい。トナーの定着性又は耐オフセット性を向上させるためには、離型剤の量は、結着樹脂100質量部に対して、1質量部以上30質量部以下であることが好ましい。
離型剤としては、例えば、低分子量ポリエチレン、低分子量ポリプロピレン、ポリオレフィン共重合物、ポリオレフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、パラフィンワックス、又はフィッシャートロプシュワックスのような脂肪族炭化水素ワックス;酸化ポリエチレンワックス又はそのブロック共重合体のような脂肪族炭化水素ワックスの酸化物;キャンデリラワックス、カルナバワックス、木ろう、ホホバろう、又はライスワックスのような植物性ワックス;みつろう、ラノリン、又は鯨ろうのような動物性ワックス;オゾケライト、セレシン、又はペトロラタムのような鉱物ワックス;モンタン酸エステルワックス又はカスターワックスのような脂肪酸エステルを主成分とするワックス類;脱酸カルナバワックスのような、脂肪酸エステルの一部又は全部が脱酸化したワックスを好適に使用できる。1種類の離型剤を単独で使用してもよいし、複数種の離型剤を併用してもよい。
結着樹脂と離型剤との相溶性を改善するために、相溶化剤をトナーコアに添加してもよい。
(電荷制御剤)
トナーコアは、電荷制御剤を含有していてもよい。電荷制御剤は、例えば、トナーの帯電安定性又は帯電立ち上がり特性を向上させる目的で使用される。トナーの帯電立ち上がり特性は、短時間で所定の帯電レベルにトナーを帯電可能か否かの指標になる。
トナーコアに負帯電性の電荷制御剤を含有させることで、トナーコアのアニオン性を強めることができる。また、トナーコアに正帯電性の電荷制御剤を含有させることで、トナーコアのカチオン性を強めることができる。ただし、トナーにおいて十分な帯電性が確保される場合には、トナーコアに電荷制御剤を含有させる必要はない。
(磁性粉)
トナーコアは、磁性粉を含有してもよい。磁性粉の材料としては、例えば、強磁性金属(より具体的には、鉄、コバルト、又はニッケル等)もしくはその合金、強磁性金属酸化物(より具体的には、フェライト、マグネタイト、又は二酸化クロム等)、又は強磁性化処理(より具体的には、熱処理等)が施された材料を好適に使用できる。1種類の磁性粉を単独で使用してもよいし、複数種の磁性粉を併用してもよい。
磁性粉からの金属イオン(例えば、鉄イオン)の溶出を抑制するためには、磁性粉を表面処理することが好ましい。酸性条件下でトナーコアの表面にシェル層を形成する場合に、トナーコアの表面に金属イオンが溶出すると、トナーコア同士が固着し易くなる。磁性粉からの金属イオンの溶出を抑制することで、トナーコア同士の固着を抑制することができると考えられる。
[シェル層]
本実施形態に係るトナーは、前述の基本構成を有する。シェル層は、第1樹脂粒子と第2樹脂粒子とを含む。
帯電性、耐熱保存性、及び低温定着性に優れるトナーを得るためには、第1樹脂粒子及び第2樹脂粒子がそれぞれ、実質的に熱可塑性樹脂(より具体的には、前述の好適な熱可塑性樹脂等)から構成されることが好ましい。
トナーコアがポリエステル樹脂を含有する場合、トナーの正帯電性及び低温定着性を向上させるためには、第1樹脂粒子がスチレン−アクリル酸系樹脂(より具体的には、スチレンとアクリル酸エステルとの共重合体等)を含有することが好ましい。スチレン−アクリル酸系樹脂は、正帯電性に優れ、ポリエステル樹脂(トナーコアの結着樹脂)との相性が良い。また、第1樹脂粒子がスチレン−アクリル酸系樹脂を含有する場合には、上記基本構成に規定される要件(Tm等)を満たし易い。また、スチレン−アクリル酸系樹脂(より具体的には、スチレンとアクリル酸エステルとの共重合体等)は、第2樹脂粒子の材料としても適している。スチレン−アクリル酸系樹脂は、ポリエステル樹脂と比べて、疎水性が強く、正帯電し易い傾向がある。
トナーの低温定着性を向上させるためには、第2樹脂粒子がポリエステル樹脂を含有することが好ましい。第2樹脂粒子がポリエステル樹脂を含有する場合、第2樹脂粒子が圧壊点として機能し易くなる。
第1樹脂粒子は、電荷制御剤を含有する。第1樹脂粒子に電荷制御剤を含有させるためには、第1樹脂粒子を構成する樹脂中に電荷制御剤に由来する繰返し単位を組み込んでもよいし、第1樹脂粒子を構成する樹脂中に帯電粒子を分散させてもよい。ただし、帯電安定性、耐熱ストレス性、及び低温定着性に優れるトナーを得るためには、第1樹脂粒子が、電荷制御剤に由来する繰返し単位を有する樹脂から実質的に構成されることが好ましく、(メタ)アクリロイル基含有4級アンモニウム化合物モノマーに由来する繰返し単位を有する樹脂から実質的に構成されることが特に好ましい。(メタ)アクリロイル基含有4級アンモニウム化合物モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリルアミドアルキルトリメチルアンモニウム塩(より具体的には、(3−アクリルアミドプロピル)トリメチルアンモニウムクロライド等)、又は(メタ)アクリロイルオキシアルキルトリメチルアンモニウム塩(より具体的には、2−(メタクリロイルオキシ)エチルトリメチルアンモニウムクロライド等)を好適に使用できる。なお、必要があれば、第2樹脂粒子にも電荷制御剤を含有させてもよい。
[外添剤]
トナー母粒子の表面に、外添剤として無機粒子を付着させてもよい。外添剤は、例えばトナーの流動性又は取扱性を向上させるために使用される。トナーの流動性又は取扱性を向上させるためには、外添剤の量が、トナー母粒子100質量部に対して、0.5質量部以上10質量部以下であることが好ましい。また、トナーの流動性又は取扱性を向上させるためには、外添剤の粒子径は0.01μm以上1.0μm以下であることが好ましい。
外添剤(無機粒子)としては、シリカ粒子、又は金属酸化物(より具体的には、アルミナ、酸化チタン、酸化マグネシウム、酸化亜鉛、チタン酸ストロンチウム、又はチタン酸バリウム等)の粒子を好適に使用できる。1種類の外添剤を単独で使用してもよいし、複数種の外添剤を併用してもよい。
[トナーの製造方法]
以下、上記構成を有する本実施形態に係るトナーを製造する方法の一例について説明する。
(トナーコアの準備)
