JP5927614B2 - 電池集電体用アルミニウム硬質箔 - Google Patents
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Description
また、例えば、特許文献3には、アルミニウム合金箔にMg,Co,Zr,W等を添加して、240〜400MPaの強度とし、伸びや耐食性を得る提案もなされている。
アルミニウム箔並びにアルミニウム合金箔においては、強度の上昇並びに箔厚の減少に伴い、伸び(延性)が減少することが知られている。なお、このことは、非特許文献1にも明示されている。
しかしながら、電極材製造ラインでの圧着・スリット等の工程において、高強度であっても伸びが少ないと、箔が脆い状態となり、製造ラインで箔が破断し、ラインが停止するようなトラブルが発生するという問題があり、強度も然りながら伸びが重視されてきた。
一方、高強度化のためにMnを多量に添加した合金箔材では、非特許文献2に明示されているように電気抵抗が大きいため、組立て後の電池としての使用に際して望ましくないという問題もある。
箔の高強度化のためには、Mg,Mn,Cu等を添加すれば良いことは公知であり、前記従来技術での提案にも用いられている。しかし、薄肉硬質箔の延性(伸び)を増加させる手段は知られていなかった。また、純アルミニウム箔や8021合金箔では、導電率は高いが強度および伸びの点で不十分であった。
一般に、1N30等の純アルミニウム薄肉箔の製造に際して、材料の製造工程での固溶・析出制御および箔圧延条件の制御により、仕上げ箔圧延前での材料組織をサブグレイン組織とすることで、ピンホールの少ない薄箔が製造出来ることが知られていた。この組織状態は、伸びも比較的高いことから、サブグレインを微細に制御することが出来れば、比較的強度が高くても、高延性が得られるものと考えた。
このように、従来から高強度化のために合金元素を添加した合金箔(Al純度:99.0質量%未満)が指向されてきたが、本発明は電気抵抗の低下・抑制のため純アルミニウムの範疇で、高強度・高伸び化を図ったものである。
このような構成によれば、電池としての使用時に、電池の効率が向上する。
以下、各構成について説明する。
Feは、中間焼鈍時の結晶粒微細化のため、また、それによる強度向上のため、さらにはサブグレイン安定化のために添加する元素である。重合圧延により製造される場合は、Fe含有量が1.4質量%未満では、結晶粒径が粗大となり、マット面の粗度が粗くなり、十分な伸びが得られ難い。
また、シングル圧延により製造される場合および重合圧延により製造される場合において、Fe含有量が1.7質量%を超えると、粗大晶出物が形成され、伸びが低下する。
したがって、Fe含有量は、1.4〜1.7質量%とする。
Cuは固溶強化による強度向上のため添加する元素である。0.1質量%未満では強度が不十分となる。0.5質量%を超えると伸びが低下する。Cuは添加分の半分程度が晶出物や分散粒子といった第二相に入り込むため、同量のMnを添加する場合よりも導電率が高い。
したがって、Cu含有量は、0.1〜0.5質量%とする。
Siは、不可避的不純物として混入し易い元素である。Si含有量が0.4質量%を超えると、Al−Fe系の金属間化合物が粗大なα−Al−Fe−Si系の金属間化合物となり易く、伸びが得難い。また金属間化合物の分布密度が減少することによって結晶粒径が粗大となり、サブグレインのサイズを十分に小さくすることができない。
したがって、Si含有量は、0.4質量%以下とする。好ましくは、0.2質量%以下である。なお、Siは0質量%でもよい。
Mnも強度向上には望ましい元素であり、添加してもよい。しかし、0.5質量%を超えると導電率が低下する。
したがって、添加する場合のMn含有量は0.5質量%以下とする。
Mgも強度向上には望ましい元素であり、添加してもよい。しかし、0.05質量%を超えると伸びが低下する。また、導電率が低下する。
したがって、添加する場合のMg含有量は0.05質量%以下とする。
その他、鋳塊組織の微細化のために、Al−Ti−B中間合金を添加する場合がある。すなわち、Ti:B=5:1あるいは5:0.2の割合とした鋳塊微細化剤を、ワッフルあるいはロッドの形態で溶湯(スラブ凝固前における、溶解炉、介在物フィルター、脱ガス装置、溶湯流量制御装置へ投入された、いずれかの段階での溶湯)へ添加してもよく、Ti量で、0.1質量%までの含有は許容される。なお、Tiが0.1質量%を超えると、導電率が低下する。
