(第1実施形態)
以下、本発明を車両用サイドエアバッグ装置に具体化した第1実施形態について、図1〜図13を参照して説明する。
なお、以下の記載においては、車両の前進方向を前方として説明し、車両の後進方向を後方として説明する。また、以下の記載における上下方向は車両の上下方向を意味し、左右方向は車両の車幅方向であって車両前進時の左右方向と一致するものとする。
図2及び図3に示すように、車両10においてボディサイド部11の車内側(図2の右側、図3の上側)の近傍には車両用シート12が配置されている。ここで、ボディサイド部11とは、車両10の側部に配置された車両構成部材を指し、主としてドア、ピラー等がこれに該当する。例えば、前席に対応するボディサイド部11は、フロントドア、センターピラー(Bピラー)等である。また、後席に対応するボディサイド部11は、サイドドア(リヤドア)の後部、Cピラー、タイヤハウスの前部、リヤクォータ等である。
車両用シート12は、シートクッション(座部)13と、そのシートクッション13の後側から起立し、かつ傾き調整機構(図示略)により傾斜角度を調整されるシートバック(背もたれ)14とを備えて構成されている。
次に、シートバック14における車外側の側部の内部構造について説明する。
シートバック14内には、その骨格をなすシートフレームが配置されている。シートフレームの一部は、図4に示すように、シートバック14内の車外側(図4では下側)部分に配置されており、この部分(以下「サイドフレーム部15」という)は、金属板を曲げ加工することによって形成されている。サイドフレーム部15を含むシートフレームの前側には、ウレタンフォーム等の弾性材からなるシートパッド16が配置されている。また、シートフレームの後側には、合成樹脂等によって形成された硬質のバックボード17が配置されている。なお、シートパッド16は表皮によって被覆されているが、図4ではその表皮の図示が省略されている。後述する図13についても同様である。
シートパッド16内において、サイドフレーム部15の車外側近傍には収納部18が設けられている。収納部18の位置は、車両用シート12に着座した乗員Pの斜め後方近傍となる(図3参照)。この収納部18には、サイドエアバッグ装置の主要部をなすエアバッグモジュールAMが組み込まれている。
収納部18の車外側かつ前側の角部からは、斜め前車外側に向けてスリット19が延びている。シートパッド16の前側の角部16Cとスリット19とによって挟まれた箇所(図4において二点鎖線の枠で囲んだ箇所)は、後述するエアバッグ40によって破断される破断予定部21を構成している。
上記シートバック14に組み込まれるエアバッグモジュールAMは、インフレータアセンブリ30及びエアバッグ40を主要な構成部材として備えている。
次に、これらの構成部材の各々について説明する。ここで、第1実施形態では、エアバッグモジュールAM及びその構成部材について「上下方向」、「前後方向」というときは、図1に示すように、車両用シート12のシートバック14を基準としている。シートバック14の起立する方向を「上下方向」とし、シートバック14の厚み方向を「前後方向」としている。通常、シートバック14は後方へ多少傾斜した状態で使用されることから、「上下方向」は厳密には鉛直方向ではなく、多少傾斜している。同様に、「前後方向」は厳密には水平方向ではなく、多少傾斜している。
<インフレータアセンブリ30>
図4及び図5の少なくとも一方に示すように、インフレータアセンブリ30は、ガス発生源としてのインフレータ31と、そのインフレータ31の外側に装着されたリテーナ32とを備えて構成されている。第1実施形態では、インフレータ31として、パイロタイプと呼ばれるタイプが採用されている。インフレータ31は略円柱状をなしており、その内部には、膨張用ガスを発生するガス発生剤(図示略)が収容されている。インフレータ31の長さ方向についての一方の端部(第1実施形態では下端部)には、同インフレータ31への制御信号の印加配線となるハーネス(図示略)が接続されている。
なお、インフレータ31としては、上記ガス発生剤を用いたパイロタイプに代えて、高圧ガスの充填された高圧ガスボンベの隔壁を火薬等によって破断してガスを噴出させるタイプ(ハイブリッドタイプ)が用いられてもよい。
一方、リテーナ32は、ディフューザとして機能するとともに、上記インフレータ31をエアバッグ40と一緒にサイドフレーム部15に締結する機能を有する部材である。リテーナ32の大部分は、金属板等の板材を曲げ加工等することによって略筒状に形成されている。リテーナ32には窓部33が設けられており、インフレータ31から噴出された膨張用ガスの多くが、この窓部33を通じてリテーナ32の外部へ噴き出される。
リテーナ32には、これを上記サイドフレーム部15に取付けるための係止部材として、複数本のボルト34が固定されている。表現を変えると、複数本のボルト34が、リテーナ32を介してインフレータ31に間接的に固定されている。
なお、インフレータアセンブリ30は、インフレータ31とリテーナ32とが一体になったものであってもよい。
<エアバッグ40>
図1〜図3の少なくとも1つに示すように、エアバッグ40は、車両10の走行中等に側突等により衝撃が側方からボディサイド部11に加わったときに、インフレータ31から膨張用ガスGの供給を受ける。この膨張用ガスGの供給を受けたエアバッグ40は、自身の一部(後部)を上記収納部18内に残した状態で同収納部18から略前方へ向けて飛び出し、車両用シート12に着座した乗員Pの上半身とボディサイド部11との間で膨張展開することにより上記側突の衝撃から乗員Pの上半身を保護する。
図5は、エアバッグ40が膨張用ガスGを充填させることなく平面状に展開させられた状態(以下「非膨張展開状態」という)のエアバッグモジュールAMを、乗員P及び車両用シート12とともに示している。また、図6は、エアバッグモジュールAMの内部構造を示すべく、図5の非膨張展開状態のエアバッグ40が車幅方向の中央部分で切断されたエアバッグモジュールAMを、車両用シート12及び乗員Pとともに示している。図6中、一点鎖線の大きな丸い枠Wで囲まれた箇所は、小さな丸い枠Wで囲まれた箇所を拡大して示している。
図5及び図6の少なくとも一方に示すように、エアバッグ40は、1枚の布片41(基布、パネル布等とも呼ばれる)を、その中央部分に設定した折り線42に沿って二つ折りして車幅方向に重ね合わせ、その重ね合わされた部分を袋状となるように結合させることにより形成されている。ここでは、エアバッグ40の上記の重ね合わされた2つの部分を区別するために、車内側に位置するものを布部43(図6参照)といい、車外側に位置するものを布部44(図5参照)というものとする。
なお、第1実施形態では、折り線42がエアバッグ40の前端に位置するように布片41が二つ折りされているが、折り線42がほかの端部、例えば後端部に位置するように布片41が二つ折りされてもよい。また、エアバッグ40は折り線42に沿って分割された2枚の布片からなるものであってもよい。この場合には、エアバッグ40は、2枚の布片を車幅方向に重ね合わせ、両布片をそれらの周縁部において結合させることにより袋状に形成される。さらに、エアバッグ40は3枚以上の布片からなるものであってもよい。
上記のように、非膨張展開状態となったときに平面状となるエアバッグ40は、「平面バッグ」とも呼ばれる。
エアバッグ40においては、両布部43,44の外形形状が、折り線42を対称軸として互いに線対称の関係にある。各布部43,44の形状・大きさは、エアバッグ40が車両用シート12及びボディサイド部11間で膨張展開したときに、その車両用シート12に着座している乗員Pの上半身に対応する領域を占有し得るように設定されている。
上記布部43,44としては、強度が高く、かつ可撓性を有していて容易に折り畳むことのできる素材、例えばポリエステル糸、ポリアミド糸等を用いて形成した織布等が適している。
両布部43,44の上記結合は、それらの周縁部に設けられた周縁結合部45においてなされている。第1実施形態では、周縁結合部45は、両布部43,44の周縁部のうち、後下端部及び前端部(折り線42の近傍部分)を除く部分を、縫製(縫糸で縫合)することにより形成されている。
この縫製に関し、図5〜図7、図9、図10、さらには、図14、図16、図18、図19、図21、図23、図25、図27〜図29、図34及び図35では、2つの線種で縫製部分を表現している。一方の線種は、一定長さの太線を断続的に並べて表現した線(破線の一種)であり、これは、縫合の対象となる布部の外側(布部間ではない)における縫糸の状態を示している(図5等参照)。他方の線種は、点を一定間隔おきに並べて表現した線(破線の一種)であり、これは、縫合の対象となる布部の内側(布部間)における縫糸の状態を示している(図6等参照)。すなわち、縫製が後者の態様で表現されている図は、縫製部分を通る断面に沿った断面構造を示している。
図5及び図6の少なくとも一方に示すように、両布部43,44間であって、周縁結合部45によって囲まれた空間(周縁結合部45よりも内側の空間)は、膨張用ガスG(図1等参照)によって乗員Pの上半身の外側方近傍で膨張することにより、衝撃から同上半身を保護するための膨張部46となっている。
なお、周縁結合部45は、上記縫糸を用いた縫合とは異なる手段、例えば接着剤を用いた接着によって形成されてもよい。この点は、後述する外結合部54,55及び内結合部63についても同様である。
上記インフレータアセンブリ30は、前側ほど低くなるように傾斜させられた姿勢で、エアバッグ40内の後端下部に配設されている。そして、リテーナ32のボルト34が、車内側の布部43に挿通されている(図4参照)。こうした挿通により、インフレータアセンブリ30がエアバッグ40に対し位置決めされた状態で係止されている。また、エアバッグ40の後部下端は、インフレータアセンブリ30の下端部に対し、環状の締結具37によって気密状態で締付けられている。
エアバッグ40の膨張部46は、区画部材50により、インフレータ31からの膨張用ガスGが最初に供給される上流側膨張部47と、上流側膨張部47を経由した膨張用ガスGが供給される下流側膨張部48とに区画されている。区画部材50は、一般的にテザーと呼ばれるものと同様の構成を有しており、エアバッグ40の布部43,44と同様の素材を用いて形成されている。