好適なトナーコアを容易に得るためには、凝集法又は粉砕法によりトナーコアを製造することが好ましく、粉砕法によりトナーコアを製造することがより好ましい。
以下、粉砕法の一例について説明する。まず、結着樹脂と、内添剤(例えば、着色剤、離型剤、電荷制御剤、及び磁性粉の少なくとも1つ)とを混合する。続けて、得られた混合物を溶融混練する。続けて、得られた溶融混練物を粉砕及び分級する。その結果、所望の粒子径を有するトナーコアが得られる。
以下、凝集法の一例について説明する。まず、結着樹脂、離型剤、及び着色剤の各々の微粒子を含む水性媒体中で、これらの粒子を所望の粒子径になるまで凝集させる。これにより、結着樹脂、離型剤、及び着色剤を含む凝集粒子が形成される。続けて、得られた凝集粒子を加熱して、凝集粒子に含まれる成分を合一化させる。その結果、トナーコアの分散液が得られる。その後、トナーコアの分散液から、不要な物質(界面活性剤等)を除去することで、トナーコアが得られる。
(シェル層の形成)
まず、水性媒体(例えば、イオン交換水)を準備する。シェル層形成時におけるトナーコア成分(特に、結着樹脂及び離型剤)の溶解又は溶出を抑制するためには、水性媒体中でシェル層を形成することが好ましい。水性媒体は、水を主成分とする媒体(より具体的には、純水、又は水と極性媒体との混合液等)である。水性媒体は溶媒として機能してもよい。水性媒体中に溶質が溶けていてもよい。水性媒体は分散媒として機能してもよい。水性媒体中に分散質が分散していてもよい。水性媒体中の極性媒体としては、例えば、アルコール(より具体的には、メタノール又はエタノール等)を使用できる。水性媒体の沸点は約100℃である。
続けて、例えば塩酸を用いて水性媒体のpHを所定のpH(例えば、4)に調整する。続けて、pHが調整された水性媒体(例えば、酸性の水性媒体)に、トナーコアと、第1樹脂粒子(電荷制御剤を含有する樹脂粒子)の分散液と、第2樹脂粒子(電荷制御剤を含有しない樹脂粒子)の分散液とを添加する。
第1樹脂粒子及び第2樹脂粒子はそれぞれ、液中でトナーコアの表面に付着する。トナーコアの表面に均一に第1樹脂粒子及び第2樹脂粒子を付着させるためには、第1樹脂粒子及び第2樹脂粒子を含む液中にトナーコアを高度に分散させることが好ましい。液中にトナーコアを高度に分散させるために、液中に界面活性剤を含ませてもよいし、強力な攪拌装置(例えば、プライミクス株式会社製「ハイビスディスパーミックス」)を用いて液を攪拌してもよい。トナーコアがアニオン性を有する場合には、同一極性を有するアニオン界面活性剤を使用することで、トナーコアの凝集を抑制できる。界面活性剤としては、例えば、硫酸エステル塩、スルホン酸塩、リン酸エステル塩、又は石鹸を使用できる。
続けて、上記トナーコア、第1樹脂粒子、及び第2樹脂粒子を含む液を攪拌しながら液の温度を所定の昇温速度(例えば、0.1℃/分以上3.0℃/分以下から選ばれる速度)で所定の保持温度(例えば、50℃以上85℃以下から選ばれる温度)まで上昇させる。昇温速度は1℃/分以上3℃/分以下であることが好ましい。昇温速度が速過ぎると、トナーコアが表面張力で丸くなる前にシェル材料の硬化が始まってしまうことがある。昇温速度が遅過ぎると、シェル材料が硬化する前にトナーコアが軟化して凝集してしまうことがある。
さらに、液を攪拌しながら液の温度を上記保持温度に所定の時間(例えば、30分間以上4時間以下から選ばれる時間)保つ。その後、冷水を加えて液を急冷することで、トナー母粒子の分散液が得られる。液の温度を高温に保っている間に、トナーコアの表面にシェル材料(第1樹脂粒子及び第2樹脂粒子)が付着する。また、シェル材料はトナーコアと反応する。また、トナーコアの表面で樹脂粒子が2次元的に連なることで、粒状感のある膜(シェル層)が形成されると考えられる。
(洗浄工程)
得られたトナー母粒子を洗浄してもよい。トナー母粒子の洗浄方法としては、例えば、トナー母粒子を含む分散液を固液分離して、ウェットケーキ状のトナー母粒子を回収し、回収されたウェットケーキ状のトナー母粒子を水で洗浄する方法が好ましい。また、トナー母粒子の洗浄方法としては、トナー母粒子を含む分散液中のトナー母粒子を沈降させ、上澄み液を水と置換し、置換後にトナー母粒子を水に再分散させる方法が好ましい。
(乾燥工程)
洗浄工程の後、トナー母粒子を乾燥してもよい。例えば、乾燥機(より具体的には、スプレードライヤー、流動層乾燥機、真空凍結乾燥器、又は減圧乾燥機等)を用いてトナー母粒子を乾燥することができる。乾燥中のトナー母粒子の凝集を抑制するためには、スプレードライヤーを用いてトナー母粒子を乾燥することが好ましい。スプレードライヤーを用いる場合には、例えば、外添剤が分散された分散液をトナー母粒子に噴霧することで、乾燥工程と後述の外添工程とを同時に行うことが可能になる。
(外添工程)
必要に応じて、混合機(例えば、日本コークス工業株式会社製のFMミキサー又はUMミキサー)を用いてトナー母粒子と外添剤とを混合して、トナー母粒子の表面に外添剤を付着させてもよい。こうして、トナー粒子を多数含むトナーが得られる。
なお、上記トナーの製造方法の内容及び順序はそれぞれ、要求されるトナーの構成又は特性等に応じて任意に変更することができる。例えば、液中で材料(例えば、シェル材料)を反応させる場合、液に材料を添加した後、所定の時間、液中で材料を反応させてもよいし、長時間かけて液に材料を添加して、液に材料を添加しながら液中で材料を反応させてもよい。また、シェル材料は、一度に液に添加されてもよいし、複数回に分けて液に添加されてもよい。外添工程の後で、トナーを篩別してもよい。また、必要のない工程は割愛してもよい。例えば、市販品をそのまま材料として用いることができる場合には、市販品を用いることで、その材料を調製する工程を割愛できる。また、液のpHを調整しなくても、シェル層を形成するための反応が良好に進行する場合には、pH調整工程を割愛してもよい。また、外添剤が不要であれば、外添工程を割愛してもよい。トナー母粒子の表面に外添剤を付着させない(外添工程を割愛する)場合には、トナー母粒子がトナー粒子に相当する。トナーコア材料とシェル材料とはそれぞれ、前述の化合物(樹脂を合成するための各種モノマー等)に限られない。例えば、必要に応じて、前述の化合物の誘導体をトナーコア材料又はシェル材料として使用してもよいし、モノマーに代えてプレポリマーを使用してもよい。また、前述の化合物を得るために、原料として、その化合物の塩、エステル、水和物、又は無水物を使用してもよい。効率的にトナーを製造するためには、多数のトナー粒子を同時に形成することが好ましい。同時に製造されたトナー粒子は、互いに略同一の構成を有すると考えられる。
