本発明は、以下の態様(1)〜(4)の光電変換素子をいう。
<<光電変換素子>>
態様(1)の光電変換素子は、表面に凹凸が形成された半導体基板と、該半導体基板表面の凹凸上に形成された金属電極と、半導体基板表面と金属電極との界面の少なくとも一部に存在するガラス層と、該ガラス層中にあって半導体基板表面に接触して存在し、ガラス層の厚さtとの関係式m/t≧0.5(150nm≦t≦400nm)を満足する厚さ粒径mを有する金属粒子と、を有するものをいう。
態様(2)の光電変換素子は、表面に凹凸が形成された半導体基板と、該半導体基板表面の凹凸上に形成された金属電極と、半導体基板表面と金属電極との界面の少なくとも一部に存在するガラス層と、該ガラス層中にあって半導体基板表面に接触して存在し、ガラス層の厚さtとの関係式n/t≧1(150nm≦t≦400nm)を満足する長さ粒径nを有する金属粒子と、を有するものをいう。
態様(3)の光電変換素子は、表面に凹凸が形成された半導体基板と、半導体基板の凹凸上に形成された金属電極と、半導体基板表面と金属電極との界面の少なくとも一部に存在し、凹凸の高さoとの関係式o/t≧0.25(150nm≦t≦400nm)を満足する厚さtを有するガラス層と、該ガラス層中にあって半導体基板に接触して存在する金属粒子と、を有するものをいう。
態様(4)の光電変換素子は、表面に凹凸が形成された半導体基板と、半導体基板の凹凸上に形成された金属電極と、半導体基板表面と金属電極との界面の少なくとも一部に存在し、凹凸のピッチの長さpとの関係式p/t≧1.5(150nm≦t≦400nm)を満足する厚さtを有するガラス層と、該ガラス層中にあって半導体基板に接触して存在する金属粒子と、を有するものをいう。
<半導体基板>
本発明の態様(1)〜(4)の光電変換素子において、半導体基板は、その表面に凹凸が形成されており(図1参照)、凹凸の形成によって光反射率低減性能が得られる。ここで、半導体基板の表面とは、半導体の光入射面側および/または裏面を意味する。半導体基板としては、とくに前記性能が充分に得られることから、半導体の光入射面側に凹凸が形成されていることが好ましい。
本発明において、半導体基板の表面への凹凸の形成法としては、一般的に、NaOHなどのアルカリ液による異方性ウェットエッチング法などがあげられるが、通常のアルカリ液によるウェットエッチング法では、シリコン基板がキャスト法などによる多結晶シリコン基板である場合は、基板面内での結晶面方位が結晶粒ごとにランダムにばらつくので、基板全域にわたって光反射率を効果的に低減せしめる良好な凹凸構造を一様に形成することは困難な傾向がある。
そのため、半導体基板の表面への凹凸の形成としては特に、RIE(Reactive Ion Etching)法によるガスエッチングを行うことが好ましい。それにより、比較的容易に、ウェットエッチング法により得られた凹凸よりも約1桁程小さく、良好な凹凸構造を基板全域にわたって一様に形成し、凹凸のピッチの長さと凹凸の高さとを独立して制御することができる。さらに、シリコン基板がキャスト法などによる多結晶シリコン基板である場合に生じる基板面内での結晶面方位が結晶粒ごとのランダムなバラツキを抑え、基板全域にわたって光反射率を効果的に低減せしめる良好な凹凸が形成できる。
RIE法によるガスエッチング法を用いる場合、反応ガスとしては、例えば、塩素ガス(Cl2)、酸素ガス(O2)、及び六フッ化硫黄ガス(SF6)、三フッ化メタンガス(CHF3)、H2Oガスなどがあげられる。例えば、塩素ガス(Cl2)、酸素ガス(O2)、及び六フッ化硫黄ガス(SF6)を、1:5:5程度の体積割合となるようにエッチング室に導入すればよい。また、RIEによるガスエッチングにおける条件として、反応ガス圧力は7Pa程度、プラズマをかけるRFパワー密度は5kW/m2程度であればよい。
