しかし、上述した従来におけるクランプ装置(特許文献1,2)は、次のような問題点があった。
即ち、この種のクランプ装置は、例えば、ボタンを操作するなどにより、クランプ状態(ON)又はクランプ解除状態(OFF)の切換えは容易に行うことができるが、反面、可動盤と固定盤の型取付面が垂直面(鉛直面)となり、また、多色成形用射出成形機のように、複数組の金型を順次切換えて成形する場合、金型に対するクランプ及び位置決めを自動化することは容易でない。つまり、ボルトナットを人為的に操作して金型の位置調整を行う場合には、前述したように、作業者の感覚により金型が落下しない程度にボルトナットを緩め、その状態で微妙な位置調整を行うことが可能であるが、特許文献1,2のクランプ装置により金型をクランプする場合、クランプ自体は容易に行うことができるとしても、金型に対する位置決め(位置調整)は容易でない。結局、この種のクランプ装置を利用することにより、金型に対するクランプ及び位置決めを自動化し、金型に対するクランプ作業の容易化,確実化及び効率化を図る観点からは、更なる改善の余地があった。
本発明は、このような背景技術に存在する課題を解決した金型のクランプ方法及びクランプ支援装置の提供を目的とするものである。
本発明に係る金型のクランプ方法は、上述した課題を解決するため、可動盤2に支持される回転盤3の型取付面3fに対して、複数の金型Ca,Cbを構成可能な一又は二以上の可動型Cma,Cmbを所定のクランパ5ma,5mbによりクランプするとともに、型取付面3fに対向する固定盤4の型取付面4fに対して、一又は二以上の固定型Cca,Ccbを所定のクランパ5ca,5cbによりクランプするに際し、可動盤2を型開状態にし、かつクランパ5ma,5mb,5ca,5cbをクランプ解除状態にすることにより、可動型Cma,Cmb又は固定型Cca,Ccbの一方に複数の位置決めピン6…を設け、かつ他方に当該位置決めピン6…が挿入する複数の位置決め挿通孔7…を設けてなる金型Ca,Cbを回転盤3の型取付面3fと固定盤4の型取付面4f間に装填し、可動盤2を型締位置に移動させた後、全てのクランパ5ma,5mb,5ca,5cbをクランプ状態に切換える第一ステップSaと、第一ステップSaの終了後、可動盤2を型開状態にし、回転盤3を回転させて可動型Cma,Cmbの位置切換えを行う第二ステップSbと、第二ステップSbの終了後、可動盤2を型閉方向Fcへ移動させ、予め設定した所定の解除設定位置Xsに達したなら、相対向する可動型Cma,Cmbと固定型Cca,Ccbの一方におけるクランパ5mb,5cbをクランプ解除状態に切換える第三ステップScと、第三ステップScの終了後、可動盤2を型締位置に移動させ、第三ステップScでクランプ解除状態にしたクランパ5mb,5cbをクランプ状態に切換える第四ステップSdとを経て金型Ca,Cbをクランプするようにしたことを特徴とする。
また、本発明に係る金型のクランプ支援装置10は、上述した課題を解決するため、可動盤2に支持される回転盤3の型取付面3fに対して、複数の金型Ca,Cbを構成可能な一又は二以上の可動型Cma,Cmbを所定のクランパ5ma,5mbによりクランプするとともに、型取付面3fに対向する固定盤4の型取付面4fに対して、一又は二以上の固定型Cca,Ccbを所定のクランパ5ca,5cbによりクランプする際における金型のクランプ支援装置であって、可動盤2を型開状態にし、かつクランパ5ma,5mb,5ca,5cbをクランプ解除状態にすることにより、可動型Cma,Cmb又は固定型Cca,Ccbの一方に複数の位置決めピン6…を設け、かつ他方に当該位置決めピン6…が挿入する複数の位置決め挿通孔7…を設けてなる金型Ca,Cbを回転盤3の型取付面3fと固定盤4の型取付面4f間に装填可能にするとともに、可動盤2を型締位置に移動させた後、全てのクランパ5ma,5mb,5ca,5cbをクランプ状態に切換える第一制御機能と、第一制御機能による制御終了後、可動盤2を型開状態にし、回転盤3を回転させて可動型Cma,Cmbの位置切換えを行う第二制御機能と、第二制御機能による制御終了後、可動盤2を型閉方向Fcへ移動させ、設定した所定の解除設定位置Xsに達したなら、相対向する可動型Cma,Cmbと固定型Cca,Ccbの一方におけるクランパ5mb,5cbをクランプ解除状態に切換える第三制御機能と、第三制御機能による制御終了後、可動盤2を型締位置に移動させ、第三制御機能でクランプ解除状態にしたクランパ5mb,5cbをクランプ状態に切換える第四制御機能とを有する制御手段30を備えることを特徴とする。
一方、本発明は、好適な態様により、第三ステップScでは、可動盤2が解除設定位置Xsに達した際に、可動盤2の移動を停止させた後にクランパ5mb,5cbをクランプ解除状態に切換え、又は可動盤2の移動を停止させることなくクランパ5mb,5cbをクランプ解除状態に切換えることができる。他方、第一ステップSaから第四ステップSdが終了した後、第二ステップSbから第四ステップSdを一回又は二回以上追加して行う追加動作を含ませることができる。また、第一ステップSaから第四ステップSdは、全自動動作,半自動動作又は手動操作により行うことができる。さらに、クランパ5ma…には、電磁クランパ,油圧クランパ,エアクランパ,の一つを含ませることができる。なお、金型Ca,Cbには、少なくとも多色成形用射出成形機1における金型Ca,Cbを含ませることが望ましい。
このような本発明に係る金型のクランプ方法及びクランプ支援装置10によれば、次のような顕著な効果を奏する。
(1) 可動盤2を型開状態にし、かつクランパ5ma…をクランプ解除状態にして、金型Ca,Cbを回転盤3の型取付面3fと固定盤4の型取付面4f間に装填し、可動盤2を型締位置に移動させた後、全てのクランパ5ma…をクランプ状態に切換える第一ステップSaと、可動盤2を型開状態にした後、回転盤3を回転させて可動型Cma,Cmbの位置切換えを行う第二ステップSbと、可動盤2を型閉方向Fcへ移動させ、予め設定した所定の解除設定位置Xsに達したなら、相対向する可動型Cma,Cmbと固定型Cca,Ccbの一方におけるクランパ5mb,5cbをクランプ解除状態に切換える第三ステップScと、可動盤2を型締位置に移動させた後、第三ステップScでクランプ解除状態にしたクランパ5mb…をクランプ状態に切換える第四ステップSdとを経て金型Ca,Cbをクランプするようにしたため、クランプ状態又はクランプ解除状態に切換えるクランパ5ma…を使用して複数の金型Ca,Cbをクランプする場合であっても、各金型Ca,Cbに対するクランプ及び各金型Ca,Cbの位置決めを容易かつ確実に行うことができる。また、全自動を含む自動化が容易となるため、金型Ca,Cbに対するクランプ作業の能率アップ及び安全性向上にも寄与できる。
(2) 金型Ca,Cbを構成する可動型Cma,Cmb又は固定型Cca,Ccbの一方に複数の位置決めピン6…を設け、かつ他方に当該位置決めピン6…が挿入する複数の位置決め挿通孔7…を設けたため、特に、回転盤3及び固定盤4の型取付面3f及び4fが垂直面(鉛直面)となる場合であっても、金型Ca,Cbが落下するなどの不具合を生じることなく、本発明に係るクランプ方法を確実かつ円滑に行うことができる。
(3) 好適な態様により、第三ステップScでは、可動盤2が解除設定位置Xsに達した際に、可動盤2の移動を停止させた後にクランパ5mb,5cbをクランプ解除状態に切換えてもよいし、或いは可動盤2の移動を停止させることなくクランパ5mb,5cbをクランプ解除状態に切換えてもよいため、金型Ca,Cb或いは射出成形機1の種類等に応じて使い分けることができる。例えば、可動盤2の移動を停止させた後にクランパ5mb,5cbをクランプ解除状態に切換えれば、処理の安定性を高めることができるとともに、他方、可動盤2の移動を停止させることなくクランパ5mb,5cbをクランプ解除状態に切換えれば、処理の迅速性を高めることができる。