図7は、エアバッグ40が非膨張展開状態にされたエアバッグモジュールAMの上部の一部を斜め上後方から見た状態を示し、図8は、図5のA−A線に沿った断面構造を示している。この図8では、各部材が厚みを省略して描かれるとともに、内結合部63がジグザグ状に描かれている。この点は、後述する図15、図20及び図24についても同様である。図9は、エアバッグ40が膨張して区画部材50が平面状に緊張したエアバッグモジュールAMの内部構造を示している。また、図10(A)は、屈曲状態の区画部材50の一部を示し、同図10(B)は、平面状に緊張した区画部材50の中間部分P1、及びその近傍部分を示している。これらの図7〜図10(A),(B)の少なくとも1つに示すように、区画部材50は、略上下方向に延びる折り線51に沿って折り返されることにより、相対向する対向端部52,53を接近させてなる二つ折り状態にされている。この二つ折り状態の区画部材50は、折り線51を両対向端部52,53よりも上流側に位置させた状態で非膨張展開状態の膨張部46に配設されている(図8参照)。
上記区画部材50は、膨張部46の膨張に伴い平面状に緊張させられたとき、折り線51に沿う方向(以下「長手方向」という)の長さL1が、折り線51に直交する方向(以下「短手方向」という)の長さL2よりも長い長尺状をなしている(図6、図9参照)。
二つ折り状態の区画部材50は、両対向端部52,53の各々において、略上下方向(長手方向)へ延びる外結合部54,55によって、エアバッグ40の両布部43,44にそれぞれ結合されている。両外結合部54,55は、膨張部46が膨張したときに、乗員Pの上半身における前後方向についての中間部の側方となる箇所で、区画部材50の各対向端部52,53を対応する布部43,44に結合している(図3参照)。
このようにして、区画部材50は、エアバッグ40における車内側の布部43と車外側の布部44との間に架け渡されている。区画部材50は、膨張部46の非膨張時には二つ折りされた状態となる(図7、図8参照)。また、区画部材50は、膨張部46が膨張したとき、車幅方向に平面状に緊張させられた状態となり(図9、図10(B)参照)、同膨張部46の車幅方向の厚みを規制する。
また、二つ折り状態の区画部材50は、折り線51に沿う方向(長手方向)の両端部において、エアバッグ40に結合されている。すなわち、二つ折り状態の区画部材50の上端部及び下端部は、上述した周縁結合部45(図6、図7、図9参照)によってエアバッグ40の両布部43,44の上端部及び下端部に結合(共縫い)されている。
図5及び図6の少なくとも一方に示すように、上記区画部材50により、膨張部46は、その後半部分を構成し、かつインフレータアセンブリ30の配置された後側の上流側膨張部47と、同膨張部46の前半部分を構成し、かつインフレータアセンブリ30の配置されていない前側の下流側膨張部48とに区画されている。
第1実施形態では、区画部材50は、図10(A),(B)に示すように、折り線51に沿う方向である略上下方向(長手方向)に並べられた2つの部材56,57からなる。上下両部材56,57では、それらの端部58,59の端縁58E,59E同士が合致させられた状態で、端部58,59同士が帯状に重ね合わされている。上下両部材56,57は、それぞれ帯状をなす一対の重ね合わせ部61と、それ以外の箇所(以下「非重ね合わせ部62」という)との境界部分において、折り線51に略直交する方向(短手方向)へ延びる内結合部63によって結合されている。この境界部分は、上記端縁58E,59Eから一定距離離れている。
上記区画部材50の略中央部分には、膨張部46への膨張用ガスGの供給期間の初期には閉弁して上流側膨張部47から下流側膨張部48への膨張用ガスGの流通を規制し、同供給期間の途中からは、乗員拘束に伴い加わる外力により開弁して前記規制を解除する調圧弁70が設けられている。
次に、この調圧弁70の構成について説明すると、上記内結合部63は、その一部(第1実施形態では折り線51を跨ぐ部分)において結合を解除されている。表現を変えると、両重ね合わせ部61と非重ね合わせ部62との境界部分において、折り線51を跨ぐ部分では、上下両部材56,57を結合させる内結合部63が設けられていない。このように内結合部63が設けられていない部分である、結合を解除された箇所は、短手方向に延びて、上流側膨張部47と下流側膨張部48とを連通させるスリット状の内開口部71を構成している。
重ね合わせ部61であって、内開口部71に対応する部分(近傍部分)は、一対の弁体部73,74を構成している。より正確には、内開口部71と端縁58Eとの間の部分によって弁体部73が構成され、同内開口部71と端縁59Eとの間の部分によって弁体部74が構成されている。両弁体部73,74が、それらの少なくとも一部、例えば先端部73T,74Tにおいて互いに接触することで、両弁体部73,74間での膨張用ガスGの流通が規制される(図11(B)参照)。また、弁体部73の全体が弁体部74の全体から離間することで、両弁体部73,74間での膨張用ガスGの流通が可能となる(図11(C)参照)。
さらに、上記のように、両弁体部73,74を有する両重ね合わせ部61は、膨張部46の膨張前には上流側膨張部47に配置されている。
そして、両重ね合わせ部61は非重ね合わせ部62との境界部分において、上方又は下方(第1実施形態では上方)へ折り曲げられて、同非重ね合わせ部62に重ねられている。さらに、折り曲げられた帯状の両重ね合わせ部61は、内結合部63に沿う方向(短手方向)の両端部において、前述した外結合部54,55により、エアバッグ40の対応する布部43,44及び区画部材50(非重ね合わせ部62)に結合(共縫い)されている(図6、図8参照)。
ところで、図4に示すように、エアバッグ40及びインフレータアセンブリ30を主要な構成部材として有する上記エアバッグモジュールAMは、非膨張展開状態のエアバッグ40(図5参照)が折り畳まれることにより、コンパクトな形態(以下「収納用形態」という)にされている。これは、エアバッグモジュールAMを、シートバック14における限られた大きさの収納部18に対し、収納に適したものとするためである。
上記収納用形態にされたエアバッグモジュールAMは、インフレータアセンブリ30を後側に位置させ、かつエアバッグ40の多くを前側に位置させた状態で、シートバック14の収納部18に配設されている。そして、上述したように、リテーナ32から延びてエアバッグ40(布部43)に挿通されたボルト34がサイドフレーム部15に挿通され、ナット36によって締付けられている。この締付けにより、インフレータアセンブリ30がエアバッグ40と一緒にサイドフレーム部15に固定されている。
なお、インフレータアセンブリ30は、上述したボルト34及びナット36とは異なる手段によって車両10(サイドフレーム部15)に固定されてもよい。
図1に示すように、サイドエアバッグ装置は、上述したエアバッグモジュールAMのほかに衝撃センサ75及び制御装置76を備えている。衝撃センサ75は加速度センサ等からなり、車両10のボディサイド部11(図2及び図3参照)等に設けられており、同ボディサイド部11に側方から加えられる衝撃を検出する。制御装置76は、衝撃センサ75からの検出信号に基づきインフレータ31の作動を制御する。
上記のようにして、第1実施形態のサイドエアバッグ装置が構成されている。次に、このサイドエアバッグ装置の代表的な動作の態様(モード)について、図11(A)〜(C)を参照して説明する。これらの図11(A)〜(C)は、調圧弁70等の形態が、膨張用ガスGの供給開始後時間とともに変化する様子を模式的に示したものであり、細部については省略・簡略化されている。また、図12は、上流側及び下流側の各膨張部47,48内の膨張用ガスGの圧力(内圧)と、乗員Pの各膨張部47,48側の受圧面積と、乗員Pがエアバッグ40から受ける荷重とが、衝撃により車内側へ進入するボディサイド部11の進入量(ストローク)に応じてどのように変化するかを示している。荷重は、内圧と受圧面積との積によって表される。
このサイドエアバッグ装置では、側突等により車両10に対し側方から衝撃が加わらないときには、制御装置76からインフレータ31に対し、これを作動させるための作動信号が出力されず、インフレータ31から膨張用ガスGが膨張部46(上流側膨張部47)に供給されない。エアバッグ40は、収納用形態でインフレータアセンブリ30とともに収納部18に収納され続ける(図4参照)。このとき、エアバッグ40では、両布部43,44が互いに接近している。区画部材50は、折り線51を対向端部52,53よりも上流側に位置させてなる二つ折り状態となっている。両弁体部73,74は上流側膨張部47内で重なり合っている。ボディサイド部11の進入量(ストローク)は「0」である。各膨張部47,48の内圧はともに低く(略大気圧)、受圧面積及び荷重はともに「0」である。
これに対し、車両10の走行中に、側突等によりボディサイド部11に所定値以上の衝撃が加わり、そのことが衝撃センサ75によって検出されると、その検出信号に基づき制御装置76からインフレータ31に対し、これを作動させるための作動信号が出力される。このときのボディサイド部11の進入量(ストローク)をS0とする。この作動信号に応じて、インフレータ31では、ガス発生剤が高温高圧の膨張用ガスGを発生する。この膨張用ガスGは、まず上流側膨張部47に供給されて、同上流側膨張部47が膨張を開始する。
膨張部46内では、二つ折り状態の区画部材50が、折り線51を対向端部52,53よりも上流側に位置させた状態で配設されている。しかも、その区画部材50は、両対向端部52,53の各々において、外結合部54,55によってエアバッグ40の対応する布部43,44に結合されている(図7、図8参照)。また、区画部材50は、折り線51に沿う方向の両端部(上端部及び下端部)の各々において、周縁結合部45によって両布部43,44に結合されている(図6、図7参照)。そのため、上記のように上流側膨張部47の膨張が開始すると、二つ折り状態の区画部材50が引っ張られる。区画部材50に対し、折り線51に沿う方向(長手方向)や直交する方向(短手方向)にテンションが掛かって、区画部材50が平面状態になろうとする(図9参照)。
ただし、区画部材50では、その全体が均一に緊張状態となるわけではない。上述した区画部材50の布部43,44に対する結合態様から、上流側膨張部47の膨張時の縦断面が、図9に示すような、上下両端部近傍部分で曲率が大きく、それ以外の部分で曲率の小さな縦長の略楕円形状となるからである。こうした異形(非円形)の断面であることから、区画部材50の上部P2及び下部P3には、それらの間の部分(中間部分P1)に比べテンションが掛かりにくい。そのため、区画部材50の上部P2及び下部P3は、中間部分P1が略平面状の緊張状態となったときにも、折り線51を対向端部52,53よりも上流側に位置させた屈曲状態(ただし、二つ折り状態よりは開いた状態)となる(図11(A)参照)。