そして、ガス流量を制御することで、とくに、凹凸の高さ(凹凸高低差)を制御することができる。例えば、ガス流量を増大させることによって、凹凸の高さを大きくすることができる。なお、ガス流量はチャンバーサイズに依存するものである。
また、エッチング時間としては、1〜20分が好ましい。そうすることで、とくに、凹凸高さ(凹凸高低差)や凹凸ピッチなどを制御することができる。
また、その他に、ガス種、ガス濃度(混合比)、ガス圧力、プラズマパワー密度、プラズマ周波数、などのパラメーターを独立に制御することで、凹凸ピッチと凹凸高さとをある程度独立に制御できることも、本発明の低コンタクト抵抗構造実現の制御性を高める方向に供するので好適である。
RIE法によるガスエッチングは、上記した各パラメーターを総合的に考慮して、最適条件を探すことができる。また、エッチング時間のみをパラメーターにすると、前記からわかるように、凹凸ピッチと凹凸高さの両方を同時に制御できるので、ある程度の好ましい凹凸形状が得られた場合は、この条件を基準にして、エッチング時間のみをパラメーターにすることで本発明に適した凹凸形状に調整することができる。
本発明の光電変換素子において、凹凸の高さoは、70nm以上が好ましい。凹凸の高さが70nm未満では、凹凸上に形成される金属粒子の厚み粒径が小さくなる傾向がある。ここで、前記凹凸の高さoとは、半導体の基板主面に対して垂直方向における、隣接する凸部の頂点と凹部の底点との間の高低差のうち最大のものをいう。具体的に図2に示す。
また、凹凸のピッチの長さpは、500nm以上が好ましい。凹凸のピッチの長さpが500nm未満では、凹凸上に形成される金属粒子の長さ粒径が小さくなる傾向がある。ここで、前記凹凸ピッチの長さpとは、半導体の基板主面と平行な方向における、隣接する凸部の頂点間における長さのうち最大のものをいう。具体的には図2に示す。
<金属電極>
本発明の態様(1)〜(4)の光電変換素子において、金属電極は、前記半導体基板表面の凹凸上に形成される。
金属電極としては、銀電極、アルミニウム電極などがあげられるが、金属粒子を形成させやすく(例えば、焼成時に昇温したのち降温させて金属粒子を形成する場合、金属粒子を析出させやすい)また、電力ロスをできるだけ低減することが可能であることから、銀電極であることが好ましい。
金属電極の作製法としては、印刷焼成法、真空製膜法などがあげられる。真空成膜法としては、スパッタ法、蒸着法などがあげられる。なかでも、ファイヤースルー法によって、反射防止膜(図12における116)をパターニングすることなく、表面電極(図16における111)となる金属ペーストを反射防止膜(図16における116)上に直接印刷して焼成処理することで、表面電極(図16における111)と逆導電型領域(図16における114)との間の電気的コンタクトをとることができ、さらに、製造コスト低減を達成することができることから、印刷焼成法が好ましい。さらに、RIE法とともに使用することで、本発明において好適なガラス層を作成し、さらに、凹凸上に金属粒子を形成させる場合において、ガラス層の厚さおよび金属粒子の大きさが制御しやすく、コンタクト抵抗を精度よく低い値に制御できることから、印刷焼成法のなかでも、急速熱処理(Rapid Thermal Processing/RTP処理)による焼成が好ましい。
ここで、RTP処理とは、キセノンランプ、クリプトンランプ等の発光波長が紫外領域のランプや、ハロゲンランプ等の発光波長が近赤外領域(IR領域)にあるランプを用いることによる印刷焼成法をいう。
従来よりも昇温速度および降温速度が大きく、好適にガラス層や金属粒子の制御をおこなうことが可能である。この焼成法によれば、高速焼成が可能であるため、必要以上のガラス層厚の増大を効果的に抑制することができる。また、高速焼成においては、ガラス層が均一に形成されやすいため、比較的少ないガラス量であっても連続した状態でシリコン面全面を覆うように形成することができる。
