JP6460017B2 - 静電潜像現像用トナー - Google Patents
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Description
静電潜像現像用トナーが、トナーコア及びシェル層を備えるトナー粒子を、複数含む。シェル層は、ガラス転移点50℃以上100℃以下かつ円形度0.55以上0.75以下の樹脂粒子の集合体から主に構成される樹脂膜を含む。樹脂膜が2種以上の樹脂粒子を含む場合には、それら樹脂粒子のうち、50質量%以上の樹脂粒子が、ガラス転移点50℃以上100℃以下かつ円形度0.55以上0.75以下の樹脂粒子(以下、膜化耐熱粒子と記載する)である。また、外添剤がない状態のトナーを、濃度5質量%RuO4(四酸化ルテニウム)水溶液の蒸気中に20分間暴露した場合に、トナー母粒子(外添剤がない状態のトナー粒子)の表面領域のうち50%以上80%以下の領域が、Ruで染色される。以下、外添剤がない状態のトナーを、濃度5質量%RuO4水溶液の蒸気中に20分間暴露した場合に、Ru(ルテニウム)で染色されるトナー母粒子の表面領域の割合を、Ru染色率と記載する。また、トナーコアの表面を覆う樹脂膜を構成する樹脂粒子を、シェル粒子と記載する。
文献A:甲本忠史、ゴム協会誌、1995年、第68巻、第12号
トナー粒子(特に、トナーコア及びシェル層)を構成する熱可塑性樹脂としては、例えば、スチレン系樹脂、アクリル酸系樹脂(より具体的には、アクリル酸エステル重合体又はメタクリル酸エステル重合体等)、オレフィン系樹脂(より具体的には、ポリエチレン樹脂又はポリプロピレン樹脂等)、塩化ビニル樹脂、ポリビニルアルコール、ビニルエーテル樹脂、N−ビニル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、又はウレタン樹脂が好ましい。また、これら各樹脂の共重合体、すなわち上記樹脂中に任意の繰返し単位が導入された共重合体(より具体的には、スチレン−アクリル酸系樹脂又はスチレン−ブタジエン系樹脂等)も、トナー粒子を構成する熱可塑性樹脂として好ましい。
(結着樹脂)
トナーコアでは、一般的に、成分の大部分(例えば、85質量%以上)を結着樹脂が占める。このため、結着樹脂の性質がトナーコア全体の性質に大きな影響を与えると考えられる。結着樹脂として複数種の樹脂を組み合わせて使用することで、結着樹脂の性質(より具体的には、水酸基価、酸価、Tg、又はTm等)を調整することができる。結着樹脂がエステル基、水酸基、エーテル基、酸基、又はメチル基を有する場合には、トナーコアはアニオン性になる傾向が強くなり、結着樹脂がアミノ基又はアミド基を有する場合には、トナーコアはカチオン性になる傾向が強くなる。トナーコアとシェル層との結合性(反応性)を高めるためには、結着樹脂の水酸基価及び酸価の少なくとも一方が10mgKOH/g以上であることが好ましい。
トナーコアは、着色剤を含有してもよい。着色剤としては、トナーの色に合わせて公知の顔料又は染料を用いることができる。トナーを用いて高画質の画像を形成するためには、着色剤の量が、結着樹脂100質量部に対して、1質量部以上20質量部以下であることが好ましい。
トナーコアは、離型剤を含有していてもよい。離型剤は、例えば、トナーの定着性又は耐オフセット性を向上させる目的で使用される。トナーコアのアニオン性を強めるためには、アニオン性を有するワックスを用いてトナーコアを作製することが好ましい。トナーの定着性又は耐オフセット性を向上させるためには、離型剤の量は、結着樹脂100質量部に対して、1質量部以上30質量部以下であることが好ましい。
トナーコアは、電荷制御剤を含有していてもよい。電荷制御剤は、例えば、トナーの帯電安定性又は帯電立ち上がり特性を向上させる目的で使用される。トナーの帯電立ち上がり特性は、短時間で所定の帯電レベルにトナーを帯電可能か否かの指標になる。
