この発明の実施の形態について、図面を参照して説明する。なお、以下で参照する図面では、同一またはそれに相当する部材には、同じ番号が付されている。
(実施の形態1)
[プロペラファンの基本構造について]
図1は、この発明の実施の形態1におけるプロペラファンを備えた扇風機を示す側面図である。図2は、この発明の実施の形態1におけるプロペラファンを吸込側から見た斜視図である。図3は、図2中のプロペラファンを噴出側から見た斜視図である。図4は、図2中のプロペラファンを吸込側から見た平面図である。図5は、図2中のプロペラファンを噴出側から見た平面図である。図6は、図2中のプロペラファンを示す側面図である。
図1から図6を参照して、まず、本実施の形態におけるプロペラファンの基本的な構造について説明する。
本実施の形態におけるプロペラファン210は、7枚翼のプロペラファンであり、たとえば、AS(acrylonitrile-styrene)樹脂等の合成樹脂により一体成形されている。
プロペラファン210は、複数の翼として、翼21A、翼21B、翼21C、翼21D、翼21E、翼21Fおよび翼21G(以下、特に区別しない場合は翼21という)を有する。翼21は、仮想軸である中心軸101を中心に、図中の矢印102に示す方向に回転する。複数の翼21は、中心軸101を中心に回転することにより、図中の吸込側から噴出側に送風を行なう。
翼21A〜翼21Gは、プロペラファン210の回転軸、すなわち中心軸101の周方向において、等間隔に配置されている。本実施の形態では、翼21A〜翼21Gは、同一形状に形成されており、いずれかの翼21を中心軸101を中心に回転させた場合に、その翼21の形状と別の翼21の形状とが一致するように形成されている。翼21A、翼21B、翼21C、翼21D、翼21E、翼21Fおよび翼21Gは、挙げた順に、プロペラファン210の回転方向に並んでいる。たとえば、翼21Bは、翼21Aに対してプロペラファン210の回転方向の側に隣り合って配置され、翼21Cは、翼21Bに対してプロペラファン210の回転方向の側に隣り合って配置されている。
翼21は、プロペラファン210の回転方向の側に配置される前縁部22と、回転方向の反対側に配置される後縁部24と、前縁部22と後縁部24との間を接続する外縁部23とを有する。
プロペラファン210を中心軸101の軸方向から見た場合、すなわち、プロペラファン210を平面的に見た場合に、前縁部22および後縁部24は、後述するボスハブ部41から、中心軸101を中心とする半径方向内側から外側に向けて延びている。前縁部22は、中心軸101を中心とする半径方向内側から外側に湾曲しながら、プロペラファン210の回転方向に向かって延びている。後縁部24は、中心軸101を中心とする周方向において、前縁部22と対向して配置されている。外縁部23は、全体として、前縁部22と後縁部24との間で円弧状に延びている。
外縁部23は、全体として、中心軸101を中心とする周方向に沿って延びている。図4中に示すように、外縁部23は、その周方向に延びる線上においてプロペラファン210の最も回転方向の側に位置する前縁側接続部104で前縁部22と交わり、その周方向に延びる線上においてプロペラファン210の最も回転方向の反対側に位置する後縁側接続部105で後縁部24と交わっている。
図4中には、複数の翼21の外接円109が示されている。外接円109は、中心軸101を中心として半径Rを有し、その内側に複数の翼21が内接している。外接円109は、翼21の外縁部23に接している。翼21は、中心軸101を中心として最大半径Rを有する。外縁部23は、外接円109に接する位置から前縁側接続部104に向けて、中心軸101を中心とする周方向に沿って延びながら、その半径方向内側に湾曲している。
前縁側接続部104および後縁側接続部105は、外接円109に隣り合って配置されている。前縁側接続部104および後縁側接続部105は、中心軸101からR/2(Rは、プロペラファンの平面視における翼21の最大半径)だけ離れた位置よりも外周側に配置されている。前縁側接続部104は、前縁部22と外縁部23とが接続される付近で極大となる曲率を有する。後縁側接続部105は、外縁部23と後縁部24とが接続される付近で極大となる曲率を有する。
図4中に示すプロペラファン210の平面視において、前縁部22は、後述するボスハブ部41と前縁側接続部104との間で湾曲しながら延びている。後縁部24は、後述するボスハブ部41と後縁部105との間で湾曲しながら延びている。
プロペラファン210を平面的に見た場合に、翼21の外形が、前縁部22、外縁部23および後縁部24によって構成されている。プロペラファン210を平面的に見た場合に、翼21は、前縁部22と外縁部23とが交わる前縁側接続部104を先端にして、鎌状に尖った形状を有する。前縁側接続部104は、翼21においてプロペラファン210の最も回転方向の側に位置する。
翼21には、プロペラファン210の回転に伴って送風を行なう(吸込側から噴出側に空気を送り出す)ための翼面28が形成されている。
翼面28は、中心軸101の軸方向において吸込側および噴出側に面する側にそれぞれ形成されている。翼面28は、前縁部22、外縁部23および後縁部24に囲まれた領域に形成されている。翼面28は、前縁部22、外縁部23および後縁部24に囲まれた領域の全面に形成されている。翼面28は、前縁部22から後縁部24に向かう周方向において吸込側から噴出側に傾斜する湾曲面により形成されている。
翼面28は、正圧面26と、正圧面26の裏側に配置される負圧面27とから構成されている。正圧面26は、翼面28の噴出側に面する側に形成され、負圧面27は、翼面28の吸込側に面する側に形成されている。プロペラファン210の回転時、翼面28上で空気流れが発生するのに伴って、正圧面26で相対的に大きく、負圧面27で相対的に小さくなる圧力分布が生じる。
プロペラファン210は、回転軸部としてのボスハブ部41を有する。ボスハブ部41は、プロペラファン210を、その駆動源である図示しないモータの出力軸に接続する部分である。ボスハブ部41は、中心軸101に軸方向に延びる円筒形状を有する。翼21は、ボスハブ部41から中心軸101の半径方向外側に延出するように形成されている。前縁部22および後縁部24は、ボスハブ部41から外縁部23に向けて、中心軸101の半径方向外側に延びている。
翼21は、前縁部22と後縁部24とを結ぶ、周方向の断面形状の厚みが、前縁部22および後縁部24から翼中心付近に向かうほど厚くなり、翼中心よりも前縁部22側に寄った位置に最大厚みを有する翼型形状に形成されている。
なお、以上においては、合成樹脂により一体成形されるプロペラファン210について説明したが、本発明におけるプロペラファンは樹脂製に限られるものではない。たとえば、一枚物の板金を捻り加工することによってプロペラファン210を形成してもよいし、曲面を有して形成される一体の薄肉状物によりプロペラファンを形成してもよい。これらの場合、別に成形したボスハブ部41に翼21A〜翼21Gを接合する構造としてもよい。
また、本発明は、7枚翼のプロペラファン210に限られず、3枚以外の複数枚の翼21を備えるプロペラファンであってもよいし、1枚の翼21を備えるプロペラファンであってもよい。1枚翼のプロペラファンとする場合、中心軸101に対して翼21の反対側に、バランサーとしての錘が設けられる。
