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JP6036363B2 - 遮光フィルムとその製造方法、および、それを用いた絞り、シャッター羽根、光量調整絞り羽根 - Google Patents

遮光フィルムとその製造方法、および、それを用いた絞り、シャッター羽根、光量調整絞り羽根 Download PDF

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本発明は、遮光フィルムとその製造方法、及びそれを用いた絞り、シャッター羽根又は光量調整絞り羽根に関し、より詳しくは、コンパクトデジタルカメラ、一眼レフデジタルカメラ、デジタルビデオカメラ、スマートフォンを含むカメラ付き携帯電話の絞りやシャッター羽根または絞り羽根、プロジェクターの光量調整用絞り装置の絞り羽根などの光学機器部品として用いられ、遮光性、耐熱・耐高温高湿性、摺動性、低反射性、導電性に優れた遮光フィルムとその製造方法、及びそれを用いた絞り、シャッター羽根又は光量調整絞り羽根に関する。
現在、カメラ付き携帯電話やデジタルカメラ用のシャッターは、シャッタースピードが高速化し、極めて短時間に動作と停止を行うので、それに搭載されるシャッター羽根は、軽量化かつ高摺動性でなければならず、また、CCD、CMOSなどの撮像素子の前面を覆って光を遮るものなので、基本的に遮光性を必要とする。更に、光学機器用の羽根は、複数枚の羽根が互いに重なり合って動作するので、滑らかな動作のために潤滑性が必要となる。また、各羽根間の漏れ光を防ぐために表面の反射率は低いことが望まれる。さらに使用環境や製造工程で、高温かつ高湿下に晒される場合があり、最近では耐熱性が求められている。
また、デジタルビデオカメラの絞り羽根は、基本的に複数枚の羽根で構成され、それらが動作して形成される開口度で外光の取り込み量を調整し、画質が調整される。デジタルカメラ同様に、遮光性、耐高温・高湿性、摺動性、低反射性、導電性が求められ、特に長時間取り込まれた外光に晒されるので耐熱性もデジタルカメラ以上に要求されてきている。
一方、プレゼンテーション、ホームシアターなどの映像観賞用の投影装置であるプロジェクターの光量調整絞り羽根として使用される遮光フィルムにおいても、デジタルカメラ、デジタルビデオカメラと同様な特性が求められ、特に耐熱性に関しては、デジタルビデオカメラ以上の特性が求められている。
元来、上記遮光フィルムは、ステンレス鋼、炭素工具鋼、Al等の金属薄板を基材としたものが実用化されている。カメラ付き携帯電話、デジタルカメラ、デジタルビデオカメラでは、基材が金属製の遮光フィルムをシャッター羽根、絞り羽根として用いられている。しかし、羽根材を開閉する際に、金属板同士が擦れあって大きな騒音が発生する。また、プロジェクターでは、映像が変化するときに各画像の輝度変化を和らげるために絞り羽根を高速で移動する必要があり、羽根同士が擦れを繰り返す度に騒音が発生する。また、この騒音を低減するためには羽根を低速で動作することになるが、画像の変化に光量調整が追いつかず、画像が不安定となるという問題がある。そのため、例えば特許文献3には、アルミニウム合金などの金属製羽根材料の表面に硬質炭素膜を形成した遮光材が提案されている。しかし、金属製なので重量の面で問題がある。
このような問題と軽量化の観点から、近年の遮光フィルムの構成は、プラスチックフィルムを基材に用いることが主流となってきている。更に、羽根材が擦れ合って動作しても、発塵しないという耐摩耗性、低発塵性も求められている。上記から、遮光フィルムの必要特性は、高遮光性、耐熱・耐高温高湿性、低反射性、摺動性、導電性、耐摩耗性、低発塵性であるとされている。このような遮光フィルムの特性を満足するために、材料、フィルム構造の改良が提案されている。
例えば、特許文献1には、遮光性、低光沢性、導電性の点からランプ光源等から発せられる光を吸収させるためにカーボンブラック、チタンブラック等の導電性黒色微粒子をポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムなどの樹脂フィルムに含浸させ遮光性及び導電性を持たせ、更に遮光フィルムの片面または両面をマット処理し、低光沢性とした遮光フィルムが開示されている。
また、特許文献2では、樹脂フィルム上に、遮光性と導電性を有するカーボンブラックなどの黒色顔料や潤滑剤、艶消し剤を含有した熱硬化性樹脂層を塗布し、遮光性、導電性、潤滑性、低光沢性を付与した遮光フィルムが開示されている。
また、特許文献4では、遮光羽根の剛性を高めるためプラスチック基材の両面に炭素繊維を含有する熱硬化性樹脂のプリプレグシートで強化した遮光羽根の構造が開示されている。
遮光フィルムは、カメラ付き携帯電話、デジタルカメラ、デジタルビデオカメラ、プロジェクター等の光学機器用遮光羽根材として広く使用されている。近年、カメラ付き携帯電話やスマートフォンは薄肉化が進み、搭載されるカメラモジュールの低コスト化や低背化の動きも進んでいる。
そのためには、部品点数の削減と工程の簡素化が必要であり、半田リフロー炉を使用した一括部品固定が実現しつつある。半田リフローでは少なくとも270℃×1分間、3回繰り返し加熱での耐熱性が求められているため、カメラ付き携帯電話やスマートフォンのカメラモジュールに搭載される絞りやシャッター羽根においても、この条件での遮光性、低反射性、摺動性が求められる。従来のカメラモジュール製法では、比重が軽いこともあり、ポリエチレンテレフタレートフィルムを基材とした遮光フィルムが主流であるが、ポリエチレンテレフタレートはこの半田リフロー条件に対する耐熱性がないため極度に変形・収縮してしまい、特許文献1の技術は半田リフロー用途では使用することはできず、特許文献2,4の技術でも十分とはいえない。
半田リフロー用途では、従来金属箔板に耐熱塗料を施した遮光フィルムが使用され、特許文献3のように硬質炭素膜を形成することも検討されているが、前述の通りシャッター羽根や絞り羽根等に搭載された時の重量の問題がある。
また、プロジェクターではリビングルームといった明るい環境下でも鮮やかなハイコントラストな映像が楽しめるように高画質化の要求が高まっている。したがって、画質の高輝度化によりランプ光源が高出力となるため、光量調整用の絞り装置内の温度が200℃付近まで高くなる傾向にある。光量を調整する遮光フィルムへ高出力の光が照射されるため、遮光フィルムが熱変形しやすい環境となっている。前記のようにポリエチレンテレフタレートフィルムは、熱変形温度が低く、引張弾性率などの機械的強度が弱い。したがって、動作中もしくは制動時に発生する振動や衝撃などで遮光羽根が歪んだり、変色したりする可能性があり、耐久性の面で好ましくなく、実用上問題がある。
デジタルカメラ、デジタルビデオカメラ、プロジェクターでは、遮光フィルムをシャッター羽根、絞り羽根、光量調整絞り羽根等として、遮光フィルムをプレス型で所望の形状に打ち抜いた羽根材または絞り羽根を必ず複数枚近接し、かつ重なり合って使用するようになってきている。特に、カメラ付き携帯電話やスマートフォンでは薄肉化の傾向にあり、カメラモジュールの低背化により、シャッターユニット内のシャッター羽根同士の接触による耐久性が重要視されてきている。
また、遮光フィルムの低反射性や摺動性を発揮させるため、特許文献1のようにサンドブラスト法によるマット処理が行われている。この処理は、更に、入射光を散乱させ、表面の光沢性を低下させ、視認性を向上させる効果がある。上記処理により、遮光フィルムが接触しても遮光フィルム同士の接触面積が大きくならず摺動性の低下も防止できるものと考えられる。
しかし、マット処理は、基材のプラスチックフィルムに微細な凹凸を形成することで基材とその基材直上の塗布膜との密着力を上げ、表面の光沢性を低減する効果があるものの、サンドブラスト法では、フィルムの表面粗さはショット材の材質、粒度、吐出圧力等に依存するので、粒径の大きいショット材は、水洗浄やブラッシング等の洗浄でフィルム表面から除去できるが、粒径が1μm未満と小さい粒子は洗浄後においてもフィルム上に少なからず部分的に残存してしまい、完全には除去しきれない。ショット材が残存すると、遮光フィルムが晒される高熱環境下では、ショット材とフィルム上に成膜された金属合金膜等の膜とで熱膨張係数が異なるため、熱応力の差により膜が剥がれてしまい、ショット材がフィルムから脱落してしまい、その周囲の部品に悪影響を及ぼし、本来の機能が得られなくなってしまうという問題も発生する。
そのため、本出願人は、特許文献5で、表面に微細な凹凸を有する耐熱性の樹脂フィルムを基材として、スパッタリング法で特定の厚さを有するNi系金属の遮光膜を形成した後、この金属膜上に、スパッタリング法で低反射性のNi系酸化物膜を形成することを提案した。これにより、220℃程度の高熱環境下でも変形せず、遮光性、低光沢性、摺動性、色味、低反射性が維持できる遮光フィルムが得られるようになった。
しかしながら、半田リフロー炉を使用した一括部品固定で求められる、少なくとも270℃×1分間、3回繰り返し加熱に対しては、Ni系酸化物膜の耐久性が十分ではなかった。
特開平1−120503号公報 特開平4−9802号公報 特開平2−116837号公報 特開2000−75353号公報 特開2008−158479号公報
したがって、本発明の目的は、従来通りカメラモジュールの作製工程や使用時に高温および高温高湿環境下に晒されない場合はもちろんのこと、使用時に220℃程度の温度に晒されるプロジェクター、デジタルビデオの光量調整用羽根や、加工時に高温に晒されるデジタルカメラのシャッター羽根や固定絞りとして用いることができるだけでなく、半田リフロー炉を使用した一括部品固定で製造されたカメラモジュールにおいても、遮光性、反射率、光沢度、摺動性の劣化も無く、変形したり、変色したりすることがない優れた耐熱性や耐高温高湿性の耐久性を有し、導電性に優れた基材が樹脂の遮光フィルムとその製造方法、及びそれを用いた絞り、シャッター羽根又は光量調整絞り羽根を提供することにある。
本発明者は、上述した従来の技術の課題を解決するため、さらにNi系金属膜の上に形成されるNi系金属酸化物膜の成膜条件を検討した結果、膜内の膜組成や結晶性の均一化によって、Ni系金属酸化物膜の耐久性が向上し、特にフィルム基材を適切に選定することで、270℃という半田リフローの耐熱性や耐高温高湿性を有するようになることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明の第1の発明によれば、表面粗さが算術平均高さRaで0.2〜2.2μmである樹脂フィルム基材(A)と、樹脂フィルム基材(A)の片面もしくは両面にスパッタリング法で膜厚が50〜250nmのNi系金属膜(B)が形成され、Ni系金属膜(B)上に、膜厚が100〜400nmである結晶性のNi系金属酸化物膜(C)が形成された遮光フィルムであって、
Ni系金属膜(B)の酸素含有量がO/Ni原子数比で0.20以下、かつNi系金属酸化物膜(C)の酸素含有量がO/Ni原子数比で0.65〜0.85であり、波長380〜780nmにおける最小光学濃度が4以上、最大正反射率が0.4%以下であることを特徴とする遮光フィルムが提供される。
