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JP5639398B2 - 電池集電体用アルミニウム硬質箔 - Google Patents

電池集電体用アルミニウム硬質箔 Download PDF

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Description

本発明は、リチウムイオン二次電池の正極集電体として用いられる電池集電体用アルミニウム硬質箔に関する。
近年、携帯電話やノートパソコン等のモバイルツール用電源として、リチウムイオン二次電池が使用されている。このようなリチウムイオン二次電池の電極材は、正極材、セパレータおよび負極材で形成される。そして、正極材の製造は、15μm厚程度の集電体用アルミニウム箔(またはアルミニウム合金箔)の両面に、100μm厚程度のLiCoO等の活物質を塗布し、この塗布された活物質中の溶媒を除去するために乾燥して、活物質の密度を増やすための圧着を行い、スリット、裁断工程を経ることで行われる。この集電体の材料には、例えば特許文献1に示すような高純度アルミニウム箔材が用いられていた。
しかしながら近年では、電池高容量化の進展により、使用するアルミニウム箔の薄肉化を図るため、強度の高いアルミニウム合金箔が指向されている。例えば、非特許文献1に開示されているように、従来多用されていた純アルミニウムである1085,1N30等では、引張強度が172〜185MPaで、伸び値が1.4〜1.7%であるのに対し、3003合金等のようにMnを添加することにより、引張強度を270〜279MPa、伸び値を1.3〜1.8%としたアルミニウム合金箔が市販され、さらなる高強度化若しくは高伸びが指向されてきた。
また、例えば、特許文献2には、以下の提案がなされている。すなわち、硬い活物質を用いた場合、電池ケースに収納する際に、渦巻き状に巻いた(折り曲げた)電極材が小さい半径の部位で破断し易い傾向となる。そこで、Al−Mn系合金箔において、Cu含有量を多くし、冷間圧延時の所定板厚時に、連続焼鈍炉を用いて所定条件で中間焼鈍を行うことで、280〜380MPaの強度として、耐折り曲げ性を向上させる提案がなされている。
また、例えば、特許文献3には、アルミニウム合金箔にMg,Co,Zr,W等を添加して、240〜400MPaの強度とし、伸びや耐食性を得る提案もなされている。
一方、非特許文献2では、一般的特性として、純アルミニウムである1085においては導電率が61.5%IACSであり、Mn添加された3003合金の48.5%に比較して高い(電気抵抗値が低い)ことが開示されている。このような高い導電率に起因し、電気部品に用いるのに望ましい純アルミニウム箔は依然として多用されている。なお、導電率は合金元素や調質(加工率)により異なり、非特許文献3に開示されているように、6mm以上の厚みにおいて、純度の高い1070材等では、軟質(O)材で62%、硬質(H18)材で61%、3003合金の場合では、軟質材で50%、硬質材で40%であることが知られている。すなわち、Mn系合金では加工が加わることにより導電率が大きく低下する。
特開平11−162470号公報(段落0023) 特開2008−150651号公報(段落0003、0005〜0007) 特開2009−64560号公報(段落0016〜0029)
「2008最新電池技術大全」、株式会社電子ジャーナル、2008年5月1日発行、第8編第1章第7節、P243 Furukawa−Sky Review、No.5、2008P5 表1、P9 図8 アルミニウムハンドブック、日本アルミニウム協会、2007年1月31日発行、P32、表4.2
しかし、従来のアルミニウム箔やアルミニウム合金箔においては、以下のような問題がある。
アルミニウム箔並びにアルミニウム合金箔においては、強度の上昇並びに箔厚の減少に伴い、伸び(延性)が減少することが知られている。なお、このことは、非特許文献1にも明示されている。
