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JP2016155703A - 黒鉛の縦型黒鉛化炉による連続式製造方法 - Google Patents

黒鉛の縦型黒鉛化炉による連続式製造方法 Download PDF

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JP2016155703A
JP2016155703A JP2015033953A JP2015033953A JP2016155703A JP 2016155703 A JP2016155703 A JP 2016155703A JP 2015033953 A JP2015033953 A JP 2015033953A JP 2015033953 A JP2015033953 A JP 2015033953A JP 2016155703 A JP2016155703 A JP 2016155703A
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崇志 前田
Takashi Maeda
崇志 前田
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JX Nippon Oil and Energy Corp
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Abstract

【課題】炉を傷めることが少なく、均質な黒鉛を製造することが可能な黒鉛の製造方法を提供する。
【解決手段】炭素材料の全てまたは一部を拡散体に衝突させながら、縦型黒鉛化炉の投入口から投入する工程と、投入された炭素材料を、炉の内側に堆積させて2400〜3200℃に加熱し、黒鉛化する工程と、黒鉛化した炭素材料を冷却する工程と、冷却された黒鉛を炉の下部から取り出す工程とを少なくとも含み、炉の投入口から炉の内側に堆積した後の炭素材料の堆積層の表面までの距離が、1m以上である、黒鉛の連続式製造方法を提供する。
【選択図】なし

Description

本発明は、黒鉛の連続式の製造に関する。
黒鉛は、潤滑性、導電性、耐熱性、耐酸性および耐アルカリ性に優れており、電極用ペースト、蓄電材料、導電性塗料、導電性添加剤、固体潤滑剤、鉛筆、耐火物、製綱用保温材、ルツボ、パッキング剤、鋳物塗料剤、耐熱品、グリース、ブレーキパッド、クラッチ、メカニカルシール、および、ゴム樹脂の添加剤等、様々な用途に使用されている。近年では、黒鉛の結晶の積層構造部分にLiイオンが入り込む現象を利用してリチウムイオン電池の電極材として使用されることもある。黒鉛は、天然から産出されるものも存在するが、均一な組成や安定的供給の点から人造黒鉛が広く使用されている。
人造黒鉛を製造する際には、一般に、コークス等の炭素物質からなる原料材料を粉末化させて、おおむね2400℃以上で長時間加熱しなくてはならない。こうした2400℃以上の加熱に耐えられる材料として、炭素材(黒鉛材)を用いることが一般的であり、炉およびその内壁、又は炉を構成する各種部材(シャフト、ヒーター、断熱材)等に使用されている。
工業的には、アチエソン式炉のようにバッチ式(例えば、特許文献1)で黒鉛化することも多いが、効率的に製造するために連続式で行うことも取り組まれている。連続式で黒鉛化を行うには、炉を横方向に設置し、黒鉛材製の炉の中で黒鉛化の原料を載せたトレーをコンベアーで横方向に移動して加熱する方法などがある。この方法は、高温での作業を要するため、その設備について部品の材料の選択が必要であった。また、排ガスの対策や入り口と出口の熱の管理が困難な場合があり、このため、構造が複雑となり、設置や運用に手間がかかる。
このため、最近では、炉を縦におき、上部から原料を投入して内部で加熱し、下部から黒鉛を取り出すといった、垂直方向に連続式の縦型黒鉛化炉が試みられている(特許文献2、3)。縦型黒鉛化炉は、炉の内部において、原料を下部から上部にかけて積み上げて加熱し、下方口から黒鉛を取り出しながら、取り出した分に相当する原料を上方口から投入することによって、常に一定量の原料を炉の中に存在させながら黒鉛化するものである。この方法は、加熱される部分が炉の内部のみであり、加熱に耐えるトレーやコンベアーが必要でないので、構造が比較的単純であり、かつ、移動のための設備や動力も必要ないため、余分な配線も必要なく、操作も簡単である。
特開平9−100162号公報 特開2002−100359号公報 特開2014−196211号公報
垂直方向に連続式の縦型黒鉛化炉を用いて黒鉛を製造する場合、炉内の下部から上部にかけて積み上げられた原料は、加熱されて徐々に温度が上がっていき、原料から揮発成分や不純物等が脱離する。炉内の温度均一化や気化した不純物成分の除去のために、不活性ガスを炉の下部から上方に向けて流すことが試みられている。原料に微細粉末の炭素材料を用いると、炉内に充填された微細粉末の間に多くの空隙が発生するが、これらの空隙が繋がって形成した流路は全てがつながっているものではなく、炉内に部分的に存在するものであり、また、流路は複雑であり、炉の下部から流した不活性ガスを上方へ流すことは困難であった。