また、結晶粒微細化のためにCr、Zr、Vを添加する場合があるが、導電率の低下を避けるために、添加する場合のCr、Zr、Vの含有量は0.5質量%以下が望ましい。
アルミニウム箔の成分は前記の他、Alおよび不可避的不純物からなるものである。なお、不可避的不純物としてZnは0.1質量%までの含有は許容される。Zn量が0.1質量%を超えると耐食性が悪くなる。また、地金や中間合金に含まれている、通常知られている範囲内のGa、Ni等は、それぞれ0.05質量%までの含有は許容される。
リチウムイオン二次電池の電池容量を大きくするためには、アルミニウム箔の厚さはできるだけ薄いほうがよいが、シングル圧延では9μm未満の高強度箔を作製することは困難であり、重合圧延では5μm未満の高強度箔を作製することは困難である。また、20μmを超えると、決められた体積のケース中に多くの電極材を入れることができず、電池容量が低下する。したがって、アルミニウム箔の厚みは、シングル圧延箔で9〜20μm、重合圧延箔で5〜20μmとする。
9〜20μm(シングル圧延の場合)、5〜20μm(重合圧延の場合)の厚みのアルミニウム箔での伸びの増加のためには、サブグレインサイズを、厚み方向で0.8μm以下、圧延方向で45μm以下とすることが必要である。それ以上のサイズでは、アルミニウム箔の伸びが十分に得られない。また、サブグレインサイズが微細であればあるほどよく、下限は特に限定されるものではない。
まず、アルミニウム箔を約5×10mmに切断し、薄板基盤に、電導性テープを用いて、この切断した箔を、箔が僅かに出っ張った状態となるように貼付ける。次に、この箔の部分をFIB(Focused Ion Beam)装置で切断し、平行断面を観察出来るようにする。なお、多用されている樹脂埋め法では、SEM(走査電子顕微鏡)観察時に樹脂部がチャージアップし測定が困難である。そして、この断面について、SEMにて、観察倍率を×2000倍とし、EBSD(Electron Back Scatter Diffraction)解析を行い、方位マッピング像を得る。測定は、一つの試料につき10視野にて行った。なお、通常は表面から観察するため、解析ソフトは自動的に表面から見たND面の方位マッピング像を表示するようになっている。本解析では、平行断面(RD−TD面)観察であり、RD−ND面から見たND面の方位マッピング像が得られるよう回転操作する。そして、この得られた方位マッピング像により、線分法にてサブグレインのサイズを算出する。具体的には、次のとおりである。サブグレインは、結晶粒間の傾角が0〜15°であり、傾角15°未満の境界と傾角15°以上の境界を方位マッピング上に線で角度差別に色別表示することができる。この事項をもとに、方位マッピング像(方位マッピング図)から結晶粒間の傾角と色とを肉眼にて判定し、サブグレインのサイズを測定する。
引張強さが240MPa以上では、様々な型の電池集電体用箔として十分な強度が確保できる。
したがって、引張強さは、240MPa以上とする。
3000系合金箔と比較して強度が若干劣る分、より優れた伸びが必要である。シングル圧延により製造されたアルミニウム箔として、伸びが4.0%以上は、電池集電体用箔として十分な伸びである。一方、重合圧延により製造されたアルミニウム箔の伸びは、2.6%以上であればよい。
したがって、伸びは、2.6%以上(重合圧延の場合)、4.0%以上(シングル圧延の場合)とする。なお、伸びは高ければ高い程、好ましい。
電気部品として用いるためには電気抵抗が低いことが必要である。電気抵抗が低い、すなわち導電率が53%以上であると、電池としての使用時に効率が向上する。したがって、導電率は、53%以上とする。なお、導電率は高ければ高い程、好ましい。
なお、本発明の構成とすることで、9〜20μm(シングル圧延の場合)、5〜20μm(重合圧延の場合)の厚みのアルミニウム箔において、53%以上の導電率が得られ、電池集電体として十分な特性を有するものとなる。測定は、アルミニウム箔の巾方向中央部付近にて行い、測定回数は、材料1種類につき4回とする。