図1中には、本実施の形態におけるプロペラファン210を有する流体送り装置の一例として、扇風機610が示されている。扇風機610は、たとえば、人に直接風を当てて涼を得るために用いられる。扇風機610は、プロペラファン210と、プロペラファン210のボスハブ部41が連結され、複数の翼21を回転させるための図示しない駆動モータとを有する。
なお、プロペラファン210は、扇風機610に限られず、サーキュレータ、エアーコンディショナ、空気清浄機、加湿機、除湿機、ファンヒータ、冷却装置または換気装置などの流体送り装置に用いられてもよい。
[翼の後縁部および前縁部の高さについて]
図6中には、プロペラファン210の噴出側、すなわち翼21の正圧面26が面する側に、プロペラファン210の回転軸である中心軸101に直交する仮想上の平面107が示されている。
図2から図6を参照して、平面107から後縁部24までの中心軸101の軸方向における長さを後縁部24の高さという場合に、本実施の形態におけるプロペラファン210においては、後縁部24が、中心軸101を中心とする外周側で、外縁部23に近づくほど大きくなる高さhを有する。
後縁部24の高さは、中心軸101を中心とする内周側で、ボスハブ部41から遠ざかるほど小さくなり、中心軸101を中心とする外周側で、外縁部23に近づくほど大きくなる。言い換えれば、後縁部24は、ボスハブ部41と外縁部23との間で、中心軸101の軸方向において噴出側で凸となるように湾曲して延びている。
後縁部24の高さが外縁部23に近づくほど大きくなり始める位置は、中心軸101を中心に0.4R〜0.7R(Rは、プロペラファンの平面視における翼21の最大半径)の範囲にあることが好ましい。
本実施の形態では、ボスハブ部41に連なる位置における後縁部24の高さh1よりも、外縁部23に連なる位置(後縁側接続部105)における後縁部24の高さh2の方が大きい(h2>h1)。なお、このような構成に限られず、後縁部24は、h1=h2の関係を満たすように形成されてもよいし、h1>h2の関係を満たすように形成されてもよい。
また、本実施の形態では、駆動モータから延出する回転シャフトにボスハブ部41を固定するための図示しないスピンナーと、翼21との干渉を避けることを目的に、後縁部24の高さが、中心軸101を中心とする内周側で高くなっている。このような構成に限られず、ボスハブ部41を噴出側に延長して、後縁部24の高さが、ボスハブ部41から外縁部23に向けて大きくなり続ける構成としてもよい。
一般的なプロペラファンでは、翼21の高さが、中心軸101を中心とする内周側と比較して、外周側で極端に大きくなり、このため、その外周側における翼21の送風能力が極めて高くなる。
これに対して、本実施の形態におけるプロペラファン210においては、後縁部24が、中心軸101を中心とする外周側で、外縁部23に近づくほど大きくなる高さを有する。このような構成により、中心軸101を中心とする外周側において、翼21の高さが低く抑えられ、翼面26の傾きがなだらかになるため、その外周側の送風能力が抑制される。これにより、内周側と外周側との間の風量(風速)の差を緩和し、プロペラファン210からより均一な送風が可能となる。結果、プロペラファン210から送風を受けた人が不快に感じることを防止できる。
図7は、図5中のプロペラファンを部分的に拡大して示す平面図である。図7を参照して、本実施の形態におけるプロペラファン210においては、後縁部24が、内周部24pおよび外周部24qから構成されている。内周部24pは、中心軸101を中心とする内周側で後縁部24を構成し、外周部24qは、中心軸101を中心とする外周側で後縁部24を構成している。図7中に示すプロペラファン210の平面視において、後縁部24は、内周部24pと外周部24qとの間で折れ曲がった形状を有する。
より具体的には、内周部24pは、ボスハブ部41から中心軸101の半径方向外側に向けて所定方向に延びている。本実施の形態では、内周部24pが、中心軸101を中心とする半径方向に延びている。外周部24qは、内周部24pが延びる所定方向より翼21の回転方向の側、すなわち、前縁部22側に傾きを変化させて、内周部24pから外縁部23に向けて延びている。外周部24qは、直線状、もしくは十分に大きい直径を有する円弧状に延びている。
図7中に示す仮想線24rは、内周部24pが外縁部23に向けて滑らかに延びた場合の後縁部24の軌跡である。外周部24qは、この内周部24pが滑らかに延びた場合と比較して、0.8R(Rは、プロペラファンの平面視における翼21の最大半径)の位置におけるコード長さが5%以上短くなるように形成されることが好ましい(x≧0.05L)。図7中には、最も好ましい形態として、外周部24qがx=0.1Lの関係を満たすように形成された場合が示されている。
なお、図7中に示すプロペラファン210の平面視において後縁部24の傾きが変化し始める位置、すなわち内周部24pと外周部24qとの境界位置は、中心軸101を中心に0.4R(Rは、プロペラファンの平面視における翼21の最大半径)の位置よりも外周側であることが好ましい(r>0.4R)。
このような構成によれば、中心軸101を中心とする外周側において、中心軸101の軸方向から見た場合の翼21の面積を小さくしながら、翼21の高さを低く抑えることができる。これにより、外周側における翼21の送風能力がさらに抑制されるため、内周側と外周側との間の風量の差をより効果的に緩和することができる。また、後縁部24の軌跡を、中心軸101を中心とする外周側で回転方向の側にシフトさせることによって、隣接する翼21間が広がる。これにより、翼21(たとえば、図7中の翼21B)で発生した馬蹄渦が、その翼21に対して回転方向の後方で隣り合う翼21(たとえば、図7中の翼21A)に干渉し難くなるため、低騒音化が可能となる。
図2から図6を参照して、本実施の形態におけるプロペラファン210においては、前縁部22が、ボスハブ部41と、ボスハブ部41から中心軸101の半径方向外側に離れた位置との間で、中心軸101の軸方向において一定の高さを有する。
図6中に示す平面107を基準にして、前縁部22は、ボスハブ部41と、ボスハブ部41から中心軸101の半径方向外側に離れた位置との間で、一定の高さを有する。より具体的には、前縁部22は、ボスハブ部41と、ボスハブ部41および前縁側接続部104の間の位置119との間(図4中の2点鎖線118に示す範囲)で、中心軸101の軸方向において一定の高さを有し、位置119よりも外周側で、外縁部23に近づくほど小さくなる高さを有する。
このように本実施の形態におけるプロペラファン210においては、前縁部22が、中心軸101を中心とする内周側で一定の高さを有する。このような構成により、中心軸101を中心とする内周側において翼21の高さが大きく設定されることになり、送風能力を向上させることができる。これにより、内周側と外周側との間の風量の差をさらに緩和することができる。
以上に説明した、この発明の実施の形態1におけるプロペラファン210の構造についてまとめて説明すると、本実施の形態におけるプロペラファン210は、仮想の中心軸101を中心に回転する回転軸部としてのボスハブ部41と、ボスハブ部41から中心軸101の半径方向外側に延出する翼21とを備える。翼21は、回転方向の側に配置される前縁部22と、回転方向の反対側に配置される後縁部24と、中心軸101の周方向に延び、前縁部22と後縁部24との間を接続する外縁部23とを有する。翼21の噴出側に中心軸に直交する平面107を想定し、その平面107からの中心軸101の軸方向における長さを高さという場合に、後縁部24は、中心軸101を中心とする外周側で、外縁部23に近づくほど大きくなる高さを有する。
