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JP5939150B2 - インクジェット用顔料インキ - Google Patents

インクジェット用顔料インキ Download PDF

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Description

本発明は、一般の印刷基材、特にコート紙、アート紙や塩化ビニルシートなどの疎水性の高い基材への印字性に優れ、インクジェットノズルからの吐出安定性、保存安定性に優れる水系インクジェット用顔料インクに関する。
インクジェット記録方式は、非常に微細なノズルからインク液滴を記録部材に直接吐出し、付着させて文字や画像を得る記録方式である。この方式によれば、使用する装置の騒音が小さく、操作性がよいという利点を有するのみならず、カラー化が容易であり、かつ記録部材として普通紙を使用することができるという利点があるため、オフィースや家庭での出力機として広く用いられている。
一方、産業用途においても、インクジェット技術の向上によりデジタル印刷の出力機としての利用が期待され、環境面および印刷物の耐性面等から水性顔料インキが求められている。
水性顔料インキは、顔料が水に不溶であるため、インキ中での顔料分散を保つために分散樹脂を用いて水中での分散安定化を図っている。(例えば特許文献1,2,3参照)。
また、インクジェット記録方式の場合、ノズルの乾燥防止を目的として、保湿剤と位置づけられる高沸点の水溶性溶剤が含まれている。
一般的に、水性インキの乾燥機構は、インキが基材へ着弾後、基材への浸透と蒸発に分類されるが、浸透の寄与が非常に大きく、コート紙、アート紙や塩化ビニルシートなどの疎水性が高い基材はインキの浸透が遅いため、多色印刷の場合はインキが混色してきれいな画像を形成できない、印刷速度を上げられない等の問題があった。
このため、インキ中に基材への浸透性の高い高沸点の水溶性溶剤を添加することにより乾燥性の向上を図る必要がある。しかしながら、インキ中への浸透性溶剤の添加は、顔料分散状態を安定化させている分散樹脂の溶解状態を変化させ、顔料分散性および保存安定性を著しく低下させる場合があった。この課題に対し、長鎖アルキルモノマーと、芳香環モノマーとを有する顔料分散剤を用いた水性インクジェットインクにおいて、疎水性が高い基材における印字性とインクの保存安定性とを両立することが開示されている(特許文献4)。
しかしながら、上記のインクジェットインクでは、近年益々要求が高まっている印刷速度の向上に対し、浸透性溶剤の浸透が追いつかず、印字性の要求レベルを達成することは困難であった。また、浸透性溶剤を増やすとインクの保存安定性が低下し実用困難であった。
特開昭64−6074号 特開昭64−31881号公報 特開平3−210373号公報 特開2012−140476号公報
本発明の目的は、インクジェット記録用の顔料インクにおいて、一般の印刷基材、特にコート紙、アート紙や塩化ビニルシートなどの疎水性の高い基材への浸透性に優れることにより、印字性に優れ、インクジェットノズルからの吐出安定性とインクの保存安定性に優れるインクジェット用顔料インクを提供することにある。
上記目的は、以下の本発明によって達成される。
すなわち、本発明は、顔料(A)、酸性顔料誘導体(B)、水、有機溶剤、および両性樹脂型分散剤(C)を含有する、インクジェット用顔料インキであって、
両性樹脂型分散剤(C)が、下記単量体を共重合してなる共重合体中のカルボキシル基の少なくとも一部を塩基性化合物で中和してなることを特徴とするインクジェット用顔料インキに関する。
芳香環を有するエチレン性不飽和単量体(c1):5〜70重量%
カルボキシル基を有するエチレン性不飽和単量体(c2):5〜60重量%
アミノ基を有するエチレン性不飽和単量体(c3):5〜80重量%
炭素数が10以上24以下のアルキル基の(メタ)アクリレートエステル(c4):5〜80重量%
また、本発明は、有機溶剤が、(1)炭素数5〜8の1,2-ジオール、(2)炭素数3〜6のジオールのモノメチルエーテル、(3)エチレングリコール単位が1〜3のモノアルキルエーテルでアルキル鎖長が3〜8のポリエチレングリコールモノアルキルエーテル、(4)プロピレングリコール単位が1〜3のモノアルキルエーテルでアルキル鎖長が1〜4のポリプロピレングリコールモノアルキルエーテル、および(5)エチレングリコール単位が3〜5のジアルキルエーテルでアルキル鎖長が1〜2のポリエチレングリコールジアルキルエーテルからなる群から選ばれる少なくとも1種を含み、かつ
上記有機溶剤が、インクジェット用顔料インキ中に、インクジェット用顔料インキ全体に対して15重量%以上含有されていることを特徴とする前記インクジェット用顔料インキに関する。
また、本発明は、有機溶剤が、インクジェット用顔料インキ全体に対して、ジエチレングリコールモノヘキシルエーテルを3重量%以上含むことを特徴とする前記インクジェット用顔料インキに関する。
また、本発明は、両性樹脂型分散剤(C)の酸価が、30mgKOH/g以上450mgKOH/g以下であることを特徴とする前記インクジェット用顔料インキに関する。
また、本発明は、エチレン性不飽和単量体(c4)が、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、ベヘニル(メタ)アクリレートからなる群から選ばれる少なくとも一種を含むことを特徴とする前記インクジェット用顔料インキに関する。
また、本発明は、芳香環を有するエチレン性不飽和単量体(c1)が、スチレンであることを特徴とする前記インクジェット用顔料インキに関する。
また、本発明は、エチレン性不飽和単量体(c3)が、メタクリル酸2-ジメチルアミノエチルであることを特徴とする前記インクジェット用顔料インキに関する。
また、本発明は、酸性顔料誘導体(B)が、下記一般式(1)、下記一般式(2)、及び下記一般式(3)で表される酸性置換基を有する色素誘導体の群から選ばれる少なくとも一種類以上の色素誘導体を含むことを特徴とする前記インクジェット用顔料インキに関する。
一般式(1):
P−Z1
(一般式(1)中、Pは、アゾ系、ベンズイミダゾロン系、フタロシアニン系、キナクリドン系、アントラキノン系、ジオキサジン系、ジケトピロロピロール系、キノフタロン系、イソインドリノン系、イソインドリン系、ペリレン系、ペリノン系、フラバンスロン系、ピランスロン系、及びアンスラピリミジン系から選ばれる一種の有機色素残基であり、Z1は、スルホン酸基、又はカルボキシル基である。)
一般式(2):
(P−Z2)[N+(R1,R2,R3,R4)]
(一般式(2)中、Pは、アゾ系、ベンズイミダゾロン系、フタロシアニン系、キナクリドン系、アントラキノン系、ジオキサジン系、ジケトピロロピロール系、キノフタロン系、イソインドリノン系、イソインドリン系、ペリレン系、ペリノン系、フラバンスロン系、ピランスロン系、及びアンスラピリミジン系から選ばれる一種の有機色素残基であり、R1は、炭素数5〜20のアルキル基であり、R2,R3,及びR4は、それぞれ独立に、水素原子、又は炭素数1〜20のアルキル基であり、Z2は、SO3 -又はCOO-である。)