印刷焼成法における焼成温度は、600〜800℃とすることが好ましい。焼成温度が600℃未満では、焼成不足による電極強度の低下や凹凸上に金属粒子が形成しにくい傾向があり、また、800℃をこえると、過熱のためpn接合領域が破壊される傾向がある。
印刷焼成法における昇温速度は30℃/秒以上が好ましい。昇温速度が30℃/秒未満では、凹凸上に金属粒子が形成しにくい傾向がある。
印刷焼成法における降温速度は30℃/秒以上が好ましい。降温速度が30℃/秒未満では、凹凸上に金属粒子が形成しにくい傾向がある。
なお、上記昇温速度および降温速度は、半導体基板に熱電対を取り付けて温度プロファイル(温度−時間)をとり、ピーク温度前後の温度プロファイルの傾きから算出される。
金属電極が印刷焼成法により作製される場合、電極と半導体領域との接着強度をとくに高めることが可能であることから、金属電極の作製に用いられる金属ペーストはTiO2などの酸化物成分を含むことが好ましい。
また、金属電極が真空製膜法により作製される場合も、電極と半導体領域との接着強度をとくに高めることが可能であることから、電極と半導体領域との界面において、Tiを主成分とする金属層を挿入することが好ましい。なお、裏側電極の場合は、該金属層の挿入による反射率の低減の抑制をするために、該金属層の厚さは5nm以下が好ましい。
本発明において、金属電極としては、具体的に、表面電極(図12における111)、裏面集電極(図12における118)、裏面出力電極(図12における119)などがあげられる。
表面電極111と裏面出力電極119とは、それらの作製において、同時に(1回で)焼成することがコスト的には望ましいが、特に裏面電極の電極強度特性の関係上、2回に分けて焼成した方が良い場合もある(例えば、先に表面電極111を印刷焼成し、次いで裏面出力電極119を印刷焼成する、など)。
また、表面電極111と裏面出力電極119とは、前記p+型領域117(BSF領域)形成時に同時に形成することがコスト的にはさらに望ましい。
表面電極は、図13に示すように、一般的には線幅の狭いフィンガー電極111b(枝電極)と、それらフィンガー電極の少なくとも一端が接続される線幅が太いバスバー電極111a(幹電極)とからなることが好ましい。なお、表面電極111の形成は、裏面側のp+型領域の形成に先立っておこなわれてもかまわない。
また、裏面集電極118と裏面出力電極119とが重なる領域は基板割れや電極剥離が生じやすいので、出力取出用の裏面出力電極119を形成した後、裏面集電極118は、裏面出力電極119をできるだけ覆わないように導通が取れる程度の状態で形成するのが望ましい。この裏面出力電極119と裏面集電極118を形成する順番はこの逆でも良い。また、裏側電極においては前記構造をとらず、表面電極111と同様の銀を主成分とするバスバー部とフィンガー部で構成された構造としても良い。
裏面集電極118としては、銀電極、アルミニウム電極などであってもよいが、とくにアルミニウム電極とすることが好ましい。
裏面集電極は、裏面に到達した長波長の反射率を高めることが可能であるため、基板の裏面全面に形成されることが好ましい。
裏面出力電極119は、裏面集電極118から電流を集めるために設けられることが好ましい。裏面集電極としては、銀電極、アルミニウム電極などであってもよいが、とくに、銀電極とすることが好ましい。
<ガラス層>
本発明の態様(1)〜(4)における光電変換素子において、半導体基板表面と金属電極との界面の少なくとも一部には、ガラス層が存在する(図1参照)。ガラス層とは、半導体基板表面と金属電極との界面において、一様に層を形成していることをいうが、界面において一部だけ存在していてもかまわない。
