JP6252200B2 - 非水電解液およびそれを用いた蓄電デバイス - Google Patents
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Description
また、リチウム二次電池の負極としては、リチウム金属、リチウムを吸蔵及び放出可能な金属化合物(金属単体、酸化物、リチウムとの合金等)、炭素材料が知られている。特に、炭素材料のうち、例えばコークス、黒鉛(人造黒鉛、天然黒鉛)等のリチウムを吸蔵及び放出することが可能な炭素材料を用いた非水系電解液二次電池が広く実用化されている。上記の負極材料はリチウム金属と同等の極めて卑な電位でリチウムと電子を貯蔵・放出するために、多くの溶媒が還元分解を受ける可能性を有しており、負極材料の種類に拠らず負極上で電解液中の溶媒が一部還元分解してしまい、分解物の沈着、ガス発生、電極の膨れにより、リチウムイオンの移動が妨げられ、特に電池を高温、高電圧で使用した場合のサイクル特性等の電池特性を低下させる問題や電極の膨れにより電池が変形する等の問題があった。更に、リチウム金属やその合金、スズ又はケイ素等の金属単体や酸化物を負極材料として用いたリチウム二次電池は、初期の容量は高いもののサイクル中に微粉化が進むため、炭素材料の負極に比べて非水溶媒の還元分解が加速的に起こり、電池容量やサイクル特性のような電池性能が大きく低下することや電極の膨れにより電池が変形する等の問題が知られている。
そのような状況下、リチウム二次電池が搭載されている電子機器では、電力消費量が増大し、高容量化の一途をたどっている。電子機器からの発熱による電池の温度上昇や、電池の充電設定電圧の高電圧化等、ますます電解液にとっては分解が起こり易くなる環境にあり、ガス発生により、電池が膨れたり、電流遮断等の安全機構が作動して電池が使用出来なくなる等の問題があった。
そこで、本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、特定の化合物を添加することにより、蓄電デバイスを高温、高電圧で使用した場合の保存後の容量維持率を向上させることができ、かつガス発生を抑制させることができることを見出し、本発明を完成した。
本発明の非水電解液は、非水溶媒に電解質塩が溶解されている非水電解液において、前記一般式(I)で表されるリチウム塩を非水電解液中に含有することを特徴とする。
本発明で使用される化合物はオキソカーボン酸を有し、更にホウ素原子やリン原子などの金属原子を有する錯体塩である。このことから、反応性が高く、正極と負極の両方の活性点に素早く反応するとともに、被膜にホウ素原子やリン原子などの金属原子が含まれることでより強固な被膜を形成するため高温、高電圧保存特性を向上させ、溶媒の分解によるガス発生を抑制するものと考えられる。
本発明の非水電解液に使用される非水溶媒としては、環状カーボネート、鎖状エステル、ラクトン、エーテル、及びアミドから選ばれる1種又は2種以上が好適に挙げられる。高温下で電気化学特性が相乗的に向上するため、鎖状エステルが含まれることが好ましく、鎖状カーボネートが含まれることが更に好ましく、環状カーボネートと鎖状カーボネートの両方が含まれることがもっとも好ましい。
その他の添加剤の具体例としては、以下の(A)〜(I)の化合物が挙げられる。
リン酸トリス(2,2,2−トリフルオロエチル)、リン酸ビス(2,2,2−トリフルオロエチル)メチル、リン酸ビス(2,2,2−トリフルオロエチル)エチル、リン酸ビス(2,2,2−トリフルオロエチル)2,2−ジフルオロエチル、リン酸ビス(2,2,2−トリフルオロエチル)2,2,3,3−テトラフルオロプロピル、リン酸ビス(2,2−ジフルオロエチル)2,2,2−トリフルオロエチル、リン酸ビス(2,2,3,3−テトラフルオロプロピル)2,2,2−トリフルオロエチル及びリン酸(2,2,2−トリフルオロエチル)(2,2,3,3−テトラフルオロプロピル)メチル、リン酸トリス(1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン−2−イル)、メチレンビスホスホン酸メチル、メチレンビスホスホン酸エチル、エチレンビスホスホン酸メチル、エチレンビスホスホン酸エチル、ブチレンビスホスホン酸メチル、ブチレンビスホスホン酸エチル、メチル 