一般式(3):
(P−Z2)M+
(一般式(3)中、Pは、アゾ系、ベンズイミダゾロン系、フタロシアニン系、キナクリドン系、アントラキノン系、ジオキサジン系、ジケトピロロピロール系、キノフタロン系、イソインドリノン系、イソインドリン系、ペリレン系、ペリノン系、フラバンスロン系、ピランスロン系、及びアンスラピリミジン系から選ばれる一種の有機色素残基であり、Mは、Na原子、又はK原子であり、Z2は、SO3 -、又はCOO-である。)
また、本発明は、前記インクジェット用顔料インキを含む、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラックのインクセットに関する。
さらに、本発明は、前記インクジェット用顔料インキを印刷してなる印刷物に関する。
本発明によれば、一般の印刷基材、特にコート紙、アート紙や塩化ビニルシートなどの疎水性の高い基材への印字性に優れ、インクジェットノズルからの吐出安定性、保存安定性に優れる水系インクジェット用顔料インクが提供される。
以下に、好ましい実施の形態を挙げて、本発明のインクジェット用顔料インク(以下、インク又は顔料インクという)について説明する。
<両性樹脂型分散剤(C)>
本発明の顔料インクは、下記単量体
芳香環を有するエチレン性不飽和単量体(c1):5〜70重量%
カルボキシル基を有するエチレン性不飽和単量体(c2):5〜60重量%
アミノ基を有するエチレン性不飽和単量体(c3):5〜80重量%
炭素数が10以上24以下のアルキル基の(メタ)アクリレートエステル(c4):5〜80重量%
を共重合してなる共重合体中のカルボキシル基の少なくとも一部を塩基性化合物で中和してなる両性樹脂型分散剤(C)を含有してなることを特徴とする。
先ず、本発明を特徴づける両性樹脂型分散剤(C)の形成成分である芳香環を有するエチレン性不飽和単量体(c1)、カルボキシル基を有するエチレン性不飽和単量体(c2)、アミノ基を有するエチレン性不飽和単量体(c3)及び炭素数が10以上24以下のアルキル基の(メタ)アクリレートエステル(c4)について説明し、更に、これらの共重合によって得られる両性樹脂型分散剤(C)について説明する。
(芳香環を有するエチレン性不飽和単量体(c1))
まず、芳香環を有するエチレン性不飽和単量体(c1)について説明する。
本発明で使用する芳香環を有するエチレン性不飽和単量体(c1)としては、スチレン、α−メチルスチレンもしくはベンジル(メタ)アクリレート等を挙げることができる。保存安定性の向上をより高度に図るためには、スチレンを含むことが好ましい。
(カルボキシル基を有するエチレン性不飽和化合物(c2))
つぎに、カルボキシル基を有するエチレン性不飽和化合物(c2)について説明する 。
本発明で使用する単量体(c2)は、カルボキシル基含有不飽和化合物としてはマレイン酸、フマル酸、イタコン酸、シトラコン酸、または、これらのアルキルもしくはアルケニルモノエステル、フタル酸β−(メタ)アクリロキシエチルモノエステル、イソフタル酸β−(メタ)アクリロキシエチルモノエステル、テレフタル酸β−(メタ)アクリロキシエチルモノエステル、コハク酸β−(メタ)アクリロキシエチルモノエステル、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、けい皮酸等を例示することが出来る。特にメタクリル酸、アクリル酸が好ましい。
(アミノ基を有するエチレン性不飽和単量体(c3))
つぎに、アミノ基を有するエチレン性不飽和単量体(c3)について説明する。
本発明で使用するアミノ基を有するエチレン性不飽和単量体(c3)は、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、メチルエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノスチレン、ジエチルアミノスチレン等が挙げられる。沸点が高くインクジェットのノズルで揮発しにくい観点から、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレートが特に好ましい。
(炭素数が10以上24以下のアルキル基の(メタ)アクリレートエステル( c4))
つぎに、炭素数が10以上24以下のアルキル基の(メタ)アクリレートエステル(c4)について説明する。
本発明で使用する炭素数が10以上24以下のアルキル基の(メタ)アクリレートエステルの好ましい具体例としては、下記のものが挙げられる。
例えば、デシル(メタ)アクリレート、ウンデシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、テトラデシル(メタ)アクリレート、ペンタデシル(メタ)アクリレート、ヘキサデシル(メタ)アクリレート、ヘプタデシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、イソステアリル(メタ)アクリレート、ベヘニル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
上記した中でも、保存安定性の向上をより高度に図るためには、(c4)は、炭素数が12〜22であることが好ましく、14〜22であることがより好ましい。具体的には、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、ベヘニル(メタ)アクリレートを使用することが好ましい。
(その他の単量体(c5))
両性樹脂型分散剤(C)は、前記(c1)〜(c4)以外のその他の単量体(c5)を含んでいてもよい。その他の単量体(c5)としては、
(メタ)アクリレート系化合物としては、炭素数1〜9のアルキル系(メタ)アクリレート、アルキレングリコール系(メタ)アクリレート、水酸基含有(メタ)アクリレート、窒素含有(メタ)アクリレート(アミノ基を有するエチレン性不飽和単量体(c3)を除く)、等がある。
[炭素数1〜9のアルキル系(メタ)アクリレート]
更に具体的に例示すると、アルキル系(メタ)アクリレートとしては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート等の炭素数1〜9のアルキル(メタ)アクリレートがあり、極性の調節を目的とする場合には好ましくは炭素数2〜9、さらに好ましくは炭素数2〜8のアルキル基を有するアルキル基含有アクリレートまたは対応するメタクリレートが挙げられる。
[アルキレングリコール系(メタ)アクリレート]
また、アルキレングリコール系(メタ)アクリレートとしては、例えば、ジエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート等、末端に水酸基を有し、ポリオキシアルキレン鎖を有するモノアクリレートまたは対応するモノメタアクリレート等、
メトキシエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート等、末端にアルコキシ基を有し、ポリオキシアルキレン鎖を有するモノアクリレートまたは対応するモノメタアクリレート等、
フェノキシエチレングリコール(メタ)アクリレート等、末端にフェノキシまたはアリールオキシ基を有するポリオキシアルキレン系アクリレートまたは対応するメタアクリレートがある。
[水酸基含有(メタ)アクリレート]
水酸基含有(メタ)アクリレートとしては、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、グリセロールモノ(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシビニルベンゼンなどが挙がられる。
窒素含有(メタ)アクリレート(アミノ基を有するエチレン性不飽和単量体(c3)を除く)としては、(メタ)アクリルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、N−メトキシメチル−(メタ)アクリルアミド等のモノアルキロール(メタ)アクリルアミド、
N,N−ジ(メチロール)アクリルアミド、N−メチロール−N−メトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジ(メトキシメチル)アクリルアミド等のジアルキロール(メタ)アクリルアミド等のアクリルアミド系不飽和化合物を例示できる。
[その他の(メタ)アクリレート]
更にその他の不飽和化合物としては、パーフルオロメチルメチル(メタ)アクリレート、パーフルオロエチルメチル(メタ)アクリレート、2−パーフルオロブチルエチル(メタ)アクリレート、2−パーフルオロヘキシルエチル(メタ)アクリレート等の炭素数1〜20のパーフルオロアルキル基を有するパーフルオロアルキルアルキル(メタ)アクリレート類;
パーフルオロブチルエチレン、パーフルオロヘキシルエチレン、パーフルオロオクチルエチレン、パーフルオロデシルエチレン等のパーフルオロアルキル、アルキレン類等のパーフルオロアルキル基含有ビニルモノマー、ビニルトリクロルシラン、ビニルトリス(βメトキシエトキシ)シラン、ビニルトリエトキシシラン、γ-(メタ)アクリロキシプロピルトリメトキシシラン等のシラノール基含有ビニル化合物及びその誘導体;
脂肪酸ビニル化合物としては、酢酸ビニル、酪酸ビニル、プロピオン酸ビニル、ヘキサン酸ビニル、カプリル酸ビニル、ラウリル酸ビニル、パルミチン酸ビニル、ステアリン酸ビニル等;
アルキルビニルエーテル化合物としては、ブチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル等;
α−オレフィン化合物としては、1−ヘキセン、1−オクテン、1−デセン、1−ドデセン、1−テトラデセン、1−ヘキサデセン等:
ビニル化合物としては、酢酸アリル、アリルアルコール、アリルベンゼン、シアン化アリル等のアリル化合物、シアン化ビニル、ビニルシクロヘキサン、ビニルメチルケトン、スチレン、α-メチルスチレン、2-メチルスチレン、クロロスチレン等;
エチニル化合物としては、アセチレン、エチニルベンゼン、エチニルトルエン、1−エチニル−1−シクロヘキサノール等、などを挙げることができ、これらの群から複数用いることができる。
(両性樹脂型分散剤(C)の製造)
本発明の両性樹脂型分散剤(C)は、下記単量体を共重合してなる共重合体中のカルボキシル基の少なくとも一部を塩基性化合物で中和することで得ることができる。
芳香環を有するエチレン性不飽和単量体(c1):5〜70重量%
カルボキシル基を有するエチレン性不飽和単量体(c2):5〜60重量%
アミノ基を有するエチレン性不飽和単量体(c3):5〜80重量%
炭素数が10以上24以下のアルキル基の(メタ)アクリレートエステル(c4):5〜80重量%
なかでも、
芳香環を有するエチレン性不飽和単量体(c1):10〜60重量%
カルボキシル基を有するエチレン性不飽和単量体(c2):10〜50重量%
アミノ基を有するエチレン性不飽和単量体(c3):6〜40重量%
炭素数が10以上24以下のアルキル基の(メタ)アクリレートエステル(c4):10〜50重量%
(c1)〜(c4)以外のその他の単量体(c5):0〜10重量%
であることが好ましく、
芳香環を有するエチレン性不飽和単量体(c1):20〜50重量%
カルボキシル基を有するエチレン性不飽和単量体(c2):20〜40重量%
アミノ基を有するエチレン性不飽和単量体(c3):10〜30重量%
炭素数が10以上24以下のアルキル基の(メタ)アクリレートエステル(c4):15〜40重量%
(c1)〜(c4)以外のその他の単量体(c5):0〜5重量%
であることがより好ましい。
さらに、炭素数が10以上24以下のアルキル基の(メタ)アクリレートエステル(c4)、芳香環を有するエチレン性不飽和単量体(c1)の比率は、
(c4)/(c1)=1/9〜9/1であることが好ましく、
(c4)/(c1)=1/4〜4/1であることがさらに好ましい。
(c4)/(c1)が1/9より少ないと、両性樹脂型分散剤(C)の疎水性が低くなり、顔料表面に対する両性樹脂型分散剤(C)の付着力が低下し、顔料インクの保存安定性が低下する傾向がある。
(c4)/(c1)9/1より多いと、両性樹脂型分散剤(C)の顔料表面との親和性が低くなり、顔料表面に対する両性樹脂型分散剤(C)の付着力が低下し、顔料インクの保存安定性が低下する傾向がある。
本発明のインクの構成成分として用いる上記のような単量体成分を用いて形成される両性樹脂型分散剤(C)は、重量平均分子量が2,000〜30,000の範囲であることが好ましく、更には、重量平均分子量が5,000〜20,000の範囲のものであることが好ましい。また、本発明のインクの構成成分である両性樹脂型分散剤(C)は、カルボキシル基を有するエチレン性不飽和単量体(c2)としてアクリル酸を共重合してなるが、両性樹脂型分散剤(C)におけるカルボキシル基を有する単量体の構成比率を酸価で表すと下記のようであることが好ましい。即ち、使用する両性樹脂型分散剤(C)の酸価が、30mgKOH/g以上450mgKOH/g以下の範囲であることが好ましく、更には、酸価が80mgKOH/g以上300mgKOH/g以下の範囲であることが好ましい。
本発明で使用する両性樹脂型分散剤(C)の酸価が上記した範囲よりも低いと顔料インクの分散安定性が低下し、吐出安定性が悪化する傾向がある。また、本発明で使用する両性樹脂型分散剤(C)の酸価が上記した範囲より高いと、顔料表面に対する両性樹脂型分散剤(C)の付着力が低下し、顔料インクの保存安定性が低下する傾向がある。尚、本発明における両性樹脂型分散剤(C)やポリマーの重量平均分子量や酸価は、常法によって測定することができる。