本発明者らは、これまでに、原料粉末を一定の大きさの粒子に加工してから炉に投入することで、炉の下部から上部に向けての不活性ガスの流れをつくるとともに流れを均一にすることを提案している(特許文献3)。この方法は、炉内の壁面を守るという観点で効果がみられたが、原料粉末を粒子化する工程や、黒鉛化した後に、粒子を再度微粒子に戻す工程が必要であるため、改善の余地があった。
均質な黒鉛を得るために、特許文献1には、バッチ式の黒鉛化炉で処理して、製品の純度を上げることが記載されているが、連続的に処理することができないため、生産効率がよくない。また、特許文献2には、原料にメソフェーズピッチの炭素繊維ミルドを用いて直接通電式の縦型黒鉛化炉で処理することで、製品の純度を上げることが記載されている。メソフェーズピッチの炭素繊維ミルドは、あまり不純物が存在しないため、炉内で気化する不純物も少なく、炉内の壁面を損傷することが少ない。しかし、炭素材料をメソフェーズピッチ化して炭素繊維ミルドとした後に、炉に投入して黒鉛化することは、工程が煩雑となることがあった。また、直接通電式の加熱方法は、原料の固有抵抗値が大きく影響し、また、高温部での流動が生じることもあり、加熱ムラが生じてしまう場合があり、得られる製品が不均一となることがあった。
また、原料に、例えば石油に由来する石油コークスや石油コークスのカルサイン品(カルサインコークス)を用いる場合、原料から例えば不純物である硫黄分が1500℃以上2000℃以下で硫化水素または硫黄として遊離する。このため、石油に由来する石油コークスや石油コークスのカルサイン品(カルサインコークス)を原料として、連続式の縦型黒鉛化炉を用いて黒鉛を製造する場合、炉内で原料から揮発成分や不純物が脱離して、炉の内壁を劣化させることがあった。本発明者らは、連続式の縦型黒鉛化炉を用いて黒鉛を製造する場合、原料から脱離する揮発成分や不純物が、炉内の上方に堆積している原料層およびその層の表面で特に高濃度となり、炉の上部の内壁が劣化しやすくなることを見出した。つまり、黒鉛化炉の内壁が黒鉛である場合、原料から遊離した硫化水素等の硫黄分が、炉の内壁を構成する炭素と反応して内壁を損耗・劣化させ、摩耗しやすくすることを見出した。さらに、内壁を透過した硫化水素等の硫黄分が断熱材を構成する炭素と反応したり、損耗・劣化した内壁の一部が製品に混入することもあった。
上記の課題に鑑みて、発明者らは鋭意検討した結果、原料を分散させながら炉内に供給し、炉内に堆積する前に十分に加熱し、原料に含まれる硫黄を含む揮発性の不純物等を蒸発させて取り除くことにより、原料に微細粉末の炭素材料を用いた場合でも、炉の内壁の損傷を妨げ、且つ、均質な黒鉛を得られることを見出した。
すなわち、本発明は、一つの態様によれば、炭素材料の全てまたは一部を拡散体に衝突させながら、縦型黒鉛化炉の投入口から投入する工程と、前記投入された炭素材料を、前記炉の内側に堆積させて2400〜3200℃に加熱し、黒鉛化する工程と、前記黒鉛化した炭素材料を冷却する工程と、前記冷却された黒鉛を前記炉の下部から取り出す工程とを少なくとも含み、前記炉の投入口から前記炉の内側に堆積した後の炭素材料の堆積層の表面までの距離が、1m以上である、黒鉛の連続式製造方法を提供することができる。
本発明によれば、原料を分散させながら炉内に供給し、炉内に堆積する前に十分に加熱し、原料に含まれる硫黄を含む揮発性の不純物等を蒸発させて取り除くことにより、原料に微細粉末の炭素材料を用いた場合でも、炉の内壁の損傷を妨げ、且つ、均質な黒鉛を得ることが可能となる。つまり、炭素材料を分散した状態で、例えば炭素材料の供給フィーダーの排出口から炉の内側に堆積した後の炭素材料の堆積層の表面までの距離、または、例えば炉の投入口から炉の内側に堆積した後の炭素材料の堆積層の表面までの距離において、炉内からの輻射熱あるいは対流伝熱によって炭素材料を加熱することで、炭素材料を構成する粒子の各々から揮発成分、硫黄や窒化物等の不純物等が蒸散および脱離するため、炉の内側に堆積した後の炭素材料には、これらの不純物等がほとんど含まれない。このため、その後の加熱による、炉内の炭素材料の堆積層からの硫黄や窒化物等の不純物等の蒸散および脱離は少なく、炉の内壁が劣化しにくい。また、上述したように、例えば炭素材料の供給フィーダーの排出口から炉の内側に堆積した後の炭素材料の堆積層の表面までの距離、または、例えば炉の投入口から炉の内側に堆積した後の炭素材料の堆積層の表面までの距離において、炭素材料を分散させながら供給することで、均一かつ効率的に初期の加熱が行われ、且つ、揮発成分、硫黄や窒化物等の不純物等を十分に蒸散および脱離させた後に炉内に堆積層を形成するため、炉内の温度を均一としやすく、炭素材料の加熱ムラも少なくなり、原料粉末同士の癒着も起こり難くなることから、効率よく所望の塊のない均質な黒鉛を得ることができる。
本発明に係る縦型黒鉛化炉を用いる黒鉛製造システムの一例である。 本発明に係る縦型黒鉛化炉を用いる黒鉛製造システムの別の一例である。
以下、本発明を実施するための形態を詳細に説明するが、本発明の範囲は、この形態に限定されるものではない。本発明の一実施形態によれば、黒鉛の連続式の製造に関する。
