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JP5774388B2 - 二次電池の充電方法、充電制御装置及びパック電池 - Google Patents

二次電池の充電方法、充電制御装置及びパック電池 Download PDF

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Description

本発明は、二次電池を所定の設定電流で充電する方法、充電制御装置及び該充電制御装置を備えるパック電池に関する。
リチウムイオン電池に代表される二次電池の充電では、二次電池に許容される最大電流及び最大電圧(過充電を防止するための保護電圧)の範囲内で設定された設定電流及び設定電圧に基づいて充電が行われる。従来、この種の充電制御方法については様々な技術が提案されているが、電池電圧が設定電圧に達するまでは設定電流にて定電流充電し、その後設定電圧にて定電圧充電を行う、いわゆる定電流・定電圧充電方式が主流となっている。
ところで、二次電池は少なからず内部抵抗を有しており、充電時に設定電流が流入することによって内部抵抗に生じる電圧上昇分の電圧が、正味の電池電圧に加わって電池電圧として検出される。このとき、測定される電池の電圧は、充電時は上昇、放電時は降下する。このように検出された電池電圧が最大許容電圧を超えるのを防止するため、充放電されていない時の電池電圧の高/低に応じて充電開始時の設定電流を小/大に変更することが好ましい。この内部抵抗は、電池温度の高/低に応じて小/大に変化することが知られている。このような点を考慮して、特許文献1では、電池電圧及び電池温度の高/低に応じて充電開始時の設定電流を最適化する技術が開示されている(例えば特許文献1の表1参照)。
一方、二次電池の劣化に伴って上述した内部抵抗が増大するため、充電開始時の設定電流は、比較的使用期間が短い標準的な二次電池を想定した場合に流せる最大電流よりも一般的に小さい値に設定される。複数の単電池(セル)を直列に接続した組電池については、充放電を繰り返すことによって各セル電圧にアンバランスが生じた場合であっても、最大セル電圧が最大許容電圧を超えるのを防止するために、充電開始時の設定電流が更に小さい値に設定される。
組電池では、また、充電が開始された後にも最大セル電圧に応じて設定電圧及び設定電流が更新されることがある。例えば特許文献1では、最大セル電圧が設定電圧を超える都度、設定電圧及び/又は設定電流を低減して充電を継続することにより、各セル電圧にアンバランスが生じた組電池の充電容量(実質容量)の減少を抑制する技術が開示されている。
特開2009−44946号公報
しかしながら、特許文献1に開示された技術により、充電開始時の設定電流を標準的な二次電池の場合に流せる最大電流より小さい値にしたときは、二次電池が満充電に至るまでの時間が長くなることが避けられず、二次電池が組電池の場合はその傾向が更に助長されて充電時間の短縮化の要望に逆行する結果となる。
本発明は斯かる事情に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、電池電圧が最大許容電圧を超えない範囲で、設定電流を速やかに増大させることにより短時間で充電完了することが可能な二次電池の充電方法、充電制御装置及び該充電制御装置を備えるパック電池を提供することにある。
本発明に係る二次電池の充電方法は、二次電池の電圧を時系列的に検出し、前記二次電
池を所定の設定電流で充電する方法において、検出した電圧が、前記二次電池を過充電から保護するための保護電圧より低い所定電圧以下であるか否かを判定し、以下であると判定する状態が時間t1以上継続するか否かを判定し、継続すると判定した場合、前記設定電流を増加させ、検出した電圧が前記保護電圧より低く、且つ前記所定電圧より高い第2の電圧以上であるか否かを判定し、以上であると判定する状態が時間t2以上継続するか否かを判定し、継続すると判定した場合、前記設定電流を低減させることを特徴とする。
本発明に係る二次電池の充電方法は、前記二次電池の充電電流を時系列的に検出し、検出した電圧が前記第2の電圧以上であると判定した場合、検出した充電電流が所定電流より少ないか否かを判定し、少ないと判定する状態が時間t3以上継続するか否かを判定し、継続すると判定した場合、前記二次電池が満充電状態にあることを検出することを特徴とする。
本発明に係る二次電池の充電方法は、検出した電圧が前記保護電圧より高いか否かを判定し、高いと判定する状態が時間t4(t4<t1)以上継続するか否かを判定し、継続すると判定した場合、前記二次電池が過充電状態にあることを検出することを特徴する。