具体的には、まず、所定厚みの箔を所定の大きさに切断し、両端にNi線をスポット溶接し、4端子法にて電気抵抗を測定する。試験片の抵抗Rは試料に流れる電流Iと電圧端子間の電位差Vから、R=V/Iにより求める。電流Iは試験片と直列に接続した標準抵抗(0.1Ω)の電圧降下から求める。試験片および標準抵抗の電圧降下とR熱電対の起電力は、検出感度±0.1μVのデジタルマルチメータを用いて求める。そして導電率は、下式にて求める。
体積抵抗ρ=R(A/L)
導電率γ(%IACS)={1.7241〔μΩ・cm〕/体積抵抗ρ〔μΩ・cm〕}×100
A:試料断面積
L:測定部長さ
1.7241〔μΩ・cm〕:標準軟銅の体積抵抗率
次に、アルミニウム箔の製造方法について説明する。アルミニウム箔の製造方法は、アルミニウム鋳塊を、定法により、均質化熱処理、熱間圧延を行った後、所定条件で、冷間圧延、必要に応じて中間焼鈍を行い、その後、冷間圧延、箔圧延を行うというものである。なお、箔圧延は、シングル圧延または重合圧延のいずれかの方法により行うのが一般的である。ここで、重合圧延とは、最終パスにおいてアルミニウム箔を2枚重ねてロールに供給し、圧延するものである。シングル圧延とは、最終パスまで1枚のアルミニウム箔をロールに供給し、圧延するというものである。
中間焼鈍は、再結晶粒径を微細にし、箔のサブグレインのサイズを厚み方向で0.8μm以下、圧延方向で45μm以下とするため、連続焼鈍炉にて焼鈍する。そして、焼鈍温度(到達温度)を380℃以上550℃以下、保持時間を1分以下の条件で行う。
焼鈍温度が380℃未満では、再結晶が十分に進まず、サブグレインのサイズが大きくなると共に、固溶の程度が不十分となる。一方、550℃を超えると、再結晶並びに固溶の効果が飽和すると共に表面外観が劣化し易くなる。また、昇降温速度は、連続焼鈍における常法の範囲であればよいが、バッチ焼鈍では、常法の範囲であっても、加熱中に析出が進み、箔圧延時にサブグレインの合体・粗大化が進行してしまう。また加工硬化の程度も不十分であり、強度が低下する。なお、連続焼鈍の場合、昇温速度は、1〜100℃/秒、降温速度は、1〜500℃/秒が常法範囲である。バッチ焼鈍の場合は、昇温速度は、20〜60℃/時間、降温速度は、炉冷、放冷、強制空冷等を任意に適用し、これらの条件に従う。
そして、固溶のためには保持時間は長いことが好ましいが、連続焼鈍炉であるために、1分を超える保持は、ライン速度が著しく遅くなるため経済的に劣る。
(発明例No.1〜9、比較例No.10〜20)
表1に示す組成のアルミニウムを、溶解、鋳造して鋳塊とし、この鋳塊に面削を施した後に、360〜650℃の範囲にて2〜4時間の均質化熱処理を施した。この均質化した鋳塊に、熱間圧延、さらに冷間圧延を施した後、中間焼鈍を行い、その後、15μmの厚さまで冷間圧延し、アルミニウム箔とした。中間焼鈍、冷間圧延の条件は、表1に示すとおりである。
なお、連続焼鈍(CAL)の場合、昇温速度は、10℃/秒、降温速度は、20℃/秒とし、バッチ焼鈍(BATCH)の場合、昇温速度は、40℃/時間、降温速度は、80℃/時間(放冷)とした。また、トータル冷延率は、およその値である。
次に、アルミニウム箔の厚み方向および圧延方向におけるサブグレインのサイズを以下の方法により測定した。
まず、アルミニウム箔を約5×10mmに切断し、薄板基盤に、電導性テープを用いて、この切断した箔を、箔が僅かに出っ張った状態となるように貼付けた。次に、この箔の部分をFIB(Focused Ion Beam)装置で切断し、平行断面を観察出来るようにした。そして、この断面について、走査電子顕微鏡にて、観察倍率を×2000倍とし、EBSD(Electron Back Scatter Diffraction)解析を行い、箔の全厚にわたって方位マッピング像を得た。一試料あたり10視野で測定した。なお、通常は表面から観察するため、解析ソフトは自動的に表面から見たND面の方位マッピング像を表示するようになっている。本解析では、平行断面(RD−TD面)観察であり、RD−ND面から見たND面の方位マッピング像が得られるよう回転操作した。そして、この方位マッピング像に基づき、線分法にてサブグレインサイズを算出した。
この結果を表1に示す。
次に、アルミニウム箔の導電率を以下の方法により測定した。本測定はJIS C2525に則り、アルバック理工株式会社製 電気抵抗測定装置 TER−2000RHを用い、直流4端子法にて電気抵抗を測定することにより行った。
