以下、図面により実施の形態について説明する。なお、以下に示す実施形態はあくまでも例示に過ぎず、以下の実施形態で明示しない種々の変形や技術の適用を排除する意図はない。
[1.第一実施形態]
[1−1.装置構成]
本実施形態の排気浄化装置は、車両に搭載されたディーゼルエンジン(内燃機関)1に適用される。図1には、エンジン1に設けられる複数のシリンダ2のうちの一つを示すが、他のシリンダ2も同様の構成である。エンジン1のシリンダ2内には、頂面にキャビティが形成されたピストン3が設けられ、シリンダ2内を上下方向に往復摺動する。
シリンダ2上部のシリンダヘッドには、燃料噴射用の筒内噴射弁(インジェクタ)4が設けられる。筒内噴射弁4は、その先端部がシリンダ2の筒内空間に突出して設けられ、シリンダ2内に直接燃料を噴射する。筒内噴射弁4の基端部には燃料配管が接続され、この燃料配管から加圧された燃料が筒内噴射弁4に供給される。筒内噴射弁4からの燃料噴射量及びその噴射タイミングは、後述のエンジン制御装置40で制御される。
シリンダヘッドには、シリンダ2の筒内空間と連通する吸気ポート5及び排気ポート6が設けられ、これらの各ポート5,6を開閉するための吸気弁7及び排気弁8が設けられる。吸気ポート5の上流側にはインテークマニホールド9(以下、インマニ9という)が設けられ、インマニ9には吸気ポート5側へと流れる空気を一時的に溜めるためのサージタンク10が設けられる。インマニ9の上流端には、電子制御式のスロットルバルブ11を内蔵したスロットルボディ(図示略)が接続され、このスロットルバルブ11の開度(スロットル開度)に応じてインマニ9側へと流通する空気量が調節される。なお、スロットル開度は、エンジン制御装置40で制御される。スロットルボディの上流側には吸気通路12が接続される。吸気通路12の最上流にはエアフィルタ13が設けられ、エアフィルタ13で濾過された新気が吸気通路12に導入される。
一方、排気ポート6よりも排気下流側には、複数のシリンダ2から合流するように形成されたエキゾーストマニホールド15(以下、エキマニ15という)が設けられ、エキマニ15の下流側には排気通路16が接続される。また、このエンジン1の吸排気系には、排気圧を利用してシリンダ2内に吸気を過給するターボチャージャ(過給機)17が設けられる。ターボチャージャ17は、吸気通路12と排気通路16との両方にまたがって介装された過給機である。ターボチャージャ17は、排気通路16内の排気圧で排気通路16上のタービンを回転させ、その回転力を利用して吸気通路12上のコンプレッサを駆動することにより、吸気通路12側の吸気を圧縮してエンジン1への過給を行う。なお、吸気通路12におけるコンプレッサよりも吸気流の下流側にはインタクーラ14が設けられ、圧縮された空気が冷却される。
本実施形態に係るエンジン1には、排気通路16を流通する排気を吸気通路12へ還流させるEGR通路18(排気再循環通路や還流通路ともいう)が設けられる。EGR通路18は、ターボチャージャ17のタービンよりも上流側の排気通路16とコンプレッサよりも下流側の吸気通路12とを連通し、いわゆる高圧EGR通路を構成する。EGR通路18と吸気通路12との接続部には、EGR弁19が内蔵され、EGR通路18を流通する還流ガス量がEGR弁19の開度に応じて調節される。EGR弁19の開度は、エンジン制御装置40によって制御される。例えば、後述の再生制御中は、エンジン制御装置40はEGR弁19の開度を0に制御し(閉弁し)、還流ガスをカットする。なお、EGR通路18には、還流ガスを冷却するためのEGRクーラ20が設けられる。
排気通路16のタービンの下流側には、排気浄化装置30として、排気流れ方向の上流側から順に上流NOxトラップ触媒(上流触媒)31,フィルタ32,下流NOxトラップ触媒(下流触媒)33が介装される。排気通路16を流通する排気は、排気浄化装置30において浄化された後、車外へと排出される。なお、排気浄化装置30には、後述するエンジン制御装置40が含まれる。
上流NOxトラップ触媒31及び下流NOxトラップ触媒33は、何れも酸化雰囲気下(排気空燃比が理論空燃比よりもリーンな状態)で排気中のNOxを硝酸塩として担体上に吸蔵し、還元雰囲気下(排気空燃比が理論空燃比よりもリッチな状態)で吸蔵したNOxを放出してN2に還元する機能を有する。これらの機能に対応して、上流NOxトラップ触媒31及び下流NOxトラップ触媒33には、NOxの吸蔵機能を担う吸蔵材と、還元機能を担う貴金属元素等とがそれぞれ担持される。
ここでは、上流NOxトラップ触媒31及び下流NOxトラップ触媒33の構成成分(吸蔵材や貴金属元素等の種類及び量)は同一であるものとし、これらを特に区別しない場合はNOxトラップ触媒31,33と表す。なお、図1では下流NOxトラップ触媒33の方が上流NOxトラップ触媒31よりも容量が大きい場合を例示しているが、NOxトラップ触媒31,33が同一容量であってもよい。これらNOxトラップ触媒31,33は、ある温度域で優れたNOx浄化性能を持つ(ある温度域にNOx浄化性能のピークを有する)という性質がある。言い換えると、NOx浄化性能は常に一定ではなく、NOxトラップ触媒31,33の温度に応じて変化するものであり、ある温度域で最も高いNOx浄化性能を発揮する。
上流NOxトラップ触媒31,下流NOxトラップ触媒33は、容量に応じて吸蔵しうるNOxの量(最大量)がそれぞれ決まっている。上流NOxトラップ触媒31及び下流NOxトラップ触媒33に吸蔵した各NOxの量がそれぞれ最大量(飽和状態)に近づくと、エンジン制御装置40により上流NOxトラップ触媒31又は下流NOxトラップ触媒33に吸蔵したNOxを放出してN2に還元する制御(以下、これをNOxパージ制御という)が実施される。
また、これらNOxトラップ触媒31,33には、排気中の硫黄成分(サルファ,単にSとも表す)が吸蔵しうる性質がある。NOxトラップ触媒31,33に吸蔵してしまった硫黄成分は、上記のNOxパージ制御では僅かな量しか放出されないため、NOxトラップ触媒31,33は徐々に増加する硫黄成分によって本来の機能であるNOxを吸蔵するという能力(性能)が低下する。これはS被毒と呼ばれ、NOxトラップ触媒31,33のS被毒を解消すべく、エンジン制御装置40によってこの硫黄成分をNOxトラップ触媒31,33から放出させる制御(以下、これをSパージ制御という)が上記のNOxパージ制御とは別で実施される。
フィルタ32は、排気中の粒子状物質(Particulate Matter、以下、PMという)を捕集する多孔質フィルタであり、熱容量が比較的大きい。フィルタ32の内部は、多孔質の壁体によって排気の流通方向に沿って複数に分割されている。この壁体には、PMの微粒子に見合った大きさの多数の細孔が形成され、排気が壁体の近傍や内部を通過する際に壁体内,壁体表面にPMが捕集される。フィルタ32では、捕集されたPMが連続的に酸化される連続再生と、エンジン制御装置40によってPMが強制的に燃焼されてフィルタ32を再生する再生制御とが実施される。
排気浄化装置30は、排気通路16に上流NOxトラップ触媒31と下流NOxトラップ触媒33とがフィルタ32を挟んで配置されているため、上流NOxトラップ触媒31と下流NOxトラップ触媒33とでは温度状態が異なる。これは、排気通路16の上流ほど排気温度が高いため、上流NOxトラップ触媒31の方が下流NOxトラップ触媒33よりも排気熱によって昇温されやすいからである。高温の排気は、上流NOxトラップ触媒31を通過することで熱が奪われて温度低下し、さらに熱容量の大きなフィルタ32を通過することで温度低下した後、下流NOxトラップ触媒33を通過する。そのため、下流NOxトラップ触媒33は、上流NOxトラップ触媒31よりも昇温されにくく、上流NOxトラップ触媒31よりも温度が低い状態となる。なお、排気温度はエンジン1の運転領域(エンジン負荷)に応じて変化し、高負荷ほど排気温度は高くなる傾向がある。