原料である炭素材料を炉に供給する手段としては、特に限定されるものではないが、供給フィーダーを用いてもよい。供給フィーダーは、例えば炭素材料を一定量ずつ投入するための計量フィーダーであってもよい。供給フィーダーの排出口の形状は、特に限定されるものではないが、円形の形状であってもよい。供給フィーダーの排出口の面積は、炭素材料から蒸散および脱離した揮発性の不純物等のガスが供給フィーダーへ流入することを防ぐために、炉の投入口よりも小さいことが望ましい。例えば、供給フィーダーの排出口の面積は、炉の投入口の面積の5〜30%であることが好ましい。供給フィーダーの排出口は、炉の投入口の上方に、例えば排出口の中心が炉の中心軸と重なるような位置で、炉の投入口と対向させるようにして設置してもよい。
炉は、例えば3〜10メートルの高さを有する円筒状の形状が好ましい。炉の内径は、10cm〜50cmが好ましく、20cm〜40cmがより好ましい。炉を構成する材料としては、炭素材(好ましくは黒鉛、より好ましくは等方性黒鉛)等が挙げられる。特に、炉は、耐熱性が求められることから炭素材(好ましくは黒鉛、より好ましくは等方性黒鉛)が好ましく、少なくとも炉の内壁(シャフト炉のシャフトを含む)は、好ましくは黒鉛、さらに好ましくは等方性黒鉛で構成する。投入口は、炉の上部に設けられている。
漏斗は、供給フィーダーの排出口から炉の投入口に炭素材料を投入する際に、炉の外部に炭素材料が流出することを防止するために、炉の投入口に設けられる。漏斗の形状は、特に限定されるものではなく、一般的なテーパー形状であってもよいし、テーパー形状の放射線状に広がった最大内径となる端部からまっすぐ伸びた円筒状の部材をさらに備えた形状であってもよい。漏斗は、例えばテーパー形状である場合、炉の投入口から上方に向けて放射線状に広がるようにして設置する。漏斗を構成する材料としては、耐熱性を有する素材であることが望ましく、例えば炭素材(好ましくは黒鉛、より好ましくは等方性黒鉛)等が挙げられる。なお、上述した供給フィーダーの排出口は、漏斗の上方に位置してもよく、例えば漏斗の上部の内側に位置してもよい。
また、供給フィーダーの排出口から炉の投入口に炭素材料を投入する際に、保温性を高めるために、例えば漏斗の外側に覆いを設けてもよい。覆いは、炭素材料の投入を妨げず、保温性を高めるものであれば特に限定されないが、例えば、供給フィーダーの排出口またはその上部から延びて漏斗全体を覆う構成で炉の上部に固定されるものであってもよく、さらに、炭素材料から蒸散および脱離した揮発性の不純物等のガスを排出するための空気口を有していることが好ましい。覆いを構成する材料としては、耐熱性を有する素材であることが望ましく、例えば炭素材(好ましくは黒鉛、より好ましくは等方性黒鉛)等が挙げられる。
拡散体は、供給フィーダーの排出口から投入された炭素材料の全てまたは一部と衝突させることで、衝突前の投入方向に対して垂直な炭素材料の落下面を拡張させて炭素材料を分散できる治具であれば特に限定されるものではない。拡散体を構成する材料としては、耐熱性を有する素材であることが望ましく、例えば炭素材(好ましくは黒鉛、より好ましくは等方性黒鉛)等が挙げられる。拡散体は、その表面に炭素材料が滞留しない性状、例えば炭素材料と衝突し得る表面が平滑であることが望ましい。
拡散体の形状は、炭素材料と衝突でき、衝突前の投入方向に対して垂直な炭素材料の落下面を拡げて所望の範囲まで炭素材料を分散できる形状であり、好ましくは錐体、例えば円錐または角錐である。拡散体の形状が錐体である場合、供給フィーダーの排出口から投入された炭素材料の投入の方向において、錐体の頂点を上方、底面を下方に配置することが好ましい。拡散体は、拡散体と衝突した後の炭素材料を全方位にできるだけ均一に分配するために、例えば錐体の底面の形状を真円、正三角形の形状、正多角形などの、中心軸に対して対象となる形状であることが好ましく、これらの錐体の形状において、頂点から底面までの高さと、底面の外接円の直径との比は、特に限定されるものではないが、頂点から底面までの高さを1とすると、底面の外接円の直径を0.5〜1.9としてもよい。また、底面が長方形などの長辺を有する多角形または楕円形の形状である場合は、頂点から底面までの高さと、底面の長辺または長軸の長さとの比は、上記範囲となることが好ましい。錐体の形状において、底面の外周を構成する各点と頂点とを結ぶ各線は、直線であっても曲線であってもよく、各線が同じタイプで構成されても、異なるタイプで構成されていてもよい。拡散体の大きさは、特に限定されるものではないが、錐体の底面の面積を、例えば供給フィーダーの排出口よりもやや大きいものとしてもよい。また、拡散体の大きさは、錐体の底面の面積を、例えば炉の投入口の1/10〜1/2としてもよい。
