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JP6230944B2 - 縦型黒鉛化炉および黒鉛の製造方法 - Google Patents

縦型黒鉛化炉および黒鉛の製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、連続式の縦型黒鉛化炉に関する。
黒鉛は、潤滑性、導電性、耐熱性、耐酸耐アルカリ性に優れており、電極用ペースト、鋳物塗料剤、乾電池、鉛筆、耐火物、製綱用保温材、ゴム樹脂用、固体潤滑剤、ルツボ、パッキング、耐熱、耐熱品、導電塗料、鉛筆、電気ブラシ、グリース、粉末治金、ブレーキパッド、ライニング、クラッチ、メカニカルシール、ゴム樹脂の添加剤等、様々な用途に使用されている。近年では、黒鉛の結晶の積層構造部分にLiイオンが入り込む現象を利用してリチウムイオン電池の電極材として使用されることもある。このように、黒鉛は様々な分野で使用されており、効率的な製造方法の確立は極めて重要といえる。
人造黒鉛を製造する際には、一般に、コークス等の炭素物質からなる原料材料を粉末化させて、おおむね2200℃以上で長時間加熱しなくてはならない。こうした2200℃以上の加熱に耐えられる材料として、炭素材(黒鉛材等)を用いることが一般的であり、炉およびその内壁、またはその他の炉を構成する各種部材(シャフト、ヒーター、断熱材)等に使用されている。
工業的には、アチソン炉(例えば、特許文献1)を使用し、バッチ式で黒鉛化することが多いが、効率的に製造するために連続式で行うことも取り組まれている。連続式で黒鉛化を行うには、炉を横方向に設置し、黒鉛材製の炉の中で黒鉛化の原料を載せたトレーをコンベアーで横方向に移動して加熱する方法などがある。この方法は高温での作業を要するため、設備の部品材料の選択が必要であり、また、排ガスの対策や入口と出口の熱の管理が困難な場合がある。このため、構造が複雑となり、設置や運用に手間がかかる。
近年、炉を縦におき、上部から原料を投入して内部で加熱し、下部から黒鉛を取り出す連続式の縦型黒鉛化炉が試みられている(特許文献2,3)。連続式の縦型黒鉛化炉は、炉の内部において、原料を下部から上部にかけて積み上げて加熱し、下方口から黒鉛を取り出しながら取り出した分に相当する原料を上部口から投入することによって、常に一定量の原料が炉の中に存在し、かつ、黒鉛化するものである。この方法は、加熱される部分が炉の内部のみであり、加熱に耐えるトレーやコンベアーが必要でないので、構造が比較的単純であり、かつ、移動のための設備や動力も必要がないため、余分な配線も必要なく、操作も簡単である。
特開平5−78111号公報 特開平11−209114号公報 特開2002−167208号公報
しかしながら、本発明者は、特許文献2に記載される連続式黒鉛化炉では、原料の炭素材料が徐々に加熱されていくため、炭素材料の中に存在する不純物が不適切な化合物となって蒸発していく場合があることを見出した。特に、炭素材料が石油に由来する石油コークスや石油コークスのカルサイン品(カルサインコークス)である場合、不純物として含む硫黄分が1500〜2200℃において、硫化水素または硫黄として脱離する。つまり、黒鉛化炉の内壁が炭素材(黒鉛材)である場合に、脱離した硫化水素等の硫黄分が、黒鉛化炉の内壁を構成する炭素と反応して、内壁を損耗させることを見出した。さらに、内壁を透過した硫化水素等の硫黄分が、炉を構成する各種部材(断熱材、ヒーター)の炭素とも反応して劣化損耗させることを見出した。
他方、特許文献3に記載される連続式黒鉛化炉は、通電加熱によって急速に加熱することが可能である。通電加熱では原料の炭素材料自体が発熱するため、先に記述した硫化水素等の硫黄分は原料の炭素材料と反応するので、炉の内壁、ヒーターおよび断熱材等を損耗劣化させることがない。しかしながら、本発明者は、通電加熱は、原料が5〜30μmの微粉末である場合、均一に加熱するには不十分であるため、得られる製品が不均一となることを見出した。また、特許文献1には、通電加熱による焼成体の黒鉛化する方法が記載されている。この方法は、炭化物をピッチ等のバインダーで混錬し、円筒状の固体にして黒鉛化材料を製造するものである。つまり、焼成体の黒鉛化を目的とした手法であって、粉末の黒鉛化には適してはいない。
以上のことから、本発明の目的は、炉およびその内壁、各種部材(シャフト、ヒーター、断熱材)等を炭素材(黒鉛材)で構成した場合でも、これら部材の硫黄分を含むガスによる損耗および劣化が極めて少なく、また、原料である炭素材料に均一に熱を加えることができ、均質な黒鉛が得られる縦型黒鉛化炉を提供する。
本発明は、一つの態様によれば、上部から投入された炭素材料を加熱して黒鉛化し、得られた黒鉛を下部から取り出す連続式の縦型黒鉛化炉であって、
前記炭素材料を投入するために前記炉の上部に設けられた投入口と、