上記のように、NOxトラップ触媒31,33は、ある温度域にNOx浄化性能のピークを有するため、上流NOxトラップ触媒31と下流NOxトラップ触媒33とを温度帯の異なる場所に配置することで、上流NOxトラップ触媒31が高いNOx浄化性能を発揮する運転領域と、下流NOxトラップ触媒33が高いNOx浄化性能を発揮する運転領域とを相違させることができる。これにより、システム全体のNOx浄化性能を高めることが可能となる。これについて、図2を用いて説明する。図2中の破線及び一点鎖線は、それぞれ上流NOxトラップ触媒31,下流NOxトラップ触媒33のNOx浄化性能を示し、実線はシステム全体のNOx浄化性能を示す。横軸のエンジン負荷は、上記したように排気温度と正の相関関係を有し、高負荷ほど排気温度は高い。
図2に示すように、低負荷側では上流NOxトラップ触媒31がNOx浄化性能のピークを持ち、高負荷側では下流NOxトラップ触媒33がNOx浄化性能のピークを持つ。これは、エンジン1の負荷が低い場合は、排気熱により上流NOxトラップ触媒31は高いNOx浄化性能を発揮しうる温度域まで昇温される一方、下流NOxトラップ触媒33は高いNOx浄化性能を発揮しうる温度域まで昇温されないためである。また、エンジン1の負荷が高い場合は、排気熱により上流NOxトラップ触媒31は高いNOx浄化性能を発揮しうる温度域よりも高温まで昇温されてしまってNOx浄化性能が低下するのに対し、下流NOxトラップ触媒33は高温の排気が届いて高いNOx浄化性能を発揮しうる温度域まで昇温されるためである。
したがって、エンジン1の低負荷運転領域では、主に上流NOxトラップ触媒31によりNOxが浄化され、エンジン1の高負荷運転領域では、主に下流NOxトラップ触媒33によりNOxが浄化されることになるため、システム全体で見ると、エンジン1の運転領域全体に亘って高いNOx浄化性能を確保することができる。
排気浄化装置30は、上流NOxトラップ触媒31の直上流の排気通路16に設けられた上流インジェクタ34を備える。上流インジェクタ34は、一酸化炭素(CO)や炭化水素(HC)等の還元剤を排気通路16へ直接供給する噴射弁であり、その先端部が排気通路16内に突出して設けられる。また、上流インジェクタ34の基端部には燃料ポンプへと繋がる燃料配管が接続されており、ここでは還元剤として燃料が用いられる。
上流インジェクタ34は、上記のNOxパージ制御及びSパージ制御において、還元剤を上流NOxトラップ触媒31に供給し、上流NOxトラップ触媒31の周辺雰囲気を還元雰囲気(リッチ雰囲気)にするとともに上流NOxトラップ触媒31を昇温させる。上流インジェクタ34からの還元剤の噴射量及びその噴射タイミングは、エンジン制御装置40で制御される。なお、下流NOxトラップ触媒33に対する還元剤の供給は、上記の筒内噴射弁4によるポスト噴射によって行う。すなわち、筒内噴射弁4からトルクに寄与しないタイミング(例えば膨張行程後半や排気工程)で燃料を噴射させることで、排気通路16へ還元剤としての未燃燃料を供給する。
吸気通路12のエアフィルタ13とコンプレッサとの間には、吸気流量を検出するエアフローセンサ21が設けられる。吸気流量は、エアフィルタ13を通過した空気の流量に対応するパラメータである。吸気通路12のEGR弁19とサージタンク10との間には、吸気の空燃比を検出するための空燃比センサ22が設けられる。空燃比センサ22は、吸気通路12を流通する吸気の酸素濃度を検出し、酸素濃度に比例する値を出力する、いわゆるリニア空燃比センサである。また、サージタンク10内には、インマニ圧センサ23及び吸気温センサ24が設けられる。インマニ圧センサ23はサージタンク10内の圧力をインマニ圧として検出し、吸気温センサ24はサージタンク10内の吸気温度を検出する。
排気通路16の上流インジェクタ34の下流であって上流NOxトラップ触媒31の上流には、排気の空燃比を検出する空燃比センサ25及び排気温度を検出する排気温センサ26が設けられる。また、排気通路16の下流NOxトラップ触媒33の直上流には、排気の空燃比を検出する空燃比センサ27及び排気温度を検出する排気温センサ28が設けられる。なお、これらのほかにも、例えばエンジン1の回転速度を検出するエンジン回転速度センサや、エンジン1の冷却水の温度を検出する冷却水温センサ,筒内噴射弁4やインジェクタ34から噴射される燃料の圧力を検出する燃圧センサ等を設けてもよい。各種センサ21〜28で検出された各種情報は、エンジン制御装置40に伝達される。
上記のエンジン1を搭載する車両には、エンジン制御装置(制御手段)40が設けられる。このエンジン制御装置40は、例えばマイクロプロセッサやROM,RAM等を集積したLSIデバイスや組み込み電子デバイスとして構成され、車両に設けられた車載ネットワーク網の通信ラインに接続される。なお、車載ネットワーク上には、例えばブレーキ制御装置や空調制御装置といった他の電子制御装置が互いに通信可能に接続される。
エンジン制御装置40は、エンジン1に関する点火系,燃料系,吸排気系及び動弁系といった広汎なシステムを総合的に制御する電子制御装置であり、エンジン1の各シリンダ2に対して供給される空気量や燃料噴射量,各シリンダ2の点火時期,過給圧等を制御するものである。エンジン制御装置40の入力ポートには、前述の各種センサ21〜28が接続される。エンジン制御装置40の具体的な制御対象としては、筒内噴射弁4から噴射される燃料噴射量とその噴射タイミング,ターボチャージャ17の作動状態,スロットル開度,EGR弁19の開度,上流インジェクタ34から噴射される還元剤噴射量とその噴射タイミング等が挙げられる。本実施形態では、上記したNOxトラップ触媒31,33のNOxパージ制御とフィルタ32の再生制御の二つの制御について、さらに詳述する。
[1−2.制御構成]
図1に示すように、上記の二つの制御を実施するための要素として、エンジン制御装置40には、推定部41,NOxパージ制御部42,再生制御部43が設けられる。これらの各要素は電子回路(ハードウェア)によって実現してもよく、ソフトウェアとしてプログラミングされたものとしてもよいし、あるいはこれらの機能のうちの一部をハードウェアとして設け、他部をソフトウェアとしたものであってもよい。
推定部41は、上流NOxトラップ触媒31に吸蔵されたNOxの量(NOx吸蔵量Aという)と、下流NOxトラップ触媒33に吸蔵されたNOxの量(NOx吸蔵Bという)と、フィルタ32に堆積したPMの量(PM堆積量Dという)とを推定するものである。NOx吸蔵量A,Bの推定手法には、種々の公知技術を適用可能であり、例えばエンジンの運転領域や排気の温度,空燃比,流量等に基づいて推定可能である。図2に示すように、エンジン1の低負荷運転領域や排気温度の低温域では、主に上流NOxトラップ触媒31のNOx吸蔵量Aが増大し、エンジン1の高負荷運転領域や排気温度の高温域では、主に下流NOxトラップ触媒33のNOx吸蔵量Bが増大する。また、後述のNOxパージ制御中は、上流NOxトラップ触媒31,下流NOxトラップ触媒33に吸蔵されたNOxが放出されて還元されるため、NOx吸蔵量A,Bは所定の速さで減少する。
また、PM堆積量Dの推定手法の一例として、推定部41は、エンジン1の回転速度やエンジン負荷等に基づき、エンジン1から排出されるPMの量を推定して、これを前回の再生制御の終了後から積算することでPM堆積量Dを推定する。あるいは、フィルタ32の上下流の差圧を検出又は推定して、この差圧に基づいてPM堆積量Dを推定する手法も公知であり、推定部41はこのような手法によりPM堆積量Dを推定してもよい。推定部41は、推定したNOx吸蔵量A,B及びPM堆積量Dを、NOxパージ制御部42及び再生制御部43に伝達する。