2−(ジメチルホスホリル)アセテート、エチル 2−(ジメチルホスホリル)アセテート、メチル 2−(ジエチルホスホリル)アセテート、エチル 2−(ジエチルホスホリル)アセテート、2−プロピニル 2−(ジメチルホスホリル)アセテート、2−プロピニル 2−(ジエチルホスホリル)アセテート、メチル 2−(ジメトキシホスホリル)アセテート、エチル 2−(ジメトキシホスホリル)アセテート、メチル 2−(ジエトキシホスホリル)アセテート、エチル 2−(ジエトキシホスホリル)アセテート、2−プロピニル 2−(ジメトキシホスホリル)アセテート、2−プロピニル 2−(ジエトキシホスホリル)アセテート、及びピロリン酸メチル、ピロリン酸エチルから選ばれる一種又は二種以上のリン含有化合物。
リチウム塩の具体例としては、リチウム ビス(オキサラト)ボレート(LiBOB)、リチウム ジフルオロ(オキサラト)ボレート(LiDFOB)、リチウム テトラフルオロ(オキサラト)ホスフェート(LiTFOP)、及びリチウム ジフルオロビス(オキサラト)ホスフェート(LiDFOP)から選ばれる少なくとも一種のシュウ酸骨格を有するリチウム塩、LiPO2F2やLi2PO3F等のリン酸骨格を有するリチウム塩、リチウム トリフルオロ((メタンスルホニル)オキシ)ボレート(LiTFMSB)、リチウム ペンタフルオロ((メタンスルホニル)オキシ)ホスフェート(LiPFMSP)、リチウム メチルサルフェート(LMS)、リチウムエチルサルフェート(LES)、リチウム 2,2,2−トリフルオロエチルサルフェート(LFES)、及びFSO3Liから選ばれる一種以上のS=O基を有するリチウム塩が好適に挙げられ、LiBOB、LiDFOB、LiTFOP、LiDFOP、LiPO2F2、LiTFMSB、LMS、LES、LFES、及びFSO3Liから選ばれるリチウム塩を含むことがより好ましい。
本発明に使用される電解質塩としては、下記のリチウム塩が好適に挙げられる。
リチウム塩としては、LiPF6、LiBF4、LiClO4等の無機リチウム塩、LiN(SO2F)2、LiN(SO2CF3)2、LiN(SO2C2F5)2、LiCF3SO3、LiC(SO2CF3)3、LiPF4(CF3)2、LiPF3(C2F5)3、LiPF3(CF3)3、LiPF3(iso−C3F7)3、LiPF5(iso−C3F7)等の鎖状のフッ化アルキル基を含有するリチウム塩や、(CF2)2(SO2)2NLi、(CF2)3(SO2)2NLi等の環状のフッ化アルキレン鎖を有するリチウム塩等が好適に挙げられ、これらの中から選ばれる少なくとも1種のリチウム塩が好適に挙げられ、これらの一種又は二種以上を混合して使用することができる。
これらの中でも、LiPF6、LiBF4、LiN(SO2CF3)2、LiN(SO2C2F5)2、及びLiN(SO2F)2から選ばれる一種又は二種以上が好ましく、LiPF6を用いることがもっとも好ましい。リチウム塩の濃度は、前記の非水溶媒に対して、通常0.3M以上が好ましく、0.7M以上がより好ましく、1.1M以上が更に好ましい。またその上限は、2.5M以下が好ましく、2.0M以下がより好ましく、1.6M以下が更に好ましい。
また、これらのリチウム塩の好適な組み合わせとしては、LiPF6を含み、更にLiBF4、LiN(SO2CF3)2、及びLiN(SO2F)2から選ばれる少なくとも1種のリチウム塩が非水電解液中に含まれている場合が好ましく、LiPF6以外のリチウム塩が非水溶媒中に占める割合は、0.001M以上であると、電池を高温で使用した場合の電気化学特性の向上効果が発揮されやすく、0.005M以下であると電池を高温で使用した場合の電気化学特性の向上効果が低下する懸念が少ないので好ましい。好ましくは0.01M以上、特に好ましくは0.03M以上、最も好ましくは0.04M以上である。その上限は、好ましくは0.4M以下、特に好ましくは0.2M以下である。