このように構成された、この発明の実施の形態1におけるプロペラファン210によれば、中心軸101を中心とする外周側において送風能力を抑制することによって、ファンからの送風の不快感が低減されるプロペラファンを実現することができる。
[プロペラファンの変形例の説明]
図8は、図2中に示すプロペラファンの第1変形例を示す平面図である。本変形例におけるプロペラファンは、図6中に示す側面視と同じ側面視を有する。
図6および図8を参照して、本変形例におけるプロペラファン220は、実施の形態1におけるプロペラファン210と比較して、プロペラファンを平面視した場合の後縁部24の軌跡のみが異なる。より具体的には、プロペラファン220は、図7中の内周部24pが外縁部23に向けて滑らかに延びた場合であり、後縁部24の外周側が回転方向の側にシフトされていない。
図9は、図2中に示すプロペラファンの第2変形例を示す側面図である。本変形例におけるプロペラファンは、図8中に示す平面視と同じ平面視を有する。
図8および図9を参照して、本変形例におけるプロペラファン230は、実施の形態1におけるプロペラファン210と比較して、プロペラファンを平面視した場合の後縁部24の軌跡と、前縁部22の形状とが異なる。より具体的には、プロペラファン230は、図7中の内周部24pが外縁部23に向けて滑らかに延びた場合であり、後縁部24の外周側が回転方向の側にシフトされていない。さらに、本変形例では、前縁部22が、平面107を基準とする高さが、ボスハブ部41から外縁部24に近づくに従って大きくなるように形成されている。
図10は、図2中に示すプロペラファンの第3変形例を示す側面図である。本変形例におけるプロペラファンは、図4および図5中に示す平面視と同じ平面視を有する。
図4、図5および図10を参照して、本変形例におけるプロペラファン260は、実施の形態1におけるプロペラファン210と比較して、前縁部22の形状のみが異なる。より具体的には、本変形例では、前縁部22が、ボスハブ部41と外縁部23との間の全範囲で、中心軸101の軸方向において一定の高さを有する。
このような構成を備えるプロペラファン220、プロペラファン230およびプロペラファン260によっても、上記のプロペラファン210による効果を同様に奏することができる。
[実施例の説明]
続いて、実施の形態1におけるプロペラファン210、第1変形例におけるプロペラファン220および第2変形例におけるプロペラファン230によって上記作用効果が奏されることを確認するための実施例について説明する。
図11は、第1比較例におけるプロペラファンを示す側面図である。図12は、第2比較例におけるプロペラファンを示す側面図である。これらの比較例におけるプロペラファンは、図8中に示す平面視と同一の平面視を有する。
図11を参照して、本比較例におけるプロペラファン240は、図9中に示すプロペラファン230と基本的に同様の構造を有する。但し、後縁部24が、中心軸101を中心する外周側で、中心軸101の軸方向において一定の高さを有する。図12を参照して、本比較例におけるプロペラファン250は、図6中に示すプロペラファン210と基本的に同様の構造を有する。但し、後縁部24が、中心軸101を中心する外周側で、、中心軸101の軸方向において一定の高さを有する。
翼21の直径および高さ、ならびにボスハブ部41の直径が同じである、図9中に示す第2変形例におけるプロペラファン230と、図11中に示す第1比較例におけるプロペラファン240とを準備した。そして、各プロペラファンにおいて、回転数と風量との関係、風量と消費電力との関係、風量と騒音との関係、および回転中心からの距離と風速との関係を実測により求め、測定結果を比較した。
なお、図9および図11から分かるように、第2変形例におけるプロペラファン230と第1比較例におけるプロペラファン240とは、基本的に同じ翼形状を有するが、第2変形例におけるプロペラファン230では、後縁部24の高さが外周側で高くなっているのに対して、第1比較例におけるプロペラファン240では、後縁部24の高さが一定となっている点で異なる。
図13は、図9中の第2変形例におけるプロペラファンおよび図11中の第1比較例におけるプロペラファンにおいて、回転数と風量との関係を示すグラフである。図14は、図9中の第2変形例におけるプロペラファンおよび図11中の第1比較例におけるプロペラファンにおいて、風量と消費電力との関係を示すグラフである。図15は、図9中の第2変形例におけるプロペラファンおよび図11中の第1比較例におけるプロペラファンにおいて、風量と騒音との関係を示すグラフである。
図13から図15を参照して、第2変形例におけるプロペラファン230では、中心軸101を中心とする外周側において翼21の高さが低く抑えられるため、第1比較例におけるプロペラファン240と比較して、風量が若干小さくなった。一方、消費電力および騒音に関しては、第2変形例におけるプロペラファン230と第1比較例におけるプロペラファン240とで、ほぼ同じ結果が得られた。
図16は、図9中の第2変形例におけるプロペラファンおよび図11中の第1比較例におけるプロペラファンにおいて、回転中心からの距離と風速との関係を示すグラフである。
図16を参照して、第1比較例におけるプロペラファン240においては、中心軸101から0.8R(Rは、プロペラファンの平面視における翼21の最大半径)だけ離れた付近で、風速が大きなピーク値を示した。一方、第2変形例におけるプロペラファン230においては、中心軸101を中心とする外周側における送風能力を抑制することによって、風速のピークを低く抑えることができた。
次に、翼21の直径および高さ、ならびにボスハブ部41の直径が同じである、図7中に示す実施の形態1におけるプロペラファン210(図7中のx=0.1L)と、図8中に示す第1変形例におけるプロペラファン220と、図12中に示す第2比較例におけるプロペラファン250とを準備した。そして、各プロペラファンにおいて、回転数と風量との関係、風量と消費電力との関係、風量と騒音との関係、および回転中心からの距離と風速との関係を実測により求め、測定結果を比較した。
なお、図7および図8から分かるように、実施の形態1におけるプロペラファン210と第1変形例におけるプロペラファン220とは、基本的に同じ翼形状を有するが、実施の形態1におけるプロペラファン210では、外縁部24の外周側が回転方向にシフトして形成されているのに対して、第1変形例におけるプロペラファン220では、外縁部24がボスハブ部41と外縁部23との間で滑らかに延びている点で異なる。また、図6および図12から分かるように、実施の形態1におけるプロペラファン210と第2比較例におけるプロペラファン250とは、基本的に同じ翼形状を有するが、実施の形態1におけるプロペラファン210では、後縁部24の高さが外周側で高くなっているのに対して、第2比較例におけるプロペラファン250では、後縁部24の高さが一定となっている点で異なる。
