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JP6000422B2 - 加熱調理器及び加熱調理装置 - Google Patents

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Description

本発明は、調理室内を発熱体で加熱することにより、調理室内に収容された調理用食材等の被加熱物に対して焼く・蒸す等の調理をおこなう加熱調理器に関する。
従来、被加熱物を収容する調理室と加熱手段とを備えた、いわゆるロースターなどの加熱調理器が知られている。このような加熱調理器では、加熱手段からの輻射や空気・調理台を媒体とした伝熱を利用した調理がおこなわれている。
こうした加熱調理器が有する機能の一つとして、両面焼きがある。この両面焼きは、ユーザーが被加熱物を裏返す等の手間をかけることなく、調理台上に載置された被加熱物の上下面を含む全体を加熱調理するものである。ユーザーの家事労働の軽減に繋がるため、このような両面焼き機能を備えた加熱調理器が一般的に使用されている。
両面焼きを実現する一般的な方法として、調理室内の調理台に載置された被加熱物の上方と下方とにヒータ等の加熱手段を設ける方法が知られている。このような加熱調理器では、被加熱物の上方と下方から輻射により被加熱物を加熱するとともに、調理室内の温度を上昇させ空気を介した熱伝達により被加熱物の温度を上昇させて、被加熱物全体の加熱調理を行っている。
上記のような被加熱物の下方に設けられた加熱手段(以下、下方加熱手段ともいう)を有する加熱調理器においては、油脂分を含む食材等を被加熱物として加熱した場合、加熱されることにより被加熱物から油脂分が滴下しうる。この滴下した油脂分が下方加熱手段に接触したり、受皿に溜まった油脂分が下方加熱手段により加熱されたりすることにより、発煙・発火する可能性がある。発煙・発火が生じると、被加熱物の食味を損なうという不具合や、加熱調理器に対する過度の負荷となって製品寿命を短くするなどの不具合がある。また、被加熱物から滴下する油脂分、塩分、水分等を含んだ汁気が下方加熱手段に接触することにより、下方加熱手段の表面を腐食させて絶縁不良・断線等を生じ、加熱機能が損なわれる不具合もある。また、適切な調理効果(焼き加減)を得るためには下方加熱手段と被加熱物との距離を設ける必要がある。このような事情により、下方加熱手段の上方・下方にはより多くの空間が必要とされ、調理室内の高さ寸法において、下方加熱手段の上下空間の寸法が占める比率は高い傾向となる。
さらに、このような加熱調理器は、いわゆるIHクッキングヒータやガステーブルなど、キッチンのカウンター内に組み込んで使用される組み込み式の加熱調理装置に用いられる場合がある。一般的に、キッチンのカウンター内に組み込まれる加熱調理装置はモジュール化されており、その高さ寸法は標準化されている。例えば、加熱調理装置の高さ寸法が約230mmであり、この加熱調理装置がキッチンカウンターの上面から220mm程度の深さに納まるように組み付けられる。
このように加熱調理器の高さ寸法に制約がある一方で、例えば鯛等の比較的大きな魚の姿焼きや、パン・スポンジケーキ等の厚みのある(高さ寸法の大きい)被加熱物の調理もユーザーにより求められている。すなわち、調理室を有する加熱調理器においては、できるだけ厚みのある(高さ寸法の大きい)被加熱物を調理できるよう、調理室内の高さを拡大することが望まれている。
上記のように、厚みのある被加熱物を調理できるよう調理室内の高さ寸法の拡大が望まれる一方で、下方加熱手段の上方・下方により多くの空間が必要とされ、また組み込み式の加熱調理器の場合にはさらに高さ寸法に制約が加わる。したがって、結果として、調理室内で加熱可能な被加熱物の高さが制限されて加熱調理器の調理能力の制約となってしまっていた。
また、一般に、下方加熱手段をユーザーが着脱することは容易でなく、調理室内の清掃等のメンテナンスは下方加熱手段が取り付けられた状態でおこなわれる。ところが、上述のように調理室内の高さ寸法には制約があるために、下方加熱手段と調理室底面との間隔は狭くなる傾向がある。したがって、下方加熱手段と調理室底面との間には手が入り難いなど、特に調理室底面の清掃性を低下させることとなっていた。
こうした不具合を解消するために、調理室とは別に加熱室を設け、「上下ヒータを無くして加熱室から調理室に熱を送り込み、循環することによって調理物を加熱して調理をおこなう」加熱調理器の提案がなされている(例えば、特許文献1参照)。
また、下方加熱手段を調理室内に配置しないようにした加熱調理器の提案もなされている(例えば、特許文献2参照)。
特開2009−284926号公報(第3頁、第6頁、図1) 特開2010−115473号公報(第5頁、第12頁、図1)
しかしながら、前述した特許文献1の加熱調理においては、空気を媒介とした適切な加熱の具体的実現手段が示されていない。すなわち、特許文献1には、「通風手段13によって調理室11内の空気は気体吸気口14を介して吸い込まれ、加熱室11の加熱手段12へ送風されるので、調理物3に対し加熱室11内で加熱された高温の空気が気体吹出口15を介して供給される。」との記載があるが、同一の調理室壁面に吸込口と吹出口が配置されていて両者が近接しているため、吹出口から吹き出された気流がすぐに吸込口に吸引されやすく、調理室全体を循環しながら対流する流れとはならない可能性がある。
また、吹出口が設けられた調理室壁面の近傍と、この壁面とは距離の離れた対向する壁面近傍とでは、温度・流速等の加熱条件が異なり、均一な加熱・調理効果を得られないという課題がある。
また、上記特許文献1の加熱調理においては、空気を媒介とした熱伝達が主体である。このため、調理室内の空気及び調理室を構成する部品の熱容量や調理室外への放熱による熱ロスにより、調理室内の温度上昇に時間がかかり、調理工程の初期における被加熱物表面の温度上昇は、輻射による伝熱を併用した場合に比べて遅くなる。したがって、被加熱物の表層部のタンパク質の凝固に遅れが生じることなどにより、表面はパリッとして中はしっとりジューシーという良好な食味・調理効果が得られにくく、被加熱物全体の水分が揮発する傾向にあり、パサつきのある食味の良くない調理の仕上がりになるという課題もある。
特許文献2には、(1)下方加熱手段を均熱加熱プレートで覆い、均熱加熱プレート上に調理台と受皿とを兼ねた調理用加熱プレートを配置し、その上に被加熱物を載置して加熱調理をおこなう構成と、(2)水蒸気ダクトと循環ファンを備え、下方加熱手段を均熱加熱プレートで覆い、均熱加熱プレート上に受皿と調理台としての焼網を備え、この調理台上に被加熱物を載置して加熱水蒸気を循環させて加熱調理をおこなう構成が示されている。
特許文献2の上記(1)の構成においては、被加熱物の下面は均熱加熱プレートからの接触による熱伝導によって加熱されるため、一定の接触面積が必要となる。したがって、被加熱物の均熱加熱プレートとの接触面は、フライパン等での加熱調理と類似した調理効果・仕上がりとなる。このため、被加熱物からの油分等の汁気によりベタついた食感となる可能性があり、良好な調理効果・仕上がりを得にくい、焼網を用いて加熱調理したときの調理効果・仕上がりを期待するユーザーの嗜好を代替するような調理効果・仕上がりを得にくいという課題があった。
また、下方加熱手段の加熱が被加熱物に伝わるまでの伝熱の経路が長い。すなわち、下方加熱手段から均熱加熱プレート間の空気層への伝熱、均熱加熱プレート内の熱伝導、均熱加熱プレートから調理用加熱プレート接触部への伝熱、調理用加熱プレートの均熱加熱プレート接触部から被加熱物接触部までの熱伝導、調理加熱プレートから被加熱物への伝熱、という経路となり、多くの熱抵抗が存在することから被加熱物の加熱は緩慢となる。このため、被加熱物の表層部のタンパク質の凝固に遅れが生じるなどして、肉汁等の旨み成分を含む汁気が流出してしまってジューシーさが損なわれてしまうとともに、被加熱物のベタついた食感を更に増長させることとなりうる。したがって、良好な調理効果・仕上がりを得にくい、焼網を用いて加熱調理したときの調理効果・仕上がりを期待するユーザーの嗜好を代替する調理効果・仕上がりを得にくい、という不都合を増してしまうという課題があった。
また、調理用加熱プレートや調理室内の昇温に時間がかかることから、調理時間が長くなり、ユーザーが家事に費やす時間が増えて家事の省力化に逆行することとなってしまう。また、特許文献2には、均熱加熱プレートを介して間接的に調理用加熱プレートを加熱して調理をおこなうという構成における被加熱物への加熱効率に関し、全体のバランスを調整することでロスは最小限に抑えられる旨の記載があるが、調理時間の延長に伴う熱漏洩によるロスは増加することから、加熱効率の低下は避けられず、消費電力量も増加して環境負荷を増大させるという課題がある。
また、下方加熱手段による熱を被加熱物に伝えるために多くの構成が必要なことから、空気層、均熱加熱プレート、調理用加熱プレートが適切に機能するためにはそれぞれ一定以上の厚さ(高さ寸法)を必要とし、それらが積層されることとなる。したがって、厚みのある被加熱物を収納できるとともに、適切な調理効果を得ることのできる有効な調理室内高さを十分に拡大することができるような、下方加熱ユニットの高さ寸法の抑制・低床化効果が得られない課題があった。
また、特許文献2の上記(2)の構成においては、上記(1)の構成の下方加熱ユニットの上に更に受皿と焼網を載せその上に被加熱物を載置することから、(1)の構成に比べて更に被加熱物を収容可能な調理室内高さが低くなり、加熱可能な被加熱物の厚さは更に薄いものに制約され、加熱調理の調理範囲が狭くなるという課題がある。
また、受皿内での油脂の発火の抑制を配慮すると均熱調理プレートの温度は300℃程度までしか温度が上げられないこと、焼網を構成する部材は細く十分な接触面積が確保されないために焼網は被加熱物への加熱に十分寄与しない可能性があること、等の課題もある。すなわち、特許文献2の上記(2)の構成は、コストやスペースを必要とするのに対して、加熱手段として十分機能しない可能性があった。
また、過熱水蒸気を用いた加熱調理であるため、被加熱物は水の凝縮温度である100℃までの昇温時間は早くなる。ところが、100℃以上では凝縮と蒸発が同時に作用するため表面温度は100℃以上に上がりにくく表面は乾いた状態となり、内部は茹でたような調理効果・仕上がりで表面は乾燥した調理効果・仕上がりとなりうる。このため、焼き色等の表面状態・内部の調理効果・仕上がりは、従来のように上方と下方に加熱手段を設け焼網で加熱調理した場合の調理効果・仕上がりとは異なり、代替することは難しいという課題があった。
また、過熱水蒸気を発生させるために、複雑な構成・制御が必要となり高コストの加熱調理器となってしまう課題があった。
また、上方加熱手段がダクト内に収納されて配置されるため、上方加熱手段からの輻射による被加熱物への伝熱が十分におこなわれず、表面温度が上昇しにくく良好な調理効果・仕上がり(美味しそうな焼き色)が得られない課題があった。
また、調理室内の上面及び側面に多数の吹出口が配置されており、循環ファンに近い調理室の奥側の上面の吹出口の流量は多くなるが、循環ファンから遠い側面下方の吹出口では圧力が低下して流量は少なくなる。このため、循環ファンから遠い側面下方の吹出口からの気流は、調理室の幅方向の中央を通過することなく吸込口に流入しうる。そうすると、被加熱物の底面に十分な気流の接触が得られず、被加熱物の下方への強制対流熱伝達が十分におこなわれない、側面と中央で加熱ムラが生じ均一な調理効果が得られないなどの課題があった。
本発明は、上記のような課題を背景としてなされたもので、加熱調理器の調理室内での油脂の発火・発煙を抑制することのできる加熱調理器及びこの加熱調理器を備えた加熱調理装置を提供するものである。また、より厚みのある被加熱物を加熱することのできる加熱調理器及びこの加熱調理器を備えた加熱調理装置を提供するものである。また、加熱効率のよい加熱調理器及びこの加熱調理器を備えた加熱調理装置を提供するものである。
本発明に係る加熱調理器は、筐体の内部に設けられた調理室と、調理室内の上方に設けられた上方加熱手段と、調理室内に配置され、被加熱物を載置するための概水平な載置面を有する調理台と、調理台の下方に設けられた受皿と、調理室に設けられた吸込口及び吹出口と、吸込口に吸引力を発生させて調理室内の空気を吸引し、吸込口から吸引した空気を吹出口から吹き出させる送風手段とを備え、受皿の底面と調理台の被加熱物を載置するための載置面との間には、通風可能な空間が設けられ、吹出口は、受皿の底面と調理台の載置面との間の高さ位置に設けられており、受皿は、吹出口下端より低い高さに配置された吹出口側の壁と、吹出口側の壁に対向する側に設けられ吹出口の高さよりも上端が高い位置に配置された導風壁と、を有し、導風壁は、概垂直に延びるものであり、受皿の底面と導風壁とは、曲面で接続されているものである。
本発明によれば、吹出口から吹き出される空気流は、コアンダ効果により導風部に沿って受皿底面に誘引されるので、調理台に載置された被加熱物の下方を流れる空気流からの強制熱伝達により、効率よく被加熱物の下方を加熱調理できる。また、被加熱物の下方にヒータ等の下方加熱手段を設けなくてよいために調理台の下方の高さ寸法を小さくできるので、調理室内において被加熱物を載置するためのスペースをより大きくすることができ、厚みのある被加熱物の調理が可能となる。また、被加熱物の下方にヒータ等の下方加熱手段を設けなくてよいので、被加熱物からの油脂分が下方加熱手段に加熱されることによる発煙・発火を軽減することができる。また、被加熱物の下方にヒータ等の下方加熱手段を設けなくてよいので、調理室内のメンテンス性・清掃性を高める効果がある。
実施の形態1〜4に係る誘導加熱調理器全体の斜視図である。 実施の形態1〜4に係る誘導加熱調理器のトッププレート4と吸排気口カバー5を取り外した状態の本体1の斜視図である。 実施の形態1に係る調理室11全体を示す前面側斜視図である。 実施の形態1に係る調理室11全体を示す背面側斜視図である。 実施の形態1に係る調理室11の調理室上壁25を取り外した状態の斜視図である。 実施の形態1に係る調理室11の調理室上壁25、調理室扉7、上方加熱手段24、調理台26を取り外した斜視図である。 実施の形態1に係る調理室扉7側を調理室11から引き出して取り外した状態の斜視図である。 実施の形態1に係るファンケーシング20と付帯部品の斜視図である。 実施の形態1に係る本体1の側面断面図である。 実施の形態1に係る本体1の調理室扉7を取り外した正面図である。 実施の形態2に係る調理室11の斜視図である。 実施の形態2に係る調理室11の調理室上壁25を取り外した状態の前面側斜視図である。 実施の形態2に係る調理室11の調理室上壁25を取り外した状態の背面側斜視図である。 実施の形態2に係る調理室扉7側を調理室11から引き出して取り外した状態の斜視図である。 実施の形態2に係る調理室扉7側を調理室11から引き出して取り外した状態の分解斜視図である。 実施の形態2に係る調理室11の正面断面図である。 実施の形態2に係る本体1の側面断面図である。 実施の形態2に係る乱流促進体42を説明する図である。 実施の形態3に係る調理室11の調理室上壁25を取り外した斜視図である。 実施の形態3に係る調理室11の調理室上壁25、調理室扉7、吸込口体38Bを取り外した斜視図である。 実施の形態3に係るファンケーシング20と付帯する部品の斜視図である。 実施の形態3に係る調理室11の調理室上壁25、調理室排気風路10、吸込口体38Bを取り外した背面斜視図である。 実施の形態3に係る調理室扉7側を調理室11から引き出して取り外した状態の斜視図である。 実施の形態3に係る受皿27Bに保持される防汚部材41、調理台26Bの分解斜視図である。 実施の形態3に係る調理室11の側面断面図である。 実施の形態3に係る調理室11の正面断面図である。 実施の形態4に係る調理室11の背面側斜視図である。 実施の形態4に係る調理室11の調理室上壁25と調理室扉7を取り外した前面側斜視図である。 実施の形態4に係るファンケーシング20Cと付帯する部品の斜視図である。 実施の形態4に係る調理室扉7側を調理室11から取り外した状態の斜視図である。 実施の形態4に係る調理室扉7側の分解斜視図である。 実施の形態4に係る調理室11の側面断面図である。 実施の形態4に係る調理室11の正面断面図である。 実施の形態4に係る調理室11の吸込口体38部分での正面断面図である。
実施の形態1.