前記投入口の下に設けられ、前記炉の内部および/または内壁に設けられた対向する少なくとも2つの電極であって、前記電極に通電して前記炭素材料を加熱する通電領域を形成する少なくとも2つの電極と、
前記通電領域の下で前記炉の外周部に設けられた熱源であって、前記炉の外側から前記炭素材料を加熱する外部熱源領域を形成する熱源と、
前記外部熱源領域の下で前記炉の外周部に設けられ、生成された黒鉛を冷却する冷却領域を形成する冷却用ジャケットと、
前記冷却領域の下に設けられた前記黒鉛を取り出す取り出し口と
を備える縦型黒鉛化炉を提供することができる。
また、本発明の別の態様によると、炭素材料を、縦型黒鉛化炉に投入する工程と、前記投入された炭素材料を、前記炉の内部および/または内壁に設けられた対向する少なくとも2つの電極で通電して1700〜2300℃に加熱する通電領域を通過させる工程と、さらに、前記炉の外周部に設けられた熱源で、2300〜3000℃に加熱する外部熱源領域を通過させて黒鉛に変換する工程と、前記黒鉛を冷却する工程と、前記冷却された黒鉛を前記炉の下部から取り出す工程とを少なくとも含む黒鉛の製造方法を提供することができる。
本発明の縦型黒鉛化炉によれば、炉内に、少なくとも2つの電極に通電して炭素材料を加熱する通電領域と、炉の外側から炭素材料を加熱する外部熱源領域を備えることで、炭素材料に粉末を用いた場合でも、均一に熱を加えることができるため、均質な黒鉛を得ることが可能となる。具体的には、炉の上部に少なくとも2つの電極を設置して炭素材料を直接通電することによって、炭素材料の温度を急速に上昇させ、炭素材料中にわずかに残存する不純物を脱離させる。このことによって、炉内に不純物由来の硫黄分を含むガスが、炉の内壁および炉を構成する各種部材、例えばシャフト、ヒーター、断熱材等の炭素材(等方性黒鉛)とではなく、原料の炭素材料と反応する。このため、炉およびその内壁、各種部材(シャフト、ヒーター、断熱材)等を等方性黒鉛で構成した場合でも、これら部材が硫黄分を含むガスによって損耗および劣化することが極めて少なく、炉を傷めにくい。さらに、通電領域の後に外部熱源領域を設けることにより、微粉末である炭素材料中に反応の不十分な箇所が生じず、炭素材料の加熱ムラが極めて少なくなることから、所望の黒鉛を得ることができる。
本発明に係る縦型黒鉛化炉を用いる黒鉛製造システムの一例である。 本発明に係る一実施態様の縦型黒鉛化炉における、通電領域での(a)長手方向の断面簡略図、(b)電極配置の概念図である。 図2の縦型黒鉛化炉における、通電領域での別の電極配置の概念図である。 図2の縦型黒鉛化炉における、通電領域での別の電極配置の概念図である。 本発明に係る別の一実施態様の縦型黒鉛化炉における、通電領域での(a)長手方向の断面簡略図、(b)電極配置の概念図である。 図5の縦型黒鉛化炉における、通電領域での別の電極配置の概念図である。 本発明に係る別の一実施態様の縦型黒鉛化炉における、通電領域での(a)長手方向の断面簡略図、(b)電極配置の概念図である。 図7の縦型黒鉛化炉における、通電領域での別の電極配置の概念図である。 図7の縦型黒鉛化炉における、通電領域での別の電極配置の概念図である。 本発明に係る縦型黒鉛化炉を用いる黒鉛製造システムの別の例である。
以下、本発明を実施するための一例である最良の形態を詳細に説明するが、本発明の範囲はこの形態に限定するものではない。
本発明は、一実施の形態によれば、連続式の縦型黒鉛化炉に関する。本発明の縦型黒鉛化炉は、上部から投入された炭素材料を加熱して黒鉛化し、得られた黒鉛を下部から取り出す連続式の縦型黒鉛化炉であって、炭素材料を投入するために炉の上部に設けられた投入口と、投入口の下に設けられ、炉の内部および/または内壁に設けられた対向する少なくとも2つの電極であって、電極に通電して炭素材料を加熱する通電領域を形成する少なくとも2つの電極と、通電領域の下で炉の外周部に設けられた熱源であって、炉の外側から炭素材料を加熱する外部熱源領域を形成する熱源と、外部熱源領域の下で炉の外周部に設けられ、生成された黒鉛を冷却する冷却領域を形成する冷却用ジャケットと、冷却領域の下に設けられた黒鉛を取り出す取り出し口とを備えている。
図1に、一実施形態の縦型黒鉛化炉2aを用いる黒鉛製造システム1aの一例を示す。炭素材料Mは、計量フィーダー6から炉2aの上部に設けられた、ホッパー7を備えた投入口2a−1を経て、炉2a内に一定量ずつ投入される。炉2aにおいて、炉2aの内部および/または内壁に少なくとも2つの電極3a−1、3a−2を、炭素材料Mを介して対向して備え、これらの電極3a−1、3a−2に通電することにより、炭素材料Mを加熱する通電領域を形成する。また、通電領域の下の炉2aの外周部に、熱源として加熱装置8を備え、炉2aの外側から炭素材料Mを加熱する外部熱源領域を形成する。炭素材料Mは、通電領域と外部熱源領域を通過されることにより、黒鉛Gに変換される。さらに、外部熱源領域の下の炉2aの外周部に、冷却用ジャケット11を備え、生成された黒鉛Gを冷却する冷却領域を形成する。冷却された黒鉛Gは、冷却領域の下に設けられた取り出し口12を経て、回収部13で回収される。