上流側膨張部47に位置する両弁体部73,74に対しては、その重なり方向(厚み方向)についての両側から内圧PIが加わる。この内圧PIは、膨張部46による乗員Pの拘束時ほど高くない。両弁体部73,74は、この内圧PIにより面全体で互いに密着し、両弁体部73,74間での膨張用ガスGの流通を規制する自己シール状態となる。さらに、折り曲げられて区画部材50の非重ね合わせ部62に重ねられた重ね合わせ部61が、内圧PIによりその非重ね合わせ部62に押し付けられる(図11(A)参照)。これらのことからも、両弁体部73,74が一層閉じられやすくなる。
ここで、図9に示すように、区画部材50は、長手方向(略上下方向)には、短手方向よりも長く形成されている(L1>L2)。このことから、区画部材50の上記中間部分P1では、短手方向に対し、長手方向に対するよりも強いテンションが掛かりやすい。第1実施形態では、内開口部71が、この強いテンションの掛かりやすい短手方向に延びているため、内開口部71が閉じられやすい。
ただし、上記のようなテンションの強弱関係があるとはいえ、内開口部71を開かせようとする長手方向にもテンションが掛かるため、内開口部71が確実に閉じるとは限らず、内開口部71が開くおそれもある。しかし、この場合であっても、両弁体部73,74が少なくとも自身の先端部73T,74Tにおいて閉じられる。これは、中間部分P1が緊張することで内開口部71が引っ張られて、これを開かせようとする力が作用したとしても、その力は、内開口部71において最も大きく、内開口部71から遠ざかるに従い小さくなり、両弁体部73,74の先端部73T,74Tにおいて最小となるからである。
さらに、第1実施形態では、非重ね合わせ部62側へ折り曲げられた重ね合わせ部61が、内結合部63に沿う方向(短手方向)の両端部において外結合部54,55により、対向端部52,53とともに布部43,44に結合されている(図10(B)参照)。このため、上流側膨張部47が膨張したときには、区画部材50の中間部分P1に対し、短手方向に強いテンションが掛かるだけでなく、重ね合わせ部61に対しても同方向に強いテンションが掛かる。
両弁体部73,74が、それらの少なくとも一部において互いに接触すると、調圧弁70が閉弁した状態となり、上流側膨張部47内の膨張用ガスGは、両弁体部73,74間及び内開口部71を通って下流側膨張部48へ流出することを規制される。
上記の規制により、上流側膨張部47に膨張用ガスGが溜まり、進入量(ストローク)S0以降、上流側膨張部47の内圧のみが上昇し始める。
第1実施形態では、膨張部46が区画部材50によって上流側膨張部47及び下流側膨張部48に区画されていることから、上流側膨張部47の容積は、膨張部46が区画されていない場合(従来技術1がこれに該当する)のその膨張部の容積よりも小さい。そのため、上流側膨張部47の内圧は、膨張部46が区画されていない場合よりも早く上昇を開始し、しかも高くなる。特に、上流側膨張部47内の膨張用ガスGは、両弁体部73,74間においてのみ流通を許容され、両弁体部73,74間を経由せずに下流側膨張部48へ流出することはない。従って、膨張用ガスGの上記流出が原因で上流側膨張部47の内圧の上昇速度が低下することがない。
なお、このときには、エアバッグ40(膨張部46)が未だ乗員Pに接しておらず、従って、受圧面積及び荷重はともに依然として「0」である。
そして、上流側膨張部47の上記膨張により、同上流側膨張部47が折り畳まれた順とは逆の順に折り状態を解消しようとする。上流側膨張部47が、折り状態を解消(展開)しながら膨張していくと、シートバック14のシートパッド16がエアバッグ40によって押圧され、破断予定部21(図4参照)において破断される。エアバッグ40は、図13に示すように、一部(インフレータアセンブリ30の近傍部分)をシートバック14内に残した状態で、破断された箇所を通じて同シートバック14から飛び出す。
その後も膨張用ガスGの供給される上流側膨張部47は、図2及び図3に示すように、ボディサイド部11と、車両用シート12に着座した乗員Pの上半身の後半部との間で前方へ向けて折り状態を解消しながら展開する。
ボディサイド部11の進入量(ストローク)がS1となり、このボディサイド部11によって膨張部46が乗員Pの上半身に押し付けられ始める。膨張部46では上流側膨張部47のみが膨張していることから、乗員Pが膨張部46の圧力を受けながら接触する箇所は上流側膨張部47のみである。そのため、乗員Pが膨張部46の圧力を受ける面の面積(膨張部46側の受圧面積)は、上流側膨張部47の圧力を受ける面の面積(上流側膨張部47側の受圧面積)と同じであって小さい。ただし、この上流側膨張部47側の受圧面積は、側突の衝撃に応じたボディサイド部11の車内側への進入が進む(進入量(ストローク)が増加する)につれて増大する。
乗員Pが膨張部46を通じて受ける衝撃の荷重もまた、受圧面積及び内圧の増加に伴い増加する。上述したように、上流側膨張部47の内圧が早く上昇を開始することから、荷重が増加を開始する進入量(ストローク)S1は、膨張部46が区画されていない場合(従来技術1)において、荷重が増加を開始する進入量(ストローク)S10よりも小さくなる。表現を変えると、膨張部46が区画されていない場合(従来技術1)よりも早いタイミングで荷重が増加し始め、その分早く、乗員Pの上半身を衝撃から保護するための所定値βに到達する(図12参照)。
両弁体部73,74がそれらの面全体で密着した(閉じられた)状態で、上流側膨張部47内に膨張用ガスGが供給され続ける一方、ボディサイド部11の進入量(ストローク)がS2となることで、同ボディサイド部11から加わる外力により、同上流側膨張部47の内圧が値αまで上昇すると、調圧弁70が開弁し始める。
すなわち、膨張部46への膨張用ガスGの供給期間の途中からは、乗員拘束に伴う外力が加わって膨張部46が押圧されて変形し、区画部材50に掛かるテンションが変化する。また、膨張部46の上記変形に伴い上流側膨張部47の内圧がさらに上昇して、区画部材50の中間部分P1が下流側膨張部48側へ押圧されて(図11(B)参照)、同中間部分P1に掛かるテンションが変化する。また、上昇した上記内圧により、区画部材50の上部P2及び下部P3が押圧されて下流側膨張部48側へ膨らむように変形する。上述したように、上部P2及び下部P3は、乗員拘束前には、折り線51を対向端部52,53よりも上流側に位置させた屈曲状態となっている(図11(A)参照)。乗員拘束時には、上部P2及び下部P3は、乗員拘束前の形状(図11(B)の二点鎖線参照)から反転したような形状に変形する。上部P2及び下部P3のこうした形状変化(反転)により、中間部分P1においてテンションの変化が容易に発生する。そして、このテンションの変化により、中間部分P1に位置する内開口部71の変形が許容され、同中間部分P1に位置する弁体部73,74の作動が許容されるようなる。
この際、上部P2及び下部P3の上記反転により、区画部材50においてテンションの掛かっている領域が、上下方向へ拡がっていく。区画部材50の上側の部材56に対しては上方へ向かうテンションが強まり、下側の部材57に対しては下方へ向かうテンションが強まる。これらのテンションの変化により、スリット状の内開口部71が上下方向に引っ張られて開きやすくなる。
一方、重ね合わせ部61は非重ね合わせ部62に重ねられ、内結合部63に沿う方向についての両端部において、外結合部54,55によってエアバッグ40の布部43,44に結合されている。そのため、重ね合わせ部61において外結合部54,55に近い部分では、重ね合わされた状態を維持しようとする力が強い。しかし、この力は、外結合部54,55から遠ざかるに従い小さくなり、内結合部63に沿う方向についての中央部分、すなわち両弁体部73,74において最小となる。このため、上下方向へ引っ張られた重ね合わせ部61は、弁体部73,74及びその近傍部分においてのみ上下方向へ変形する。
内開口部71が上下方向にある程度開くと、重ね合わせ部61では、上流側膨張部47の高い内圧PIを受けた両弁体部73,74においてのみ、内開口部71を通って下流側膨張部48へ押し出される(反転される)。この内開口部71の上下方向の幅W1が狭いときには、先端部73T,74T同士が接触し合い、両弁体部73,74が先端部73T,74Tにおいて閉じている(図11(B)参照)。この状態は、内開口部71の上記幅W1が、各弁体部73,74の幅W2(図11(C)参照)の合計値(=2・W2)よりも狭い期間続く。
そして、内開口部71の幅W1がこの合計値(=2・W2)よりも大きくなると、先端部73T,74Tが離れる(図11(C)参照)。調圧弁70が開弁した状態となって、上記の規制が解除される。この規制解除により、上流側膨張部47内の膨張用ガスGが内開口部71及び両弁体部73,74間を順に通って下流側膨張部48へ流出することが可能となる。
この膨張用ガスGの流出により、上流側膨張部47の内圧が上昇から低下に転ずる。ただし、ボディサイド部11は車内側へ依然として進入し続けていて、膨張部46が上流側膨張部47において乗員Pに押し付けられるため、乗員Pの上流側膨張部47側の受圧面積は増加し続ける。
また、進入量(ストローク)S2以降、膨張用ガスGにより下流側膨張部48が膨張を開始し、それに伴い同下流側膨張部48の内圧が上昇を開始する。また、内圧の上昇から少し遅れて、進入量(ストローク)がS3となったところで、車内側へ進入するボディサイド部11により、上流側膨張部47に加え、下流側膨張部48が乗員Pに接触し押し付けられるようになり、同乗員Pが下流側膨張部48の圧力を受ける面の面積(下流側膨張部48側の受圧面積)が増加し始める。
なお、上流側膨張部47の内圧と下流側膨張部48の内圧とは、進入量(ストローク)S4以降、等しくなる。
上記のように、調圧弁70の開弁(進入量(ストローク)S2)後には、上流側膨張部47の内圧が低下するとともに下流側膨張部48の内圧が上昇する。また、乗員Pの上流側膨張部47側の受圧面積、及び下流側膨張部48側の受圧面積が時間差をもって増加する。このため、進入量(ストローク)S2以降、乗員Pが膨張部46の全体から受ける荷重、すなわち、上流側膨張部47から受ける荷重と下流側膨張部48から受ける荷重との合計は、単に、エアバッグを単一の膨張部により構成し、かつ調圧弁を設けない場合(従来技術1)の最大値よりも低く、しかも略一定の値(所定値β)となる。
また、膨張用ガスGの供給期間の初期には、乗員Pが膨張部46から受ける荷重が早期に増加すること、かつ、その後は同荷重が低い所定値βにほぼ維持されることから、膨張部46のエネルギー吸収量は、単に、エアバッグを単一の膨張部により構成し、かつ調圧弁を設けない場合(従来技術1)のエネルギー吸収量と同程度となる。第1実施形態のストローク−荷重特性は、従来技術1について、膨張部への膨張用ガスの供給期間の後半における荷重の高い領域(右上がりの斜線で示す部分Q)が、同供給期間の前半における荷重の低い領域(右下がりの斜線で示す部分R)にシフトしたような形態となる。部分Qと部分Rとでは形状が異なるが、面積は互いに略同一である。