本発明の実施例について説明する。表1〜表5に、実施例又は比較例に係るトナーT−1〜T−15、T−21〜T−38、T−41〜T−52、T−61〜T−68、及びT−71〜T−78(それぞれ静電潜像現像用トナー)を示す。また、表6及び表7には、トナーT−1〜T−78のいずれかの製造に用いられる分散液A−1〜A−6、A−21〜A−25、B−1〜B−6、B−51〜B−54、C、D−1、及びD−2を示す。なお、表1〜表5の各々において、「第1樹脂」は、第1シェル材料(正帯電性の電荷制御剤を含有する樹脂粒子を含む分散液)を示し、「第2樹脂」は、第2シェル材料(正帯電性の電荷制御剤を含有しない樹脂粒子を含む分散液)を示す。また、表1〜表5の各々の項目「Tmの関係」において、「○」は、第1シェル材料の樹脂の軟化点(Tm)が第2シェル材料の樹脂の軟化点(Tm)よりも高いことを示し、「×」は、そのTmの関係を満たさないことを示す。
Figure 0006358228
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以下、トナーT−1〜T−78の製造方法、評価方法、及び評価結果について、順に説明する。なお、誤差が生じる評価においては、誤差が十分小さくなる相当数の測定値を得て、得られた測定値の算術平均を評価値とした。また、Tg(ガラス転移点)及びTm(軟化点)の測定方法はそれぞれ、何ら規定していなければ、次に示すとおりである。
<Tgの測定方法>
示差走査熱量計(セイコーインスツル株式会社製「DSC−6220」)を用いて、試料(例えば、樹脂)の吸熱曲線(縦軸:熱流(DSC信号)、横軸:温度)を求めた。続けて、得られた吸熱曲線から試料のTg(ガラス転移点)を読み取った。得られた吸熱曲線中の比熱の変化点(ベースラインの外挿線と立ち下がりラインの外挿線との交点)の温度が、試料のTg(ガラス転移点)に相当する。
<Tmの測定方法>
高化式フローテスター(株式会社島津製作所製「CFT−500D」)に試料(例えば、樹脂)をセットし、ダイス細孔径1mm、プランジャー荷重20kg/cm2、昇温速度6℃/分の条件で、1cm3の試料を溶融流出させて、試料のS字カーブ(横軸:温度、縦軸:ストローク)を求めた。続けて、得られたS字カーブから試料のTmを読み取った。S字カーブにおいて、ストロークの最大値をS1とし、低温側のベースラインのストローク値をS2とすると、S字カーブ中のストロークの値が「(S1+S2)/2」となる温度が、試料のTm(軟化点)に相当する。
[トナーT−1〜T−78の製造方法]
(トナーコアの作製)
ビスフェノールAエチレンオキサイド付加物(詳しくは、ビスフェノールAを骨格にしてエチレンオキサイドを付加したアルコール)に、多官能基を有する酸(詳しくは、パラフタル酸及び無水トリメリット酸)を、酸化チタン(TiO2)触媒の存在下で反応させることにより、ポリエステル樹脂(トナーコアの結着樹脂)を合成した。得られたポリエステル樹脂に関して、水酸基価は20mgKOH/g、酸価は40mgKOH/g、Tmは100℃、Tgは48℃であった。
上記のようにして得られたポリエステル樹脂100質量部と、着色剤(C.I.ピグメントブルー15:3、成分:銅フタロシアニン顔料)5質量部と、離型剤(日油株式会社製「ニッサンエレクトール(登録商標)WEP−3」、融点73℃のエステルワックス)5質量部とを、FMミキサー(日本コークス工業株式会社製「FM−10C/I」)を用いて回転速度2400rpmで混合(乾式混合)した。
続けて、得られた混合物を、2軸押出機(株式会社池貝製「PCM−30」)を用いて溶融混練した。その後、得られた混練物を冷却した。続けて、冷却された混練物を、機械式粉砕機(フロイント・ターボ株式会社製「ターボミルT250」)を用いて設定粒子径5.6μmの条件で粉砕した。続けて、得られた粉砕物を、分級機(日鉄鉱業株式会社製「エルボージェットEJ−LABO型」)を用いて分級した。その結果、体積中位径(D50)6μmのトナーコアが得られた。得られたトナーコアに関して、円形度は0.931、Tgは50℃、Tmは98℃、摩擦帯電量は−20μC/g、pH4におけるゼータ電位は−20mVであった。
(分散液A−1〜A−6及びA−21〜A−25の調製)
温度計(熱電対)、窒素導入管、攪拌装置、及びコンデンサー(熱交換器)を備えた容量2Lのフラスコ内に、溶剤(イソブタノール)250gと、メタクリル酸2−(ジエチルアミノ)エチル6gと、p−トルエンスルホン酸メチル6gとを入れた。続けて、窒素雰囲気中、温度80℃で、フラスコ内容物を1時間反応(4級化反応)させた。続けて、フラスコ内に窒素ガスを流しながら、スチレン155gと、アクリル酸ブチル75gと、所定量の過酸化物重合開始剤(t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート:アルケマ吉富株式会社製)とをさらにフラスコ内に加えた。この時(昇温前)の過酸化物重合開始剤の添加量は、表6及び表7の各々における項目「重合開始剤」の「昇温前(単位:g)」に示すとおりであった。例えば、分散液A−1の調製では、表6に示すように、過酸化物重合開始剤(t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート)をフラスコ内に14g添加した。
続けて、フラスコ内容物を95℃(重合温度)まで昇温させて3時間攪拌した。その後、過酸化物重合開始剤(t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート:アルケマ吉富株式会社製)12gをさらにフラスコ内に加えて、フラスコ内容物を3時間攪拌した。続けて、高温(140℃)かつ減圧(10kPa)環境下でフラスコ内容物を乾燥させて、溶剤を除去した。続けて、フラスコ内容物を解砕して、粗粉砕物を得た。