(4) 好適な態様により、第一ステップSaから第四ステップSdが終了した後、第二ステップSbから第四ステップSdを一回又は二回以上追加して行う追加動作を含ませれば、金型Ca,Cbに対する位置決め精度の向上及び円滑な動作を実現することができるため、必要により、金型Ca,Cbに対する位置決め(位置調整)をより最適化することができる。
(5) 好適な態様により、第一ステップSaから第四ステップSdは、全自動動作,半自動動作又は手動操作により行うことが可能となるため、金型Ca,Cbや射出成形機1の種類等に応じた、柔軟かつ最適なクランプ方法の構築が可能となり、ユーザにおける使い勝手及び利便性の向上に寄与できる。
(6) 好適な態様により、クランパ5ma…に、電磁クランパ,油圧クランパ,エアクランパ,の一つを含ませれば、クランプ状態又はクランプ解除状態に切換える機能を有するこれらのクランパと本発明に係るクランプ方法を組合わせたことによる発明の有効化、更には実効化を確保することができる。
(7) 好適な態様により、金型Ca,Cbに、少なくとも多色成形用射出成形機1における金型Ca,Cbを含ませれば、本発明に係るクランプ方法を用いたことに伴う最適なパフォーマンスを発揮させることができる。
次に、本発明に係る好適実施形態を挙げ、図面に基づき詳細に説明する。
まず、本実施形態に係る金型のクランプ支援装置10を備える二色成形用射出成形機1の構成について、図2〜図4を参照して説明する。
二色成形用射出成形機1は、図2に示すように、機台100上に設置した型締装置1cと、左右に並べて設置した一対の射出装置1ia,1ibを備える。なお、図2は射出成形機1の平面視の外観を示す。型締装置1cは、機台100の中程に固定した固定盤4と、機台100の端部に固定した支持盤11と、この支持盤11と固定盤4間に架設した四本のタイバー12…を備えるとともに、各タイバー12…にスライド自在に装填した可動盤2を備える。各タイバー12…は、可動盤2(支持盤11,固定盤4)の四隅に配される。一方、支持盤11の背面には、型締シリンダ13a及び13bを配設する。この場合、型締シリンダ13aは後述する一次側の金型Caの位置に対応し、型締シリンダ13bは後述する二次側の金型Cbの位置に対応して配する。そして、各型締シリンダ13a,13bの図に現れないピストンロッドの先端は可動盤2に結合するとともに、各型締シリンダ13a,13bは、それぞれ後述する油圧回路34に接続する。
また、図3及び図4に示すように、可動盤2の前面(内面)には、回転盤3を重ねるように配するとともに、可動盤2の後面(外面)には、回転盤3を回転させる回転盤回転駆動部21を配設する。回転盤回転駆動部21は、回転盤3の裏面に固定した同軸上のリングギア22と、可動盤2の後面に取付けたサーボモータ23と、このサーボモータ23の回転シャフトに取付けた駆動ギア24を備え、この駆動ギア24は、リングギア22の内周面に形成したネジ部に噛合する。一方、可動盤2の後面における中心位置には、回転盤3を軸方向へ僅かに押出して可動盤2から離間させ、かつ軸方向へ引込むことにより可動盤2に当接させる回転盤進退駆動部25を配設する。回転盤進退駆動部25は、可動盤2の後面に固定した進退シリンダ26を備え、この進退シリンダ26に内蔵するピストン27のピストンロッド27rは、可動盤2に挿通させるとともに、先端を回転盤3の裏面に固定する。したがって、このピストンロッド27rは、回転盤3の回転軸を兼用する。そして、進退シリンダ26の後室及び前室は、後述する油圧回路34に接続する。なお、回転盤3の裏面における外周付近には、ブロック状のストッパ29を固定するとともに、このストッパ29の移動軌跡上であって、可動盤2には一対のストッパ受部28a,28bを固定する。これにより、回転盤3が回転した際には、ストッパ29が各ストッパ受部28a,28bに突当たり、回転盤3の回転範囲が180〔°〕に規制される。