ところで、下流側膨張部48の上記膨張により、同下流側膨張部48が折り畳まれた順とは逆の順に折り状態を解消しようとする。下流側膨張部48は、ボディサイド部11と乗員Pの上半身の前半部(胸部PT)との間で、前方へ向けて、折り状態を解消(展開)する。
このようにして、エアバッグ40が、乗員Pの上半身と、車内側へ進入してくるボディサイド部11との間に介在する。このエアバッグ40によって上半身が車幅方向内側へ押圧されて拘束される。そして、ボディサイド部11を通じて上半身へ伝わる側方からの衝撃がエアバッグ40によって緩和されて同上半身が保護される。
ここで、乗員Pの上半身に対し側方から衝撃が加わった場合の耐衝撃性は、一般に、後半部において前半部よりも勝っている。これは、後半部には背骨があり、肋骨がその後部において背骨に接続されているのに対し、肋骨の前部は、上記背骨のような強度を有するものに接続されていないからである。そのため、エアバッグ40の膨張展開に伴い乗員Pの上半身に側方から作用する膨張部46の内圧は、前半部において後半部よりも低いことが望ましい。
この点、第1実施形態では、膨張部46は、前後方向については、区画部材50が、上半身の前半部と後半部との境界部分の近傍に位置するように膨張する。エアバッグ40の膨張部46が膨張展開した状態では、上半身の後半部の側方近傍には上流側膨張部47が位置し、前半部の側方近傍には下流側膨張部48が位置する(図3参照)。従って、エアバッグ40による乗員Pの拘束初期には、乗員Pの上半身のうち前半部よりも耐衝撃性の高い後半部は、早期に内圧が高くなる上流側膨張部47によって押圧される。また、同拘束初期には、乗員Pの上半身のうち耐衝撃性の比較的低い前半部は、内圧が上流側膨張部47ほど高くならない下流側膨張部48によって押圧される。
以上詳述した第1実施形態によれば、次の効果が得られる。
(1)区画部材50として、膨張部46の膨張に伴い平面状に緊張させられたとき、長手方向の長さL1が短手方向の長さL2よりも長い長尺状をなすものを用いる(図9)。区画部材50に設けられ、かつ短手方向に延びるスリット状の内開口部71と、内開口部71の周りに設けられて互いに接近及び離間する一対の弁体部73,74とにより、調圧弁70を構成している(図10)。
このため、上流側膨張部47の膨張時には、区画部材50において、長手方向よりも短手方向に掛かる強いテンションによって調圧弁70を閉弁させ、上流側膨張部47内の膨張用ガスGが下流側膨張部48へ流出するのを規制することができる。
また、乗員拘束に伴う外力が膨張部46に加わるときには、上流側膨張部47の上昇する内圧によって区画部材50を変形させてテンションを変化させることができる。また、乗員Pとボディサイド部11(ドアトリム)との間で、エアバッグ40が潰されて、エアバッグ40自体が変形することによって、区画部材50に掛かるテンションを変化させることができる。これらの区画部材50のテンションの変化により、内開口部71の変形及び両弁体部73,74の作動を許容することができる。内開口部71を開かせ、上流側膨張部47の内圧によって両弁体部73,74を、その内開口部71を通じて、下流側膨張部48へ押し出し(反転させ)、先端部73T,74Tを離れさせることにより上記規制を解除し、上流側膨張部47から下流側膨張部48へ膨張用ガスGを流出させることができる。
このように、第1実施形態によれば、内開口部71と、一対の弁体部73,74といった簡便かつ安価な構成でありながら、膨張部46への膨張用ガスGの供給期間の初期には閉弁し、同供給期間の途中から開弁する調圧弁70を成立させることができる。そして、この調圧弁70の作動により、エアバッグ40を通じて乗員Pの上半身が受ける荷重の特性を、短時間で所定値βに到達し、その後は所定値βに維持されるといった、乗員Pを適切に拘束して保護するうえで好適な特性にすることができる。
(2)両弁体部73,74を、膨張部46の膨張前に上流側膨張部47に配置している(図8)。
このため、上流側膨張部47の膨張時であって、乗員拘束前の状態では、両弁体部73,74を同上流側膨張部47の内圧PIによって互いに密着させて自己シール状態にすることができる(図11(A))。
また、エアバッグ40による乗員拘束時には、重ね合わせ部61を両弁体部73,74においてのみ反転させ、内開口部71を通じて下流側膨張部48へ押し出し(図11(B))、調圧弁70を開弁させる(図11(C))ことができる。
(3)区画部材50を折り線51に沿って折り返すことにより、相対向する対向端部52,53を接近させてなる二つ折り状態にする。この二つ折り状態の区画部材50を、折り線51を対向端部52,53よりも上流側に位置させた状態で非膨張展開状態の膨張部46に配設する。さらに、区画部材50を、各対向端部52,53において外結合部54,55によってエアバッグ40の対応する布部43,44に結合するとともに、長手方向(略上下方向)の両端部において、周縁結合部45によって同両布部43,44に結合(共縫い)している(図6、図10)。
このため、上流側膨張部47の膨張時には、区画部材50の上部P2及び下部P3を、折り線51を対向端部52,53よりも上流側に位置させてなる屈曲状態にする(図11(A))。また、乗員拘束に伴う外力が膨張部46に加わるときには、上流側膨張部47の上昇する内圧PIによって、上記上部P2及び下部P3を、折り線51が対向端部52,53よりも下流側に位置する形状、すなわち、乗員拘束前とは逆の形状に変化(反転)させる(図11(B))。この形状変化により、区画部材50(中間部分P1)に掛かるテンションの変化を容易に発生させて、内開口部71の変形、及び弁体部73,74の作動を許容することができる。
この際には、上部P2及び下部P3の上記反転により、区画部材50においてテンションの掛かっている領域を長手方向(上下方向)についての両方向へ拡大し、内開口部71及び両弁体部73,74を同方向に引っ張って開かせる(調圧弁70を開弁させる)ことができる。
特に、第1実施形態では、上述した(2)の自己シール機能と相まって、調圧弁70の閉弁時におけるシール性向上と、開弁時における膨張用ガスGの流通性向上との両立を図ることができる。
(4)2つの部材56,57の端縁58E,59E同士を合致させた状態で、両部材56,57の端部58,59同士を帯状に重ね合わせる。さらに、両重ね合わせ部61と非重ね合わせ部62との境界部分に設けた内結合部63によって両部材56,57を結合することにより、区画部材50を形成する。内結合部63の一部において両部材56,57の結合を解除させることにより、内開口部71を形成する。そして、両重ね合わせ部61において内開口部71に対応する箇所(近傍部分)を両弁体部73,74としている(図10)。
このため、2つの部材56,57における非重ね合わせ部62と両重ね合わせ部61との境界部分を、一部を残した状態で結合することにより、区画部材50、内開口部71及び両弁体部73,74を一度に形成することができる。内開口部71の形成、及び両弁体部73,74の形成のために特別な作業を行わなくてもすむ。
特に、両弁体部73,74が区画部材50に一体となっている。より正確には、一方の弁体部73が部材56に一体となり、他方の弁体部74が部材57に一体となっている。このため、両弁体部73,74が区画部材50(部材56,57)とは異なる部品からなる場合に比べ、部品点数を少なくすることができる。また、同部品を区画部材50(部材56,57)に結合する作業を行わなくてもすむ。
(第2実施形態)
次に、本発明を具体化した第2実施形態について、図14〜図17を参照して説明する。
第2実施形態では、図14〜図16の少なくとも1つに示すように、両弁体部73,74を含む一対の重ね合わせ部61が、膨張部46の膨張前に下流側膨張部48に配置されている点において、第1実施形態と異なっている。そのため、第1実施形態と同様の箇所及び部材については、同一の符号を付して詳しい説明を省略する。なお、図14中、一点鎖線の大きな丸い枠Xで囲まれた箇所は、小さな丸い枠Xで囲まれた箇所を拡大して示している。
この場合には、両弁体部73,74を含む重ね合わせ部61が、第1実施形態と若干異なる挙動をする。
区画部材50は、膨張部46への膨張用ガスGの供給前には、折り線51を対向端部52,53よりも上流側に位置させてなる二つ折り状態となっている(図14、図15参照)。
膨張部46への膨張用ガスGの供給により上流側膨張部47の膨張が開始すると、二つ折り状態の区画部材50が図16及び図17(A)に示すように引っ張られ、区画部材50に対し、長手方向や短手方向にテンションが掛かる。このテンションにより、区画部材50では中間部分P1が略平面状の緊張状態になるが、上部P2及び下部P3は、折り線51を対向端部52,53よりも上流側に位置させた屈曲状態になる。
ここで、L1>L2の関係を満たす区画部材50では、短手方向(折り線51に直交する方向)に対し、長手方向(折り線51に沿う方向)に対するよりも強いテンションが掛かりやすい。そのため、短手方向に延びる内開口部71は、上記のテンションの強弱関係により閉じられやすい。
また、上流側膨張部47が膨張したときには、区画部材50に対し長手方向よりも短手方向に強いテンションが掛かるだけでなく、両弁体部73,74を含む両重ね合わせ部61に対しても、長手方向よりも短手方向に強いテンションが掛かる。このテンションにより、両弁体部73,74がそれらの面全体で互いに密着して、膨張用ガスGの漏れを抑制したシール状態になろうとする。そのため、上流側膨張部47内の膨張用ガスGは、内開口部71及び両弁体部73,74間を通って下流側膨張部48へ流出しにくい。
なお、第2実施形態では両弁体部73,74が、膨張部46の膨張前から下流側膨張部48に位置していることから、第1実施形態とは異なり、上流側膨張部47の内圧が両弁体部73,74に対し、その重なり方向(厚み方向)についての両側から加わって、両弁体部73,74が自己シール状態になることはない。また、この内圧により、両弁体部73,74を含む重ね合わせ部61が区画部材50の非重ね合わせ部62に押し付けられることもない。
調圧弁70が閉弁した状態で、上流側膨張部47内に膨張用ガスGが供給され続ける一方、図17(B)に示すように、乗員拘束に伴う外力が加わって膨張部46が押圧されて変形すると、区画部材50に掛かるテンションが変化する。また、膨張部46の上記変形に伴い上流側膨張部47の内圧PIがさらに上昇する。区画部材50の中間部分P1が押圧されて、同中間部分P1に掛かるテンションが変化する。