図17は、図7中の実施の形態1におけるプロペラファン、図8中の第1変形例におけるプロペラファンおよび図12中の第2比較例におけるプロペラファンにおいて、回転数と風量との関係を示すグラフである。図18は、図7中の実施の形態1におけるプロペラファン、図8中の第1変形例におけるプロペラファンおよび図12中の第2比較例におけるプロペラファンにおいて、風量と消費電力との関係を示すグラフである。図19は、図7中の実施の形態1におけるプロペラファン、図8中の第1変形例におけるプロペラファンおよび図12中の第2比較例におけるプロペラファンにおいて、風風量と騒音との関係を示すグラフである。
図17から図19を参照して、実施の形態1および第1変形例におけるプロペラファン210,220では、中心軸101を中心とする外周側において翼21の高さが低く抑えられるため、第2比較例におけるプロペラファン250と比較して、風量が若干小さくなった。また、実施の形態1におけるプロペラファン210では、外縁部24の外周側の回転方向へのシフトによって翼面積が減少するため、第1変形例におけるプロペラファン220よりも低い風量となった。
また、同一風量時の消費電力および騒音を比較した場合、実施の形態1および第1変形例におけるプロペラファン210,220の消費電力および騒音が、それぞれ、第2比較例におけるプロペラファン250の消費電力および騒音よりも小さい値となった。実施の形態1におけるプロぺラファン210では、外縁部24の外周側の回転方向へのシフトによって翼面積が減少するため、回転方向において先行する翼21で発生する馬蹄渦が、後に続く翼21に干渉し難くなる。このため、本実施例では、実施の形態1におけるプロぺラファン210の騒音値が最も低い値となった。
図20は、図7中の実施の形態1におけるプロペラファン、図8中の第1変形例におけるプロペラファンおよび図12中の第2比較例におけるプロペラファンにおいて、回転中心からの距離と風速との関係を示すグラフである。
図20を参照して、第2比較例におけるプロペラファン250においては、中心軸101から0.8R(Rは、プロペラファンの平面視における翼21の最大半径)だけ離れた付近で、風速がピーク値を示した。一方、第1変形例におけるプロペラファン220においては、その風速のピークが抑制され、実施の形態1におけるプロペラファン210においては、その風速のピークを完全に解消することができた。
なお、先の実施例で説明した、第2変形例におけるプロペラファン230および第1比較例におけるプロペラファン240と、後の実施例で説明した、実施の形態1におけるプロペラファン210、第1変形例におけるプロペラファン220および第2比較例におけるプロペラファン250とを比較した場合、前縁部22の形状が異なる。実施の形態1におけるプロペラファン210、第1変形例におけるプロペラファン220および第2比較例におけるプロペラファン250では、前縁部22が中心軸101を中心とする内周側で一定高さを有する構造によって、第2変形例におけるプロペラファン230および第1比較例におけるプロペラファン240よりも、総じて風量が大きくなり、風速分布が滑らかになった。
(実施の形態2)
図21は、この発明の実施の形態2におけるプロペラファンを備えたクロスフローファンを示す斜視図である。図22は、この発明の実施の形態2におけるプロペラファンを吸込側から見た平面図である。図23は、図22中のプロペラファンを噴出側から見た平面図である。図24は、図22中のプロペラファンを示す側面図である。
なお、本実施の形態におけるプロペラファンは、実施の形態1におけるプロペラファン210と基本的には同様の構造を有する。以下、プロペラファン210と重複する構造については、説明を繰り返さない。
図21から図24を参照して、本実施の形態におけるプロペラファン110は、3枚翼のプロペラファンであり、複数の翼として、翼21A、翼21Bおよび翼21C(以下、特に区別しない場合は翼21という)を有する。
プロペラファン110は、サーキュレータ510に搭載されている。サーキュレータ510は、たとえば、広い室内において、エアコンから送出された冷気を撹拌するために用いられる。サーキュレータ510は、プロペラファン110と、プロペラファン110のボスハブ部41が連結され、複数の翼21を回転させるための図示しない駆動モータとを有する。
図24中に示すように、本実施の形態におけるプロペラファン110においては、後縁部24が、中心軸101を中心とする外周側で、外縁部23に近づくほど大きくなる高さhを有する。また、前縁部22は、ボスハブ部41と、ボスハブ部41から中心軸101の半径方向外側に離れた位置との間で、中心軸101の軸方向において一定の高さを有する。特に本実施の形態では、前縁部22および外縁部23が、ボスハブ部41と最大径端部111(図22中に示す、外縁部23が外接円109と重なる位置と外接円109から離れる位置との境界位置)との間で、中心軸101の軸方向において一定の高さを有する。
続いて、プロペラファン110を参照して、翼21が備える折れ目構造について説明する。なお、実施の形態1におけるプロペラファン210も、プロペラファン110の同様の折れ目構造を有するが、本明細書において、代表的にプロペラファン110を用いて説明する。
図25および図26は、図22中のプロペラファンを部分的に示す平面図である。図25および図26中には、プロぺラファン110が有する3枚の翼21のうちの1枚だけが示されている。図27は、図26中のA−A線上に沿ったプロペラファンを示す断面図である。図28は、図26中のB−B線上に沿ったプロペラファンを示す断面図である。図29は、図26中のC−C線上に沿ったプロペラファンを示す断面図である。図30は、図26中のD−D線上に沿ったプロペラファンを示す断面図である。図31は、図26中のE−E線上に沿ったプロペラファンを示す断面図である。図32は、図26中のF−F線上に沿ったプロペラファンを示す断面図である。
図25から図32を参照して、翼21は、翼根部34と、翼根部34から板状に延びる翼面28とを有する。翼根部34は、翼21とボスハブ部41の外表面41Sとの間(境目)に配置される。翼面28の周縁には、翼根部34のうちの回転方向の側の部分から翼根部34のうちの回転方向の反対側の部分に向かって、前縁部22、翼先端部124、外縁部23、翼後端部125および後縁部24が、挙げた順で環状に配置されている。
翼21を平面的に見た場合に、翼21は、前縁部22と外縁部23とが交わる翼先端部124を先端にして、鎌状に尖った形状を有する。翼先端部124は、中心軸101から見て前縁部22の半径方向外側に配置される。翼先端部124は、前縁部22と外縁部23とが接続される部分である。本実施の形態における翼先端部124は、翼21の中で最も回転方向の側に位置している。翼後端部125は、中心軸101から見て後縁部24の半径方向外側に配置される。翼後端部125は、後縁部24と外縁部23とが接続される部分である。
前縁部22、翼先端部124、外縁部23、翼後端部125および後縁部24は、翼根部34とともに翼21の周縁を形成する周縁部を構成している。この周縁部(前縁部22、翼先端部124、外縁部23、翼後端部125および後縁部24)は、いずれも概ね弧状の形状を有するように形成されることで、角部を有さない滑らかな形状とされている。翼面28は、翼根部34とこの周縁部(前縁部22、翼先端部124、外縁部23、翼後端部125および後縁部24)とに囲まれた領域の内側の全域に亘って形成されている。
[内側領域31、外側領域32および連結部33の説明]