本発明の非水電解液は、例えば、前記の非水溶媒を混合し、これに前記の電解質塩及び該非水電解液に対して前記一般式(I)で表されるリチウム塩を添加することにより得ることができる。
この際、用いる非水溶媒及び非水電解液に加える化合物は、生産性を著しく低下させない範囲内で、予め精製して、不純物が極力少ないものを用いることが好ましい。
本明細書においてリチウム電池とは、リチウム一次電池及びリチウム二次電池の総称である。また、本明細書において、リチウム二次電池という用語は、いわゆるリチウムイオン二次電池も含む概念として用いる。本発明のリチウム電池は、正極、負極及び非水溶媒に電解質塩が溶解されている前記非水電解液からなる。非水電解液以外の正極、負極等の構成部材は特に制限なく使用できる。
また、正極中に元素としてNiが含まれる場合、正極活物質中のLiOH等の不純物が増える傾向があるため、一段と広い温度範囲での電気化学特性の改善効果が得られやすいので好ましく、正極活物質中のNiの原子濃度が5〜25atomic%である場合が更に好ましく、8〜21atomic%である場合が特に好ましい。
高結晶性の炭素材料を使用すると、充電時において非水電解液と反応し、界面抵抗の増加によって低温もしくは高温における電気化学特性を低下させる傾向があるが、本発明に係るリチウム二次電池では広い温度範囲での電気化学特性が良好となる。
本発明の第2の蓄電デバイスは、本願発明の非水電解液を含み、電解液と電極界面の電気二重層容量を利用してエネルギーを貯蔵する蓄電デバイスである。本発明の一例は、電気二重層キャパシタである。この蓄電デバイスに用いられる最も典型的な電極活物質は、活性炭である。二重層容量は概ね表面積に比例して増加する。
本発明の第3の蓄電デバイスは、本願発明の非水電解液を含み、電極のドープ/脱ドープ反応を利用してエネルギーを貯蔵する蓄電デバイスである。この蓄電デバイスに用いられる電極活物質として、酸化ルテニウム、酸化イリジウム、酸化タングステン、酸化モリブデン、酸化銅等の金属酸化物や、ポリアセン、ポリチオフェン誘導体等のπ共役高分子が挙げられる。これらの電極活物質を用いたキャパシタは、電極のドープ/脱ドープ反応に伴うエネルギー貯蔵が可能である。
本発明の第4の蓄電デバイスは、本願発明の非水電解液を含み、負極であるグラファイト等の炭素材料へのリチウムイオンのインターカレーションを利用してエネルギーを貯蔵する蓄電デバイスである。リチウムイオンキャパシタ(LIC)と呼ばれる。正極は、例えば活性炭電極と電解液との間の電気二重層を利用したものや、π共役高分子電極のドープ/脱ドープ反応を利用したもの等が挙げられる。電解液には少なくともLiPF6等のリチウム塩が含まれる。
〔リチウムイオン二次電池の作製〕
LiCoO2;94質量%、アセチレンブラック(導電剤);3質量%を混合し、予めポリフッ化ビニリデン(結着剤);3質量%を1−メチル−2−ピロリドンに溶解させておいた溶液に加えて混合し、正極合剤ペーストを調製した。この正極合剤ペーストをアルミニウム箔(集電体)上の片面に塗布し、乾燥、加圧処理して所定の大きさに裁断し、帯状の正極シートを作製した。正極の集電体を除く部分の密度は3.6g/cm3であった。また、ケイ素(単体);10質量%、人造黒鉛(d002=0.335nm、負極活物質);80質量%、アセチレンブラック(導電剤);5質量%を混合し、予めポリフッ化ビニリデン(結着剤);5質量%を1−メチル−2−ピロリドンに溶解させておいた溶液に加えて混合し、負極合剤ペーストを調製した。この負極合剤ペーストを銅箔(集電体)上の片面に塗布し、乾燥、加圧処理して所定の大きさに裁断し、負極シートを作製した。負極の集電体を除く部分の密度は1.5g/cm3であった。また、この電極シートを用いてX線回折測定した結果、黒鉛結晶の(110)面のピーク強度I(110)と(004)面のピーク強度I(004)の比〔I(110)/I(004)〕は0.1であった。そして、正極シート、微多孔性ポリエチレンフィルム製セパレータ、負極シートの順に積層し、表1及び表2に記載の組成の非水電解液を加えて、ラミネート型電池を作製した。