トナーコアは、磁性粉を含有していてもよい。磁性粉の材料としては、例えば、強磁性金属(より具体的には、鉄、コバルト、ニッケル、又はこれら金属の1種以上を含む合金等)、強磁性金属酸化物(より具体的には、フェライト、マグネタイト、又は二酸化クロム等)、又は強磁性化処理が施された材料(より具体的には、熱処理により強磁性が付与された炭素材料等)を好適に使用できる。1種類の磁性粉を単独で使用してもよいし、複数種の磁性粉を併用してもよい。
本実施形態に係るトナーは、前述の基本構成を有する。シェル層は、膜化耐熱粒子(ガラス転移点50℃以上100℃以下かつ円形度0.55以上0.75以下の樹脂粒子)の集合体から主に構成される樹脂膜を含む。膜化耐熱粒子を構成する樹脂としては、1種以上のビニル化合物を含む単量体の重合体が好ましく、1種以上の窒素含有ビニル化合物を含む単量体の重合体がより好ましい。
トナー母粒子の表面に、外添剤として無機粒子を付着させてもよい。例えば、トナー母粒子(詳しくは、複数のトナー母粒子を含む粉体)と外添剤(詳しくは、複数の外添剤粒子を含む粉体)とを一緒に攪拌することで、物理的な力でトナー母粒子の表面に外添剤が付着(物理的結合)する。外添剤は、例えばトナーの流動性又は取扱性を向上させるために使用される。トナーの流動性又は取扱性を向上させるためには、外添剤の量が、トナー母粒子100質量部に対して、0.5質量部以上10質量部以下であることが好ましい。また、トナーの流動性又は取扱性を向上させるためには、外添剤の粒子径は0.01μm以上1.0μm以下であることが好ましい。
以下、上記基本構成を有するトナーを製造する方法の一例について説明する。まず、トナーコアを準備する。続けて、液中にトナーコアとシェル材料とを入れる。均質なシェル層を形成するためには、シェル材料を含む液を攪拌するなどして、シェル材料を液に溶解又は分散させることが好ましい。続けて、液中でシェル材料を反応させて、トナーコアの表面にシェル層(硬化した樹脂層)を形成する。シェル層形成時におけるトナーコア成分(特に、結着樹脂及び離型剤)の溶解又は溶出を抑制するためには、水性媒体中でシェル層を形成することが好ましい。水性媒体は、水を主成分とする媒体(より具体的には、純水、又は水と極性媒体との混合液等)である。水性媒体は溶媒として機能してもよい。水性媒体中に溶質が溶けていてもよい。水性媒体は分散媒として機能してもよい。水性媒体中に分散質が分散していてもよい。水性媒体中の極性媒体としては、例えば、アルコール(より具体的には、メタノール又はエタノール等)を使用できる。水性媒体の沸点は約100℃である。
好適なトナーコアを容易に得るためには、凝集法又は粉砕法によりトナーコアを製造することが好ましく、粉砕法によりトナーコアを製造することがより好ましい。
イオン交換水に酸性物質(例えば、塩酸)を加えて、弱酸性(例えば、3以上5以下から選ばれるpH)の水性媒体を調製する。続けて、pHが調整された水性媒体に、トナーコアと、樹脂粒子のサスペンションとを添加する。樹脂粒子のサスペンションは、シェル材料に相当する。サスペンションに含まれる樹脂粒子は、例えば、1種以上のビニル化合物を含む単量体(例えば、スチレン、アクリル酸n−ブチル、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル、及び2−(メタクリロイルオキシ)エチルトリメチルアンモニウムクロライド)の重合体から実質的に構成される。樹脂粒子を構成する重合体のガラス転移点は50℃以上100℃以下である。サスペンションに含まれる樹脂粒子の円形度は0.75を超えていてもよい。