プロペラファン110の翼面28は、内側領域31、外側領域32および連結部33を有する。内側領域31、外側領域32および連結部33は、正圧面26および負圧面27の双方に形成されている。
内側領域31は、翼根部34をその一部に含み、外側領域32に比べて中心軸101の半径方向内側に位置する。外側領域32は、翼後端部125をその一部に含み、連結部33および内側領域31に比べて中心軸101の半径方向外側に位置する。内側領域31における正圧面26の表面形状と、外側領域32における正圧面26の表面形状とは、相互に異なるように形成されている。内側領域31における負圧面27の表面形状と、外側領域32における負圧面27の表面形状とは、相互に異なるように形成されている。
連結部33は、翼面28の正圧面26側が凸となり、翼面28の負圧面27側が凹となるように、内側領域31と外側領域32とを連結している。連結部33は、概ね回転方向に沿うように設けられており、連結部33のうちの回転方向の最上流側に位置する前端部33Aから、連結部33のうちの回転方向の最下流側に位置する後端部33Bまで延在している。
連結部33は、内側領域31から外側領域32に向かうにしたがって翼面28がやや急峻な曲率変化を持って湾曲するようにして形成されており、相互に異なる表面形状を有する内側領域31および外側領域32との境目においてこれら同士を湾曲しながら連結している。
連結部33は、その付近において翼面28の半径方向断面視における曲率が極大となるように設けられており、正圧面26上においては湾曲状に突出した突条部として前端部33Aから後端部33Bに向かって筋状に延びるように現れており、負圧面27上においては湾曲状の窪んだ溝部として前端部33Aから後端部33Bに向かって筋状に延びるように現れている。
連結部33の前端部33Aは、翼先端部124寄りに位置し、後縁部24からは離れて設けられている。本実施の形態における連結部33の前端部33Aは、翼先端部124から回転方向とは反対側に向かって翼面28の内側にわずかに変位した位置に設けられている。
連結部33の前端部33Aは、後縁部24から離れていれば、前縁部22寄りに位置するように設けられていてもよいし、外縁部23寄りに位置するように設けられてもよい。連結部33の前端部33Aは、連結部33を滑らかに回転方向の側に延長した線上に、前縁部22、翼先端部124または外縁部23が位置するように設けられている。
連結部33の後端部33Bは、後縁部24寄りに位置し、前縁部22、翼先端部124および外縁部23のいずれに対しても離れて設けられている。本実施の形態における連結部33の後端部33Bは、中心軸101の半径方向における後縁部24の略中央位置から回転方向に向かって翼面28の内側にわずかに変位した位置に設けられている。連結部33の後端部33Bは、連結部33を滑らかに回転方向の反対側に延長した線上に、後縁部24が位置するように設けられている。
図25中に示すように、翼21が中心軸101を中心として矢印102に示す方向に回転した場合、翼面28上には、翼先端部124の付近を中心として、前縁部22、翼先端部124および外縁部23のそれぞれから、後縁部24に向かって流れる翼先端渦340が発生する。この翼先端渦340は、正圧面26上および負圧面27上のそれぞれに発生する。好ましくは、連結部33は、この翼先端渦340の流れに沿うように設けられる。
図26および図27中に示すように、本実施の形態の連結部33は、連結部33の前端部33Aが前縁部22、翼先端部124および外縁部23のいずれにも到達しない(重ならない)ように設けられている。連結部33の存在に起因した湾曲は、前縁部22、翼先端部124および外縁部23のいずれにも現れておらず、連結部33の前端部33Aの周囲に位置する翼面28(正圧面26および負圧面27)は、前端部33Aを通り、中心軸101の半径方向に沿った断面視において、180°となるように平坦に形成されている。
図26および図28中に示すように、連結部33は、翼面28(正圧面26および負圧面27)が、連結部33における前端部33Aの回転方向とは反対側の近傍で、比較的急峻に湾曲するように設けられている。図26、図29および図30中に示すように、連結部33は、連結部33の負圧面27側に仮想的に形成される内角θが、前端部33Aから回転方向における連結部33の中心付近に向かうにつれて徐々に小さくなるように設けられている。好ましくは、この内角θは、回転方向における連結部33の中心付近で最も小さくなるように形成されている。
図26および図31中に示すように、連結部33は、連結部33の負圧面27側に仮想的に形成される内角θが、回転方向における連結部33の中心付近から後端部33Bに向かうにつれて徐々に大きくなるように設けられている。図26および図32中に示すように、本実施の形態の連結部33は、連結部33の後端部33Bが後縁部24に到達しない(重ならない)ように設けられている。連結部33の存在に起因した湾曲は、後縁部24には現れておらず、連結部33の後端部33Bの周囲に位置する翼面28(正圧面26および負圧面27)は、後端部33Bを通り中心軸101の半径方向に沿った断面視において、180°となるように平坦に形成されている。
[食い違い角θA,θBの説明]
図33は、図25中のXXXIII−XXXIII線上に沿った断面図である。図25および図33を参照して、翼面28のうちの連結部33よりも半径方向内側に位置する内側領域31は、所定の食い違い角θAを有する。内側領域31における前縁部22上の点と内側領域31における後縁部24上の点とを結ぶことにより、仮想直線31Lが形成される。食い違い角θAとは、仮想直線31Lと中心軸101とがこれらの間になす角度のことである。
図33中に示すように、本実施の形態における翼21の内側領域31は、前縁部22および後縁部24を両端として内側領域31の中腹部が仮想直線31Lから遠ざかるように湾曲し、翼面28(内側領域31)の正圧面26側が凸となり翼面28(内側領域31)の負圧面27側が凹となるように反った形状を有している。また、本実施の形態における翼21は、翼21のうちの連結部33よりも半径方向内側の部分の食い違い角θAが、ボスハブ部41に近づくにしたがって小さくなるように形成されている。
図34は、図25中のXXXIV−XXXIV線上に沿った断面図である。図25および図34を参照して、翼面28のうちの連結部33よりも半径方向外側に位置する外側領域32は、所定の食い違い角θBを有する。外側領域32における前縁部22上の点と外側領域32における後縁部24上の点とを結ぶことにより、仮想直線33Lが形成される。食い違い角θBとは、仮想直線33Lと中心軸101とがこれらの間になす角度のことである。
図34中に示すように、本実施の形態における翼21の外側領域32は、前縁部22および後縁部24を両端として外側領域32の中腹部が仮想直線33Lから遠ざかるように湾曲し、翼面28(外側領域32)の正圧面26側が凹となり翼面28(外側領域32)の負圧面27側が凸となるように反った形状を有している。
図33および図34を参照して、本実施の形態における翼21は、食い違い角θBよりも食い違い角θAの方が小さくなるように形成される。翼21は、翼根部34における食い違い角θAも、外縁部23における食い違い角θBに比べて小さくなるように形成される。さらに、翼21は、連結部33よりも半径方向内側で、正圧面26側が凸となり負圧面27側が凹となるように反った形状を有し、連結部33よりも半径方向外側で、正圧面26側が凹となり負圧面27側が凸となるように反った形状を有する。すなわち、本実施の形態では、翼21が連結部33を境界にして、互いに反対側に反った形状に形成されている。