前記ガラス層は、金属電極の作製に使用される金属ペースト中のガラス成分(ガラスフリット)などから構成され、金属電極の焼成において半導体基板表面と金属電極との界面に形成される。また、その他に、ガラス層には、反射防止膜がガラス成分と反応した結果得られた生成物も含まれる。
表面電極111などの金属電極形成にあたって、主に表面電極と半導体基板との界面に形成されるガラスフリット起源のガラス層の厚さを制御することが、本発明の低コンタクト抵抗構造を得るためには重要である。すなわち、ガラス層の厚さを必要以上に厚くするとコンタクト抵抗が急激に上昇してしまい特性低下を招く。一方で、ガラス層の形成が不充分でガラス層が連続した状態でシリコン面全面を覆うように形成されない場合などは、電極強度の低下をもたらし信頼性の低下を招く。
金属ペーストは、金属粉末、ガラスフリット、有機ビヒクル、酸化物から構成されることが好ましい。また、金属ペースト中のガラスフリットの組成の元素としては、Si、O、Pbなどの元素があげられる。
前記金属ペーストにおけるガラスフリットの含有量は、金属ペースト中の金属粉末100重量部に対して、0.1〜5重量部が好ましい。ガラスフリットの含有量が0.1重量部未満では、電極強度の低下をもたらし信頼性の低下を招く傾向がある。また、ガラスフリットの含有量が5重量部をこえると、コンタクト抵抗が大きくなり特性の低下を招く傾向がある。
金属ペーストにおいて、有機ビヒクルの含有量は、金属粉末100重量部に対して、10〜30重量部が好ましい。
本発明の光電変換素子において、ガラス層の厚さtは、とくに低いコンタクト抵抗を得ることが可能であることから、150〜400nmが好ましい。ガラス層の厚さtが150nm未満では、ガラス層形成が不十分であり、ガラス層が連続した状態で半導体前面を覆うように形成されないため、電極強度の低下をもたらす傾向がある。また、ガラス層の厚さtが400nmをこえると、コンタクト抵抗が急激に上昇してしまい、特性低下をまねく傾向がある。ここで、ガラス層の厚さtとは、半導体の基板主面に対して垂直方向におけるガラス層の長さのうち最大のものをいう。具体的には図2に示す。
ガラス層の厚さの制御は、前記凹凸構造との関係で決まるが、前記したように必要以上にガラス層の厚さを増大させないことが第一に重要であり、とくに、前記したRTP処理による焼成により、比較的容易に実現できる。この焼成法によれば、高速焼成が可能であるため、必要以上のガラス層厚の増大を効果的に抑制することができる。また、高速焼成においては、ガラス層が均一に形成されやすいため、比較的少ないガラス量であっても連続した状態でシリコン面全面を覆うように形成することができる。
ガラス層が微結晶質層から構成されることが好ましい。そうすることにより、コンタクト抵抗の上昇による光電変換素子の特性低下を抑制することができる。
ガラス層の非晶質化を防止して微結晶質とするために、例えば、結晶化を促進するPbO−ZnO−B2O3系のガラス成分や、PbO−TiO2系のガラス成分、あるいは、金属(金、銀、銅、など)、酸化物(ジルコニアZrO2、チタニアTiO2、アルミナAl2O3、酸化リチウムLi2O、リン酸P2O5、など)、フッ化物などを添加物として、適量金属ペースト中に加えたり、焼成プロセスにおける降温速度(冷却速度)を低めたりすればよい。場合によっては追加アニールを加えることによって結晶化を促進することもできる。
微結晶質層は、半導体基板に接触して配置され、微結晶質層上に非晶質層が配置されていることが好ましい。そうすることにより、優れたコンタクト抵抗の低減効果が得られる傾向がある。
また、ガラス層は、微結晶質層とともに非晶質層を含むことができ、さらにその場合、微結晶質層を半導体側に、および非晶質層が金属電極層に配されることが好ましい。
また、微結晶質層の割合が大きいほど、コンタクト抵抗の低減効果が得られる傾向があるため、ガラス層は微結晶質層のみからなることが好ましい。