また、本発明の第2の発明によれば、第1の発明において、樹脂フィルム基材(A)が、270℃以上の耐熱性を有するポリイミド、アラミド、ポリエーテルエーテルケトン、液晶ポリマーから選ばれた1種類以上で構成されていることを特徴とする遮光フィルムが提供される。
また、本発明の第3の発明によれば、第1の発明において、樹脂フィルム基材(A)が、ポリフェニレンサルファイド、ポリエーテルサルフォン、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンテレナフタレート、ポリカーボネート、ポリオレフィンから選ばれた1種類以上で構成されていることを特徴とする遮光フィルムが提供される。
また、本発明の第4の発明によれば、第1の発明において、樹脂フィルム基材(A)の厚みが、25〜125μmであることを特徴とする遮光フィルムが提供される。
さらに、本発明の第5の発明によれば、第1の発明において、Ni系金属膜(B)が、ニッケルを主成分として、チタン、タンタル、タングステン、バナジウム、アルミニウム、モリブデン、コバルト、ニオブ、鉄、銅、亜鉛、又は珪素からなる群から選ばれた1種類以上の添加元素(Em)を含有するNi系合金膜であることを特徴とする遮光フィルムが提供される。
また、本発明の第6の発明によれば、第1または第5の発明において、Ni系金属膜(B)の添加元素(Em)が、(Em/Ni)原子数比で0.05〜0.5含有されていることを特徴とする遮光フィルムが提供される。
また、本発明の第7の発明によれば、第1の発明において、Ni系金属酸化物膜(C)が、ニッケルを主成分とし、さらに、チタン、タンタル、タングステン、バナジウム、アルミニウム、モリブデン、コバルト、ニオブ、鉄、銅、亜鉛および珪素からなる群から選ばれた1種類以上の添加元素(Eo)を含有することを特徴とする遮光フィルムが提供される。
また、本発明の第8の発明によれば、第1または第7の発明において、Ni系金属酸化物膜(C)の添加元素(Eo)が、(Eo/Ni)原子数比で0.05〜0.5含有されていることを特徴とする遮光フィルムが提供される。
また、本発明の第9の発明によれば、第1の発明において、Ni系金属酸化物膜(C)の表面粗さが算術平均高さRaで0.1〜2.1μmであることを特徴とする遮光フィルムが提供される。
また、本発明の第10の発明によれば、第1の発明において、表面抵抗値が500Ω/□以下であることを特徴とする遮光フィルムが提供される。
また、本発明の第11の発明によれば、第1または第10の発明において、表面抵抗値が100Ω/□以下であることを特徴とする遮光フィルムが提供される。
また、本発明の第12の発明によれば、第1〜11のいずれかの発明において、270℃で10分間の加熱処理を行ったときの、フィルムの色味の変化である色差(ΔE*ab)が1以下であることを特徴とする遮光フィルムが提供される。
また、本発明の第13の発明によれば、第1〜12のいずれかの発明において、85℃×90%RH×24hrの処理を行ったときの、フィルムの色味の変化である色差(ΔE*ab)が1以下であることを特徴とする遮光フィルムが提供される。
また、本発明の第14の発明におれば、第1〜13のいずれかの発明において、樹脂フィルム基材(A)の両面に、Ni系金属膜(B)とNi系金属酸化物膜(C)が形成されており、樹脂フィルム基材(A)を中心として対称の構造であることを特徴とする遮光フィルムが提供される。
また、本発明の第15の発明によれば、第1〜14のいずれかの発明において、両面に形成されるNi系金属膜(B)とNi系金属酸化物膜(C)は、それぞれ実質的に同じ膜厚かつ金属元素組成であることを特徴とする遮光フィルムが提供される。
一方、本発明の第16の発明によれば、第1〜15のいずれかの発明において、表面粗さが算術平均高さRaで0.2〜2.2μmの樹脂フィルム基材(A)をスパッタリング装置に供給し、不活性ガス雰囲気下でスパッタリングして、樹脂フィルム基材(A)上に膜中の酸素含有量がO/Ni原子数比で0.20以下、かつ膜厚が50〜250nmのNi系金属膜(B)を形成し、次に、不活性ガスと酸素ガスの混合ガスを導入しながらスパッタリングして、Ni系金属膜(B)上に膜中の酸素含有量がO/Ni原子数比で0.65〜0.85であって、かつ膜厚が100〜400nmであるNi系金属酸化物膜(C)を形成することを特徴とする遮光フィルムの製造方法が提供される。
また、本発明の第17の発明によれば、第16の発明において、スパッタリングガス圧が、0.2〜1.0Paであることを特徴とする遮光フィルムの製造方法が提供される。
さらに、本発明の第18の発明によれば、第16または17の発明において、Ni系金属膜(B)及びNi系金属酸化物膜(C)が形成された遮光フィルムを、さらに、スパッタリング装置に供給し、スパッタリングによって樹脂フィルム基材(A)の裏面にNi系金属膜(B)及びNi系金属酸化物膜(C)を順次形成することを特徴とする遮光フィルムの製造方法が提供される。
また、本発明の第19の発明によれば、第16〜18のいずれかの発明において、樹脂フィルム基材(A)が、ロール状に巻き取られてスパッタリング装置のフィルム搬送部にセットされることを特徴とする遮光フィルムの製造方法が提供される。
一方、本発明の第20の発明によれば、第1〜15のいずれかの発明の遮光フィルムを打ち抜き加工して製造された絞りが提供される。
また、本発明の第21の発明によれば、第1〜15のいずれかの発明の遮光フィルムを打ち抜き加工して得られたシャッター羽根が提供される。
また、本発明の第22の発明によれば、第1〜15のいずれかの発明の遮光フィルムを打ち抜き加工して得られた絞り羽根が提供される。
本発明の遮光フィルムは、特定の表面粗さを有する樹脂フィルム基材上に、スパッタリング法により膜厚50〜250nm、膜中の酸素含有量がO/Ni原子数比で0.20以下のNi系金属膜と、膜厚が100〜400nm、酸素含有量がO/Ni原子数比で0.65〜0.85である結晶性のNi系金属酸化物膜が形成されているので、従来の塗膜工程で得られる遮光フィルムに比べ、緻密な表面状態となり、表面の磨耗性、摩擦性、導電性が向上し、270℃以上の耐熱性をも有している。この遮光フィルムでは、最表面層としてNi系金属酸化物膜が積層されているのでNi系金属膜の高い反射率を減少することができる。
本発明の遮光フィルムは、従来のカメラモジュール製法に対応した絞り、シャッター羽根、絞り羽根の他、フィルム基材の種類を選定することで非常に高温環境下に晒されるカメラ付き携帯電話、スマートフォン、デジタルビデオカメラ、プロジェクター用の絞り、シャッター羽根、絞り羽根に適応することができる。
基材にポリエチレンテレフタレートやポリエチレンナフタレートなど、耐熱性が高くないものを用いた場合、耐熱性が要求されない用途、すなわちカメラモジュールを部品個々に、接着剤で固定していく従来の製法に対して、問題なく使用できる。一方、カメラモジュールの半田リフロー工程においては、基材として270℃以上の耐熱性をもつ樹脂フィルムを使用することで、シャッター羽根や絞り羽根等に搭載された時の摺動性が向上し、更には駆動モーターの小型化が可能となり、低コストに繋がる。
また、前記Ni系金属膜及びNi系金属酸化物膜のスパッタリング成膜に際し、全く同じターゲットを使用することが可能なので、装置セッティング上でターゲット交換をする必要が無く、連続スパッタリングが可能であることから、製造コストが安くなり生産性に優れている。更に樹脂フィルムを中心に対称型である膜構造とすることで、成膜時の膜応力による遮光フィルムの変形が抑制される。
また、本発明のNi系金属膜及びNi系金属酸化物膜のスパッタリング法による成膜条件を最適化することで、緻密かつ結晶性や組成が均一な膜とすることができ、これにより、270℃以上の高熱環境下や温度85℃×湿度90%RHの高温高湿環境下に晒されても、耐久性に優れたNi系金属膜とNi系金属酸化物膜を形成することができる。
したがって、本発明の遮光フィルムは、カメラ付き携帯電話、スマートフォン、デジタルカメラ、デジタルビデオカメラで現在基材にポリエチレンテレフタレートフィルムが使用されている用途はもちろんのこと、基材に270℃以上の耐熱性をもつ樹脂フィルムを用いることで、組み込み時の半田リフロー耐熱性や使用時に耐熱性が要求されるカメラ付き携帯電話、スマートフォン、デジタルビデオカメラ、プロジェクターなどの固定絞り、シャッター羽根、絞り羽根、光量調整絞り羽根として使用でき、工業的に極めて有用である。
本発明の遮光フィルムの1実施形態を模式的に示す断面図である。 本発明の遮光フィルムの別の実施形態を模式的に示す断面図である。 Ni系金属酸化物膜を形成する際、スパッタリングガス中の酸素流量比に対する膜中の酸素含有量であるO/Ni原子数比の変化を示したグラフである。 Ni系金属酸化物膜を形成する際、スパッタリングガス中の酸素流量比に対する膜中の成膜速度変化を示したグラフである。 Ni系金属酸化物膜(O/Ni原子数比が0.88)で波長に対する屈折率変化を示したグラフである。 Ni系金属酸化物膜(O/Ni原子数比が0.80)で波長に対する屈折率変化を示したグラフである。 本発明の遮光フィルムを製造する巻き取式スパッタ装置の概略図である。 本発明の遮光フィルム(実施例1)を構成するNi−Ti酸化物膜のX線回折パターンを示したチャートである。 本発明の遮光フィルム(実施例1)を構成するNi−Ti酸化物膜の膜厚方向のO/Ni原子数比変化を示したグラフである。 比較用の遮光フィルム(比較例2)を構成するNi−Ti酸化物膜のX線回折パターンを示したチャートである。 比較用の遮光フィルム(比較例2)を構成するNi−Ti酸化物膜の膜厚方向のO/Ni原子数比変化を示したグラフである。
以下、本発明の遮光フィルムとその製造方法、それを用いた固定絞り、シャッター羽根又は光量調整絞り羽根について図面を参照しながら説明する。
1、遮光フィルム
本発明の遮光フィルムは、表面粗さが算術平均高さRaで0.2〜2.2μmである樹脂フィルム基材(A)と、樹脂フィルム基材(A)の片面もしくは両面にスパッタリング法で膜厚が50〜250nmのNi系金属膜(B)が形成され、Ni系金属膜(B)上に、膜厚が100〜400nmである結晶性のNi系金属酸化物膜(C)が形成された遮光フィルムであって、
Ni系金属膜(B)の酸素含有量がO/Ni原子数比で0.20以下、かつNi系金属酸化物膜(C)の酸素含有量がO/Ni原子数比で0.65〜0.85であり、波長380〜780nmにおける最小光学濃度が4以上、最大正反射率が0.4%以下であることを特徴としている。
本発明の遮光フィルムは、図1、2に構成を模式的に示すように、基材としての樹脂フィルム基材1と、その片面または両面に形成されたNi系金属膜2と、その上に形成されたNi系金属酸化物膜3から構成されている。
樹脂フィルム基材1の厚みは、25〜125μmの範囲であることが望ましい。25μmより薄いものでは、ハンドリングが悪いとフィルムに傷や折れ目などの表面欠陥が付きやすくなり、125μmより厚いと小型化が進むカメラモジュールや光量調整装置へ複数枚の遮光羽根を搭載することができないからである。