しかしながら、電極材製造ラインでの圧着・スリット等の工程において、高強度であっても伸びが少ないと、箔が脆い状態となり、製造ラインで箔が破断し、ラインが停止するようなトラブルが発生するという問題があり、強度も然りながら伸びが重視されてきた。
一方、高強度化のためにMnを多量に添加した合金箔材では、非特許文献2に明示されているように電気抵抗が大きいため、組立て後の電池としての使用に際して望ましくないという問題もある。
本発明は、前記問題点に鑑みてなされたものであり、ある程度の強度を有し、優れた伸びを有すると共に、且つ電気抵抗の低い電池集電体用アルミニウム硬質箔を提供することを課題とする。
前記課題を解決するために、本発明者らは、以下の事項について検討した。
箔の高強度化のためには、Mg,Mn,Cu等を添加すれば良いことは公知であり、前記従来技術での提案にも用いられている。しかし、薄肉硬質箔の延性(伸び)を増加させる手段は知られていなかった。また、純アルミニウム箔や8021合金箔では、導電率は高いが強度および伸びの点で不十分であった。
一般に、1N30等の純アルミニウム薄肉箔の製造に際して、材料の製造工程での固溶・析出制御および箔圧延条件の制御により、仕上げ箔圧延前での材料組織をサブグレイン組織とすることで、ピンホールの少ない薄箔が製造出来ることが知られていた。この組織状態は、伸びも比較的高いことから、サブグレインを微細に制御することが出来れば、比較的強度が高くても、高延性が得られるものと考えた。
通常、透過電子顕微鏡等で箔の材料組織を観察する場合が多いが、局所的な情報しか得られず、15μm前後の厚みの箔の断面全域での観察はなされていなかった。そこで、硬質箔の伸びに及ぼす諸因子の影響につき鋭意研究した結果、厚み方向および圧延方向の結晶粒(サブグレイン)のサイズが伸びと相関することが推察され、箔の断面でのサブグレインの観察条件を新たに確立することにより、本発明に至った。すなわち、どの状態の硬質箔であっても、断面でのサブグレイン径(厚み方向および圧延方向)は不均一であることを究明した。この究明点より、本発明者等は、従来は、厚み方向および圧延方向のサブグレインのサイズが大きいために不均一な変形であり、伸びが低い状態であったこと、厚み方向および圧延方向のサブグレインのサイズが小さくなるように制御すると、引張り変形等にて均一な変形が可能であり、高い伸びが得られること、を究明し、本発明の完成に至った。サブグレインは、中間焼鈍時の結晶粒径が圧延され、薄くなった層から成長・形成されることも究明し、厚み方向および圧延方向においてサイズの小さなサブグレインを形成させるためには、中間焼鈍時の結晶粒数と固溶状態を制御することが必要条件であることも究明した。
さらに、本発明者等は実際の箔での導電率を測定し、実際の導電率は、薄い硬質箔であることに起因して、非特許文献1、2に記載されている数値とは異なり、より低いことを究明した。
このように、従来から高強度化のために合金元素を添加した合金箔(Al純度:99.0質量%未満)が指向されてきたが、本発明は電気抵抗の低下・抑制のため純アルミニウムの範疇で、高強度・高伸び化を測ったものである。
すなわち、本発明に係る電池集電体用アルミニウム硬質箔(以下、適宜、アルミニウム箔という)は、Fe:0.2〜1.3質量%、Cu:0.01〜0.5質量%を含有し、Si:0.2質量%以下に抑制し、残部がAlおよび不可避的不純物からなり、純度が98.0質量%以上であるとともに、サブグレインのサイズが厚み方向で0.8μm以下、圧延方向で45μm以下であることを特徴とする。
そして、本発明に係る電池集電体用アルミニウム硬質箔は、シングル圧延により製造された請求項1に記載の電池集電体用アルミニウム硬質箔であって、厚みが9〜20μmであり、引張強さが220MPa以上、かつ、伸びが3.0%以上であることが好ましい。
また、本発明に係る電池集電体用アルミニウム硬質箔は、重合圧延により製造された請求項1に記載の電池集電体用アルミニウム硬質箔であって、厚みが5〜20μmであり、引張強さが215MPa以上、かつ、伸びが1.0%以上であることが好ましい。