[塩基性化合物]
本発明のインクは、含有する両性樹脂型分散剤(C)を形成するための、カルボキシル基を有する単量体をイオン化することで、顔料粒子の分散安定化を図ることができる。このために、塩基性化合物によってインク全体が中性又はアルカリ性に調整する。但し、アルカリ性が強過ぎると、インクジェット記録装置に使われている種々の部材の腐食の原因となる場合があるので、7〜10のpH範囲とするのが好ましい。この際に使用される塩基性化合物(pH調整剤)としては、下記のものが挙げられる。例えば、アンモニア水、ジメチルアミノエタノール、エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、アミンメチルプロパノール等の各種有機アミンや、水酸化ナトリウム、水酸化リチウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属の水酸化物等の無機アルカリ剤、有機酸や鉱酸等を使用することができる。塩基性化合物でpH調整することで、上記したような両性樹脂型分散剤(C)は、水性液媒体中に、分散又は溶解される。
次に、両性樹脂型分散剤(C)の製造方法について説明する。
両性樹脂型分散剤(C)は、通常のアクリルの溶液重合により得られる。しかしながら、このとき溶剤に溶解しており、水性媒体中に分散または溶解させるためには、以下の方法がある。
(1)一つ目の方法としては、水と共沸する溶剤中で重合し、その後、水とアミンを加えて中和し、水性化する。さらに、溶剤を水と共沸させ、溶媒は完全に水のみとする。
(2)二つ目の方法としては、最終的にインキに含まれる水溶性溶剤を合成溶媒として重合する。その後、水とアミンを加えて中和し水性化するが、溶剤は取り除くことをせず、そのまま後述のプレミキシング、分散処理を行う。
一つ目の方法の合成溶媒としては、水と共沸するものであれば良いが、両性樹脂型分散剤(C)に対し溶解性の高いものが良く、好ましくはエタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノールがあり、さらに好ましくは1−ブタノールがある。
1−ブタノールがあり、さらに好ましくは1−ブタノールがある。
二つ目の方法の合成溶媒としては、最終的にインキに含まれる水性溶媒であれば良いが、両性樹脂型分散剤(C)に対し溶解性の高いものが良く、好ましくはグリコールエーテル類、ジオール類、さらに好ましくは(ポリ)アルキレングリコールモノアルキルエーテル、炭素数3〜6のアルカンジオール類が良い。
次に、本発明のインクが何故、印字性に優れ、インクジェットノズルからの吐出安定性と保存安定性に優れるかを説明する。
まず印字性に優れる最大の理由は浸透性である。インクジェットインキではノズルを乾燥させるとインキを吐出することできなくなるため、保湿剤つまり高沸点の水溶性溶剤が必須である。しかしながら、高沸点の水溶性溶剤を含有すると、当然、乾燥は遅くなる。インクジェット専用基材に印字する場合なら、それでも十分に優れた印字性を得ることができる可能性があるが、一般の印刷基材である上質紙、コート紙(片面に20g/m程度塗
工した紙)、アート紙(片面に40g/m程度塗工した紙)や塩化ビニルシートに印字す
る場合、乾燥が遅く、これが印字したドットとドットがつながり起こる印字ムラの原因になることがある。特に、水や溶剤の吸収が乏しいコート紙、アート紙や塩化ビニルシートの場合は、この傾向が得に顕著である。そこで、基材への浸透性が高い溶剤を使用することで、乾燥性を高めることが重要となる。樹脂の合成溶媒として使用可能なグリコールエーテル類、ジオール類はその性質も合わせ持ち、中でも(ポリ)アルキレングリコールモノアルキルエーテル、炭素数3〜6のアルカンジオール類はその効果が非常に高い。これらは、インクジェットインキによく使用される溶剤であるグリセリンやジエチレングリコールなどに比べ、はるかに基材への浸透性が高い。つまり、これらの溶剤を使用することで、乾燥性が高くなり、印字ムラなどの問題が解消し、印字性が優れたものとなる
しかしながら、これらの溶剤には、顔料の分散性を低下させるという大きな問題がある。理由は定かではないが、これらの溶剤はグリセリンやジエチレングリコールに比べて、疎水性が高く、インキ中の溶媒の疎水性が高くなるために、顔料に吸着している分散樹脂が溶媒へ脱着しやすくなり、分散性が低下するものと考えられる。
特にインキの保存安定性では、これらの溶剤を使用すると、大きく増粘するもしくは分離する傾向にある。
そこで、分散樹脂の疎水性を高めることにより、分散性の低下を抑えることができる。すなわち、上記の浸透性の高い溶剤を使用することにより、水系であるとは言え、インキ中の溶媒の疎水性が高くなり、分散樹脂を溶解しやすくなることで、分散樹脂が顔料から溶媒へ脱着しやすく、分散性が低下するものと考えられる。この際、分散樹脂の疎水性を高めることで、溶媒への溶解性が低くなり、分散樹脂が顔料から溶媒へ脱着しにくくなる。
炭素数が10以上24以下のアルキル基の(メタ)アクリレートエステル(c4)を共重合することで、分散樹脂の疎水性が高くなり、分散性の低下を抑えることができる。
一方、分散樹脂の顔料への親和性を確保することで、分散樹脂の顔料への吸着を保持することができる。すなわち、分散樹脂の疎水性が高いだけでは、溶媒への脱着は抑えられても、それだけでは不十分であり、顔料への親和性を確保することで、顔料への吸着が保持できると考えられる。芳香環を有するエチレン性不飽和単量体(c1)を共重合することで、芳香環による顔料への親和性が確保でき、分散性をよりいっそう高めることができる。
また、上記、芳香環を有するエチレン性不飽和単量体(c1)の導入、炭素数が10以上24以下のアルキル基の(メタ)アクリレートエステル(c4)の導入だけでは、疎水性溶剤が増えた場合に、溶媒への脱着は抑えられても、それだけでは不十分である。
その場合にアミノ基を有するエチレン性不飽和単量体(c3)と酸性顔料誘導体(B)の酸塩基相互作用により顔料への吸着が保持できると考えられる。
分散樹脂に(メタ)アクリル酸を用いるのは、通常の分散樹脂と同様、イオン化した際の電荷反発のためである。顔料に吸着した分散樹脂が、(メタ)アクリル酸をイオン化した状態で有し、水性溶媒中で、顔料どうしの電荷反発が起こり、分散性が保たれるものと考えられる。
これらにより、浸透性の高い溶剤を多量に使用した場合においても印字性とノズルからの吐出性に優れ、浸透性の高い溶剤を多量に使用しても分散性が低下せず保存安定性に優れるインキを得ることができる。
本発明のインクにおいて、上記で説明した両性樹脂型分散剤(C)は、インクの全質量に対して、0.1質量%以上8質量%以下の範囲で含有させるのが好ましい。
本発明のインクにおいては、必要に応じて、ロジン、シェラック及びデンプン等の天然樹脂や、前記した両性樹脂型分散剤(C)でない合成樹脂も好ましく用いることができる。この場合の天然樹脂や合成樹脂は、前記した両性樹脂型分散剤(C)の添加量を上回らない程度に含有させることが好ましい。