炉を構成する材料としては、炭素材(好ましくは黒鉛、さらに好ましくは等方性黒鉛)、アルミナ等のセラミックス材、タングステンおよびタンタル等の高融点金属材等が挙げられる。特に、耐熱性が求められることから炭素材(好ましくは黒鉛、さらに好ましくは等方性黒鉛)が好ましく、少なくとも炉の内壁(シャフト炉のシャフトを含む)は、好ましくは等方性黒鉛材料で構成される。
投入口は、炉の上部に設けられており、その上部にテーバー形状のホッパーを設置してもよい。さらに、ホッパーの上に計量フィーダーを設置し、炭素材料を一定量ずつ炉に投入してもよい。投入口から投入された炭素材料は、炉内に十分に充填された状態で加熱され黒鉛に変換される。
炉は、円筒状の形状、例えば高さ4.5m、内径20cmの円筒状の形状であってもよく、好ましくは、上方から下方に向けて加熱ゾーンと冷却ゾーンに分かれる。必要に応じて、加熱ゾーンの上に予熱ゾーンを設けることもある。加熱ゾーンは、炉の内部および/または内壁に少なくとも2つの電極を対向させて備え、これらの電極に通電することにより炭素材料を加熱する通電領域と、炉の外周部に熱源を備え、炉の外側から炭素材料を加熱する外部熱源領域を含んでいる。さらに、この2つの領域の後に、1900〜2100℃となる中間領域を含んでいてもよい。加熱ゾーンで炭素材料を黒鉛に変換した後に、得られた黒鉛を例えば30〜200℃に冷却する冷却領域を冷却ゾーンとして設ける。加熱ゾーンと冷却ゾーンの長さの割合は、好ましくは加熱ゾーンを1とすると、冷却ゾーンは0.2〜0.5である。通電領域と外部熱源領域の長さの割合は、好ましくは通電領域を1とすると、外部熱源領域は2〜10である。また、この2つの領域の後に、中間領域を含む場合、好ましくは通電領域の長さを1とすると、外部熱源領域は2〜10であり、中間領域は1〜5である。
炉は、また、炉の上部と下部に、シールガスとして不活性ガス(例えば、窒素、アルゴンまたはヘリウムなど)を流す。不活性ガスの流量は、例えば、上部では20〜30L/分、下部では1〜5L/分である。
通電領域は、炉の内部および/または内壁に少なくとも2つの電極を備え、これらの電極に通電することによって形成し、炭素材料を加熱する。通電によって、電極間の炭素材料において、炭素材料の持つ固有抵抗に応じたジュール熱が発生し、これにより加熱が行われる。電極への通電は、直流もしくは交流を用いて行ってよい。炭素材料が粉末の場合、一般に熱伝導率が小さく、炭素材料自体が断熱材の機能を果たすため、炭素材料から熱が逃げにくく、その結果、高温に保持することが可能である。
通電領域において、炭素材料が1700〜2300℃となるように加熱することが好ましい。1700℃より低いと、硫黄等の不純物が原料の炭素材料から十分には脱離しない。2300℃より高いと、原料の炭素材料が粉末である場合、加熱するための電力量が多くなりコストが高くなる。また、2300℃より高いと、温度制御が困難となり、所望の均一な黒鉛を得られない。通電による加熱は、電極間の中央部が最も高温となる。このため、炭素材料を効率的に加熱し得るように、炉内の電極配置を考慮することが好ましい。通電することにより電極間に発現する炭素材料の高温部は、通電に投入する電力を調節することによって、温度および範囲を設定することが可能である。高温部は、2300℃の最高温度とすることが好ましい。具体的には、電圧を30〜3000V、電流を30〜3000Aで調節することで達成される。この範囲とすることにより、短時間、例えば5分以内、好ましくは3分以内に、高温部を所望の温度まで上昇させることが可能となる。
電極は、少なくとも1対を形成するために、少なくとも2つ用いるものであり、一方は正極、もう一方は負極として使用される。電極の材料としては、炭素材等が挙げられる。電極の形状は、特に限定されるものではなく、円柱状、直方体、板状、若しくは円筒状としてもよく、2つとも同じ形状であっても異なる形状であってもよい。例えば、一方に円柱形状の電極を用いて、他方に板状形状の電極を用いてもよい。電極の大きさは、所望の高温部の範囲を得るのに適した大きさを使用することが好ましく、2つとも同じ大きさでも異なる大きさでもよいが、正極若しくは負極として作用をもたらす電極の面積が同等であることが好ましい。また、電極は、炉内において、炭素材料をより均一に加熱させると同時に、炭素材料を一定量ずつ通過させることが可能となるように、電極の大きさおよび配置を選択することが好ましい。