このような構成によれば、Feを所定量添加することで、中間焼鈍時に結晶粒が微細化され、Fe、Cuを所定量添加することで、アルミニウム箔の強度が向上して引張強さが、シングル圧延の場合は220MPa以上、重合圧延の場合は215MPa以上となり、アルミニウムとしては十分な強度となる。また、Cu含有量を0.5質量%以下とすることで55%以上の導電率が得られ、電池集電体として十分な特性を有するものとなる。さらに、Siを所定量以下に抑制することで、Al−Fe系の金属間化合物が粗大なα−Al−Fe−Si系の金属間化合物となりにくいため伸びが低下することなく、また結晶粒径が粗大とならず、厚み方向に十分なサブグレイン数が得られる。また、厚みを9〜20μm(シングル圧延の場合)、5〜20μm(重合圧延の場合)とすることで、電池集電体用として適したアルミニウム箔とすることができる。さらに、サブグレインの厚み方向のサイズが0.8μm以下、圧延方向に45μm以下とすることで、アルミニウム箔の伸びが向上し、伸びが、シングル圧延の場合は3.0%以上、重合圧延の場合は1.0%以上となり、アルミニウムとしては十分な伸びとなる。
本発明に係る電池集電体用アルミニウム硬質箔は、さらに、Mn:0.07質量%以下、Mg:0.05質量%以下のうち1種以上を含有することが好ましい。
このような構成によれば、さらにMnとMgのいずれかの少なくとも一つを添加することによって、強度を高くすることができる。そして、その場合には、Mnを所定量以下の添加量とすることで、伸びが低下することがなく、Mgも所定量以下の添加量とすることで、伸びおよび導電率が低下することがない。
本発明に係る電池集電体用アルミニウム硬質箔は、導電率が55%(IACS)以上であることが好ましい。
このような構成によれば、電池としての使用時に、電池の効率が向上する。
本発明に係る電池集電体用アルミニウム硬質箔は、9〜20μm(シングル圧延の場合)、5〜20μm(重合圧延の場合)の薄肉であっても、純アルミニウムとしては高強度を有するため、また電気抵抗が低いこともあり、リチウムイオン二次電池の高容量化を図ることができる。さらに、伸びも優れるため、電極材の製造工程において、箔が破断することを防止することができ、製造ラインが停止するようなトラブルの発生を防止することができる。
以下、本発明に係る電池集電体用アルミニウム硬質箔(以下、適宜、アルミニウム箔という)を実現するための形態について説明する。
本発明に係るアルミニウム箔は、Fe、Cuを所定量含有し、Siを所定量以下に抑制し、残部がAlおよび不可避的不純物からなるものである。そして、このアルミニウム箔の厚みが9〜20μm(シングル圧延の場合)、5〜20μm(重合圧延の場合)であり、この厚み方向のサブグレインのサイズが0.8μm以下、圧延方向のサイズが45μm以下、である。さらに、引張強さを、シングル圧延により製造される場合は220MPa以上、重合圧延により製造される場合は215MPa以上、かつ伸びを、シングル圧延により製造される場合は3.0%以上、重合圧延により製造される場合は1.0%以上に規定したものである。またアルミニウム箔は、Mn、Mgのうちの一種以上を所定量含有してもよい。そして、アルミニウム箔の導電率は、55%以上となる。
以下、各構成について説明する。
(Fe:0.2〜1.3質量%)
Feは、中間焼鈍時の結晶粒微細化のため、また固溶強化による強度向上のため、さらにはサブグレイン安定化のために添加する元素である。Fe含有量が0.2質量%未満では、結晶粒径が粗大となり、厚み方向および圧延方向に十分に微細化せず、また、十分な強度が得られ難い。
また、Fe含有量が 1.3質量%を超えると、導電率が低下する。
したがって、Fe含有量は、0.2〜1.3質量%とする。
(Cu:0.01〜0.5質量%)
Cuは固溶強化による強度向上のため添加する元素である。0.01質量%未満では強度が不十分となる。0.5質量%を超えると伸びが低下する。Cuは添加分の半分程度が晶出物や分散粒子といった第二相に入り込むため、同量のMnを添加する場合よりも導電率が高い。
(Si:0.2質量%以下)