遮光性のNi系金属膜は、厚みが50〜250nmである。厚みが50nm未満であると、膜の光通過が生じて十分な遮光機能を持たないので好ましくない。ただし、膜厚が厚くなると遮光性が良くなるが、250nmを超えると、材料コストや成膜時間の増加による製造コスト高につながる。また、膜の応力も大きくなって変形しやすくなる。十分な遮光性(透過率0%)と低膜応力、低製造コストを考慮すると、Ni系金属膜の膜厚は50〜250nmが好ましい。
そして、Ni系金属酸化物膜3は、スパッタリング法で形成された、酸素含有量がO/Ni原子数比で0.65〜0.85である。結晶性のNi系金属酸化物膜の厚みは、100nm〜400nmである。厚みが100nm未満であると、下地のNi系金属膜界面での反射を抑制することが難しく、正反射率を十分に低下できない場合がある。400nmを超えると、フィルム片面にNi系金属膜とNi系金属酸化物膜を形成した時に、膜応力によるフィルムの変形が非常に大きくなり、膜表面にクラックが入ってしまい、好ましくない。
上記Ni系金属膜とNi系金属酸化物膜は、図1のように樹脂フィルム基材の片面に形成されていてもよいが、図2のように両面に形成されている方が好ましい。両面に形成される場合は、各面の膜の材質や膜厚が同じで、フィルム基材を中心として対称の構造であることが、より好ましい。フィルム基材の上に形成された薄膜は、基材に対して応力を与えるため、変形の要因となり、その変形は、成膜直後でも見られる場合がある。しかし、上記のようにフィルム基材の両面に形成するNi系金属膜とNi系金属酸化物膜の膜材質を同じにして、フィルム基材を中心として対称の構造にすることで、加熱条件下でも応力のバランスが維持され、反りや歪みなどのない平坦性の優れた遮光フィルムを実現しやすい。
(A)樹脂フィルム基材
本発明の遮光フィルムの基材である樹脂フィルムは、その表面に表面粗さとして算術平均高さRaが0.2〜2.2μm、より好ましくは0.4〜1.6μmの微細な凹凸構造を有することが必要である。前記樹脂フィルムの表面粗さの範囲は、Ni系金属膜とNi系金属酸化物膜をスパッタリング法で形成する面に対して有効であり、両面ともにNi系金属膜とNi系金属酸化物膜をスパッタリング法で形成する場合には、樹脂フィルム両面とも前記表面粗さ範囲内とする必要がある。
算術平均高さとは、算術平均粗さとも言われ、粗さ曲線からその平均線の方向に基準長さだけ抜き取り、この抜き取り部分の平均線から測定曲線までの偏差の絶対値を合計して平均した値である。算術平均高さRaが0.2μmより小さいと、フィルム表面に形成した金属膜の密着性が得られず、十分な低光沢性や低反射性も得られない。また、Raが2.2μmを超えると、フィルム表面の凹凸が大きくなり、凹部で金属膜の成膜ができず、ピンホールなどの表面欠陥が発生してしまう。フィルム表面を被覆し十分な遮光性を得ようとすれば金属膜の膜厚が厚くなってしまうためコスト高となり好ましくない。
基材として用いる樹脂フィルムは、透明樹脂で構成されていても顔料、無機充填材を練り込んだ着色樹脂で構成されていても構わない。本発明の遮光フィルムで使用するフィルム基材は、遮光フィルムの使用温度、使用湿度などの環境や遮光フィルムを加工して得られる絞り、シャッター羽根や絞り羽根が搭載されるカメラモジュールや光量調整装置の作製方法によって選定すればよい。特に、カメラモジュールの半田リフロー工程では、270℃以上の耐熱性を有するものでなければならないため、樹脂フィルムはポリイミド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリアミドイミド、液晶ポリマーが好ましい。
ここで、270℃以上の耐熱性を有するフィルムとは、ガラス転移点が270℃以上であるフィルムであり、ガラス転移点の存在しない材料については、270℃以上の温度にて変質しないことを意味する。樹脂材料の材質としては量産性を考慮した場合、スパッタリングによるロールコーティングが可能となるような可撓性を有する材料であることが望ましい。
また、カメラモジュールの作製が従来通り、接着剤による固定で行われる場合は、半田リフロー工程のように、樹脂フィルムに270℃以上の高い耐熱性は求められないため、前記ポリイミドなどよりもガラス転移点が低いポリフェニレンサルファイド、ポリエーテルサルファン、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリカ−ボネートを用いればよい。
樹脂フィルム表面の凹凸は、フィルム表面を表面処理して形成する。例えば、ショット材を使用したマット処理加工を行って得ることが簡易的な方法であるが、これに限定されない。例えば、キャスティング方法で作製されるフィルムでは、溶剤に溶けたフィルム樹脂を表面に凹凸形状を有した支持体上に流しこむことで凹凸構造が転写され、得ることができる。ナノインプリンティング加工で表面に微細凹凸構造を形成しても得ることができる。また、マット処理の際のショット材には一般的に砂などが利用されるが、これに限定されない。マット処理では、フィルムを搬送しながらフィルム表面に凹凸を形成することができるが、最適なRa値の凹凸は、マット処理中のフィルム搬送速度とショット材の種類、粒径、ショット材の吐出圧力に依存するので、これらの条件を最適化してフィルム表面の算術平均高さRa値が0.2〜2.2μmとなるように表面処理を行う。マット処理後のフィルムは、洗浄してショット材を除去した後、乾燥する。フィルムの両面に金属膜と低反射性の金属酸化物膜を形成する場合は、フィルムの両面をマット処理するのが望ましい。
(B)Ni系金属膜
本発明のNi系金属膜は、270℃以上の高熱環境下と85℃×90%RHの高温高湿環境下でも耐えうる耐久性を有している。それは、スパッタリング法で得たNi系金属膜が高い緻密性を有しており、耐酸化性が良いことの他、樹脂フィルムとNi系金属膜との密着性が良いことによる。
一般に金属膜は酸化されると透明度が増加するので、耐熱性や耐高温高湿性の耐久性に優れた遮光フィルムを得るためには、遮光膜となる金属膜の耐酸化性は重要である。本発明の遮光フィルムに用いる金属膜の材料は、耐酸化性に優れたNi系材料が好ましい。具体的には、前記金属膜は、純粋なニッケルでもよいが、ニッケルを主成分として、チタン、タンタル、タングステン、バナジウム、アルミニウム、モリブデン、コバルト、ニオブ、鉄、銅、亜鉛、および珪素からなる群から選ばれた1種以上の元素が添加されているNi系合金膜であることが好ましい。上記元素が添加された金属膜は、純ニッケルに比べてニッケル自体は酸化されにくい。
また、前記Ni系金属膜の添加元素(以下、Emという)は、(Em/Ni)原子数比として0.05〜0.5以下、特に0.05〜0.2の範囲で含有されていることが好ましい。0.05未満であるとニッケルターゲットの強磁性特性を極端に弱めることができなくなり、磁力の弱い通常の磁石を配置したカソードで直流マグネトロンスパッタリング法による成膜を行えなくなる。また、0.5を超えると多量の金属間化合物を形成し、スパッタリングターゲットの脆性が増し、スパッタリング時の熱応力等で割れてしまい、スパッタリングができなくなる恐れがあるだけでなく、得られるNi系金属合金膜の膜質が悪くなる可能性があるため、好ましくない。
また、Ni系ターゲットを用いたスパッタリング成膜での成膜速度は、他の金属ターゲットを用いたスパッタリング成膜と比べて速いことが特徴であり、この面でも生産性に有利である。例えば、ニッケルターゲットを用いた直流マグネトロンスパッタリングによるニッケル膜の成膜速度は、チタンターゲットを用いた同一条件のチタン膜の成膜速度と比べて1.5〜2倍ほど速い。
本発明で好ましい添加元素(Em)は、チタン、タングステン、アルミニウム、または銅であり、より好ましいのは、チタンである。チタンを選ぶと、他の金属元素、例えばタングステンを選んだ場合に対して、得られた膜の減衰係数が大きい、すなわち遮光性が高くなるという利点がある。
Ni系金属膜(B)の添加元素(Em)は、(Em/Ni)原子数比で0.05〜0.5含有されていることが好ましい。
なお、上記のNi系金属膜には、炭素、窒素が含まれていても構わない。Ni系金属膜へ炭素、窒素を導入するには、それぞれ、金属膜を成膜する時のスパッタリングガス中に炭化水素ガス、窒素ガスなどの炭素元素や窒素元素を含む添加ガスを導入してスパッタリング成膜することで可能であるが、上記のような添加ガスを用いなくても、ターゲット中に炭素、窒素を含有させることでも、これらの元素を導入することができる。特にNi系金属膜に炭素、窒素が含まれると耐熱性を更に改善することができるため有用である。 よって、本発明の遮光フィルムの金属膜材料には、上記の方法で作製された炭化ニッケル、窒化ニッケル、炭化窒化ニッケルなどの炭化物や窒化物や炭化窒化物も、十分な遮光性と耐熱性を発揮する金属膜材料であり、樹脂フィルムに対する高い密着性も発揮する。
ただし、本発明の金属膜には、酸素はなるべく含まないほうが、樹脂フィルムとの高い密着性や高い遮光性を維持するためには好ましい。Ni系金属膜中の酸素含有量は、樹脂フィルムとの密着性を維持するために、O/Ni原子数比として0.20以下とする。しかし、スパッタリングガス中に残留する酸素などが成膜時にNi系金属膜の一部、或いは全体に取り込まれて含有しても、金属性や高い遮光性や樹脂フィルムとの高い密着性を損なわない程度であれば構わない。
遮光性の点からもNi系金属膜中の酸素含有量が、O/Ni原子数比として0.2を超えてしまうと、膜の透過率が高くなり波長380〜780nmにおける光学濃度が低下し、遮光性を得るためのNi系金属膜の膜厚が厚くなってしまう。
有機物である樹脂フィルム基材は、元来、無機物である金属膜との間では高い密着性を得ることが難しいとされている。樹脂フィルム基材と金属膜の界面の密着性が不十分である場合、270℃の高熱環境下で、樹脂フィルム基材と金属膜の熱膨張差により膜剥離が生じやすい。
このような熱膨張差による膜剥離を回避するには、樹脂フィルム基材と膜との高い密着性を向上させる必要がある。本発明では、金属膜をチタン、タンタル、タングステン、バナジウム、アルミニウム、及び銅からなる群から選ばれる1種類以上の添加元素(Em)を含むNi系の金属膜とすることが有効である。樹脂フィルムの表面は、酸素の官能基を有しており、本発明の金属膜中に適量のチタン、タンタル、タングステン、バナジウム、アルミニウム、又は銅などの酸化されやすい元素が含まれるようにすると、フィルム表面の酸素の官能基と化学結合が生じて、フィルムと金属膜間の密着性が強化される。
(C)Ni系金属酸化物膜
本発明においてNi系金属酸化物膜は、ニッケルを主成分とした金属酸化物膜である。ニッケルを主成分とした金属酸化物膜は、高熱環境下での耐熱性や耐食性に優れていることと、ニッケルを主成分とする下地の金属膜と金属成分が同じであることから金属膜との密着性が良いからである。
具体的には、前記Ni系金属酸化物膜は、膜中の酸素含有量がO/Ni原子数比として0.65〜0.85の結晶性の金属酸化物膜でなければならない。金属成分がニッケルのみからなるニッケル酸化物であってもよいが、ニッケルを主成分とし、さらに、添加元素(Eo)として、チタン、タンタル、タングステン、バナジウム、アルミニウム、モリブデン、コバルト、ニオブ、鉄、銅、亜鉛および珪素なる群から選ばれた少なくとも1種類以上の元素を含有することが好ましい。