電極の配置の一つの態様としては、炉の内部に少なくとも1対の電極、例えば少なくとも1つの正極と少なくとも1つの負極を対向させて配置する。例えば、外部から電気を伝達させる配線を付した1対の各電極を、炉の内部で、炉に充填した炭素材料を介して、互いに対向させるようにして配置する。この場合、1対の各電極は、炉の内部を上下に延び炉の横断面の中心を通る中心軸から同等の距離を隔てて配置されることが好ましい。この態様において、各電極は、他方の電極および炉と直接接触せず、炭素材料を介している。
図2(a)、(b)は、外部から電気を伝達させる配線5を付した2つの円柱状の電極、すなわち1対の円柱状電極3a−1、3a−2を、炉2a内に充填した炭素材料Mを介して、互いに対向させる配置の例を示す。この場合、2つの電極3a−1、3a−2は、炉2aの内部の中心軸から同じ距離を隔てて配置される。図3は、2対(4つ)の円柱状電極3a−1、3a−2、3a−3、3a−4を用いる例を示す。また、図4は、2つの楕円断面の円柱状電極3a−5、3a−6を用いる例を示す。
別の一態様としては、炉の内壁に少なくとも1対の電極を対向させて配置する。例えば、1対の各電極を、炉内に充填した炭素材料を介して、炉の壁面に予め電極の大きさに合わせてくり貫かれた部分にはめ込み、互いに対向させるようにして配置する。この場合、1対の各電極を結ぶ線の中心が、炉の内部の中心軸に合致または並ぶように、炉を設計することが好ましい。この例において、電極は炉にはめ込まれて用いられるため、炉を通電させないように、炉と電極の間を耐熱性の絶縁物質、例えばセラミック等で覆うことが好ましい。絶縁物質としてセラミックを用いることが好ましく、特に炭化ケイ素が好ましい。セラミックは、一般に、耐熱温度として2000℃位が限界であるが、この手法による加熱は電極間の中央部が最も高温に加熱される。このため、電極近傍においては放熱がある程度行われればよく、セラミックでも十分に耐熱性を有する。また、静電気を避けるために、必要に応じてアースをとるなどの静電気対策をしてもよい。
図5(a)、(b)は、2つの直方形状の電極3b−1、3b−2を、炉2b内に充填した炭素材料Mを介して、炉2bの壁面の予め電極の大きさに合わせてくり貫かれた部分にはめ込む配置の例を示す。この場合、電極3b−1と3b−2を結ぶ線の中心は、炉2bの内部の中心軸と合致する配置をしている。図6は、2対(4つ)の電極3b−1、3b−2、3b−3、3b−4を、炉2c内に充填した炭素材料Mを介して、炉2cの壁面の予め電極の大きさに合わせてくり貫かれた部分にはめ込む配置を示す。電極3b−1、3b−2、3b−3、3b−4の1対ごとに結ぶ線の中心が、炉2cの内部の中心軸と合致する配置をしている。なお、電極3b−1、3b−2、3b−3、3b−4は、例えば電極3b−1、3b−3が正極の場合、電極3b−2、3b−4は負極である。
さらに、別の一態様としては、少なくとも1対の電極の一方が、炉の内壁の一部または全部に配置され、少なくとも1対の電極の他方が、炉の内部の中心軸上に配置される。例えば、外部から電気を伝達させる配線を付した1つの電極を炉の内部の中心軸上に配置し、炉内に充填した炭素材料を介して、対極である他の電極を炉の壁面に予め電極の大きさに合わせてくり貫かれた部分にはめ込むように配置する。この場合、電極は炉の壁面にはめ込んで用いられるため、炉を通電させないように、炉と電極の間を耐熱性の絶縁物質、例えばセラミック等で覆うことが好ましい。別の例としては、外部から電気を伝達させる配線を付した1つの電極を炉の内部の中心軸上に配置し、炉内に充填した炭素材料を介して、炉の内壁に沿って、炉の内壁と接して、若しくは、炉の内壁から内側方向へ一定の距離をおいて配置する。電極が炉の内壁と接する場合、炉を通電させないように、炉と接する電極の面を耐熱性の絶縁物質、例えばセラミック等で覆うことが好ましい。炉の内部の中心軸上に配置される電極は、例えば、炉の内径の1/5〜1/10の厚さが好ましく、例えば炉の内径の1/5〜1/10の直径を有する、炉と同心円の円柱状としてもよい。
さらに、図7(a)、(b)は、外部から電気を伝達させる配線5を付した、1対の電極の一方である、1つの電極3c−1を炉2bの内部の中心軸上に配置し、炉2b内に充填した炭素材料Mを介して、1対の電極の他方である、他の電極3b−1、3b−2を炉2bの壁面の予め電極の大きさに合わせてくり貫かれた部分にはめ込む配置の例を示す。図8は、電極3c−1の対極の電極として、炉2cの壁面に4つ電極3b−1、3b−2、3b−3、3b−4をはめ込む配置の例を示す。図9は、外部から電気を伝達させる配線5を付した1つの電極3c−1を炉2aの内部の中心軸上に配置し、炉2a内に充填した炭素材料Mを介して、炉2aの内壁に沿って、炉2aの内径より一回り小さい同心円の円筒形状とした電極3c−2を、炉2aの内壁から一定の距離をおいて配置する例を示す。電極3c−2は、電極3c−1と対極である。電極3c−2が炉2aの内壁と接する場合、炉2aを通電させないように、炉2aと電極3c−2の間を耐熱性の絶縁物質4、例えばセラミック等で覆うことが好ましい。