本実施の形態では、キッチンのカウンター内等に組み込まれて使用される誘導加熱調理器(加熱調理装置)に、本発明の加熱調理器を適用した場合を例に説明する。なお、以降の説明において、理解を容易にするために方向を表す用語(例えば、「上」、「下」、「左」、「右」等)を用いる場合があるが、これは説明のためのものであって、これらの用語は発明を限定するものではない。これらの方向を示す用語は、特に明示しない限り、図1の矢印A方向から見た場合の方向を示すものとする。また、「前面」とは、誘導加熱調理器を図1の矢印A方向から見た手前側の面をいい、「背面」とは、矢印A方向から見た奥行き側の面をいうものとする。
(誘導加熱調理器の構成)
図1は、実施の形態1に係る誘導加熱調理器全体を示す斜視図である。
図1において誘導加熱調理器100の本体1の筐体2の上側には、筐体上面3が着脱自在に配置される。筐体上面3の背面側には吸排気口カバー5、中央にトッププレート4、前面側に操作部6が配置される。また、筐体2の内部には、調理室11が設けられている。
トッププレート4には、被加熱物(図示せず)を載置するための載置部として、右載置部8a、左載置部8b、及び中央載置部8c(これらを載置部8と総称する場合がある)という3か所の載置部が設けられている。
また、トッププレート4には、液晶画面やランプ等の視覚的な表示手段を備えた表示部9が設けられている。この表示部9には、本体1の動作状態を報知する情報や、操作部6からの入力・操作内容等が表示される。
吸排気口カバー5は通気性を有するパンチングメタルや格子状の金属部材で構成されている。吸排気口カバー5は、筐体2の内部を冷却するための冷却風や調理室11の排気流が、通気抵抗少なくスムースに通過できるよう構成されている。
筐体2の前面側において、中央には調理室扉7が設けられている。調理室扉7は、調理室11内で調理される被加熱物を調理室11内へ出し入れできるよう、前後方向にスライドして調理室11の前面開口部を開閉可能となっている。また、調理室扉7は、調理室11内や調理室扉7自身の清掃等のメンテナンスを容易にするため、着脱可能に構成されている。なお、本実施の形態では、調理室扉7の両側にも操作部6が設けられている。
なお、本実施の形態の調理室11及び前面側の操作部6の配置は一例であり、これに限るものではない。例えば、本実施の形態では、調理室11は筐体2の左右中央に配置されているが、調理室11を筐体2の左右どちらかの側面に寄せて配置してもよい。また、操作部6を左右どちらかの側面に寄せて配置してもよいし、前面側に操作部6を設けない構成とすることもできる。
図2は、実施の形態1に係る誘導加熱調理器100のトッププレート4と吸排気口カバー5を取り外した状態の本体1の斜視図である。
筐体上面3の背面側の中央には筐体排気口13が設けられ、左右にはそれぞれ筐体吸気口14が設けられている。筐体2の内部の背面側には、筐体2内を冷却する冷却風を導く冷却風排気風路15が設けられている。筐体排気口13は、この冷却風排気風路15に接続されており、冷却風排気風路15により導かれた冷却風は筐体排気口13から本体1の外部へ排出される。また、冷却風排気風路15内には、調理室11からの排気を導く調理室排気風路10が配置されている。したがって、調理室11からの排気は、調理室排気風路10に導かれて冷却風排気風路15内の排気と合流し、筐体排気口13から本体1の外部へ排出される。なお、通常の使用状態においては、筐体排気口13は、図1で示した吸排気口カバー5により覆われている。
トッププレート4の右載置部8a、左載置部8b、中央載置部8cの下方には、それぞれ、誘導加熱コイルユニット18a、誘導加熱コイルユニット18b、誘導加熱コイルユニット18c(これらを誘導加熱コイルユニット18と総称する場合がある)が設けられている。誘導加熱コイルユニット18は、トッププレート4上に載置される被加熱物の加熱に使用される。誘導加熱コイルユニット18のいずれか又はすべてを、ジュール熱で加熱するラジエントヒータ等と置き換えてもよい。
誘導加熱コイルユニット18の下方には、調理室収納部19が板金等により区画形成され、調理室収納部19の内部には調理室11が配置される。調理室収納部19と調理室11の間には隙間が設けられ、空気層による断熱がおこなわれている。なお、調理室収納部19と調理室11との間の空気層に冷却風の一部を流入させて断熱効果を高める構成としてもよいし、この空気層に代えてグラスウール等の耐熱性のある断熱材を挿入してもよい。
調理室収納部19の左右両側には、それぞれ、基板ケースユニット17が配置されている。基板ケースユニット17は、誘導加熱コイルユニット18に高周波電力を供給するインバータ回路を実装した回路基板(図示せず)や、誘導加熱調理器100の動作を制御する制御手段としての回路が実装された各種回路基板(図示せず)を収容する。また、基板ケースユニット17は、筐体2内へ冷却風を吸引する冷却ファン(図示せず)を収容しており、冷却風のダクトとしての機能も有している。基板ケースユニット17には、冷却風を吸い込む吸込口が設けられており、この吸込口は左右それぞれの筐体吸気口14の下方に配置され筐体吸気口14に接続されている。
基板ケースユニット17内の冷却ファンが動作すると、筐体吸気口14から冷却風が吸い込まれる。この冷却風は、筐体吸気口14に接続された基板ケースユニット17の吸込口から基板ケースユニット17内に流入して冷却ファンにより吸引・送出され、基板ケースユニット17内部の各種回路基板に実装された部品を冷却し、基板ケースユニット17の排気口から排気される。基板ケースユニット17の排気口から排気された冷却風は、誘導加熱コイルユニット18の下方に配置されたチャンバ16に流入する。
チャンバ16は、誘導加熱コイルユニット18の下方に配置されており、誘導加熱コイルユニット18に向けて冷却風を吹き出す機能を有する。チャンバ16内に流入した冷却風は、チャンバ16の上面に設けられた吹出口から吹き出されて誘導加熱コイルユニット18に吹き付けられ、誘導加熱コイルユニット18を冷却する。
図3は、実施の形態1に係る調理室11全体を示す前面側斜視図である。また、図4は、実施の形態1に係る調理室11全体を示す背面側斜視図である。
調理室11の背面にはファンケーシング20が設けられ、その背面には電動機21が配置され、電動機21の回転軸にはファンケーシング20内に設けられたターボファン22(図8参照)が取り付けられている。調理室11における加熱時には、基板ケースユニット17内の制御手段により電動機21の回転の有無や回転数等が制御され、電動機21の回転によりターボファン22(図8参照)が動作する。電動機21は、例えばDCモーターや誘導モーターが用いられる。電動機21は、その仕様に応じ、動作環境と回転軸軸受け寿命との兼ね合い等によって必要に応じて冷却される。より具体的には、例えば、電動機21の回転軸に冷却用のファンが設けられる等の構成が採用される。
また、ファンケーシング20の背面には、調理室排気風路10が設けられている。調理室排気風路10とファンケーシング20内部とは連通している。
ファンケーシング20の左右側面を貫通するように、循環気流加熱手段23が設けられており、ファンケーシング20の外側には循環気流加熱手段23を動作させるための端子部が露出している。この端子部は、基板ケースユニット17内の回路基板に配線され(図示せず)、制御手段によって循環気流加熱手段23による加熱の有無や加熱量が制御される。
また、調理室11の背面には、上方加熱手段24の端子部が配置されている。この端子部は、基板ケースユニット17内の回路基板に配線され(図示せず)、制御手段により上方加熱手段24による加熱の有無や加熱量が制御される。
なお、循環気流加熱手段23及び上方加熱手段24の詳細については後述する。
調理室11には、調理室扉7の開閉を規制するロック機構(図示せず)が設けられている。このロック機構は、例えば、調理室11における加熱調理動作中や、加熱調理終了・停止後の所定条件(調理室内温度、ターボファン22(図8参照)の慣性による回転動作中等)の場合には、ロックがかかって調理室扉7を開けることができないよう構成されている。
また、調理室扉7のスライドによる開閉を検知する手段を備えており(図示せず)、調理室扉7が開いている状態では、操作部6に加熱指示が入力されても調理室11内での加熱はおこなわれない。また、調理室扉7が開いている場合には、調理室扉7が開いているため加熱調理がおこなわれない旨の情報や、調理室扉7を閉めるよう喚起する情報を、表示部9により報知してもよい。
調理室扉7の開閉を検知する手段としては、例えば、磁石が内蔵された調理室扉7がスライドして閉じたときに、本体側に設けた磁気検知手段が調理室扉7の磁気を検知して調理室扉7が閉まっていることを検知するものを採用することができる。ただし、この検知手段は一例であり、光・超音波・電波等の反射や遮断を検知する非接触の検知手段やメカニカルスイッチ等の接触式・機械式の検知手段を用いてもよく、調理室扉7の開閉が検知できる手段を備えていれば検知手段の具体的構成によらず本発明の効果は得られる。
また、例えば加熱調理動作中に、上記ロック機構の損傷等で誤って調理室扉7が開いてしまった場合は、調理動作中の加熱手段や送風機の動作が停止され、調理室11の前面開口からの輻射や熱風の漏れを抑制する。
図5は、実施の形態1に係る調理室11の調理室上壁25を取り外した状態の斜視図である。
調理室11の上方には、上方加熱手段24が配置されている。本実施の形態では、上方加熱手段24として、抵抗発熱体であるシーズヒータを用いている。なお、上方加熱手段24の具体的構成はこれに限らず、遠赤外線ヒータを用いてもよいし、フラットヒータで天板を加熱してもよく、また、誘導加熱コイルで天板や抵抗発熱体を発熱させるもの等でもよく、調理室11内の被加熱物の上方より輻射や熱伝達で加熱できる手段であればよい。本実施の形態では、上方加熱手段24は奥行き方向及び幅方向に折り曲げられており、調理室11の上方の広範囲を加熱できるようになっている。
上方加熱手段24の下方には調理台26が配置され、その下方に受皿27が配置されている。
調理室11の背面には、調理室吸込口12が設けられている。調理室吸込口12は、ファンケーシング20に連通している。
図6は、実施の形態1に係る調理室11の調理室上壁25、調理室扉7、上方加熱手段24、調理台26を取り外した状態の斜視図である。また、図7は、実施の形態1に係る調理室扉7側を調理室11から引き出して取り外した状態の斜視図を示す。
調理室11の背面の調理室吸込口12の下方には、複数のスリット状のノズル28が設けられている。このノズル28は、概ね調理台26の幅にあわせて設けられている(図5参照)。ノズル28からは、ターボファン22(図8、図9参照)の作動によって生じる気流が吹き出される。
ノズル28の下端と同等から若干低い高さには、導風部29が配置されている。本実施の形態において、導風部29は、受皿27と一体的に形成されており、ノズル28の下端近傍と受皿27底面とを滑らかに繋ぐ面で構成されている。本実施の形態では、導風部29は、ノズル28の下端近傍から弧を描くようにして受皿27の底面へ向かって下降する傾斜面を有しており受皿27の底面となめらかな局面で接続されている。導風部29は、ノズル28から吹き出される気流を、コアンダ効果により剥離少なく受皿27の底面へと導く。本実施形態の図に示す傾斜面を構成する傾斜曲面、受皿27の底面と接続する接続曲面の形状は一例であり、その曲率や傾斜曲面と接続曲面の曲率の比率はこれに限るものではない、また、傾斜曲面や接続曲面の曲率は一定である必要はなく曲率は可変してもよく、ノズル28から吹き出される気流が剥離しにくい形状であれば導風部29として機能し同様な動作・効果は得られる。本実施の形態1の調理室11は、このノズル28から吹き出される気流を循環させることにより循環気流とし、この循環気流により被加熱物の下方を中心とした領域を加熱するしくみである。
調理台26の被加熱物の載置面70は、例えば前後方向に延びる棒状のステンレス鋼を複数並べて構成された、いわゆるストレートタイプの焼き網で構成されている。素材は耐熱性のある素材で調理に適した毒性のない素材であればステンレス鋼以外でもよく、また、素材の表面に非粘着性や防汚性を備えた無機セラミックコーティング剤等を塗布してもよい。このように、調理台26の載置面70を、前後方向(すなわち、循環気流の流れ方向)に延びる複数の棒状部材で構成し、循環気流の流れ方向と交差する部材を極力設けないようにすることで、循環気流の流れを阻害しないようにするとともに、循環気流に構成部材が交差することによる循環気流の淀みを抑制している。これにより、循環気流の被加熱物への接触があまり阻害されないので、被加熱物の加熱ムラを抑制することができる。