測定装置として、示差走査熱量計(セイコーインスツル株式会社製「DSC−6220」)を用いた。測定装置を用いて試料(例えば、樹脂)の吸熱曲線を測定することにより、試料のTg及びMpを求めた。具体的には、試料(例えば、樹脂)15mgをアルミ皿(アルミニウム製の容器)に入れて、そのアルミ皿を測定装置の測定部にセットした。また、リファレンスとして空のアルミ皿を使用した。吸熱曲線の測定では、測定部の温度を、測定開始温度10℃から150℃まで10℃/分の速度で昇温させた(RUN1)。その後、測定部の温度を150℃から10℃まで10℃/分の速度で降温させた。続けて、測定部の温度を再び10℃から150℃まで10℃/分の速度で昇温させた(RUN2)。RUN2により、試料の吸熱曲線(縦軸:熱流(DSC信号)、横軸:温度)を得た。得られた吸熱曲線から、試料のMp及びTgを読み取った。吸熱曲線中、融解熱による最大ピーク温度が試料のMp(融点)に相当する。また、吸熱曲線中、比熱の変化点(ベースラインの外挿線と立ち下がりラインの外挿線との交点)の温度(オンセット温度)が試料のTg(ガラス転移点)に相当する。
高化式フローテスター(株式会社島津製作所製「CFT−500D」)に試料(例えば、樹脂)をセットし、ダイス細孔径1mm、プランジャー荷重20kg/cm2、昇温速度6℃/分の条件で、1cm3の試料を溶融流出させて、試料のS字カーブ(横軸:温度、縦軸:ストローク)を求めた。続けて、得られたS字カーブから試料のTmを読み取った。S字カーブにおいて、ストロークの最大値をS1とし、低温側のベースラインのストローク値をS2とすると、S字カーブ中のストロークの値が「(S1+S2)/2」となる温度が、試料のTm(軟化点)に相当する。
(結晶性ポリエステル樹脂の合成)
温度計(熱電対)、脱水管、窒素導入管、及び攪拌装置を備えた容量5Lの4つ口フラスコ内に、1,4−ブタンジオール990g(84モル部)、1,6−ヘキサンジオール242g(11モル部)、フマル酸1480g(100モル部)、及び1,4−ベンゼンジオール2.5gを入れた。続けて、フラスコ内容物を攪拌しながらフラスコ内容物の温度を170℃まで昇温させて、その温度(170℃)で5時間、フラスコ内容物を反応させた。続けて、フラスコ内容物を昇温させて、温度210℃でさらに1.5時間(90分間)反応させた。続けて、減圧雰囲気(圧力8kPa)かつ温度210℃の条件で、フラスコ内容物を1時間反応させた。
温度計(熱電対)、脱水管、窒素導入管、及び攪拌装置を備えた容量5Lの4つ口フラスコ内に、ビスフェノールAプロピレンオキサイド付加物1700gと、ビスフェノールAエチレンオキサイド付加物650gと、n−ドデセニル無水コハク酸500gと、テレフタル酸400gと、酸化ジブチル錫4gとを入れた。続けて、温度220℃で9時間、フラスコ内容物を反応させた。続けて、減圧雰囲気(圧力8.3kPa)で、反応生成物(樹脂)のTmが所定の温度(124.8℃)になるまで、フラスコ内容物を反応させた。その結果、Tm(軟化点)124.8℃、Tg(ガラス転移点)57.2℃、酸価6mgKOH/g、水酸基価41mgKOH/g、Mw(質量平均分子量)109475、Mn(数平均分子量)3737の非結晶性ポリエステル樹脂が得られた。
温度計及び攪拌羽根を備えた容量1Lの3つ口フラスコをウォーターバスにセットし、フラスコ内に、温度30℃のイオン交換水875mLと、アニオン界面活性剤(花王株式会社製「ラテムルWX」、成分:ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸ナトリウム、固形分濃度:26質量%)75mLとを入れた。その後、ウォーターバスを用いてフラスコ内の温度を80℃に昇温させた。続けて、80℃のフラスコ内容物に2種類の液(第1の液及び第2の液)をそれぞれ5時間かけて滴下した。第1の液は、スチレン(S)18gと、アクリル酸n−ブチル(BA)2gと、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル(HEMA)0.1gと、2−(メタクリロイルオキシ)エチルトリメチルアンモニウムクロライド(METAC)(Alfa Aesar社製)0.1gとの混合液であった。第2の液は、過硫酸カリウム0.5gをイオン交換水30mLに溶かした溶液であった。続けて、フラスコ内の温度を80℃にさらに2時間保って、フラスコ内容物を重合させた。その結果、樹脂微粒子のサスペンションA−1(固形分濃度:2質量%)が得られた。