Siは、不可避的不純物として混入し易い元素である。Si含有量が0.2質量%を超えると、Al−Fe系の金属間化合物が粗大なα−Al−Fe−Si系の金属間化合物となり易く、伸びが得難い。また金属間化合物の分布密度が減少することによって結晶粒径が粗大となり、サブグレインのサイズを十分に小さくすることができない。したがって、Si含有量は、0.2質量%以下とする。なお、Siは0質量%でもよい。
(Mn:0.5質量%以下)
Mnも強度向上には望ましい元素であり、添加してもよい。しかし、0.5質量%を超えると導電率が低下する。したがって、添加する場合のMn含有量は0.5%質量%以下とする。
(Mg:0.05質量%以下)
Mgも強度向上には望ましい元素であり、添加してもよい。しかし、0.05質量%を超えると伸びが低下する。また、導電率が低下する。したがって、添加する場合のMg含有量は0.05質量%以下とする。
その他、鋳塊組織の微細化のために、Al−Ti−B中間合金を添加する場合がある。すなわち、Ti:B=5:1あるいは5:0.2の割合とした鋳塊微細化剤を、ワッフルあるいはロッドの形態で溶湯(スラブ凝固前における、溶解炉、介在物フィルター、脱ガス装置、溶湯流量制御装置へ投入された、いずれかの段階での溶湯)へ添加してもよく、Ti量で、0.1質量%までの含有は許容される。
また、結晶粒微細化のためにCr、Zr、Vを添加する場合があるが、導電率の低下を避けるために、添加する場合のCr、Zr、Vの含有量は0.5質量%以下が望ましい。
(残部:Alおよび不可避的不純物)
アルミニウム箔の成分は前記の他、Alおよび不可避的不純物からなるものである。そして、アルミニウムの純度は98.0質量%以上である。なお、不可避的不純物としてZnは0.1質量%までの含有は許容される。Zn量が0.1質量%を超えると耐食性が悪くなる。また、地金や中間合金に含まれている、通常知られている範囲内のGa、Ni等は、それぞれ0.05質量%までの含有は許容される。
(厚み:シングル圧延箔9〜20μm、重合圧延箔5〜20μm)
リチウムイオン二次電池の電池容量を大きくするためには、アルミニウム箔の厚さはできるだけ薄いほうがよいが、シングル圧延では9μm未満の高強度箔を作製することは困難であり、重合圧延では5μm未満の高強度箔を作製することは困難である。また、20μmを超えると、決められた体積のケース中に多くの電極材を入れることができず、電池容量が低下する。したがって、アルミニウム箔の厚みは、シングル圧延箔で9〜20μm、重合圧延箔で5〜20μmとする。
(サブグレインサイズ:厚み方向0.8μm以下、圧延方向45μm以下)
9〜20μm(シングル圧延の場合)、5〜20μm(重合圧延の場合)の厚みのアルミニウム箔での伸びの増加のためには、サブグレインサイズを、厚み方向で0.8μm以下、圧延方向で45μm以下とすることが必要である。それ以上のサイズでは、アルミニウム箔の伸びが十分に得られない。また、サブグレインサイズが微細であればあるほどよく、下限は特に限定されるものではない。
次に、厚み方向および圧延方向のサブグレインのサイズの測定方法の確立について説明する。
まず、アルミニウム箔を約5×10mmに切断し、薄板基盤に、電導性テープを用いて、この切断した箔を、箔が僅かに出っ張った状態となるように貼付ける。次に、この箔の部分をFIB(Focused Ion Beam)装置で切断し、平行断面を観察出来るようにする。なお、多用されている樹脂埋め法では、SEM(走査電子顕微鏡)観察時に樹脂部がチャージアップし測定が困難である。そして、この断面について、SEMにて、観察倍率を×2000倍とし、EBSD(Electron Back Scatter Diffraction)解析を行い、方位マッピング像を得る。測定は、一つの試料につき10視野にて行えばよい。なお、通常は表面から観察するため、解析ソフトは自動的に表面から見たND面の方位マッピング像を表示するようになっている。本解析では、平行断面(RD−TD面)観察であり、RD−ND面から見たND面の方位マッピング像が得られるよう回転操作する。そして、この得られた方位マッピング像により、線分法にてサブグレインのサイズを算出する。具体的には、次のとおりである。サブグレインは、結晶粒間の傾角が0〜15°であり、傾角15°未満の境界と傾角15°以上の境界を方位マッピング上に線で角度差別に色別表示することができる。この事項をもとに、方位マッピング像(方位マッピング図)から結晶粒間の傾角と色とを肉眼にて判定し、サブグレインのサイズを測定する。