NOxパージ制御部42は、上流NOxトラップ触媒31に吸蔵したNOxの吸蔵状態(NOx吸蔵量A)に基づき、還元剤を供給して上流NOxトラップ触媒31に吸蔵されたNOxを還元する上流NOxパージ制御と、下流NOxトラップ触媒33に吸蔵したNOxの吸蔵状態(NOx吸蔵量B)に基づき、還元剤を供給して下流NOxトラップ触媒33に吸蔵されたNOxを還元する下流NOxパージ制御とを実施するものである。
具体的には、NOxパージ制御部42は、推定部41で推定された上流NOxトラップ触媒31のNOx吸蔵量Aが所定の上限閾値(第一閾値)Ah以上(A≧Ah)の場合に、上流NOxパージ制御が必要(上流NOxパージ制御を実施する)と判断する。そして、上流NOxパージ制御を実施可能な運転状態のときに上流インジェクタ34から所定量の還元剤を間欠的に噴射させることで、上流NOxトラップ触媒31の周辺雰囲気をリッチ化するとともに上流NOxトラップ触媒31をNOxパージ可能温度以上に昇温させて、上流NOxトラップ触媒31のNOxを放出させて還元する(上流NOxパージ制御)。なお、上流NOxパージ制御を実施可能な運転状態とは、例えば上流NOxトラップ触媒31の温度やエンジン負荷等から判断される。
また、NOxパージ制御部42は、推定部41で推定された下流NOxトラップ触媒33のNOx吸蔵量Bが所定の上限閾値(第三閾値)Bh以上(B≧Bh)の場合に、下流NOxパージ制御が必要(下流NOxパージ制御を実施する)と判断する。そして、下流NOxパージ制御を実施可能な運転状態のときに筒内噴射弁4にポスト噴射をさせることで、下流NOxトラップ触媒33の周辺雰囲気をリッチ化するとともに下流NOxトラップ触媒33をNOxパージ可能温度以上に昇温させて、下流NOxトラップ触媒33のNOxを放出させて還元する(下流NOxパージ制御)。なお、下流NOxパージ制御を実施可能な運転状態も、例えば下流NOxトラップ触媒33の温度やエンジン負荷等から判断される。
各上限閾値Ah,Bhは、上流NOxトラップ触媒31,下流NOxトラップ触媒33にそれぞれ吸蔵されたNOxを除去する必要性があるか否か(上流NOxトラップ触媒31,下流NOxトラップ触媒33の飽和状態)を判定するための閾値であり、上流NOxトラップ触媒31,下流NOxトラップ触媒33の容量等に基づいて予め設定されている。なお、上流インジェクタ34によって還元剤を間欠噴射させることで、硫化水素(H2S)の発生が抑制される。
NOxパージ制御部42は、上流NOxパージ制御を開始した後に推定部41で推定されたNOx吸蔵量Aが所定の終了閾値Af未満(A<Af)になった場合に、上流インジェクタ34からの還元剤の噴射を停止させて上流NOxパージ制御を終了する。同様に、下流NOxパージ制御を開始した後に推定部41で推定されたNOx吸蔵量Bが所定の終了閾値Bf未満(B<Bf)になった場合に、筒内噴射弁4からのポスト噴射を停止させて下流NOxパージ制御を終了する。なお、上流側の終了閾値Af及び下流側の終了閾値Bfは、何れも0に近い小さな値に予め設定されており、これらは同一の値であってもよいし異なる値であってもよい。
このように、NOxパージ制御部42は、基本的には上流NOxパージ制御と下流NOxパージ制御とを独立して(各NOxトラップ触媒31,33のNOx吸蔵量A,Bに応じて)実施する。ただし、NOxパージ制御部42は、上流NOxパージ制御と下流NOxパージ制御とを実施するタイミングが重なった場合(すなわち、二つのNOxパージ制御を共に必要と判断した場合,A≧AhかつB≧Bhとなった場合)は、上流NOxパージ制御を先に開始した後、続けて下流NOxパージ制御を開始して、上流NOxパージ制御と下流NOxパージ制御とを同時連続的に実施する。言い換えると、下流NOxパージ制御の開始タイミングを上流NOxパージ制御の実施中(開始後であって終了前)とする。なお、同時連続的とは、上下流のNOxパージ制御を同じタイミングで実施するが、上流側を先行して開始し、これに連続して下流側を開始することを意味する。
これにより、上流NOxパージ制御で消費されなかった還元剤を下流NOxパージ制御で使うことができるため、燃費悪化が防止される。さらに、下流NOxトラップ触媒33の温度を確保しやすくなり、下流NOxトラップ触媒33におけるNOx還元性能を高めることが可能となる。つまり、上流NOxパージ制御と下流NOxパージ制御とは、できる限り同時連続的に実施することが好ましい。
そこで、本実施形態に係るエンジン制御装置40には、上流側の上限閾値Ahよりも小さい判定値(上流側判定値)As(Ah>As)と、下流側の上限閾値Bhよりも小さい判定値(下流側判定値)Bs(Bh>Bs)とが予め設定されており、NOxパージ制御部42は、推定部41で推定されたNOx吸蔵量A,Bが何れも判定値As,Bs以上である場合には、上流NOxパージ制御と下流NOxパージ制御とを同時連続的に実施する。
これについて図3を用いて説明する。図3は、上流NOxトラップ触媒31のNOx吸蔵量Aと下流NOxトラップ触媒33のNOx吸蔵量Bの変化を模式的に示したグラフである。上流NOxトラップ触媒31には、上流NOxパージ制御を実施するか否かを判定するための上限閾値Ahと判定値Asとが設定されている。同様に、下流NOxトラップ触媒33にも、下流NOxパージ制御を実施するか否かを判定するための上限閾値Bhと判定値Bsとが設定されている。図3に示すように、上流NOxトラップ触媒31及び下流NOxトラップ触媒33のNOx吸蔵量A,Bは、エンジン1の運転状態に応じた速度で増大していく。なお、ここでは下流NOxトラップ触媒33により多くのNOxが吸蔵される場合を例示している。
NOxパージ制御部42は、下流NOxトラップ触媒33のNOx吸蔵量Bが判定値Bsに達した時点(時刻t1)での上流NOxトラップ触媒31のNOx吸蔵量Aをチェックする。ここでは、NOx吸蔵量Aが判定値As未満であるため、何れのNOxパージ制御も実施しない。その後、NOx吸蔵量Bが上限閾値Bhに達するまでの間、NOx吸蔵量Aは判定値As未満であるため、NOxパージ制御部42は、NOx吸蔵量Bが上限閾値Bhに達した時点(時刻t2)以降で下流NOxパージ制御を実施可能な運転状態のときに下流NOxパージ制御を開始する。なお、下流NOxパージ制御中も上流NOxトラップ触媒31にはNOxが吸蔵される。
NOxパージ制御部42は、上流NOxトラップ触媒31のNOx吸蔵量Aが判定値Asに達した時点(時刻t3)での下流NOxトラップ触媒33のNOx吸蔵量Bをチェックする。ここでは、NOx吸蔵量Bが判定値Bs未満であるため、何れのNOxパージ制御も実施しない。その後、NOx吸蔵量Bが判定値Bsに達すると(時刻t4)、NOxパージ制御部42は、まず上流NOxパージ制御を開始し、続けて下流NOxパージ制御を開始することで、上流NOxパージ制御と下流NOxパージ制御とを同時連続的に実施する。
その後も、下流NOxトラップ触媒33のNOx吸蔵量Bが判定値Bsに到達した時点(時刻t5)以降に、上流NOxトラップ触媒31のNOx吸蔵量Aが判定値Asに達した場合(時刻t6)、NOxパージ制御部42は、まず上流NOxパージ制御を開始し、続けて下流NOxパージ制御を開始することで、上流NOxパージ制御と下流NOxパージ制御とを同時連続的に実施する。このように、上下流のNOxパージ制御を同時連続的に実施するための判定値As,Bsを上限閾値Ah,Bhとは別で設けておくことで、上流NOxパージ制御と下流NOxパージ制御とをできるだけ同時連続的に実施する。