本発明に係る充電制御装置は、二次電池の電圧を時系列的に検出し、前記二次電池を所定の設定電流で充電させる充電制御装置において、検出した電圧が前記二次電池を過充電から保護するための保護電圧より低い所定電圧以下であるか否かを判定する第1判定手段と、該第1判定手段が以下であると判定する状態が時間t1以上継続するか否かを判定する第2判定手段と、該第2判定手段が継続すると判定した場合、前記設定電流を増加させる増加手段と、検出した電圧が前記保護電圧より低く、且つ前記所定電圧より高い第2の電圧以上であるか否かを判定する第3判定手段と、該第3判定手段が以上であると判定する状態が時間t2以上継続するか否かを判定する第4判定手段と、該第4判定手段が継続すると判定した場合、前記設定電流を低減させる低減手段とを備えることを特徴とする。
本発明に係るパック電池は、上述の充電制御装置と、該充電制御装置が増加させた設定電流で充電される1又は複数の二次電池とを備えることを特徴とする。
本発明にあっては、時系列的に検出した二次電池の電圧が、二次電池を過充電から保護するための保護電圧より低い所定電圧以下である状態が、時間t1以上継続する場合、二次電池を充電するための設定電流を増加させる。
このため、設定電流の増加幅と設定電流を増加させる時間間隔とを適当に定めることにより、二次電池の電圧が、所定電圧を多少上回ることはあっても保護電圧までは上昇しないようにすることができる。
本発明にあっては、時系列的に検出した二次電池の電圧が、保護電圧より低く、且つ所定電圧より高い第2の電圧以上である状態が、時間t2以上継続する場合、二次電池を充電するための設定電流を低減させる。
これにより、定電流充電に準じた充電を行いながら、満充電に向けて設定電流を低減させることができる。
本発明にあっては、時系列的に検出した二次電池の電圧が第2の電圧以上であり、且つ、時系列的に検出した充電電流が所定電流より少ない状態が時間t3以上継続する場合、二次電池が満充電状態にあることを検出する。
これにより、充電末期に減少する充電電流の変化を捉えることにより、満充電状態が検出される。
本発明にあっては、時系列的に検出した二次電池の電圧が保護電圧より高い状態が、時間t4以上継続する場合、二次電池が過充電状態にあることを検出する。この場合、上述した時間t1より時間t4の方が短いため、設定電流を増加させる条件が整う前に、二次電池の電圧が保護電圧より高くなったことが検出される。
これにより、二次電池の電圧が例えば最大許容電圧を超えたことが確実に検出される。
本発明にあっては、上述の充電制御装置が増加させた設定電流によって、1又は複数の二次電池が充電される。
これにより、二次電池の電圧が、所定電圧を多少上回ることはあっても保護電圧までは上昇しないようにすることが可能な充電制御装置が、パック電池に適用される。
本発明によれば、設定電流の増加幅と設定電流を増加させる時間間隔とを適当に定めることにより、二次電池の電圧が、所定電圧を多少上回ることはあっても保護電圧までは上昇しないようにすることができる。
従って、設定電流の増加幅を適当に大きくするか、又は設定電流を増加させる時間間隔を適当に短くすることにより、電池電圧が最大許容電圧を超えない範囲で、設定電流を速やかに増大させることが可能となる。よって、充電時間を短くすることができる。
本発明に係るパック電池の構成例を示すブロック図である。 Aは本発明の比較例に係るパック電池の最大セル電圧の時間変化を模式的に示す説明図、Bは比較例に係る設定電流の低減例を示す説明図である。 Aは本発明に係るパック電池の最大セル電圧の時間変化を模式的に示す説明図、Bは設定電流の増減例を示す説明図、Cは設定電流に応じて増減する充電電流の例を示す説明図である。 本発明に係るパック電池で設定電流を1段階ずつ増加及び減少させるCPUの処理手順を示すフローチャートである。
以下、本発明をその実施の形態を示す図面に基づいて詳述する。
図1は、本発明に係るパック電池の構成例を示すブロック図である。図中10はパック電池であり、パック電池10は、パーソナルコンピュータ(PC)、携帯端末等の電気機器20に着脱可能に装着される。パック電池10は、例えばリチウムイオン電池からなる電池セル111,112,113,121,122,123,131,132,133を3個ずつ順に並列接続してなる電池ブロック11,12,13を、この順番に直列接続してなる二次電池1を備える。二次電池1は、電池ブロック13の正極及び電池ブロック11の負極が夫々正極端子及び負極端子となるようにしてある。
電池ブロック11,12,13の電圧は、夫々独立してA/D変換部4のアナログ入力端子に与えられ、デジタルの電圧値に変換されてA/D変換部4のデジタル出力端子から、マイクロコンピュータからなる制御部5に与えられる。A/D変換部4のアナログ入力端子には、二次電池1に密接して配置されており、サーミスタを含む回路によって二次電池1の電池温度を検出する温度検出器3の検出出力と、二次電池1の負極端子側の充放電路に介装されており、二次電池1の充電電流及び放電電流を検出する抵抗器からなる電流検出器2の検出出力とが与えられている。これらの検出出力は、デジタルの検出値に変換されてA/D変換部4のデジタル出力端子から制御部5に与えられる。