(引張強さ:220MPa以上(シングル圧延の場合)、215MPa以上(重合圧延の場合))
引張強さが220MPa未満では、シングル圧延により製造されたアルミニウム箔としての強度が不十分である。一方、重合圧延により製造されたアルミニウム箔の引張強度は、215MPa以上であればよい。
したがって、引張強さは、220MPa以上(シングル圧延の場合)、215MPa以上(重合圧延の場合)とする。
(伸び:3.0%以上(シングル圧延の場合)、1.0%以上(重合圧延の場合))
合金箔に比較して強度が若干劣る分、より優れた伸びが必要である。伸びが3.0%未満では、シングル圧延により製造されたアルミニウム箔としての伸びが不十分である。一方、重合圧延により製造されたアルミニウム箔の伸びは、1.0%以上であればよい。
したがって、伸びは、3.0%以上(シングル圧延の場合)、1.0%以上(重合圧延の場合)とする。なお、伸びは高ければ高い程、好ましい。
引張強さおよび伸びの測定は、アルミニウム箔の巾方向中央部から、引張方向が圧延方向と平行になるように15mm幅×約200mm長さの短冊型試験片を切り出し、チャック間距離100mmを評点間距離として実施する。伸びはクロスヘッドの変位より算出する。試験回数は、材料1種類につき5回とする。引張強さと伸びの値は、5回のうち最大および最小の値を除いた3回の平均値とする。試験には、株式会社オリエンテック製 テンシロン万能試験機 型式:RTC−1225Aを用いることができる。
(導電率:55%以上)
電気部品として用いるためには電気抵抗が低いことが必要である。電気抵抗が低い、すなわち導電率が55%以上であると、電池としての使用時に効率が向上する。したがって、導電率は、55%以上とする。なお、導電率は高ければ高い程、好ましい。
なお、本発明の構成とすることで、9〜20μm厚において、55%以上の導電率が得られ、電池集電体として十分な特性を有するものとなる。測定は、アルミニウム箔の巾方向中央部付近にて行い、測定回数は、材料1種類につき4回とする。
次に、導電率の測定(算出)方法について説明する。本測定はJIS C2525に則り、アルバック理工株式会社製 電気抵抗測定装置 TER−2000RHを用い、直流4端子法にて電気抵抗を測定することにより行うことができる。
具体的には、まず、所定厚みの箔を所定の大きさに切断し、両端にNi線をスポット溶接し、4端子法にて電気抵抗を測定する。試験片の抵抗Rは試料に流れる電流Iと電圧端子間の電位差Vから、R=V/Iにより求める。電流Iは試験片と直列に接続した標準抵抗(0.1Ω)の電圧降下から求める。試験片および標準抵抗の電圧降下とR熱電対の起電力は、検出感度±0.1μVのデジタルマルチメータを用いて求める。そして導電率は、下式にて求める。
体積抵抗ρ=R(A/L)
導電率γ(%IACS)={1.7241〔μΩ・cm〕/体積抵抗ρ〔μΩ・cm〕}×100
A:試料断面積
L:測定部長さ
1.7241〔μΩ・cm〕:標準軟銅の体積抵抗率
〔アルミニウム箔の製造方法〕
次に、アルミニウム箔の製造方法について説明する。アルミニウム箔の製造方法は、アルミニウム鋳塊を、定法により、均質化熱処理、熱間圧延を行った後、所定条件で、冷間圧延、必要に応じて中間焼鈍を行い、その後、冷間圧延、箔圧延を行うというものである。なお、箔圧延は、シングル圧延または重合圧延のいずれかの方法により行うのが一般的である。ここで、重合圧延とは、最終パスにおいてアルミニウム箔を2枚重ねてロールに供給し、圧延するものである。シングル圧延とは、最終パスまで1枚のアルミニウム箔をロールに供給し、圧延するというものである。