本発明のインクは、上記で説明した本発明で規定する特定の両性樹脂型分散剤(C)や、必要に応じて添加する上記のような樹脂の他に、顔料(A)、酸性顔料誘導体(C)、水溶性溶剤、及び水を少なくとも含んでなるが、以下、これらの各成分について説明する。
<顔料(A)>
本発明のインクは、インクの全質量中に、質量比で、0.1質量%以上20質量%以下、より好ましくは0.1質量%以上12質量%以下の範囲で、顔料(A)を含有させたものであることが好ましい。本発明においては、下記に挙げるような顔料(A)を使用することができる。
先ず、本発明で使用することのできる黒色の顔料としては、ファーネス法、チャネル法で製造されたカーボンブラックが挙げられる。例えば、これらのカーボンブラックであって、一次粒子径が11〜40mμm(nm)、BET法による比表面積が50〜400m2/g、揮発分が0.5〜10質量%、pH値が2乃至10等の特性を有するものが好適である。このような特性を有する市販品としては下記のものが挙げられる。例えば、No.33、40、45、52、900、2200B、2300、MA7、MA8、MCF88(以上、三菱化学製)、RAVEN1255(コロンビアンカーボン製)、REGAL330R、400R、660R、MOGUL L、ELFTEX415(以上、キャボット製)、Nipex90、Nipex150T、Nipex 160IQ、Nipex 170IQ、Nipex 75、Printex 85、Printex 95、Printex 90、Printex 35、Printex U(以上、エボニックデグサ製)等があり、何れも好ましく使用することができる。
本発明で使用することのできるイエローの顔料としては、例えば、C.I.Pigment Yellow 1、2、3、12、13、14、16、17、20、24、74、83、86、93、94、95、109、110、117、120、125、128、137、138、139、147、148、150、151、154、155、166、168、180、185、213等が挙げられる。また、マゼンタの顔料としては、例えば、C.I.Pigment Red 5、7、9、12、31、48、49、52、53、57、97、112、122、147、149、150、168、177、178、179、202、206、207、209、238、242、254、255、269、C.I.Pigment Violet 19、23、29、30、37、40、50等が挙げられる。また、シアンの顔料としては、例えば、C.I.Pigment Blue 1、2、3、15:3、15:4、16、22、C.I.Vat Blue 4、6等が挙げられる。上記以外の色の顔料を用いることもでき、その場合も含め、何れの顔料も各色インクにおいて単独でも、2つ以上の顔料を混合してもよい。勿論、本発明は、これらに限られるものではない。また、以上の他、自己分散型顔料等、新たに製造された顔料も使用することが可能である。
<酸性誘導体(B)>
本発明で使用する酸性顔料誘導体(B)としては、酸性置換基を有する色素誘導体が挙げられる。本発明で使用することのできる酸性置換基を有する色素誘導体としては、下記一般式(1)、下記一般式(2)、及び下記一般式(3)で表される色素誘導体の群から選ばれる少なくとも一種類以上の色素誘導体を挙げることができる。酸性置換基を有する色素誘導体は、下記一般式(1)で表される電荷を有さない色素誘導体、並びに下記一般式(2)及び(3)で表される電荷を有する色素誘導体に分けられる。
一般式(1):
P−Z1
[一般式(1)中、Pは、アゾ系、ベンズイミダゾロン系、フタロシアニン系、キナクリドン系、アントラキノン系、ジオキサジン系、ジケトピロロピロール系、キノフタロン系、イソインドリノン系、イソインドリン系、ペリレン系、ペリノン系、フラバンスロン系、ピランスロン系、及びアンスラピリミジン系から選ばれる一種の有機色素残基であり、Z1は、スルホン酸基、又はカルボキシル基である。]
一般式(2):
(P−Z2)[N+(R1,R2,R3,R4)]
[一般式(2)中、Pは、アゾ系、ベンズイミダゾロン系、フタロシアニン系、キナクリドン系、アントラキノン系、ジオキサジン系、ジケトピロロピロール系、キノフタロン系、イソインドリノン系、イソインドリン系、ペリレン系、ペリノン系、フラバンスロン系、ピランスロン系、及びアンスラピリミジン系から選ばれる一種の有機色素残基であり、R1は、炭素数5〜20のアルキル基であり、R2,R3,及びR4は、それぞれ独立に、水素原子、又は炭素数1〜20のアルキル基であり、Z2は、SO3 -、又はCOO-である。]
一般式(3):
(P−Z2)M+
[一般式(3)中、Pは、アゾ系、ベンズイミダゾロン系、フタロシアニン系、キナクリドン系、アントラキノン系、ジオキサジン系、ジケトピロロピロール系、キノフタロン系、イソインドリノン系、イソインドリン系、ペリレン系、ペリノン系、フラバンスロン系、ピランスロン系、及びアンスラピリミジン系から選ばれる一種の有機色素残基であり、Mは、Na原子、又はK原子であり、Z2は、SO3 -、又はCOO-である。]
一般式(1)〜(3)で示される色素誘導体中のPは有機色素残基を示すが、オフセットインキ、グラビアインキ、カラーフィルタ用レジストインキ、インクジェットインキ、塗料、及び着色樹脂組成物に使用する顔料の化学構造と、上記有機色素残基の化学構造は必ずしも一致しなければいけないものではないが、最終的に製造されるインキ等の色相を考慮すれば、黄色系顔料の分散に使用する際には黄色系の顔料誘導体、赤系顔料の分散に使用する際には赤系の顔料誘導体、青系顔料の分散に使用する際には青系の顔料誘導体のように、分散する顔料の色相に近いもの、もしくは無色のものを使用した方が色相的に優れた顔料分散体を製造することができる。
後述する、本発明のインクジェットインキにおける酸性顔料誘導体の使用量は、顔料を基準として、1〜50重量%が好ましく、3〜30重量%がより好ましい。50重量%より多いとインキ塗膜の耐性が悪化する場合がある。
本発明のインクジェットインキは、両性樹脂型分散剤(C)を水性媒体中に溶解、あるいは懸濁させた後、この液中に顔料、及び必要に応じて一般式(1)〜(3)で示される色素誘導体を投入し、ハイスピードミキサー等で均一になるまで撹拌混合した後、横型サンドミル、縦型サンドミル、アニュラー型サンドミルといったビーズミルやロールミル、メディアレス分散機等の種々の分散機を用いて分散して製造することができる。また、色素誘導体は、顔料の製造時に添加することにより予め顔料を表面処理するための、処理剤として使用してもよい。
<水性媒体(水、有機溶剤)>
本発明のインクジェットインクを形成する場合に好適な水性媒体は、水及び有機溶剤の混合溶媒であるが、水としては、種々のイオンを含有する一般の水ではなく、イオン交換水(脱イオン水)を使用するのが好ましい。