二次電池1の正極端子側の充放電路には、充電電流及び放電電流を夫々遮断するPチャネル型のMOSFET71,72からなる遮断器7が介装されている。MOSFET71,72は、ドレイン電極同士を突き合わせて直列に接続してある。MOSFET71,72夫々のドレイン電極及びソース電極間に並列接続されているダイオードは、寄生ダイオード(ボディダイオード)である。
制御部5は、CPU51を有し、CPU51は、プログラム等の情報を記憶するROM52、一時的に発生した情報を記憶するRAM53、各種時間を並列的に計時するタイマ54、及びパック電池10内の各部に対して入出力を行うI/Oポート55と互いにバス接続されている。I/Oポート55は、A/D変換部4のデジタル出力端子、MOSFET71,72夫々のゲート電極、及び通信部9に接続されている。通信部9は、電気機器20が有する制御・電源部(充電部)21と通信する。ROM52は、EEPROM(Electrically Erasable Programmable ROM )又はフラッシュメモリからなる不揮発性メモリである。ROM52には、プログラムの他に、電池容量の学習値、充放電のサイクル数、設定電圧、設定電流及び各種設定データが記憶される。尚、A/D変換部4、制御部5、通信部9及び電流検出器2が充電制御装置を構成する。
CPU51は、ROM52に予め格納されている制御プログラムに従って、演算及び入出力等の処理を実行する。例えば、CPU51は、250ms周期で電池ブロック11,12,13の電圧値と、二次電池1の充放電電流の検出値とを取り込み、取り込んだ電圧値及び検出値に基づいて二次電池1の残容量を積算してRAM53に記憶させる。更に、CPU51は、取り込んだ電池ブロック11,12,13の電圧値のうち最も高い電圧(以下、最大セル電圧という)を特定してRAM53に記憶する。電圧値及び充放電電流の検出値の取り込み周期は250msに限定されない。CPU51は、また、残容量のデータを生成し、生成したデータを通信部9の図示しないレジスタに書き込むことによって、残容量のデータを通信部9から出力する。
遮断器7は、通常の充放電時にI/Oポート55からMOSFET71,72のゲート電極にL(ロウ)レベルのオン信号が与えられることにより、MOSFET71,72夫々のドレイン電極及びソース電極間が導通するようになっている。二次電池1の充電電流を遮断する場合、I/Oポート55からMOSFET71のゲート電極にH(ハイ)レベルのオフ信号が与えられることにより、MOSFET71のドレイン電極及びソース電極間の導通が遮断される。同様に二次電池1の放電電流を遮断する場合、I/Oポート55からMOSFET72のゲート電極にH(ハイ)レベルのオフ信号が与えられることにより、MOSFET72のドレイン電極及びソース電極間の導通が遮断される。二次電池1が適当に充電された状態にある場合、遮断器7のMOSFET71,72は共にオンしており、二次電池1は放電及び充電が可能な状態となっている。
電気機器20は、制御・電源部21に接続された端末部22を備える。制御・電源部21は、図示しない商用電源より電力を供給されて端末部22を駆動すると共に、二次電池1の充放電路に充電電流を供給する。制御・電源部21は、また、商用電源から電力の供給が絶たれた場合、二次電池1の充放電路から供給される放電電流により、端末部22を駆動する。制御・電源部21が充電する二次電池1がリチウムイオン電池の場合は、例えば、定電流(MAX電流0.5〜1C程度)・定電圧(MAX4.2〜4.4V/電池セル程度)充電が行われる。二次電池1の電池電圧が満充電検出開始電圧以上、且つ充電電流が所定値以下の状態が一定時間以上継続したときに、二次電池1が満充電状態とされる。
制御・電源部21及び通信部9間では、制御・電源部21をマスタに、通信部9を含む制御部5をスレーブにしてSMBus(System Management Bus )方式等の通信方式による通信が行われる。SMBus方式の場合、シリアルクロック(SCL)は制御・電源部21から供給され、シリアルデータ(SDA)は制御・電源部21及び通信部9間で双方向に授受される。本実施の形態では、制御・電源部21が通信部9を2秒周期でポーリングして通信部9の前記レジスタの内容を読み出す。ポーリング周期の2秒は、制御・電源部21側の設定による。このポーリングにより、例えば、二次電池1の残容量のデータが、通信部9を介して制御・電源部21に2秒周期で受け渡され、電気機器20が有する図示しない表示器に残容量の値(%)として表示される。