アルミニウム箔において、サブグレインのサイズを小さくするためには、中間焼鈍をしないか、中間焼鈍を連続焼鈍(CAL)により急速加熱・急速冷却することにより、中間焼鈍時の結晶粒径を微細とすることが好ましい。そのため、熱間圧延後から中間焼鈍までの冷間加工率(冷延率)は高いことが好ましく、30%以上の冷延率とすることが好ましい。また、強度を向上させるためにも、30%以上の冷延率とすることが好ましい。中間焼鈍までの冷延率が85%を超えると、効果が飽和してしまい経済的ではないため、85%以下が好ましい。ただし、中間焼鈍をバッチ焼鈍で行うと、中間焼鈍時の再結晶粒径が粗大になり、中間焼鈍を行わない場合よりも伸びが低下してしまう。
中間焼鈍後は高い冷延率でアルミニウム箔とし、サブグレイン化をより促進すると共に、特に強度を向上させる必要があるため、中間焼鈍後の冷延率、すなわち、中間焼鈍後から最終的なアルミニウム箔(最終品)とするまでのトータルの冷延率を98.5%以上とすることが好ましく、そのために、中間焼鈍時の板厚を1mm以上とすることが好ましい。なお、アルミニウム箔で高い強度を得るためにも、中間焼鈍時の板厚は1mm以上が好ましい。ただし、2mmを超える厚さで中間焼鈍を行うと、強度が高くなりすぎて箔圧延が困難となり易いため、2mm以下が好ましい。なお、箔圧延を容易にするためには、強度の絶対値は高い値であっても、100μm厚程度以下の箔厚において加工硬化は少ないことが好ましい。また、箔圧延によるサブグレイン化を促進するためには、ある程度温度上昇が必要であり、コイル巻き取り後40〜100℃程度になるように行う。箔圧延中に温度上昇が無い場合、サブグレイン化による結晶粒微細化は難しい。
均質化熱処理は、均熱温度を350℃以上560℃以下の条件で行う。均熱温度が350℃未満の場合は均質化不足になりアルミニウム箔の伸びが低下する。均熱温度が560℃を超えると、分散粒子が粗大かつ疎に分布するようになり、粒界ピン止め力が低下し、微細結晶粒が得られず、アルミニウム箔の伸びが低下してしまう。分散粒子の粒界ピン止め力を増加させ、箔の結晶粒を微細化するためには、350℃以上560℃以下の均熱温度の範囲では低温側が望ましい。
中間焼鈍は、再結晶粒径を微細にし、箔のサブグレインのサイズを厚み方向で0.8μm以下、圧延方向で45μm以下とするため、連続焼鈍炉にて焼鈍する。そして、焼鈍温度(到達温度)を380℃以上550℃以下、保持時間を1分以下の条件で行う。
焼鈍温度が380℃未満では、再結晶が十分に進まず、サブグレインのサイズが大きくなると共に、固溶の程度が不十分となる。一方、550℃を超えると、再結晶並びに固溶の効果が飽和すると共に表面外観が劣化し易くなる。また、昇降温速度は、連続焼鈍における常法の範囲であればよいが、バッチ焼鈍では、常法の範囲であっても、加熱中に析出が進み、箔圧延時にサブグレインの合体・粗大化が進行してしまう。また加工硬化の程度も不十分であり、強度が低下する。なお、連続焼鈍の場合、昇温速度は、1〜100℃/秒、降温速度は、1〜500℃/秒が常法範囲である。バッチ焼鈍の場合は、昇温速度は、20〜60℃/時間、降温速度は、炉冷、放冷、強制空冷等を任意に適用し、これらの条件に従う。
そして、固溶のためには保持時間は長いことが好ましいが、連続焼鈍炉であるために、1分を超える保持は、ライン速度が著しく遅くなるため経済的に劣る。
このように、厚み方向および圧延方向のサブグレインのサイズは、成分範囲、中間焼鈍時の結晶粒数、固溶状態により制御することができる。
以上、本発明を実施するための形態について述べてきたが、以下に、本発明の効果を確認した実施例を、本発明の要件を満たさない比較例と対比して具体的に説明する。なお、本発明はこの実施例に限定されるものではない。
〔供試材作製〕
(発明例No.1〜14、比較例No.15〜25)
表1に示す組成のアルミニウムを、溶解、鋳造して鋳塊とし、この鋳塊に面削を施した後に、360〜550℃の範囲にて2〜4時間の均質化熱処理を施した。この均質化した鋳塊に、熱間圧延、さらに冷間圧延を施した後、中間焼鈍を行い、その後、所定の厚さまで冷間圧延し、アルミニウム箔とした。中間焼鈍、冷間圧延の条件は、表1に示すとおりである。