再生制御部43は、フィルタ32に捕集されたPMの量(PM堆積量D)に基づいて、フィルタ32からPMを除去する再生制御の必要性(再生制御の実施要求)を判断し、必要性(実施要求)に応じて再生制御を実施するものである。具体的には、再生制御部43は、推定部41で推定されたPM堆積量Dが所定の再生開始閾値Ds以上(D≧Ds)の場合に再生制御が必要であると判断し、PM堆積量Dが再生開始閾値Ds未満の場合に再生制御が不要であると判断する。
再生制御部43は、再生制御の実施要求があると判断したときに、NOxパージ制御部42によって上流NOxパージ制御及び下流NOxパージ制御の少なくとも一方が実施される場合は、上記のNOxパージ制御部42による制御を優先させる。つまりこの場合、再生制御部43は、NOxパージ制御部42によって上流NOxパージ制御又は下流NOxパージ制御が単独で、あるいは上下流のNOxパージ制御が同時連続的に実施されて終了した後に、再生制御を開始する。
再生制御中は、エンジン1が高負荷運転状態であることに加えてEGR弁19が閉弁されて還流ガスがカットされることで、シリンダ2から排出されるNOxの量が増大するため、再生制御前に上流NOxトラップ触媒31,下流NOxトラップ触媒33のNOx吸蔵能力を確保しておく必要がある。そこで、再生制御の実施要求があるときに上流NOxパージ制御や下流NOxパージ制御が必要である場合は、NOxパージ制御を再生制御に先行して実施することで、再生制御中のNOxの排出量を低減することができる。
ただし、再生制御部43は、再生制御が必要と判断してから再生制御を開始するまでの待機時間が所定時間tL以上になった場合は、NOxパージ制御部42による制御よりも先に再生制御を実施する。つまり、再生制御部43は、再生制御が必要な場合にNOxパージ制御部42によりNOxパージ制御が必要と判断されていれば、まずはNOxパージ制御を優先させるものの、所定時間tLが経過するまでにNOxパージ制御が開始されなければ、再生制御を開始する。これにより、フィルタ32にPMが大量に堆積することによるエンジン1の停止が防止される。なお、再生制御部43は、再生制御が必要と判断したときにNOxパージ制御部42による制御が実施されない場合は、速やかに再生制御を開始する。
再生制御部43は、上流インジェクタ34から所定量の還元剤を間欠的に噴射させ、これを上流NOxトラップ触媒31上で燃焼させることで、フィルタ32を再生可能温度以上に昇温させてPMを燃焼させる(再生制御)。再生開始閾値Dsは、フィルタ32に堆積したPMを強制的に燃焼させて除去する必要性があるか否かを判定するための閾値であり、フィルタ32の圧力損失の増加度合いやPM過堆積によるフィルタ32の溶損リスク等に基づいて予め設定されている。なお、再生制御では、上流インジェクタ34から還元剤を噴射する代わりに、筒内噴射弁4にポスト噴射させることで排気通路16に燃料を供給してもよい。
再生制御部43は、再生制御を開始した後に推定部41で推定されたPM堆積量Dが所定の再生終了閾値Df未満(D<Df)になった場合に、上流インジェクタ34からの還元剤の噴射又は筒内噴射弁4によるポスト噴射を停止させて、再生制御を終了する。なお、再生終了閾値Dfは、0に近い小さな値に予め設定されている。
[1−3.フローチャート]
図4〜図6は、上記のNOxパージ制御及び再生制御の手順を説明するためのフローチャートである。図4は上下流のNOxパージ制御の実施要求の有無を判定するためのフローであり、図5は上下流のNOxパージ制御及び再生制御の実行フローであり、図6は図5のサブフローであって、(a)は上下流のNOxパージ制御の実行フロー、(b)は再生制御の実行フローである。これらのフローは、エンジン制御装置40において所定の演算周期で繰り返し実施される。なお、これらのフローとは別に、上記の推定部41によるNOx吸蔵量A,B及びPM堆積量Dの推定は常に実施されており、NOxパージ制御部42及び再生制御部43は、推定された各推定値を読み込んで上流NOxパージ制御,下流NOxパージ制御及び再生制御を実施する。
まず、NOxパージ制御部42において実施される図4のフローについて説明する。図4に示すように、フラグFAがFA=0であるか否かが判定される(ステップS10)。フラグFAは、上流NOxパージ制御の実施要求(必要性)の有無を判定するものであり、FA=1は要求ありに対応し、FA=0は要求なしに対応する。フラグFA=0のときは、推定部41で推定されたNOx吸蔵量Aが読み込まれ(ステップS15)、NOx吸蔵量Aが判定値As以上(A≧As)であるか否かが判定される(ステップS20)。
A≧Asのときは、NOx吸蔵量Aが上限閾値Ah以上(A≧Ah)であるか否かが判定される(ステップS25)。A≧Ahであれば、下流NOxトラップ触媒33のNOx吸蔵量Bにかかわらず、上流NOxパージ制御を行う必要があるため、フラグFAがFA=1に設定され(ステップS30)、ステップS35へ進む。ステップS35では、フラグFBがFB=0であるか否かが判定される。フラグFBは、下流NOxパージ制御の実施要求(必要性)の有無を判定するものであり、FB=1は要求ありに対応し、FB=0は要求なしに対応する。フラグFB=0のときは、推定部41で推定されたNOx吸蔵量Bが読み込まれ(ステップS40)、NOx吸蔵量Bが判定値Bs以上(B≧Bs)であるか否かが判定される(ステップS45)。B≧Bsであれば、NOx吸蔵量A,Bが共に判定値As,Bs以上であるから、フラグFBもFB=1に設定されて(ステップS50)、このフローをリターンする。これにより、上下流のNOxパージ制御が共に実施要求ありの状態となる。
ステップS20において、A≧AsでないときはフラグFA=0のままステップS80へ進み、フラグFBがFB=0であるか否かが判定される。フラグFB=0のときはNOx吸蔵量Bが読み込まれ(ステップS85)、NOx吸蔵量Bが上限閾値Bh以上(B≧Bh)であるか否かが判定される(ステップS90)。B≧Bhであれば、下流NOxパージ制御を行う必要があるため、フラグFBがFB=1に設定され(ステップS95)、このフローをリターンする。一方、B≧Bhでない場合は、フラグFBはFB=0のままこのフローをリターンする。
ここで、ステップS25において、NOx吸蔵量Aが上限閾値Ah未満(A<Ah)である場合は、フラグFBがFB=0であるか否かが判定され(ステップS55)、フラグFBがFB=0のときは、NOx吸蔵量Bが読み込まれ(ステップS60)、NOx吸蔵量Bが判定値Bs以上(B≧Bs)であるか否かが判定される(ステップS65)。
B≧Bsのときは、NOx吸蔵量A,Bが共に判定値As,Bs以上であるから、フラグFAがFA=1に設定されるとともに(ステップS70)、フラグFBもFB=1に設定されて(ステップS75)、このフローをリターンする。これにより、上下流のNOxパージ制御が共に実施要求ありの状態となる。一方、B≧Bsでない場合は、フラグFBはFB=0のままこのフローをリターンする。
なお、すでにフラグFAがFA=1に設定されている場合は、上流NOxパージ制御が終了するまでの間、上流NOxパージ制御の要求判定は行われず、ステップS10からステップS35へ進んで下流NOxパージ制御の要求判定が実施される。同様に、フラグFBがFB=1に設定されている場合は、下流NOxパージ制御が終了するまでの間、下流NOxパージ制御の要求判定は行われず、ステップS35,S55,S80からフローをリターンする。このように設定されたフラグFA,FBの情報は、図5,図6(a)のフローで用いられる。