<金属粒子>
本発明の態様(1)〜(4)の光電変換素子において、金属粒子は、ガラス層中であって前記半導体基板表面に接触して形成される。ここで、金属粒子が半導体基板表面に接触しているとは、金属粒子と該基板表面との間にガラス層などを介さずに、物理的に接触していることをいう。この金属粒子は、RTP処理による焼成工程において、金属電極の作製に使用される金属ペースト中の金属成分が、昇温過程においてガラスフリットなどに溶解し、その後、降温過程において析出して得られたものであると考えられる。
金属粒子は、前記のようなRTP処理による焼成において、さらに、半導体基板表面の凹凸の影響を大きく受けており、それにより形状や大きさが左右されるものと考えられる。
本発明の光電変換素子において、前記金属粒子の厚さ粒径mは、150nm以上が好ましい。前記金属粒子の厚さ粒径mが150nm未満では、コンタクト抵抗が高くなる傾向がある。ここで金属粒子の厚さ粒径mとは、半導体の基板主面に対して垂直方向における金属粒子の長さのうち最大のものをいう。具体的には図2に示す。
本発明の光電変換素子において、前記金属粒子の長さ粒径nは、480nm以上が好ましい。前記金属粒子の長さ粒径nが480nm未満では、コンタクト抵抗が高くなる傾向がある。ここで金属粒子の長さ粒径nとは、半導体の基板主面と平行な方向における金属粒子の長さのうち最大のものをいう。具体的には図2に示す。
態様(1)の光電変換素子において、ガラス層の厚さtと金属粒子の厚さ粒径mとは、関係式m/t≧0.5を満足する。関係式がm/t<0.5では、コンタクト抵抗値が急激に上昇する。なお、m/tは、0.6以上が好ましく、0.7以上がより好ましい。
態様(2)の光電変換素子において、ガラス層の厚さtと金属粒子の長さ粒径nとは、関係式n/t≧1を満足する。関係式がn/t<1では、コンタクト抵抗値が急激に上昇する。なお、n/tは2以上が好ましい。
態様(3)の光電変換素子において、ガラス層の厚さtと凹凸の高さoとは、関係式o/t≧0.25を満足する。関係式がo/t<0.25では、コンタクト抵抗値が急激に上昇する。なお、o/tは0.5以上が、好ましい。
態様(4)の光電変換素子において、ガラス層の厚さtと凹凸のピッチの長さpとは、関係式p/t≧1.5を満足する。関係式がp/t<1.5では、コンタクト抵抗値が急激に上昇する。なお、p/tは2以上が、好ましい。
本発明の態様(1)〜(4)における光電変換素子は、好ましくは0.05Ω・cm2以下、さらに好ましくは0.03Ω・cm2以下のコンタクト抵抗にまで抑制することができる。
このように、金属粒子や半導体基板の凹凸が、ガラス層に対して大きいほど、金属電極と半導体との導通確率が増大して、コンタクト抵抗が低減されるものと考える。この場合、具体的な導通経路としては、[金属電極−金属粒子−半導体]、あるいは、[金属電極−ガラス層−金属粒子−半導体]がありうると考えられる。後者においては、ガラス層が薄いほど低抵抗となると考えられるが、非常に薄いガラス層であればトンネル現象の発現によって非常に効果的に低抵抗化が実現されている可能性がある。
<<光電変換素子及び光電変換モジュールの作製工程>>
以下に本発明の光電変換素子及び光電変換モジュールの作製工程について順次説明する。
本発明における半導体基板とは、p型(あるいはn型)バルク領域、逆導電型領域およびp+型(あるいはn+型)領域からなる領域をいう。なお、以下はp型シリコン基板を用いた光電変換装置について記載するが(図12における113参照)、n型シリコン基板を用いた場合にも、説明中の極性を逆にすれば、同様の工程によって適用することができる。
p型シリコン基板としては、多結晶シリコン基板、単結晶シリコン基板などがあげられる。