[作用効果の説明]
図35から図37を参照して、本実施の形態におけるプロペラファン110によって差奏される作用効果について説明する。
図35は、プロペラファンの翼が回転している際の様子を吸込側から見た平面図である。図36は、プロペラファンの翼が回転している際の様子を噴出側から見た平面図である。図37は、プロペラファンを連結部に沿って仮想的に切断したときの断面図であり、プロペラファンの翼が回転している際の様子を示す図である。
図35および図36を参照して、翼21は、中心軸101を中心として矢印102に示す方向に回転する。本実施の形態のプロペラファン110における翼21の翼面28(正圧面26および負圧面27の双方)上には、翼先端渦340、主流310、二次流れ330、馬蹄渦320および馬蹄渦350が、空気流れとして発生する。
翼先端渦340は、プロペラファン110の回転時、主として翼先端部124が空気と衝突することによって形成される。翼先端渦340は、主として翼先端部124を起点として発生し、翼先端部124、翼先端部124の近傍に位置する前縁部22の翼先端部124寄りの部分、および翼先端部124の近傍に位置する外縁部23の翼先端部124寄りの部分から、翼面28上を通過して後縁部24に向かって流れる。
主流310は、プロペラファン110の回転時、翼先端渦340よりも翼面28のさらに上層側に形成される。換言すると、主流310は、翼先端渦340が形成される翼面28の表層に対して、翼先端渦340を挟んで翼面28の反対側に形成される。主流310は、前縁部22、翼先端部124および外縁部23から翼面28上に流入し、後縁部24に向かって流れる。
馬蹄渦320は、プロペラファン110の回転に伴って生じる正圧面26と負圧面27との圧力差に起因して、正圧面26から負圧面27に流れ込むように外縁部23に沿って発生する。二次流れ330は、プロペラファンの回転に伴って生じる遠心力に起因して、ボスハブ部41から外縁部23に向かって流れるように発生する。馬蹄渦350は、連結部33が翼面28に設けられている部分を二次流れ330が横切るように流れることにより発生する。
上述のとおり、本実施の形態における連結部33の前端部33Aは、翼先端部124から回転方向とは反対側に向かって翼面28の内側にわずかに変位した位置に設けられ、連結部33の後端部33Bは、中心軸101の半径方向における後縁部24の略中央位置から回転方向に向かって翼面28の内側にわずかに変位した位置に設けられている。この構成によって、連結部33は、主流310および翼先端渦340の流れる方向に概ね沿うように形成されることになる。
図37を参照して、内側領域31および外側領域32を湾曲して連結する連結部33は、翼面28の表層における連結部33の近傍に、馬蹄渦350および翼先端渦340を保持させ、翼面28の表層から馬蹄渦350および翼先端渦340が剥離してしまうことを抑制する。連結部33は、連結部33の近傍で発生し連結部33によって保持されながら流れる馬蹄渦350が、発達したり変動したりすることも抑制する。
翼先端部124の近傍で発生し連結部33によって保持されながら流れる翼先端渦340と、連結部33の近傍で発生し連結部33によって保持されながら流れる馬蹄渦350とは、主流310に対して運動エネルギを付与する。運動エネルギを付与された主流310は、翼面28上の下流側で翼面28から剥離しにくくなる。結果として、剥離領域52を縮小もしくは消滅させることができる。プロペラファン110は、剥離が抑制されることによって、回転時に発生する騒音を低減することができ、連結部33を設けない場合と比較して風量を増加させて高効率化することが可能となる。
図38は、比較のためのプロペラファンにおいて、本実施の形態における連結部に対応する部分に沿って仮想的に切断したときの断面図であり、このプロペラファンの翼が回転している際の様子を示す図である。比較のためのプロペラファンは、連結部33を有していない点のほかは、プロペラファン110と略同様に構成される。
図38を参照して、このような比較のためのプロペラファンにおいては、翼面28の正圧面26および負圧面27に発生する主流310および翼先端渦340が、前縁部22、翼先端部124および外縁部23に近い翼面28上の上流側では翼面28に沿った流れとなるものの、後縁部24に近い翼面28上の下流側では翼面28に沿った流れとなりにくい。下流側で翼先端渦340から主流310に対して運動エネルギが付与されないため、主流310が翼面28から剥離する剥離領域52が生じやすい。このプロペラファンは、回転時に発生する騒音を低減することは困難となる。このような傾向は、正圧面26および負圧面27のうち、特に負圧面27上で顕著となる。
本実施の形態におけるプロペラファン110の回転時、連結部33が設けられている領域の近傍においては、主流310は半径方向外側から同方向内側に向かって流れる。したがって、連結部33を主流310の流れに概ね沿うように形成し、連結部33が設けられている領域についても翼型を採用することで、あらゆる主流310の流れに対して翼型を実現できるため、より効率的な送風を行うことが可能となる。
内側領域31側から外側領域32側に向かって翼面28が滑らかに湾曲するようにして連結部33が設けられていることによって、翼面28の形状に設計上の自由度を確保することができる。たとえば、馬蹄渦の発生を抑制するために、翼先端部124に向かって前縁部22および外縁部23の幅が細くなる鎌形状を維持しながらボスハブ部41付近での翼面28の高さを高くするといった複雑な翼面28の形状についても対応可能となる。
本実施の形態におけるプロペラファン110では、連結部33の前端部33Aの周囲に位置する翼面28(正圧面26および負圧面27)が、前端部33Aを通り中心軸101の半径方向に沿った断面視において180°となるように平坦に形成され、さらに、連結部33の後端部33Bの周囲に位置する翼面28(正圧面26および負圧面27)は、後端部33Bを通り中心軸101の半径方向に沿った断面視において、180°となるように平坦に形成されている。このような構成によれば、翼面28に流入する風および翼面28から流出する風を乱さないので、主流310に対する抵抗を少なくすることが可能となる。なお、当該構成は、必要に応じて設けられるとよい。
また、本実施の形態における翼21は、翼根部34および内側領域31においては正圧面26側が凸となり負圧面27側が凹となるように反った形状を有し、外側領域32および外縁部23においては正圧面26側が凹となり負圧面27側が凸となるように反った形状を有している。当該構成は、逆キャンバー構造ということができる。
一般的なプロペラファンは、その構造に起因して、半径方向内側の部分の周速は遅く、半径方向外側の部分の周速は速くなる。空気の流入角は、半径方向内側に位置する翼根部側と半径方向外側に位置する外縁部側(翼端側)とで異なることになる。したがって、外縁部側(翼端側)で適切な空気の流入が行われるように外縁部側(翼端側)の流入角(キャンバー角)を設計すると、翼根部側では空気の流入が良好に行われにくくなり、翼根部側では空気流れに剥離が生じてしまう場合がある(逆も然り)。