一方、図4において、10は本実施形態に係る金型のクランプ支援装置を示す。クランプ支援装置10は、主要部に、制御手段30を構成するコントローラ31を備える。コントローラ31は、サーボモータ23を駆動するサーボ回路を内蔵し、サーボモータ23はこのサーボ回路の出力部に接続する。サーボモータ23の後端には、このサーボモータ23の回転数を検出するロータリエンコーダ23eを付設し、このロータリエンコーダ23eは、コントローラ31に接続する。コントローラ31は、マイクロコンピュータ等のハードウェアをはじめ、ハードディスク等の内部メモリ(内部記憶手段)31mを内蔵し、各種制御及び処理等を行うコンピュータ機能を備える。この内部メモリ31mには、各種データ類を書込み可能なデータエリア31mdを有するととともに、各種プログラムを格納するプログラムエリア31mpを有する。したがって、プログラムエリア31mpには、各種演算処理及び各種制御処理(シーケンス制御)を実行するための各種プログラムを格納し、このプログラムには、特に、本実施形態に係るクランプ方法を実行するためのシーケンス制御プログラムが含まれる。
したがって、クランプ支援装置10の主要部を構成する制御手段30(コントローラ31)は、少なくとも、可動盤2を型開状態にし、かつクランパ5ma,5mb,5ca,5cbをクランプ解除状態にして、金型Ca,Cbを回転盤3の型取付面3fと固定盤4の型取付面4f間に装填可能にするとともに、可動盤2を型締位置に移動させた後、全てのクランパ5ma,5mb,5ca,5cbをクランプ状態に切換える第一制御機能と、第一制御機能による制御終了後、可動盤2を型開状態にし、回転盤3を回転させて可動型Cma,Cmbの位置切換えを行う第二制御機能と、第二制御機能による制御終了後、可動盤2を型閉方向Fcへ移動させ、設定した所定の解除設定位置Xsに達したなら、相対向する可動型Cma,Cmbと固定型Cca,Ccbの一方におけるクランパ5mb,5cbをクランプ解除状態に切換える第三制御機能と、第三制御機能による制御終了後、可動盤2を型締位置に移動させ、第三制御機能でクランプ解除状態にしたクランパ5mb,5cbをクランプ状態に切換える第四制御機能とを備えている。
さらに、34は油圧回路(油圧駆動部)であり上述したコントローラ31に接続する。これにより、油圧回路34は、コントローラ31により制御される。32は、コントローラ31に接続したタッチパネル式のディスプレイであり、ディスプレイ本体32dにより各種表示を行うことができるとともに、タッチパネル32tを用いた入力部により各種の設定等を行うことができる。33は、回転盤3に取付けることにより回転盤3(可動盤2及び可動型Cma…を含む)の位置を検出する型位置センサであり、固定盤4に対する相対距離を検出することにより、可動盤2(可動型Cma…)の現在位置を検出することができる。この型位置センサ33はコントローラ31のセンサポートに接続し、型位置センサ33の検出結果は、後述する解除設定位置Xsの監視に用いられる。
また、図3及び図4に示すように、回転盤3の型取付面3fには、一次側の可動型Cmaをクランプ可能な電磁クランパを用いたクランパ5maを配設するとともに、二次側の可動型Cmbをクランプ可能な電磁クランパを用いたクランパ5mbを配設する。他方、固定盤4の型取付面4fには、一次側の固定型Ccaをクランプ可能な電磁クランパを用いたクランパ5caを配設するとともに、二次側の固定型Ccbをクランプ可能な電磁クランパを用いたクランパ5cbを配設する。そして、各クランパ5ma,5mb,5ca,5cbは、それぞれコントローラ31に内蔵するドライブ回路の出力ポートに接続する。したがって、各クランパ5ma…に給電すれば、各クランパ5ma…はONし、クランプ状態となる。クランプ状態の各クランパ5ma…,5ca…は、強力な電磁石となるため、各可動型Cma…,各固定型Cca…を吸引(吸着)してクランプする。また、各クランパ5ma…に対する給電を解除(消磁を含む)すれば、各クランパ5ma…はOFFし、クランプ解除状態となる。