さて、制御部5にて設定された充電電流の目標値、即ち設定電流のデータは、残容量のデータと同様に通信部9を介して制御・電源部21に送信される。制御・電源部21では、制御部5から送信された設定電流に基づいて、二次電池1を定電流充電する。制御・電源部21では、上述したポーリングで2回連続して受信したデータが一致したときにデータを受け付けるため、制御部5にて設定された設定電流が制御・電源部21で受け付けられて充電電流に反映されるまでには、2秒から4秒(2秒×2)の時間遅れが生じる。実際にはこの遅れに制御・電源部21内部での遅れが加わって、トータルでは最大5〜6秒程度の遅れになる。
以下では、パック電池10が備える二次電池1を、設定電流を増減させて充電する方法について説明する。
図2のAは本発明の比較例に係るパック電池10の最大セル電圧の時間変化を模式的に示す説明図、Bは比較例に係る設定電流の低減例を示す説明図である。図中の縦軸は最大セル電圧(mV)及び設定電流(mA)を表し、横軸は時間(t)を表す。ここで、「C」は放電時間率であり、例えば0.5Cとは、電池ブロック11,12,13の各容量(mAh)に相当する電気量を2(=1÷0.5)時間で供給し得る電流値(mA)を意味する。また、設定電流とは、充電電流の最大値がその値を超えないように制御されるような「最大の設定電流」を意味する(以下、単に設定電流という)。
図2Aにおいて4370mVは充電電圧であり、4220mVは電池電圧が超えてはならないとされる保護電圧である。また、4200mVは設定電流を低減させる契機となる電圧(以下、閾値電圧という)である。前述したように、最大セル電圧は250ms周期(図の縦の破線の間隔に相当)で特定されてRAM53に記憶される。また、縦の破線の夫々が、最大セル電圧に基づく判定が行われるタイミングを表し、時刻T1〜T2,T3〜T4,T5〜T6,T7〜T8夫々の時間間隔は500ms(250ms×2)である。
図2A及びBに示す比較例では、二次電池1の最大セル電圧及び電池温度に応じた設定電流で二次電池1の充電を開始し、検出した最大セル電圧に応じて設定電流を低減させる。充電開始時の設定電流は、最大セル電圧の高/低に応じて小/大となるようにし、電池温度の高/低に応じて大/小となるようにする。最大セル電圧は、二次電池1が充電されていないときの最大セル電圧であるが、二次電池1の放電中には、二次電池1の内部抵抗に生じた電圧降下が減算された最大セル電圧が、実際の最大セル電圧より低く特定される。このための弊害が生じる一例を挙げると、電気機器(PC)20が、二次電池1から放電された電流で駆動されているときに、制御・電源部21に図示しない充電アダプターを接続して、急に充電を開始させるとき等においては、放電中の二次電池1が充電に切り替えられる。この場合、測定、演算等のタイミングによっては、放電中の最大セル電圧が、充電開始時の最大セル電圧として検出され、その結果によって充電電流が設定されることがあり、好ましい設定電流よりも大きい設定電流にて充電が開始される結果、最大セル電圧が保護電圧を超えることがある。
例えば、時刻T2に至るまで250ms周期で更新されていた最大セル電圧が、時刻T2にて3回連続で閾値電圧(4200mV)を超えたと判定された場合に、最大セル電圧が閾値電圧を超えたことが検出される。同様に、時刻T2に至るまで250ms周期で更新されていた最大セル電圧が、時刻T2にて2回連続で保護電圧を超えたと判定された場合に、最大セル電圧が保護電圧(4220mV)を超えたことが検出される。本比較例では、最大セル電圧が保護電圧及び閾値電圧を超えるときの検出が競合する場合は、保護電圧を超えることが先に検出される。
尚、充電初期に時刻T2にて2回連続で保護電圧を超えたと判定されても、後述するように充電が停止されないのは、上述のように、放電中の二次電池1が充電に切り替えられた場合、測定、演算等のタイミングで放電中の最大セル電圧を、充電するときの最大セル電圧として充電電流を設定することがあり、好ましい設定電流よりも大きい設定電流にて充電が開始される結果、最大セル電圧が保護電圧を超える場合があることが考慮されているからである。
時刻T2で最大セル電圧が保護電圧を超えたことが検出された場合、本比較例では、設定電流を無条件に0.1Cに低減させる。これにより、以後充電を継続させても最大セル電圧ができるだけ保護電圧を超えないようにする。その後、設定電流が0.1Cに低減された充電を継続中に、時刻T4,T6において最大セル電圧が閾値電圧(4200mV)を超えたことが検出された場合は、二次電池1の実質容量を増大させるために、設定電流を更に低減させて充電を継続させる。低減率は、例えば0.9(倍)とされる。設定電流が0.1Cより低減された充電を継続中に、時刻T8において最大セル電圧が、再び保護電圧を超えたことが検出された場合は、強制的に充電が停止される。