本発明で好ましい添加元素(Eo)は、チタン、タングステン、アルミニウム、または銅であり、より好ましいのは、チタンである。チタンを選ぶと、他の金属元素、例えばタングステンを選んだ場合に対して、得られた膜が可視光域で屈折率が低い、すなわち反射率が低くなるという利点がある。
Ni系金属酸化物膜(C)の添加元素(Eo)の量は、特に制限されるわけではないが、(Eo/Ni)原子数比で0.05〜0.5含有されていることが好ましい。添加元素(Eo)の量が多くなるほど、合金化により表面抵抗が高くなる。そのため、(Eo/Ni)原子数比で0.1以下となるようにすることが好ましい。
Ni系金属酸化物膜の表面粗さは、算術平均高さRaとして0.1〜2.1μm、より好ましくは、0.2〜1.8μm、最も好ましくは、0.3〜1.5μmである。Ni系金属酸化物膜の算術平均高さRaが0.1μm未満であると低反射性とならない点で、また2.1μmを超えるとNi系金属酸化物膜の厚みが不均一となり、耐熱性や耐高温高湿性の耐久性が低下したり、部分的に下地のNi系金属膜界面での反射を抑制することが難しく正反射率を十分に低下できなくなったり、膜応力分布が不均一となり不規則な変形が発生するなどの点で好ましくない。
本発明のNi系金属酸化物膜は、後述するようにスパッタリングガスとして酸素ガスといった反応性ガスをアルゴンなどの不活性ガス中に導入して、Ni系スパッタリングターゲットをスパッタリングすることで得られる。
ところで、反応性スパッタリングには、成膜速度や膜質の異なる3つのモードが存在する。一般には、金属モード、遷移モード、酸化物モードと呼ばれる3つの状態が存在し、反応性ガス流量比とスパッタ電圧または成膜速度の関係として、Ni系金属酸化物膜成膜時のスパッタリングガス中の酸素ガス流量/(酸素ガス流量+アルゴンガス流量)の割合を示す酸素流量比に対するスパッタ電圧、またはNi系金属酸化物膜の成膜速度の関係がヒステリシスとなることが特徴である。
この3つの状態について略記すると、金属モードは、使用されるターゲット表面全体を酸化物膜で被覆するのには、不十分な量の酸素ガスしかチャンバー内に存在しない状態である。そのため、酸素ガスによって、ターゲット表面は徐々に酸化物被膜で覆われていき、スパッタ電圧は徐々に高くなっていくが、酸化物被膜で覆われていない金属部分が多いため、金属粒子のスパッタが優先される。そのため、スパッタリングガス中の酸素流量比(以降、単に酸素流量比と略す)に対して成膜速度は非常に速くなり、金属的な膜が得られる。
一方、酸化物モードは、使用するターゲット表面全体を酸化させるのに十分な量の酸素ガスがチャンバー内に存在し、ターゲット表面が酸化物被膜で覆われている状態である。そのため、スパッタ電圧は低下し、成膜速度は非常に遅くなる。
また、遷移モードは、上記金属モードから酸化物モードへ急激に移行する状態であり、遷移モードとなる酸素流量比の範囲は、非常に狭いため、遷移領域内では、金属状態と酸化物状態との中間的な、非常に不安定な膜質となってしまう。
上記のように、反応性スパッタリングにおける遷移状態は不安定なものであるため、工業的に安定性が要求される場合には、酸化物モードにおいて成膜を行って所望の酸化物膜を得ることが一般的となっている。しかし、非常に不安定な状態ではあるが、膜質と成膜速度の点で有利であることから遷移状態を利用することが、工業的に行なわれることがある。
本発明ではNi系ターゲットを使用するわけであるが同様に、酸素流量比に対して3つのモードをとる。
図3に、Ni系金属酸化物成膜時の反応性ガスの導入割合を表す酸素流量比に対するO/Ni原子数比の関係の一例を示した。ここで、O/Ni原子数比は、X線光電子分光分析(XPSともいう)からのNi、O量算出値を用いて表される。また、図4には、酸素流量比に対するNi系金属酸化物膜の成膜速度の関係の一例を示す。
Ni系金属酸化物膜中の酸素含有量を示すO/Ni原子数比は、図3及び図4からも分かる通り、酸素流量比が高くなるに従い増加し、O/Ni原子数比が増加するに従い、反応性スパッタリングの状態も金属モード、遷移モード、酸化物モードへと対応する。O/Ni原子数比が、0.65未満の領域は、上記金属モードの低酸素流量比側で得られ、ターゲット表面の大部分は酸化物膜で被覆されていないので成膜速度は速いが、Ni系金属酸化物膜の色は金属色を呈し、金属光沢の強い膜となってしまう。さらに、このような組成域では、膜中でNi、O量やNi系酸化物の割合が異なり、組成にバラツキが生じてしまう。そのため、耐熱・高温高湿性での反射率、光学濃度、色味特性といった光学特性において、その耐久性が悪くなり、好ましくない。
一方、0.85を超える領域は、上記遷移モードもしくは酸化物モードである高酸素流量比側で得られ、ターゲット表面は完全に酸化物膜で被覆されてしまうので、成膜速度は低い。O/Ni原子数比が増加するほど膜の透過率は増し、膜の屈折率は低下し、膜表面の反射率は金属モードで得られるNi系金属酸化物膜に比べ、低下する。しかし、図5に示すように、波長380〜780nmである可視光での波長に対する屈折率の変化は急激となり、Ni系金属膜を積層膜化した時に、膜厚調整でのNi系金属酸化物膜との積層化による黒色化が困難となる。さらに、Ni系金属酸化物膜の結晶性がなくなり、非晶質膜となり、結晶粒子の配向がランダムとなるため、耐久性が悪くなってしまい、好ましくない。
本発明のNi系金属酸化物膜は、酸素含有量がO/Ni原子数比として0.65〜0.85である。このような膜は、上記遷移モード手前の酸素流量比の領域で得られる。このような膜は、Ni、O量が膜内で均一であり、遷移モード手前の酸素流量比で得られるものの、金属モードであるため結晶性を有しており、金属モードの低酸素流量比側で得られたNi系金属酸化物膜とは異なり、組織も均一であるため、耐熱・高温高湿下での耐久性に優れている。さらに、この組成範囲のNi系金属酸化物膜は、着色しており、図6に示すように可視光域の波長に対する屈折率変化が小さいことから、膜厚調整することでNi系金属膜との積層膜の色を容易に黒色化することが可能なNi系金属酸化物膜の膜厚の許容範囲は広くなり、成膜条件の制御が容易になる。
Ni系金属酸化物膜(C)の材料は、金属成分が金属膜(B)と同じでなくともよいが、金属膜と同じ成分のNi系金属酸化物とすることが望ましい。これにより、単一のスパッタリングターゲットを用いて、金属膜と低反射性のNi系金属酸化物膜の両方を成膜することができ、単一のカソードを有するスパッタリング装置で製造することができ、製造コストを低減することができる。上記ニッケルを主成分とした金属酸化物膜の膜厚は、100〜400nmとすることで可視域の反射率を低減することができる。
酸素含有量がO/Ni原子数比として、0.65〜0.85であるNi系金属酸化物膜の膜厚は、100〜400nmとすることで可視域の反射率を低減することができる。膜厚が100nm未満であると下地のNi系金属膜界面での反射を抑制することが難しく、正反射率を十分に低下できない場合がある。400nmを超えると、フィルム片面にNi系金属膜とNi系金属酸化物膜を形成した時に、膜応力によるフィルムの変形が非常に大きくなり、膜表面にクラックが入ってしまい、好ましくない。さらに、400nmを超える膜厚を形成するのに、非常に成膜時間が長くなるため製造コスト的にも好ましくない。好ましい金属酸化物膜の膜厚は、80〜380nmであり、より好ましい膜厚は、100〜300nmである。
導電性については、プラスチックフィルムが絶縁性のため静電気が発生しやすく、シャッター羽根や絞り羽根などとして動作した時に静電気が発生し、羽根同士が静電吸着により羽根同士が吸着するために重要である。
本発明の遮光フィルムに用いるNi系金属膜及びNi系金属酸化物膜の材料は、導電性に優れたNi系材料である。具体的な金属膜及び金属酸化物膜としては、金属成分が純粋なニッケルでもよいが、ニッケルを主成分として、チタン、タンタル、タングステン、バナジウム、アルミニウム、及び銅からなる群から選ばれた1種類以上の元素が添加されているNi系合金膜(複合金属酸化物膜)であることが好ましい。上記元素が添加されることで、添加元素が半導体でのドーパント的な作用を有し、電気抵抗を減少することができる。
このとき、Ni系金属酸化物膜(C)の添加元素(Eo)が、(Eo/Ni)原子数比で0.05〜0.5含有されていることが好ましい。(Eo/Ni)原子数比が0.05未満であるとニッケルターゲットの強磁性特性を極端に弱めることができないか、磁力の弱い通常の磁石を配置したカソードで直流マグネトロンスパッタリング法による成膜を行えなくなることがある。また、(Eo/Ni)原子数比が0.5を超えると多量の金属間化合物を形成し、スパッタリングターゲットの脆性が増し、スパッタリング時の熱応力等で割れてしまい、スパッタリングができなくなる恐れがあるだけでなく、得られるNi系金属合金酸化物膜の膜質が悪くなる可能性があるため、好ましくない。
また上述の通り、本発明においてNi系金属酸化物膜は通常、金属モードで成膜されるため、一般的である酸化物モードで得られた膜よりも電気抵抗は低下する。最表面が酸化珪素、アルミナなどの絶縁膜で形成されると、遮光フィルムの表面抵抗値は10Ω/□程度が限界であるが、本発明の遮光フィルムでは、表面抵抗値を500Ω/□以下、好ましくは100Ω/□以下、更には50Ω/□以下にすることができる。
また、本発明の遮光フィルムは、270℃で10分間の加熱処理を行ったときの、フィルムの色味の変化である色差(ΔE*ab)が1以下であり、さらに、85℃×90%RH×24hrの処理を行ったときの、フィルムの色味の変化である色差(ΔE*ab)が1以下であることが好ましい。
以上説明した本発明の遮光フィルムは、遮光性の指標である波長380〜780nmにおける光学濃度が4を超え、光の正反射率は0.4%以下を満足する。
ここで光学濃度とは、分光光度計で測定される各波長の透過率(T)を次式により換算した数値である。完全な遮光性を得るためには、波長380〜780nmにおける光学濃度は少なくとも4以上であることが必要であり、Ni系金属膜中の酸素含有量がO/Ni原子数比で0.20以下とすることで得られる。
[数1]
光学濃度=Log(1/T)
また、上記の光の正反射率とは、反射光が反射の法則に従い、入射光の入射角に等しい角度で表面から反射していく光の反射率を指し、十分な低反射性を得るためには0.4%を超えないことが必要である。この低反射性は、Ni系金属酸化物膜の膜厚を100nm以上とすることや、Ni系金属酸化物膜の表面粗さを算術平均高さRaで0.1以上とすることで得られる。
なお、本発明の遮光フィルムは、上記酸化物膜の表面に、潤滑性や低摩擦性を有する他の薄膜(例えば、フッ素含有の有機膜や、炭素膜、ダイヤモンドライクカーボン膜など)を薄く塗布して利用しても、本発明の特徴を損なわなければ構わない。
2.遮光フィルムの製造方法
本発明で遮光フィルムを製造するには、算術平均高さRaが0.2〜2.2μmの表面粗さを有する樹脂フィルム基材(A)をスパッタリング装置に供給し、不活性ガス雰囲気下でスパッタリングして、樹脂フィルム基材(A)上にNi系金属膜(B)を形成し、次に、不活性ガス雰囲気に酸素ガスを導入しながらスパッタリングして、Ni系金属膜(B)上にNi系金属酸化物膜(C)を形成する。