続けて、機械式粉砕機(フロイント・ターボ株式会社製「ターボミルT250」)を用いて、設定粒子径10μmの条件で上記粗粉砕物をさらに粉砕して、微粉砕物を得た。続けて、得られた微粉砕物100gと、所定量のカチオン界面活性剤(花王株式会社製「コータミン(登録商標)24P」、ラウリルトリメチルアンモニウムクロライド25質量%水溶液)と、0.1N−水酸化ナトリウム水溶液25gとを混合して、分散液を得た。この時の界面活性剤の添加量は、表6及び表7の各々における「界面活性剤(単位:g)」に示すとおりであった。例えば、分散液A−1の調製では、表6に示すように、カチオン界面活性剤(コータミン24P)の量は1.65gであった。
続けて、得られた分散液にイオン交換水を加えて、全量400gのスラリーを調製した。そして、得られたスラリーを、ステンレス製の耐圧丸底容器に投入した。続けて、高速剪断乳化装置(エム・テクニック株式会社製「クレアミックス(登録商標)CLM−2.2S」)を用いて、高温(140℃)かつ高圧(0.5MPa)環境下、ローター回転速度20000rpmの条件で、スラリーを30分間剪断分散した。その後、容器内容物を5℃/分の速度で冷却しながら、容器内の温度が50℃になるまで、ローター回転速度15000rpmの条件で容器内容物を攪拌して、固形分濃度30質量%で樹脂粒子(正帯電性の電荷制御剤を含有するスチレン−アクリル酸系樹脂から実質的に構成される粒子)を含む分散液(分散液A−1〜A−6及びA−21〜A−25)を得た。得られた分散液A−1〜A−6及びA−21〜A−25の各々に関して、樹脂粒子の個数平均粒子径、Tg(ガラス転移点)、及びTm(軟化点)は、表6及び表7に示すとおりであった。例えば、分散液A−1に含まれる樹脂粒子に関しては、個数平均粒子径が60nm、Tgが59℃、Tmが122℃であった。
(分散液B−1〜B−6及びB−51〜B−54の調製)
温度計(熱電対)、窒素導入管、攪拌装置、及びコンデンサー(熱交換器)を備えた容量2Lのフラスコ内に、溶剤(イソブタノール)250gを入れた。続けて、フラスコ内に窒素ガスを流しながら、スチレン155gと、アクリル酸ブチル75gと、所定量の過酸化物重合開始剤(t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート:アルケマ吉富株式会社製)とをさらにフラスコ内に加えた。この時(昇温前)の過酸化物重合開始剤の添加量は、表6及び表7の各々における項目「重合開始剤」の「昇温前(単位:g)」に示すとおりであった。例えば、分散液B−1の調製では、表6に示すように、過酸化物重合開始剤(t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート)をフラスコ内に14g添加した。
続けて、フラスコ内容物を95℃(重合温度)まで昇温させて3時間攪拌した。その後、過酸化物重合開始剤(t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート:アルケマ吉富株式会社製)12gをさらにフラスコ内に加えて、フラスコ内容物を3時間攪拌した。続けて、高温(140℃)かつ減圧(10kPa)環境下でフラスコ内容物を乾燥させて、溶剤を除去した。続けて、フラスコ内容物を解砕して、粗粉砕物を得た。
続けて、機械式粉砕機(フロイント・ターボ株式会社製「ターボミルT250」)を用いて、設定粒子径10μmの条件で上記粗粉砕物をさらに粉砕して、微粉砕物を得た。続けて、得られた微粉砕物100gと、所定量のカチオン界面活性剤(花王株式会社製「コータミン24P」、ラウリルトリメチルアンモニウムクロライド25質量%水溶液)と、0.1N−水酸化ナトリウム水溶液25gとを混合して、分散液を得た。この時の界面活性剤の添加量は、表6及び表7の各々における「界面活性剤(単位:g)」に示すとおりであった。例えば、分散液B−1の調製では、表6に示すように、カチオン界面活性剤(コータミン24P)の量は1.65gであった。
続けて、得られた分散液にイオン交換水を加えて、全量400gのスラリーを調製した。そして、得られたスラリーを、ステンレス製の耐圧丸底容器に投入した。続けて、高速剪断乳化装置(エム・テクニック株式会社製「クレアミックスCLM−2.2S」)を用いて、高温(140℃)かつ高圧(0.5MPa)環境下、ローター回転速度20000rpmの条件で、スラリーを30分間剪断分散した。その後、容器内容物を5℃/分の速度で冷却しながら、容器内の温度が50℃になるまで、ローター回転速度15000rpmの条件で容器内容物を攪拌して、固形分濃度30質量%で樹脂粒子(正帯電性の電荷制御剤を含有しないスチレン−アクリル酸系樹脂から実質的に構成される粒子)を含む分散液(分散液B−1〜B−6及びB−51〜B−54)を得た。得られた分散液B−1〜B−6及びB−51〜B−54の各々に関して、樹脂粒子の個数平均粒子径、Tg(ガラス転移点)、及びTm(軟化点)は、表6及び表7に示すとおりであった。例えば、分散液B−1に含まれる樹脂粒子に関しては、個数平均粒子径が60nm、Tgが59℃、Tmが122℃であった。
(分散液Cの調製)
温度計(熱電対)、窒素導入管、攪拌装置、及びコンデンサー(熱交換器)を備えた容量2Lのフラスコ内に、溶剤(イソブタノール)250gと、メタクリル酸2−(ジエチルアミノ)エチル6gと、p−トルエンスルホン酸メチル6gとを入れた。続けて、窒素雰囲気中、温度80℃で、フラスコ内容物を1時間反応(4級化反応)させた。続けて、フラスコ内に窒素ガスを流しながら、アクリル酸ブチル230gと、過酸化物重合開始剤(t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート:アルケマ吉富株式会社製)12gとを、さらにフラスコ内に加えた。
続けて、フラスコ内容物を95℃(重合温度)まで昇温させて3時間攪拌した。その後、過酸化物重合開始剤(t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート:アルケマ吉富株式会社製)12gをさらにフラスコ内に加えて、フラスコ内容物を3時間攪拌した。続けて、高温(140℃)かつ減圧(10kPa)環境下でフラスコ内容物を乾燥させて、溶剤を除去した。続けて、フラスコ内容物を解砕して、粗粉砕物を得た。