水と混合して使用される有機溶剤としては、疎水性の高い、ジオールや、ジオールのメチルエーテルや、アルキレングリコールのモノエーテルや、アルキレングリコールのジエーテルなどが良い。中でも、(1)炭素数5〜8の1,2-ジオールや、(2)炭素数3〜6のジオールのモノメチルエーテルや、(3)エチレングリコール単位が1〜3のモノアルキルエーテルでアルキル鎖長が3〜8のポリエチレングリコールモノアルキルエーテルや、(4)プロピレングリコール単位が1〜3のモノアルキルエーテルでアルキル鎖長が1〜4のポリプロピレングリコールモノアルキルエーテルや、(5)エチレングリコール単位が3〜5のジアルキルエーテルでアルキル鎖長が1〜2のポリエチレングリコールジアルキルエーテルなどが効果的である。
先述したように、これらの溶剤は基材への浸透が非常に速い。コート紙、アート紙や塩化ビニルシートといった溶媒の吸収性の低い基材に対しても、浸透が速い。そのため、印字の際の乾燥が速く、正確な印字を実現することができる。また、沸点が高いため、保湿剤としての働きは十分である。
(1)炭素数5〜8の1,2-ジオールの具体例としては、1,2−ペンタンジオール、1, 2−ヘキサンジオール、1,2−ヘプタンジオール、1,2−オクタンジオールなどが あげられる。
また(2)炭素数3〜6のジオールのモノメチルエーテルの具体例としては、2-メトキシ-1-プロパノール、3-メトキシ-1-ブタノール、3-メトキシ-3-メチルブタノール 、1-メトキシ-2-ブタノール、2-メトキシ-1-ブタノール、3-メトキシ-3-メチル-1-ブタノール、などがあげられる。
また(3)エチレングリコール単位が1〜3のモノアルキルエーテルでアルキル鎖長が3〜8のポリエチレングリコールモノアルキルエーテルの具体例としては、エチレングリコールモノプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノプロピルエーテル、トリエチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノイソプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノイソプロピルエーテル、トリエチレングリコールモノイソプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノペンチルエーテル、ジエチレングリコールモノペンチルエーテル、トリエチレングリコールモノペンチルエーテル、エチレングリコールモノヘキシルエーテル、ジエチレングリコールモノヘキシルエーテル、トリエチレングリコールモノヘキシルエーテル、エチレングリコールモノ2エチルヘキシルエーテル、ジエチレングリコールモノ2エチルヘキシルエーテル、トリエチレングリコールモノ2エチルヘキシルエーテルなどがあげられる。
また(4)プロピレングリコール単位が1〜3のモノアルキルエーテルでアルキル鎖長が1〜4のポリプロピレングリコールモノアルキルエーテルの具体例としては、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、トリプロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノプロピルエーテル、トリプロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノブチルエーテル、トリプロピレングリコールモノブチルエーテルなどがあげられる。
また(5)エチレングリコール単位が3〜5のジアルキルエーテルでアルキル鎖長が1〜2のポリエチレングリコールジアルキルエーテルの具体例としては、トリエチレングリコールジメチルエーテル、テトラエチレングリコールジメチルエーテル、ペンタエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールジエチルエーテル、テトラエチレングリコールジエチルエーテル、ペンタエチレングリコールジエチルエーテル、トリエチレングリコールメチルエチルエーテル、テトラエチレングリコールメチルエチルエーテル、ペンタエチレングリコールメチルエチルエーテルなどがあげられる。
この中でも効果が高いものは、1,2−ペンタンジオール、1,2−ヘキサンジオール、メトキシブタノール、ソルフィット、ジエチレングリコールモノイソプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノヘキシルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、テトラエチレングリコールジメチルエーテルである。
これらの有機溶剤は単独で使用しても良く、複数を混合して使用することもできるが、前述のコート紙、アート紙や塩化ビニルシートなどに対して、より高い浸透性を付与するために、上記したような有機溶剤の総量としてのインク中における含有量が、インクの全質量の10質量%以上50質量%以下の範囲であることが好ましく、より好ましくは15質量%以上40質量%以下の範囲である。
また、水の含有量としては、インクの全質量の10質量%以上90質量%以下であり、好ましくは、30質量%以上80質量%以下、さらに好ましくは40質量%以上70質量%以下の範囲である。
また、これらの有機溶剤のうち、ジエチレングリコールモノヘキシルエーテルの効果は最も高く、上記有機溶剤のうち、ジエチレングリコールモノヘキシルエーテルをインキ中における含有量として、インクの全質量の2質量%以上10質量%以下の範囲で含むことが好ましく、より好ましくは3質量%以上7質量%以下の範囲である。
また印刷する基材の種類によっては、その溶解性の向上を目的に、2−ピロリドン、N−メチルピロリドン、N−エチルピロリドン、N−メチルオキサゾリジノン、N−エチルオキサゾリジノンなどの水溶性の含窒素複素環化合物を添加することもできる。
<その他の成分>
(水性エマルジョン)
さらに、本発明のインクは、水性のエマルジョンを含有することが好ましい。水性のエマルジョンを含有することで、粘度はあまり上昇させずに、印字した塗膜の耐性を向上させることができる。これにより、耐水性、耐溶剤性、耐擦過性などが向上する。水溶性の樹脂を添加しても、ある程度耐性の向上は期待できるが、粘度が上昇してしまう傾向にある。インクジェットインクの場合、ノズルからインクを吐出できる粘度にはある範囲があり、あまり粘度が高いとインクを吐出することができなくなることがあるため、粘度の上昇を抑えることは重要である。
上記したような水性のエマルジョンのインク中における含有量は、固形分で、インクの全質量の2質量%以上30質量%以下の範囲であり、より好ましくは、3質量%以上20質量%以下の範囲である。
(添加剤)
また、本発明のインクは、上記の成分の他に、必要に応じて所望の物性値を持つインクとするために、界面活性剤、消泡剤、防腐剤等の添加剤を適宜に添加することができる。これらの添加剤の添加量の例としては、インクの全質量に対して、0.05質量%以上10質量%以下、好ましくは0.2質量%以上5質量%以下が好適である。