また、調理台26は、受皿27に調理台26を載置するための脚部53を有する。脚部53は、載置面70と受皿27の底面との間に所定高さの空間が形成されるよう、所定の高さを有する。図7に示すように、受皿27に調理台26を載置するための調理台26の脚部53は、ノズル28側には設けられていない。すなわち、ノズル28から吹き出される流速の早い循環気流と交差する方向に、他の部材を設けないようにしているのである。このようにすることで、ノズル28から吹き出される循環気流の剥離や乱れを抑制している。
受皿27は、調理台26の下方に載置され、被加熱物から滴下する水分や油分等を受ける。受皿27の外周部には所定高さの壁が設けられており、調理台26に載置される被加熱物である食材等から滴下する汁気を溜めることができる。
調理室11と調理室扉7の左右両側面には、一対のスライドレール30が配置されている。このスライドレール30により、調理室扉7のスライドによる開閉が実現される。また、左右のスライドレール30間には、受皿27を着脱自在に保持する保持部31が設けられている。調理室扉7を手前側に引き出すと、保持部31に支持された受皿27と、受皿27に保持された調理台26と、調理台26に載置された被加熱物とが、一体的にスライドして引き出され、これらは概ね調理室11の外部に露出することができる。このようにすることで、被加熱物の載置や搬出、調理台26、受皿27の着脱を容易にし、調理の作業性、メンテナンス性、清掃性を高めている。調理室扉7側のスライドレール30は、調理室11側のスライドレール30に着脱自在に係合されており、調理室扉7を調理室11から取り外して洗浄等のメンテナンスを容易におこなえる構造としている。
なお、スライドレール30の間の保持部31の背面側は、導風部29の下面よりも低く形成されており、ノズル28からの循環気流の流れを阻害することはない。
調理室11の内面には、調理室11内の温度を検知する温度センサ32が設けられている。温度センサ32としては、例えば白金測温抵抗体・サーミスタ・熱電対等が用いられる。必要に応じて複数の温度センサ32を設けてもよく、また温度センサ32の配置も壁面に限らず必要に応じて天面や底面、受皿27や調理台26に設けてもよい。また、被加熱物から放射される赤外線量を検知して被加熱物の表面温度を検知する被接触式の温度センサ32を備えてもよい。これらの温度センサ32の出力は基板ケースユニット17内の電子回路基板に実装される制御手段に伝送される。制御手段は、加熱調理用のソフトウェアにしたがい、操作部6により表示部9に示される調理メニューや加熱条件の設定や、調理室11内や被加熱物の温度に基づいて、上方加熱手段24、循環気流加熱手段23、電動機21等の出力や動作をコントロールする。
図7に示すように、調理室扉7の調理室11側の外周部には、気密部材33が配置され、調理室扉7が閉められた状態では、調理室11前面開口部の外周に気密部材33が接触して、調理室扉7と調理室11との隙間からの調理室11内の空気漏れを抑制する。
また、調理室扉7にはガラス窓等の透過部を設け、調理室11内を目視できるようにしてもよい。
図8は、実施の形態1に係るファンケーシング20と付帯部品の斜視図を示す。
ファンケーシング20内には、電動機21の回転軸に取り付けられたターボファン22が回転自在に収納されている。電動機21が動作することによりターボファン22が回転して、遠心ファンの作用により調理室吸込口12から吸引され、この吸引された気流はターボファン22の外周側へ送出される。
ファンケーシング20において、ターボファン22の下方には、調理室排気風路10と連通する排気風路接続口43が設けられている。また、排気風路接続口43には、触媒体34が配置されている。触媒体34にはPd、Pt、Mnのいずれかを含む酸化触媒が添着されていて、排気が通過するときに油煙や臭気成分等の物質を酸化触媒が吸着して酸化分解をおこなうことで排気に含まれる汚染物質の一部を浄化しており、調理空間への排気のユーザーの不快感を軽減している。
ターボファン22により送出された気流の一部は、排気風路接続口43から調理室排気風路10へ流入して、調理室排気風路10の背面側垂直部10aの上端開口より排気される。排気される風量は触媒体34の圧力損失を含め調理室排気風路10の流路断面積により適切な排気風量となるよう調整される。適切な風量の排気により調理室11内での良好な調理効果・仕上がりが得られるとともに、加熱効率が不要に低下することはない。
ファンケーシング20の下方には、棒状の循環気流加熱手段23がファンケーシング20の両側面にわたって配置されている。循環気流加熱手段23は、ファンケーシング20の奥行き方向のほぼ中ほどに配置されていて、ファンケーシング20の背面側の壁に接触しないようになっている。また、循環気流加熱手段23は、ノズル28の開口面とほぼ平行な向きで配置されている。ファンケーシング20を調理室11の背面側に取り付けた状態においては、後述する図9に示すように、循環気流加熱手段23と調理室11の背面との間に空間が形成されるとともに、循環気流加熱手段23とファンケーシング20の背面との間にも空間が形成される。ターボファン22からノズル28に至る気流は、ファンケーシング20内においてこれらいずれかの空間を通過する際に循環気流加熱手段23で加熱され、加熱された直後にノズル28より吹き出される。循環気流加熱手段23は、ノズル28により近い位置に設けることが好ましい。このようにすることで、循環気流加熱手段23により加熱されてからノズル28より吹き出されるまでの気流の経路を短くすることができ、熱ロスを低減することができるとともに、より高い温度の循環気流を吹き出すことで短時間に被加熱物を昇温させ調理時間を短縮している。
なお、循環気流加熱手段23としては、例えば、ガラス管ヒータ、シーズヒータ、セラミックヒータ等が用いられる。昇温速度の速い石英管ヒータ、ハロゲンランプヒータ、カーボンヒータ等のガラス管ヒータを用いることにより調理時間を短縮することができる。循環気流加熱手段23の背面側には触媒体34が配置され、触媒体34は通過する排気の熱に加えて循環気流加熱手段23からの輻射により加熱されることでより高い温度となり、反応速度が速くなり触媒活性が高まり排気の浄化をより高めている。
図9は、実施の形態1に係る本体1の側面断面図を示す。なお、図9(a)は本体1全体の側面断面図、図9(b)は図9(a)のノズル28近傍を拡大して示す図である。
調理室11の上面と底面及び側面は、二重壁構造となっており、この二重壁の間に断熱空間35aが設けられている。断熱空間35aにより、調理室11からの熱漏洩を抑制して調理室11内の加熱効率を高めるとともに、熱漏洩による周囲に配置される部品の温度上昇を抑制して冷却効率を高めている。本実施の形態においては、調理室11の上面と底面及び側面を二重壁構造としているが、求められる断熱性能に応じては全ての面に設ける必要ななく、また、ファンケーシング背面や全体を二重壁構造とするなどして更に断熱性能を高めてもよい。
また、調理室11と筐体2の調理室収納部19との間には、断熱空間35bが設けられ、調理室11からの熱漏洩を抑制して調理室11内の加熱効率を高めるとともに、熱漏洩による周囲に配置される部品の温度上昇を抑制して冷却効率を高めている。
なお、本実施の形態においては、断熱空間35a、35bにおいて空気層による断熱をおこなう例を示しているが、必要に応じて断熱空間35a、35bにグラスウールや真空断熱材等の断熱材を挿入してもよく、このようにすることで断熱性能を高め、加熱効率や冷却効率を高めることができる。
ノズル28は、調理台26の載置面70と、受皿27の底面との間の高さ位置に設けられている。そして、導風部29は、ノズル28の下端近傍(図9における紙面左側)においては、ノズル28の下端部とほぼ同じ高さである。導風部29は、ノズル28側はノズル28からの気流の吹き出し方向と概ね平行に形成され、さらに、弧を描くように下降する傾斜面が連なり、受皿27の底面と曲面でなめらかに接続されている。
ノズル28の上端には、ファンケーシング20の内側に向かって延びる整流部36が設けられている。この整流部36は、ノズル28の下端に接続されるファンケーシング20の底面と概ね平行となるように延びている。すなわち、ファンケーシング20の内部には、整流部36とファンケーシング20の底面との間に風路が形成されているといえる。この整流部36で形成される風路により、ノズル28から吹き出される循環気流が、導風部29のノズル28の接触側の面と概ね平行に吹き出されるよう整流される。このように循環気流を整流することにより、導風部29へのコアンダ効果による循環気流の付着を高め、循環気流の受皿27底面への導風を良好としている。
なお、本実施の形態の図に示される、整流部36の前後方向長さは一例であり、整流部36の前後方向長さが長くなるとより良く整流される傾向にあるが圧力損失は高くなる傾向にあり、良好な付着に必要な整流度合いが得られるような長さとすればよい。また、整流部36とファンケーシング20の底面で形成される風路内に整流部36と並行な整流板を配置して整流度合いをさらに高めてもよい。
受皿27の背面側に設けられた導風部29に対し、受皿27の前面側端部(導風部29と対向する側)には、概垂直に延びる導風壁37が設けられている。
ノズル28から吹き出されコアンダ効果により導風部29に付着して受皿27の底面に流入した循環気流は、受皿27底面に付着して底面に沿って拡散しながら流れ、調理台26に載置される被加熱物の下方を加熱する。受皿27底面の前側端部まで到達した循環気流は、導風壁37で流れが曲げられ概ね上面方向への流れとなり、調理室扉7への循環気流の接触を軽減している。これにより調理室扉7の温度上昇を抑制して、ユーザーが調理室扉7を開閉操作等する際の接触による火傷の危険性を軽減して安全性を高めるとともに、調理室扉7からの熱漏洩を軽減して加熱効率を高めている。また、調理室扉7への循環気流の接触を軽減することで、気密部材33の接触面からの調理室11内の空気の漏れが抑制されて加熱効率が向上するとともに、調理に伴う煙が調理室扉7周囲から直接室内へ漏れ出ることによるユーザーの不快感を軽減している。
図10は、実施の形態1に係る調理室扉7を取り外した状態の本体1の正面図を示す。
各ノズル28の高さ方向の寸法は、ほぼ一定の幅である。複数のノズル28が、概水平に調理台26の水平方向の幅と概ね同一の幅にわたって設けられており、ノズル28からの循環気流が調理台26の載置面70下方の概ね全域に流れるため、調理台26のどの位置に被加熱物を載置しても被加熱物の下方が循環気流により加熱調理されるようになっている。
なお、本実施の形態においては、ノズル28は概水平に配置されるが、調理台26の載置面70に均一に循環気流が接触するのであればこの限りではない。より具体的には、ノズル28が調理台26の載置面70と受皿27の底面との間に配置され、ファンケーシング20底面と及び導風部29のノズル28側が、ノズル28下端と同一高さになる配置であれば、ノズル28の配置は概水平でなくてもよい。例えば、ノズル28は、中央部が低く両側面側が高くなる配置などでもよい。
また、本実施の形態は、複数のノズル28が水平方向に概ね隙間なく設けられているが、循環気流の拡散により調理台26の載置面70の幅方向の全体に循環気流が接触するのであれば、ノズル28間に間隔を設けてもよいし、調理台26の幅方向寸法よりもノズル28の両端の幅が狭くてもよく、循環気流による被加熱物下方の加熱調理は同様の効果が得られる。
(誘導加熱調理器の動作)
このように構成された誘導加熱調理器100においては、操作部6に対して加熱指示操作がおこなわれると、基板ケースユニット17内の電子回路基板に実装された各種回路により、トッププレート4下方の誘導加熱コイルユニット18や、調理室11の上方加熱手段24、循環気流加熱手段23、電動機21等が駆動され、加熱調理がおこなわれる。
次に、調理室11における加熱調理について説明する。
ユーザーが、表示部9に表示される調理モード、調理メニュー、加熱条件を操作部6により選択・入力すると、設定された調理モードに対応する制御シーケンスが記憶手段より呼び出され、調理のための各加熱手段等の制御がおこなわれる。
魚や肉等の食材を調理台26に直接載置して加熱する調理モードを例に、加熱調理の制御・動作を説明する。
(1)調理の初期