以上のように、本比較例では、充電の全期間を通じて最大の設定電流で充電を開始するため、充電中の設定電流を低減させる前に、最大セル電圧が保護電圧を超える場合があり、充電開始時の設定電流を小さくすると、充電に要する時間が長くなる傾向がある。また、充電開始時の設定電流を、最大セル電圧及び電池温度に応じて予め定める際には、微妙で困難な調整が不可欠となる。
以下では、本発明に係るパック電池10が備える二次電池1の充電方法について説明する。
図3のAは本発明に係るパック電池10の最大セル電圧の時間変化を模式的に示す説明図、Bは設定電流の増減例を示す説明図、Cは設定電流に応じて増減する充電電流の例を示す説明図である。図中の縦軸は最大セル電圧(mV)、設定電流(mA)及び充電電流(mA)を表し、横軸は時間(t)を表す。図3Aの縦軸に示す電圧のうち、4370mV及び4220mVの夫々は、図2Aの場合と同じく充電電圧及び保護電圧である。4210mV(第2の電圧)は、二次電池1の満充電の検出を開始する電圧(満充電検出開始電圧)であり、4200mV(所定電圧)は、設定電流を増加させるように制御するときの上限の電圧(電流制御上限電圧)である。時刻T10〜T19の夫々は、設定電流が変化するタイミングである。
本実施の形態では、充電開始時の二次電池1の最大セル電圧及び電池温度に関わりなく、設定可能な最小の設定電流で二次電池1の充電を開始し、検出した最大セル電圧が電流制御上限電圧以下である場合、一定の時間間隔で設定電流を増加させる。また、最大セル電圧が満充電検出開始電圧より高くなった場合、一定の時間間隔で設定電流を低減させ、充電電流が一定時間以上所定の電流より小さくなったときに、二次電池1が満充電状態にあることを検出する。この間、最大セル電圧が保護電圧より高くなった場合は、二次電池1が過充電状態にあることを検出する。
尚、ここでいう満充電検出開始電圧による満充電の検出は、一般的に複数のセルからなるパック電池において、セル電圧のアンバランスが発生したときに、それ以上過充電となることを防止するために、ある程度充電電流が小さくなっていることを検出して、満充電と判定するものであって、通常の満充電検出とは異なる。ここで、充電電流が小さくなることを検出しているのは、上述の充電アダプターを接続したときの問題により、最大セル電圧が実際より高く検出され、充電容量が十分ではないのに、最大セル電圧だけで満充電と判定することを防止するためである。因みに、通常の満充電検出では、例えば最大セル電圧が4.1V以上であり、且つ、充電電流が50mA/セル以下の状態が20s程度継したときに、満充電と判定する。
次に、具体的に時間を追って説明する。前述したように設定電流の増減が実際の充電電流の変化に反映されるまでの間に最大5〜6秒の遅延が発生するため、本実施の形態では、設定電流を増加させてから次の判定を行うまでに6秒の待ち時間を設けている。従って、時刻T10〜T11,T11〜T12,T12〜T13,T13〜T14夫々の時間間隔は6秒である。これに対し、設定電流を一度低減させた後は、最大セル電圧が満充電検出開始電圧より高くなったときに次回の低減を行うため、時刻T15〜T16、T16〜T17、T17〜T18夫々の時間間隔は一定ではない。
尚、図3Bで設定電流が変化する各タイミングは、制御・電源部21に設定電流の変化が受け付けられて充電電流の変化に反映される時点が示されているものとする。つまり、設定電流を増減させるための判定は、図3Bに示された各タイミングより数秒(最大5〜6秒)前に行われていることになる。また、図からは読み取れないが、充電を開始するときの最大セル電圧の高/低と、設定電流の増加幅の大/小とに応じて、設定電流の増加段数(図3Aでは5段階)が小/大に変化することは言うまでもない。
充電電流については、設定電流を超えないように制御されて設定電流の増減にほぼ追従して変化するため、その説明を省略する。
さて、時刻T10で最小の設定電流が設定されたことにより、制御・電源部21からの充電が開始されて最大セル電圧が上昇し始めるが、比較例の図2Aの場合とは異なって初期の充電電流が十分小さいため、時刻T11に至るまでの間に最大セル電圧が保護電圧を超えることはない。時刻T11、T12、T13及びT14の各タイミングでは、その数秒前に行われた判定において最大セル電圧が電流制御上限電圧以下であったために、設定電流が1段階増加している。時刻T14より後に行われる判定では、最大セル電圧が既に電流制御上限電圧を超えているため、設定電流が増加されることはない。
時刻T14に続く時刻T15、T16、T17及びT18の各タイミングでは、その数秒前に行われた判定において最大セル電圧が満充電検出開始電圧より高くなっていたために、設定電流が1段階減少している。設定電流が1段階減少する都度、最大セル電圧が一旦低下するが、程なく上昇に転じる。時刻T18から後は設定電流が最小に低減されている。時刻T19の数秒前に行われた判定において充電電流が一定時間以上所定の電流より小さくなったことが検出されたことにより、二次電池1が満充電状態にあることが検出されて、設定電流がゼロまで低減される。