続けて、機械式粉砕機(フロイント・ターボ株式会社製「ターボミルT250」)を用いて、設定粒子径10μmの条件で上記粗粉砕物をさらに粉砕して、微粉砕物を得た。続けて、得られた微粉砕物100gと、カチオン界面活性剤(花王株式会社製「コータミン24P」、ラウリルトリメチルアンモニウムクロライド25質量%水溶液)1.00gと、0.1N−水酸化ナトリウム水溶液25gとを混合して、分散液を得た。
続けて、得られた分散液にイオン交換水を加えて、全量400gのスラリーを調製した。そして、得られたスラリーを、ステンレス製の耐圧丸底容器に投入した。続けて、高速剪断乳化装置(エム・テクニック株式会社製「クレアミックスCLM−2.2S」)を用いて、高温(140℃)かつ高圧(0.5MPa)環境下、ローター回転速度20000rpmの条件で、スラリーを30分間剪断分散した。その後、容器内容物を5℃/分の速度で冷却しながら、容器内の温度が50℃になるまで、ローター回転速度15000rpmの条件で容器内容物を攪拌して、固形分濃度30質量%で樹脂粒子(正帯電性の電荷制御剤を含有するアクリル酸系樹脂から実質的に構成される粒子)を含む分散液(分散液C)を得た。得られた分散液Cに含まれる樹脂粒子に関して、個数平均粒子径は100nm、Tgは59℃、Tmは122℃であった。
(分散液D−1の調製)
温度計(熱電対)、窒素導入管、攪拌装置、及びコンデンサー(熱交換器)を備えた容量2Lのフラスコ内に、溶剤(イソブタノール)250gを入れた。続けて、フラスコ内に窒素ガスを流しながら、アクリル酸ブチル230gと、過酸化物重合開始剤(t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート:アルケマ吉富株式会社製)24gとをさらにフラスコ内に加えた。
続けて、フラスコ内容物を95℃(重合温度)まで昇温させて3時間攪拌した。その後、過酸化物重合開始剤(t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート:アルケマ吉富株式会社製)12gをさらにフラスコ内に加えて、フラスコ内容物を3時間攪拌した。続けて、高温(140℃)かつ減圧(10kPa)環境下でフラスコ内容物を乾燥させて、溶剤を除去した。続けて、フラスコ内容物を解砕して、粗粉砕物を得た。
続けて、機械式粉砕機(フロイント・ターボ株式会社製「ターボミルT250」)を用いて、設定粒子径10μmの条件で上記粗粉砕物をさらに粉砕して、微粉砕物を得た。続けて、得られた微粉砕物100gと、カチオン界面活性剤(花王株式会社製「コータミン24P」、ラウリルトリメチルアンモニウムクロライド25質量%水溶液)2.00gと、0.1N−水酸化ナトリウム水溶液25gとを混合して、分散液を得た。
続けて、得られた分散液にイオン交換水を加えて、全量400gのスラリーを調製した。そして、得られたスラリーを、ステンレス製の耐圧丸底容器に投入した。続けて、高速剪断乳化装置(エム・テクニック株式会社製「クレアミックスCLM−2.2S」)を用いて、高温(140℃)かつ高圧(0.5MPa)環境下、ローター回転速度20000rpmの条件で、スラリーを30分間剪断分散した。その後、容器内容物を5℃/分の速度で冷却しながら、容器内の温度が50℃になるまで、ローター回転速度15000rpmの条件で容器内容物を攪拌して、固形分濃度30質量%で樹脂粒子(正帯電性の電荷制御剤を含有しないアクリル酸系樹脂から実質的に構成される粒子)を含む分散液(分散液D−1)を得た。得られた分散液D−1に含まれる樹脂粒子に関して、個数平均粒子径は50nm、Tgは57℃、Tmは103℃であった。
(分散液D−2の調製)
ビスフェノールAプロピレンオキサイド付加物30モル部と、ビスフェノールAエチレンオキサイド付加物20モル部と、フマル酸44モル部と、トリメリット酸6モル部とを、反応容器に入れた。続けて、窒素雰囲気中、触媒(酸化ジブチル錫)の存在下で容器内容物を反応させて、数平均分子量(Mn)3000、質量平均分子量(Mw)8500、Mw/Mn(分子量分布)2.8、Tg(ガラス転移点)59℃、Tm(軟化点)103℃のポリエステル樹脂を得た。
上記のようにして得られたポリエステル樹脂1300gを、温度調節用のジャケットを備えた混合装置(プライミクス株式会社製「T.K.ハイビスディスパーミックスHM−3D−5型」)の容器に投入し、温度120℃の条件で容器内容物を溶融混練した。続けて、トリエタノールアミン100gと、濃度25質量%のアニオン界面活性剤(花王株式会社製「エマール(登録商標)0」、成分:ラウリル硫酸ナトリウム)水溶液80gとを、容器内に加えて、プラネタリー回転速度50rpmの条件で容器内容物を15分間捏和した。続けて、温度98℃のイオン交換水2870gを50g/分の速度で容器内に投入し、ポリエステル樹脂の乳化液を得た。その後、容器内の温度が50℃になるまで容器内容物を5℃/分の速度で冷却して、固形分濃度30質量%で樹脂粒子(正帯電性の電荷制御剤を含有しないポリエステル樹脂から実質的に構成される粒子)を含む分散液(分散液D−2)を得た。得られた分散液D−2に含まれる樹脂粒子に関して、個数平均粒子径は50nm、Tgは59℃、Tmは103℃であった。
(シェル層の形成)
温度計及び攪拌羽根を備えた容量1Lの3つ口フラスコを準備し、フラスコをウォーターバスにセットした。そして、フラスコ内にイオン交換水300mLを入れて、ウォーターバスを用いてフラスコ内の温度を30℃に保った。続けて、フラスコ内に塩酸を加えて、フラスコ内容物のpHを4に調整した。
続けて、フラスコ内に、前述の手順で作製したトナーコア(粉体)300gと、第1シェル材料(トナーT−1〜T−78の各々に定められた、表1〜表5に示される分散液A−1〜A−6、A−21〜A−25、及びCのいずれか)と、第2シェル材料(トナーT−1〜T−78の各々に定められた、表1〜表5に示される分散液B−1〜B−6、B−51〜B−54、D−1、及びD−2のいずれか)とを、それぞれ表1〜表5に示される量だけ添加した。例えば、トナーT−1の製造では、表1に示すように、トナーコア300gと、分散液A−2(固形分濃度30質量%)36gと、分散液B−5(固形分濃度30質量%)4gとを、それぞれフラスコ内に添加した。続けて、フラスコ内容物を十分攪拌した。その結果、フラスコ内にトナーコアの分散液が得られた。