拡散体は、炉に入る前の炭素材料の落下方向を拡張させるために、供給フィーダーと漏斗の間に設けられることが好ましい。拡散体は、供給フィーダーと漏斗の間に、例えば拡散体の頂点を上方、底面を下方となるようにして、漏斗の上方の内壁、覆いの内壁または炉の上部に接合部材を介して、好ましくは拡散体の中心軸と炉の中心軸が重なるような位置で固定してもよい。固定用の連結部は、少なくとも2以上であることが好ましい。また、炭素材料を炉の内部に安定して供給するために、場合によって、拡散体、漏斗、接続部材または覆いに静電気除去手段を備えてもよい。例えば炉内の炭素材料の堆積層の表面温度を測定するために、例えば炉の投入口の上方に放射温度計を備える場合、放射温度計が炉内の炭素材料の堆積層の表面をとらえることができるように、拡散体の大きさおよび設置位置を選択してもよい。
炉は、上方から下方に向けて加熱領域と冷却領域に分かれていてもよい。この2つの領域の間に、1900〜2100℃となる中間領域をさらに含んでいてもよい。加熱領域は、炉の投入口の下の、炉の外周部に熱源を備え、炉の内側に堆積させた炭素材料を2400〜3200℃に加熱することを含んでいる。加熱領域で炭素材料を黒鉛化した後に、得られた黒鉛を例えば30〜200℃に冷却する冷却領域を設ける。加熱領域と冷却領域の長さの割合は、加熱領域を1とすると、冷却領域は好ましくは0.2〜0.5である。また、中間領域を含む場合、加熱領域の長さを1とすると、冷却領域は好ましくは0.5〜1であり、中間領域は好ましくは0.5〜1である。
炉は、また、炉の上部および/または下部に、シールガスとして不活性ガス(例えば、窒素、アルゴン又はヘリウムなど)を流す。不活性ガスの流量は、例えば、上部では5〜40L/分、下部では0.5〜10L/分である。
加熱領域は、炉の投入口の下の、炉の外周部に熱源を備え、炉の外部から加熱することで形成し、炭素材料を加熱する。熱源としては、カーボン(等方性黒鉛)製のヒーター等が挙げられる。これらの熱源によって炉の外周部を高温に加熱して、炭素材料を加熱することが可能である。
加熱領域は、炉の投入口から炉の内側に堆積した後の炭素材料の堆積層の表面までの、炭素材料が炉内に堆積していない状態で通過する通過ゾーンと、炉内に堆積した後の、炭素材料が堆積層を形成している堆積ゾーンとに区分することができる。
通過ゾーンは、炉の外周部に備えた熱源によって温められた炉からの輻射熱あるいは対流伝熱によって、通過する炭素材料を加熱する。通過ゾーンにおいて、炭素材料は1750〜2000℃となることが望ましい。通過ゾーンは、炉の投入口から炉の内側に堆積した後の炭素材料の堆積層の表面までの距離が1m以上、好ましくは1〜1.5mとなるように設置する。1mより短いと、揮発性成分の除去が不十分となる。1.5mより長いと、堆積ゾーンの長さが短くなるため、黒鉛化に要する熱量が不十分となり、所望の黒鉛の物性が得られないことがある。通過ゾーンを1m以上とすることで、炉の投入口より上方で拡散体によって分散された炭素材料が炉の投入口に対して均一に落下しやすくなり、このため炉内に堆積した炭素材料の堆積層の表面がより平滑な状態をなり得る。
通過ゾーンと堆積ゾーンの境界となる炭素材料の堆積層の表面は、その表面温度が、好ましくは1800〜2400℃、より好ましくは2000〜2300℃である。堆積層の表面温度は、例えば炉の外周部に設置された熱源の温度または通過ゾーンの長さによって調節し得る。1800℃より低いと、硫黄等の不純物が原料の炭素材料から十分には脱離していない状態で堆積するため、炉内の壁面を損傷させたり、製品が不均一となる。2400℃より高いと、堆積ゾーンの実質的延長となり、所望の黒鉛の物性が得られない場合がある。また、例えば堆積層の表面が炉内において所望の位置よりも炉の下部に存在することで堆積層の表面温度が2400℃より高くなる場合、堆積ゾーンが短くなるため、黒鉛化に要する熱量が不十分となり、所望の黒鉛の物性が得られないことがある。このため、堆積した後の炭素材料の堆積層の表面が、好ましくは2100℃未満、例えば1800〜2100℃のときは、更なる炭素材料の投入をせず、また、堆積した後の炭素材料の堆積層の表面が、好ましくは2100〜2400℃となると、新たな炭素材料をさらに投入して、堆積層の表面の温度を低下させてもよい。つまり、炭素材料の投入は、断続的な投入であってもよい。例えば、投入する工程が、前記炭素材料の断続的な投入を含み、堆積した後の炭素材料の堆積層の表面温度が2100℃未満となると投入を停止し、表面温度が2100〜2400℃となると炭素材料を炉にさらに投入してもよい。炉内の炭素材料の堆積層の表面温度は、例えば炉の投入口の上方に備えた放射温度計で測定することが可能である。
堆積ゾーンは、炉の外周部に備えた熱源によって、好ましくは2400〜3200℃、より好ましくは2600〜3000℃で加熱する。2400℃より低いと、硫黄等の不純物が原料の炭素材料から十分には脱離しない、または、原料の炭素材料の黒鉛化が進まないことがある。3200℃より高いと、カーボン製ヒーターや断熱材が消耗または損傷してしまい、炉の連続運転が困難となる。堆積ゾーンの堆積層のかさ密度は、例えば平均粒径12μm、見かけ密度(ゆるみ見かけ密度)0.38g/cmの炭素材料を、目標供給量278g/min以上として平均供給量233.3g/minで供給フィーダーから供給した場合に、例えば2400〜3200℃の状態において、500〜700kg/mであることが好ましい。500kg/mより低いまたは700kg/mより高い場合、ブリッジング(棚釣り)など粉体の流動性が悪くなり粉詰まりを起こす可能性が大きい。