調理の初期においては、上方加熱手段24は、調理台26に載置された被加熱物の上側が、上方加熱手段24からの輻射により短時間で70℃程度まで上昇して表層部のタンパク質を凝固させ内部の水分等の揮発を抑制して内部のジューシーさを保持するよう、高い出力に制御される。
上方加熱手段24による加熱と併せて、電動機21が駆動され、ターボファン22が回転動作する。これにより、上方加熱手段24からの伝熱により加熱された調理室11内の空気は、調理室吸込口12からファンケーシング20内へ吸引され、ターボファン22からファンケーシング20内へ送出される。送出された空気は、循環気流としてノズル28から調理室11内へ吹き出される。循環気流は吹き出される直前にファンケーシング20内の循環気流加熱手段23の前面側又は背面側を通過することで更に高い温度となり、整流部36で整流され、ノズル28から吹き出される。
ノズル28から吹き出された高温の循環気流は、コアンダ効果により導風部29に付着して流れ、受皿27底面へ導かれその底面に沿って前面側へ拡散しつつ流れていく過程で、調理台26に載置された被加熱物の下側に接触する。この高温の循環気流が被加熱物の下側に接触することで、被加熱物の下側に対して強制対流熱伝達がおこなわれ、加熱調理がおこなわれる。調理台26の下側を流れ循環気流は、受皿27の導風壁37により誘導されて上方へ流れ、調理室吸込口12から再度吸引される。このようにして、循環気流は調理室11内を循環する。なお、循環気流の一部は調理室排気風路10から排気されるが、これについては図8にて説明した通りである。
被加熱物の下側に対する加熱についても、調理の初期には、急速に表層部の温度を上昇させてタンパク質を凝固させることは被加熱物の上側と同様である。したがって、循環気流加熱手段23の出力は大きく調理過程における最大出力となるよう制御される。また、電動機21の回転数も調理過程において最も高くなるよう制御され、ターボファン22の風量を増加させ、これによりノズル28からの吹き出し流速が速まり、循環気流の被加熱物下側への接触速度も速まり、温度・速度とも高まる。このように、被加熱物の下側に対する伝熱を促進して急速な加熱をおこなう制御がなされる。
調理の初期における調理室11内の温度の変化等は、温度センサ32にて検出され、制御手段に出力される。制御手段は、この温度変化等に基づいて被加熱物の量や初期の温度を算出し、記憶手段に格納されたプログラムに基づいて調理時間等のシーケンスを設定し、以降はそのシーケンスに従って制御する。
(2)調理の中盤
調理の初期における表側部の加熱がおこなわれた後は、調理室内が所定の温度で維持されるように、制御手段は、上方加熱手段24、循環気流加熱手段23とも温度センサ32の出力より比較的低い出力となるよう制御するとともに、on/offによる制御もおこなう。このような制御により、調理室11内の余熱による調理もおこなわれる。また、制御手段は、食材内の水分等の揮発を抑制するため、電動機21を比較的低い回転数に制御し、また、必要に応じて電動機21の回転を停止する。
また、制御手段は、電動機21の回転数を制御してターボファン22の風量を変化させ、これによりノズル28からの循環気流の吹き出し流速を変化させることで、調理室11内の循環気流の流れを変化させる制御もおこなう。このようにして気流の淀みを抑制・変化・移動させることで、調理室内の温度ムラを軽減するとともに、循環気流の被加熱物への接触を変化させ焼きムラを軽減して調理効果・仕上がりの均一性を高めることができる。
(3)調理の終盤
調理の終盤においては、制御手段は、食材の表面に適切な(美味しそうな)焼き色をつけるとともに表面の水分を揮発させパリッとさせることで、見た目も食味も良好な調理効果・仕上がりとなるよう、上方加熱手段24の出力を調理の中盤よりも高く制御する。
所定のシーケンスが完了すると、制御手段は、上方加熱手段24、循環気流加熱手段23、及び電動機21を停止させる。加熱動作が停止して調理室扉7のロック解除条件が満たされると、制御手段は、表示部9にて調理完了を報知するとともにブザーや音声による報知もおこない、調理室扉7のロックを解除して調理室扉7の開閉を可能とする。
以上のように、本実施の形態によれば、筐体2の内部に設けられた調理室11と、調理室11内の上方に設けられた上方加熱手段24と、調理室11内に配置され、被加熱物を載置するための調理台26と、調理台26の下方に設けられた受皿27と、調理室11に設けられた調理室吸込口12及びノズル28と、調理室吸込口12に吸引力を発生させて調理室11内の空気を吸引し、調理室吸込口12から吸引した空気をノズル28から吹き出させる送風手段としての電動機21とターボファン22とを備えた。そして、受皿27の底面と調理台26の被加熱物を載置するための載置面70との間には、通風可能な空間が設けられ、ノズル28は、受皿27の底面と調理台26の載置面70との間の高さ位置に設けられている。そして、ノズル28の下端近傍から受皿27の底面側に向かって下降する傾斜面を有し、ノズル28から吹き出された空気を受皿27の底面へと導く導風部29を備えた。
受皿27の底面と調理台26の載置面70との間に通風可能な空間を設け、受皿27の底面と調理台26の載置面70との間の高さにノズル28を設け、ノズル28の下端近傍から受皿27の底面側に向かって下降する傾斜面を有し、ノズル28から吹き出された空気を受皿27の底面へと導く導風部29を備えた。ノズル28から吹き出される空気流(循環気流)は、調理室11内で上方加熱手段24により加熱された高温の空気であるので、この循環気流の強制対流熱伝達により、調理台26に載置された被加熱物を加熱することができる。ノズル28から吹き出される空気流は、コアンダ効果により導風部29に付着し、受皿27の底面に誘引されて調理室11の前方へと向かう流れとなるので、受皿27のノズル28の近傍のみならず離れた箇所(例えば調理室扉7付近)にも高温の循環気流が流れ、広範囲にわたって加熱することができる。したがって、加熱効率を高めるため短時間調理が可能となり、エネルギー効率も高くなるので、調理能力が高く、安全性に優れ長寿命で省エネな環境負荷の低い加熱調理器を得ることができる。
また、被加熱物の下方に下方加熱手段を設けなくてもよいので、被加熱物の下方に下方加熱手段を備えた加熱調理器と比較して、調理室内において被加熱物を載置するためのスペースを拡大することができる。このため、より厚みのある被加熱物の加熱が可能となり、幅広いサイズの被加熱物の調理が可能な調理能力の高い加熱調理器を得ることができる。
また、被加熱物の下方に下方加熱手段を設けなくてもよいので、被加熱物から滴下する油脂分が下方加熱手段に加熱されることによる発煙や発火も生じない。このため、調理室11内での発煙・発火が抑制される。
また、導風部29は、ノズル28の下端近傍から受皿27の底面側に向かって下降する傾斜面を有しているので、ノズル28からの循環気流が導風部29から剥離するのを抑制し、導風部29への循環気流の付着を高めることができる。したがって、受皿27底面の導風部29側の端部から前方に向かって安定した付着気流を形成でき、調理台26の載置部の調理室扉7側まで気流を到達させることができる。調理台26の下方の広範囲に循環気流が流れるので、調理台26への被加熱物の載置場所によらず、加熱ムラが少なく調理効果・仕上がりが比較的均一な加熱調理器を得ることができる。
また、本実施の形態では、導風部29と受皿27を一体化させている。このため、部品点数が削減できるので、部品コスト・組立コストが低減でき加熱調理器を安価に製造することができる。また、導風部29と受皿27を一体化させたことにより、ユーザーは、受皿27のメンテナンスや清掃をおこなうのと同時に、導風部29のメンテナンスや清掃をおこなうことができるので、清掃性・メンテナンス性に優れた加熱調理器を得ることができる。
また、受皿27の導風部29と対向する辺に、概垂直に起立する壁面である導風壁37を設けた。このため、受皿27の底面上を流れる循環気流は、導風壁37に導かれて調理室11の上方へと流れる。したがって、調理室扉7への循環気流の接触が低減され、熱ロスが低減して加熱効率が向上する。また、調理室扉7への循環気流の接触が低減されるので、調理室扉7の高温化を抑制し、安全性を高めることができる。また、調理室扉7への循環気流の接触が低減されるので、気密部材33からの煙の漏れが抑制され、ユーザーの不快感が軽減される。このように、加熱効率に優れ、安全性が高く、快適な調理がおこなえる加熱調理器とすることができる。
また、吹出口であるノズル28は複数のスリットで構成されており、このスリット状のノズル28の下端はノズル28と接続される風路を形成するファンケーシング20の底面とほぼ同じ高さに設けられている。このため、ファンケーシング20の底面からノズル28下端へ至る循環気流の流れが阻害されず、スムースな流れに整流されるので、ノズル28からの上下方向の流れ方向が安定した状態で循環気流が導風部29へ流入することができる。したがって、循環気流が導風部29へより安定的に付着することができ、被加熱物下方の加熱が適切におこなわれ良好な調理効果・仕上がりが得られる加熱調理器とすることができる。
また、本実施の形態では、ノズル28へと至る循環気流の風路を形成するファンケーシング20の底面は水平に形成され、また、導風部29のノズル28側の端部も水平に形成されている。このように、調理室吸込口12から吸引した空気をノズル28へと導く風路の底面と、これに連なる導風部29の一部とを、同じ傾斜角度としたので、ノズル28からの吹き出される気流の上下方向の流れ方向と、導風部29のノズル側端部における気流の上下方向の流れ方向が同じとなる。このため、ファンケーシング20から導風部29に至る流れ方向の変化に伴う気流の乱れが生じず、導風部29への気流の付着が更に安定化することから、被加熱物の加熱が適切におこなわれ良好な調理効果・仕上がりが得られる加熱調理器とすることができる。
また、送風手段であるターボファン22とノズル28の間に循環気流加熱手段23を備えた。このように、調理室吸込口12から吸引した空気をノズル28へと導く風路上に循環気流加熱手段23を設けることで、ノズル28から吹き出される循環気流はより高温に加熱され、短時間で加熱調理をおこなうことができる。
また、本実施の形態では、棒状の循環気流加熱手段23を、ノズル28の開口面に対して概平行に配置した。このため、循環気流加熱手段23が圧力損失体となり、循環気流加熱手段23を通過する際に概水平方向にターボファン22からの気流が分散され、複数のノズル28から吹き出す気流の流量・流速の均一化を促すことができる。したがって、調理台26に載置される被加熱物下方の左右方向の気流の接触が均一化され、調理ムラの少ない良好な調理効果・仕上がりが得られる加熱調理器とすることができる。
また、循環気流加熱手段23をノズル28により近い位置に設けることで、循環気流加熱手段23により加熱されてからノズル28より吹き出されるまでの気流の経路を短くすることができ、熱漏洩や熱ロスを低減することができるとともに、より高い温度の循環気流を吹き出すことで短時間に被加熱物を昇温させ調理時間を短縮することができる。
また、調理室排気風路10内には、循環気流加熱手段23の背面側で循環気流加熱手段23からの輻射が届く場所に触媒体34を配置した。このため、触媒体34は排気の加熱に加え循環気流加熱手段23の輻射加熱によりさらに昇温され、触媒活性が高まり加熱調理に伴う排気に含まれる油煙や臭気成分等の汚染物質の酸化分解が促進され浄化性能が高まる。したがって、調理室排気風路10から外部へと排出される排気の清浄度が増し、快適な調理空間・環境が得られる加熱調理器とすることができる。
また、操作部6、表示部9、及び調理室扉7の開閉検知手段を備え、調理室扉7の開閉状態に応じて表示部9による報知をおこなうようにした。より具体的には、操作部6からの動作指示を出した場合に調理室扉7の開閉検知により調理室扉7が開状態であれば加熱調理をおこなわず調理室扉7を閉めるよう表示部9に報知し、また、加熱調理中に調理室扉7の開動作を検知した場合はすべての加熱手段である上方加熱手段24、循環気流加熱手段23と送風手段である電動機21を停止して調理室扉7が開いたため加熱調理を停止したことを表示部9に報知するようにした。このようにすることで、ユーザーが火傷する等のリスクが軽減できることから、安全性の高い加熱調理器を得ることができる。
また、本実施の形態の誘導加熱調理器100によれば、トッププレート4上では鍋やフライパン等の調理容器を用いた加熱調理ができ、調理室11ではグリル、ロースター、オーブン、スチーム調理等ができることから、一台の加熱調理装置で同時に多様な調理がおこなえ、省スペースで多機能な加熱調理装置を得ることができる。
実施の形態2.
