JP5618039B2 - 熱伝導性樹脂組成物およびそれからなる成形体 - Google Patents
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Description
また、特許文献4にはゴム強化樹脂および/またはオレフィン系樹脂と黒鉛粒子とエラストマー成分を含む耐衝撃改良剤からなる耐衝撃性、熱伝導性に優れた樹脂組成物が提案されている。しかしながらゴム強化樹脂やオレフィン系樹脂に加え、エラストマー成分を添加することによって耐熱性が低くなってしまうという問題がある。
また、一般的に樹脂の耐衝撃性を改善する方法として、ガラス繊維、カーボン繊維等の繊維状強化材の添加が知られているが、充填材が多量に添加された樹脂組成物に対しては耐衝撃改善効果が得られないものであった。
すなわち本発明の要旨は、下記の通りである。
(1)ベース樹脂としてのポリアミド樹脂(A)と、黒鉛系充填材(B)と、充填材としてのアラミド繊維(C)とを含有し、アラミド繊維(C)がコポリパラフェニレン−3,4’−オキシジフェニレンテレフタルアミド繊維であって、ポリアミド樹脂(A)と黒鉛系充填材(B)との質量比(A/B)が15/85〜60/40であり、アラミド繊維(C)の含有量が、ポリアミド樹脂(A)と黒鉛系充填材(B)との合計100質量部に対して、3〜20質量部であることを特徴とする熱伝導性樹脂組成物。
(2)熱伝導率が10W/m・K以上、ノッチ付アイゾッド衝撃強度が60J/m以上、荷重1.8MPa下での荷重たわみ温度が100℃以上であることを特徴とする(1)記載の樹脂組成物。
(3)黒鉛系充填材(B)が、平均粒径1〜300μmの鱗片状黒鉛および/または平均繊維径1〜30μm、平均繊維長1〜20mmの黒鉛化炭素繊維であることを特徴とする(1)または(2)記載の樹脂組成物。
(4)アラミド繊維(C)の平均繊維長が1〜15mmであることを特徴とする(1)〜(3)のいずれかに記載の樹脂組成物。
(5)上記(1)〜(4)のいずれかに記載の樹脂組成物を成形してなる熱伝導性樹脂成形体。
本発明に使用されるポリアミド樹脂(A)としては、ラクタムあるいはアミノカルボン酸の重合またはジアミンとカルボン酸の重縮合によって得られるホモポリアミドおよびコポリアミド、そしてこれらの混合物が挙げられる。
ポリアミド樹脂(A)の好ましい例として、ポリカプラミド(ナイロン6)、ポリテトラメチレンアジパミド(ナイロン46)、ポリヘキサメチレンアジパミド(ナイロン66)、ポリカプラミド/ポリヘキサメチレンアジパミドコポリマー(ナイロン6/66)、ポリウンデカミド(ナイロン11)、ポリカプラミド/ポリウンデカミドコポリマー(ナイロン6/11)、ポリドデカミド(ナイロン12)、ポリカプラミド/ポリドデカミドコポリマー(ナイロン6/12)、ポリヘキサメチレンセバカミド(ナイロン610)、ポリヘキサメチレンドデカミド(ナイロン612)、ポリウンデカメチレンアジパミド(ナイロン116)、ポリヘキサメチレンイソフタルアミド(ナイロン6I)、ポリヘキサメチレンテレフタルアミド(ナイロン6T)、ポリヘキサメチレンテレフタルアミド/ポリヘキサメチレンイソフタルアミドコポリマー(ナイロン6T/6I)、ポリカプラミド/ポリヘキサメチレンテレフタルアミドコポリマー(ナイロン6/6T)、ポリカプラミド/ポリヘキサメチレンイソフタルアミドコポリマー(ナイロン6/6I)、ポリヘキサメチレンアジパミド/ポリヘキサメチレンテレフタルアミドコポリマー(ナイロン66/6T)、ポリヘキサメチレンアジパミド/ポリヘキサメチレンイソフタルアミドコポリマー(ナイロン66/6I)、ポリトリメチルヘキサメチレンテレフタルアミド(ナイロンTMDT)、ポリビス(4−アミノシクロヘキシル)メタンドデカミド(ナイロンPACM12)、ポリビス(3−メチル−4−アミノシクロヘキシル)メタンドデカミド(ナイロンジメチルPACM12)、ポリメタキシリレンアジパミド(ナイロンMXD6)、ポリウンデカメチレンテレフタルアミド(ナイロン11T)およびこれらの混合物ないし共重合体等が挙げられる。中でもナイロン12、ナイロン6が特に好ましい。
また、黒鉛化炭素繊維の平均繊維長は、1〜20mmであることが好ましく、3〜15mmであることがさらに好ましい。平均繊維長が1mm未満では、十分な熱伝導率が得られない。平均繊維長が長いほど熱伝導率が高くなるだけでなく、曲げ強度や曲げ弾性率も大きくなるが、平均繊維長が20mmを超えると流動性の低下が大きく、成形性などの点で好ましくない。