サスペンションA−2(固形分濃度:2質量%)の調製方法は、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル(HEMA)の使用量を0.1gから4.0gに変更した以外は、サスペンションA−1の調製方法と同じであった。
サスペンションA−3(固形分濃度:2質量%)の調製方法は、各材料の使用量に関して、スチレン(S)の18gを16gに、アクリル酸n−ブチル(BA)の2gを4gに、それぞれ変更した以外は、サスペンションA−1の調製方法と同じであった。
サスペンションA−4(固形分濃度:2質量%)の調製方法は、スチレン(S)の使用量を18gから20gに変更し、アクリル酸n−ブチル(BA)を使用しなかった以外は、サスペンションA−1の調製方法と同じであった。
サスペンションA−5(固形分濃度:2質量%)の調製方法は、アニオン界面活性剤(ラテムルWX)の使用量を75mLから30mLに変更し、過硫酸カリウムの使用量を0.5gから0.1gに変更した以外は、サスペンションA−1の調製方法と同じであった。
サスペンションA−6(固形分濃度:2質量%)の調製方法は、2−(メタクリロイルオキシ)エチルトリメチルアンモニウムクロライド(METAC)を使用しなかった以外は、サスペンションA−1の調製方法と同じであった。
サスペンションA−7(固形分濃度:2質量%)の調製方法は、第1の液として、前述のモノマー組成の混合液(S:18g、BA:2g、HEMA:0.1g、METAC:0.1g)の代わりに、2−(エトキシメチル)スチレン(EMST)20gと、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル(HEMA)0.1gと、2−(メタクリロイルオキシ)エチルトリメチルアンモニウムクロライド(METAC)(Alfa Aesar社製)0.1gとの混合液を使用した以外は、サスペンションA−1の調製方法と同じであった。
サスペンションA−8(固形分濃度:2質量%)の調製方法は、各材料の使用量に関して、スチレン(S)の18gを15gに、アクリル酸n−ブチル(BA)の2gを5gに、それぞれ変更した以外は、サスペンションA−1の調製方法と同じであった。
サスペンションA−9(固形分濃度:2質量%)の調製方法は、スチレン(S)18g及びアクリル酸n−ブチル(BA)2gの代わりに、4−クロロスチレン(CS)20gを使用した以外は、サスペンションA−1の調製方法と同じであった。
温度計、冷却管、窒素導入管、及び攪拌羽根を備えた容量1Lの3つ口フラスコ内に、イソブタノール90gと、スチレン(S)25gと、メタクリル酸メチル(MMA)65gと、アクリル酸n−ブチル(BA)10gと、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル(HEMA)0.1gと、2−(メタクリロイルオキシ)エチルトリメチルアンモニウムクロライド(METAC)(Alfa Aesar社製)30gと、2,2’−アゾビス(2−メチル−N−(2−ヒドロキシエチル)プロピオンアミド)(和光純薬工業株式会社製「VA−086」)6gとを入れた。続けて、窒素雰囲気、温度80℃の条件で、フラスコ内容物を3時間反応させた。その後、フラスコ内に2,2’−アゾビス(2−メチル−N−(2−ヒドロキシエチル)プロピオンアミド)(和光純薬工業株式会社製「VA−086」)3gを加えて、窒素雰囲気、温度80℃の条件で、フラスコ内容物をさらに3時間反応させて、重合体を含む液を得た。続けて、得られた重合体を含む液を、減圧雰囲気、温度150℃の条件で乾燥した。続けて、乾燥した重合体を解砕し、正帯電性樹脂を得た。