以下では、上述したパック電池10の制御部5の動作を、それを示すフローチャートを用いて説明する。以下に示す処理は、ROM52に予め格納された制御プログラムに従ってCPU51により実行される。
図4は、本発明に係るパック電池10で設定電流を1段階ずつ増加及び減少させるCPU51の処理手順を示すフローチャートである。図4の処理は、例えばパック電池10が電気機器20に装着された後に、通信部9と制御・電源部21との通信が確立し、制御部5が通信部9を介して制御・電源部21から充電を指示されたときから、250ms周期で起動される。起動される周期は、250msに限定されるものではない。以下の処理で用いられる最大セル電圧は、前述したようにRAM53に記憶されており、適時更新されている。
図4の処理では、検出された最大セル電圧と、電流制御上限電圧(所定電圧;4.20V)、満充電検出開始電圧(第2の電圧;4.21V)及び保護電圧(4.22V)との高低関係が比較判定され、判定が成立した回数が計数される。判定の成立が継続する場合であっても、図4の処理が1回起動されて実行される間に計数される回数は1回であるため、計数値の差分1は、判定が継続する時間に換算すれば250msに相当する。但し、判定が成立する条件が最初に整ったのが、250msの周期のどのタイミングであるかが不明であるため、計数値が1の場合は、判定が継続する時間に換算すれば0〜250ms(限りなく0に近い時間から、限りなく250msに近い時間まで)となる。このようにして計数された回数が、比較判定される電圧に応じて予め定められた回数に達した場合、
設定電流の1段階増加、満充電状態の検出(又は設定電流の1段階低減)及び過充電状態の検出が行われる。
図4の処理が起動された場合、CPU51は、タイマ54による6秒の計時中であるか否かを判定し(S11)、計時中の場合(S11:YES)、図4の処理を終了して次回の起動を待つ(図4の処理を終了した場合に次回の起動を待つのは、以下同様)。タイマ54による6秒の計時は、後述するステップS15及びS25で開始されるものである。図4の処理が最初に起動された場合、タイマ54の計時は開始されておらず、設定電流は最小値(128mA)である。
6秒の計時中ではない場合(S11:NO)、CPU51は、最大セル電圧が電流制御上限電圧(4.20V)以下であるか否かを判定し(S12)、4.20V以下である場合(S12:YES)、ステップS12で判定が成立したのが3回目であるか否かを判定する(S13)。ステップS12で判定が成立した回数は、初期値を0としてRAM53に記憶されており、判定が「YES」の場合に1だけカウントアップされ、判定が「NO」の場合には0に初期化されるものとする(以下の他のステップで用いる判定の成立回数についても同様)。
ステップS13で判定が成立したのが3回目ではない場合(S13:NO)、即ち、1回目又は2回目の場合、CPU51は、図4の処理を終了する。判定が成立したのが3回目の場合(S13:YES)、CPU51は、最大セル電圧が電流制御上限電圧まで上昇していないものとして設定電流を1段階増加させ(S14)、設定電流のデータを通信部9から制御・電源部21に送信する。本実施の形態では、設定電流の増加幅が1段階当たり128mAである。250ms周期で実行されるステップS12での判定が3回連続で成立したことをステップS13で確認するのは、500ms〜750ms(時間t1に対応)の間、ステップS12での判定が変わらないことを確認するためであるが、上記回数は3回に限定されるものではない。
その後、CPU51は、タイマ54によって6秒の計時を開始し(S15)、図4の処理を終了する。処理の終了前に6秒の計時を開始するのは、前述したように、設定電流を増加させてから次の判定を行うまでに6秒の待ち時間を設けるためである。実際の待ち処理は、ステップS11にて実行される。
ステップS12で最大セル電圧が4.20V以下ではない場合(S12:NO)、CPU51は、最大セル電圧が保護電圧(4.22V)より高いか否かを判定する(S16)。4.22Vより高くない場合(S16:NO)、CPU51は、最大セル電圧が、満充電検出開始電圧(4.21V)以上であるか否かを判定し(S17)、4.21V以上ではない場合(S17:NO)、即ち満充電検出開始電圧より低い場合、図4の処理を終了する。
最大セル電圧が4.21V以上である場合(S17:YES)、CPU51は、電流検出器2によって検出した充電電流が384mAより少ないか否かを判定する(S18)。これにより、最大セル電圧が満充電検出開始電圧を上回った二次電池1の充電電流が、充電末期の電流にまで減少しているか否かが判定される。ここでの判定値である384mAは、設定電流の最小値である128mAに、制御・電源部21における充電電流の増減幅(256mA)を加えた値である。