本実施の形態2では、実施の形態1における構成の一部を変更した例を説明する。本実施の形態では、実施の形態1との相違点を中心に、図11〜図18を参照して説明する。また、実施の形態2では、実施の形態1における構成部材と同様の構成部材には同一の番号を付し、実施の形態1で述べた構成部材を変更したもの対しては「A」の符号を付して説明する。なお、本実施の形態2の誘導加熱調理器は、図1、図2で示す構成については実施の形態1と同様である。
図11は、実施の形態2に係る調理室11の斜視図である。また、図12は、実施の形態2に係る調理室11の調理室上壁25と付帯部品を取り外した状態の前面側斜視図である。なお、図12(a)は調理室11の全体の斜視図、図12(b)は図12(a)の吸込口体38の近傍を拡大して示す図である。
前述の実施の形態1では、調理室排気風路10はファンケーシング20の下方(電動機21の下側)に接続されていたが、本実施の形態2においては、調理室排気風路10Aは、ファンケーシング20Aの上方に接続されている。
上方加熱手段24Aは、実施の形態1における上方加熱手段24(図5参照)と形状が異なる。
具体的には、上方加熱手段24Aの端子部は、調理室11背面の右側面に寄っており、調理室11の背面を貫通するように配置されている。
また、上方加熱手段24Aは、調理室11の幅方向や奥行き方向に屈曲する形状を有しているが、この形状のうち、調理室11の背面側に近い部分(加熱手段背面側39と称する)の形状に特徴を有する。なお、説明のため、図12(b)では、加熱手段背面側39を網掛け表示している。加熱手段背面側39は、上方加熱手段24Aの左端子側から延び、調理室11の背面と概平行かつ概水平に配置されており、幅方向に分割されず上方加熱手段24Aの幅方向に近い幅となっている。
なお、本実施の形態においては、右側端に上方加熱手段24Aの両端子を寄せているが、これと左右反転させて左側端に上方加熱手段24Aの両端子を寄せてもよく、加熱手段背面側39の形状が幅方向に分割されることなく一体で上方加熱手段24Aに近い幅となる形状であればよい。
調理室11の背面側には、吸込口体38が設けられている。吸込口体38は、調理室11の背面に設けられた調理室吸込口12の前方を所定空間をおいて覆うようにして形成され、調理室11の前面に向かって空気の吸込口50を開口している。吸込口体38の吸込口50の左右幅は、調理室11の左右幅に対して小さく、調理室11において調理室吸込口12へ向かって流れる空気の流路は、吸込口体38の吸込口50において縮小される。また、吸込口体38の吸込口50の外周を囲う壁の一部を切り欠いて、吸込口体38の吸込口50前方の空間に加熱手段背面側39を配置しており、吸込口50の開口面と加熱手段背面側39とが対向する位置関係にある(図12(b)参照)。このような配置により、調理室11内の循環気流は、加熱手段背面側39の近傍を通過してから、吸込口50を介して吸込口体38に流入する。吸込口体38により循環気流の流入範囲の位置(高さ)を加熱手段背面側39を含む範囲とするとともに流入範囲をが規制され流速速く加熱手段背面側39に接触することで、循環気流は、加熱手段背面側39により加熱効率高く昇温され、吸込口体38内に流入する。
吸込口体38内には、触媒体34Aが配置されており、この触媒体34Aは上方の加熱手段背面側39からの輻射により加熱される。これにより、触媒体34Aに添着される酸化触媒は触媒活性され、流入した調理室11内の空気に含まれる油煙や臭気成分等の汚染物質の一部を吸着して酸化分解をおこない浄化する。調理室11内の空気の一部は調理室排気風路10から排気される一部の空気を除いて循環しており、調理室11内の空気は循環しながら何度も触媒体34Aを通過することで浄化率が高まる。このため、実施の形態1における構成(調理室11からの排気が一度だけ触媒体34を通過する構成)と比較して、調理室11内や調理室排気風路10からの排気の浄化率は高い傾向にある。
また、触媒体34Aで汚染物質が酸化分解される化学反応の過程において反応熱が発生する。この熱は通過する気流を更に加熱して高温の循環気流としてノズル28Aより調理室11内に吹き出されることで被加熱物が加熱調理される。
調理室11の両側面の断熱空間35aには断熱材40が充填されており、調理室11内からの熱漏洩を低減して加熱効率を高めるとともに、周囲の部品の温度上昇を抑制して冷却効率を高めている。本実施の形態においては、調理室11の上面と底面及び側面を二重壁構造として断熱材40を充填して断熱性能を高めているが、求められる断熱性能に応じては、ファンケーシング20の背面や外周面を二重壁構造として断熱材40を充填して更に断熱性能を高めてもよい。
図13は、実施の形態2に係る調理室11の調理室上壁25を取り外した状態の背面側斜視図である。
ファンケーシング20Aの背面に電動機21が配置されるとともに、電動機21の回転軸がファンケーシング20A内のターボファン22に固定されており、電動機21の回転軸が回転することでターボファン22が遠心送風機として機能することは、実施の形態1と同様である。
なお、本実施の形態2においては、上方加熱手段24と触媒体34Aの発熱により循環気流を加熱するため、実施の形態1においてファンケーシング20に設けられていた循環気流加熱手段23は設けられていない。
図14は、実施の形態2に係る調理室扉7側を調理室11から引き出して取り外した状態の斜視図を示す。また、図15は、実施の形態2に係る調理室扉7側を調理室11から引き出して取り外した状態の分解斜視図を示す。
調理室扉7及びスライドレール30の構造は、実施の形態1と同様である。
本実施の形態2では、受皿27A、保持部31A、及び調理台26Aの構造が実施の形態1と異なる。また、清掃性・メンテナンス性を高めるために防汚部材41が設けられている。
防汚部材41は、市販のアルミホイル等で構成され、受皿27Aの上面を覆い、被加熱物である食材からの油分や肉汁等の汁気を保持して受皿27Aへの付着を防止するものである。防汚部材41は、ユーザーが受皿27Aに対して手で押さえる等により変形させることができ、受皿27Aの面にある程度馴染ませてその形状が維持されるようなアルミホイル等のシート状部材で構成するのが好ましい。防汚部材41は、ユーザーが必要に応じて任意で用意して使用するものであり、必ずしも設けなくともよい。調理後は、防汚部材41を廃棄することで受皿27Aの清掃の手間を軽減している。
受皿27Aの底面において、背面側の一部に概水平な水平面51が設けられ、水平面51の前面側には、前方に向かって高くなるよう傾斜した傾斜面52が設けられている(図17参照)。傾斜面52の前端部には、導風壁37が形成されている。
防汚部材41の上方には調理台26Aが配置される。調理台26Aの脚部53Aは、調理台26Aの載置面70がほぼ水平になるよう、受皿27Aの底面形状に合わせて高さ寸法が設定されている。
調理台26Aを防汚部材41(受皿27A)の上に載置するための脚部53Aの背面側には、導風部29Aが設けられている。すなわち、本実施の形態2では、導風部29Aを調理台26Aと一体構成としている。導風部29Aの背面側(調理室11に導風部29Aが設置された状態におけるノズル28A側。図17参照。)の端部近傍には、複数の乱流促進体42が設けられている。なお、導風部29Aと乱流促進体42については後述する。
また、導風部29Aの下端部には、防汚部材41を押さえるためのガイド部46が設けられている。防汚部材41は、アルミホイル等で構成されていてある程度は受皿27Aに沿った形状が維持されるが、反りや皺などがあり受皿27Aからの浮きが生じて完全に受皿27に密着することはできない場合がある。そこで、ガイド部46により上側から防汚部材41を押さえ、防汚部材41の受皿27Aへの密着度を高めている。
図16は、実施の形態2に係る調理室11の正面断面図を示す。
調理室11の上面、底面、両側面の断熱空間35aには断熱材40が充填されており、これにより断熱性能を高めている。
調理室11の背面には、複数のノズル28Aが概水平に配置されている。ノズル28Aの下端と概ね同じ高さから若干低い位置に、導風部29Aのノズル28側の上面が配置されている。
ノズル28Aはスリット状であるが、配置される位置によってスリット幅が異なる。また、それぞれのノズル28Aのスリット幅に着目すると、そのスリット幅も均一ではなく、相対的に幅の広い部分と狭い部分とがある。また、スリット幅は、ターボファン22の幅方向を中心とした対称な形状とはなっていない。このようなノズル28Aのスリット幅や形状、及び各ノズル28Aの配置は、ターボファン22から吹き出される空気流との関係で設定される。すなわち、ターボファン22からの距離により吹き出される空気流の圧力や流速が異なり、また、同じ距離においても左右ではファンの回転により気流に旋回成分が生じるために中心から同じ距離でも圧力や流速が異なる。そこで、被加熱物下方の加熱ムラを軽減できるように、ノズル28Aのスリット幅や配置を設定することで、ノズル28Aから吹き出される流速や流量を調整する。
調理室11背面の吸込口体38内には調理室吸込口12が設けられている。調理室吸込口12により、吸込口体38内とファンケーシング20A内部とが連通している。
ファンケーシング20Aの背面中央上部には、排気風路接続口43Aが設けられ、調理室排気風路10と接続されている。
図17は、実施の形態2に係る本体1の側面断面図を示す。
ファンケーシング20Aの底面は、ノズル28Aからの空気流の吹き出し方向が低くなるよう、前面側に向かって下降する傾斜面である。また、導風部29Aのノズル側端上面の傾斜は、ファンケーシング20Aの底面の傾斜と概ね同一の傾斜となっている。また、ノズル28Aの下端は、ファンケーシング20Aの底面前端部と概同一高さで、導風部29Aのノズル側端上面と概同一高さか若干高い位置にある。このような構成により、ファンケーシング20Aの底面から導風部29Aに向かって下方に傾斜する一連の傾斜面が形成される。このため、ファンケーシング20Aの底面から導風部29Aのノズル側端上面への流れが阻害されることなく流れ、導風部29Aへのコアンダ効果による循環気流の付着を高め、循環気流の受皿27A底面への導風を良好としている。また、ファンケーシング20Aの底面は、ノズル28Aの吹き出し方向が低くなるよう傾斜しているので、導風部29Aの曲率を大きくしながら受皿27Aの背面側で底面に接続することができ、付着流れの剥離をより低減して循環気流の受皿27A底面への導風を良好としている。
受皿27Aの底面の一部は、背面側が低く前面側が高い傾斜面52であり、調理台26Aの載置面70は概水平である。このため、実施の形態1における底面が水平な受皿27の構成に比べて、本実施の形態では、被加熱物の下方により垂直に近く気流が接触するので、被加熱物接触面の境界層が圧縮され、より高い熱伝達がなされて加熱効率が向上する。
また、載置面70に被加熱物を載置することにより、前面側ほど受皿27A底面との高さ方向距離が短くなり、また流路が狭くなることから、循環気流の流速は増加する。ノズル28Aからの距離が離れると、拡散により気流の流速や温度は低下する傾向にあるが、載置面70と受皿27Aとの間に形成される流路が狭まり、気流の流速が速まることで加熱効率が高まるので、ノズル28A近傍と遠方との加熱ムラが軽減される。
また、受皿27Aの底面において、導風部29Aと奥行き方向に対向する側の端部には、概垂直な面である導風壁37が設けられており、底面端部まで到達した循環気流は導風壁37で流れが曲げられ概ね上面方向への流れとなり、調理室扉7への循環気流の接触を軽減する。この導風壁37によって生じる循環気流の動作・効果は、実施の形態1と同様である。
保持部31Aの前面側と背面側の形状は受皿27Aが安定して保持されるよう、受皿27Aの形状に合わせて変更されている。
導風部29Aを調理台26Aの脚部53Aに設けたことで、導風部29Aが防汚部材41に覆われることなく、コアンダ効果による付着流れが形成され受皿27A底面に導風される。
図18は、実施の形態2に係る乱流促進体42を説明する図であり、図18(a)は乱流促進体42の近傍を拡大して示す図、図18(b)は乱流促進体42の近傍の上面図である。
乱流促進体42は、側面視概三角形の板状部材であり、導風部29Aの上方に突出する凸部として形成されている。導風部29Aの幅方向にわたり、複数の乱流促進体42が設けられている(図15、図16参照)。図18(a)に示す乱流促進体42の高さhは、概ねノズル28Aからの循環気流の境界層の厚み程度である。また、乱流促進体42の長さLは、高さhの2倍程度である。また、図18(b)に示すように、調理室11の背面から前面に向かう循環気流Xの流れ方向に対し、乱流促進体42の側面が15度程度傾斜(図18(b)のθ参照)するようにして、乱流促進体42が配置されている。このような乱流促進体42の配置により、乱流促進体42の近傍を循環気流が通過するときに、縦渦を生成して循環気流が導風部29Aから剥離するのを抑制する。
なお、本実施の形態においては、概三角形の板状の乱流促進体42を例示しているが、導風部29Aの表面にディンプルを設ける等の乱流が生成される形状であればよく、この形状に限るものではない。
次に、実施の形態2に係る調理室11の加熱調理における動作を説明する。
電動機21が動作すると、ターボファン22が回転して調理室11内の空気を吸引する。調理室11内の空気は、上方加熱手段24Aの加熱手段背面側39の近傍を、吸込口体38の流路収縮により増速して加熱されながら通過した後、触媒体34Aを通過する。循環気流は、触媒体34Aを通過する際に煙・油煙が浄化されながら酸化分解の反応熱でさらに加熱された後、調理室吸込口12からファンケーシング20A内に流入してターボファン22より送出される。ターボファン22により送出された循環気流の一部は、排気風路接続口43Aより調理室排気風路10へ流入して本体1外へ排気される。一方、ターボファン22により送出された循環気流の多くは、ノズル28Aより調理室11内に吹き出される。