外部熱源領域は、炉の外周部に熱源を備え、炉の外側から加熱することによって形成し、炭素材料を加熱する。熱源としては、炭素材(等方性黒鉛)製のヒーター等が挙げられる。これらの熱源によって、炉の外周部から高温に加熱して、炭素材料を加熱することが可能である。また、別の熱源としては、炉の外周部にコイル備え、交流電流をかけて炭素材料を誘導加熱させる。この場合、印加する交流電流は、高周波であってもよい。必要に応じて、コイルである電熱線の外部を、断熱材等によって断熱される。この領域において、炭素材料を2300〜3000℃で加熱することが好ましい。2300℃より低いと、原料の炭素材料の黒鉛化が進まず、リチウムイオン電池の電極材として容量が小さくなる。3000℃より高いと、リチウムイオン電池の電極材としての特性(初期効率)が低くなってしまう。
炉の加熱ゾーンは、通電領域と外部熱源領域の後に、さらに、炭素材料を1900〜2100℃となる中間領域を含んでいてもよい。この領域は、特に加熱されることなく、それまでの工程での加熱による熱量を保持させる。このため、炉の外周部に保温材を取り付けることが好ましい。外部熱源領域で加熱された後の炭素材料を、中間領域を経ずに冷却ゾーンに投入すると、温度勾配が大きくなり炉内でブリッジングを生じ、次の工程へ進まなくなる場合がある。このため、中間領域を設けることにより、炭素材料が粉末の場合でも、外部熱源領域との温度勾配を緩やかにして原料の流れをスムーズとすることができ、より均質な黒鉛を得ることが可能となる。
炉の加熱ゾーンで炭素材料を黒鉛に変換した後に、冷却ゾーンの冷却領域で、得られた黒鉛を例えば30〜200℃に冷却する。冷却するために、炉の外周部に冷却ジャケットを取り付ける。また、冷却領域となる炉の部分は、加熱ゾーンと異なり、高温とならないため、加熱ゾーンとなる炉の部分とは別の材料で構成してもよい。
このようにして得られた黒鉛は、冷却領域の下に設けられた取り出し口を経て、回収部で回収される。回収された黒鉛の取り出し方法は、区切りなく取り出してもよいし、一定の量ずつ取り出してもよい。
図10に、本発明の一実施態様の縦型黒鉛化炉2dを用いる黒鉛製造システム1bの一例を示す。炭素材料Mは、計量フィーダー6から炉2dの上部に設けられた、ホッパー7を備えた投入口2d−1を経て、炉2d内に一定量ずつ投入される。炉2dにおいて、炉2dの内部および/または内壁に少なくとも2つの電極3d−1、3d−2を、炭素材料Mを介して対向するように備え、これらの電極3d−1、3d−2に通電することにより、炭素材料Mを加熱する通電領域を形成する。また、通電領域の下の炉2dの外周部に熱源として加熱装置8を備え、炉2dの外側から炭素材料Mを加熱する外部熱源領域を形成する。加えて、外部熱源領域の下の炉2dの外周部に保温材10を備え、1900〜2100℃となる中間領域を形成する。炭素材料Mは、通電領域、外部熱源領域および中間領域を通過されることにより、黒鉛Gに変換される。さらに、この中間領域の下の炉2dの外周部に冷却用ジャケット11を備え、生成された黒鉛Gを冷却する冷却領域を形成する。冷却された黒鉛Gは、冷却領域の下に設けられた取り出し口12を経て、回収部13で回収される。
炉2dは、また、炉2dの加熱ゾーンに、炉2dと一定の距離を隔てて断熱材14を備え、さらに断熱材14の外周部に冷却ジャケットのシェル15を設ける構造としてもよい。断熱材は、炭素材(カーボンファイバーの成形材)で構成してもよい。従来の炉においては、原料である炭素材料の加熱時に発生する硫黄を含むガスが、炉の内壁(シャフト)を透過して炉の外周部のヒーターおよび断熱材側に抜け出て、ヒーターおよび断熱材を損耗するため、保温効果および断熱効果が悪くなる場合があった。本発明の炉は、炉の上部で炭素材料を直接通電することにより、硫黄を含むガスが原料の炭素材料と反応するので、炉の内壁を透過することが極めて少なくなる。このため、ヒーターおよび断熱材が損耗されることなく、安定した保温効果および断熱効果を得ることが可能となる。
本発明の縦型黒鉛化炉によれば、炉の上部に少なくとも2つの電極を設置して炭素材料を直接通電することによって、炭素材料の温度を急速に上昇させ、炭素材料中にわずかに残存する不純物を脱離させる。さらには、炉内に不純物由来の硫黄分を含むガスがより高温である原料の炭素材料と反応するため、炉およびその内壁、各種部材(シャフト、ヒーター、断熱材)等を等方性黒鉛で構成した場合でも、これら部材が硫黄分を含むガスによって損耗および劣化することが極めて少なく、炉を傷めにくい。さらに、通電領域の後に外部熱源領域を設けることにより、炭素材料中に反応の不十分な箇所が生じず、炭素材料の加熱ムラが極めて少なくなることから、所望の黒鉛を得ることができる。