フラスコ内にイオン交換水300mLを追加し、フラスコ内容物を回転速度100rpmで攪拌しながら2℃/分の速度で65℃まで昇温させた。そして、フラスコ内の温度が65℃になった時点で、濃度0.5モル/Lのリン酸水素二ナトリウム水溶液20gと濃度10質量%のアニオン界面活性剤(花王株式会社製「エマール0」、成分:ラウリル硫酸ナトリウム)水溶液10gとの混合液(温度65℃)をフラスコ内に加えた。さらに、フラスコ内容物を回転速度100rpmで攪拌しながら1.0℃/分の速度でフラスコ内容物の昇温を続けて、トナーの円形度が0.965に達した時点でフラスコ内容物の昇温を止めた。その後、フラスコ内に冷水を入れて、フラスコ内容物を室温(約25℃)まで急冷し、フラスコ内容物のpHを7に調整(中和)した。その結果、トナー母粒子の分散液が得られた。
(洗浄)
上記のようにして得られたトナー母粒子の分散液を、ブフナー漏斗を用いてろ過(固液分離)して、ウェットケーキ状のトナー母粒子を得た。その後、得られたウェットケーキ状のトナー母粒子をイオン交換水に再分散させた。分散とろ過とを合計6回繰り返して、トナー母粒子を洗浄した。得られたトナー母粒子に関して、体積平均粒子径(MV)は6μm、離型剤含有量は5質量%であった。離型剤の量は、示差走査熱量計(セイコーインスツル株式会社製「DSC−6220」)を用いて測定した吸熱ピークから求めた。
(乾燥)
続けて、洗浄されたトナー母粒子を、濃度50質量%のエタノール水溶液に分散させた。これにより、トナー母粒子のスラリーが得られた。続けて、連続式表面改質装置(フロイント産業株式会社製「コートマイザー(登録商標)」)を用いて、熱風温度45℃かつブロアー風量2m3/分の条件で、スラリー中のトナー母粒子を乾燥させた。また、乾燥時に、トナー母粒子100質量部に対して、第1外添剤(日本アエロジル株式会社製「AEROSIL(登録商標)REA200」:シリカ粒子)0.2質量部を含むエタノールを噴霧した。その結果、第1外添剤を備えるトナー母粒子(以下、第1外添トナー粒子と記載する)が得られた。
(外添)
上記乾燥後、第1外添トナー粒子にさらなる外添を行った。詳しくは、FMミキサー(日本コークス工業株式会社製「FM−10C/I」)を用いて、第1外添トナー粒子100質量部と、第2外添剤(個数平均1次粒子径20nmのシリカ粒子(日本アエロジル株式会社製「AEROSIL90G」)の表面をシリコーンオイル及びアミノシランで処理した正帯電性シリカ粒子)0.4質量部とを5分間混合することにより、トナー母粒子の表面に第2外添剤(シリカ粒子)を付着させた。その後、得られたトナーを、300メッシュ(目開き48μm)の篩を用いて篩別した。その結果、多数のトナー粒子を含むトナー(トナーT−1〜T−78)が得られた。
上記のようにして得られたトナーT−1〜T−78の各々について、走査型電子顕微鏡(SEM)(日本電子株式会社製「JSM−6700F」)を用いて、シェル層に含まれる第1樹脂粒子(電荷制御剤を含有する樹脂粒子)及び第2樹脂粒子(電荷制御剤を含有しない樹脂粒子)の各々の個数平均粒子径(それぞれ1次粒子の円相当径の個数平均値)を測定した。その測定結果は、表1〜表5に示すとおりであった。第1樹脂粒子及び第2樹脂粒子の各々の個数平均粒子径は、添加時の粒子径(表6及び表7参照)と同じであった。例えば、トナーT−1に関しては、表1に示すように、第1樹脂粒子の個数平均粒子径が100nm、第2樹脂粒子の個数平均粒子径が50nm、粒子径差(第1樹脂粒子の個数平均粒子径から第2樹脂粒子の個数平均粒子径を引いた粒子径差)が+50nmであった。
[評価方法]
各試料(トナーT−1〜T−78)の評価方法は、以下の通りである。
(耐熱ストレス性)
評価機として、レオメーター(株式会社アントンパール製「MCR−301」)を用いた。図3に、この評価機(レオメーター)の概要を示す。以下、図3を参照して、耐熱ストレス性の評価方法について説明する。
図3に示すように、評価機20は、アルミニウム製の圧子21と、ステンレス(SUS)製のプレート22と、加熱装置23とを備える。圧子21の形状は、面積0.785cm2の底面F10を有する円柱である。プレート22は固定されており、圧子21はモーター等により駆動されて移動する。プレート22の上面に対して直交する方向(Z方向)に圧子21が変位することで、圧子21の底面F10とプレート22の上面との距離が変わる。圧子21の底面F10とプレート22の上面との間にトナー粒子24を挟み、圧子21をプレート22に近づける(Z2側に変位させる)ことで、トナー粒子24に所定の圧力を加えることができる。また、圧子21は、モーター等により駆動されてZ軸を回転軸として回転する。
耐熱ストレス性の評価では、周波数1Hzで0.01°ずつ回転する圧子21によりトナー粒子24に一定の押圧荷重をかけながらトナー粒子24の温度を2℃/分で上昇させた。そして、トナー粒子24に3.0N/cm2の押圧荷重をかけた場合に圧子21の回転トルクが5mN・mになる温度を測定した。回転トルクは、トナー粒子が溶け始めると5mN・m以上に上昇し、トナー粒子がある程度溶けると、下がり始める傾向がある。回転トルクが5mN・mになる温度が、57℃以上であれば○(良い)と評価し、57℃未満であれば×(良くない)と評価した。
(評価用キャリアの作製)
MnO換算で39.7モル%、MgO換算で9.9モル%、Fe23換算で49.6モル%、SrO換算で0.8モル%になるように各原材料を配合し、水を加え、湿式ボールミルで10時間かけて粉砕した後、混合した。続けて、得られた混合物を、乾燥した後、950℃で4時間保持した。
続けて、混合物を湿式ボールミルで24時間かけて粉砕してスラリーを調製した。続けて、スラリーを造粒した後、乾燥した。続けて、乾燥した造粒物を、酸素濃度2%の雰囲気中で1270℃で6時間保持した後、解砕した。その後、粒度調整を行うことで、3000(103/4π・A/m)の印加磁場での飽和磁化が70Am2/kgである平均粒子径35μmのマンガンフェライト粒子(キャリアコア)が得られた。