ノズル28Aから吹き出された気流は、コアンダ効果により導風部29Aの付着流れとなり、受皿27A底面に導風される。導風部29Aに設けられた乱流促進体42を通過することで、ノズル28Aから吹き出された気流の境界層に乱流を生じさせ、導風部29Aからの付着流れの剥離を抑制する。このため、導風部29Aを流れる循環気流は、剥離が少ない状態で受皿27Aの底面に導風される。気流は受皿27Aの底面に沿って拡散しつつ、調理台26Aの載置面70上の被加熱物の下方を加熱しながら前面側に向かい、導風壁37にて上方への流れとなり上面に向かい、概ね調理室11の上面に沿った流れを形成しながら、再び吸込口体38に吸引される。調理室11内の空気の一部は、調理室排気風路10から排気されるが、排気された分の空気は、調理室11の壁面間や調理室扉7との若干の隙間等から吸引されて補われる。
ユーザーが、表示部9に表示される調理モード、調理メニュー、加熱条件を操作部6により選択・入力すると、設定された調理モードに対応する制御シーケンスが記憶手段より呼び出され、調理のための各加熱手段等の制御がおこなわれる点は、実施の形態1と同様である。
次に、魚や肉等の食材を調理台26に直接載置して加熱する調理モードを例に、加熱調理の制御・動作を説明する。
(1)調理の初期
調理工程の初期においては、短時間で被加熱物の表層部のタンパク質を凝固させ内部の水分等の揮発を抑制して内部のジューシーさを保持するように、上方加熱手段24が高い出力に制御され、電動機21の回転数は調理の中盤や終盤よりも相対的に高くなるよう制御される。
(2)調理の中盤
調理の中盤においては、上方加熱手段24の出力は所定の調理室内温度が維持されるように制御され、電動機21の回転は初期よりも低く抑えられる。このような制御により、被加熱物の気流の接触による乾燥を抑制する。
(3)調理の終盤
調理工程の終盤においては、上方加熱手段24の出力は、中盤よりも高く制御され、また、高く電動機21の回転は初期よりも低く制御される。このような制御により、被加熱物である食材の表面に適切な(美味しそうな)焼き色をつけるとともに表面の水分を揮発させパリッとさせることで、見た目も食味も良好な調理効果・仕上がりとなるよう制御される。
なお、調理の初期において、調理室内の温度上昇を検出して被加熱物の量を算出し、これによって制御シーケンスを選択することや、調理室扉7の開閉検知等の安全性を確保する制御などは実施の形態1と同様である。
以上のように、本実施の形態によれば、受皿27Aの底面と調理台26Aの載置面70との間に通風可能な空間を設け、受皿27Aの底面と調理台26Aの載置面70との間の高さにノズル28Aを設け、ノズル28Aの下端近傍から受皿27Aの底面側に向かって下降する傾斜面を有し、ノズル28Aから吹き出された空気を受皿27Aの底面へと導く導風部29Aを備えた。本実施の形態では、導風部29を調理台26Aと一体的に構成した例を示したが、このようにしても、ノズル28Aから吹き出される空気流は、コアンダ効果により導風部29Aに付着し、受皿27Aの底面に誘引されて調理室11の前方へと向かう流れとなるので、受皿27Aのノズル28Aの近傍のみならず離れた箇所(例えば調理室扉7付近)にも高温の循環気流が流れ、広範囲にわたって加熱することができる。したがって、加熱効率を高めるため短時間調理が可能となり、エネルギー効率も高くなるので、調理能力が高く、安全性に優れ長寿命で省エネな環境負荷の低い加熱調理を得ることができる。
また、本実施の形態では、導風部29Aを調理台26Aと一体的に構成したので、アルミホイルなどで構成される防汚部材41で受皿27を覆って調理する場合も、調理台26Aと一体的に構成された導風部29Aは、防汚部材41で覆われない。したがって、導風部29Aに直接気流が接触することができ、適切な導風効果が得られ、受皿27A底面への気流の付着を促すことができるので、防汚部材41を使用する場合であっても安定した加熱がおこなわれ、良好な調理効果を得られる加熱調理器とすることができる。
また、受皿27の導風部29Aと対向する辺に、概垂直に起立する壁面である導風壁37を設けた。このため、受皿27の底面上を流れる循環気流は、導風壁37に導かれて調理室11の上方へと導かれる。ノズル28Aから吹き出される気流は、導風部29Aによりコアンダ効果で付着流れとなり、受皿27A底面に沿った流れを形成して、被加熱物下方全体を加熱調理する。そして、この気流は、導風壁37により上方に向かう気流となるので、調理室扉7への気流の接触が軽減され、煙漏れ・温度上昇・熱ロスが軽減されることから、良好な調理効果が得られるとともに快適性・安全性・加熱効率に優れた加熱調理器とすることができる。
また、本実施の形態では、調理台26Aの載置面70は概水平で、受皿27Aの底面には、ノズル28Aに近い側が低く遠い側が高い傾斜面52が設けられている。このような傾斜面52を有する受皿27Aの底面を流れる循環気流は、水平な流れと比べてより垂直に近い流れとなる。このような循環気流の流れが被加熱物に接触することで、循環気流の境界層が圧縮され、熱伝達が高まって加熱効率が向上する。また、ノズル28Aに近い側に比べ温度・流速が低下して加熱されにくい遠い側(例えば調理室扉7に近い側)においても、調理台26Aの載置面70と受皿27A底面との間隔が狭くなることで循環気流の流速が増加して熱伝達が向上し、適切な加熱がおこなわれる。したがって、加熱ムラが軽減され、良好な調理効果・仕上がりが得られる加熱調理器とすることがきる。
また、導風部29に乱流促進体42を設けたことで、導風部29から受皿27底面への付着流れの剥離を抑制して安定した気流を形成することができる。したがって、被加熱物下方の加熱ムラが軽減され、良好な調理効果を得られる加熱調理器とすることができる。
また、受皿27Aを防汚部材41で覆う場合に、調理台26の導風部29A前縁のガイド部46により、導風部29Aと受皿27A底面と接続する部分の防汚部材41を受皿27Aに密着させ、防汚部材41の浮きを抑制するようにした。このため、導風部29Aの表面を流れる付着流れがスムースに受皿27Aの底面を覆う防汚部材41表面へスムース流れ不要な気流の乱れを抑制することができ、受皿27Aの底面の形状に沿った安定した気流を形成して、被加熱物下方が適切に加熱ムラが少ない状態で加熱調理されることから、良好な調理効果を得られる加熱調理器とすることができる。
また、ノズル28Aは、複数のスリットで構成され、このスリットの下端はノズル28Aに接続されるファンケーシング20Aの底面とほぼ同じ高さに設けられている。このため、導風部29Aへスムースに気流が流れるので導風部29Aへの気流の付着を安定させることができる。また、ターボファン22からの距離等が異なってもノズル28Aからの吹き出しの流量・流速が適切となるように、ノズル28Aのスリット幅を場所により調整・設定することで、被加熱物の幅方向を同様の状態に加熱することができ、加熱ムラが軽減され、良好な調理効果を得られる加熱調理器とすることができる。
また、ノズル28Aに接続されるファンケーシング20Aの底面を前面側に傾斜する平面とするとともに、導風部29Aのノズル28A側端の上面をファンケーシング20Aの底面と概ね同一の傾きの傾斜平面としたことから、ノズル28Aから導風部29Aへと気流がスムースに流れることができる。このため、導風部29Aへの気流の付着が安定しておこなわれる。
また、導風部29Aの曲率を大きくしても、受皿27Aのノズル28A側の端部近傍において、導風部29Aと受皿27Aの底面とを接続できる。このため、ノズル28Aの近傍下方に配置されて過度に加熱されやすい調理台26Aのノズル側端の載置面70と、受皿27Aの底面との距離を離すことができ、受皿27Aの底面の付着流れからの熱伝達を適切とすることでることから、加熱ムラが軽減され良好な調理効果を得られる加熱調理器とすることができる。
また、上方加熱手段24Aの加熱手段背面側39の一部を吸込口体38の内部空間に配置し、上方加熱手段24Aの一部は調理室11内に配置した。このような構成により、調理室11内の被加熱物上面に対する上方加熱手段24Aからの輻射は遮られることなく、輻射加熱の調理効果により食材表面のパリッとした食感と美味しそうな焼き色が得られる仕上がりとすることができる。上方加熱手段24Aの加熱手段背面側39の一部を吸込口体38の内部空間に配置したので、吸込口体38に吸引される気流の上方加熱手段24Aへの接触を高め、気流を効率よく加熱することができる。また、吸込口体38の吸込口において、調理室11内を流れる循環気流の流路が縮小されるため、循環気流は増速され、上方加熱手段24Aの加熱手段背面側39により効率よく加熱されて高い温度となる。このように循環気流を高温化することができるので、例えば実施の形態1で示した循環気流加熱手段23を設けなくとも、循環気流を加熱することができる。したがって、部品コスト・組立コストが低減でき、良好な調理効果・仕上がりが得られるとともに安価な加熱調理器を得ることができる。
また、吸込口体38に触媒体34Aを備え、この触媒体34Aは上方加熱手段24の輻射が届く位置に配置されている。このため、触媒体34Aは、自身の近傍を通過する気流により加熱されることに加えて、上方加熱手段24からの輻射により加熱されることでより高温となり触媒活性が高まり、より高い浄化性能が得られる。また、調理室11内の空気は循環しながら何度も触媒体34Aを通過することとなるので、空気はさらに浄化されて清浄度が高まり、調理室11内においては煙や油煙による被加熱物への着色や臭い移りが軽減され良好な調理効果・仕上がりが得られる。また、本体1からの排気の清浄度が向上し、ユーザーの調理作業環境が向上することから快適な調理環境が得られる加熱調理器とすることができる。
また、触媒体34Aが酸化分解にて浄化をおこなう過程で発生する反応熱で循環気流が加熱され、ノズル28Aからの吹き出し温度が高温となって調理時間を短縮できる。また、反応熱の利用により上方加熱手段24Aの出力を低減することもできる。このように、省エネで、短時間調理ができるとともに環境負荷の低い加熱調理器とすることができる。
実施の形態3.
本実施の形態3では、実施の形態2における構成の一部を変更した例を説明する。本実施の形態では、実施の形態2との相違点を中心に、図19〜図26を参照して説明する。また、実施の形態3では、実施の形態1、2における構成部材と同様の構成部材には同一の番号(符号)を付し、実施の形態1、2で述べた構成部材を変更したものに対しては「B」の符号を付して説明する。なお、本実施の形態3の誘導加熱調理器は、図1、図2で示す構成については実施の形態1と同様である。
図19は、実施の形態3に係る調理室11の調理室上壁25を取り外した斜視図である。
実施の形態2では、吸込口体38は調理室11の背面から上面の一部を覆う形態であったが、実施の形態3の吸込口体38Bは吸込口体38とは形状が異なる。
吸込口体38Bは、調理室11の背面に設けられた調理室吸込口12Bの前方を所定空間をおいて覆うようにして形成され、調理室11の前面および下方に向かって空気の吸込口50を開口している。
実施の形態2の吸込口体38とは異なり、吸込口体38Bは、調理室11の左右側面間にわたって設けられている。また、吸込口体38Bの吸込口50の前端部には、調理室11の上面とほぼ平行に前方に向かって延びる上面板54が設けられている。上面板54は、上方加熱手段24Aの形状に沿って、上方加熱手段24Aからは所定距離をおいてくりぬかれ下方に向かって空気の吸込口を開口している。このくりぬかれた部分を、上面板通風口55と称する。
触媒体34Bは、調理室11の概ね幅方向と同一の寸法で、吸込口体38B内に設けられている。触媒体34Bは、実施の形態2のものよりも気流の流れ方向に面する前面面積が拡大されており、触媒体34Bの通過風速を低減でき、より高い浄化性能が得られ、調理室内・排気の清浄度が高まる。また、酸化分解による浄化の反応熱も増え、加熱調理への寄与も高まることから、上方加熱手段24Aの出力を実施の形態2よりも低くすることも可能であり、省エネな加熱調理器とすることができる。
図20は、実施の形態3に係る調理室11の調理室上壁25、調理室扉7、吸込口体38Bを取り外した斜視図である。
調理室11背面において、吸込口体38B(図19参照)の内側には、調理室吸込口12Bが設けられている。調理室吸込口12Bは実施の形態2のように吸込口をスリット形状とせず、全体を開口部とするとともに外周部をベルマウス形状とすることで、圧力損失を低下させるとともにラジアルファン44への吸込みを良好としており、ファンの送風効率を高めている。
また、受皿27Bの前面側の導風壁37Bは、調理台26の載置面70よりも高く配置されている。
図21は、実施の形態3に係るファンケーシング20と付帯する部品の斜視図である。
ファンケーシング20の内部には、送風手段としてのラジアルファン44が設けられている。本実施の形態3では、実施の形態2で設けられていたターボファン22を備えていない。
排気風路接続口43Bは、ラジアルファン44の水平方向中心から外れ、ラジアルファン44の左上方に配置される。ラジアルファン44の回転方向を変更する制御がなされることにより、ラジアルファン44から送出される気流の旋回成分の方向が変わり、これにより排気風路接続口43Bから排気される風量が変わる。このように、ラジアルファン44の回転方向制御により、排気風路接続口43Bからの排気風量を調整可能としている。本実施の形態においては排気風路接続口43Bは左上に配置されているがこれに限るものではなく、水平方向中心から外れていれば同様の効果は得られる。
ラジアルファン44の下方には、循環気流加熱手段23が配置され、上方加熱手段24、触媒体34にて加熱された気流を更に加熱して温度を高めており、ノズル28からより高温の気流を吹き出すことで短時間の調理を可能としている。
循環気流加熱手段23には、循環気流加熱手段23が貫通するようにして配置された複数のフィン45が設けられている。このフィン45により、気流の加熱効率を高めてノズル28から吹き出される気流の温度を向上させる。また、フィン45は、整流部としての機能も有しており、フィン45により水平方向の気流分布の不均一が軽減され、ノズル28から吹き出す流れが前面方向へ直進するよう整流され、調理室11内の循環気流の乱れを軽減している。
本実施の形態においては、循環気流加熱手段23とフィン45は一体化されているが、フィン45を整流部として独立した部品として設けてもよく、一体化しないことでフィン形状に自由度が高まり、より高い整流効果を得ることもできる。