次に、NOxパージ制御部42及び再生制御部43で実施される図5及び図6(a),(b)のフローについて説明する。図5に示すように、まず、推定部41で推定されたNOx吸蔵量A,B及びPM堆積量Dが読み込まれ(ステップT10)、フラグFDがFD=0であるか否かが判定される(ステップT15)。フラグFDは、再生制御の実施要求(必要性)の有無を判定するものであり、FD=1は要求ありに対応し、FD=0は要求なしに対応する。フラグFD=0のときは、PM堆積量Dが再生開始閾値Ds以上(D≧Ds)であるか否かが判定され(ステップT20)、D≧DsであればフラグFDがFD=1に設定されて(ステップT25)、タイマのカウントが開始される(ステップT30)。このタイマは再生制御の待機時間を計るものである。一度フラグFDがFD=1に設定された後は、ステップT15からステップT35へと進む。また、D<Dsの場合は、フィルタ32の再生制御は必要ないため、図6(a)に示すNOxパージ制御の実行フローが開始される(ステップT130)。
ステップT35では、フラグFAがFA=1であるか否かが判定され、フラグFA=1のときは再生制御よりも上流NOxパージ制御が優先される。また、フラグFA=0のときは、続けてフラグFBがFB=1であるか否かが判定され(ステップT80)、フラグFB=1のときは再生制御よりも下流NOxパージ制御が優先される。なお、フラグFA,FBが何れも0の場合は、上下流のNOxパージ制御が何れも実施要求なしのため、速やかに再生制御が実施される(ステップT125)。
ステップT40では、上流NOxパージ制御を実施中か否かが判定され、上流NOxパージ制御が未だ開始されていなければタイマカウント(待機時間)が所定時間tL以上であるか否かが判定される(ステップT45)。タイマカウントが所定時間tL未満であれば、上流NOxパージ制御を実施可能な運転状態であるか否かが判定され(ステップT50)、実施可能な場合に上流NOxパージ制御が開始される(ステップT55)。
これに対して、上流NOxパージ制御を実施可能な運転状態でない場合はこのフローをリターンし、次回以降の演算周期において、タイマカウントが所定時間tLに達する前に実施可能な運転状態になれば上流NOxパージ制御が開始される。上流NOxパージ制御が開始された後は、NOx吸蔵量Aが終了閾値Af未満になるまで上流NOxパージ制御が継続され(ステップT40,T60)、A<Afとなると上流NOxパージ制御が終了される(ステップT65)。そして、フラグFAがFA=0にリセットされて(ステップT70)、このフローをリターンする。次の制御周期では、下流NOxパージ制御の実施要求がなければ、図6(b)に示す再生制御の実行フローが開始される(ステップT125)。
反対に、上流NOxパージ制御を実施可能な運転状態となる前にタイマカウントが所定時間tL以上となった場合は、図6(b)の再生制御の実行フローが開始される(ステップT75)。すなわちこの場合は、再生制御よりも上流NOxパージ制御を優先させたものの、再生制御の実施要求ありとなってから所定時間tLの間に上流NOxパージ制御を実施可能な運転状態とはならなかったため、上流NOxパージ制御よりも先に再生制御が実施される。
上流NOxパージ制御の開始後、A<Afとなるまでは、ステップT80へ進み、フラグFBがFB=1であるか否かが判定される。ここで、フラグFB=1であれば、下流NOxパージ制御を実施中か否かが判定され(ステップT85)、まだ下流NOxパージ制御が開始されていなければタイマカウント(待機時間)が所定時間tL以上であるか否かが判定される(ステップT90)。そして、タイマカウントが所定時間tL未満であれば、下流NOxパージ制御を実施可能な運転状態であるか否かが判定されて(ステップT95)、実施可能な場合に下流NOxパージ制御が開始される(ステップT100)。これにより、上流NOxパージ制御の開始後に下流NOxパージ制御も開始されて、上下流のNOxパージ制御が同時連続的に実施される。
一方、ステップT95において下流NOxパージ制御を実施可能な運転状態でない場合はこのフローをリターンし、次回以降の演算周期において、タイマカウントが所定時間tLに達する前に実施可能な運転状態になれば下流NOxパージ制御が開始されて、上下流のNOxパージ制御が同時連続的に実施される。下流NOxパージ制御が開始された後は、NOx吸蔵量Bが終了閾値Bf未満になるまで下流NOxパージ制御が継続され(ステップT85,T105)、B<Bfとなると下流NOxパージ制御が終了される(ステップT110)。そして、フラグFBがFB=0にリセットされて(ステップT115)、このフローをリターンする。次の制御周期では、図6(b)の再生制御の実行フローが開始される(ステップT125)。
また、下流NOxパージ制御を実施可能な運転状態となる前にタイマカウントが所定時間tL以上となった場合は、上流NOxパージ制御が実施中であるか否かが判定され(ステップT120)、実施中であればこのフローをリターンし、実施中でなければ図6(b)の再生制御の実行フローが開始され(ステップT125)、このフローをリターンする。すなわちこの場合は、再生制御よりも下流NOxパージ制御を優先させたものの、再生制御の実施要求ありとなってから所定時間tLの間に下流NOxパージ制御を実施可能な運転状態とはならなかったため、下流NOxパージ制御よりも先に再生制御が実施される。なお、上流NOxパージ制御が実施中であれば上流NOxパージ制御の終了後、速やかに再生制御が実施される。
次に、ステップT130に進んだ場合のNOxパージ制御の実行フローについて説明する。図6(a)に示すように、まず、フラグFAがFA=1であるか否かが判定され(ステップX10)、フラグFA=1のときは上流NOxパージ制御を実施可能な運転状態であるか否かが判定され(ステップX15)、実施可能な場合に上流NOxパージ制御が開始される(ステップX20)。一方、上流NOxパージ制御を実施可能な運転状態でない場合はこのフローを終了し、図5のメインフローをリターンする。そして、次回以降の演算周期においてステップT130へ進んだ場合は、上流NOxパージ制御を実施可能な運転状態となったら上流NOxパージ制御が開始される。
上流NOxパージ制御が開始された後は、A<Afであるか否かが判定され(ステップX25)、A<Afでなければ、続いてフラグFBがFB=1であるか否かが判定される(ステップX40)。フラグFB=1のときは下流NOxパージ制御を実施可能な運転状態であるか否かが判定され(ステップX45)、実施可能な場合に下流NOxパージ制御が開始される(ステップX50)。一方、下流NOxパージ制御を実施可能な運転状態でない場合はこのフローを終了し、図5のメインフローをリターンする。そして、次回以降の演算周期においてステップT130へ進んだ場合は、下流NOxパージ制御を実施可能な運転状態となったら下流NOxパージ制御が開始される。
下流NOxパージ制御が開始された後は、B<Bfであるか否かが判定され(ステップX55)、B<Bfでなければこのフローを終了し、図5のメインフローをリターンする。そして、ステップT10で読み込まれたNOx吸蔵量Aが終了閾値Af未満となったら(ステップX25)、上流NOxパージ制御が終了され(ステップX30)、フラグFAがFA=0にリセットされて(ステップX35)、このフローを終了する。また、ステップT10で読み込まれたNOx吸蔵量Bが終了閾値Bf未満となったら(ステップX55)、下流NOxパージ制御が終了され(ステップX60)、フラグFBがFB=0にリセットされて(ステップX65)、このフローを終了する。