原料材料である炭素材料は、炭化水素を主とする物質であり、加熱すれば黒鉛化する。具体的には、石油コークス、石油コークスのカルサイン品(カルサインコークス)、石炭コークスおよびピッチなどが挙げられる。好ましくは、原油の処理の際の減圧蒸留油または残油流動接触装置(RFCC)のボトム油などから得た原料油で、特に初留点300℃以上、アスファルテン成分およびレジン成分の合計含量が25質量%以下、飽和成分の含量が40質量%以上の重油と芳香族指数fa0.3以上かつ初留点が150℃以上の重油を混合したものをディレードコーキングさせた石油コークスであり、これらは、鱗片状の黒鉛粉を得ることができる。また、この石油コークスのカルサイン品であるカルサインコークス(か焼コークス)も好ましい。このような石油コークスは、石炭コークスや他の炭素源に比べ多くの硫黄が含まれるが、均質で、結晶化に優れ、また、簡単に手に入るなどの点から、リチウムイオン蓄電池の負極材に用いる黒鉛とするのに大変好ましいものである。
減圧蒸留油は、原油を常圧蒸留装置にかけて、ガス・軽質油・常圧残油を得た後、この常圧残油を、例えば、10〜30Torrの減圧下、加熱炉出口温度320〜360℃の範囲で変化させて得られる減圧蒸留装置の蒸留油である。残油流動接触分解装置(RFCC)は、原料油として残油(常圧残油等)を使用し、触媒を使用して分解反応を選択的に行わせ、高オクタン価のFCCガソリンを得る流動床式の流動接触分解する装置である。残油流動接触分解装置のボトム油としては、例えば、常圧残油等の残油をリアクター反応温度(ROT)510〜540℃の範囲で、触媒/油質量比率を6〜8の範囲で変化させて製造したボトム油が挙げられる。ここで、残油流動接触装置(RFCC)の運転条件としては、1例を挙げれば、密度0.9293g/cm、残留炭素5.5質量%の常圧蒸留残油を反応温度530℃、全圧0.21MPa、触媒/油比6で流動接触分解し得られる。初留点は、JIS K 2254に従って、凝縮管の下端から留出油の最初の1滴が落下したときの温度計の読み(℃)である。
飽和成分、レジン成分およびアスファルテン成分の含有率は、TLC−FID法により測定できる。TLC−FID法とは、薄層クロマトグラフィー(TLC)により試料を飽和成分、アロマ成分、レジン成分およびアスファルテン成分に4分割し、その後、水素炎イオン化検出器(Flame Ionization Detector:FID)にて各成分を検出し、各成分量の全成分量に対する百分率をもって組成成分値としたものである。まず、試料0.2g±0.01gをトルエン10mlに溶解して、試料溶液を調整する。予め空焼きしたシリカゲル棒状薄層(クロマロッド)の下端(ロッドホルダーの0.5cmの位置)にマイクロシリンジを用いて1μlスポットし、ドライヤー等により乾燥させる。次に、このマイクロロッド10本を1セットとして、展開溶媒にて試料の展開を行う。展開溶媒としては、第1展開槽にヘキサン、第2展開槽にヘキサン/トルエン(体積比20:80)、第3展開槽にジクロロメタン/メタノール(体積比95:5)を使用する。飽和成分については、ヘキサンを溶媒とする第1展開槽にて溶出して展開する。アロマ成分については、第1展開の後、第2展開槽にて溶出して展開する。アスファルテン成分については、第1展開、第2展開の後、ジクロロメタン/メタノールを溶媒とする第3展開槽にて溶出して展開する。展開後のクロマロッドを測定器(例えば、ダイアヤトロン社(現三菱化学ヤトロン社)製の「イアトロスキャンMK−5」(商品名))にセットし、水素炎イオン化検出器(FID)で各成分量を測定する。各成分量を合計すると全成分量が得られる。
芳香指数faは、Knight法により求めることができる。Knight法では、炭素の分布を13C−NMR法による芳香族炭素のスペクトルとして3つの成分(A1,A2,A3)に分割する。ここで、A1は芳香族環内部炭素数、置換されている芳香族炭素と置換されていない芳香族炭素の半分(13C−NMRの約40〜60ppmのピークに相当)、A2は置換していない残りの半分の芳香族炭素(13C−NMRの約60〜80ppmのピークに相当)A3は脂肪族炭素数(13C−NMRの約130〜190ppmのピークに相当)であり、これらから、faは
fa=(A1+A2)/(A1+A2+A3)
により求められる。13C−NMR法が、ピッチ類の化学構造パラメータの最も基本的な量であるfaを定量的に求められる最良の方法であることは、文献(「ピッチのキャラクタリゼーション II. 化学構造」横野、真田、(炭素、1981(No.105)、p73〜81)に示されている。
ディレードコーキング法は、加圧条件下、ディレードコーカーによって重質油を熱処理して生コークスを得る方法である。ディレードコーカーの条件として、圧力が0.5〜0.7MPa、温度が500〜530℃の範囲が好ましい。このディレードコーカープロセスの生コークスは、水分を多量に含むため、乾燥した後、粉砕、分級に供する。