このため、本実施の形態におけるプロペラファン110のように、半径方向内側に位置する翼根部34側と半径方向外側に位置する外縁部23側(翼端側)とでそれぞれ適切にキャンバー角を変化させ、翼根部34側の空気の流入角が大きな領域においては逆キャンバー構造を与えることにより、半径方向の全域にわたって翼面28に対して空気を適切な流入角で流入させることができ、さらには空気流れの剥離を防止することが可能となる。
なお、翼根部34および内側領域31においては正圧面26側が凸となり負圧面27側が凹となるように反った形状を有し、外側領域32および外縁部23においては正圧面26側が凹となり負圧面27側が凸となるように反った形状を有するような翼面28の構成(逆キャンバー構造)は、翼面28に連結部33が設けられるという技術的な思想とは独立して実施することが可能である。
プロペラファンに連結部33が設けられていなくても、翼面28が逆キャンバー構造を有するという構成によれば、半径方向の全域にわたって翼面28に対して空気を適切な流入角で流入させることができ、さらには空気流れの剥離を防止するといった課題が解決されることとなる。
また、本実施の形態におけるプロペラファン110では、翼21が、食い違い角θBよりも食い違い角θAの方が小さくなるように形成される。翼21は、翼根部34における食い違い角θAも、外縁部23における食い違い角θBに比べて小さくなるように形成される。このような構成によれば、翼面28の傾きが内周側でより急になり、外周側でよりなだらかになるため、不快感の原因となっている半径方向外側の風速のピークを調整することが可能である。
また、本実施の形態における翼21は、翼21のうちの連結部33よりも半径方向内側の部分の食い違い角θAが、ボスハブ部41に近づくにしたがって小さくなるように形成されている。当該構成によって、中心軸101を中心とする内周側においては、中心軸101に近づくにつれて送風能力が高くなる。
一般的なプロペラファンにおいては、半径方向の吹き出し風速分布に大きな差があり、半径方向外側では風速が大きくなり、翼の先端部付近では最も高速となり極端なピーク点を有する。中心軸101の近傍の翼21が機能していない部分と、翼21が最も機能している部分とでは、風速の差が過大となり、吹き出し風速のムラが生じ、これが不快感の大きな原因となってしまう。
これに対して、本実施の形態におけるプロペラファン110によれば、内周側と外周側との間の風量(風速)の差を緩和することができる。プロペラファン110によってより均一な送風が行われ、送風を受けた人が不快に感じることを抑制することが可能となる。プロペラファン110によれば、ファンの占有可能な空間を最大限活用することもでき、強力な送風をすることも可能となる。なお、当該構成は、必要に応じて設けられるとよい。
プロペラファン110によってより均一な送風を行うという観点からは、翼21は、翼21のうちの連結部33よりも半径方向内側の部分(内側領域31)の翼面積が、翼21のうちの連結部33よりも半径方向外側の部分(外側領域32)の翼面積と同一もしくはこれよりも大きくなるように形成されているとよい。
このような構成によって、翼21のうちの連結部33よりも半径方向内側の部分(内側領域31)の送風能力を増加させ、翼21のうちの連結部33よりも半径方向外側の部分(外側領域32)の送風能力を低減することができる。内周側と外周側との間の風量(風速)の差を緩和することができ、プロペラファン110によってより均一な送風が行われ、送風を受けた人が不快に感じることを抑制することが可能となる。当該構成は、必要に応じて設けられるとよい。
[各種変形例の説明]
図39は、図25中のプロペラファンの第1変形例を示す断面図である。図39は、図29に対応する図である。
上述のプロペラファン110の連結部33は、内側領域31から外側領域32に向かうにしたがって翼面28がやや急峻な曲率変化を持って湾曲するようにして形成されており、相互に異なる表面形状を有する内側領域31および外側領域32との境目においてこれら同士を湾曲しながら連結している。
図39を参照して、連結部33は、内側領域31から外側領域32に向かうにしたがって翼面28がやや急峻な曲率変化を持って湾曲するようにして形成され、相互に異なる表面形状を有する内側領域31および外側領域32との境目においてこれら同士を屈曲しながら連結していてもよい。当該構成によっても、上述のプロペラファン110と同様の効果を奏することができる。
なお、連結部33において翼面28があまり極端に折れ曲がると、その連結部33の形状は、翼面28で発生する主流ではない二次流れに影響しやすくなる。同じ空間を最大限使用する場合にも、連結部33での空気流れを考慮し、適切な湾曲度合いまたは屈曲度合いを定めるとよい。
図40は、図25中のプロペラファンの第2変形例を示す平面図である。図40を参照して、本変形例では、連結部33が、回転方向における連結部33の中心位置P1を通り、かつ中心軸101を中心とする仮想の同心円Z1を描いた場合に、連結部33の前端部33Aは同心円Z1の半径方向外側に位置し、連結部33の後端部33Bは同心円Z1の半径方向内側に位置するように設けられる。このような構成によれば、翼面28上に形成される主流は、半径方向外側から内側へ向かう方向となるため、そのような主流の流れに沿って連結部33を設けることができる。
(実施の形態3)
実施の形態1で説明したプロペラファン210においては、翼21の外縁部23が、前縁部22側に位置する前方外縁部156と、後縁部24側に位置する後方外縁部157と、これら前方外縁部156および後方外縁部157を接続する所定形状の接続部151とを含む(図4を参照)。このような形状の外縁部23とすることにより、後述する様々な効果が発揮されることになる。以下においては、図2から図6を参照して、当該外縁部23の具体的な形状について詳説する。
外縁部23には、中心軸101側に向けて窪む接続部151が形成されている。接続部151は、前縁側接続部104と後縁側接続部105との間の途中の位置に形成されている。
外縁部23に上述した接続部151が形成されることにより、翼21の外縁部23には、前縁側接続部104側に位置する前方外縁部156(図4を参照)と、後縁側接続部105側に位置する後方外縁部157(図4を参照)とが設けられることになる。
接続部151は、滑らかに湾曲した形状とされても、屈曲した形状とされてもよい。本実施の形態においては、接続部151が比較的浅く窪むように形成されているため、当該接続部151は、略鈍角形状を有している。
接続部151が形成される位置は、外縁部23上の位置であれば特に限定されるものではないが、本実施の形態においては、前縁側接続部104よりも後縁側接続部105に寄った位置に接続部151が形成されている。このため、本実施の形態においては、前方外縁部156の回転方向に沿った幅が、後方外縁部157の回転方向に沿った幅よりも大きく形成されている。
翼21にこのような接続部151を形成することによって、以下のような効果が奏される。
第一に、径方向における風速分布をより均一にすることができ、風速のムラを抑制することが可能となって風当たりの良い風とすることができる。
すなわち、外縁部23に窪み形状の接続部151が形成されていない翼形状とした場合には、径方向外側に向かうにつれてほぼ比例して風速が大きくなるため、径方向内側寄りの部分において発生する風の風速と、径方向外側寄りの部分において発生する風の風速との間に大きな差が生じ、発生する風に大きな圧力変動が生じてしまうことになる。