黒鉛化炭素繊維の市販品としては、例えば、日本グラファイトファイバー社製の商品名「GRANOC」や三菱化学産資社製の商品名「ダイヤリード」等が挙げられる。
アラミド繊維(C)の平均繊維径は、1〜50μmであることが好ましく、3〜25μmであることがさらに好ましい。繊維径が1μm未満では、十分な耐衝撃性改善効果が得られず、繊維径が50μmを超えると成形性などの点で好ましくない。
熱安定剤や酸化防止剤としては、たとえばヒンダードフェノール類、リン化合物、ヒンダードアミン、イオウ化合物、銅化合物、アルカリ金属のハロゲン化物等が挙げられる。
難燃剤としては、ハロゲン系難燃剤、リン系難燃剤、無機系難燃剤が使用できるが、環境を配慮した場合、非ハロゲン系難燃剤の使用が望ましい。非ハロゲン系難燃剤としては、リン系難燃剤、水和金属化合物(水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム等)、窒素含有化合物(メラミン系、グアニジン系)、無機系化合物(硼酸塩、Mo化合物等)が挙げられる。
無機充填材としては、タルク、層状珪酸塩、炭酸カルシウム、炭酸亜鉛、ワラストナイト、シリカ、ケイ酸カルシウム、アルミン酸ナトリウム、アルミン酸カルシウム、アルミノ珪酸ナトリウム、珪酸マグネシウム、ガラスバルーン、三酸化アンチモン、ゼオライト、ハイドロタルサイト等が挙げられる。有機充填材としては、澱粉、セルロース微粒子、木粉、おから、モミ殻、フスマ等の天然に存在するポリマーやこれらの変性品が挙げられる。
無機結晶核材としては、タルク、カオリン等が挙げられ、有機結晶核材としては、ソルビトール化合物、安息香酸およびその化合物の金属塩、燐酸エステル金属塩、ロジン化合物等が挙げられる。
なお、本発明の熱伝導性樹脂組成物にこれらを混合する方法は特に限定されない。
このような熱伝導率、衝撃強度、荷重たわみ温度を有する樹脂組成物は、家電・OA機器分野および自動車分野などの高放熱性や軽量化・省エネルギーが期待される分野に好適に用いることができる。
(1)曲げ強度、曲げ弾性率:
ASTM規格D−790に準拠して、変形速度1mm/分で荷重をかけ、曲げ強度、曲げ弾性率を測定した。
(2)衝撃強度:
ASTM規格D−256に準拠して、ノッチ付試験片を用いてアイゾッド衝撃強度を測定した。
(3)荷重たわみ温度(DTUL):
ASTM規格D−648に準拠し、荷重1.8MPaで熱変形温度測定した。
(4)熱伝導率:
熱伝導率λは、熱拡散率α、密度ρおよび比熱Cpを下記方法により求め、その積として次式で算出した。
λ=αρCp
λ:熱伝導率(W/m・K)
α:熱拡散率(m2/sec)
ρ:密度(g/m3)
Cp:比熱(J/g・K)
熱拡散率αは(1)で作製した曲げ試験片の樹脂流れ方向について、レーザーフラッシュ法熱定数測定装置TC−7000(アルバック理工社製)を用いレーザーフラッシュ法にて測定した。
密度ρは電子比重計ED−120T(ミラージュ貿易社製)を用いて測定した。
比熱Cpは示差走査熱量計DSC―7(パーキンエルマー社製)を用い、昇温速度10℃/分の条件で測定した。
(1)樹脂
・PA12:ポリアミド12(アルケマ社製リルサンAMN、相対粘度2.3、密度1.01g/cm3)
・PA6:ポリアミド6(ユニチカ社製A1030BRL、相対粘度2.6、密度1.13g/cm3)
・PP:ポリプロピレン(日本ポリプロ社製MA1B、密度0.9g/cm3)
・LCP:液晶ポリエステル(上野製薬社製A5000、密度1.41g/cm3)
(2)黒鉛系充填材(B)
・GrA:鱗片状黒鉛(日本黒鉛工業社製CB150、平均粒径40μm、熱伝導率100W/m・K、密度2.25g/cm3)
・GrB:鱗片状黒鉛(日本黒鉛工業社製F#2、平均粒径130μm、熱伝導率100W/m・K、密度2.25g/cm3)
・GrCF:黒鉛化炭素繊維(日本グラファイトファイバー社製XN−100−03Z、平均繊維径9μm、平均繊維長3mm、密度2.2g/cm3)
(3)アラミド繊維(C)
・AR1:コポリパラフェニレン−3,4′−オキシジフェニレンテレフタルアミド繊維(帝人テクノプロダクツ社製テクノーラ、平均繊維径12μm、平均繊維長3mm)
・AR2:コポリパラフェニレン−3,4′−オキシジフェニレンテレフタルアミド繊維(帝人テクノプロダクツ社製テクノーラ、平均繊維径12μm、平均繊維長1mm)