原料材料である炭素材料は、黒鉛化炉に導入される前に必要に応じて粉末化される。炭素材料の粉末の平均径は、好ましくは5〜50μmとする。5μmより小さいと、流動性が悪くなり、炉内をスムーズに流れなくなり連続処理が困難となる場合がある。50μmより大きいと、リチウムイオン電池電極材としてシートとしたとき十分な薄さが得られなくなる場合がある。平均粒径は、レーザ回折・散乱法を用いて測定できる。粉末化の方法は任意であるが、石油コークスを使用する場合、好ましくは、石油コークスを振動篩等で1mm〜5mm程度にし、その後、乾燥させる。一般的には、石油コークスは回収に揮発性の油成分と使用した際の水分とを含むので乾燥が必要であり、水分を好ましくは1質量%以下まで乾燥させるとよい。必要に応じ、好ましくは600℃程度の温度で1〜2時間加熱し、揮発性の油成分を除去させてもよい。この後、ジェットミル、ボールミル、ハンマーミルなどを使用して粉末にされる。炭素材料が石油コークス、石炭コークス等であれば、このまま黒鉛化することもよいが、そのあとの処理や出来上がる黒鉛粉の性状が良くなるため、一度好ましくは900〜1500℃程度の温度でか焼することがよい。かかるか焼はローターリーキルンを用いて行うことが一般的である。
本発明の別の一実施形態によれば、上記の縦型黒鉛化炉を用いた黒鉛の製造方法である。つまり、炭素材料を、縦型黒鉛化炉に投入する工程と、前記投入された炭素材料を、前記炉の内部および/または内壁に設けられた対向する少なくとも2つの電極で通電して1700〜2300℃に加熱する通電領域を通過させる工程と、さらに、前記炉の外周部に設けられた熱源で、2300〜3000℃に加熱する外部熱源領域を通過させて黒鉛に変換する工程と、前記黒鉛を冷却する工程と、前記冷却された黒鉛を前記炉の下部から取り出す工程とを少なくとも含む黒鉛の製造方法である。
この方法により、炭素材料に粉末を用いた場合でも、均一に熱を加えることができるため、均質な黒鉛を得ることが可能となる。
以下、実施例および比較例によって本発明を説明するが、本発明は実施例に限定するものではない。
[実施例1〜2および比較例1]
(1)炭素材料の準備
使用した原料である炭素材料は、以下のとおりである。
<生コークスA>
初留点335℃、アスファルテン+レジン分の含量が27質量%、飽和分の含量が43質量%の重油と芳香族指数0.4以上かつ初留点が168℃の重油の混合物を平均温度450℃でディレードコーキングした生コークスを、振動篩で3mm以下に篩ったのち、150〜200℃で熱風循環炉を用いて水分が1質量%以下になるまで乾燥させたのち、ローターミルで平均粒径12μmの粉末とした。
<か焼コークスA>(実施例1で使用)
ローターリーキルンを用いて生コークスAを約1500℃でか焼して得られたか焼コークスを振動篩等で3mm以下に篩ったのち、ローターミルで平均粒径12μmの粉末とした。
<生コークスB>
市販の生コークスを、振動篩で3mm以下に篩ったのち、150〜200℃で熱風循環炉を用いて水分が1質量%以下になるまで乾燥させたのち、ローターミルで平均粒径12μmの粉末とした。
<か焼コークスB>(実施例2、比較例1で使用)
ローターリーキルンを用いて生コークスBを約1500℃でか焼して得られたか焼コークスを振動篩等で3mm以下に篩ったのち、ローターミルで平均粒径12μmの粉末とした。
(2)黒鉛化
得られた炭素材料を、縦型黒鉛化炉を用いて黒鉛に変換させた。黒鉛化炉は、等方性黒鉛製の内壁を備えた高さ6.5m、内径20cmの円筒形状の炉であり、炉の上部に投入口、炉の下部に取り出し口が設置されている。投入口から炉に投入した炭素材料を、加熱して黒鉛に変換させた。また、加熱ゾーンとなる炉の外周部に一定の距離を隔てて、炭素材(カーボンファイバーの成形材)製の断熱材を備え、さらに断熱材の外周部に水冷ジャケットを設置した。炉の底部から上方1.0mの間に冷却ジャケットを設置して、黒鉛に変換した材料を冷却させ、取り出し口を経て回収部で回収した。実質上の黒鉛化時間が7〜10時間となるようにした。
実施例1〜2においては、図10の縦型黒鉛化炉2dのように、加熱ゾーンが3領域に区分された炉を用いる。1つ目の領域は通電領域であり、0.8m長である。炉内に、表面積100cm、厚さ30cmの板状の2つの電極を対向させて設置した。電極に2700Aの電流、30Vの電圧を印加して、炉に充填した炭素材料を介して通電させ、高温部が2200〜2300℃となるように加熱した(焼成部)。2つ目の領域は外部熱源領域であり、2.4m長である。通電領域の下の炉(シャフト)の外周部にカーボンヒーターを設置し、これによって炭素材料を2500〜2600℃に加熱した(焼成部)。3つ目の領域は中間領域であり、1.6m長となる。外部熱源領域の下の炉の外周部に保温材を設置し、上記の2つの領域で炭素材料に与えた熱を用いて、1900〜2100℃とした(焼鈍部もしくは第1冷却部)。なお、通電領域での炉と電極の間は、セラミックで絶縁されており、炉を加熱しないように熱を逃がす構造とした。