これにより、回転盤3の型取付面3fであって、中心に対して180〔°〕対向する位置には、一対の可動型Cma,Cmbを取付ける(クランプする)ことができるとともに、固定盤4の型取付面4fであって、各可動型Cma,Cmbに対面する位置には、一対の固定型Cca,Ccbを取付ける(クランプする)ことができる。この場合、可動型Cmaと固定型Ccaは、基本的に一次側の金型Caを構成し、かつ可動型Cmbと固定型Ccbは、基本的に二次側の金型Cbを構成する。また、使用時には、回転盤3が180〔゜〕回転することにより、一次側の可動型Cmaと二次側の固定型Ccbが組合わさり二次側の成形を行うことができるとともに、二次側の可動型Cmbと一次側の固定型Ccaが組合わさり一次側の成形を行うことができる。
さらに、各可動型Cma,Cmbには、それぞれ四本の位置決めピン6…を設けるとともに、各固定型Cca,Ccbには、当該各位置決めピン6…が挿通する位置決め挿通孔7…を設ける。これにより、型閉時(型締時)には、各位置決めピン6…が各位置決め挿通孔7…に進入し、可動型Cam…と固定型Cac…間の正確な位置決めが行われる。なお、各位置決めピン6…の先端及び/又は各位置決め挿通孔7…の開口端は、テーパ形状が設けられ、各位置決めピン6…が各位置決め挿通孔7…に挿入しやすいように考慮されている。このように、金型Ca,Cbを構成する可動型Cma,Cmb又は固定型Cca,Ccbの一方に複数の位置決めピン6…を設け、かつ他方に当該位置決めピン6…が挿入する複数の位置決め挿通孔7…を設ければ、特に、回転盤3及び固定盤4の型取付面3f及び4fが垂直面(鉛直面)となる場合であっても、金型Ca,Cbが落下するなどの不具合を生じることなく、本発明に係るクランプ方法を確実かつ円滑に行うことができる利点がある。
よって、このような二色成形用射出成形機1によれば、成形時には、図3に示すように、型締された金型Ca,Cbに対してそれぞれ樹脂の射出充填が行われる。この際、一次側の射出装置1iaから一次側の金型Caに対して第一樹脂が射出充填されるとともに、二次側の射出装置1ibから二次側の金型Cbに対して第二樹脂が射出充填される。また、射出充填(射出工程)が終了したなら、可動盤2を後退移動させて型開きを行う。この際、固化した成形品は、可動型Cma,Cmbに付着するため、一次側の可動型Cmaにおける一次成形品に対してはカッティング処理が行われるとともに、二次側の可動型Cmbにおける二次成形品(二色成形品)に対してはエジェクタによる突出し処理が行われる。この後、回転盤3は、進退シリンダ26により軸方向に押出され、さらに、サーボモータ23により180〔゜〕回転した後、進退シリンダ26により引込まれる。この結果、二次側の空の可動型Cmbが一次側に移動し、一次成形品の付着した一次側の可動型Cmaが二次側に移動する。この後、同様の処理(処理)が繰り返して行われる。
次に、図1〜図6を参照し、金型の取付工程を含む本実施形態に係る金型のクランプ支援装置10の機能(動作)を含む金型のクランプ方法について説明する。
まず、本実施形態に係るクランプ方法を実施するに際しては、予め、解除設定位置Xsを可動盤3の型閉動作時の位置により設定するとともに、可動盤3が解除設定位置Xsに到達した際にクランプ解除状態に切換えるクランパ5ma…を設定する。この場合、解除設定位置Xsは、可動型Cma…が固定型Cca…に接触する位置に対して所定間隔Lm(図6(d)参照)だけ手前(直前)に設定することができる。また、可動盤3が解除設定位置Xsに到達した際にクランプ解除状態に切換えるクランパ5ma…は、相対向する可動型Cma,Cmbと固定型Cca,Ccbにおける一方のクランパ5mb,5cbを設定する。実施形態においてはクランパ5mb,5cbを設定した。