本発明では、前記の表面粗さが算術平均高さRaで0.2〜2.2μmである樹脂フィルム基材を用意し、その表面に、まずスパッタリング法でNi系金属膜を形成し、引き続き該Ni系金属膜上に、着色した反射防止効果を有するNi系金属酸化物膜をスパッタリングで形成する。本発明では、Ni系金属膜およびNi系金属酸化物膜がスパッタリング法で形成されるため、インクの塗布法や真空蒸着法と比べて膜の緻密性がよく、下地(基板や膜)との密着性が良好であるという特徴がある。
この性質は、遮光フィルムを270℃の高熱環境下や温度85℃×湿度90%RHで使用したときに顕著である。インクの塗布法や真空蒸着法で形成したときは、膜剥がれや、膜の酸化による色味の変化が見られるが、本発明のようなNi系金属膜やNi系金属酸化物が形成された遮光フィルムではこのような恐れがない。
本発明における遮光フィルムは、上述のようにスパッタリング法で樹脂フィルム基材上にNi系金属膜とNi系金属酸化物膜を形成して製造される。スパッタリング法は、蒸気圧の低い材料の膜を基材上に形成する場合や精密な膜厚制御が必要となる時に有効な薄膜形成方法である。一般的に、約10Pa以下のアルゴンガス圧のもとで、基材を陽極とし、膜の原料となるスパッタリングターゲットを陰極として、この間にグロー放電を起こさせてアルゴンプラズマを発生させ、プラズマ中のアルゴン陽イオンを陰極のスパッタリングターゲットに衝突させてスパッタリングターゲット成分の粒子を弾き飛ばし、この粒子を基材上に堆積させて成膜する方法である。
スパッタリング法は、アルゴンプラズマの発生方法で分けられ、高周波プラズマを用いるものは高周波スパッタリング法、直流プラズマを用いるものは直流スパッタリング法である。また、マグネトロンスパッタリング法は、スパッタリングターゲットの裏側に磁石を配置し、アルゴンプラズマをスパッタリングターゲット直上に集中させ、低ガス圧でもアルゴンイオンの衝突効率を上げて成膜する方法である。
Ni系金属膜とNi系金属酸化物膜を成膜するには、例えば、図7に示した巻き取り式スパッタリング装置を用いることができる。この装置は、ロール状の樹脂フィルム基材1が巻き出しロール4にセットされ、ターボ分子ポンプ等の真空ポンプ5で真空槽6内を排気した後、巻き出しロール4から搬出された樹脂フィルム基材1が途中、キャンロール7の表面を通って、巻き取りロール8で巻き取られていく構成をとる。キャンロール7の表面の対向側にはシングルマグネトロンカソード9が設置され、このカソードには膜の原料となるターゲット8が取り付けてある。なお、巻き出しロール4、キャンロール7、巻き取りロール8などで構成されるフィルム搬送部は、隔壁11でシングルマグネトロンカソード9と隔離されている。
(1)Ni系金属膜の形成
まず、ロール状の樹脂フィルム基材1を巻き出しロール4にセットし、ターボ分子ポンプ等の真空ポンプ5で真空槽6内を排気する。その後、巻き出しロール4から樹脂フィルム基材1を供給し、途中、キャンロール7の表面を通って、巻き取りロール8で巻き取られていくようにしながら、キャンロール7とカソード間で放電させて、キャンロール7表面に密着搬送されている樹脂フィルム基材1に成膜する。
本発明の遮光フィルムにおいて、金属膜は、例えばアルゴン雰囲気中において純ニッケル又はNi系合金のスパッタリングターゲットを使用した直流マグネトロンスパッタリング法により樹脂フィルム基材上に成膜形成される。
純ニッケル材は、通常、強磁性体であるため上記金属膜層を直流マグネトロンスパッタリング法で成膜する場合、スパッタリングターゲットと基材間のプラズマに作用するためのスパッタリングターゲット裏面に配置した磁石からの磁力がニッケルターゲット材で遮蔽されて表面に漏洩する磁界が弱くなり、プラズマを集中させて効率よく成膜することが困難となる。これを回避するためには、スパッタリングターゲット裏側に配置する磁石の磁力を強くしたカソードを用い、ニッケルスパッタリングターゲットを通過する磁界を強めてスパッタリングし成膜することが望ましい。
ただし、このような方法を採った場合でも生産時には以下に述べるような別の問題が生じる。すなわち、ニッケルターゲットの連続使用に伴ってスパッタリングターゲットの厚みが減少していくと、スパッタリングターゲットの厚みが薄くなった部分では、プラズマ空間の漏洩磁界が強くなっていく。プラズマ空間の漏洩磁界が強くなると、放電特性が変化して成膜速度が変化する。つまり、生産時に同一のニッケルターゲットを連続して長時間使用するとニッケルターゲットの消耗に伴い、ニッケル膜の成膜速度が変化する問題が生じる。
そこで、このような場合は、ニッケルを主成分としてチタン、タンタル、タングステン、バナジウム、アルミニウム、銅から選択された1種類以上の元素が添加されたNi系合金材料をターゲットとすることにより、強磁性が弱められ、上記問題を回避することができ、上記組成の金属合金膜として成膜することができる。
本発明においては、ターゲットとして、添加元素含有量をNiとの原子数の割合で0.05〜0.5の範囲で含むNi系合金材料を用いることが好ましい。添加元素含有量を上記のように規定する理由は、ニッケルとの原子数の割合で0.05以上含有させることで強磁性特性を極端に弱めることができ、磁力の弱い通常の磁石を配置したカソードでも直流マグネトロンスパッタリングによる成膜を行うことができるからである。また、スパッタリングターゲットによる磁界の遮蔽能力が低いため、スパッタリングターゲットの消耗に依存するプラズマ空間の漏洩磁界の変化も小さく、一定の成膜速度で安定的な成膜が可能となるからである。また、添加元素含有量をニッケルとの原子数の割合で0.5以下とする理由は、添加元素が0.5を超えて含まれる場合は、多量の金属間化合物を形成し、スパッタリングターゲットの脆性が増し、スパッタリング時の熱応力等で割れてしまい、スパッタリングができなくなる恐れがあり、また、スパッタリングされて得られた金属合金膜の膜質が悪くなる可能性があるためである。
金属膜を成膜する時の成膜時のスパッタリングガス圧は、装置の種類などによっても異なるので一概に規定できないが、1.0Pa以下、例えば、0.2〜1.0Paにすることが好ましい。樹脂フィルム基材は表面粗さが算術平均高さRaで0.2〜2.2μmとなるように、予めショット材も用いてマット処理されるため、用いたショット材が樹脂フィルム基材上に微量残存する。しかし、このスパッタリングガス圧を採用すれば、270℃の高熱環境下でショット材、Ni系金属膜、低反射性のNi系金属酸化物膜の熱膨張差によっても膜が剥がれなくなる。成膜時のスパッタリングガス圧が0.2Pa未満であると、ガス圧が低いためスパッタリング法でのアルゴンプラズマが不安定となり、成膜した膜の膜質が悪くなる。また、成膜時のスパッタリングガス圧が1.0Paを超えた場合では、金属膜の粒が粗くなり、高緻密な膜質でなくなるので樹脂フィルム基材との密着力が弱くなり、膜が剥がれてしまう。
(2)Ni系金属酸化物膜の形成
本発明においてNi系金属酸化物膜は、スパッタリングガスとして酸素ガスといった反応性ガスをアルゴンなどの不活性ガス中に導入して、Ni系スパッタリングターゲットをスパッタリングすることで形成する。
Ni系金属酸化物膜の成膜工程でも、前記Ni系金属膜のスパッタリングで使用したスパッタリング用ターゲットを変更することなく、全く同じターゲットを使用することが好ましい。これにより、装置セッティング上のターゲット交換をする必要が無く、連続したスパッタリングが可能であり、製造コストが安くなり、更に耐熱性の樹脂フィルム基材を中心に対称型の膜構造を形成できることから、成膜時の膜応力による遮光フィルムの変形を生じることもないので生産性に優れている。
前記のとおり、反応性スパッタリングには、成膜速度や膜質の異なる金属モード、遷移モード、酸化物モードと呼ばれる3つの状態が存在し、反応性ガス流量比とスパッタ電圧または成膜速度の関係として、Ni系金属酸化物膜成膜時のスパッタリングガス中の酸素ガス流量/(酸素ガス流量+アルゴンガス流量)の割合を示す酸素流量比に対するスパッタ電圧、またはNi系金属酸化物膜の成膜速度の関係がヒステリシスとなる。
本発明では、Ni系金属膜の成膜時と同じNi系ターゲットを使用するが同様に、酸素流量比に対して3つのモードをとる。
図3に、Ni系金属酸化物成膜時の反応性ガスの導入割合を表す酸素流量比に対するX線光電子分光分析(XPSともいう)から算出されるNi、O量を用いて表されるO/Ni原子数比の関係の一例を示した。また、図4には、酸素流量比に対するNi系金属酸化物膜の成膜速度の関係を示している。
Ni系金属酸化物膜中の酸素含有量を示すO/Ni原子数比は、酸素流量比が高くなるに従い増加し、O/Ni原子数比が増加するが、それに従い、反応性スパッタリングの状態も金属モード、遷移モード、酸化物モードへと対応する。
本発明のNi系金属酸化物膜の酸素含有量として、O/Ni原子数比は0.65〜0.85である。このような膜は、上記遷移モード手前の酸素流量比の領域で得られる。また、Ni、O量が膜内で均一であり、遷移モード手前の酸素流量比で得られるものの、金属モードであるため結晶性を有しており、金属モードの低酸素流量比側で得られたNi系金属酸化物膜とは異なり、組織も均一であるため、耐熱・高温高湿下での耐久性に優れている。さらに、この組成範囲のNi系金属酸化物膜は、着色しており、図6に示すように可視光域の波長に対する屈折率変化が小さいことから、膜厚調整することでNi系金属膜との積層膜の色を容易に黒色化することが可能なNi系金属酸化物膜の膜厚の許容範囲は広くなり、成膜条件の制御が容易になる。
本発明のNi系金属酸化物膜を形成する上で、酸素流量比は装置やターゲットの種類、雰囲気ガスなどによって異なるので、一概に規定できないが、アルゴンガスに対する酸素ガスの割合を表す酸素流量比は、例えば30〜70%とすることができる。好ましい酸素流量比は、40〜60%である。
上記ニッケルを主成分とした金属酸化物膜の膜厚は、100〜400nmとすることで可視域の反射率を低減することができる。膜厚が100nm未満であると下地のNi系金属膜界面での反射を抑制することが難しく、正反射率を十分に低下できない場合がある。400nmを超えると、フィルム片面にNi系金属膜とNi系金属酸化物膜を形成した時に、膜応力によるフィルムの変形が非常に大きくなり、膜表面にクラックが入ってしまい、好ましくない。さらに、400nmを超える膜厚を形成するのに、非常に成膜時間が長くなるため製造コスト的にも好ましくない。
こうして、基材フィルムの片面にNi系金属膜とNi系金属酸化物膜が形成された遮光フィルムを得ることができる。両面に、Ni系金属膜とNi系酸化物膜が形成された遮光フィルムを得るには、さらに、上記スパッタリング装置に供給し、同様にして、スパッタリングによって樹脂フィルム基材の裏面にNi系金属膜、及びNi系金属酸化物膜を順次形成する。
なお、Ni系金属膜とNi系金属酸化物膜を成膜するのに、フィルム巻き取り式スパッタリング装置を例示し、連続的に成膜する方法について詳述したが、本発明は、これに限定されることなく、成膜時に基材フィルムの移動をさせずに行う回分式成膜方法を採用することもできる。ただし、この場合は、雰囲気ガスの切り替え、フィルム搬入・停止という操作が加わり煩雑となる。さらに、基材フィルムは、ロール状のものでなくとも、所定の大きさに切断された状態で装置内に固定してもよい。