比較例1においては、実施例1で用いた炉の通電領域が設置されていない代わりに、外部熱源領域が2.4mとなる炉を用いた。外部熱源領域での条件は、実施例と同様にして実施した。この炉は、従来用いられるものと同様の使用である。
(3)黒鉛および黒鉛化炉の評価
得られた黒鉛粉末の性状を観察し、その硫黄分を蛍光X線分析装置を用いて測定した。また、使用した黒鉛化炉の内部を観察して損傷の有無を評価し、および排ガス中の二硫化炭素濃度を、ガスクロマトグラムを用いて測定した。
実施例1〜2で得られた黒鉛粉末は、硫黄分を測定すると、2.0ppm以下であった。また、実施例1〜2ともに、炉の排ガス中の二硫化炭素濃度は4600ppmであり、黒鉛化炉の内部を確認したところ、損傷は見られず、問題は見いだされなかった。さらに、炉の通電領域の外周部の断熱材の温度上昇は10℃以下であり、炉上部の損傷は軽微であり、問題は見いだされなかった。
比較例1で得られた黒鉛粉末は、硫黄分を測定すると、3.0ppmであった。炉排ガス中の二硫化炭素濃度は4600ppmであり、黒鉛化炉の内部を確認したところ、損傷が見られ、実施例で用いた炉の1つ目の領域(通電領域)に相当する位置でえぐれていた。また、実施例で用いた炉の通電領域に相当する位置における炉の外周部の断熱材の温度上昇は+100℃以上となった。これは、原料である炭素材料の加熱時に発生する硫黄を含むガスが、炉の内壁(シャフト)を透過して炉の外周部のヒーターおよび断熱材側に抜け出て、ヒーターおよび断熱材を損耗したため、断熱効果が悪くなったと推定する。
上記結果が示すように、炭素製の従来の黒鉛化炉を用いて、粉末、もしくは微粉末に近い状態で石油コークス等を黒鉛に変換した結果、黒鉛化炉内の壁面(等方性黒鉛製)がえぐれているという状況が発生していた。比較例においては、実施例で用いた黒鉛化炉と異なり、直接通電による加熱を用いないため、脱離した硫黄による損耗が生じ、炉およびその部材(シャフト、ヒーター、断熱材)の損傷が大きくなったと推定する。
1a、1b:縦型黒鉛化炉を用いた黒鉛製造システム
2a、2b、2c、2d:炉
2a−1、2d−1:投入口
3a−1、3a−2、3a−3、3a−4、3a−5、3a−6、3b−1、3b−2、3b−3、3b−4、3c−1、3c−2、3d−1、3d−2:電極
4:絶縁性物質
5:配線
6:計量フィーダー
7:ホッパー
8:加熱装置
10:保温材
11:冷却ジャケット
12:取り出し口
13:回収部
14:断熱材
15:冷却ジャケットシェル
M:炭素材料
G:黒鉛

Claims (6)

  1. 上部から投入された炭素材料を加熱して黒鉛化し、得られた黒鉛を下部から取り出す連続式の縦型黒鉛化炉であって、
    前記炭素材料を投入するために前記炉の上部に設けられた投入口と、
    前記投入口の下に設けられ、前記炉の内部および/または内壁に設けられた対向する少なくとも2つの電極であって、前記電極に通電して前記炭素材料を加熱する通電領域を形成する少なくとも2つの電極と、
    前記通電領域の下で前記炉の外周部に設けられた熱源であって、前記炉の外側から前記炭素材料を加熱する外部熱源領域を形成する熱源と、
    前記外部熱源領域の下で前記炉の外周部に設けられ、生成された黒鉛を冷却する冷却領域を形成する冷却用ジャケットと、
    前記冷却領域の下に設けられた前記黒鉛を取り出す取り出し口と
    を備える縦型黒鉛化炉。
  2. 前記少なくとも2つの電極の対極として、外部から電気を伝達させる配線を付した1つの電極をさらに備え、
    前記配線を付した1つの電極が、前記炉の内部の中心軸上に設けられ、
    前記少なくとも2つの電極が、前記炉の内壁の一部または全部に設けられる請求項1に記載の縦型黒鉛化炉。
  3. 前記電極が、1700〜2300℃の前記通電領域を形成し、前記熱源が、2300〜3000℃の前記外部熱源領域を形成する請求項1または請求項2に記載の縦型黒鉛化炉。
  4. 前記外部熱源領域と前記冷却領域の間に、1900〜2100℃となる中間領域が形成される、請求項1〜3のいずれか1項に記載の縦型黒鉛化炉。
  5. 前記炉の内壁が、等方性黒鉛材料で構成される請求項1〜4のいずれか1項に記載の縦型黒鉛化炉。
  6. 炭素材料を、縦型黒鉛化炉に投入する工程と、
    前記投入された炭素材料を、前記炉の内部および/または内壁に設けられた対向する少なくとも2つの電極で通電して1700〜2300℃に加熱する通電領域を通過させる工程と、
    さらに、前記炉の外周部に設けられた熱源で、2300〜3000℃に加熱する外部熱源領域を通過させて黒鉛に変換する工程と、
    前記黒鉛を冷却する工程と、
    前記冷却された黒鉛を前記炉の下部から取り出す工程と
    を少なくとも含む黒鉛の製造方法。
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