以下、本実施形態に係る金型のクランプ方法を含む金型の取付工程処理手順について、図1に示すフローチャートに従って説明する。
最初に、制御手段30に備える第一制御機能により第一ステップSaによる処理を行う。第一ステップSaでは、可動盤2を型開状態にするとともに、各クランパ5ma…は全てOFFにしてクランプ解除状態にする(ステップS1)。次いで、図5(a)に示すように、金型Ca,Cbを、型締装置1cに搬入し、回転盤3の型取付面3fと固定盤4の型取付面4f間に装填する(ステップS2)。図中、仮想線で示す符号41は、例えば、クレーン等の装填システムを示し、取付ける金型Ca,Cbはこの装填システムを用いて型締装置1cまで搬入し、さらに、型取付面3fと4f間に収容するとともに、図に現れない仮位置決め部により仮位置決めした位置にセットする。次いで、可動盤2を型閉方向Fcへ移動させる型締動作を行う(ステップS3)。なお、型締圧力は、成形時の型締圧力であってもよいし別途設定した型締圧力であってもよい。
この状態における金型CaとCbはそれぞれ位置決めピン6…と位置決め挿通孔7…により位置決めされている。即ち、金型Caを構成する可動型Cmaと固定型Ccaが位置決めされ、金型Cbを構成する可動型Cmbと固定型Ccbが位置決めされているため、型締状態になったなら全てのクランパ5ma,5mb,5ca,5cbをONにしてクランプ状態にする(ステップS4)。以上の処理が、可動盤2を型開状態にし、かつクランパ5ma,5mb,5ca,5cbをクランプ解除状態にして、金型Ca,Cbを回転盤3の型取付面3fと固定盤4の型取付面4f間に装填し、可動盤2を型締位置に移動させた後、全てのクランパ5ma,5mb,5ca,5cbをクランプ状態に切換える第一ステップSaに基づく処理となる。
次に、第二制御機能により第二ステップSbによる処理を行う。第二ステップSbでは、図5(b)に示すように、可動盤2を型開方向Foへ移動させて型開状態にする(ステップS5)。次いで、図5(c)に示すように、回転盤3を矢印Fr方向へ180〔゜〕回転させる(ステップS6)。この際、回転盤3は、進退シリンダ26により軸方向に押出した後、サーボモータ23により180〔゜〕回転させ、この後、進退シリンダ26により引込む動作を行う。これにより、可動型CmaとCmbの位置が反転、即ち、一次側の可動型Cmaが二次側の位置に移動するとともに、二次側の可動型Cmbが一次側の位置に移動し、可動型CmaとCmbの位置が入れ替わる。以上の処理が、第一ステップSaの終了により、可動盤2を型開状態にした後、回転盤3を回転させて可動型Cma,Cmbの位置切換えを行う第二ステップSbに基づく処理となる。
次に、第三制御機能により第三ステップScによる処理を行う。第三ステップScでは、可動盤2を型開位置から型閉方向Fcへ移動させる型閉動作を行う(ステップS7)。そして、図6(d)に示すように、可動盤2(可動型Cmb,Cma)が予め設定した解除設定位置Xsに達したなら、予め設定したクランパ5mb,5cbをOFFにする(ステップS8,S9)。この場合、予め設定したクランパ5mb,5cbは、相対向する可動型Cma,Cmbと固定型Cca,Ccbの一方におけるクランパであり、例示の場合、クランパ5mb,5cbが設定したクランパとなる。図6(e)は、設定したクランパ5mb,5cbのクランプ解除状態を模式的に示す。ところで、解除設定位置Xsに達した際のクランパ5mb,5cbに対するOFFへの切換は、可動盤2の型閉動作を停止させて行ってもよいし、或いは型閉動作を停止させることなく行ってもよい。