最後に、ステップT75又はステップT125に進んだ場合の再生制御の実行フローについて説明する。図6(b)に示すように、再生制御を実施可能な運転状態であるか否かが判定され(ステップY10)、実施可能な運転状態であれば再生制御が開始される(ステップY15)。再生制御可能な運転状態でないときはこのフローを終了し、図5のメインフローをリターンする。そして、次回以降の演算周期でステップT75又はステップT125へ進んだ場合は、再生制御可能な運転状態となったら再生制御が開始される。
再生制御が開始された後は、PM堆積量Dが再生終了閾値Df未満(D<Df)であるか否かが判定され(ステップY20)、D<Dfとなるまで再生制御が実施される。D<Dfとなると、再生制御が終了されて(ステップY25)、フラグFDがFD=0にリセットされるとともに(ステップY30)、タイマカウントがリセットされて停止され(ステップY35)、このフローを終了する。
[1−4.効果]
したがって、上記の排気浄化装置30によれば、フィルタ32の再生制御の実施要求がある場合に、上流NOxパージ制御と下流NOxパージの少なくとも一方を実施する場合には、上流NOxパージ制御が開始された後に下流NOxパージ制御が開始され、さらにその後に再生制御が開始される。これにより、フィルタ32の再生制御中に増大しうるNOxを上流NOxトラップ触媒31及び下流NOxトラップ触媒33で吸蔵することができ、NOxの排出量を低減することができる。さらに、上流NOxパージ制御で消費されなかった還元剤を下流NOxパージ制御で使うことができ、燃費悪化を抑制することができる。また、下流NOxトラップ触媒33の温度を上流NOxパージ制御により上昇させることで下流NOxトラップ触媒33の温度を確保し易くなるため、下流NOxトラップ触媒33におけるNOx還元性能を向上させることができる。
また、排気通路16には、排気流れ方向の上流側から順に上流NOxトラップ触媒31,フィルタ32,下流NOxトラップ触媒33が設けられる。換言すると、排気通路16に上流NOxトラップ触媒31と下流NOxトラップ触媒33とを離して配置するとともに、これらの間に熱容量の大きなフィルタ32を配置することで、上流NOxトラップ触媒31と下流NOxトラップ触媒33とを温度帯の異なる場所に配置することができる。これにより、上流NOxトラップ触媒31が高いNOx浄化性能を発揮する運転状態と、下流NOxトラップ触媒33が高いNOx浄化性能を発揮する運転状態とを相違させることができ、システム全体のNOx浄化性能を高めることができる。すなわち、エンジン1の運転領域全体に亘って高いNOx浄化性能を確保することができる。これらによって、燃費悪化を抑制しながら、排気中のNOxを適切に除去することができる。
上記の排気浄化装置30では、再生制御の実施要求があると判断してから再生制御を開始するまでの待機時間が所定時間tL以上になった場合は、上下流のNOxパージ制御よりも再生制御を先に開始する。すなわち、フィルタ32の再生制御の待機時間に制限を設けることで、フィルタ32にPMが大量に堆積することによるエンジン1の停止のおそれを回避することができる。
また、本実施形態では、上下流のNOxパージ制御を実施するか否かを判定する上限閾値Ah,Bhとは別に、これらよりも小さい判定値As,Bsが設定されている。そして、上流NOxトラップ触媒31のNOx吸蔵量Aが判定値As以上であり、且つ、下流NOxトラップ触媒33のNOx吸蔵量Bが判定値Bs以上である場合に、上流NOxパージ制御と下流NOxパージ制御とが同時連続的に実施される。つまり、上流NOxパージ制御と下流NOxパージ制御とを同時連続的に実施するための閾値(判定値As,Bs)を、単独でNOxパージ制御を実施するときの閾値(上限閾値Ah,Bh)よりも小さい値に設定しておくことで、できる限り上流NOxパージ制御と下流NOxパージ制御とを同時連続的に実施することができるため、燃費悪化をより効果的に抑制することができる。
上記の排気浄化装置30は、上流NOxトラップ触媒31の直上流に上流インジェクタ34を備え、上流NOxパージ制御ではこの上流インジェクタ34から還元剤が噴射される。上流NOxパージ制御では、上流NOxトラップ触媒31の周辺は酸素濃度が高い傾向にあるため、上流インジェクタ34により直接排気通路16へ還元剤を噴射することで、反応性の高い還元剤を上流NOxトラップ触媒31に供給することができ、上流NOxトラップ触媒31においてNOxを効果的に還元することができる。
また、下流NOxパージ制御では、下流NOxトラップ触媒33の周辺は酸素濃度が低い傾向にあるため、ポスト噴射でも十分に下流NOxトラップ触媒33に還元剤としての燃料を供給することができる。これにより、下流NOxトラップ触媒33の直上流に還元剤を噴射する排気管噴射弁を設ける場合と比較して、装置構成を簡素化することができ、コストを低減することができる。
[2.第二実施形態]
次に、第二実施形態に係る排気浄化装置30について説明する。本実施形態に係る排気浄化装置30は、上下流のNOxパージ制御を実施するか否かの判定方法が異なる点を除いて、第一実施形態と同様に構成される。すなわち、エンジン制御部40のNOxパージ制御部42での制御内容が第一実施形態と異なり、その他(装置構成,エンジン制御装置40の推定部41での推定手法及び再生制御部43での制御内容)は第一実施形態と同一である。以下、第一実施形態と同様の装置や構成については、第一実施形態と同様の符号を付して重複する説明は省略し、第一実施形態とは異なるNOxパージ制御部42での制御内容について詳述する。
本実施形態に係るNOxパージ制御部42は、上下流のNOxパージ制御を実施するか否かを判定する閾値として、第一実施形態で説明した上限閾値Ah,Bhのみを有し、第一実施形態で説明した判定値As,Bsは本実施形態では設定されていない。すなわち、NOxパージ制御部42は、推定部41で推定された上流NOxトラップ触媒31のNOx吸蔵量Aが上限閾値(第一閾値)Ah以上(A≧Ah)の場合に、上流NOxパージ制御を実施すると判断する。同様に、推定部41で推定された下流NOxトラップ触媒33のNOx吸蔵量Bが上限閾値(第三閾値)Bh以上(B≧Bh)の場合に、下流NOxパージ制御が必要と判断する。
また、NOxパージ制御部42は、第一実施形態と同様に、上流NOxパージ制御を開始した後に推定部41で推定されたNOx吸蔵量Aが所定の終了閾値Af未満(A<Af)になった場合に、上流インジェクタ34からの還元剤の噴射を停止させて上流NOxパージ制御を終了する。同様に、下流NOxパージ制御を開始した後に推定部41で推定されたNOx吸蔵量Bが所定の終了閾値Bf未満(B<Bf)になった場合に、筒内噴射弁4からのポスト噴射を停止させて下流NOxパージ制御を終了する。このように、本実施形態でも、基本的には上流NOxパージ制御と下流NOxパージ制御とは、独立して実施される。
ここで、本実施形態に係るNOxパージ制御部42は、再生制御部43において再生制御の実施要求があると判断された場合は、上流NOxパージ制御については上限閾値Ahよりも小さい閾値Ar(第二閾値,以下、実施判定閾値Arという)を用い、下流NOxパージ制御については上限閾値Bhよりも小さい閾値Br(第四閾値,以下、実施判定閾値Brという)を用い、上下流のNOxパージ制御を実施するか否かを判断する。
具体的には、再生制御の実施要求がある場合、NOxパージ制御部42は、推定部41で推定された上流NOxトラップ触媒31のNOx吸蔵量Aが実施判定閾値Ar以上(A≧Ar)であり、かつ、推定部41で推定された下流NOxトラップ触媒33のNOx吸蔵量Bが実施判定閾値Br以上(B≧Br)である場合に、上流NOxパージ制御と下流NOxパージ制御とを共に実施すると判断する。なお、再生制御部43において再生制御の実施要求がないと判断された場合は、上記した上限閾値Ah,Bhを用いて、上下流のNOxパージ制御を実施するか否かを判断する。