また、上昇した上記内圧PIにより、区画部材50の上部P2及び下部P3が押圧されて下流側膨張部48側へ膨らむように変形する(図17(B)の実線参照)。すなわち、上部P2及び下部P3は、乗員拘束前の上記屈曲状態(図17(B)の二点鎖線参照)から反転したような形状に変形し、中間部分P1においてテンションの変化が容易に発生し、内開口部71の変形及び両弁体部73,74の作動がともに許容される。
ただし、上記中間部分P1の変形時には、両端部において固定された両重ね合わせ部61も押圧されて、両端部以外の箇所において下流側膨張部48側へ膨らむように変形する。この変形の方向と両弁体部73,74の厚み方向とは同じであるため、両弁体部73,74は、面方向について互いに離間する方向に比べ、厚み方向に動きにくい。そのため、乗員拘束に伴い加わる外力が比較的小さいときには、両弁体部73,74は互いに密着した状態を維持し、高いシール性を発揮する。
乗員拘束に伴い加わる外力が大きくなっていくと、上部P2及び下部P3の上記反転により、区画部材50においてテンションの掛かっている領域が、長手方向(上下方向)についての両方向へ拡がっていく。区画部材50の上側の部材56に対しては上方へ向かうテンションが強まり、下側の部材57に対しては下方へ向かうテンションが強まる。これらのテンションの変化により、スリット状の内開口部71が上下方向に引っ張られて開きやすくなる。
内開口部71の上下方向の幅W1が拡がるに従い、上側の弁体部73が矢印AUで示すように上方へ引っ張られ、下側の弁体部74が矢印ALで示すように下方へ引っ張られる。重ね合わせ部61において外結合部54,55に近い部分では、重ね合わされた状態を維持しようとする力が強い。しかし、この力は、外結合部54,55から遠ざかるに従い小さくなり、内結合部63に沿う方向についての中央部分、すなわち両弁体部73,74において最小となる。このため、上下方向へ引っ張られた重ね合わせ部61は、弁体部73,74及びその近傍部分において、互いに離間する方向である上下方向へ変形し、両弁体部73,74の重なり部分が徐々に少なくなっていく。
そして、図17(C)に示すように、少なくとも一方(例えば下側)の弁体部74が少なからず前方側へ傾斜させられ(倒され)て、調圧弁70が開弁した状態になる。上流側膨張部47内の膨張用ガスGが、同図17(C)において矢印で示すように、内開口部71及び両弁体部73,74間を通って前方へ向けて流れ、下流側膨張部48へ流出するようになる。
従って、第2実施形態によると、上述した(1),(3),(4)に加え、次の効果が得られる。
(5)区画部材50には、それぞれ短手方向に延びて帯状をなし、かつ膨張部46の膨張前に下流側膨張部48に位置する一対の重ね合わせ部61を設け、両重ね合わせ部61において内開口部71に対応する箇所を両弁体部73,74とする。両重ね合わせ部61を区画部材50の非重ね合わせ部62との境界部分に沿って折り曲げ、短手方向についての両端部において両重ね合わせ部61を、エアバッグ40の対応する布部43,44に結合している(図16)。
このため、上流側膨張部47の膨張時には、区画部材50だけでなく両重ね合わせ部61に対しても長手方向よりも短手方向に強いテンションを掛け、両弁体部73,74を、それらの面全体で互いに密着させてシール状態にすることができる。また、膨張部46による乗員Pの拘束時には、その拘束に伴い大きな外力が加わるまで両弁体部73,74を密着状態に維持し、高いシール性を発揮させることができる。
従って、第2実施形態のサイドエアバッグ装置は、乗員拘束時の初期から比較的長い期間にわたり、調圧弁70を閉弁させて高いシール性を維持することが要求される場面で特に有効であるといえる。
(第3実施形態)
次に、本発明を具体化した第3実施形態について、図18〜図22を参照して説明する。
第3実施形態では、図18〜図20の少なくとも1つに示すように、長手方向に延びる折り線51に沿って折り返されることにより、相対向する対向端部52,53を接近させてなる二つ折り状態の区画部材50が、折り線51を対向端部52,53よりも下流側に位置させた状態で非膨張展開状態の膨張部46に配設されている。
上記以外の構成は、第1実施形態と同様である。そのため、第1実施形態と同様の箇所及び部材については、同一の符号を付して詳しい説明を省略する。なお、図18中、一点鎖線の大きな丸い枠Yで囲まれた箇所は、小さな丸い枠Yで囲まれた箇所を拡大して示している。
この場合、区画部材50は、膨張部46への膨張用ガスの供給前には、折り線51を対向端部52,53よりも下流側に位置させてなる二つ折り状態になっている(図18〜図20参照)。
図21及び図22(A)に示すように、膨張部46への膨張用ガスGの供給により上流側膨張部47の膨張が開始すると、二つ折り状態の区画部材50が引っ張られ、同区画部材50に対し、長手方向や短手方向にテンションが掛かる。このテンションにより、区画部材50では中間部分P1が略平面状の緊張状態になるが、上部P2及び下部P3は、折り線51を対向端部52,53よりも下流側に位置させた屈曲状態になる。
上流側膨張部47に位置する両弁体部73,74に対しては、その重なり方向(厚み方向)についての両側から内圧PIが加わる。この内圧PIは、膨張部46による乗員Pの拘束時ほど高くない。両弁体部73,74は、この内圧PIにより面全体で互いに密着し、両弁体部73,74間での膨張用ガスGの流通を規制する自己シール状態となる。さらに、折り曲げられて区画部材50の非重ね合わせ部62に重ねられた重ね合わせ部61が、内圧PIによりその非重ね合わせ部62に押し付けられ(図22(A)参照)、両弁体部73,74が一層閉じられやすくなる。
ここで、第3実施形態でも第1実施形態と同様に、L1>L2の関係を満たす長尺状の区画部材50において、内開口部71が短手方向に延びている(図21参照)。一方、この区画部材50においては、短手方向に対し、長手方向に対するよりも強いテンションが掛かりやすい。そのため、上記のテンションの強弱関係により、内開口部71が閉じられやすい。
また、上流側膨張部47が膨張したときには、両弁体部73,74を含む重ね合わせ部61に対しても、長手方向よりも短手方向に強いテンションが掛かる。このテンションにより、両弁体部73,74がそれらの面全体で互いに密着して、膨張用ガスGの漏れを抑制したシール状態になろうとする。そのため、上流側膨張部47内の膨張用ガスGは、内開口部71及び両弁体部73,74間を通って下流側膨張部48へ流出しにくい。
調圧弁70が閉弁した状態で、上流側膨張部47内に膨張用ガスGが供給され続ける一方、乗員拘束に伴う外力が加わって膨張部46が押圧されて変形すると、区画部材50に掛かるテンションが変化する。また、膨張部46の変形に伴い上流側膨張部47の内圧PIがさらに上昇する。区画部材50の中間部分P1が押圧されて、同中間部分P1に掛かるテンションが変化する。
一方、区画部材50の上部P2及び下部P3が押圧されて下流側膨張部48側へ膨らむように変形する。上部P2及び下部P3は、上述したように乗員拘束前には、折り線51を対向端部52,53よりも下流側に位置させた屈曲状態となっている。乗員拘束時には、上部P2及び下部P3は乗員拘束前と同一傾向の形状となる。従って、上記第1実施形態に比べ、区画部材50の形状変化による中間部分P1のテンションの変化が少ない。そのため、内開口部71の変形や、両弁体部73,74の作動が許容されにくい。
この際、第1実施形態とは異なり、上部P2及び下部P3の反転がないことから、区画部材50においてテンションの掛かっている領域が長手方向(上下方向)に拡がって、同長手方向(上下方向)についての両方向に向かうテンションが強まることが起こりにくい。そのため、内開口部71及び弁体部73,74が閉じた状態に維持されやすく、シール性が維持されやすい。
その後は、第1実施形態と同様である。すなわち、区画部材50の上側の部材56が下流側膨張部48側へ変形するに従い、上方へ向かうテンションが強まる。下側の部材57が下流側膨張部48側へ変形するに従い、下方へ向かうテンションが強まる。これらのテンションの変化により、スリット状の内開口部71が上下方向に引っ張られて開く(図22(B)参照)。
内開口部71が上下方向にある程度開くと、重ね合わせ部61では、上流側膨張部47の高い内圧PIを受けた両弁体部73,74においてのみ、内開口部71を通って下流側膨張部48へ押し出されて反転される(図22(B)参照)。
そして、内開口部71の幅W1が2・W2よりも大きくなると、先端部73T,74Tが離れる(図22(C)参照)。調圧弁70が開弁した状態となって、上流側膨張部47内の膨張用ガスGが内開口部71及び両弁体部73,74間を順に通って下流側膨張部48へ流出することが可能となる。
従って、第3実施形態によると、上述した(1),(2),(4)に加え、次の効果が得られる。
(6)区画部材50を、長手方向に延びる折り線51に沿って折り返すことにより、相対向する対向端部52,53を接近させてなる二つ折り状態にする。この二つ折り状態の区画部材50を、折り線51を対向端部52,53よりも下流側に位置させた状態で非膨張展開状態の膨張部46に配設する。さらに、区画部材50を、各対向端部52,53において外結合部54,55によってエアバッグ40の対応する布部43,44に結合するとともに、長手方向(略上下方向)の両端部において、周縁結合部45によって同両布部43,44に結合している(図18、図21)。
このため、膨張部46の膨張時には、区画部材50の上部P2及び下部P3を、折り線51を対向端部52,53よりも下流側に位置させてなる屈曲状態にする(図22(A))。また、乗員拘束に伴う外力が膨張部46に加わるときには、上流側膨張部47の上昇する内圧によって、上部P2及び下部P3を、折り線51が対向端部52,53よりも下流側に位置する形状、すなわち、乗員拘束前と同一傾向の形状にする。第1及び第2実施形態に比べ、上部P2及び下部P3の形状変化による中間部分P1のテンションの変化を少なくし、内開口部71の変形や、両弁体部73,74の作動を許容しつつもしづらくすることができる。内開口部71及び両弁体部73,74を閉じた状態に維持し、シール性を維持しやすくすることができる。従って、上流側膨張部47の内圧を高圧に維持した後に、上流側膨張部47の膨張用ガスGを下流側膨張部48へ流出させる特性を得やすい。
(第4実施形態)
次に、本発明を具体化した第4実施形態について、図23〜図26を参照して説明する。
第4実施形態では、図23及び図24に示すように、両弁体部73,74を含む重ね合わせ部61が、膨張部46の膨張前に下流側膨張部48に配置されている点において、第3実施形態と異なっている。そのため、第3実施形態と同様の箇所及び部材については、同一の符号を付して詳しい説明を省略する。なお、図23中、一点鎖線の大きな丸い枠Zで囲まれた箇所は、小さな丸い枠Zで囲まれた箇所を拡大して示している。