ステップS18で充電電流が384mAより少ない場合(S18:YES)、CPU51は、ステップS18で判定が成立したのが2回目(250ms〜500ms相当;時間t3に対応)であるか否かを判定し(S19)、2回目ではない場合(S19:NO)、即ち、1回目の場合、図4の処理を終了する。ステップS19で判定される回数は2回に限定されない。ステップS18で判定が成立したのが2回目の場合(S19:YES)、CPU51は、二次電池1の満充電状態をRAM53に設定して(S20)図4の処理を終了する。この場合、CPU51は、制御・電源部21に対して充電終了の旨を送信すると共に、MOSFET71をオフさせる。
ステップS18で充電電流が384mAより少なくない場合(S18:NO)、CPU51は、ステップS17で判定が成立したのが3回目(500ms〜750ms相当;時間t2に対応)であるか否かを判定し(S23)、3回目ではない場合(S23:NO)、即ち、1回目又は2回目の場合、図4の処理を終了する。ステップS23で判定される回数は3回に限定されない。ステップS17で判定が成立したのが3回目の場合(S23:YES)、CPU51は、最大セル電圧が満充電検出電圧より上昇したものとして設定電流を1段階低減させ(S24)、設定電流のデータを通信部9から制御・電源部21に送信する。その後、CPU51は、タイマ54によって6秒の計時を開始し(S25)、図4の処理を終了する。
ステップS16に戻って、最大セル電圧が4.22V以上の場合(S16:YES)、CPU51は、ステップS16で判定が成立したのが2回目(250ms〜500ms相当;時間t4に対応)であるか否かを判定し(S21)、2回目ではない場合(S21:NO)、即ち、1回目の場合、図4の処理を終了する。ステップS21で判定される回数は、ステップS23で判定される回数より少ないものとする。これは、二次電池1の過充電状態をいち早く検出するためである。ステップS16で判定が成立したのが2回目の場合(S21:YES)、CPU51は、二次電池1の過充電状態をRAM53に設定して(S22)図4の処理を終了する。この場合、CPU51は、制御・電源部21に対して充電終了の旨を送信すると共に、MOSFET71をオフさせる。
以上のように本実施の形態によれば、最大セル電圧が保護電圧(4.22V)より低い電流制御上限電圧(所定電圧;4.20V)以下である状態が、250ms置きに3回連続した場合、設定電流を増加させる。
この場合、例えば設定電流の増加幅を128mAとし、設定電流を増加させる時間間隔を6秒とすることにより、最大セル電圧が電流制御上限電圧(4.20V)を多少上回ることはあっても保護電圧(4.22V)までは上昇しないようにすることができる。
従って、設定電流の増加幅を適当に大きくするか、又は設定電流を増加させる時間間隔を適当に短くすることにより、電池電圧が最大許容電圧(4.22V)を超えない範囲で、設定電流を速やかに増大させることが可能となり、短時間で充電が完了する。
また、最大セル電圧が保護電圧(4.22V)より低く、且つ電流制御上限電圧(4.2V)より高い満充電検出開始電圧(4.21V)以上である状態が、250ms置きに3回連続した場合、設定電流を低減させる。
従って、定電流充電に準じた充電を行いながら、満充電に向けて設定電流を低減させることが可能となる。
更に、最大セル電圧が満充電検出開始電圧(4.21V)以上であり、且つ、充電電流が384mAより少ない状態が、250ms置きに2回連続した場合、二次電池が満充電状態にあることを検出する。
従って、充電末期に減少する充電電流の変化を捉えることにより、満充電状態を検出することが可能となる。
更にまた、最大セル電圧が保護電圧(4.22V)より高い状態が、250ms置きに2回連続した場合、二次電池が過充電状態にあることを検出する。この場合に連続して判定する回数(2回)が、設定電流を増加させるときに連続して判定する回数(3回)より少ないため、最大セル電圧が保護電圧より高くなったことが先に検出される。
従って、二次電池の電圧が保護電圧を超えたことを確実に検出することが可能となる。
更にまた、充電制御装置が増加させた設定電流によって二次電池が充電される。
従って、二次電池の電圧が、電流制御上限電圧(4.20V)を多少上回ることはあっても保護電圧(4.22V)までは上昇しないようにすることが可能な充電制御装置を、パック電池に適用することが可能となる。