<初期の放電容量>
上記の方法で作製したラミネート電池を用いて、25℃の恒温槽中、1Cの定電流及び定電圧で、終止電圧4.4Vまで3時間充電し、1Cの定電流下終止電圧2.75Vまで放電して、初期の放電容量を求めた。
<高温充電保存試験>
次に、このラミネート電池を45℃の恒温槽中、1Cの定電流及び定電圧で終止電圧4.4Vまで3時間充電し、4.4Vに保持した状態で5日間保存を行った。その後、25℃の恒温槽に入れ、一旦1Cの定電流下終止電圧2.75Vまで放電した。
<高温充電保存後の放電容量>
更にその後、初期の放電容量の測定と同様にして、高温充電保存後の放電容量を求めた。
<高温充電保存後の容量維持率>
高温充電保存後の容量維持率を下記の式により求めた。
高温充電保存後の放電容量維持率(%)=(高温充電保存後の放電容量/初期の放電容量)×100
〔高温充電保存後のガス発生量の評価〕
高温充電保存後のガス発生量はアルキメデス法により測定した。ガス発生量は、比較例1のガス発生量を100%としたときを基準とし、相対的なガス発生量を調べた。
また、電池の作製条件及び電池特性を表1〜表3に示す。
実施例1及び比較例1で用いた正極活物質に変えて、LiNi1/2Mn3/2O4(正極活物質)を用いて、正極シートを作製した。LiNi1/2Mn3/2O4;94質量%、アセチレンブラック(導電剤);3質量%を混合し、予めポリフッ化ビニリデン(結着剤);3質量%を1−メチル−2−ピロリドンに溶解させておいた溶液に加えて混合し、正極合剤ペーストを調製した。この正極合剤ペーストをアルミニウム箔(集電体)上の片面に塗布し、乾燥、加圧処理して所定の大きさに裁断し、正極シートを作製したこと、電池評価の際の充電終止電圧を4.9V、放電終止電圧を2.7Vとしたことの他は、実施例1及び比較例1と同様にラミネート型電池を作製し、電池評価を行った。結果を表4に示す。
実施例1及び比較例1で用いた負極活物質に代えて、チタン酸リチウムLi4Ti5O12(負極活物質)を用いて、負極シートを作製した。チタン酸リチウムLi4Ti5O12;80質量%、アセチレンブラック(導電剤);15質量%を混合し、予めポリフッ化ビニリデン(結着剤);5質量%を1−メチル−2−ピロリドンに溶解させておいた溶液に加えて混合し、負極合剤ペーストを調製した。この負極合剤ペーストを銅箔(集電体)上の片面に塗布し、乾燥、加圧処理して所定の大きさに裁断し、負極シートを作製したこと、電池評価の際の充電終止電圧を2.8V、放電終止電圧を1.2Vとしたこと、非水電解液の組成を所定のものに変えたことの他は、実施例1及び比較例1と同様にラミネート型電池を作製し、電池評価を行った。結果を表5に示す。
また、実施例24および25と比較例4の対比から、正極にニッケルマンガン酸リチウム塩(LiNi1/2Mn3/2O4)を用いた場合や実施例26および27と比較例5の対比から、負極にチタン酸リチウム(Li4Ti5O12)を用いた場合にも同様な効果がみられる。従って、本発明の効果は、特定の正極や負極に依存した効果でないことは明らかである。
Claims (2)
- 非水溶媒に電解質塩が溶解されている非水電解液において、下記一般式(I)で表されるリチウム塩一種以上を含有することを特徴とする非水電解液。
- 正極、負極及び非水溶媒に電解質塩が溶解されている非水電解液を備えた蓄電デバイスであって、前記非水電解液が、前記一般式(I)で表されるリチウム塩一種以上を含有することを特徴とする蓄電デバイス。
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