このように、可動盤2が解除設定位置Xsに達した際には、可動盤2の移動を停止させた後にクランパ5mb,5cbをクランプ解除状態に切換え、又は可動盤2の移動を停止させることなくクランパ5mb,5cbをクランプ解除状態に切換えることができるため、金型Ca,Cb或いは射出成形機1の種類等に応じて使い分けることができる。例えば、可動盤2の移動を停止させた後にクランパ5mb,5cbをクランプ解除状態に切換えれば、処理の安定性を高めることができるとともに、可動盤2の移動を停止させることなくクランパ5mb,5cbをクランプ解除状態に切換えれば、処理の迅速性を高めることができる。以上の処理が、第二ステップSbの終了により、可動盤2を型閉方向Fcへ移動させ、予め設定した所定の解除設定位置Xsに達したなら、相対向する可動型Cma,Cmbと固定型Cca,Ccbの一方におけるクランパ5mb,5cbをクランプ解除状態に切換える第三ステップScに基づく処理となる。
次に、第四制御機能による第四ステップSdによる処理を行う。第四ステップSdでは、クランパ5mb,5cbをクランプ解除状態にし、さらに型閉動作を継続、即ち、可動盤2を解除設定位置Xsから更に型閉方向Fcへ移動させる型締動作を行う(ステップS10)。そして、図6(f)に示すように、型締状態になったなら型締動作を停止させる(ステップS11,S12)。これにより、クランプされた固定型Ccaに対して、クランパ5mbのOFFによりクランプ解除状態の可動型Cmbが位置決めされるとともに、クランプされた可動型Cmaに対して、クランパ5cbのOFFによりクランプ解除状態の固定型Ccbが位置決めされるため、型締状態になったならクランプ解除状態のクランパ5mb,5cbをONにする(ステップS13)。以上の処理が、第三ステップScの終了により、可動盤2を型締位置に移動させた後、第三ステップScでクランプ解除状態にしたクランパ5mb,5cbをクランプ状態に切換える第四ステップSdに基づく処理となる。
これにより、一次側の固定型Ccaに対して一次側の可動型Cmaと二次側の可動型Cmbの双方が位置決めされ、かつ二次側の固定型Ccbに対して二次側の可動型Cmbと一次側の可動型Cmaの双方が位置決めされるとともに、二つの金型Ca,Cbが各クランパ5ma,5mb,5ca,5cbによりクランプされる。なお、この後、同様の処理を繰返してもよい。即ち、第一ステップSaから第四ステップSdが終了した後、第二ステップSbから第四ステップSdを一回又は二回以上追加して行う追加動作を行ってもよい(ステップS14,S5…)。この場合、再度、可動型CmaとCmbの位置を反転させ、可動型Cmaと固定型Cca間の位置決めと可動型Cmbと固定型Ccb間の位置決め、更には可動型Cmaと固定型Ccb間の位置決めと可動型Cmbと固定型Cca間の位置決めを行うことができる。したがって、金型Ca,Cbに対する位置決め精度の向上及び円滑な動作を実現することができ、必要により、金型Ca,Cbに対する位置決め(位置調整)をより最適化することができる。
よって、このような本実施形態に係る金型のクランプ方法(クランプ支援装置10)によれば、可動盤2を型開状態にし、かつクランパ5ma,5mb,5ca,5cbをクランプ解除状態にして、金型Ca,Cbを回転盤3の型取付面3fと固定盤4の型取付面4f間に装填し、可動盤2を型締位置に移動させた後、全てのクランパ5ma,5mb,5ca,5cbをクランプ状態に切換える第一ステップSaと、第一ステップSaの終了後、可動盤2を型開状態にし、回転盤3を回転させて可動型Cma,Cmbの位置切換えを行う第二ステップSbと、第二ステップSbの終了後、可動盤2を型閉方向Fcへ移動させ、予め設定した所定の解除設定位置Xsに達したなら、相対向する可動型Cma,Cmbと固定型Cca,Ccbの一方におけるクランパ5mb,5cbをクランプ解除状態に切換える第三ステップScと、第三ステップScの終了後、可動盤2を型締位置に移動させ、第三ステップScでクランプ解除状態にしたクランパ5mb,5cbをクランプ状態に切換える第四ステップSdとを経て金型Ca,Cbをクランプするようにしたため、クランプ状態又はクランプ解除状態に切換えるクランパ5ma…を使用して複数の金型Ca,Cbをクランプする場合であっても、各金型Ca,Cbに対するクランプ及び各金型Ca,Cbの位置決めを容易かつ確実に行うことができる。