なお、連続焼鈍(CAL)の場合、昇温速度は、10℃/秒、降温速度は、20℃/秒とし、バッチ焼鈍(BATCH)の場合、昇温速度は、40℃/時間、降温速度は、80℃/時間(放冷)とした。また、トータル冷延率は、およその値である。
シングル圧延および重合圧延によりアルミニウム箔を製造した場合の成分組成、特性、及び製造条件を表1に示す。なお、表中、本発明の範囲を満たさないもの、および、製造条件を満たさないものは、数値等に下線を引いて示す。また、表1中、熱間圧延後の板の厚さは、熱延終了厚と記し、中間焼鈍前の板の厚さは、中間焼鈍厚と記す。
〔サブグレインのサイズ〕
次に、アルミニウム箔の厚み方向および圧延方向におけるサブグレインのサイズを以下の方法により測定した。
まず、アルミニウム箔を約5×10mmに切断し、薄板基盤に、電導性テープを用いて、この切断した箔を、箔が僅かに出っ張った状態となるように貼付けた。次に、この箔の部分をFIB(Focused Ion Beam)装置で切断し、平行断面を観察出来るようにした。そして、この断面について、走査電子顕微鏡にて、観察倍率を×2000倍とし、EBSD(Electron Back Scatter Diffraction)解析を行い、箔の全厚にわたって方位マッピング像を得た。一試料あたり10視野で測定した。なお、通常は表面から観察するため、解析ソフトは自動的に表面から見たND面の方位マッピング像を表示するようになっている。本解析では、平行断面(RD−TD面)観察であり、RD−ND面から見たND面の方位マッピング像が得られるよう回転操作した。そして、この方位マッピング像に基づき、線分法にてサブグレインサイズを算出した。
この結果を表1に示す。
ここで、結晶粒間の傾角が15°以下で囲まれた領域がサブグレインであり、同一結晶方位のサブグレインは同一の色となる。なお、色と結晶方位との関係はカラーコードに示されている。また、サブグレイン間の傾角は0〜15°であるが、傾角0〜15°の境界を方位マッピング上に線で表示することができる。そして、前記事項を加味して、方位マッピング図を肉眼判定にて、サブグレインのサイズを計測した。なお、結晶粒の存在箇所は、微小領域であり、サブグレインは、場所によってサイズが異なるが、サイズの計測においては、ここでは、最も大きなサイズのサブグレインを計測した。
〔導電率〕
次に、アルミニウム箔の導電率を以下の方法により測定した。本測定はJIS C2525に則り、アルバック理工株式会社製 電気抵抗測定装置 TER−2000RHを用い、直流4端子法にて電気抵抗を測定することにより行った。
具体的には、まず、所定厚みの箔を、3mm幅×80mm長さに切断し、両端にNi線をスポット溶接し、4端子法にて電気抵抗を測定した。試験片の抵抗Rは試料に流れる電流Iと電圧端子間の電位差Vから、R=V/Iにより求めた。電流Iは試験片と直列に接続した標準抵抗(0.1Ω)の電圧降下から求めた。試験片および標準抵抗の電圧降下とR熱電対の起電力は検出感度±0.1μVのデジタルマルチメータを用いて求めた。導電率は、下式にて求めた。
体積抵抗ρ=R(A/L)
導電率γ(%IACS)={1.7241〔μΩ・cm〕/体積抵抗ρ〔μΩ・cm〕}×100
A:試料断面積
L:測定部長さ
1.7241〔μΩ・cm〕:標準軟銅の体積抵抗率
〔評価〕
得られたアルミニウム箔にて以下の評価を行った。
(強度および伸び)
引張強さおよび伸びの測定は、軽金属協会規格 LIS AT5に準じてB型試験片を用いて実施した。すなわち、アルミニウム箔から、引張方向が圧延方向と平行になるように15mm幅×約200mm長さの短冊型試験片を切り出し、チャック間距離100mmを評点間距離として実施した。試験には、株式会社オリエンテック製 テンシロン万能試験機 型式:RTC−1225Aを用いた。この試験にて、引張強さ、および、伸びを測定した。シングル圧延により製造されたアルミニウム箔については、引張強さの合格基準は、220MPa以上、伸びの合格基準は、3.0%以上とした。一方、重合圧延により製造されたアルミニウム箔については、引張強さの合格基準は、215MPa以上、伸びの合格基準は、1.0%以上とした。