具体的には、まず、所定厚みの箔を、3mm幅×80mm長さに切断し、両端にNi線をスポット溶接し、4端子法にて電気抵抗を測定した。試験片の抵抗Rは試料に流れる電流Iと電圧端子間の電位差Vから、R=V/Iにより求めた。電流Iは試験片と直列に接続した標準抵抗(0.1Ω)の電圧降下から求めた。試験片および標準抵抗の電圧降下とR熱電対の起電力は検出感度±0.1μVのデジタルマルチメータを用いて求めた。導電率は、下式にて求めた。
体積抵抗ρ=R(A/L)
導電率γ(%IACS)={1.7241〔μΩ・cm〕/体積抵抗ρ〔μΩ・cm〕}×100
A:試料断面積
L:測定部長さ
1.7241〔μΩ・cm〕:標準軟銅の体積抵抗率
得られたアルミニウム箔にて以下の評価を行った。
(強度および伸び)
引張強さおよび伸びの測定は、軽金属協会規格 LIS AT5に準じてB型試験片を用いて実施した。すなわち、アルミニウム箔から、引張方向が圧延方向と平行になるように15mm幅×約200mm長さの短冊型試験片を切り出し、チャック間距離100mmを評点間距離として実施した。試験には、株式会社オリエンテック製 テンシロン万能試験機 型式:RTC−1225Aを用いた。この試験にて、引張強さ、および、伸びを測定した。シングル圧延により製造されたアルミニウム箔については、引張強さの合格基準は、240MPa以上、伸びの合格基準は、3.5%以上とした。一方、重合圧延により製造されたアルミニウム箔については、引張強さの合格基準は、240MPa以上、伸びの合格基準は、2.0%以上とした。
表1に示すように、発明例であるNo.1〜9は、本発明の範囲を満たすため、強度および伸びが優れており、導電率も53.0%以上であった。
No.10は、Fe含有量が上限値を超えるため、α−Al−Fe−Si系の金属間化合物が粗大化し、破断の起点となり、重合圧延箔の伸びが劣った。No.11は、Fe含有量が下限値未満のため、マット面が粗くなり、重合圧延箔の伸びが劣った。No.12、13は、Cu含有量が上限値を超えたため、伸びが低下した。No.14は、Cu含有量が下限値を下回ったため、強度が低下した。No.15は、Mn含有量が上限値を超えるため、導電率が低下した。No.16はMg含有量が上限値を超えるため、伸びが劣った。
No.17は、Si含有量が上限値を超えるため、α−Al−Fe−Si系の金属間化合物が粗大化し、破断の起点となり、伸びが劣った。
No.18は、中間焼鈍がバッチ式のため、中間焼鈍時に微細な結晶粒が得られず、箔圧延時にサブグレインが成長・合体し、微細なサブグレイン組織が得られなかった。よって、サブグレインサイズが上限値を超え、伸びが劣った。
No.19は、Fe含有量が上限値を超えるため、α−Al−Fe−Si系の金属間化合物が粗大化し、破断の起点となり、圧延箔の伸びが劣った。No.20は、Fe含有量が下限値未満のため、結晶粒径が粗大となり、サブグレインサイズが上限値以上となった。そのため、圧延箔の強度および伸びが劣った。
Claims (5)
- Fe:1.4〜1.7質量%、Cu:0.1〜0.5質量%を含有し、Si:0.4質量%以下に抑制し、残部がAlおよび不可避的不純物からなり、サブグレインのサイズが厚み方向で0.8μm以下、圧延方向で45μm以下であることを特徴とする電池集電体用アルミニウム硬質箔。
- 請求項1に記載の電池集電体用アルミニウム硬質箔であって、
厚みが5〜20μmであり、引張強さが240MPa以上、かつ、伸びが2.6%以上の重合圧延箔であることを特徴とする電池集電体用アルミニウム硬質箔。 - 請求項1に記載の電池集電体用アルミニウム硬質箔であって、
厚みが9〜20μmであり、引張強さが240MPa以上、かつ、伸びが4.0%以上のシングル圧延箔であることを特徴とする電池集電体用アルミニウム硬質箔。 - さらに、Mn:0.5質量%以下、Mg:0.05質量%以下のうち1種以上を含有することを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の電池集電体用アルミニウム硬質箔。
- 導電率が53%以上であることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載の電池集電体用アルミニウム硬質箔。
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