<インクジェットインクの製造>
上記したような成分からなる本発明のインクの製造方法としては、下記のような方法が挙げられるが、本発明は、これらに限定されるものではない。先ず初めに、両性樹脂型分散剤(C)と、水とが少なくとも混合された水性媒体に顔料を添加し、混合撹拌した後、後述の分散手段を用いて分散処理を行い、必要に応じて遠心分離処理を行って所望の顔料分散液を得る。次に、必要に応じてこの顔料分散液に、水溶性溶剤、或いは、上記で挙げたような適宜に選択された添加剤成分を加え、撹拌、必要に応じて濾過して本発明のインクとする。
顔料インクの作製方法においては、上記で述べたように、インクの調製に分散処理を行って得られる顔料分散液を使用するが、顔料分散液の調製の際に行う分散処理の前に、プレミキシングを行うのが効果的である。即ち、プレミキシングは、少なくとも両性樹脂型分散剤(C)と水とが混合された水性媒体に顔料を加えて行えばよい。このようなプレミキシング操作は、顔料表面の濡れ性を改善し、顔料表面への分散剤の吸着を促進することができるため、好ましい。
上記した顔料の分散処理の際に使用される分散機は、一般に使用される分散機なら、如何なるものでもよいが、例えば、ボールミル、ロールミル、サンドミル、ビーズミル及びナノマイザー等が挙げられる。その中でも、ビーズミルが好ましく使用される。このようなものとしては、例えば、スーパーミル、サンドグラインダー、アジテータミル、グレンミル、ダイノーミル、パールミル及びコボルミル(何れも商品名)等が挙げられる。
さらに、上記した顔料のプレミキシング及び分散処理において、両性樹脂型分散剤(C)は水のみに溶解もしくは分散した場合であっても、水溶性溶剤と水の混合溶媒に溶解もしくは分散した場合であっても良い。特に分散処理においては、先述したように両性樹脂型分散剤(C)の合成溶媒とした水溶性溶剤と水の混合溶媒に、両性樹脂型分散剤(C)が溶解もしくは分散している場合の方が、分散処理過程で安定な分散体を得ることができる場合がある。
本発明のインクは、インクジェット記録用であるので、顔料としては、最適な粒度分布を有するものを用いることが好ましい。即ち、顔料粒子を含有するインクをインクジェット記録方法に好適に使用できるようにするためには、ノズルの耐目詰り性等の要請から、最適な粒度分布を有する顔料を用いることが好ましい。所望の粒度分布を有する顔料を得る方法としては、下記の方法が挙げられる。先に挙げたような分散機の粉砕メディアのサイズを小さくすること、粉砕メディアの充填率を大きくすること、処理時間を長くすること、粉砕後フィルタや遠心分離機等で分級すること、及びこれらの手法の組み合わせ等の手法がある。
以下に、本発明を実施例に基づいて説明するが、本発明はこれによって限定されるものではない。なお、実施例中、「部」および「%」は、「重量部」および「重量%」をそれぞれ表す。また、顔料の平均一次粒子径、および樹脂の重量平均分子量(Mw)は以下の通りである。
(樹脂の重量平均分子量(Mw))
樹脂の重量平均分子量(Mw)は、TSKgelカラム(東ソー社製)を用い、RI検出器を装備したGPC(東ソー社製、HLC−8120GPC)で、展開溶媒にTHFを用いて測定したポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)である。
続いて、実施例および比較例で用いた樹脂型分散剤、エマルションの製造方法について説明する。
<樹脂型分散剤の製造方法>
(合成例1)
ガス導入管、温度計、コンデンサー、攪拌機を備えた反応容器に、ブチルジグリコール100.0部を仕込み、窒素ガスで置換した。反応容器内を110℃に加熱して、スチレン30.0部、アクリル酸30.0部、ラウリルメタクリレート30.0部、ジメチルアミノエチルメタクリレート10.0部、およびV−601(和光純薬製)6.0部の混合物を2時間かけて滴下し、重合反応を行った。滴下終了後、さらに110℃で3時間反応させた後、V−601(和光純薬製)0.6部を添加し、さらに110℃で1時間反応を続けて、重量平均分子量は約2万、酸価は200(mgKOH/g)の共重合体1溶液を得た。
さらに、室温まで冷却した後、ジメチルアミノエタノール37.1部添加し中和した。これは、アクリル酸を100%中和する量である。さらに、水を174.4部添加して、不揮発分24%の両性樹脂型分散剤(C−1)の水溶液ないし水性分散体を得た。
(合成例2〜19)
表1に示す配合組成で、合成例1と同様の方法で合成し、合成例2〜19の樹脂型分散剤を得た。
Figure 0005939150
表1中の略称を以下に示す。
St:スチレン
BzMA:ベンジルメタクリレート
AA:アクリル酸
MAA:メタクリル酸
DM:ジメチルアミノエチルメタクリレート
LMA:ラウリルメタクリレート
STMA:ステアリルメタクリレート
VA:ベヘニルアクリレート
HEA:ヒドロキシエチルアクリレート
BA:ブチルアクリレート
2HEA:2-エチルヘキシルアクリレート
V−601:和光純薬製
DMAE:ジメチルアミノエタノール
<顔料分散体の製造方法>
(顔料分散体(D−1)の製造)
下記の組成の混合物を均一になるようにディスパーで予備分散した後、直径0.5mmジルコニアビーズ1800gを充填した容積0.6Lのダイノーミルを用いて2時間本分散を行い、顔料分散体(D−1)を得た。
青顔料(Pigment Blue 15:4) 19.0部
青色誘導体 1.0部
下記一般式(6)に示す青色色素誘導体
一般式(6):
P−[SO3H・H2N (CH211 CH3
(一般式(6)中、Pは、銅フタロシアニン残基である。)
樹脂型分散剤(C−1) 24.7部
水 55.3部
(顔料分散体(D−2〜40)の製造)
顔料、酸性顔料誘導体、および分散剤の種類と質量比率を表2に記載したように変更する以外は、顔料分散体(D−1)と同様にして、顔料分散体(D−2〜40)を得た。
Figure 0005939150
表2中の略称を以下に示す。
赤顔料:Pigment Red 122
赤色誘導体::下記一般式(7)に示す赤色色素誘導体
一般式(7):
Q−(SO3H)
(一般式(7)中、Qは、キナクリドン残基である。)
<インクジェットインクの製造方法>
[実施例1]
(インクジェットインク(J−1)の製造)
下記の組成の混合物を均一になるようにディスパーで攪拌混合し、インクジェットインク(J−1)を得た。
顔料分散体(D−1) 25.0部
イソプロピルジグリコール 30.0部
水 45.0部
このとき、インキ100部の中に、顔料4.9部、顔料誘導体0.1部、分散樹脂1.5部が含まれている。
[実施例2〜70、比較例1〜16]
(インクジェットインク(J−2〜86)の製造)
顔料分散体の種類と配合量を表3に記載したように変更する以外は、実施例1と同様にして、インクジェットインク(J−2〜86)を得た。