これにより、再生制御の実施要求がある場合は上下流のNOxパージ制御が実施されやすくなるため、再生制御時のNOxの排出量が効果的に低減される。なお、上流側の実施判定閾値Ar及び下流側の実施判定閾値Brは、各上限閾値Ah,Bhよりも小さい値に設定されていればよく、例えば0に近い値であれば、再生制御を実施する際にNOxパージ制御がより実施されやすくなる。また、実施判定閾値Ar,Brは、上述した第一実施形態の判定値As,Bsとは別個に設けられるものであり、同一の値である必要はない。
このように、NOxパージ制御部42は、基本的には上流NOxパージ制御と下流NOxパージ制御とを独立して実施し、再生制御の実施要求がある場合に限り、上下流のNOxパージ制御の実施要求の有無を判定するための閾値として、上限閾値Ah,Bhよりも小さな値(実施判定閾値Ar,Br)を用いる。この場合に、例えばNOx吸蔵量Aは実施判定閾値Ar以上であるがNOx吸蔵量Bは実施判定閾値Brに満たないとき(A≧ArかつB<Brのとき)は、NOxパージ制御部42は、NOx吸蔵量Aが上限閾値Ah以上であるか否かを判断し、A≧Ahであれば上流NOxパージ制御を実施すると判断する。反対に、NOx吸蔵量Bは実施判定閾値Br以上であるがNOx吸蔵量Aは実施判定閾値Arに満たないとき(A<ArかつB≧Brのとき)も同様に、NOxパージ制御部42は、NOx吸蔵量Bが上限閾値Bh以上であるか否かを判断し、B≧Bhであれば下流NOxパージ制御を実施すると判断する。
なお、NOxパージ制御部42は、上流NOxパージ制御を実施すると判断し、下流NOxパージ制御も実施すると判断した場合は、第一実施形態と同様、上流NOxパージ制御を開始した後に下流NOxパージ制御を開始して、同時連続的に上下流のNOxパージ制御を実施する。また、NOxパージ制御部42は、再生制御の実施要求がある場合には、再生制御の実施前に、上述した手法で上下流のNOxパージ制御を実施するか否かを判断し、実施すると判断した場合には上流NOxパージ制御の開始後に下流NOxパージ制御を開始し、さらにその後で再生制御部43が再生制御を開始する。
次に、図7及び図8のフローチャートを用いて、本実施形態に係るNOxパージ制御及び再生制御の手順について説明する。なお、本実施形態においても、図5及び図6(b)に示すフローチャートが用いられる。図7は、図4のフローチャートに対応するものであり、上下流のNOxパージ制御の実施要求の有無を判定するフローである。図8は、図6(a)のフローチャートに対応するものであり、上下流のNOxパージ制御の実行フローである。これらのフローは、エンジン制御装置40において所定の演算周期で繰り返し実施される。なお、これらのフローとは別に、上記の推定部41によるNOx吸蔵量A,B及びPM堆積量Dの推定は常に実施されており、NOxパージ制御部42及び再生制御部43は、推定された各推定値を読み込んで上流NOxパージ制御,下流NOxパージ制御及び再生制御を実施する。
図7に示すように、本実施形態においても、まずはフラグFAがFA=0であるか否かが判定される(ステップV10)。フラグFAは、第一実施形態のものと同一である。フラグFA=0のときは、推定部41で推定されたNOx吸蔵量AとPM堆積量Dが読み込まれ(ステップV15)、続いてPM堆積量Dが再生開始閾値Ds以上であるか否かが判定される(ステップV18)。D≧Dsであれば、再生制御の実施要求があるため、続くステップV20でNOx吸蔵量Aが実施判定閾値Ar以上かつ上限閾値Ah未満(Ar≦A<Ah)であるか否かが判定される。
D≧Dsでない場合、又は、Ar≦A<Ahでない場合は、NOx吸蔵量Aが上限閾値Ah以上(A≧Ah)であるか否かが判定される(ステップV25)。A≧Ahであれば、フラグFAがFA=1に設定され(ステップS30)、ステップV35へ進む。一方、Ar≦A<AhでなくA≧Ahでもなければ、フラグFAはFA=0のままステップV35へ進む。ステップV35では、フラグFBがFB=0であるか否かが判定される。フラグFBは、第一実施形態のものと同一である。フラグFB=0のときは、推定部41で推定されたNOx吸蔵量Bが読み込まれ(ステップV40)、NOx吸蔵量Bが上限閾値Bh以上(B≧Bh)であるか否かが判定される(ステップV45)。B≧Bhであれば、フラグFBがFB=1に設定され(ステップV50)、このフローをリターンする。一方、B≧Bhでない場合は、フラグFBはFB=0のままこのフローをリターンする。
ここで、ステップV20において、上流NOxトラップ触媒31のNOx吸蔵量Aが実施判定閾値Ar以上かつ上限閾値Ah未満(Ar≦A<Ah)である場合は、フラグFBがFB=0であるか否かが判定され(ステップV55)、すでにフラグFBがFB=1に設定されているときはこのフローをリターンする。一方、フラグFBがFB=0のときは、推定部41で推定されたNOx吸蔵量Bが読み込まれ(ステップV60)、NOx吸蔵量Bが実施判定閾値Br以上かつ上限閾値Bh未満(Br≦B<Bh)であるか否かが判定される(ステップV65)。
Br≦B<Bhのときは、NOx吸蔵量A,Bが共に実施判定閾値Ar,Br以上かつ上限閾値Ah,Bh未満であるから、フラグFAがFA=1に設定されるとともに(ステップV70)、フラグFBもFB=1に設定されて(ステップV75)、このフローをリターンする。これにより、上下流のNOxパージ制御が共に実施要求ありの状態となる。一方、Br≦B<Bhでない場合は、続けてB≧Bhであるか否かが判定され(ステップV45)、B≧BhであればフラグFBがFB=1に設定されて(ステップV50)、このフローをリターンする。つまりこの場合は、下流NOxパージ制御のみが実施要求ありとなる。
なお、すでにフラグFAがFA=1に設定されている場合は、上流NOxパージ制御が終了するまでの間、上流NOxパージ制御の要求判定は行われず、ステップV10からステップV35へ進んで下流NOxパージ制御の要求判定が実施される。同様に、フラグFBがFB=1に設定されている場合は、下流NOxパージ制御が終了するまでの間、下流NOxパージ制御の要求判定は行われず、ステップV35又はステップV55からこのフローをリターンする。ここで設定されたフラグ情報は、図5で用いられる。なお、図5のフローチャートは第一実施形態と同様であるため、説明は省略する。
ただし、図5のフローチャートにおいて、ステップT130に進んだ場合は、図8のサブフローが実施される。図8に示すように、まずは上流NOxパージ制御の実施中か否かが判定される(ステップZ5)。これが実施中でなければ、続いて図5のフローのステップT10で読み込まれたNOx吸蔵量Aが上限閾値Ah以上(A≧Ah)であるか否かが判定される(ステップZ10)。A≧Ahのときは上流NOxパージ制御を実施可能な運転状態であるか否かが判定され(ステップZ15)、実施可能な場合に上流NOxパージ制御が開始される(ステップZ20)。一方、上流NOxパージ制御を実施可能な運転状態でない場合はこのフローを終了し、図5のメインフローをリターンする。そして、次回以降の演算周期においてステップT130へ進んだ場合は、上流NOxパージ制御を実施可能な運転状態となったら上流NOxパージ制御が開始される。
上流NOxパージ制御が開始された後は、A<Afであるか否かが判定され(ステップZ25)、この条件が成立するまで上流NOxパージ制御が継続される。ステップZ25でA<Afでない場合、又は、ステップZ10でA≧Ahでない場合は、下流NOxパージ制御の実施中か否かが判定される(ステップZ38)。これが実施中でなければ、続いて図5のフローのステップT10で読み込まれたNOx吸蔵量Bが上限閾値Bh以上(B≧Bh)であるか否かが判定される(ステップZ40)。