続けて、ポリアミドイミド樹脂(無水トリメリット酸と4,4’−ジアミノジフェニルメタンとの共重合体)をメチルエチルケトンに溶解させて、樹脂溶液を調製した。続けて、フッ素樹脂(FEP:テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体)と、酸化ケイ素(樹脂全体量の2質量%)とを上記樹脂溶液に分散させて、固形分換算で150gとなる量のキャリアコート液を得た。得られたキャリアコート液に関して、ポリアミドイミド樹脂とFEPとの質量比(ポリアミドイミド樹脂:FEP)は2:8であり、樹脂溶液の固形分濃度は10質量%であった。
続けて、転動流動層コーティング装置(岡田精工株式会社製「スピラコータ(登録商標)SP−25」)を用いて、上記マンガンフェライト粒子(キャリアコア)10kgを上記キャリアコート液で被覆した。その後、樹脂で被覆されたマンガンフェライト粒子を220℃で1時間焼成した。その後、得られた焼成物を、冷却した後、解砕して、樹脂被覆量3質量%の樹脂被覆フェライトキャリア(評価用キャリア)を得た。
(評価用現像剤の調製)
温度25℃かつ湿度50%RHの環境下、試料(トナー)0.5gと、上述のようにして調製した評価用キャリア10gとを、容量20mLのポリエチレン製容器に入れた。そして、ホソカワミクロン株式会社製のナウターミキサー(登録商標)を用いて、回転速度100rpmで容器内容物を所定の時間だけ混合して、評価用現像剤(2成分現像剤)を調製した。
(帯電安定性の評価)
上記評価用現像剤の調製における混合時間が、3分間、30分間、及び60分間である場合の各々について、得られた各評価用現像剤の帯電量(μC/g)を、Q/mメーター(トレック社製「210HS−2」)を用いて測定した。具体的には、得られた評価用現像剤をQ/mメーターの測定セルに投入し、投入された評価用現像剤のうちトナーのみをステンレス製の篩を介して10秒間吸引した。そして、式「吸引されたトナーの総電気量(単位:μC)/吸引されたトナーの量(単位:g)」に基づいて、各評価用現像剤における試料(トナー)の帯電量(単位:μC/g)を算出した。以下の基準に従い、試料(トナー)の帯電安定性を評価した。異なる混合時間(3分間、30分間、60分間)で調製された各評価用現像剤の帯電量のうち、最小帯電量と最大帯電量との差が、3μC/g以下であれば○(良い)と評価し、3μC/gを超えれば×(良くない)と評価した。
(低温定着性の評価)
評価機として、定着器を備えるカラー複合機(京セラドキュメントソリューションズ株式会社製「TASKalfa5550ci」)を用いた。定着器の加熱ロールの表面材料は、膜厚30μm±10μm、面粗度(Ra:算術平均粗さ)5μmのPFA(テトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体)製チューブであった。前述の方法(ナウターミキサーの混合時間:30分間)で調製された評価用現像剤を評価機の現像器に投入し、試料(補給用トナー)を評価機のトナーコンテナに投入した。
上記評価機を用いて、温度25℃かつ湿度50%RHの環境下、トナー載せ量15mgの条件で、面積25cm2のソリッド画像を記録媒体(A4サイズの普通紙:横送り)に形成した。そして、形成された画像を用いて、試料(トナー)の定着性を評価した。具体的には、上述のようにして画像が形成された紙を、線速300mm/秒の条件で、評価機の定着器に通した。続けて、トナー定着の有無、及びオフセット発生の有無を確認した。こうした試験により、定着温度範囲80℃〜200℃において、トナーを紙に定着できる最低温度(最低定着温度)と、オフセットが発生しない最高温度(最高定着温度)とを、それぞれ測定した。定着器の定着温度(加熱ロールの表面温度)は80℃から5℃ずつ上昇させた。測定された最低定着温度及び最高定着温度に基づいて、定着可能範囲(=最高定着温度−最低定着温度)を求めた。最高定着温度の測定において、オフセット発生の有無は、目視により確認し、定着ローラーにトナーが付着した場合にオフセットが発生したと判断した。最低定着温度の測定において、定着できたか否かは、以下に示すような折擦り試験(折り目のトナー剥がれ長の測定)で確認した。画像が形成された面が内側となるように紙を折り曲げ、布帛で覆った1kgの分銅を用いて、折り目上を5往復摩擦した。続けて、紙を広げ、紙の折り曲げ部(ソリッド画像が形成された部分)を観察した。そして、折り曲げ部のトナー剥がれの長さ(剥がれ長)を測定した。剥がれ長が1mm未満となる定着温度のうちの最低温度を、最低定着温度とした。
○(良い):最低定着温度が100℃以下であり、かつ定着可能範囲が80℃以上であった。
×(良くない):最低定着温度が100℃を超えるか、又は定着可能範囲が80℃未満であった。
[評価結果]
トナーT−1〜T−78の各々についての評価結果を、表8〜表10に示す。
Figure 0006358228
Figure 0006358228
Figure 0006358228
トナーT−1〜T−15(実施例1〜15に係るトナー)はそれぞれ、前述の基本構成を有していた。詳しくは、実施例1〜15に係るトナーではそれぞれ、シェル層が、正帯電性の電荷制御剤を含有する第1樹脂粒子と、正帯電性の電荷制御剤を含有しない第2樹脂粒子とを含んでいた。表1に示されるように、第1樹脂粒子の個数平均粒子径は60nm以上100nm以下であり、第2樹脂粒子の個数平均粒子径は10nm以上50nm以下であり、第1−第2粒子径差(第1樹脂粒子の個数平均粒子径から第2樹脂粒子の個数平均粒子径を引いた粒子径差)は+20nm以上+50nm以下であった。また、表1、表6、及び表7に示されるように、第1樹脂粒子の軟化点(Tm)は第2樹脂粒子の軟化点(Tm)よりも高かった。また、表1に示されるように、第1樹脂比率R1(第1樹脂量MAと第2樹脂量MBとの合計に対する第1樹脂量MAの比率)は0.7以上0.9以下であった。
表8に示されるように、実施例1〜15に係るトナーに関しては、帯電安定性と、定着性と、耐熱ストレス性との全ての評価で、良い結果が得られた。実施例1〜15に係るトナーはそれぞれ、低温定着性、耐熱ストレス性、及び帯電安定性に優れていた。また、実施例1〜15に係るトナーではそれぞれ、シェル被覆率RSが90%以上であった。