p型多結晶シリコン基板は、鋳造法により得られたシリコンインゴットをスライス工程において板状に切り出すことで得られる。ここで、鋳造法としては、キャスト法、鋳型内溶解・凝固法などの既知のものがあげられる。p型ドーピング元素としては、B(ボロン)やGa(ガリウム)を用い、1×1016〜1×1017atom/cm3の範囲内でドープする。具体的には、BやGaが所定の値で高濃度に含まれた結晶Si塊を適量、鋳造工程中のシリコン融液中に投入すればよい。また、スライス工程においては、基板厚を300μm以下とすることが好ましく、250μm以下とすることがより好ましく、150μm以下とすることがさらに好ましい。
また、単結晶シリコン基板を用いる場合は、CZ法やFZ法等の既知の手法で形成されたシリコンインゴットを同じくスライスすることで所望の基板を得ることができ、同様のセル化プロセスで素子化することができる。
なお、リボン法などの引き上げ法で得られた板状シリコンを用いる場合は、この板状シリコンを所定の大きさにカットし、必要に応じて表面研磨処理等を施すことで所望の基板を得ることができる。
なおまた、所定の基板上に形成された微結晶シリコン膜に代表される結晶質シリコン薄膜を用いる場合にも、本発明を適用することができる
すなわち、所定の基板上に形成された微結晶シリコン膜に代表される結晶質シリコン膜を用いる場合は、熱CVD法、プラズマCVD法、Cat-CVD法、Cat-PECVD法、等の製膜技術を用いて異種基板上に結晶質シリコン膜を形成することができる。ここで所定の基板とは、シリコン基板、金属基板、ガラス基板などを主体とするもので、これに所定の加工が施されている場合を含む。この場合の所定の加工とは、シリコン基板の場合は、エッチング、熱拡散、成膜、電極形成、などといった加工を含み、金属基板の場合は、エッチング、成膜、電極形成、などといった加工を含み、ガラス基板の場合は、エッチング、成膜、電極形成、などといった加工を含む。
次に、基板のスライスにともなう基板表層部の機械的ダメージ層や汚染層を除去するために、この基板の表面側及び裏面側の表層部をNaOHやKOH、あるいはフッ酸と硝酸の混合液などでそれぞれ10〜20μm程度エッチングし、その後、純水などで洗浄することが好ましい。
次に前述した凹凸形成方法を用いて、光入射面となる基板表面側に、光反射率低減機能を有する凹凸(粗面)構造を形成する。
逆導電型領域としては、p型バルク領域の光入射面側に設置されており、P(リン)原子などが高濃度に拡散されてn型となることで、p型バルク領域との間にpn接合部を形成するものである。ここで、pn接合部は、p型バルク領域115側に広がった空乏領域と逆導電型領域114側に広がった空乏領域から構成される。
逆導電型領域の形成におけるn型化ドーピング元素としては、とくにP(リン)を用いることが好ましい。
ドーピング濃度は1×1018〜5×1021atom/cm3が好ましい。
また、シート抵抗は30〜300Ω/□が好ましく、45〜120Ω/□がより好ましく、65〜100Ω/□がさらに好ましい。
逆導電型領域は、ガス状態にしたPOCl3(オキシ塩化リン)を拡散源とした熱拡散法を用いて、温度700〜1000℃程度でp型バルク領域の表層部にドーピング元素(P)を拡散させることによって形成されることが好ましい。このとき、拡散層厚は0.2〜0.5μm程度とするが、これは拡散温度と拡散時間を調節することで、所望のドーププロファイルを形成することで実現できる。
なお、上述の通常のガス拡散源を用いた熱拡散法では、目的とする面とは反対側の面にも拡散領域が形成されるが、その部分は後からエッチングして除去すればよい。このとき、この基板の表面側以外の逆導電型領域114の除去は、シリコン基板の表面側にレジスト膜を塗布し、フッ酸と硝酸の混合液を用いてエッチング除去した後、レジスト膜を除去することにより行う。また、後述するように、裏面のp+型領域117(BSF領域)をアルミニウムペーストによって形成する場合は、p型ドープ剤であるアルミニウムを充分な濃度で充分な深さまで拡散させることができるので、既に拡散してあった浅いn型拡散層の影響は無視できるようにすることができ、この裏面側に形成されたn型拡散層を特に除去する必要はない。