3.遮光フィルムの用途
本発明の遮光フィルムは、カメラ付き携帯電話やスマートフォン、デジタルカメラのシャッター羽根、絞り、絞り羽根、プロジェクターの絞りの材料として用いることができる。カメラ付き携帯電話、スマートフォン、デジタルカメラ、デジタルビデオカメラの固定絞りやシャッター羽根、絞り羽根やプロジェクターの光量調整装置用絞り羽根にするには、公知の方法で端面クラックが生じない打ち抜き加工をすればよい。さらには、本発明の遮光フィルムは、樹脂フィルムを基材としているので、軽量化となり、遮光羽根を駆動する駆動部材の小型化と消費電力の低減が可能となる。
本発明の遮光フィルムは、基材に270℃以上の耐熱性をもつ樹脂フィルムを用いることで、組み込み時の半田リフロー耐熱性や使用時に耐熱性が要求される材料として好ましく使用できる。
次に、本発明について、実施例、比較例を用いて具体的に説明するが、実施例のみに点綴されるものではない。なお、得られた遮光フィルムの評価は以下の方法で行った。
(Ni系金属酸化物膜の組成分析)
膜中のニッケル及び酸素量をX線光電子分光分析装置(XPS、VG Scientific社製 ESCALAB220i−XL)で膜最表面をスパッタエッチングで、クリーニングした後、測定した。Ni系金属酸化物膜中央やNi系金属膜界面付近のニッケル及び酸素量は、所定の深さまでスパッタエッチングした後、測定した。
(Ni系金属酸化物膜の結晶性分析)
ガラス基板上に成膜したNi系金属酸化物膜単膜で二次元X線回折装置(Bruker AXS社製 D8 DISCOVER μ−HR)を用いて、結晶性を分析した。
(遮光フィルムの表面粗さ)
表面粗さは、算術平均高さRaを表面粗さ計((株)東京精密製、サーフコム570A)で測定した。
(遮光フィルムの明度L*値)
明度は、色彩計(BYK−Gardner GmbH社製 商品名スペクトロガイド)にて、光源D65、視野角10°で測定した。
(遮光フィルムの最大正反射率と光学濃度)
波長380〜780nmにおける最大正反射率、最小光学濃度は分光光度計(日本分光社製V−570)にて測定した。正反射率は、入射角5°で測定した。
(膜密着性評価)
フィルム上に形成したNi系金属膜とNi系金属酸化物膜の膜密着性は、JIS K5600−5−6に基づき評価した。
(導電性)
得られた遮光フィルムの表面抵抗値を抵抗率計(三菱化学アナリック製 ロレスタEPMCP−T360)でJIS K6911に基づき測定した。
(動摩擦係数)
動摩擦係数は、万能材料試験機(INSTRON製5566型)を用い、JIS K7125に準拠して行った。
(遮光フィルムの耐熱性)
遮光フィルムの耐熱性については、大気オーブン(アドバンテック社製)にて、270℃で10分間の加熱処理を行い、フィルムの最大正反射率、光学濃度、色味の変化の有無、膜密着性を調べた。色味は色彩計(BYK−Gardner GmbH社製 商品名スペクトロガイド)にて、光源D65、視野角10°で測定した。色味の変化は、国際照明委員会(CIE)で規格化された色の明度L*と色度a*、b*で表わされる、色差(ΔE*ab)を求め、1以下である場合を良好とした。色差は下記式(2)から算出した。また、膜密着性は、目視にて膜剥がれがないか確認し、膜剥がれがない場合は(○)、膜が剥がれた場合は(×)で評価した。反りは、大きさφ50mmに打ち抜いた遮光フィルムを金属板上に置き、レーザー変位計を用いてスキャンしながら反りの最大値を測定した。
[数2]
ΔE*ab=((ΔL*)+(Δa*)+(Δb*)1/2
ここで、ΔL*、Δa*、Δb*は、試験前後での差である。
(遮光フィルムの耐高温高湿性)
遮光フィルムの耐高温高湿性については、小型環境試験器(エスペック社製SH−241)にて、85℃×90%RH×24hrの処理を行った。評価は、上記耐熱性と同様に行った。
なお、表1に、実施例、比較例におけるNi系金属膜とNi系金属酸化物膜の特性、作製した遮光フィルムの初期特性と耐熱・耐高温高湿性での特性変化を示した。
(実施例1)
図7に示した巻き取り式スパッタリング装置を用いて、以下のようにして樹脂フィルム基材上にNi系金属膜とNi系金属酸化物膜の成膜を行った。
まず、キャンロール7の表面の対向側にマグネトロンカソード9が設置された装置のカソードに膜の原料となるターゲット10を取り付けた。巻き出しロール4、キャンロール7、巻き取りロール8などで構成されるフィルム搬送部は、隔壁11でマグネトロンカソード8と隔離されている。次に、ロール状の樹脂フィルム基材1である厚み38μmのポリイミドフィルムを巻き出しロール4にセットした。ポリイミドフィルムの表面は、所定の吐出時間、吐出圧力、搬送速度でサンドブラスト加工を行い、両面とも算術平均高さがRa0.5μmの微細な凹凸が形成されている。このポリイミドフィルムは、スパッタ装置内に設置しているキャンロールやヒーターを用いて、スパッタリング前に80℃以上の温度で加熱し、乾燥した。
次に、ターボ分子ポンプ等の真空ポンプ5で真空槽6内を排気した後、キャンロール7とカソード間で放電させて、樹脂フィルム基材1をキャンロール表面に密着搬送しながら成膜を行った。
まず、ニッケルを主成分としてチタンを9原子数%(at%とも言う)含むNi系合金(以降Ni−Tiと略す)ターゲットをカソードに設置し、このカソードから直流マグネトロンスパッタリング法で金属膜(Em/Ni原子数比=0.1)を成膜した。金属膜はスパッタリングガスに純アルゴンガス(純度99.999%)を用いて成膜を行った。ターゲットの投入電力密度は14kW/cm、ガス圧は0.3Paで行い、膜厚は成膜時のフィルムの搬送速度で制御した。巻き出しロール4から搬出された樹脂フィルム基材1は、途中、キャンロール7の表面を通って、巻き取りロール8で巻き取った。
次に、スパッタ装置内を大気開放し、Ni−Ti膜を形成したロール状の樹脂フィルムを巻き取りロール8で巻き取った状態で、Ni−Tiターゲットをカソードに設置したまま、連続的にフィルムを巻き取りロール8から搬送し、このカソードから直流スパッタリング法でNi−Ti膜上にNi−Ti酸化物膜(Eo/Ni原子数比=0.1)を成膜した。Ni−Ti酸化物膜成膜時の反応性ガスは、酸素ガス(純度99.999%)を用い、ガス配管内でアルゴンガスと混合し、カソード内へ導入し、アルゴンガスに対する酸素ガスの割合を表す酸素流量比は、53%とした。この酸素流量比は、Ni系金属膜の酸素流量比と成膜速度の関係を表した図4の遷移領域手前の金属モード領域に相当する。Ni−Ti酸化物膜の成膜は、ターゲット投入電力密度6.7W/cm、ガス圧0.3Paで行い、膜厚は成膜時のフィルムの搬送速度で制御した。Ni−Ti酸化物膜成膜時、巻き取りロール8から搬出されたフィルム1は、途中、キャンロール7の表面を通って、巻き出しロール4で巻き取った。これにより、フィルム基材の片面に膜厚90nmのNi−Ti膜と膜厚200nmのNi−Ti酸化物膜が形成された表1に示すフィルムが得られた。
次に、フィルム片面にNi−Ti膜とNi−Ti酸化物膜を積層成膜したポリイミドフィルムの裏面にも同様の方法でNi−Ti膜とNi−Ti酸化物膜を形成し、ポリイミドフィルムを中心に対称構造の遮光フィルムを作製した。
また、Ni−Ti膜およびNi−Ti酸化物膜の単層膜をそれぞれポリイミドフィルム上に形成し、XPS、XRD分析で各膜のNi、O量と結晶性を調べた。その結果、Ni−Ti膜の酸素含有量をO/Ni原子数比で表わすと、0.12、Ni−Ti酸化物膜では、0.75となった。Ni−Ti酸化物膜のX線回折分析結果を図8に、Ni−Ti酸化物膜の膜内のO/Ni原子数比の変化を図9に示すが、Ni−Ti酸化物膜は結晶膜であり、膜内の組成は均一であることがわかった。
次に、作製した耐熱遮光フィルムを前記の方法で評価した。この結果、波長380〜780nmのおける最小光学濃度は4を超え、最大反射率は0.3%であった。動摩擦係数は、0.2となり、良好であった。また、表面抵抗値は、80Ω/□であり、表面の算術平均高さは、0.4μmであった。耐熱試験、高温高湿試験でも光学濃度、最大正反射率は変化せず、試験前後の色差も1以下となり、反りも発生せず、良好であった。作製した遮光フィルムの特性を表2にまとめた。
得られた遮光フィルムは、光学濃度、正反射率、耐熱性・耐高温高湿性、摩擦係数、導電性のすべてについて良好であり、カメラ付き携帯電話、スマートフォン、デジタルカメラ、デジタルビデオカメラで現在PETフィルムが使用されている用途はもちろんのこと、組み込み時の半田リフロー耐熱性や使用時に耐熱性が要求されるカメラ付き携帯電話、スマートフォン、デジタルビデオカメラ、プロジェクターなどの固定絞り、シャッター羽根、絞り羽根、光量調整絞り羽根として使用できるため、工業的に極めて有用である。
(実施例2)
NiTi酸化物膜成膜時の酸素流量比を49%に調節して、Ni−Ti酸化物膜のO/Ni原子数比を0.65に変えた以外は、実施例1と全く同じ条件で遮光フィルムを作製した。
遮光フィルムの評価は実施例1と同様の方法、条件で実施した。その結果、光学濃度、反射率、表面抵抗、動摩擦係数、算術平均高さRaの特性は実施例1と同等であり良好であった。また、耐熱、高温高湿試験においても、最小光学濃度、最大正反射率、色味の光学特性は変化せず、膜の密着性も膜剥がれがなく、実施例1と同等の耐熱・耐高温高湿性を有していることがわかった。作製した遮光フィルムの特性を表2にまとめた。
よって、得られた遮光フィルムは、カメラ付き携帯電話、スマートフォン、デジタルカメラ、デジタルビデオカメラで現在PETフィルムが使用されている用途はもちろんのこと、組み込み時の半田リフロー耐熱性や使用時に耐熱性が要求されるカメラ付き携帯電話、スマートフォン、デジタルビデオカメラ、プロジェクターなどの固定絞り、シャッター羽根、絞り羽根、光量調整絞り羽根として使用できるため、工業的に極めて有用である。
もちろん200℃程度の高熱環境下で使用される液晶プロジェクターの絞りなどの部材として利用することができる。
(実施例3)
Ni−Ti酸化物膜成膜時の酸素流量比を53.5%に調節して、Ni−Ti酸化物膜のO/Ni原子数比を0.85に変えた以外は、実施例1と全く同じ条件で遮光フィルムを作製した。
遮光フィルムの評価は、実施例1と同様の方法、条件で実施した。その結果、光学濃度、反射率、表面抵抗、動摩擦係数、算術平均高さRaの特性は実施例1と同等であり良好であった。また、耐熱、高温高湿試験においても、最小光学濃度、最大正反射率、色味の光学特性は変化せず、膜の密着性も膜剥がれがなく、実施例1と同等の耐熱・耐高温高湿性を有していることがわかった。作製した遮光フィルムの特性を表2にまとめた。
よって、得られた遮光フィルムは、カメラ付き携帯電話、スマートフォン、デジタルカメラ、デジタルビデオカメラで現在PETフィルムが使用されている用途はもちろんのこと、組み込み時の半田リフロー耐熱性や使用時に耐熱性が要求されるカメラ付き携帯電話、スマートフォン、デジタルビデオカメラ、プロジェクターなどの固定絞り、シャッター羽根、絞り羽根、光量調整絞り羽根として使用できるため、工業的に極めて有用である。
(比較例1)