B≧Bhのときは下流NOxパージ制御を実施可能な運転状態であるか否かが判定され(ステップZ45)、実施可能な場合に下流NOxパージ制御が開始される(ステップZ50)。なお、B≧Bhでないときは、このフローを終了する。また、下流NOxパージ制御を実施可能な運転状態でない場合もこのフローを終了し、図5のメインフローをリターンする。そして、次回以降の演算周期においてステップT130へ進んだ場合は、下流NOxパージ制御を実施可能な運転状態となったら下流NOxパージ制御が開始される。
下流NOxパージ制御が開始された後は、B<Bfであるか否かが判定され(ステップZ55)、この条件が成立するまで下流NOxパージ制御が継続される。ステップZ55でB<Bfでない場合はこのフローを終了し、図5のメインフローをリターンする。その後、ステップT10で読み込まれたNOx吸蔵量Aが終了閾値Af未満となったら(ステップZ25)、上流NOxパージ制御が終了され(ステップZ30)、フラグFAがFA=0にリセットされて(ステップZ35)、このフローを終了する。また、ステップT10で読み込まれたNOx吸蔵量Bが終了閾値Bf未満となったら(ステップZ55)、下流NOxパージ制御が終了され(ステップZ60)、フラグFBがFB=0にリセットされて(ステップZ65)、このフローを終了する。つまり、再生制御の実施要求がない場合(D<Dsのとき)は、上限閾値Ah,Bhによって上流NOxパージ制御,下流NOxパージ制御が実施される。
したがって、本実施形態に係る排気浄化装置30によれば、再生制御を実施するときのNOxパージ制御の実施判定閾値Ar,Brを、再生制御を実施しないときのNOxパージ制御の実施判定閾値(すなわち上限閾値Ah,Bh)よりも小さくすることで、再生制御を実施する際にNOxパージ制御が実施されやすくなるため、再生制御時のNOxの排出量をより効果的に低減することができる。なお、上記の第一実施形態と同様の構成からは、第一実施形態に記載した効果と同様の効果を得ることができる。
[3.変形例]
上述した実施形態に関わらず、それらの趣旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。上記実施形態の各構成は、必要に応じて取捨選択することができ、あるいは適宜組み合わせてもよい。
例えば、エンジン制御装置40のNOxパージ制御部42は、再生制御部43において再生制御の実施要求があると判断された場合に、再生制御が実施される前に、上下流のNOxパージ制御のうちの少なくとも一方を実施するか否かを判断し、上流NOxパージ制御及び下流NOxパージ制御の少なくとも一方を実施すると判断した場合には、上流NOxパージ制御を開始後に下流NOxパージ制御を開始し、下流NOxパージ制御の開始後に再生制御を開始させてもよい。
すなわち、再生制御の実施要求がある場合には、再生制御の実施前に、上下流のNOxパージ制御の実施要求の有無について何れか一方又は両方を判断し、何れか一方又は両方の実施要求があれば上下流のNOxパージ制御を上流,下流の順番で開始した後、再生制御を開始するように構成してもよい。このような構成によっても、再生制御中のNOxの排出量を低減することができる。加えて、上流NOxパージ制御で消費されなかった還元剤を下流NOxパージ制御で使うことができるため、燃費悪化を抑制できるとともに、下流NOxトラップ触媒33の温度を確保しやすくなるため、下流NOxトラップ触媒33におけるNOx還元性能を向上させることができる。
上記実施形態では、再生制御の実施要求があると判断してから所定時間tLが経過するまでの間に上流NOxパージ制御又は下流NOxパージ制御が開始されていれば、これらの制御の実施中に所定時間tLが経過した場合であってもこれらの制御の終了後に再生制御を開始しているが、再生制御の開始タイミングはこれに限られない。例えば、NOxパージ制御の実施中に所定時間tLが経過した場合は、NOxパージ制御を中断し、所定時間tLが経過した時点から再生制御を開始してもよい。あるいは、再生制御を開始するか否かを判断する再生開始閾値Dsを比較的余裕をみて設定しておき、所定時間tLを省略してもよい。すなわち、再生制御の実施要求がある場合にNOxパージ制御の実施要求があるときは、待機時間をカウントせずにNOxパージ制御を開始した後に再生制御を開始する構成にしてもよい。
また、下流NOxパージ制御の開始タイミングも上記したものに限られず、例えば、上流NOxパージ制御を先に開始した後、下流NOxトラップ触媒33の直上流の排気温度を排気温センサ28で検出し、上流NOxパージ制御によって下流NOxトラップ触媒33の温度が所定の温度まで上昇してから下流NOxパージ制御を開始するように構成してもよい。これにより、下流NOxパージ制御で噴射する還元剤の量(燃料消費量)を低減することができるため、燃費向上を図ることができる。
上記の下流NOxパージ制御では、ポスト噴射を用いるものを例示しているが、図1に二点鎖線で示すように、フィルタ32の下流側であって下流NOxトラップ触媒33の直上流の排気通路16に下流インジェクタ35を設けてもよい。下流インジェクタ35は、上流インジェクタ34と同様、一酸化炭素(CO)や炭化水素(HC)等の還元剤を排気通路16へ直接供給する噴射弁であり、その先端部は排気通路16内に突出して設けられ、その基端部には燃料ポンプへと繋がる燃料配管が接続される。そして、下流NOxパージ制御を実施するときは、下流インジェクタ35から直接排気通路16へ還元剤を噴射して、下流NOxトラップ触媒33のNOxを還元する構成としてもよい。
上記の第一実施形態では、上限閾値Ah,Bhよりも小さな判定値As,Bsが設定されており、As≦A<AhかつBs≦B<Bhの場合に上下流のNOxパージ制御を同時連続的に実施しているが、判定値As,Bsを省略し、上限閾値Ah,Bhを飽和状態に対して余裕を持った値に設定して上下流のNOxパージ制御ができるだけ同時連続的に実施されるようにしてもよい。
上記の第二実施形態では、再生制御の実施要求がある場合、上限閾値Ah,Bhよりも小さな実施判定閾値Ar,Brが設定されており、Ar≦A<AhかつBr≦B<Bhの場合に上下流のNOxパージ制御を実施すると判断しているが、上流側と下流側とを別々に判断してもよい。すなわち、再生制御の実施要求がある場合、上流NOxトラップ触媒31のNOx吸蔵量Aが実施判定閾値Ar以上(A≧Ar)であれば上流NOxパージ制御を実施すると判断し、同様に、再生制御の実施要求がある場合、下流NOxトラップ触媒33のNOx吸蔵量Bが実施判定閾値Br以上(B≧Br)であれば下流NOxパージ制御を実施すると判断してもよい。このような構成であっても、再生制御の実施要求があるときに上下流のNOxパージ制御の少なくとも一方を実施すると判断した場合は、上流NOxパージ制御,下流NOxパージ制御,再生制御の順番で各制御が実施されるので、上述した効果と同様の効果を得ることができる。
また、NOxパージ制御の終了条件をNOx吸蔵量A,Bで判定するのではなく、例えばNOxパージ制御の実施時間等で判定してもよい。同様に、再生制御の開始条件,終了条件も、上記したものに限られず、差圧や時間等で判定してもよい。
また、上記実施形態では、エンジン制御装置40に推定部41,NOxパージ制御部42,再生制御部43という三つの機能要素を備えているものを例示しているが、これらの機能が複数の制御装置に分散して設けられていてもよい。
なお、上流NOxトラップ触媒31及び下流NOxトラップ触媒33は、その構成成分(吸蔵体及び貴金属元素等の種類,量)が同一でなくてもよい。また、エンジン1は、上記した構成のディーゼルエンジンに限られず、他の構成のディーゼルエンジンであってもよいし、ガソリンエンジンであってもよい。