この場合、区画部材50は、膨張部46への膨張用ガスGの供給前には、折り線51を対向端部52,53よりも下流側に位置させてなる二つ折り状態になっている(図23、図24参照)。
膨張部46への膨張用ガスGの供給により上流側膨張部47の膨張が開始すると、二つ折り状態の区画部材50が引っ張られ、同区画部材50に対し、長手方向や短手方向にテンションが掛かる。このテンションにより、区画部材50では中間部分P1が略平面状の緊張状態になる(図25参照)が、上部P2及び下部P3は、折り線51を対向端部52,53よりも下流側に位置させた屈曲状態になる(図26(A)参照)。
ここで、第4実施形態では、両弁体部73,74が,膨張部46の膨張前から下流側膨張部48に位置していることから、第3実施形態とは異なり、上流側膨張部47の内圧が両弁体部73,74に対し、その重なり方向(厚み方向)についての両側から加わって、両弁体部73,74が自己シール状態になることはない。また、この内圧により、両弁体部73,74を含む重ね合わせ部61が区画部材50の非重ね合わせ部62に押し付けられることもない。
しかし、L1>L2の関係を満たす長尺状の区画部材50において、内開口部71が短手方向に延びていることから、短手方向に対し、長手方向に対するよりも強いテンションが掛かりやすく、内開口部71が閉じられやすい。
これに加え、両弁体部73,74を含む重ね合わせ部61に対しても、長手方向よりも短手方向に強いテンションが掛かる。このテンションにより、両弁体部73,74がそれらの面全体で互いに密着して、膨張用ガスGの漏れを抑制したシール状態になろうとする。そのため、上流側膨張部47内の膨張用ガスGは、内開口部71及び両弁体部73,74間を通って下流側膨張部48へ流出しにくい。
一方、乗員拘束に伴う外力が加わって膨張部46が押圧されて変形すると、区画部材50に掛かるテンションが変化する。また、膨張部46の上記変形に伴い上流側膨張部47の内圧PIがさらに上昇する。区画部材50の中間部分P1が押圧されて、同中間部分P1に掛かるテンションが変化する。
また、区画部材50の上部P2及び下部P3が押圧されて下流側膨張部48側へ膨らむように変形する(図26(B)参照)。上部P2及び下部P3は、上述したように乗員拘束前には、折り線51を対向端部52,53よりも下流側に位置させた屈曲状態となっている(図26(A)参照)。乗員拘束時には、上部P2及び下部P3は乗員拘束前と同一傾向の形状となる。従って、第2実施形態に比べ、上部P2及び下部P3の形状変化による中間部分P1のテンションの変化が少なく、内開口部71の変形や、両弁体部73,74の作動が許容されにくい。
この際、上部P2及び下部P3の反転がないことから、区画部材50においてテンションの掛かっている領域が長手方向(上下方向)に拡がって、同長手方向(上下方向)についての両方向に向かうテンションが強まることが起こりにくい。そのため、内開口部71及び弁体部73,74が閉じた状態に維持されやすく、シール性が維持されやすい。
これに加え、上記中間部分P1の変形に伴い、両端部において固定された両重ね合わせ部61も押圧されて、両端部以外の箇所において下流側膨張部48側へ膨らむように変形する。この変形の方向と両弁体部73,74の厚み方向とは同じであるため、両弁体部73,74は、面方向について互いに離間する方向に比べ、厚み方向に動きにくい。そのため、乗員拘束に伴い加わる外力が比較的小さいときには、両弁体部73,74は互いに密着した状態を維持し、高いシール性を発揮する。
その後は、第2実施形態と同様である。すなわち、乗員拘束に伴い加わる外力が大きくなっていくと、区画部材50の上側の部材56に対しては上方へ向かうテンションが強まり、下側の部材57に対しては下方へ向かうテンションが強まる。そのため、スリット状の内開口部71が上下方向に引っ張られて開く(図26(B)参照)。
内開口部71の上下方向の幅W1が拡がるに従い、上側の弁体部73が上方へ引っ張られ、下側の弁体部74が下方へ引っ張られる。重ね合わせ部61は、弁体部73,74及びその近傍部分において上下方向へ変形し、両弁体部73,74の重なり部分が徐々に少なくなっていく。
そして、乗員拘束に伴う大きな外力が膨張部46に加えられて、同膨張部46が多く変形すると、図26(C)に示すように、少なくとも一方(例えば下側)の弁体部74が少なからず前方側へ傾斜させられ(倒され)て、調圧弁70が開弁した状態になる。上流側膨張部47内の膨張用ガスGが、同図26(C)において矢印で示すように、内開口部71及び両弁体部73,74間を通って前方へ向けて流れ、下流側膨張部48へ流出するようになる。
従って、第4実施形態によると、上述した(1),(4)〜(6)と同様の効果が得られる。特に、第4実施形態では、第3実施形態よりも両弁体部73,74が動きにくくなるため、上流側膨張部47の内圧を第3実施形態よりも高圧に維持した後に、上流側膨張部47の膨張用ガスGを下流側膨張部48へ流出させる特性を得やすい。
なお、エアバッグ40の布部43,44と周縁結合部45に用いられる縫糸とを比べた場合、前者の方が耐熱性に優れる。一方で、インフレータ31からは高温の膨張用ガスGが噴出される。そのため、エアバッグ40は、1枚又は2枚の布片がインフレータ31の近くで縫合されるよりも、1枚の布片がインフレータ31の近くで二つ折りされる(縫合されない)方が、耐熱性の点で好ましい。
しかし、この場合には、第1〜第4実施形態のうち、第1及び第3実施形態の構成を適用することが、製造の点から難しい。これは、エアバッグ40が1枚の布片からなる故に、各結合部を設ける作業の順序が、外結合部54,55→内結合部63→周縁結合部45の順とならざるを得ない。この順序で作業を行う以上、重ね合わせ部61が上流側膨張部47に位置するように、外結合部54,55及び内結合部63を設ける作業を行うことは、非常に難しいからである。結局、重ね合わせ部61が下流側膨張部48に位置する第2及び第4実施形態の構成を採らざるを得なくなる。従って、第2及び第4実施形態の方が、重ね合わせ部61が上流側膨張部47に位置する第1及び第3実施形態に比べ製造のしやすさで優位であるといえる。
(第5実施形態)
次に、本発明を具体化した第5実施形態について、図6、図27及び図28を参照して説明する。
エアバッグ40は、既述したように、一対の布部43,44を、同両布部43,44の周縁部に沿って設けられた周縁結合部45で結合することによって袋状に形成されている。また、既述したように、区画部材50は、膨張用ガスGの供給前には、長手方向に延びる折り線51に沿って折り返されることにより、相対向する対向端部52,53を接近させてなる二つ折り状態にされて、エアバッグ40の両布部43,44間に配置されている。さらに、区画部材50が、各対向端部52,53において外結合部54,55により布部43,44に結合され、長手方向についての両端部において周縁結合部45により両布部43,44に結合されていることもまた既述した通りである。なお、以降の記載では、エアバッグ40において、車幅方向の中央部分よりも車内側の部材についてのみ説明するが、車外側の部材についても同様である。
ここで、上記区画部材50の対向端部52をエアバッグ40の布部43に結合する外結合部54が、折り線51に対し平行に延びている場合(図6等参照)には、外結合部54と折り線51との間隔D1が、折り線51の周縁結合部45との交差部51Cを含め、長手方向のどの箇所でも同一となる。
一方、区画部材50は、膨張部46の膨張に伴い、その膨張方向(前方(図6では概ね右方))に直交する平面状に緊張させられる。区画部材50の対向端部52が、外結合部54によってエアバッグ40の布部43に結合されているのに対し、区画部材50の折り返し部分は、長手方向の両端部においてのみ、周縁結合部45によって上記布部43に結合されている。そのため、区画部材50が上記のように平面状に緊張させられるときには、区画部材50の折り線51に沿った折り返し部分が、膨張部46の膨張方向についての外結合部54側へ引っ張られて移動する。折り返し部分の布部43との結合部、すなわち折り線51の周縁結合部45との交差部51Cも、折り返し部分のほかの箇所と同様に、図6において矢印A1で示すように、外結合部54側へ引っ張られて移動する。折り返し部分のほかの箇所は布部43に直接結合されておらず、移動を規制するものがない。しかし、折り返し部分の布部43との結合部(折り線51の周縁結合部45との交差部51C)では、周縁結合部45が、その交差部51Cの移動を規制する。従って、交差部51Cは、折り返し部分のほかの箇所とは異なり、無理矢理引っ張られて同交差部51Cに大きな負荷が加わる。
この際、外結合部54が折り線51に平行であり、図6に示すように、折り線51と外結合部54との間隔D1が大きい。このことから、外結合部54から後方へ大きく離れている上記交差部51Cの移動量(引っ張られる量)が多く、それに伴い同交差部51Cに作用する引っ張り力が大きくなる。その結果、上記交差部51Cに応力が集中し、大きな負荷が加わるおそれがある。これについては、補強布を追加する等して交差部51Cを補強することで対処可能であるが、補強布が別途必要になったり、補強布をエアバッグ40に結合する作業が必要になったりして、コストの上昇を招く。
そこで、第5実施形態では、対向端部52と布部43とを結合する外結合部54の形状を工夫することで、対処するようにしている。
外結合部54は、その外結合部54と折り線51との間隔D1が、同外結合部54の周縁結合部45との交差部54Cにおいて、長手方向についての中間部分よりも小さくなるように設けられている。
より詳しくは、図27に示すように、外結合部54が折り線51に平行に延びている仮想のエアバッグ装置において、点A〜点Dが次のように定義されている。
点A:外結合部54が周縁結合部45と交差する箇所。
点B:折り線51が周縁結合部45と交差する箇所。
点C:点Bを通り、かつ折り線51に直交する線分S1が外結合部54と交差する箇所。
点D:外結合部54上であって、上記点Cから調圧弁70に近づく側へ、前記線分S1と同じ長さだけ離れた箇所。
周縁結合部45が布部43の上下2箇所に設けられていることから、上記点A〜点Dは、上下に2組存在する。なお、各組の点A〜点Dは、調圧弁70の内結合部63を対称軸として、概ね互いに線対称の関係となる箇所に位置する。そのため、ここでは、どちらの組においても点A〜点Dの語を共通して使用することとする。
各組において、外結合部54のうち、周縁結合部45及び点Dを繋ぐ部分(54S:図28参照)は、次の条件を満たす箇所に設けられている。
条件:点A及び点Dを繋ぐ線分S2と、点B及び点Dを繋ぐ線分S3と、周縁結合部45とにより挟まれる領域Z1(図27中、網点の付された領域)のうち、線分S2よりも線分S3側に設けられていること。