炭素材料は、通過ゾーン、場合によって拡散体と衝突後から炉の投入口に到達するまでの領域も含めたゾーンにおいて、炉の外周部に備えた熱源からまたは炉内の堆積した後の炭素材料からの輻射熱あるいは対流伝熱によって加熱され、炭素材料から多くの揮発成分、硫黄や窒化物等の不純物等を蒸散および脱離させることが可能となる。通過ゾーンで多くの揮発成分、硫黄や窒化物等の不純物等を蒸散および脱離させた炭素材料は、後の堆積ゾーンにおいて、残りの硫黄や窒化物等の不純物等を蒸散および脱離させるがわずかな量であり、そのわずかな量の主に水素などの不純物は、堆積層の表面から脱離して炉の上方へ上がっていき、例えば炉の上部に流れる不活性ガスによって、蒸散および脱離した不純物等を堆積層内に滞留することなく取り除くことが可能となる。炉内に堆積した炭素材料は、一定の速度または一定の間隔で炉の下方に進んでいき、例えば堆積ゾーンで5〜7時間保持されるようにして、加熱領域内で黒鉛化してもよい。
炉の加熱領域の後に、さらに、炭素材料を1900〜2100℃となる中間領域を含んでいてもよい。この領域は、特に加熱されることなく、例えば炉の外周部に保温材を備えて、それまでの工程での加熱による熱量で保持させる。または、急激な冷却とならないように、炉の外周部に熱源を備えて、炭素材料が1900〜2100℃となるようにコントロールすることが好ましい。この領域を設けることにより、炭素材料が粉末の場合でも、外部熱源領域との温度勾配を緩やかにして原料の流れをスムーズとすることができ、より均質な黒鉛を得ることが可能となる。
炉の加熱領域で炭素材料を黒鉛に変換した後に、冷却領域において、得られた黒鉛を例えば30〜200℃に冷却する。冷却するために、炉の外周部に冷却ジャケットを取り付ける。
このようにして得られた黒鉛は、冷却領域の下に設けられた取り出し口を経て、回収部で回収される。回収された黒鉛の取り出し方法は、区切りなく取り出してもよいし、一定の量ずつ取り出してもよい。
上述した構成を含む縦型黒鉛化炉の一態様としては、上部から投入された炭素材料を加熱して黒鉛化し、得られた黒鉛を下部から取り出す連続式の縦型黒鉛化炉であって、前記炭素材料を受け入れるための投入口と、前記投入口に設けられた漏斗と、前記漏斗の上方に設けられた前記炭素材料を前記炉に投入するための供給フィーダーと、前記供給フィーダーと前記漏斗の間に設けられ、前記炭素材料の全てまたは一部と衝突させる拡散体と、前記投入口の下で前記炉の外周部に設けられた熱源であって、前記炉の内側で前記炭素材料を加熱する熱源と、前記熱源の下で前記炉の外周部に設けられた冷却用ジャケットであって、生成された黒鉛を冷却する冷却領域を形成する冷却用ジャケットと、前記冷却領域の下に設けられた前記黒鉛を取り出す取り出し口とを備える縦型黒鉛化炉である。
図1に、本発明の一実施形態の縦型黒鉛化炉11を用いる黒鉛製造システム10の一例を示す。炭素材料Mは、炉11の投入口11aの上方に設置した計量フィーダー12の排出口12aから投入する。炉の投入口11aに漏斗13を設け、漏斗13の上方の、炉の投入口11aと計量フィーダーの排出口12aの間となる位置に拡散体14を設置する。拡散体14の上方の計量フィーダーの排出口12aから投入した炭素材料Mの全てまたは一部を拡散体14と衝突させ、拡散体14と衝突する前の投入の方向に対して垂直な面に炭素材料Mを分散させながら炉12の内部に投入する。この際、炭素材料Mが外部に漏れないように、漏斗13の外側の、計量フィーダーの排出口12aから炉の投入口11aにかけて、覆い15で囲う。炉11において、投入口11aの下の、炉11の外周部に熱源として加熱装置16を備え、炉11の外側から加熱する加熱領域を形成する。このとき、炉の投入口11aから炉11の内側に堆積した後の炭素材料の堆積層の表面Mdまでの距離は、少なくとも1mである。炭素材料Mは、炉の内側に堆積させて2400〜3200℃に加熱し、黒鉛Gに黒鉛化される。さらに、加熱装置16の下の炉11の外周部に冷却用ジャケット17を備え、生成された黒鉛Gを冷却する冷却領域を形成する。冷却された黒鉛Gは、冷却領域の下に設けられた取り出し口18を経て、回収部19で回収される。
また、図2に、本発明の一実施形態の縦型黒鉛化炉31を用いる黒鉛製造システム30の別の一例を示す。炭素材料Mは、炉31の投入口31aの上方に設置した計量フィーダー32の排出口32aから投入する。炉の投入口31aに漏斗33を設け、漏斗33の上方の、炉の投入口31aと計量フィーダーの排出口32aの間となる位置に拡散体34を設置する。拡散体34の上方の計量フィーダーの排出口32aから投入した炭素材料Mの全てまたは一部を拡散体34と衝突させ、拡散体34と衝突する前の投入の方向に対して垂直な面に炭素材料Mを分散させながら炉32の内部に投入する。この際、炭素材料Mが外部に漏れないように、漏斗33の外側の、計量フィーダーの排出口32aから炉の投入口31aにかけて、覆い35で囲う。炉において、投入口31aの下の、炉31の外周部に熱源として加熱装置36aと加熱装置36aの下に加熱装置36bとを備え、炉31の外側から加熱する加熱領域を形成する。このとき、炉の投入口31aから炉31の内側に堆積した後の炭素材料の堆積層の表面Mdまでの距離は、少なくとも1mである。炭素材料Mは、炉の内側に堆積させて2400〜3200℃に加熱する。加えて、加熱装置36bの下の炉31の外周部に保温材40を備えて中間領域とし、炭素材料を1900〜2100℃とする。炭素材料Mは、これらの領域を通過させることにより、黒鉛Gに黒鉛化される。さらに、保温材40の下の炉の外周部に冷却用ジャケット37を備え、生成された黒鉛Gを冷却する冷却領域を形成する。冷却された黒鉛Gは、冷却領域の下に設けられた取り出し口38を経て、回収部39で回収される。