また、全自動を含む自動化が容易となるため、金型Ca,Cbに対するクランプ作業の能率アップ及び安全性向上にも寄与できる。特に、金型Ca,Cbとして、実施形態のような二色成形用射出成形機1における金型Ca,Cbを適用すれば、本発明に係るクランプ方法を用いたことに伴う最適なパフォーマンスを発揮させることができる。
以上、好適実施形態について詳細に説明したが、本発明は、このような実施形態に限定されるものではなく、細部の構成,形状,素材,数量,手法,数値等において、本発明の要旨を逸脱しない範囲で、任意に変更,追加,削除することができる。
例えば、実施形態では、二色成形用射出成形機1の金型Ca,Cbとして、一対の可動型Cma,Cmbと、一対の固定型Cca,Ccbを備える場合を例示したが、図7(a)に示すように、一対の固定型Cca,Ccbに対して、単一の可動型Cmを備え、この単一の可動型Cmを各固定型Cca,Ccbに対して使用するタイプであってもよいし、図7(b)に示すように、三つの金型Ca,Cb,Cc(三つの固定型Cca,Ccb,Cccと三つの可動型)を順次切り換えて使用するタイプ(多色成形用射出成形機等)であってもよく、金型Ca…の数量は任意である。また、実施形態では、クランパ5ma…として電磁クランパを例示したが、図8に示すように、油圧クランパ(又はエアクランパ)であっても同様に適用することができる。図8の油圧クランパは、油圧シリンダ5ec…のロッドに規制ブロック42…を取付けたものであり、この規制ブロック42…により、例えば、固定型Ccaのフランジ部を加圧規制又は規制解除できる。なお、油圧シリンダ5ecは、ボルト43により固定盤4に固定した保持部材41により保持される。このように、クランパ5ma…には、電磁クランパ,油圧クランパ,エアクランパ,の一つを含ませることができるため、クランプ状態又はクランプ解除状態に切換える機能を有するこれらのクランパと本発明に係るクランプ方法を組合わせたことによる発明の有効化、更には実効化を図ることができる。この場合、電磁クランパには、例示した磁力(吸引力)を直接利用する場合と磁力を上述した規制ブロック42…の駆動力として利用する場合の双方が含まれる。その他、図7及び図8において、図2〜図4と同一部分には同一符号を付してその構成を明確にした。
一方、可動盤2(回転盤3,可動型Cma…)の位置を検出する検出手段として、型位置センサ33を例示したが、可動盤2(回転盤4,可動型Cma…)の位置を直接又は間接的に検出できる機能を有するものであれば、公知の各種検出手段を利用できる。また、実施形態では、回転盤3を可動盤2に配した場合を示したが固定盤4に配する場合を排除するものではない。この場合、回転盤3に固定型Cca…がクランプされ、可動盤2に可動型Cma…がクランプされることになり、このような形態も本発明に含まれる。さらに、実施形態における第一ステップSaから第四ステップSdまでの処理は、全自動動作,半自動動作又は手動操作により行うことが可能である。したがって、金型Ca,Cbや射出成形機1の種類等に応じた、柔軟かつ最適なクランプ方法の構築が可能となり、ユーザにおける使い勝手及び利便性の向上に寄与できる。他方、型取付面3f,4fは垂直の場合を例示したが、竪型成形機等のように、水平の場合であってもよい。この場合、解除設定位置Xsは、下型に対して上型が近接する位置を設定するなどにより同様に実施することができる。