上記の条件を満たすよう、第5実施形態では、図28に示すように、外結合部54のうち部分54Sが線分S3に沿う直線状をなしている。従って、外結合部54のうち部分54Sは折り線51に対し斜めに交差している。
第5実施形態では、さらに、外結合部54において、上側の組の点D、及び下側の組の点Dを繋ぐ部分54Mが、折り線51に平行となるように直線状をなしている。
また、外結合部54の形状の上記変更に伴い、区画部材50の周縁50Cの形状も変更されている。区画部材50の周縁50Cは、外結合部54から一定距離離れた箇所に位置している。周縁50Cにおいて外結合部54の部分54Sに対応する箇所は、折り線51に対し斜めに交差し、部分54Mに対応する箇所は、折り線51に対し平行となっている。
上記以外の構成は、第1実施形態と同様である。そのため、第1実施形態と同様の箇所及び部材については、同一の符号を付して詳しい説明を省略する。
第5実施形態では、外結合部54の形状が第1〜第4実施形態とは異なるものに変更されたことにより、外結合部54と折り線51との間隔D1が、同外結合部54の周縁結合部45との交差部54Cにおいて、長手方向についての中間部分よりも小さくなっている。外結合部54が折り線51に対し平行である場合(図6参照)に比べ、交差部51Cと交差部54Cとの間隔D1が小さくなっている。
そのため、区画部材50が、膨張部46の膨張に伴い、その膨張方向に直交する平面状に緊張させられるときには、交差部51Cが外結合部54側へ引っ張られて移動する量が、矢印A1で示すように少なくなる。これに伴い、交差部51Cに作用する引っ張り力が小さくなって、同交差部51Cに対する応力集中が緩和される。上記交差部51Cに大きな負荷が加わるおそれが少なくなる。
特に、第5実施形態では、外結合部54のうち、部分54Sが線分S3に沿う直線状をなしていて、交差部54Cと折り線51との間隔D1が、採り得る範囲の最小値に近づく。そのため、交差部51Cが外結合部54側へ引っ張られて移動する量、ひいては同交差部51Cに作用する引っ張り力が最小値に近づき、同交差部51Cに対する応力集中を緩和する大きな効果が得られる。上記交差部51Cに大きな負荷が加わりにくく、同交差部51Cを補強する別途の対策が不要となる。
従って、第5実施形態によると、上述した(1)〜(4)に加え、次の効果が得られる。
(7)外結合部54のうち、周縁結合部45及び点Dを繋ぐ部分54Sを、点A及び点Dを繋ぐ線分S2と、点B及び点Dを繋ぐ線分S3と、周縁結合部45とにより挟まれる領域Z1のうち、線分S2よりも線分S3側に設けている。この構成を採用することで、外結合部54と折り線51との間隔D1を、外結合部54の周縁結合部45との交差部54Cにおいて、区画部材50の長手方向についての中間部分(部分54M等)よりも小さくしている(図28)。
このため、外結合部54の全体が折り線51に対し平行である場合(図6等)に比べ、折り線51の周縁結合部45との交差部51Cが外結合部54側へ引っ張られて移動する量、ひいては同交差部51Cに作用する引っ張り力を小さくして、同交差部51Cに対する応力集中を緩和することができる。
(8)外結合部54のうち、周縁結合部45との交差部54Cと、点Dとを繋ぐ部分54Sを、点B及び点Dを繋ぐ線分S3に沿う直線状に形成することで、外結合部54の周縁結合部45との交差部54Cと、折り線51との間隔D1を、採り得る範囲の最小値に近づけている(図28)。
このため、折り線51の周縁結合部45との交差部51Cが外結合部54側へ引っ張られて移動する量、ひいては同交差部51Cに作用する引っ張り力を最小に近づけ、同交差部51Cに対する応力集中を緩和する大きな効果を得ることができる。
その結果、補強布を用いる等、交差部51Cを補強する別途の対策を軽減したり、場合によっては同対策を講じたりしなくてもすむようになる。後者の場合には、補強布を別途準備したり、補強布をエアバッグ40に結合する作業を行ったりする必要がなく、コストの上昇を抑えることができる。
なお、本発明は次に示す別の実施形態に具体化することができる。
・各実施形態の区画部材50における上側の部材56は、折り線51に沿って2枚に分割されてもよい。同様に、下側の部材57は、折り線51に沿って2枚に分割されてもよい。
・各実施形態において、区画部材50の対向端部52は、エアバッグ40の布部43に対し、上流側膨張部47内で結合されてもよいし、下流側膨張部48内で結合されてもよい。同様に、区画部材50の対向端部53は、エアバッグ40の布部44に対し、上流側膨張部47内で結合されてもよいし、下流側膨張部48内で結合されてもよい。
また、対向端部52,53の一方が上流側膨張部47内で結合され、他方が下流側膨張部48内で結合されてもよい。
・各実施形態において、内開口部71及び内結合部63は、区画部材50の折り線51に直交する方向に限らず、斜めに交差する方向に沿って設けられてもよい。
・エアバッグ40は、その略全体が膨張部46からなるものであってもよいが、膨張用ガスGが供給されず膨張することのない非膨張部を一部に有するものであってもよい。
・第1実施形態において、図29(A),(B)に示すように、区画部材50として、単一の部材86(布片)からなるものを用いてもよい。この場合には、部材86を折り線85に沿って二つ折りする。二つ折り状態の区画部材50の折り線85から一定距離ずつ離れた箇所に内結合部63を設ける。内結合部63と折り線85とによって挟まれた部分を、帯状をなす一対の重ね合わせ部61とする。さらに、これらの重ね合わせ部61の折り線85上において、少なくとも内開口部71に対応する箇所にスリット87を入れる。両重ね合わせ部61において、内開口部71及びスリット87間となる部分を、弁体部73,74とする。
第2〜第5実施形態についても上記と同様の変更が可能である。
・重ね合わせ部61において、両弁体部73,74として機能するのは、内開口部71に対応する部分(内開口部71の近傍部分、より正確には、内開口部71と端縁58E,59Eとの間の部分)である。そのため、上流側膨張部47の膨張時に、両弁体部73,74の少なくとも先端部73T,74Tが接触して閉じられるのであれば、重ね合わせ部61において、内開口部71に対応しない部分(非近傍部分)の形態を変更してもよい。例えば、重ね合わせ部61において内開口部71に対応しない部分(非近傍部分)については、部分的又は全体的に結合してもよい。この結合の手段としては、縫合であってもよいし、接着であってもよい。このように変更することで、重ね合わせ部61において内開口部71に対応する部分だけ両弁体部73,74として作動させ、対応しない部分が不要に動く現象、例えばばたつく現象を抑制することができる。
そのほかにも、重ね合わせ部61において内開口部71に対応しない箇所の少なくとも一部に切欠きを入れてもよい。
・区画部材50と両弁体部73,74とは、互いに異なる部材によって構成されてもよい。
・二つ折り状態の区画部材50における折り線51は、上下方向に対し多少傾斜していてもよい。
・上記第1〜第5実施形態では、乗員Pの主として胸部PTを保護するサイドエアバッグ装置を例に説明したが、本発明は、この胸部PTを含め、乗員Pのほかの部位を側突等の衝撃から保護するサイドエアバッグ装置にも適用可能である。以下に、適用例について説明する。なお、図30(A),(B)〜図32(A),(B)の各々は、エアバッグ40の膨張部46における区画部材50等の部材の配置状態を模式的に示したものであり、細部については省略・簡略化されている。なお、各図中、網点の付された箇所が区画部材である。
《乗員Pの胸部PT〜頭部PHにかけての部位を保護するサイドエアバッグ装置》
・このタイプのサイドエアバッグ装置では、図30(A)に示すように、車両に搭載され、かつ膨張した状態で、エアバッグ40の膨張部46が、胸部PT〜頭部PHの側方近傍で膨張し得るよう上下方向に細長いものとなる。このサイドエアバッグ装置に本発明を適用した場合、膨張部46が、調圧弁(図示略)を有し、かつ略上下方向に延びる区画部材50によって、前後2つの部分に区画されてもよい。膨張部46において区画部材50よりも後側が上流側膨張部88とされ、前側が下流側膨張部89とされる。この場合、区画部材50は、鉛直方向に沿って延びることとなるが、この区画部材50の延びる方向は、エアバッグ40に対する要求性能に応じて変更されてもよい。区画部材50は鉛直方向に対し傾斜するものであってもよい。その際、区画部材50の鉛直線になす角度(傾斜角度)は種々変更可能である。
また、図30(B)に示すように、区画部材は、上記膨張部46の前後方向に互いに離間した2箇所に並設されてもよい。2つの区画部材を区別するために、前側に位置するものを区画部材50Fとし、後側に位置するものを区画部材50Rとする。この場合、膨張部46は、両区画部材50R,50Fによって、後、中央、前の3つの部分に区画される。後側の区画部材50Rを基準とすると、「後」部分が上流側膨張部91となり、「中央」部分が下流側膨張部92となる。また、前側の区画部材50Fを基準とすると、「中央」部分が上流側膨張部93となり、「前」部分が下流側膨張部94となる。インフレータ31から噴出された膨張用ガスは、上流側膨張部91、区画部材50R、下流側膨張部92(上流側膨張部93)、区画部材50F及び下流側膨張部94の順に流れる。なお、図示はしないが、区画部材は、膨張部46の前後方向に互いに離間した3箇所以上の箇所に並設されてもよい。
《乗員Pの腰部PP〜胸部PT(肩部PS)にかけての部位を保護するサイドエアバッグ装置》
・このタイプのサイドエアバッグ装置では、図31(A)に示すように、車両に搭載され、かつ膨張した状態で、エアバッグ40の膨張部46が、腰部PP〜胸部PT(肩部PS)の側方近傍で膨張し得るよう上下方向に細長いものとなる。膨張部46は、仕切り部95及び逆止弁96によって上下2つの部位に区画されている。仕切り部95は、エアバッグ40の両布部43,44間に布片を架設してなるテザーによって構成されてもよいし、両布部43,44を互いに接触させた状態で縫合(結合)してなるシームによって構成されてもよい。
インフレータ31は、仕切り部95よりも上側の部位に配置される。逆止弁96は、インフレータ31から噴出される膨張用ガスが、仕切り部95よりも上側の部位から下側の部位に流れるのを許容し、その逆方向に流れるのを規制する。仕切り部95よりも上側の部位は、例えば胸部PT及び肩部PSの側方で膨張し、仕切り部95よりも下側の部位は、例えば腰部PPの側方で膨張する。