原料材料である炭素材料は、炭化水素を主とする物質であり、加熱すれば黒鉛化する。具体的には、石油コークス、石油コークスのカルサイン品(カルサインコークス)、石炭コークス及びピッチなどが挙げられる。好ましくは、原油の処理の際の減圧蒸留油又は残油流動接触装置(RFCC)のボトム油などから得た原料油で、特に初留点300℃以上、アスファルテン成分及びレジン成分の合計含量が25質量%以下、飽和成分の含量が40質量%以上の重油と、芳香族指数fa0.3以上かつ初留点が150℃以上の重油を混合したものをディレードコーキングさせた石油コークスであり、これらは、鱗片状の黒鉛粉が得られるものである。また、この石油コークスのカルサイン品であるカルサインコークス(か焼コークス)も好ましい。このような石油コークスは、石炭コークスや他の炭素源に比べ多くの硫黄が含まれるが、均質で、結晶化に優れ、また、簡単に手に入るなどの点から、リチウムイオン蓄電池の負極材に用いる黒鉛とするのに大変好ましいものである。
減圧蒸留油は、原油を常圧蒸留装置にかけて、ガス・軽質油・常圧残油を得た後、この常圧残油を、例えば、10〜30Torrの減圧下、加熱炉出口温度320〜360℃の範囲で変化させて得られる減圧蒸留装置の蒸留油である。残油流動接触分解装置(RFCC)は、原料油として残油(常圧残油等)を使用し、触媒を使用して分解反応を選択的に行わせ、高オクタン価のFCCガソリンを得る流動床式の流動接触分解する装置である。残油流動接触分解装置のボトム油としては、例えば、常圧残油等の残油をリアクター反応温度(ROT)510〜540℃の範囲で、触媒/油質量比率を6〜8の範囲で変化させて製造したボトム油が挙げられる。ここで、残油流動接触装置(RFCC)の運転条件としては、1例を挙げれば、密度0.9293g/cm、残留炭素5.5質量%の常圧蒸留残油を反応温度530℃、全圧0.21MPa、触媒/油比6で流動接触分解し得られる。初留点は、JIS K 2254に従って、凝縮管の下端から留出油の最初の1滴が落下したときの温度計の読み(℃)である。
飽和成分、レジン成分及びアスファルテン成分の含有率は、TLC−FID法により測定できる。TLC−FID法とは、薄層クロマトグラフィー(TLC)により試料を飽和成分、アロマ成分、レジン成分及びアスファルテン成分に4分割し、その後、水素炎イオン化検出器(Flame Ionization Detector:FID)にて各成分を検出し、各成分量の全成分量に対する百分率をもって組成成分値としたものである。まず、試料0.2g±0.01gをトルエン10mlに溶解して、試料溶液を調整する。予め空焼きしたシリカゲル棒状薄層(クロマロッド)の下端(ロッドホルダーの0.5cmの位置)にマイクロシリンジを用いて1μlスポットし、ドライヤー等により乾燥させる。次に、このマイクロロッド10本を1セットとして、展開溶媒にて試料の展開を行う。展開溶媒としては、第1展開槽にヘキサン、第2展開槽にヘキサン/トルエン(体積比20:80)、第3展開槽にジクロロメタン/メタノール(体積比95:5)を使用する。飽和成分については、ヘキサンを溶媒とする第1展開槽にて溶出して展開する。アロマ成分については、第1展開の後、第2展開槽にて溶出して展開する。アスファルテン成分については、第1展開、第2展開の後、ジクロロメタン/メタノールを溶媒とする第3展開槽にて溶出して展開する。展開後のクロマロッドを測定器(例えば、ダイアヤトロン社(現三菱化学ヤトロン社)製の「イアトロスキャンMK−5」(商品名))にセットし、水素炎イオン化検出器(FID)で各成分量を測定する。各成分量を合計すると全成分量が得られる。
芳香指数faは、Knight法により求めることができる。Knight法では、炭素の分布を13C−NMR法による芳香族炭素のスペクトルとして3つの成分(A1,A2,A3)に分割する。ここで、A1は芳香族環内部炭素数、置換されている芳香族炭素と置換されていない芳香族炭素の半分(13C−NMRの約40〜60ppmのピークに相当)、A2は置換していない残りの半分の芳香族炭素(13C−NMRの約60〜80ppmのピークに相当)A3は脂肪族炭素数(13C−NMRの約130〜190ppmのピークに相当)であり、これらから、faは
fa=(A1+A2)/(A1+A2+A3)
により求められる。13C−NMR法が、ピッチ類の化学構造パラメータの最も基本的な量であるfaを定量的に求められる最良の方法であることは、文献(「ピッチのキャラクタリゼーション II. 化学構造」横野、真田、(炭素、1981(No.105)、p73〜81)に示されている。