尚、本実施の形態にあっては、設定可能な最小の設定電流(128mA)で二次電池1の充電を開始したが、これに限定されるものではなく、例えば、二次電池1の最大セル電圧を検出し、検出した電圧の高/低に応じて、充電を開始するときの設定電流が小/大となるようにしてもよい。また、設定電流を均等な増加幅で1段階ずつ増加させたが、例えば、最初の1段階目の設定電流による最大セル電圧の上昇分を検出して二次電池1の内部抵抗を推定し、推定した内部抵抗の大/小に応じて、設定電流の増加幅が小/大となるようにしてもよい。更に、設定電流を増加させる時間間隔を6秒としたが、適宜定めた時間間隔を用いてもよい。
また、本実施の形態にあっては、例えばフローチャートのステップS12において、最大セル電圧が4.20V以下であるか否かを判定したが、4.20Vより低いか否かを判定するようにしてもよい(比較記号の等号の要否は、ステップS17についても同様)。加えて、ステップS16では、最大セル電圧が4.22V以上であるか否かを判定するようにしてもよいし、ステップS18については、384mA以下であるか否かを判定するようにしてもよい。
更に、本実施の形態にあっては、例えばフローチャートのステップS12において電圧の判定が成立した回数を計数し、続くステップS13で回数が3(3回目)であるか否かを判定することによって、電圧の判定が成立し続ける時間が500ms〜750msであるか否かを判定したが、電圧の判定が成立し続ける時間に関する判定方法はこれに限定されるものではない。例えば、ステップS12で電圧の判定が最初に成立した時にタイマ54を用いて500ms〜750msの計時を開始し、タイマ54の計時が終了するまで、ステップS12での電圧の判定が成立し続けるか否かを判定してもよい。
今回開示された実施の形態は、全ての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上述した意味ではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
1 二次電池
10 パック電池
2 電流検出器
4 A/D変換部
5 制御部
51 CPU
52 ROM
53 RAM
54 タイマ
71、72 MOSFET
9 通信部
20 電気機器
21 制御・電源部

Claims (5)

  1. 二次電池の電圧を時系列的に検出し、前記二次電池を所定の設定電流で充電する方法において、
    検出した電圧が、前記二次電池を過充電から保護するための保護電圧より低い所定電圧以下であるか否かを判定し、
    以下であると判定する状態が時間t1以上継続するか否かを判定し、
    継続すると判定した場合、前記設定電流を増加させ
    検出した電圧が前記保護電圧より低く、且つ前記所定電圧より高い第2の電圧以上であるか否かを判定し、
    以上であると判定する状態が時間t2以上継続するか否かを判定し、
    継続すると判定した場合、前記設定電流を低減させること
    を特徴とする二次電池の充電方法。
  2. 前記二次電池の充電電流を時系列的に検出し、
    検出した電圧が前記第2の電圧以上であると判定した場合、検出した充電電流が所定電流より少ないか否かを判定し、
    少ないと判定する状態が時間t3以上継続するか否かを判定し、
    継続すると判定した場合、前記二次電池が満充電状態にあることを検出すること
    を特徴とする請求項に記載の二次電池の充電方法。
  3. 検出した電圧が前記保護電圧より高いか否かを判定し、
    高いと判定する状態が時間t4(t4<t1)以上継続するか否かを判定し、
    継続すると判定した場合、前記二次電池が過充電状態にあることを検出すること
    を特徴する請求項1又は2に記載の二次電池の充電方法。
  4. 二次電池の電圧を時系列的に検出し、前記二次電池を所定の設定電流で充電させる充電制御装置において、
    検出した電圧が前記二次電池を過充電から保護するための保護電圧より低い所定電圧以下であるか否かを判定する第1判定手段と、
    第1判定手段が以下であると判定する状態が時間t1以上継続するか否かを判定する第2判定手段と、
    第2判定手段が継続すると判定した場合、前記設定電流を増加させる増加手段と
    検出した電圧が前記保護電圧より低く、且つ前記所定電圧より高い第2の電圧以上であるか否かを判定する第3判定手段と、
    該第3判定手段が以上であると判定する状態が時間t2以上継続するか否かを判定する第4判定手段と、
    該第4判定手段が継続すると判定した場合、前記設定電流を低減させる低減手段と
    を備えることを特徴とする充電制御装置。
  5. 請求項に記載の充電制御装置と、
    該充電制御装置が増加させた設定電流で充電される1又は複数の二次電池と
    を備えることを特徴とするパック電池。
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