このサイドエアバッグ装置に本発明を適用した場合、同図31(A)に示すように、上側の部位が、略上下方向に延び、かつ調圧弁(図示略)を有する区画部材50Uによって、さらに前後2つに区画されてもよい。また、下側の部位が、略上下方向に延び、かつ調圧弁(図示略)を有する区画部材50Lによって、さらに前後2つに区画されてもよい。この場合、仕切り部95よりも上側の部位では、区画部材50Uよりも後側の部分が上流側膨張部97とされ、前側の部分が下流側膨張部98とされる。また、仕切り部95よりも下側の部位では、区画部材50Lよりも後側の部分が上流側膨張部99とされ、前側の部分が下流側膨張部100とされる。
なお、図示はしないが、区画部材50U,50Lは、仕切り部95よりも上側の部位のみに設けられてもよいし、下側の部位のみに設けられてもよい。
上記図31(A)の変形例として、図31(B)に示すように、仕切り部95よりも上側の部位が、略上下方向に延びる区画部材50Uに代えて、略前後方向に延びる区画部材50Hによって上下2つに区画されてもよい。この場合、区画部材50Hよりも下側の部分が、胸部PTを保護する上流側膨張部101とされ、上側の部分が肩部PSを保護する下流側膨張部102とされる。
なお、図示はしないが、仕切り部95よりも下側の部位が、略上下方向に延びる区画部材50Lに代えて、略前後方向に延びる区画部材によって上下2つに区画されてもよい。この場合、区画部材よりも上側の部分が、腰部PPの上半部を保護する上流側膨張部とされ、下側の部分が腰部PPの下半部を保護する下流側膨張部とされる。
・図32(A)に示すように、膨張部46は、インフレータ31の前方で、同インフレータ31に沿って略上下方向に延びる仕切り部103によって、大きく前後2つに区画されてもよい。仕切り部103は、上述した仕切り部95(図31(A),(B)参照)と同様、エアバッグ40の両布部43,44間に布片を架設してなるテザーによって構成されてもよいし、両布部43,44を互いに接触させた状態で縫合(結合)してなるシームによって構成されてもよい。
仕切り部103よりも後側の部位は、インフレータ31が収容されるインフレータ収容部104とされる。仕切り部103よりも前側の部位は、乗員Pの肩部PS〜腰部PPにかけての部位を保護する保護部105とされる。保護部105は、調圧弁(図示略)を有し、かつそれぞれ略前後方向に延びる上下一対の区画部材50U,50Lによって上、中央、下の3つの部分に区画されてもよい。この場合、上側の区画部材50Uを基準とすると、「上」部分が上流側膨張部106となり、「中央」部分が下流側膨張部107となる。また、下側の区画部材50Lを基準とすると、「下」部分が上流側膨張部108となり、「中央」部分が下流側膨張部107となる。
インフレータ31から噴出される膨張用ガスは、インフレータ収容部104、上流側膨張部106及び区画部材50Uを順に経て下流側膨張部107に供給されるとともに、インフレータ収容部104、上流側膨張部108及び区画部材50Lを順に経て下流側膨張部107に供給される。このように、膨張用ガスは2つのルートを通って下流側膨張部107に供給される。
なお、図示はしないが、仕切り部103が設けられることなく、膨張部46は、調圧弁(図示略)を有し、かつ略前後方向に延びる1つの区画部材によって、上下2つの部分に区画されてもよい。下側の部分は、インフレータ31からの膨張用ガスが最初に供給されて腰部PPを保護する上流側膨張部とされ、上側の部分は、上流側膨張部を経た膨張用ガスが供給されて、胸部PT(肩部PS)を保護する下流側膨張部とされてもよい。
・区画部材50の形状は、直線状をなすものに限らず、非直線状をなすものであってもよい。調圧弁(図示略)を有する区画部材50は、例えば図32(B)に示すように、L字形状(くの字形状)をなすものであってもよい。この場合、膨張部46は区画部材50によって略上下方向に3つの部分に区画されてもよい。区画部材50の斜め後ろ上方の部分が上流側膨張部111とされ、同区画部材50の斜め後ろ下方の部分が上流側膨張部112とされ、区画部材50によって挟まれた部分が下流側膨張部113とされる。
そのほか、図示はしないが、区画部材50は半円形状をなすものであってもよい。
なお、上記変更についての思想は、胸部PTのみを保護するサイドエアバッグ装置、胸部PT〜頭部PHを保護するサイドエアバッグ装置、腰部PP〜胸部PT(肩部PS)を保護するサイドエアバッグ装置、腰部PP〜頭部PHを保護するサイドエアバッグ装置の各エアバッグに適宜転用可能である。
・本発明は、サイドエアバッグ装置とは異なる種類のエアバッグ装置にも適用可能である。
その一例として、図33及び図34に示す膝保護用エアバッグ装置120がある。図33に示すように、膝保護用エアバッグ装置120は、車両用シート(図示略)に着座した乗員Pの下肢の前下方で膨張することにより、同乗員Pの脛部PDから膝部PKにかけての部位を保護するものである。膝保護用エアバッグ装置120は、例えばステアリングコラム121の下方に設けられた収納部122に収納されている。なお、この収納部122は、インストルメントパネルにおいて助手席の乗員の前下方に設けられてもよい。
前突等により、車両に前方から衝撃が加わったことが検知されると、膝保護用エアバッグ装置120のエアバッグ123は膨張用ガスにより膨張を開始し、収納部122から後方側へ出て、乗員Pとステアリングコラム121との間において、乗員Pの両足の脛部PDから膝部PKにかけての領域で膨張展開する。
この別例の場合、図34に示すように、膝保護用エアバッグ装置120のエアバッグ123は、前後一対の布部123Aを、その周縁部に設けた周縁結合部124で袋状に結合することによって形成されている。エアバッグ123の膨張部125は、インフレータアセンブリ30が収容されるインフレータ収容部126と、膝部PKを保護する上流側膨張部127と、インフレータ収容部126内の膨張用ガスGを上流側膨張部127へ導く一対のガス通路部128と、上流側膨張部127の下流側に位置する下流側膨張部129とを備えている。インフレータ収容部126は、膨張部125の下部に形成され、上流側膨張部127は膨張部125の上部に形成されている。下流側膨張部129は、上流側膨張部127及びインフレータ収容部126間に形成されている。両ガス通路部128は、車幅方向(図34の左右方向)についての下流側膨張部129の両側に形成されている。インフレータ収容部126及び両ガス通路部128と、下流側膨張部129とは、それらの間に正面略U字状に設けられた仕切り部131によって仕切られている。仕切り部131は、上述した仕切り部95,103と同様、エアバッグ123の前後両布部123A間に布片を架設してなるテザーによって構成されてもよいし、前後両布部123Aを互いに接触させた状態で縫合(結合)してなるシームによって構成されてもよい。
上流側膨張部127及び下流側膨張部129間には区画部材50が設けられている。区画部材50は、膨張部125の膨張に伴い平面状に緊張させられたとき、長手方向(図34の左右方向)についての長さが、同長手方向に直交する短手方向についての長さよりも長い長尺状をなしている。
区画部材50は、折り線51に沿う方向である車幅方向に並べられた2つの部材56,57からなる。両部材56,57は、折り線51に略直交する方向へ延びる内結合部63によって結合されている。折り線51を跨ぐ部分では、両部材56,57を結合させる内結合部63が設けられていない。このように内結合部63が設けられていない部分である、結合を解除された箇所は、上流側膨張部127と下流側膨張部129とを連通させるスリット状の内開口部71を構成している。
なお、図34では、区画部材50は二つ折り状態にされ、折り線51を対向端部52,53よりも上流側(図34の上側)に位置させた状態で非膨張展開状態の膨張部125に配設されている。両対向端部52,53は、外結合部54,55によって対応する布部123Aに結合されている。区画部材50の折り線51に沿う方向(長手方向)の両端部(図34の左右両端部)は、上記仕切り部131の一部(上端部)によって両布部123Aに結合(共縫い)されている。
膝保護用エアバッグ装置120をこのような構成にすることにより、インフレータ31から噴出される膨張用ガスGは、両ガス通路部128を通って上流側膨張部127に供給される。この膨張用ガスGにより、上流側膨張部127が膨張を開始する。乗員拘束に伴い加わる外力によって上流側膨張部127が押圧されて変形して内圧が上昇して調圧弁70が開弁し、上流側膨張部127内の膨張用ガスGが下流側膨張部129に供給される。上流側膨張部127に遅れて下流側膨張部129が膨張する。その結果、乗員Pの下肢のうち、耐衝撃性の比較的高い膝部PKを、内圧が早く上昇する上流側膨張部127によって早期に拘束・保護し、耐衝撃性の比較的低い脛部PDを、上流側膨張部127よりも遅れて内圧が上昇する下流側膨張部129によってソフトに拘束・保護することができる。
・第5実施形態の別例として、図35に示すように、外結合部54のうち、周縁結合部45と点Dとを繋ぐ部分54Sの形状を、点B及び点Dを繋ぐ線分S3よりも点C側へ膨らむ円弧状をなすものに変更してもよい。
このようにしても、外結合部54の周縁結合部45との交差部54Cと、折り線51との間隔D1が、採り得る範囲の最小値に近づく。
そのため、折り線51の周縁結合部45との交差部51Cが外結合部54側へ引っ張られて移動する量、ひいては同交差部51Cに作用する引っ張り力が最小に近づき、同交差部51Cに対する応力集中を緩和する大きな効果が得られ、上述した(8)と同様の効果が得られる。
なお、図35は、エアバッグ40において、車幅方向の中央部分よりも車内側の部材についてのみ示しているが、車外側の部材についても同様である。
・外結合部54,55において、上側の組の点Dと下側の組の点Dとを繋ぐ部分54Mは、図35に示すように、それらの点Dから離れるほど折り線51から遠ざかるように膨らむ円弧状をなすものであってもよい。
・点A及び点Dを繋ぐ線分S2と、点B及び点Dを繋ぐ線分S3と、周縁結合部45とによって挟まれる領域Z1のうち、同線分S2よりも同線分S3側であることを条件に、外結合部54のうち、周縁結合部45及び点Dを繋ぐ部分54Sの位置が変更されてもよい。
・第5実施形態及び上記図35の別例において、区画部材50の周縁50Cは、必ずしも外結合部54,55に沿うものでなくてもよい。従って、区画部材50として、第1実施形態と同様のもの(周縁50Cが一直線状をなすもの)が用いられてもよい。
・全ての実施形態において、インフレータアセンブリ30をエアバッグ40の外部に設けてもよい。この場合には、インフレータ31と上流側膨張部47,88,91,93,97,99,101,106,108,111,112,127とを管によって繋ぎ、この管を介してインフレータ31からの膨張用ガスGを供給するようにしてもよい。
・全ての実施形態において、車両用シート12のシートバック14に代えて、ボディサイド部11に収納部18を設け、ここにエアバッグモジュールAMを配設してもよい。