ディレードコーキング法は、加圧条件下、ディレードコーカーによって重質油を熱処理して生コークスを得る方法である。ディレードコーカーの条件として、圧力が0.5〜0.7MPa、温度が500〜530℃の範囲が好ましい。このディレードコーカープロセスの生コークスは、水分を多量に含むため、乾燥した後、粉砕、分級に供する。
原料材料である炭素材料は、黒鉛化炉に導入される前に必要に応じて粉末化される。炭素材料の粉末の平均粒径は、好ましくは5〜50μm、より好ましくは10〜40μmとする。5μmより小さいと、流動性が悪くなり、炉内をスムーズに流れなくなり連続処理が困難となる場合がある。50μmより大きいと、粉末内の揮発成分、硫黄や窒化物等の不純物等の蒸散および脱離が不十分となる場合がある。また、リチウムイオン二次電池の電極材として用いる場合に不適切となることがある。平均粒径は、レーザ回折・散乱法を用いて測定できる。粉末化の方法は任意であるが、石油コークスを使用する場合、好ましくは、石油コークスを振動篩等で1mm〜5mm程度にし、その後、乾燥させる。一般的には、石油コークスは回収に揮発性の油成分と使用した際の水分とを含むので乾燥が必要であり、水分を好ましくは1質量%以下まで乾燥させるとよい。必要に応じ、好ましくは600℃程度の温度で1〜2時間加熱し、揮発性の油成分を除去させてもよい。この後、ジェットミル、ボールミル、ハンマーミルなどを使用して粉末にされる。炭素材料が石油コークス、石炭コークス等であれば、このまま黒鉛化することもよいが、そのあとの処理や出来上がる黒鉛粉の性状が良くなるため、一度好ましくは900〜1500℃程度の温度でか焼することがよい。かかるか焼はローターリーキルンを用いて行うことが一般的である。
本発明によれば、原料を分散させながら供給し、炉内に堆積する直前までに十分に加熱して、これらに含まれる硫黄を含む揮発性の不純物を蒸発させて取り除くことにより、原料に微細粉末の炭素材料を用いた場合でも、炉の内壁の損傷を妨げ、均質な黒鉛を得ることが可能となる。
以下、実施例および比較例によって本発明を説明するが、本発明は実施例に限定されるものではない。
<実施例1>
(1)炭素材料の準備
初留点332℃、アスファルテン+レジン分の含量が23質量%、飽和分の含量が47質量%の重油と芳香族指数0.4以上かつ初留点が160℃の重油の混合物を、平均温度450℃でディレードコーキングして生コークスを得た。生コークスを、か焼炉を用いて約1500℃でか焼した。得られたか焼コークスを振動篩等で3mm以下に篩ったのち、ローターミルで平均粒径12μmの粉末とした。
(2)黒鉛化
得られた炭素材料を、縦型黒鉛化炉を用いて黒鉛化した。黒鉛化炉は、黒鉛製の内壁を備えた高さ5.0メートル、内径20cmの円筒形状の炉を有し、炉の上部に投入口、炉の下部に取り出し口を設置した。炉の投入口に漏斗を設置した。漏斗は、図2に示すように、炉の投入口から上方に向けてテーパー形状の放射線状に広がっており、その最大内径
32cmとなる部分からまっすぐ伸びた円筒状の部材を備えた形状であり、炉の投入口から上方に0.35mの高さを有する。漏斗の上方の円筒状部分の内部に、拡散体を設置した。拡散体は、黒鉛製の直径6cmの円錐体の形状である。拡散体の底面には、底面の外周を4等分する位置に、4箇所の固定用の端部を有している。拡散体は、その頂点を上方、底面を下方となるようにして、拡散体の中心軸と炉の中心軸が重なるような位置で、拡散体の底面の端部と漏斗の内壁との間に黒鉛製の接合部材を設置して固定した。炉の投入口から0.35m上方に供給フィーダーの排出口を設置した。供給フィーダーの排出口は、内径5.3cmの円形の形状であり、排出口の中心と炉の中心軸が重なるような位置で設置した。
供給フィーダーの排出口から、233.3g/minの速度で1500g/mの量の炭素材料を炉に投入し、炉内に、炉の5分の4の高さ程度(投入口から1m下方となる位置)で堆積させ、炉の投入口から炉の内側に堆積した後の炭素材料の堆積層の表面までの距離を1.0mとし、加熱して黒鉛化した。また、黒鉛化炉の下部にシールガスとして毎分1L程度の窒素ガスを導入しながら黒鉛化を行った。炉内の堆積層の表面が2100℃以上となったら、再度、上記供給フィーダーの排出口から233.3g/minの速度で1500g/mの量の炭素材料を30秒間炉に投入した。炉の投入口から炉の内側に堆積した後の炭素材料の堆積層の表面までの距離が、常に1.0mとなるように、炭素材料の投入と炉の下方からの抜き出しを制御した。炉内の炭素材料の堆積層のかさ密度は、堆積層の表面温度が2550℃の状態で、約600kg/mであった。なお、炉の投入口の上方に設置した赤外温度計(チノー社製、IR−CAQ7CK)を用いて測定した。
炉の投入口の下の加熱領域は、3ゾーンに区分されており、各ゾーンは1.1mである。1つ目および2つ目のゾーンには、炉の外周部にヒーターを設置し、これによって炭素材料を各々最高部が2550℃となるように2550℃に加熱した(焼成部)。3つ目のゾーンは中間領域であり、2つ目のゾーンの下の炉の外周部に保温材を設置し、上記の2つのゾーンで炭素材料に与えた熱を用いて、2000℃とした(焼鈍部もしくは第1冷却部)。炉の底部から上方1mの間に冷却ジャケットを設置して、黒鉛に変換した材料を冷却させ、取り出し口を経て回収部で回収した。実質上の黒鉛化時間が7〜8時間となるようにした。