Figure 0005939150
表3中の略称を以下に示す。
DEG:ジエチレングリコール
iPDG:イソプロピルジグリコール
BDG:ブチルジグリコール
MB:3−メトキシ-1-ブタノール
MMB:3-メトキシ-3-メチル-1-ブタノール
MFG:メチルプロピレングリコール
MFDG:メチルプロピレンジグリコール
PFG:プロピルプロピレングリコール
BFG:ブチルプロピレングリコール
HeDG:ヘキシルジグリコール、(ジエチレングリコールモノヘキシルエーテル)
1.2-HD:1-2ヘキサンジオール
DMTeG:テトラエチレングリコールジメチルエーテル
<インクジェットインクの評価>
得られたインクジェットインク(J−1〜86)の経時保存安定性、印字性評価、乾燥流動性の評価を下記方法で行った。表4に評価結果を示す。
(インクの経時保存安定性)
インキを70℃の恒温機に1週間保存、経時促進させた後、経時前後でのインキの粘度変化について測定した。70℃1週間保存前後の粘度の変化率が±10%未満なら○、±10%以上±20%未満であれば△、±20%以上であれば×とした。
(インクの印字性評価(印刷評価))
インキをインクジェットプリンター(エプソン社製「PM−750C」)のカートリッジに詰めて、コート紙(王子製紙製OKトップコート+、米坪104.7g/m)に印刷
した。印刷したサンプルをルーペで観察し、ドットのつながりや色のムラなどを評価した。印刷品質が非常に良好なものは◎、良好なものは○、ある程度良好なものは△、良好でないものは×とした。
(インクの乾燥流動性評価)
インキを金属製の容器に、蓋をせずに10g充填し、25℃かつ湿度50%の条件下で24時間放置した。放置後のインキについて目視で流動性を確認できれば○、インキが固体となって流動性が消失していれば×とした。
Figure 0005939150



Claims (10)

  1. 顔料(A)、酸性顔料誘導体(B)、水、有機溶剤、および両性樹脂型分散剤(C)を含有する、インクジェット用顔料インキであって、
    両性樹脂型分散剤(C)が、下記単量体を共重合してなる共重合体中のカルボキシル基の少なくとも一部を塩基性化合物で中和してなることを特徴とするインクジェット用顔料インキ。
    芳香環を有するエチレン性不飽和単量体(c1):5〜70重量%
    カルボキシル基を有するエチレン性不飽和単量体(c2):5〜60重量%
    アミノ基を有するエチレン性不飽和単量体(c3):5〜80重量%
    炭素数が10以上24以下のアルキル基の(メタ)アクリレートエステル(c4):5〜80重量%
  2. 有機溶剤が、(1)炭素数5〜8の1,2-ジオール、(2)炭素数3〜6のジオールのモノメチルエーテル、(3)エチレングリコール単位が1〜3のモノアルキルエーテルでアルキル鎖長が3〜8のポリエチレングリコールモノアルキルエーテル、(4)プロピレングリコール単位が1〜3のモノアルキルエーテルでアルキル鎖長が1〜4のポリプロピレングリコールモノアルキルエーテル、および(5)エチレングリコール単位が3〜5のジアルキルエーテルでアルキル鎖長が1〜2のポリエチレングリコールジアルキルエーテルからなる群から選ばれる少なくとも1種を含み、かつ
    上記有機溶剤が、インクジェット用顔料インキ中に、インクジェット用顔料インキ全体に対して15重量%以上含有されていることを特徴とする請求項1記載のインクジェット用顔料インキ。
  3. 有機溶剤が、インクジェット用顔料インキ全体に対して、ジエチレングリコールモノヘキシルエーテルを3重量%以上含むことを特徴とする請求項1または2記載のインクジェット用顔料インキ。
  4. 両性樹脂型分散剤(C)の酸価が、30mgKOH/g以上450mgKOH/g以下であることを特徴とする請求項1〜3いずれか記載のインクジェット用顔料インキ。
  5. エチレン性不飽和単量体(c4)が、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、ベヘニル(メタ)アクリレートからなる群から選ばれる少なくとも一種を含むことを特徴とする請求項1〜4いずれか記載のインクジェット用顔料インキ。
  6. 芳香環を有するエチレン性不飽和単量体(c1)が、スチレンであることを特徴とする請求項1〜5いずれか記載のインクジェット用顔料インキ。
  7. エチレン性不飽和単量体(c3)が、メタクリル酸2-ジメチルアミノエチルであることを特徴とする請求項1〜6いずれか記載のインクジェット用顔料インキ。
  8. 酸性顔料誘導体(B)が、下記一般式(1)、下記一般式(2)、及び下記一般式(3)で表される酸性置換基を有する色素誘導体の群から選ばれる少なくとも一種類以上の色素誘導体を含むことを特徴とする請求項1〜7いずれか記載のインクジェット用顔料インキ。
    一般式(1):
    P−Z1
    (一般式(1)中、Pは、アゾ系、ベンズイミダゾロン系、フタロシアニン系、キナクリドン系、アントラキノン系、ジオキサジン系、ジケトピロロピロール系、キノフタロン系、イソインドリノン系、イソインドリン系、ペリレン系、ペリノン系、フラバンスロン系、ピランスロン系、及びアンスラピリミジン系から選ばれる一種の有機色素残基であり、Z1は、スルホン酸基、又はカルボキシル基である。)
    一般式(2):
    (P−Z2)[N+(R1,R2,R3,R4)]
    (一般式(2)中、Pは、アゾ系、ベンズイミダゾロン系、フタロシアニン系、キナクリドン系、アントラキノン系、ジオキサジン系、ジケトピロロピロール系、キノフタロン系、イソインドリノン系、イソインドリン系、ペリレン系、ペリノン系、フラバンスロン系、ピランスロン系、及びアンスラピリミジン系から選ばれる一種の有機色素残基であり、R1は、炭素数5〜20のアルキル基であり、R2,R3,及びR4は、それぞれ独立に、水素原子、又は炭素数1〜20のアルキル基であり、Z2は、SO3 -又はCOO-である。)
    一般式(3):
    (P−Z2)M+
    (一般式(3)中、Pは、アゾ系、ベンズイミダゾロン系、フタロシアニン系、キナクリドン系、アントラキノン系、ジオキサジン系、ジケトピロロピロール系、キノフタロン系、イソインドリノン系、イソインドリン系、ペリレン系、ペリノン系、フラバンスロン系、ピランスロン系、及びアンスラピリミジン系から選ばれる一種の有機色素残基であり、Mは、Na原子、又はK原子であり、Z2は、SO3 -、又はCOO-である。)
  9. 請求項1〜8いずれか1項に記載のインクジェット用顔料インキを含む、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラックのインクセット。
  10. 請求項1〜8いずれか1項に記載のインクジェット用顔料インキを印刷してなる印刷物。



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