図22は、実施の形態3に係る調理室11の調理室上壁25、調理室排気風路10、吸込口体38Bを取り外した背面斜視図である。
電動機21は、ファンケーシング20の背面に配置されている。循環気流加熱手段23の端子部はファンケーシング20の両側面を貫通した外部に配置されている。
図23は、実施の形態3に係る調理室扉7側を調理室11から引き出して取り外した状態の斜視図を示す。また、図24は、実施の形態3に係る受皿27Bに保持される防汚部材41、調理台26Bの分解斜視図を示す。
本実施の形態3では、受皿27Bに導風部29Bが設けられており、また、受皿27Bの底面の形状が実施の形態2の受皿27Aとは異なっている。
防汚部材41は、実施の形態2と同様に概ね受皿27Bの形状を反映して受皿27Bを覆い、清掃性を高めている。
調理台26Bの脚部53Bの形状は、受皿27Bの底面形状と合わさる形状である。
調理台26Bの脚部53Bの背面側端部には、ガイド部46が設けられている。ガイド部46は、防汚部材41を上側から導風部29Bに対して押さえ込み、防汚部材41が導風部29から浮き上がるのを抑制する機能を有する。ガイド部46で防汚部材41が押さえ込まれることにより、ノズル28Bから導風部29Bへの気流の流れを阻害しないよう防汚部材41の形状が強制されるとともに、導風部29Bから受皿27B底面接続部にかけての浮きを抑制し、導風部29Bにおける付着流れの剥離を抑制している。
図25は、実施の形態3に係る調理室11の側面断面図を示す。なお、図25では、吸込口体38近傍の気流の流れを説明するための矢印を記している。
吸込口体38Bの下端には、調理室11の内側前方に向かって延びる遮蔽部58が設けられている。この遮蔽部58の上面は、導風部29Bのノズル28B側端部の上面の傾斜と概ね同一の傾斜面で構成されている。遮蔽部58によってノズル28Bと導風部29Bの下部に形成される遮蔽面により、ノズル28Bから吹き出された気流は、調理室11背面と導風部29Bの隙間から受皿27Bの下方へまわり込むことなく受皿27Bの導風部29B上面に流れるので、加熱された気流は概ね受皿27Bと調理台26Bの載置面70の間を通過して被加熱物の加熱に用いられることから、加熱効率が高まるとともに、調理室11底面からの熱漏洩を低減でき本体1底面の外郭温度をユーザーが接触した場合の安全確保のための所定温度以下とする断熱対策を軽減することができる。
また、遮蔽部58を吸込口体38Bに一体的に形成したことにより、部品点数を削減するとともに組立て工数も低減でき製品コストを低減する効果もある。
また、ガイド部46が防汚部材41を受皿27Bの導風部29Bの背面側端部とで挟んで固定することで、防汚部材41が導風部29Bへの気流を阻害することもない。また、両側面の導風部29B上のガイド部46が防汚部材41を導風部29Bへ押しつけ固定することで、防汚部材41の浮きが抑制され、導風部29Bの形状が防汚部材41に差異少なく反映されることから、ノズル28Bからの気流は受皿27Bの底面にきれいな付着流れを形成する。
受皿27Bの底面は、ノズル28Bから遠い側の傾きが相対的に大きくなる曲面で形成されている。受皿27Bの底面を傾斜面57と称する場合がある。このような受皿27Bの底面形状により、ノズル28からの距離が異なる被加熱物の下面の各部における加熱ムラが軽減されるように、受皿27B底面の付着流れをコントロールしている。実施の形態2においては受皿27Aの傾斜面52は単調な斜面であり、流速の増加や被加熱物下方への接触角度は細かくコントロールされないが、本実施の形態3のような曲面の傾斜面57とすることで、増速の度合いや接触角度を場所に応じてより細かくコントロールすることで加熱ムラをさらに軽減している。
受皿27Bの前面側の導風壁37Bは、背面側に傾斜しているとともに、調理台26の載置面70よりも高い位置に配置される。このような導風壁37Bの構成により、調理室扉7への気流の接触をより低減して、加熱効率・安全性を更に向上させる。また、導風壁37Bにより気流を背面上側へ向けることで、背面上側にある吸込口体38の上面板通風口55からのスムースな吸引がなされ、調理室11内にきれいな循環流れが形成され不要な渦の発生による圧力損失の増加が抑制されるとともに、受皿27B底面の付着流れへの外乱が低減されより良好な調理効果が得られる。
上面板54と調理室11の上面との間には、所定高さの空間が設けられており、上面板54と調理室11の上面との間において気流の通過が可能となっている。調理室11内の空気は、上方加熱手段24Aの周囲ほぼ全体に設けられた上面板通風口55から吸引され、上面板54と調理室11の上面との間の空間を通過し、吸込口体38Bの吸込口へと吸い込まれる(図25の矢印参照)。上方加熱手段24Aの周囲近傍を通って調理室11内の空気が吸い込まれるので、吸引される気流の加熱効率が高まり、より温度の高い気流を吸引することができる。また、吸込口体38Bの吸込口の開口面積は、調理室11の上面板通風口55の上部を流れる循環気流の流路断面積よりも小さい。すなわち、調理室11において調理室吸込口12へ向かって流れる空気の流路は、吸込口体38Bの吸込口において縮小され流速速く加熱手段背面側39近傍を通過することとなる。
図26は、実施の形態3に係る調理室11の正面断面図を示す。
吸込口体38Bの背面側においても上方加熱手段24の周囲に開口部が設けられ、調理室内の空気を加熱しながら吸引している。
また、吸込口体38Bの上面板54に設けられた上面板通風口55には、上方加熱手段24を支持する上方加熱手段支持部56が設けられている(図19参照)。上方加熱手段支持部56は、上面板通風口55の一部を吸引に影響のない範囲で遮蔽しており、上方加熱手段24Aを下側から支持している。
調理室11の背面には、円形の複数のノズル28Bが設けられている。各ノズル28Bの穴径や、ノズル28B同士の間隔は、その配置場所により異なる。ノズル28Bの穴径と設置間隔は、被加熱物の幅方向位置による加熱ムラが軽減されるよう、各ノズル28Bからの気流の流量・流速をコントロールするようにして調整・設定されている。
次に、実施の形態3に係る調理室11の加熱調理における動作を説明する。
電動機21が動作すると、ラジアルファン44が回転して調理室11内の空気を吸引する。調理室11内の空気は、上方加熱手段24の加熱手段背面側39の近傍を吸込口体の流路収縮により増速して加熱されながら通過した後、触媒体34Bを通過する。循環気流は、触媒体34を通過する際に煙・油煙が浄化されながら酸化分解の反応熱でさらに加熱された後、調理室吸込口12からファンケーシング20内に流入してラジアルファン44より送出される。ラジアルファン44により送出された循環気流の一部は、排気風路接続口43Bより調理室排気風路10へ流入して本体1外へ排気される。一方、ラジアルファン44により送出された循環気流の多くは、ノズル28Bより調理室11内に吹き出される。
ノズル28Bから吹き出された気流は、遮蔽部58により受皿27Bの上面側を流れ、コアンダ効果により導風部29Bの付着流れとなり、受皿27Bの底面(傾斜面57)に導風される。気流は受皿27Bの底面(傾斜面57)に沿って拡散しつつ、調理台26Bの載置面70上の被加熱物の下方を加熱しながら前面側に向かう。受皿27Bの底面(傾斜面57)の曲面の変化により、気流の接触速度・角度は場所により変化する。本実施の形態3では、前面側ほどより速い流速でより垂直に近い角度で被加熱物に気流を接触させ、ノズル28Bから遠いために気流の温度が低い場所においてもノズル28Bの近傍に近い調理効果となるよう、受皿27Bの底面(傾斜面57)の曲面が形成されている。
被加熱物が調理台26Bに載置されると、被加熱物の形状によっては気流に淀みが生じて加熱ムラとなる場合がある。しかし、本実施の形態3では、所定時間ごとにラジアルファン44の回転を反転させる制御をおこない、ラジアルファン44から送出される気流の旋回成分を反転させるため、各ノズル28Bからの流出方向、速度、流量が変化して淀みの場所がずれ加熱ムラが軽減される。また、調理室11内の煙や臭気成分の発生量が多くなる調理工程においては、排気が多い回転方向にラジアルファン44の回転が制御され、急速に調理室11内を加熱する工程においては、排気が少ない回転方向にラジアルファン44の回転が制御され、適切な調理がおこなわれる。
受皿27Bの底面に沿って流れる気流は、導風壁37Bに到達すると、背面側上方への流れとなり、上面板通風口55から上面板54の上部へ進み、再び吸込口体38に吸引される。上面板通風口55から吸い込まれる過程において、気流は、上方加熱手段24Aの近傍を通過して昇温される。調理室11内の空気の一部は、調理室排気風路10から排気されるが、排気された分の空気は、調理室11の壁面間や調理室扉7との若干の隙間等から吸引されて補われる。
ユーザーが、表示部9に表示される調理モード、調理メニュー、加熱条件を操作部6により選択・入力すると、設定された調理モードに対応する制御シーケンスが記憶手段より呼び出され、調理のための各加熱手段等の制御がおこなわれる点は、実施の形態1と同様である。
魚や肉等の食材を調理台26に直接載置して加熱する調理モードにおける、加熱調理の制御・動作は実施の形態1と同様である。
また、調理の初期において、調理室内の温度上昇を検出して被加熱物の量を算出し、これによって制御シーケンスを選択することや、調理室扉7の開閉検知等の安全性を確保する制御などは実施の形態1と同様である。
以上のように、本実施の形態では、調理台26Bの載置面70を概水平とした。また、受皿27Bの底面内側(傾斜面57)は、ノズル28Bに近い側が低く、遠い側ほど傾斜が大きい曲面とした。ノズル28Bからの距離に応じて被加熱物に接触する流速と角度を変化させ適切な加熱となるよう、受皿27Bの底面の曲面の傾斜を調整することで、加熱ムラが軽減され、良好な調理効果・仕上がりを得られる加熱調理器とすることができる。
また、受皿27Bの導風部29Bと対向する辺に、導風部29B側に傾斜した壁面である導風壁37を設けた。また、この導風壁37と受皿27Bの底面とを曲面で接続し、導風壁37の上端が調理台26Bの載置面70より高くなるよう構成した。このため、受皿27Bの底面上を流れる気流は、受皿27Bの底面から導風壁37にスムースに導かれ、さらに導風壁37により調理室11の背面側上方へと導かれる。このため、吸込口体38B側へ向かう循環気流の流れが形成され、調理室11内の気流の乱れが軽減され、良好な調理効果・仕上がりを得られる。また、調理室扉7への気流の接触を低減できるので、安全性と加熱効率が高まり、調理室扉7の汚れも軽減されることから、調理性能・安全性・加熱効率・メンテナンス性の優れた加熱調理器とすることができる。
また、調理台26Bに、アルミホイルなどで構成される防汚部材41を導風部29Bへと密着させるガイド部46を設けた。このため、受皿27Bを防汚部材41で覆う場合に、ノズル28Bと導風部29Bの間の流れを防汚部材41が阻害せず、導風部29Bへの防汚部材41の密着性を高めることから、受皿27B底面への付着流れが安定して形成でき、良好な調理効果・仕上がりを得られる加熱調理器とすることができる。
また、ノズル28Bは、複数の穴で構成され、穴の下端はノズル28Bに接続されるファンケーシング20底面とほぼ同じ高さとなるよう構成した。このため、導風部29Bへスムースに気流が流れるので、導風部29Bへの気流の付着を安定させることができる。また、ラジアルファン44からの距離等が異なってもノズル28Bからの吹き出しの流量・流速が適切となるように、ノズル28Bを構成する穴の径を場所により調整・設定したので、被加熱物の幅方向を同様の状態に加熱することができ、加熱ムラが軽減され、良好な調理効果を得られる加熱調理器とすることができる。
また、上方加熱手段24Aの一部を吸込口体38空間に配置し、上方加熱手段24Aの一部は調理室11内に配置した。このため、調理室11内の被加熱物上面への上方加熱手段24A輻射を遮ることなく輻射加熱による良好な調理効果・仕上がりを得ることができる。さらに、本実施の形態では、吸込口体38Bの吸込口の前端部に、調理室11の上面とほぼ平行に前方に向かって延びる上面板54が設け、この上面板54を上方加熱手段24Aの形状に沿ってくりぬいて形成した上面板通風口55から、調理室11内の空気を吸い込むようにした。このため、上面板通風口55を気流が通過する過程において気流が上方加熱手段24Aと接触し、また、上面板通風口55において調理室11内を流れる気流の流路が縮小されることとなるから気流が増速されるので、気流は効率よく上方加熱手段24Aにより加熱される。また、上面板通風口55は上方加熱手段24Aの外周ほぼ全体に設けられているので、気流は、上方加熱手段24Aのほぼ全体により加熱されてより高い温度に昇温される。このように循環気流を高温化することができるので、ノズル28Bからの吹き出し温度を高くでき、短時間調理がおこなえるとともに、循環気流加熱手段23の出力を低減でき省エネにできることから、高性能で環境負荷の低い加熱調理器を得ることができる。
また、循環気流加熱手段23にフィン45を設け、フィン45はノズル28Bの吹き出し方向と平行な方向に配置したことにより、伝熱面積が増加して循環気流加熱手段23による気流の加熱効率を高めるとともに、フィン45により整流されてノズル28から吹き出されることから、気流の温度を上昇し、水平方向の気流分布の不均一が軽減され、吹き出す気流の流れ方向が前面方向へ直進するよう整流され、調理室11内の循環気流の乱れを軽減して良好な調理効果を得るとともに、調理時間が短い高性能な加熱調理器とすることができる。
また、本実施の形態では、送風手段としてラジアルファン44を用い、電動機21によるファンの回転方向を切り替えて動作させる用にした。このため、調理室11内における気流の淀みの位置を変化させることができ、加熱ムラが軽減され、良好な調理効果・仕上がりが得られる加熱調理器とすることができる。
また、排気風路接続口43Bをラジアルファン44の水平方向中心位置からずらした位置に配置して電動機21の回転方向を切り替えて動作させることにより、排気風量を増減できる。このため、調理室11内の昇温速度の上昇と空気清浄性が向上し、短時間調理と良好な調理空間が得られる加熱調理器とすることがきる。
実施の形態4.