・AR3:コポリパラフェニレン−3,4′−オキシジフェニレンテレフタルアミド繊維(帝人テクノプロダクツ社製テクノーラ、平均繊維径12μm、平均繊維長0.5mm)
・AR4:ポリパラフェニレンテレフタルアミド繊維(帝人テクノプロダクツ社製トワロン、平均繊維径12μm、平均繊維長3mm)
・AR5:メタ系アラミド繊維(帝人テクノプロダクツ社製コーネックス、平均繊維径12μm、平均繊維長1mm)
(4)エラストマー
・SEBS:スチレン−ブタジエン水添ポリマー(旭化成ケミカルズ社製タフテックM1943)
(5)繊維状充填材
・GF:ガラス繊維(オーウェンスコーニング社製JAFT692、平均繊維径10μm、平均繊維長3mm)
・CF:炭素繊維(東邦テナックス社製HTA−C6−NR、平均繊維径7μm、平均繊維長6mm)
二軸押出機(東芝機械製:TEM26SS、スクリュ径26mm)の主ホッパーに、ポリアミド12樹脂(PA12)36質量部と鱗片状黒鉛(GrA)64質量部とをドライブレンドした物を供給し、260℃で溶融した。途中サイドフィーダーよりアラミド繊維(AR1)10質量部を供給し、十分に溶融混練しストランド状に押出して冷却固化した後、ペレット状に切断し樹脂組成物を得た。
得られた樹脂組成物を十分に乾燥した後、射出成形機(東芝機械製:EC−100型)を用いてシリンダ温度260℃、金型温度100℃、射出時間20秒、冷却時間10秒で射出成形し評価用の成形体を得た。得られた成形体を用いて各評価を行なった。その結果を表1に示す。
ポリアミド樹脂(A)、黒鉛系充填材(B)、アラミド繊維(C)およびその他の樹脂と充填材をそれぞれ表1に示す種類と量に変えた以外は実施例1と同様にして樹脂組成物を得て、これを射出成形して各種物性を測定した。評価結果をまとめて表1に示す。なお、各種繊維状の充填材(黒鉛化炭素繊維、ガラス繊維、炭素繊維)はアラミド繊維と同様にサイドフィーダーにより途中から供給し、それ以外の原料はドライブレンドして主ホッパーより供給して溶融混練を実施した。
一方、比較例1〜5では、アラミド繊維(C)が配合されていないか、または配合量が少ないため、得られた樹脂組成物の耐衝撃性は低いものであった。比較例6では、アラミド繊維(C)の配合量が多すぎるため、混練ができず、樹脂組成物が得られなかった。
比較例7では、黒鉛系充填材(B)が配合されていないため、得られた樹脂組成物の熱伝導性は低いものであった。
比較例8〜9で、アラミド繊維(C)の代わりにガラス繊維または炭素繊維を配合したところ、得られた樹脂組成物の耐衝撃性は低いものであった。比較例10〜11で、アラミド繊維(C)の代わりにスチレン−ブタジエン水添ポリマーを配合したところ、樹脂組成物は、耐衝撃性改善効果が得られないだけでなく、曲げ強度も低下してしまった。
比較例12〜13では、ポリアミド樹脂(A)の代わりにポリプロピレン樹脂または液晶ポリエステル樹脂をベース樹脂とて使用したため、アラミド繊維(C)の補強効果が十分に得られず、樹脂組成物の耐衝撃性は低いものであった。
Claims (5)
- ベース樹脂としてのポリアミド樹脂(A)と、黒鉛系充填材(B)と、充填材としてのアラミド繊維(C)とを含有し、アラミド繊維(C)がコポリパラフェニレン−3,4’−オキシジフェニレンテレフタルアミド繊維であって、ポリアミド樹脂(A)と黒鉛系充填材(B)との質量比(A/B)が15/85〜60/40であり、アラミド繊維(C)の含有量が、ポリアミド樹脂(A)と黒鉛系充填材(B)との合計100質量部に対して、3〜20質量部であることを特徴とする熱伝導性樹脂組成物。
- 熱伝導率が10W/m・K以上、ノッチ付アイゾッド衝撃強度が60J/m以上、荷重1.8MPa下での荷重たわみ温度が100℃以上であることを特徴とする請求項1記載の樹脂組成物。
- 黒鉛系充填材(B)が、平均粒径1〜300μmの鱗片状黒鉛および/または平均繊維径1〜30μm、平均繊維長1〜20mmの黒鉛化炭素繊維であることを特徴とする請求項1または2記載の樹脂組成物。
- アラミド繊維(C)の平均繊維長が1〜15mmであることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の樹脂組成物。
- 請求項1〜4のいずれかに記載の樹脂組成物を成形してなる熱伝導性樹脂成形体。
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