これらの結果を表1に示す。なお、表中、引張強さ、伸び、導電率が合格基準を満たさないものは、数値に下線を引いて示す。
Figure 0005639398
(アルミニウム箔による評価)
表1に示すように、発明例であるNo.1〜14は、本発明の範囲を満たすため、強度および伸びが優れており、導電率も55%以上であった。
一方、比較例であるNo.15〜25は、本発明の範囲を満たさないため、以下の結果となった。
No.15は、Si含有量が上限値を超えるため、α−Al−Fe−Si系の金属間化合物が粗大化し、破断の起点となり、伸びが劣った。
No.16は、Fe含有量が下限値未満のため、結晶粒径が粗大となり、サブグレインサイズが上限値以上となった。そのため、伸びが劣った。No.17は、Fe含有量が上限値を超えるため、圧延性に優れるが、導電率が低下した。
No.18は、Cu含有量が下限値を下回ったため、強度が低下した。No.19は、Cu含有量が上限値を超えたため、伸びが低下した。No.20は、Mn含有量が上限値を超えるため、導電率が低下した。No.21はMg含有量が上限値を超えるため、導電率が低下した。また、伸びが劣った。
No.22は、サブグレインサイズが上限値以上であるとともに、均熱温度が高すぎて、分散粒子のピン止め力が得られず、箔の結晶粒が微細化しなかったため、伸びが劣った。No.23は、サブグレインサイズが上限値以上であるとともに、均熱温度が低すぎて、均質化不足を招き、伸びが劣った。No.24は、中間焼鈍がバッチ式のため、中間焼鈍時に微細な結晶粒が得られず、箔圧延時にサブグレインが成長・合体し、微細なサブグレイン組織が得られなかった。また加工硬化の程度も不十分であった。これらのため、引張強さ(引張強度)が低く、強度に劣り、また、サブグレインサイズが上限値を超え、伸びが劣った。
No.25は、Fe含有量が下限値未満のため、結晶粒径が粗大となり、サブグレインサイズが上限値以上となった。そのため、重合圧延した場合、引張強さが低いとともに、伸びが1.0%未満となり、劣った。
以上、本発明に係る電池集電体用アルミニウム硬質箔について実施の形態および実施例を示して詳細に説明したが、本発明の趣旨は前記した内容に限定されるものではない。なお、本発明の内容は、前記した記載に基づいて広く改変・変更等することができることはいうまでもない。

Claims (5)

  1. Fe:0.2〜1.3質量%、Cu:0.01〜0.5質量%を含有し、Si:0.2質量%以下に抑制し、残部がAlおよび不可避的不純物からなり、純度が98.0質量%以上であるとともに、サブグレインのサイズが厚み方向で0.8μm以下、圧延方向で45μm以下であることを特徴とする電池集電体用アルミニウム硬質箔。
  2. シングル圧延により製造された請求項1に記載の電池集電体用アルミニウム硬質箔であって、
    厚みが9〜20μmであり、引張強さが220MPa以上、かつ、伸びが3.0%以上であることを特徴とする電池集電体用アルミニウム硬質箔。
  3. 重合圧延により製造された請求項1に記載の電池集電体用アルミニウム硬質箔であって、
    厚みが5〜20μmであり、引張強さが215MPa以上、かつ、伸びが1.0%以上であることを特徴とする電池集電体用アルミニウム硬質箔。
  4. さらに、Mn:0.07質量%以下、Mg:0.05質量%以下のうち1種以上を含有することを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の電池集電体用アルミニウム硬質箔。
  5. 導電率が55%以上であることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載の電池集電体用アルミニウム硬質箔。
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