トナーT−21、T−24、T−25、T−27、T−30、T−31、T−33、T−36、及びT−37(比較例1、4、5、7、10、11、13、16、及び17に係るトナー)はそれぞれ、実施例1〜15に係るトナーと比較して、低温定着性に劣っていた。この理由は、これら各トナーでは、第1−第2粒子径差が大き過ぎて、第2樹脂粒子が圧壊点として機能しにくくなったためであると推察される。
トナーT−22、T−28、及びT−34(比較例2、8、及び14に係るトナー)はそれぞれ、実施例1〜15に係るトナーと比較して、耐熱ストレス性に劣っていた。この理由は、これら各トナーでは、第2樹脂粒子の個数平均粒子径が小さ過ぎて、シェル層の十分な強度を確保できなかったと推察される。
トナーT−26、T−32、T−38、T−42、T−46、及びT−50(比較例6、12、18、20、24、及び28に係るトナー)はそれぞれ、実施例1〜15に係るトナーと比較して、低温定着性に劣っていた。この理由は、これら各トナーでは、第2樹脂粒子の個数平均粒子径が大き過ぎて、第2樹脂粒子が圧壊点として機能しにくくなったためであると推察される。
トナーT−23、T−29、T−43、T−47、及びT−51(比較例3、9、21、25、及び29に係るトナー)はそれぞれ、実施例1〜15に係るトナーと比較して、帯電安定性に劣っていた。この理由は、これら各トナーでは、第1樹脂粒子の個数平均粒子径が小さ過ぎて、正帯電性を有する第1樹脂粒子とキャリア粒子とによる摩擦帯電が不安定になったためであると推察される。
トナーT−35(比較例15に係るトナー)は、実施例1〜15に係るトナーと比較して、耐熱ストレス性に劣っていた。この理由は、トナーT−35では、第1樹脂粒子の個数平均粒子径が小さ過ぎて、シェル層の十分な強度を確保できなかったと推察される。
トナーT−41、T−44、T−45、T−48、T−49、及びT−52(比較例19、22、23、26、27、及び30に係るトナー)はそれぞれ、実施例1〜15に係るトナーと比較して、帯電安定性に劣っていた。この理由は、これら各トナーでは、第1−第2粒子径差が小さ過ぎて、正帯電性を有する第1樹脂粒子とキャリア粒子とによる摩擦帯電が不安定になったためであると推察される。
トナーT−61、T−62、T−65、及びT−66(比較例31、32、35、及び36に係るトナー)はそれぞれ、実施例1〜15に係るトナーと比較して、低温定着性に劣っていた。この理由は、これら各トナーでは、第1樹脂比率R1が大き過ぎて、シェル層中の圧壊点の数又は面積が不十分であったためであると推察される。
トナーT−63、T−64、T−67、及びT−68(比較例33、34、37、及び38に係るトナー)はそれぞれ、実施例1〜15に係るトナーと比較して、帯電安定性に劣っていた。この理由は、これら各トナーでは、第1樹脂比率R1が小さ過ぎて、正帯電性を有する第1樹脂粒子とキャリア粒子とによる摩擦帯電が不安定になったためであると推察される。
トナーT−71〜T−78(比較例39〜46に係るトナー)はそれぞれ、実施例1〜15に係るトナーと比較して、帯電安定性に劣っていた。この理由は、これら各トナーでは、第1樹脂粒子の個数平均粒子径が第2樹脂粒子の個数平均粒子径よりも小さくて、正帯電性を有する第1樹脂粒子とキャリア粒子とによる摩擦帯電が不安定になったためであると推察される。
本発明に係る静電潜像現像用トナーは、例えば複写機、プリンター、又は複合機において画像を形成するために用いることができる。
10 トナー母粒子
11 トナーコア
12 シェル層
12a 第1樹脂粒子
12b 第2樹脂粒子

Claims (7)

  1. コアと、前記コアの表面を覆うシェル層とを備えるトナー粒子を、複数含む静電潜像現像用トナーであって、
    前記シェル層は、個数平均粒子径60nm以上100nm以下の第1樹脂粒子と、個数平均粒子径10nm以上50nm以下の第2樹脂粒子とを含み、
    前記第1樹脂粒子の個数平均粒子径から前記第2樹脂粒子の個数平均粒子径を引いた粒子径差は+20nm以上+50nm以下であり、
    前記第1樹脂粒子は電荷制御剤を含有し、
    前記第1樹脂粒子の軟化点は前記第2樹脂粒子の軟化点よりも高く、
    前記第1樹脂粒子の質量と前記第2樹脂粒子の質量との合計に対する前記第1樹脂粒子の質量の比率は0.7以上0.9以下であ
    前記コアはポリエステル樹脂を含有し、前記第1樹脂粒子はスチレン−アクリル酸系樹脂を含有し、
    前記スチレン−アクリル酸系樹脂は、(メタ)アクリロイル基含有4級アンモニウム化合物に由来する繰返し単位を有する、静電潜像現像用トナー。
  2. 前記第2樹脂粒子はスチレン−アクリル酸系樹脂を含有する、請求項1に記載の静電潜像現像用トナー。
  3. 前記コアの表面全域のうち、前記第1樹脂粒子及び前記第2樹脂粒子の少なくとも一方が覆う領域の面積割合は90%以上100%以下である、請求項1又は2に記載の静電潜像現像用トナー。
  4. 前記第1樹脂粒子の軟化点から前記第2樹脂粒子の軟化点を引いた温度差は+10℃以上である、請求項1〜のいずれか一項に記載の静電潜像現像用トナー。
  5. 前記第1樹脂粒子の軟化点は120℃以上130℃以下であり、前記第2樹脂粒子の軟化点は100℃以上110℃以下である、請求項1〜のいずれか一項に記載の静電潜像現像用トナー。
  6. 前記トナー粒子は、外添剤として無機粒子をさらに備える、請求項1〜のいずれか一項に記載の静電潜像現像用トナー。
  7. コアと、前記コアの表面を覆うシェル層とを備えるトナー粒子を、複数含む静電潜像現像用トナーであって、
    前記シェル層は、個数平均粒子径60nm以上100nm以下の第1樹脂粒子と、個数平均粒子径10nm以上50nm以下の第2樹脂粒子とを含み、
    前記第1樹脂粒子の個数平均粒子径から前記第2樹脂粒子の個数平均粒子径を引いた粒子径差は+20nm以上+50nm以下であり、
    前記第1樹脂粒子は電荷制御剤を含有し、
    前記第1樹脂粒子の軟化点は前記第2樹脂粒子の軟化点よりも高く、
    前記第1樹脂粒子の質量と前記第2樹脂粒子の質量との合計に対する前記第1樹脂粒子の質量の比率は0.7以上0.9以下であり、
    前記第2樹脂粒子はポリエステル樹脂を含有する、静電潜像現像用トナー。
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