サスペンションB−2(固形分濃度:20質量%)の調製方法は、各材料の使用量に関して、スチレン(S)の25gを0g(使用しない)に、メタクリル酸メチル(MMA)の65gを100gに、アクリル酸n−ブチル(BA)の10gを12gに、2−(メタクリロイルオキシ)エチルトリメチルアンモニウムクロライド(METAC)(Alfa Aesar社製)の30gを0.1gに、それぞれ変更した以外は、サスペンションB−1の調製方法と同じであった。
FMミキサー(日本コークス工業株式会社製「FM−20B」)を用いて、第1結着樹脂(前述の手順で合成した結晶性ポリエステル樹脂)20質量部と、第2結着樹脂(前述の手順で合成した非結晶性ポリエステル樹脂)80質量部と、カーボンブラック(三菱化学株式会社製「MA100」)6質量部と、離型剤(エステルワックス:日油株式会社製「ニッサンエレクトール(登録商標)WEP−9」)4質量部とを混合した。
温度計及び攪拌羽根を備えた容量1Lの3つ口フラスコをウォーターバスにセットし、フラスコ内にイオン交換水300mLを入れた。その後、ウォーターバスを用いてフラスコ内の温度を30℃に保った。続けて、フラスコ内に希塩酸を加えて、フラスコ内容物のpHを4に調整した。続けて、フラスコ内に、シェル材料(各トナーに定められた、表1に示されるサスペンション)を、表1に示される量だけ加えた。例えば、トナーTA−1の製造では、シェル材料として、サスペンションA−1(固形分濃度:2質量%)を220g、フラスコ内に添加した。また、トナーTA−11の製造では、シェル材料として、サスペンションA−6(固形分濃度:2質量%)を220g、サスペンションB−1(固形分濃度:20質量%)を3g、それぞれフラスコ内に添加した。
上記のようにして得られた処理前粒子の分散液を、ブフナー漏斗を用いてろ過(固液分離)して、ウェットケーキ状の処理前粒子を得た。その後、得られたウェットケーキ状の処理前粒子をイオン交換水に再分散させた。さらに、分散とろ過とを5回繰り返して、処理前粒子を洗浄した。
続けて、得られた処理前粒子を、濃度50質量%のエタノール水溶液に分散させた。これにより、処理前粒子のスラリーが得られた。続けて、連続式表面改質装置(フロイント産業株式会社製「コートマイザー(登録商標)」)を用いて、熱風温度45℃かつブロアー風量2m3/分の条件で、スラリー中の処理前粒子を乾燥させた。
続けて、流動式混合機(日本コークス工業株式会社製「FM−20C/I」)を用いて、回転速度3000rpm、ジャケット温度20℃の条件で、処理前粒子に機械的処理(より詳しくは、剪断力を与える処理)を施した。この機械的処理の処理時間は、表1に示すとおりであった。例えば、トナーTA−1の製造では、処理前粒子に10分間の機械的処理を施した。また、トナーTA−9の製造では、処理前粒子に20分間の機械的処理を施した。処理前粒子に機械的処理を施すことにより、トナー母粒子の粉体が得られた。なお、トナーTB−5の製造では、機械的処理を行わず、処理前粒子をそのままトナー母粒子として用いた。
続けて、FMミキサー(日本コークス工業株式会社製「FM−10B」)を用いて、回転速度3000rpm、ジャケット温度20℃の条件で、トナー母粒子100質量部と、疎水性シリカ粒子(日本アエロジル株式会社製「AEROSIL(登録商標)RA−200H」)1.2質量部と、導電性酸化チタン粒子(チタン工業株式会社製「EC−100」)0.8質量部とを、2分間混合した。これにより、トナー母粒子の表面に外添剤が付着した。その後、200メッシュ(目開き75μm)の篩を用いて篩別を行った。その結果、多数のトナー粒子を含むトナー(表1に示されるトナーTA−1〜TA−16及びTB−1〜TB−7)が得られた。
試料(トナー)を常温硬化性のエポキシ樹脂中に分散させ、温度40℃の雰囲気で2日間硬化させて硬化物を得た。得られた硬化物を、四酸化ルテニウムを用いて染色した後、ダイヤモンドナイフを備えたウルトラミクロトーム(ライカマイクロシステムズ株式会社製「EM UC6」)を用いて切り出し、薄片試料を得た。続けて、得られた薄片試料の断面を、透過型電子顕微鏡(TEM)(日本電子株式会社製「JSM−6700F」)を用いて撮影した。