これに対して、本実施の形態においては、外縁部23に窪み形状の接続部151が形成されているため、外縁部23に窪み形状の接続部151が形成されていない場合に比べて、外縁部23近傍(すなわち、径方向外側寄りの部分)において翼面積が減少することになる。このため、径方向外側に向かうにつれてほぼ比例して大きくなる風速が、外縁部23寄りの部分において緩和されることになり、径方向内側寄りの部分において発生する風の風速と、外縁部23寄りの部分において発生する風の風速とが近づくことになり、径方向における風速分布がより均一になる。したがって、風速のムラが抑制可能となり、風当たりの良い風とすることができる。
第二に、径方向外側寄りの部分において発生される風に含まれる圧力変動が小さくなり、風当たりの良い風を発生させることができる。
すなわち、外縁部23に窪み形状の接続部が形成されていない翼形状とした場合には、翼と翼との間の比較的大きな空間を空気が通過することとなり、発生する風に大きな圧力変動が生じてしまうことになる。これは、より風速の速い風が発生される外縁部23側の部分において特に顕著となり、翼の枚数が少なくなればなるほど大きな圧力差を含む風が発生することとなる。
これに対して、本実施の形態においては、外縁部23に窪み形状の接続部151が形成された翼形状であるため、各翼21に、1枚の翼21の前方外縁部156と後方外縁部157との間に比較的小さな空間(すなわち、窪み形状の接続部151が位置する空間)が形成されることになり、当該空間が、翼21の中に風を発生させない空間として存在することになる。その結果、風速の速い風が発生される外縁部23側の部分において、翼面積が減少することで発生される風に生じる圧力差が緩和されることとなる上に、圧力変動がより小刻みに生じることになる。このため、1枚の翼21に設けられた前方外縁部156および後方外縁部157があたかも2枚分の翼で風を送風するような作用が得られ、全体として圧力変動が小さな風当たりの良い風を発生させることができる。
第三に、低速回転時においては、広範囲に拡散する風当たりの良い風とすることができ、高速回転時においては、直進性が高くより遠くへ到達する風とすることができる。この点について、図41から図44を参照して、より詳細に説明する。
図41は、プロペラファンを低速回転させた場合に得られる風の流れを示す概念図である。図42は、プロペラファンを低速回転させた場合に得られる風の状態を模式的に示す図である。図43は、プロペラファンを高速回転させた場合に得られる風の流れを示す概念図である。図44は、プロペラファンを高速回転させた場合に得られる風の状態を模式的に示す図である。
なお、図41および図43においては、翼先端渦の代表的な軌道として、前縁側接続部104付近で発生する翼先端渦の軌道を破細線にて模式的に示し、馬蹄渦の代表的な軌道を細線にて模式的に示し、さらに翼21の外縁部23寄りの位置にて発生される風の軌道を太線にて模式的に示している。
上述したように、本実施の形態においては、翼21の外縁部23に窪み形状の接続部151が形成されている。当該外縁部23上の位置は、前縁側接続部104を含む翼先端部の下流側であって、かつ翼面28上を流れる翼先端渦の流線に沿った位置に該当することになる。
図41および図42を参照して、翼21が低速で回転した場合には、翼21が回転することで生じる翼先端渦および馬蹄渦の運動エネルギが小さく、このため翼先端渦および馬蹄渦が窪み形状の接続部151によって捉えられることなく、当該部分においてその剥離が促されることになる。これにより、翼先端渦および馬蹄渦は、いずれも窪み形状の接続部151が形成された部分において遠心力によって径方向外側に飛ばされることになる。したがって、図42中に示すように、翼21で発生された風が扇風機610の前方において拡散することになり、風当たりの良い風152を広範囲に送風できることになる。このため、夜間等の就寝時に風を殆ど感じることなく扇風機610を運転させたい場合に、これを満足する微風運転の実現も可能になる。
図43および図44を参照して、一方、翼21が高速で回転した場合には、翼21が回転することで生じる翼先端渦および馬蹄渦の運動エネルギが大きく、このため翼先端渦および馬蹄渦が窪み形状の接続部151によって捉えられて保持されることになり、翼先端渦および馬蹄渦の変動や発達が抑制されることになる。また、その際、翼先端渦および馬蹄渦が窪み形状の接続部151に沿って内側に移動することになるため、その後、後縁側接続部153において剥離した翼先端渦および馬蹄渦が高速回転による大風量および高静圧によって軸方向に飛ばされることになる。したがって、図44中に示すように、翼21で発生された風が扇風機610の前方において収束することになり、直進性が高くより遠くへ到達する風153が送風できることになる。このため、効率よく送風を行なうことが可能になるとともに、風の直進性が高まることによって騒音の発生をも抑制することが可能になる。
このように、本実施の形態におけるプロペラファン110およびこれを備えた扇風機610によれば、発生される風の圧力変動が小さく快適な風を送り出すことが可能になるとともに、騒音の低減を図ることが可能になる。
なお、以上に説明した実施の形態1〜3における各種のプロペラファンの翼構造を適宜組み合わせて、新たなプロペラファンを構成してもよい。
(実施の形態4)
本実施の形態では、実施の形態1〜3における各種のプロペラファンを樹脂を用いて成形するための成形用金型の構造について説明する。
図45は、プロペラファンの製造に用いられる成形用金型を示す断面図である。図45を参照して、成形用金型61は、固定側金型62および可動側金型63を有する。固定側金型62および可動側金型63により、プロペラファンと略同一形状であって、流動性の樹脂が注入されるキャビティが規定されている。
成形用金型61には、キャビティに注入された樹脂の流動性を高めるための図示しないヒータが設けられてもよい。このようなヒータの設置は、たとえば、ガラス繊維入りAS樹脂のような強度を増加させた合成樹脂を用いる場合に特に有効である。
なお、図45中に示す成形用金型61においては、プロペラファンにおける正圧面側表面を固定側金型62によって形成し、負圧面側表面を可動側金型63によって形成することを想定しているが、プロペラファンの負圧面側表面を固定側金型62によって形成し、プロペラファンの正圧面側表面を可動側金型63によって形成してもよい。
プロペラファンとして、材料に金属を用い、プレス加工による絞り成形により一体に形成するものがある。これらの成形は、厚い金属板では絞りが困難であり、質量も重くなるため、一般的には薄い金属板が用いられる。この場合、大きなプロペラファンでは、強度(剛性)を保つことが困難である。これに対して、翼部分より厚い金属板で形成したスパイダーと呼ばれる部品を用い、翼部分を回転軸に固定するものがあるが、質量が重くなり、ファンバランスも悪くなるという問題がある。また、一般的には、薄く、一定の厚みを有する金属板が用いられるため、翼部分の断面形状を翼型にすることができないという問題がある。
これに対して、プロペラファンを樹脂を用いて形成することにより、これらの問題を一括して解決することができる。
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。