Ni−Ti酸化物膜成膜時の酸素流量比を48%に調節して、Ni−Ti酸化物膜のO/Ni原子数比を0.62に変えた以外は、実施例1と全く同じ条件で遮光フィルムを作製した。
遮光フィルムの評価は、実施例1と同様の方法、条件で実施した。その結果、光学濃度、反射率、表面抵抗、動摩擦係数、算術平均高さRaの特性は実施例1と同等であり良好であった。しかし、耐熱試験において反射率が変化し、色差が1.0を超えたため、耐熱性がないことがわかった。作製した遮光フィルムの特性を表2にまとめた。
よって、組み込み時の半田リフロー耐熱性や使用時に耐熱性が要求されるカメラ付き携帯電話、スマートフォン、デジタルビデオカメラ、プロジェクターなどの固定絞り、シャッター羽根、絞り羽根、光量調整絞り羽根として使用できない。
(比較例2)
Ni−Ti酸化物膜成膜時の酸素流量比を55%に調節して、Ni−Ti酸化物膜のO/Ni原子数比を0.88に変えた以外は、実施例1と全く同じ条件で遮光フィルムを作製した。酸素流量比55%は、酸素流量比に対するNi系金属膜の成膜速度の関係を表した図4では酸化物モードの領域に相当する。
遮光フィルムの評価は、実施例1と同様の方法、条件で実施した。その結果、光学濃度、反射率、動摩擦係数、算術平均高さRaの特性は実施例1と同等であり良好であった。しかし、耐熱及び高温高湿試験において反射率が変化し、色差が1.0を超え大きくなり、耐熱性、耐高温高湿性がないことがわかった。図10に、Ni−Ti酸化物膜のX線回折パターンを、図11にNi−Ti酸化物膜の膜内のO/Ni原子数比の変化を示すが、Ni−Ti金属酸化物膜は非晶質であった。さらに、膜内の組成がばらついており、耐熱性、耐高温高湿性がないことがわかった。作製した遮光フィルムの特性を表2にまとめた。
よって、組み込み時の半田リフロー耐熱性や使用時に耐熱性が要求されるカメラ付き携帯電話、スマートフォン、デジタルビデオカメラ、プロジェクターなどの固定絞り、シャッター羽根、絞り羽根、光量調整絞り羽根として使用できない。
(実施例4)
Ni−Ti金属膜成膜時の酸素流量比を20%に調節して、Ni−Ti金属膜中のO/Ni原子数比を0.2に変えた以外は、実施例1と全く同じ条件で遮光フィルムを作製した。
遮光フィルムの評価は、実施例1と同様の方法、条件で実施した。その結果、光学濃度、反射率、表面抵抗、動摩擦係数、算術平均高さRaの特性は実施例1と同等であり良好であった。さらに、耐熱・高温高湿試験においても特性や膜の密着性は良好であった。作製した遮光フィルムの特性を表2にまとめた。
よって、得られた遮光フィルムは、耐熱、高温高湿性が優れており、カメラ付き携帯電話、スマートフォン、デジタルカメラ、デジタルビデオカメラ、プロジェクター用の絞り、シャッター羽根、絞り羽根として有用である。
(比較例3)
Ni−Ti金属膜成膜時の酸素流量比を25%に調節して、NiTi金属膜中のO/Ni原子数比を0.3に変えた以外は、実施例1と全く同じ条件で遮光フィルムを作製した。
遮光フィルムの評価は、実施例1と同様の方法、条件で実施した。その結果、反射率、表面抵抗、動摩擦係数、算術平均高さRaの特性は実施例1と同等であったが、最小光学濃度は3.7となり、完全遮光性は得られなかった。作製した遮光フィルムの特性を表2にまとめた。
よって、得られた遮光フィルムは、最小光学濃度が4.0未満となったため、カメラ付き携帯電話、スマートフォン、デジタルカメラ、デジタルビデオカメラ、プロジェクター用の絞り、シャッター羽根、絞り羽根として使用できない。
(実施例5)
Ni−Ti金属酸化物膜の膜厚を100nmに変えた以外は、実施例1と全く同じ条件で遮光フィルムを作製した。
遮光フィルムの評価は、実施例1と同様の方法、条件で実施した。その結果、光学濃度、反射率、表面抵抗、動摩擦係数、算術平均高さRaの特性は実施例1と同等であり良好であった。さらに、耐熱・高温高湿試験においても特性や膜の密着性は良好であった。作製した遮光フィルムの特性を表2にまとめた。
よって、得られた遮光フィルムは、耐熱、高温高湿性が優れており、カメラ付き携帯電話、スマートフォン、デジタルカメラ、デジタルビデオカメラ、プロジェクター用の絞り、シャッター羽根、絞り羽根として有用である。
(実施例6)
Ni−Ti金属酸化物膜の膜厚を400nmに変えた以外は、実施例1と全く同じ条件で遮光フィルムを作製した。
遮光フィルムの評価は、実施例1と同様の方法、条件で実施した。その結果、光学濃度、反射率、表面抵抗、動摩擦係数、算術平均高さRaの特性は実施例1と同等であり良好であった。さらに、耐熱・高温高湿試験においても特性や膜の密着性は良好であった。作製した遮光フィルムの特性を表2にまとめた。
よって、得られた遮光フィルムは、耐熱、高温高湿性が優れており、カメラ付き携帯電話、スマートフォン、デジタルカメラ、デジタルビデオカメラ、プロジェクター用の絞り、シャッター羽根、絞り羽根として有用である。
(比較例4)
Ni−Ti金属酸化物膜の膜厚を80nmに変えた以外は、実施例1と全く同じ条件で遮光フィルムを作製した。
遮光フィルムの評価は、実施例1と同様の方法、条件で実施した。その結果、光学濃度、表面抵抗、動摩擦係数、算術平均高さRaの特性は実施例1と同等であったが、最大正反射率が0.4%を超え、実施例1より高くなった。また、耐熱・高温高湿試験においても特性や膜の密着性は良好であった。作製した遮光フィルムの特性を表2にまとめた。
よって、得られた遮光フィルムは、耐熱、高温高湿性が優れているが、可視光域の最大正反射率が高いため、この遮光フィルム表面で反射した光が迷光となって、カメラモジュール内の撮像素子へ入射し、画質が低下する可能性がある。そのため、低反射が求められるカメラ付き携帯電話、スマートフォン、デジタルカメラ、デジタルビデオカメラの絞り、シャッター羽根、絞り羽根として使用することはできない。
(比較例5)
Ni−Ti金属酸化物膜の膜厚を420nmに変えた以外は、実施例1と全く同じ条件で遮光フィルムを作製した。
遮光フィルムの評価は、実施例1と同様の方法、条件で実施した。その結果、光学濃度、反射率、表面抵抗、動摩擦係数、算術平均高さRaの特性は実施例1と同等であり良好であった。また、耐熱・高温高湿試験においても特性や膜の密着性は良好であった。しかし、Ni−Ti酸化物膜の膜厚が厚くなりすぎて、フィルム片面成膜時に、著しいフィルムの変形が見られ、フィルム両面成膜後でも変形を改善することはできなかった。
作製した遮光フィルムの特性を表2にまとめた。
よって、得られた遮光フィルムは、耐熱、高温高湿性が優れているが、膜厚が厚いため膜応力によってフィルムが変形してしまい、カメラモジュールなどに搭載することができないため、好ましくない。
(実施例7)
Ni−Ti金属膜の膜厚を50nmに変えた以外は、実施例1と全く同じ条件で遮光フィルムを作製した。
遮光フィルムの評価は、実施例1と同様の方法、条件で実施した。その結果、光学濃度、反射率、表面抵抗、動摩擦係数、算術平均高さRaの特性は実施例1と同等であり良好であった。さらに、耐熱・高温高湿試験においても特性や膜の密着性は良好であった。作製した遮光フィルムの特性を表2にまとめた。
よって、得られた遮光フィルムは、耐熱、高温高湿性が優れており、カメラ付き携帯電話、スマートフォン、デジタルカメラ、デジタルビデオカメラ、プロジェクター用の絞り、シャッター羽根、絞り羽根として有用である。
(実施例8)
Ni−Ti金属膜の膜厚を250nmに変えた以外は、実施例1と全く同じ条件で遮光フィルムを作製した。
遮光フィルムの評価は、実施例1と同様の方法、条件で実施した。その結果、光学濃度、反射率、表面抵抗、動摩擦係数、算術平均高さRaの特性は実施例1と同等であり良好であった。さらに、耐熱・高温高湿試験においても特性や膜の密着性は良好であった。作製した遮光フィルムの特性を表2にまとめた。
よって、得られた遮光フィルムは、耐熱、高温高湿性が優れており、カメラ付き携帯電話、スマートフォン、デジタルカメラ、デジタルビデオカメラ、プロジェクター用の絞り、シャッター羽根、絞り羽根として有用である。
(比較例6)
Ni−Ti金属膜の膜厚を40nmに変えた以外は、実施例1と全く同じ条件で遮光フィルムを作製した。
遮光フィルムの評価は、実施例1と同様の方法、条件で実施した。その結果、反射率、表面抵抗、動摩擦係数、算術平均高さRaの特性は実施例1と同等であったが、最小光学濃度が3.8と完全遮光性を満たす4.0は得られなかった。耐熱・高温高湿試験においても特性や膜の密着性は良好であった。作製した遮光フィルムの特性を表2にまとめた。
よって、得られた遮光フィルムは、完全遮光性が得られていないため、カメラ付き携帯電話、スマートフォン、デジタルカメラ、デジタルビデオカメラ、プロジェクター用の絞り、シャッター羽根、絞り羽根として使用できない。
(比較例7)
Ni−Ti金属膜の膜厚を270nmに変えた以外は、実施例1と全く同じ条件で遮光フィルムを作製した。
遮光フィルムの評価は、実施例1と同様の方法、条件で実施した。その結果、光学濃度、反射率、表面抵抗、動摩擦係数、算術平均高さRaの特性は実施例1と同等であり良好であった。しかし、Ni−Ti酸化物膜の膜厚が厚くなりすぎて、フィルム片面成膜時に、著しいフィルムの変形が見られ、フィルム両面成膜後でも変形を改善することはできなかった。作製した遮光フィルムの特性を表2にまとめた。
よって、得られた遮光フィルムは、耐熱、高温高湿性が優れているが、膜厚が厚いため膜応力によってフィルムが変形してしまい、カメラモジュールなどに搭載することができないため、好ましくない。
(実施例9)
サンドブラストによる表面加工の条件を変えて作製した、算術平均高さRaが0.2μmのポリイミドフィルムを使った以外は実施例1と全く同じ条件で遮光フィルムを作製した。
作製した遮光フィルムの評価は、実施例1と同様の方法、条件で実施した。その結果、光学濃度、反射率、表面抵抗、動摩擦係数、算術平均高さRaの特性は実施例1と同等のものが得られ、良好であった。
さらに、耐熱・高温高湿試験においても特性や膜の密着性は良好であった。作製した遮光フィルムの特性を表2にまとめた。
よって、得られた遮光フィルムは、耐熱、高温高湿性が優れており、カメラ付き携帯電話、スマートフォン、デジタルカメラ、デジタルビデオカメラ、プロジェクター用の絞り、シャッター羽根、絞り羽根として有用である。
(実施例10)
サンドブラストによる表面加工の条件を変えて作製した、算術平均高さRaが2.2μmのポリイミドフィルムを使った以外は実施例1と全く同じ条件で遮光フィルムを作製した。
作製した遮光フィルムの評価は、実施例1と同様の方法、条件で実施した。その結果、光学濃度、反射率、表面抵抗、動摩擦係数の特性は実施例1と同等のものが得られ、良好であった。
さらに、耐熱・高温高湿試験においても特性や膜の密着性は良好であった。作製した遮光フィルムの特性を表2にまとめた。
よって、得られた遮光フィルムは、耐熱、高温高湿性が優れており、カメラ付き携帯電話、スマートフォン、デジタルカメラ、デジタルビデオカメラ、プロジェクター用の絞り、シャッター羽根、絞り羽根として有用である。
(比較例8)
サンドブラストによる表面加工の条件を変えて作製した、算術平均高さRaが0.1μmのポリイミドフィルムを使った以外は実施例1と全く同じ条件で遮光フィルムを作製した。