ノニオン界面活性剤(花王株式会社製「エマルゲン(登録商標)120」、成分:ポリオキシエチレンラウリルエーテル)の濃度2質量%水溶液100g中に試料(トナー)2.0gを分散させて、トナー分散液を得た。続けて、得られたトナー分散液に、超音波分散機(超音波工業株式会社製「ウルトラソニックミニウェルダーP128」、出力:100W、発振周波数:28kHz)を用いて超音波処理を施し、トナー母粒子から外添剤を除去した。続けて、超音波処理されたトナー分散液を、定性ろ紙(アドバンテック社製「FILTER PAPER 1号」)を用いて吸引濾過した。その後、イオン交換水50mLを加えるリスラリーと、吸引濾過とを、3回繰り返して、試料(トナー)のトナー母粒子(外添剤が除去されたトナー)を得た。
Ru染色率=100×RS/(RC+RS)
各試料(トナーTA−1〜TA−16及びTB−1〜TB−7)の評価方法は、以下のとおりである。
現像剤用キャリア(京セラドキュメントソリューションズ株式会社製の「TASKalfa5550ci」用キャリア)100質量部と、試料(トナー)10質量部とを、ボールミルを用いて30分間混合して、2成分現像剤を調製した。
試料(トナー)2gを容量20mLのポリエチレン製容器に入れて、その容器を、温度65℃に設定された恒温器内に3時間静置した。その後、恒温器から取り出したトナーを室温まで冷却して、評価用トナーを得た。
凝集度=100×篩別後のトナーの質量/篩別前のトナーの質量
トナーTA−1〜TA−16及びTB−1〜TB−7の各々について、耐熱保存性(凝集度)及び低温定着性(最低定着温度)を評価した結果を、表4に示す。
11 トナーコア
12 シェル層
12a 樹脂粒子
12b 樹脂粒子
Claims (6)
- コアと、前記コアの表面を覆うシェル層とを備えるトナー粒子を、複数含む静電潜像現像用トナーであって、
前記シェル層は、ガラス転移点50℃以上100℃以下かつ円形度0.55以上0.75以下の樹脂粒子の集合体から主に構成される樹脂膜を含み、
前記樹脂粒子を構成する樹脂は、下記式(1)で表される繰返し単位と、下記式(2)で表される繰返し単位と、下記式(3)で表される繰返し単位とを有し、
外添剤がない状態の前記トナーを、濃度5質量%RuO4水溶液の蒸気中に20分間暴露した後、電界放射型走査型電子顕微鏡を用いて撮影することによって得られた反射電子像において、外添剤がない状態の前記トナー粒子の表面領域は、第1領域と、前記第1領域よりも明るく表示される第2領域とからなり、
前記第2領域は、外添剤がない状態の前記トナー粒子の表面領域のうち50%以上80%以下の領域を占める、静電潜像現像用トナー。
R 31 、R 32 、及びR 33 は、各々独立して、水素原子、置換基を有してもよいアルキル基、又は置換基を有してもよいアルコキシ基を表し、
R 2 は、置換基を有してもよいアルキレン基を表す。)
R 46 及びR 47 は、各々独立して、水素原子、ハロゲン原子、又は置換基を有してもよいアルキル基を表す。)
R 6 は、置換基を有してもよいアルキレン基を表す。) - 前記樹脂膜を構成する前記樹脂粒子の前記集合体において、前記樹脂粒子同士は物理的な力で結合している、請求項1に記載の静電潜像現像用トナー。
- 前記コアは、結晶性ポリエステル樹脂及び非結晶性ポリエステル樹脂を含有する、請求項1又は2に記載の静電潜像現像用トナー。
- 前記トナー粒子は、外添剤として無機粒子をさらに備える、請求項1〜3のいずれか一項に記載の静電潜像現像用トナー。
- 前記式(1)で表される繰返し単位は、2−(メタクリロイルオキシ)エチルトリメチルアンモニウムクロライドに由来する繰返し単位である、請求項1〜4のいずれか一項に記載の静電潜像現像用トナー。
- 前記式(2)で表される繰返し単位は、2−(エトキシメチル)スチレンに由来する繰返し単位である、請求項1〜5のいずれか一項に記載の静電潜像現像用トナー。
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