(3)黒鉛及び黒鉛化炉の評価
得られた黒鉛粉末の性状について、篩試験機を用いて癒着の有無を評価した。また、使用した黒鉛化炉の内部を観察して損傷の位置と摩耗深さを評価し、および投入した量と炉の摩耗深さから、摩耗速度(=(減耗深さmm/処理量ton))を算出した。摩耗速度は2.5mm/ton未満であるときに良好とした。評価結果を表1に示す。
<実施例2>
1つ目および2つ目のゾーンにおいて炭素材料を各々最高部で3000℃となるように
3000℃に加熱した以外は、実施例1と同様に行い、黒鉛を得た。評価結果を表1に示す。
<比較例1>
炉内に、炉の8分の7の高さ程度(投入口から0.43m下方となる位置)で堆積させ、炉の投入口から炉の内側に堆積した後の炭素材料の堆積層の表面までの距離を0.43mとしたこと、および、炉内の堆積層の表面が1700℃以上となったら、再度、炭素材料を30秒間炉に投入して、炉の投入口から炉の内側に堆積した後の炭素材料の堆積層の表面までの距離が、常に0.43mとなるように、炭素材料の投入と炉の下方からの抜き出しを制御したこと以外は、実施例1と同様に行い、黒鉛を得た。評価結果を表1に示す。なお、炉内の炭素材料の堆積層のかさ密度は、堆積層の表面温度が1600〜1700℃の状態で、約600kg/mであった。
<比較例2>
炉内に、炉の8分の7の高さ程度(投入口から0.43m下方となる位置)で堆積させ、炉の投入口から炉の内側に堆積した後の炭素材料の堆積層の表面までの距離を0.43mとしたこと、炉内の堆積層の表面が1600℃以上となったら、再度、炭素材料を30秒間炉に投入して、炉の投入口から炉の内側に堆積した後の炭素材料の堆積層の表面までの距離が、常に0.43mとなるように、炭素材料の投入と炉の下方からの抜き出しを制御したこと、および、加熱領域の1つ目および2つ目のゾーンにおいて炭素材料を最高部で各々2800℃、3000℃となるように各々2800℃および3000℃に加熱し、3つ目のゾーンを2200℃で保持したこと以外は、実施例1と同様に行い、黒鉛を得た。評価結果を表1に示す。なお、炉内の炭素材料の堆積層のかさ密度は、堆積層の表面温度が1500〜1600℃の状態で、約600kg/mであった。
Figure 2016155703
実施例1および実施例2で得られた黒鉛粉末は、癒着なく、均質な製品であった。実施例1は、5990kg処理した後の、黒鉛化炉の内部を確認したところ、炉の投入口から45cm下方の部分に14mmの深さの摩耗痕がみられた。実施例2は、2500kg処理した後の、黒鉛化炉の内部を確認したところ、炉の投入口から30cm下方の部分に5mmの深さの摩耗痕がみられた。
一方、比較例1および比較例2で得られた黒鉛粉末は、一部癒着がみられた。1400kg処理した後の、黒鉛化炉の内部を確認したところ、炉の投入口から45cm下方の部分に15mmの深さの摩耗痕がみられた。1200kg処理した後の、黒鉛化炉の内部を確認したところ、炉の投入口から28cm下方の部分に12mmの深さの摩耗痕がみられた。
実施例1および実施例2での摩耗速度は、2.3mm/tonおよび2.0mm/tonであり、比較例1および比較例2での摩耗速度は、10.7mm/tonおよび10.0mm/tonであり、前者では炉の内壁が劣化しにくいことが確認できた。
10、30 :縦型黒鉛化炉を用いた黒鉛製造システム
11、31 :炉
11a、31a :炉の投入口
12、32 :計量フィーダー
12a、32a :計量フィーダーの排出口
13、33 :漏斗
14、34 :拡散体
15、35 :覆い
16、36a、36b:加熱装置
17、37 :冷却ジャケット
18、38 :取り出し口
19、39 :回収部
40 :保温材
M :炭素材料
Md :炉内に堆積した炭素材料の堆積層の表面
G :黒鉛

Claims (3)

  1. 炭素材料の全てまたは一部を拡散体に衝突させながら、縦型黒鉛化炉の投入口から投入する工程と、
    前記投入された炭素材料を、前記炉の内側に堆積させて2400〜3200℃に加熱し、黒鉛化する工程と、
    前記黒鉛化した炭素材料を冷却する工程と、
    前記冷却された黒鉛を前記炉の下部から取り出す工程と
    を少なくとも含み、前記炉の投入口から前記炉の内側に堆積した後の炭素材料の堆積層の表面までの距離が、1m以上である、黒鉛の連続式製造方法。
  2. 前記投入する工程が、前記炭素材料の断続的な投入を含み、前記表面温度が2100〜2400℃となると前記炭素材料を前記炉にさらに投入する、請求項1に記載の黒鉛の連続式製造方法。
  3. 前記拡散体の形状が、錐体であり、前記投入の方向において前記錐体の頂点を上方、底面を下方に配置する、請求項1または2に記載の黒鉛の連続式製造方法。
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