作製した遮光フィルムの評価は、実施例1と同様の方法、条件で実施した。その結果、光学濃度、表面抵抗は実施例1と同等のものが得られたが、最大反射率は0.5%、動摩擦係数は0.4と実施例1よりも大きくなった。
耐熱・高温高湿試験においても特性や膜の密着性は良好であった。作製した遮光フィルムの特性を表2にまとめた。
よって、得られた遮光フィルムは、反射率が高いため、撮像素子への迷光の入射による撮像性の劣化や動摩擦係数が高いことで起こるシャッター羽根、絞り羽根の摺動性の劣化が問題となるため、カメラ付き携帯電話、スマートフォン、デジタルカメラ、デジタルビデオカメラ、プロジェクター用の絞り、シャッター羽根、絞り羽根として使用できない。
(比較例9)
サンドブラストによる表面加工の条件を変えて作製した、算術平均高さRaが2.3μmのポリイミドフィルムを使った以外は実施例1と全く同じ条件で遮光フィルムを作製した。
作製した遮光フィルムの評価は、実施例1と同様の方法、条件で実施した。その結果、反射率、表面抵抗は実施例1と同等のものが得られた。しかし、成膜面に多数のピンホールが確認されたため、遮光フィルム全面にわたって均等な遮光性は得られないと判断し、動摩擦係数、耐熱・高温高湿試験は行わなかった。作製した遮光フィルムの特性を表2にまとめた。表2の特性において、最小光学濃度はピンホール部について、最大正反射率はピンホールのない部分について、それぞれ示した。
よって、得られた遮光フィルムは、ピンホールがあるため、完全遮光性が求められるカメラ付き携帯電話、スマートフォン、デジタルカメラ、デジタルビデオカメラ、プロジェクター用の絞り、シャッター羽根、絞り羽根として使用できない。
(実施例11、12)
樹脂フィルムの種類をポリアミドイミドフィルム(実施例11)、ポリエーテルエーテルケトン(実施例12)に変えた以外は、実施例1と全く同じ条件で遮光フィルムを作製した。
作製した遮光フィルムの評価は、実施例1と同様の方法、条件で実施した。その結果、光学濃度、反射率、表面抵抗、動摩擦係数の特性は実施例1と同等のものが得られ、良好であった。
さらに、耐熱・高温高湿試験においても特性や膜の密着性は良好であった。作製した遮光フィルムの特性を表2にまとめた。
よって、得られた遮光フィルムは、耐熱、高温高湿性が優れており、カメラ付き携帯電話、スマートフォン、デジタルカメラ、デジタルビデオカメラ、プロジェクター用の絞り、シャッター羽根、絞り羽根として有用である。
(実施例13,14)
樹脂フィルムの種類をポリエチレンナフタレート(実施例13)、ポリエチレンテレフタレート(実施例14)に変えた以外は、実施例1と全く同じ条件で遮光フィルムを作製した。
作製した遮光フィルムの評価は、実施例1と同様の方法、条件で実施した。その結果、光学濃度、反射率、表面抵抗、動摩擦係数の特性は実施例1と同等のものが得られ、良好であった。
さらに、高温高湿試験においては、実施例1同様に光学特性や膜の密着性は良好であったが、耐熱試験ではフィルムの耐熱性がないため、収縮や非常に大きな変形があり、諸特性の測定は行わなかった。一方、従来の接着剤によってカメラモジュールが作製される場合において必要とされる85℃の耐熱性においては、光学濃度、反射率、色味の変化はなく、良好であった。作製した遮光フィルムの特性を表2にまとめた。
よって、得られた遮光フィルムは、樹脂フィルム基材の耐熱性の影響でカメラモジュールを半田リフローで作製できるまでの270℃の耐熱性はないが、接着剤で固定していく従来の方法で作製されるカメラモジュールに対しては使用することができ、カメラ付き携帯電話、スマートフォン、デジタルカメラ、デジタルビデオカメラ、プロジェクター用の絞り、シャッター羽根、絞り羽根として有用である。
(実施例15〜17)
Ni系金属膜、Ni系金属酸化物膜用ターゲットとして、ニッケルを主成分としてタングステンを6at%含むNi系合金(Em/Ni原子数比及びEo/Ni原子数比は0.06、実施例15)、ニッケルを主成分として銅を33at%含むNi系合金(Em/Ni原子数比及びEo/Ni原子数比は0.5、実施例16)、ニッケルを主成分としてモリブデンを22.5at%含むNi系合金(Em/Ni原子数比及びEo/Ni原子数比は0.29、実施例17)に変えた以外は、実施例1と同様に遮光フィルムを作製した。実施例1で得られたNi−Ti酸化物膜と同等の光学特性を満たす成膜時の酸素流量比は実施例1とは異なったため、それぞれ酸素流量比を調整した。
各種Ni系金属膜、Ni系金属酸化物膜の組成を表1に、作製した遮光フィルムの特性を表2にまとめた。遮光フィルムの特性は、実施例1と同等であり、耐熱・高温高湿試験での特性変化もなく、良好であった。
ただ、実施例1で得られたNi−Ti酸化物膜に対して、チタンの代わりに他の金属元素、例えばタングステンを選んでいるので、得られた膜が可視光域で屈折率が幾分高くなっている。また、実施例16、17では、Ni系金属酸化物膜(C)の添加元素(Eo)の量が0.1を超えているので、合金化により表面抵抗が高くなっている。
Figure 0006036363
Figure 0006036363
本発明の遮光フィルムは、遮光性、低反射性、摺動性、導電性、耐熱・耐高温高湿性が要求されるカメラ付き携帯電話、デジタルカメラ、デジタルビデオカメラのレンズシャッターなどの絞り、シャッター羽根または絞り羽根やプロジェクターの光量調整用絞り羽根などの光学機器部品として用いることができる。
1 樹脂フィルム基材
2 Ni系金属膜
3 Ni系金属酸化物膜
4 巻き出しロール
5 真空ポンプ
6 真空槽
7 キャンロール
8 巻き取りロール
9 シングルマグネトロンカソード
10 ターゲット
11 隔壁

Claims (22)

  1. 表面粗さが算術平均高さRaで0.2〜2.2μmである樹脂フィルム基材(A)と、樹脂フィルム基材(A)の片面もしくは両面にスパッタリング法で膜厚が50〜250nmのNi系金属膜(B)が形成され、Ni系金属膜(B)上に、膜厚が100〜400nmである結晶性のNi系金属酸化物膜(C)が形成された遮光フィルムであって、
    Ni系金属膜(B)の酸素含有量がO/Ni原子数比で0.20以下、かつNi系金属酸化物膜(C)の酸素含有量がO/Ni原子数比で0.65〜0.85であり、波長380〜780nmにおける最小光学濃度が4以上、最大正反射率が0.4%以下であることを特徴とする遮光フィルム。
  2. 樹脂フィルム基材(A)が、270℃以上の耐熱性を有するポリイミド、ポリアミドイミド、アラミド、ポリエーテルエーテルケトン、液晶ポリマーから選ばれた1種類以上で構成されていることを特徴とする請求項1に記載の遮光フィルム。
  3. 樹脂フィルム基材(A)が、ポリフェニレンサルファイド、ポリエーテルサルフォン、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンテレナフタレート、ポリカーボネートから選ばれた1種類以上で構成されていることを特徴とする請求項1に記載の遮光フィルム。
  4. 樹脂フィルム基材(A)の厚みが、25〜125μmであることを特徴とする請求項1に記載の遮光フィルム。
  5. Ni系金属膜(B)が、ニッケルを主成分として、チタン、タンタル、タングステン、バナジウム、アルミニウム、モリブデン、コバルト、ニオブ、鉄、銅、亜鉛、および珪素からなる群から選ばれた1種類以上の添加元素(Em)を含有するNi系合金膜であることを特徴とする請求項1に記載の遮光フィルム。
  6. Ni系金属膜(B)の添加元素(Em)が、(Em/Ni)原子数比で0.05〜0.5含有されていることを特徴とする請求項1または5に記載の遮光フィルム。
  7. Ni系金属酸化物膜(C)が、ニッケルを主成分とし、さらに、チタン、タンタル、タングステン、バナジウム、アルミニウム、モリブデン、コバルト、ニオブ、鉄、銅、亜鉛および珪素からなる群から選ばれた1種類以上の添加元素(Eo)を含有することを特徴とする請求項1に記載の遮光フィルム。
  8. Ni系金属酸化物膜(C)の添加元素(Eo)が、(Eo/Ni)原子数比で0.05〜0.5含有されていることを特徴とする請求項1または7に記載の遮光フィルム。
  9. Ni系金属酸化物膜(C)の表面粗さが算術平均高さRaで0.1〜2.1μmであることを特徴とする請求項1に記載の遮光フィルム。
  10. 表面抵抗値が500Ω/□以下であることを特徴とする請求項1〜9のいずれかに記載の遮光フィルム。
  11. 表面抵抗値が100Ω/□以下であることを特徴とする請求項1〜10のいずれかに記載の遮光フィルム。
  12. 270℃で10分間の加熱処理を行ったときの、フィルムの色味の変化である色差(ΔE*ab)が1以下であることを特徴とする請求項1〜11のいずれかに記載の遮光フィルム。
  13. 85℃×90%RH×24hrの処理を行ったときの、フィルムの色味の変化である色差(ΔE*ab)が1以下であることを特徴とする請求項1〜12のいずれかに記載の遮光フィルム。
  14. 樹脂フィルム基材(A)の両面に、Ni系金属膜(B)とNi系金属酸化物膜(C)が形成されており、樹脂フィルム基材(A)を中心として対称の構造であることを特徴とする請求項1〜13のいずれかに記載の遮光フィルム。
  15. 両面に形成されるNi系金属膜(B)とNi系金属酸化物膜(C)は、それぞれ実質的に同じ膜厚かつ金属元素組成であることを特徴とする請求項14に記載の耐熱遮光フィル
    ム。
  16. 表面粗さが算術平均高さRaで0.2〜2.2μmの樹脂フィルム基材(A)をスパッタリング装置に供給し、不活性ガス雰囲気下でスパッタリングして、樹脂フィルム基材(A)上に膜中の酸素含有量がO/Ni原子数比で0.20以下、かつ膜厚が50〜250nmのNi系金属膜(B)を形成し、次に、不活性ガスと酸素ガスの混合ガスを導入しながらスパッタリングして、Ni系金属膜(B)上に膜中の酸素含有量がO/Ni原子数比で0.65〜0.85であって、かつ膜厚が100〜400nmであるNi系金属酸化物膜(C)を形成することを特徴とする請求項1〜15のいずれかに記載の遮光フィルムの製造方法。
  17. スパッタリングガス圧が、0.2〜1.0Paであることを特徴とする請求項16に記載の遮光フィルムの製造方法。
  18. Ni系金属膜(B)及びNi系金属酸化物膜(C)が形成された遮光フィルムを、さらに、スパッタリング装置に供給し、スパッタリングによって樹脂フィルム基材(A)の裏
    面にNi系金属膜(B)及びNi系金属酸化物膜(C)を順次形成することを特徴とする請求項16または17に記載の遮光フィルムの製造方法。
  19. 樹脂フィルム基材(A)が、ロール状に巻き取られてスパッタリング装置のフィルム搬送部にセットされることを特徴とする請求項16〜18のいずれかに記載の遮光フィルム
    の製造方法。
  20. 請求項1〜15のいずれかに記載の遮光フィルムを打ち抜き加工して製造された絞り。
  21. 請求項1〜15のいずれかに記載の遮光フィルムを打ち抜き加工して得られたシャッター羽根。
  22. 請求項1〜15のいずれかに記載の遮光フィルムを打ち抜き加工して得られた光量調整絞り羽根。
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