本実施の形態4では、実施の形態3における構成の一部を変更した例を説明する。本実施の形態4では、実施の形態3との相違点を中心に、図27〜図34を参照して説明する。また、実施の形態4では、実施の形態1〜3における構成部材と同様の構成部材には同一の番号(符号)を付し、実施の形態1〜32で述べた構成部材を変更したものに対しては「C」の符号を付して説明する。なお、本実施の形態4の誘導加熱調理器は、図1、図2で示す構成については実施の形態1と同様である。
図27は、実施の形態4に係る調理室11の背面側斜視図である。
実施の形態4においては、ファンケーシング20Cの形状が実施の形態3と異なっている。また、調理室排気風路10は、ファンケーシング20Cの下方に接続されている。循環気流加熱手段23はファンケーシング20Cの両側面を貫通して配置され、ファンケーシング20Cの外部に端子部は配置されている点は、実施の形態3と同様である。
図28は、実施の形態4に係る調理室11の調理室上壁25と調理室扉7を取り外した前面側斜視図である。
吸込口体38は、実施の形態2同様に、調理室11の背面から上面の一部を覆う形状である。
調理台26Cの背面側には、貯水部47が設けられている。貯水部47は、調理台26Cに着脱自在に係止されている。貯水部47については後述する。
図29は、実施の形態4に係るファンケーシング20Cと付帯する部品の斜視図である。
実施の形態4においては、実施の形態2と同様に、ファンケーシング20Cの内部には送風手段としてのターボファン22が設けられている。なお、本実施の形態4では、送風手段としてターボファン22を用いているが、シロッコファンやラジアルファンを用いてもよく、遠心ファンで所要の送風性能が得られるものであればファンの種類はこれに限るものではない。
ファンケーシング20Cの内部には、左右に吹出口61、62を有するスクロールケーシングが形成されている。このファンケーシング20Cにより、ターボファン22から送出される気流の動圧成分を静圧へ変換しており、より高い静圧が得られ、ノズル28Cからの流速・流量を増加させる効果がある。
左右の吹出口61、62の下方には、ファンケーシング20Cの左右方向にわたって下方風路63が形成されている。下方風路63には、循環気流加熱手段23が設けられている。下方風路63において循環気流加熱手段23の外周を循環気流が流れることで、循環気流と循環気流加熱手段23との接触が増え、加熱効率が向上する。これにより、ノズル28Cから、より高温の気流を吹き出す効果がある。
図30は、実施の形態4に係る調理室扉7側を調理室11から取り外した状態の斜視図を示す。また、図31は、実施の形態4に係る調理室扉7側の分解斜視図を示す。
本実施の形態4においても、実施の形態2、3で述べた防汚部材41を必要に応じて受皿27Cに装着することが可能であるが、ここでは、防汚部材41を装着していない状態を例示する。
本実施の形態4の受皿27Cの底面の形状は、実施の形態3のものと異なる。受皿27Cの底面の中央部には、凸形状の曲面が設けられている。この凸形状の曲面を、曲面64と称する。
調理台26Cの脚部53Cの形状は、受皿27Cの形状と合わさる形状である。
調理台26Cの脚部53Cの背面側端部には、ガイド部46Cが設けられている。ガイド部46Cについては後述する。
貯水部47は、調理台26Cとほぼ同じ幅寸法を有し、内部に水を貯めることのできる容器である。貯水部47の上側には、着脱自在な貯水部カバー48が設けられており、貯水部47への水の注水や貯水部47の内部に付着するスケール等の清掃を容易にしている。また、貯水部カバー48には複数の穴が設けられており、ノズル28Cからの高温の気流により気化した貯水部47の水蒸気の拡散を妨げない構成となっている。
図32は、実施の形態4に係る調理室11の側面断面図を示す。
実施の形態3のガイド部46は防汚部材41を上側から導風部29Bに対して押さえ込む構造であったが(図23〜図25参照)、本実施の形態4のガイド部46Cは、導風部29Cの上下から防汚部材41を挟み込む構造である(図31参照)。すなわち、ガイド部46Cは、受皿27Cの導風部29Cの底面側に回り込み、防汚部材41を挟んで固定することができる形状である。ガイド部46Cで防汚部材41が押さえられることにより、防汚部材41がノズル28Cから吹き出される気流の流れにはみ出すことを抑制し、また防汚部材41の導風部29Cでの浮きを抑制して防汚部材41の形状が導風部29Cに密着して沿うよう強制する。このようにすることで、防汚部材41が導風部29Cにおける気流の流れを阻害することを抑制し、導風部29Cの付着流れを安定して形成する効果がある。
調理室排気風路10のファンケーシング20Cと接続される側の端部には、触媒体34が配置されている。循環気流加熱手段23により輻射加熱される構成・動作・効果は実施の形態1と同様である。また、実施の形態4においては、吸込口体38にも触媒体34Aが設けられている。循環気流が吸込口体38に設けられた触媒体34Aを通過することで、調理室11内の空気が浄化され、また、排気が調理室排気風路10を通過する際にさらにここに設けられた触媒体34により浄化されるので、外部への排気の清浄度はさらに高まっている。なお、2か所に設けられた触媒体34、触媒体34Aに添着させる触媒の成分を異ならせることで、異なる臭気成分等の汚染物質の分解・除去が可能となり更に排気の清浄度を高めることができる。
貯水部47の貯水部底面49は、導風部29Cのノズル28C側端上面の傾きと概ね同一の傾きに形成されている。貯水部47の貯水部底面49は、このような形状であるので、ノズル28Cから吹き出される気流を、導風部29Cのノズル28C側端上面の傾きと平行になるよう整流することができる。このような整流作用により、導風部29Cへの気流の付着を良好にすることができる。また、ノズル28Cからの吹出し直後の高温の気流が、貯水部47の貯水部底面49の下部を通過するため、この高温の気流により貯水部47内の水を素早く加熱して気化させて調理室11内に拡散・循環させることができる。調理室11内に拡散・循環する蒸気は、上方加熱手段24・循環気流加熱手段23で加熱されて過熱水蒸気となり、被加熱物に過熱水蒸気が凝縮することで100℃までの加熱・昇温を短時間でおこない、調理時間をより短縮する効果が得られる。
なお、貯水部47の水量を、調理工程の初期にてすべて蒸発して無くなる程度の少量の所定の量としておくことで、調理工程の中盤以降は調理室排気風路10からの排気により調理室11内から余分な水蒸気は排気される。このようにすることで、過熱水蒸気によって被加熱物の表面が茹でたような調理効果・仕上がりになることはない。
図33は、実施の形態4に係る調理室11の正面断面図を示す。
受皿27の底面の中央に凸形状の曲面64が設けられている。ここで示す曲面64の平面形状は、図31に示すように、受皿27Cの後側中央を頂角とする二等辺三角形の底角を丸めたような形状であり、いわゆる涙型のような形状である。曲面64において、受皿27Cの背面側中央部から左右のサイドへ広がるように延びるサイド部64aにより、受皿27Cの付着流れの一部は、左前側面又は右前側面へと流れるようガイドされる。また、サイド部64aから前方中央に向かって弧を描くように連なる弧状部64bにより、サイド部64aによってガイドされた流れと曲面64の上面の流れとがスムースに合流する。このように、ターボファン22からの風を吹き出す吹出口61、62との位置関係に起因して、本実施の形態の調理台26Cの載置面70の左前側面・右前側面は相対的に気流の流速・流量が小さくなりやすいが、曲面64により左前側面・右前側面へ向かう気流を形成することで、被加熱物の下方にまんべんなく気流を流し、被加熱物の加熱ムラを軽減する効果がある。
なお、本実施の形態で示した曲面64の形状は一例であり、送風手段から供給される気流の流速や流量が相対的に小さくなってしまう場所に対して気流をガイドするものであれば、曲面64の形状は図31、図33等に図示したものに限定しない。
図34は、実施の形態4に係る調理室11の吸込口体38部分での正面断面図を示す。
吸込口体38内の調理室11背面には、調理室吸込口12が設けられている。
また、調理室11の背面には、複数のノズル28Cが設けられている。本実施の形態のノズル28Cは、スリット状と円形のものとで構成されている。ノズル28Cの形状、間隔、穴径・スリット幅は、ノズル28Cの場所により異なる。送風手段であるターボファン22から供給される気流の流れ方向や流速、流量等の条件と、受皿27Cの形状等を考慮して、被加熱物の幅方向位置による加熱ムラが軽減されるように、ノズル28Cの形状、間隔、穴径・スリット幅を調整・設定し、各ノズル28Cからの流量・流速をコントロールする。
ユーザーが、表示部9に表示される調理モード、調理メニュー、加熱条件を操作部6により選択・入力すると、設定された調理モードに対応する制御シーケンスが記憶手段より呼び出され、調理のための各加熱手段等の制御がおこなわれる点は、実施の形態1と同様である。
魚や肉等の食材を調理台26に直接載置して加熱する調理モードにおける、加熱調理の制御・動作は実施の形態1と同様である。
また、調理の初期において、調理室内の温度上昇を検出して被加熱物の量を算出し、これによって制御シーケンスを選択することや、調理室扉7の開閉検知等の安全性を確保する制御などは実施の形態1と同様である。
以上のように、本実施の形態では、受皿27Cの底面の両側面間に凸形状の曲面64を設けた。このため、受皿27Cの底面を流れる気流が、左前側面・右前側面にガイドされ、調理台26の載置面70の前面側の加熱具合が調整・設定される。このため、前面側の左右端においても適切な加熱調理がおこなわれ、良好な調理効果・仕上がりが得られる加熱調理器とすることができる。
また、調理台26Cにガイド部46Cを設けたことで、防汚部材41の受皿27Cへの密着度が増し、防汚部材41が気流の流れを阻害するのを抑制できる。このため、受皿27Cの底面への付着流れが剥離・乱れ少なく形成されるので、被加熱物下方は適切に調理され、良好な調理効果・仕上がりが得られる加熱調理器とすることができる。
ノズル28Cは、複数の穴とスリットで構成され、穴・スリットの下端はノズルに接続される風路であるファンケーシング20底面とほぼ同じ高さに設けられている。このため、ノズル28Cから導風部29へとスムースに気流が流れ、導風部29への気流の付着を安定させることができる。ノズル28Cの形状、間隔、穴径・スリット幅は、送風手段であるターボファン22から供給される気流の流れ方向や流速、流量等の条件と、受皿27Cの形状等を考慮して、被加熱物の幅方向位置による加熱ムラが軽減されるように調整されている。このため、幅方向位置によらず被加熱物は同様に加熱され、加熱ムラが軽減されることから、良好な調理効果を得られる加熱調理器とすることができる。
ターボファン22を用い、二つの流出口を有するスクロールケーシングを有するファンケーシング20を備えることで、高静圧な送風手段とすることができ、ノズル28Cからの吹き出し流速・流量が増して加熱効率が高まり、調理時間が短く省エネとすることができ、調理性能が高く環境負荷の低い加熱調理器を得ることができる。
貯水部47を導風部29Cの上方に配置するとともに、貯水部47底面の傾斜を導風部29Cのノズル28C側端上面の傾斜と概ね同一の傾斜としている。すなわち、貯水部47の貯水部底面49は、上面から見たときに貯水部47の貯水部底面49と重複する導風部29Cの傾斜面と、ほぼ平行に傾斜している。このため、貯水部47の貯水部底面49と導風部29Cとの間にほぼ平行な風路が形成され、ノズル28Cから吹き出された気流が整流されて導風部29Cへの気流の付着を良好にすることができる。また、ノズル28Cから吹き出された直後の高温の気流により、貯水部47内の水を気化して過加熱蒸気にし、調理時間が短縮されることから、高い調理性能と良好な調理効果が得られる加熱調理器とすることができる。
1 本体、2 筐体、3 筐体上面、4 トッププレート、5 吸排気口カバー、6 操作部、7 調理室扉、8 載置部、8a 右載置部、8b 左載置部、8c 中央載置部、9 表示部、10 調理室排気風路、10A 調理室排気風路、10a 背面側垂直部、11 調理室、12 調理室吸込口、13 筐体排気口、14 筐体吸気口、15 冷却風排気風路、16 チャンバ、17 基板ケースユニット、18 誘導加熱コイルユニット、18a 誘導加熱コイルユニット、18b 誘導加熱コイルユニット、18c 誘導加熱コイルユニット、19 調理室収納部、20 ファンケーシング、20A ファンケーシング、20C ファンケーシング、21 電動機、22 ターボファン、23 循環気流加熱手段、24 上方加熱手段、24A 上方加熱手段、25 調理室上壁、26 調理台、26A 調理台、26B 調理台、26C 調理台、27 受皿、27A 受皿、27B 受皿、27C 受皿、28 ノズル、28A ノズル、28B ノズル、28C ノズル、29 導風部、29A 導風部、29B 導風部、29C 導風部、30 スライドレール、31 保持部、31A 保持部、32 温度センサ、33 気密部材、34 触媒体、34A 触媒体、34B 触媒体、35a 断熱空間、35b 断熱空間、36 整流部、37 導風壁、37B 導風壁、38 吸込口体、38B 吸込口体、39 加熱手段背面側、40 断熱材、41 防汚部材、42 乱流促進体、43 排気風路接続口、43A 排気風路接続口、43B 排気風路接続口、44 ラジアルファン、45 フィン、46 ガイド部、46C ガイド部、47 貯水部、48 貯水部カバー、49 貯水部底面、50 吸込口、51 水平面、52 傾斜面、53 脚部、53B 脚部、53C 脚部、54 上面板、55 上面板通風口、56 上方加熱手段支持部、57 傾斜面、58 遮蔽部、61 吹出口、62 吹出口、63 下方風路、64 曲面、64a サイド部、64b 弧状部、70 載置面、100 誘導加熱調理器。

Claims (4)

  1. 筐体の内部に設けられた調理室と、
    前記調理室内の上方に設けられた上方加熱手段と、
    前記調理室内に配置され、被加熱物を載置するための概水平な載置面を有する調理台と、
    前記調理台の下方に設けられた受皿と、
    前記調理室に設けられた吸込口及び吹出口と、
    前記吸込口に吸引力を発生させて前記調理室内の空気を吸引し、前記吸込口から吸引した空気を前記吹出口から吹き出させる送風手段とを備え、
    前記受皿の底面と前記調理台の被加熱物を載置するための載置面との間には、通風可能な空間が設けられ、
    前記吹出口は、前記受皿の底面と前記調理台の載置面との間の高さ位置に設けられており、
    前記受皿は、
    前記吹出口下端より低い高さに配置された前記吹出口側の壁と、前記吹出口側の壁に対向する側に設けられ前記吹出口の高さよりも上端が高い位置に配置された導風壁と、を有し、
    前記導風壁は、概垂直に延びるものであり、
    前記受皿の底面と前記導風壁とは、曲面で接続されている
    ことを特徴とする加熱調理器。
  2. 前記受皿は、
    前記吹出口側の壁と前記導風壁とを接続する側壁を更に有する
    ことを特徴とする請求項1記載の加熱調理器。
  3. 前記吹出口の吹出方向と概平行な流路を形成するように配置されたフィンを備えた
    ことを特徴とする請求項1又は2記載の加熱調理器。
  4. 前記筐体の上面開口を覆うトッププレートと、
    前記筐体内に設けられ、前記トッププレート上に載置された被加熱物を加熱するための加熱手段とを備え、
    請求項1〜請求項3のいずれか一項に記載の加熱調理器を前記加熱手段の下方に搭載した
    ことを特徴とする加熱調理装置。
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