また、逆導電型領域114の形成方法は上記した熱拡散法に限定されるものではなく、例えば、薄膜技術及び条件を用いて、水素化アモルファスシリコン膜や、微結晶シリコン膜を含む結晶質シリコン膜などを基板温度400℃程度以下で形成してもよい。
薄膜技術を用いて形成する場合は、以下に述べる各工程の温度を考慮して後段工程ほど低い工程温度となるようにその形成順序を決めることが必要である。
逆導電型領域が、水素化アモルファスシリコン膜を用いることにより形成される場合、水素化アモルファスシリコン膜の厚さは、50nm以下が好ましく、20nm以下がより好ましい。
また、逆導電型領域が、結晶質シリコン膜を用いることにより形成される場合、結晶質シリコン膜の厚さは、500nm以下が好ましく、200nm以下がより好ましい。
逆導電型領域114を前記薄膜技術で形成するときは、p型バルク領域115と逆導電型領域114との間にi型シリコン領域(不図示)を厚さ20nm以下で形成すると特性向上に有効である。
p+型領域は、光入射面の反対側に設けられており、アルミニウムなどのp型ドーピング元素を多量に含んでいることが好ましい。このp+型領域(図12における117)はBSF(Back Surface Field)領域とも呼ばれ、光生成電子キャリアが裏面集電極(図12における118)に到達して再結合損失する割合を低減する役割を果たすものであり、光電流密度Jscを向上させることができる。また、このp+型領域では、少数キャリア(電子)密度が低減されるので、このp+型領域117及び裏面集電極118に接する領域でのダイオード電流量(暗電流量)が低減され、開放電圧Vocを向上させることができる。
p+型領域の作製には、金属ペーストが好適に使用される。
金属ペーストは、アルミニウム粉末、有機ビヒクル、望ましくはガラスフリットから構成されることが好ましい。
金属ペーストにおいて、ガラスフリットの含有量は、アルミニウム粉末100重量部に対して、0.1〜5重量部が好ましい。
金属ペーストにおいて、有機ビヒクルの含有量は、アルミニウム粉末100重量部に対して、10〜30重量部が好ましい。
金属ペーストの印刷工程においては、スクリーン印刷法などが挙げられる。
前記金属ペーストの焼成温度は、600〜850℃とすることが好ましく、それによって、金属(Al)がシリコン基板中に拡散し、裏面で発生したキャリアが再結合することを防ぐp+型領域(BSF領域)を形成することができる。
p+型領域117の金属ドープ濃度は、1×1018atom/cm3〜1×1019atom/cm3程度とする。これによってp型バルク領域115とこのp+型領域117との間にLow−High接合を形成することができる。
このとき、このペースト中の金属成分のうち、p+型領域117の形成に使われずこのp+型領域117の上に残存したものは、そのまま裏面集電極118の一部として使うこともでき、この場合は残存成分を塩酸などで特に除去する必要はない。なお、本明細書では、このp+型領域117の上に残存したアルミニウムを主成分とする裏面集電極118が存在するものとして扱うが、除去した場合は代替電極材料を形成すれば良い。この代替電極材料としては、後述する裏面出力電極119となる銀ペーストや銀系の薄膜を使うことが、裏面に到達した長波長光の反射率を高めるために望ましい。なお、p型化ドーピング元素としてはB(ボロン)を用いることもできる。
また、印刷焼成法を用いてこのp+型領域117を形成する場合は、既に述べたように、基板表面側の逆導電型領域114形成時に同時に基板裏面側にも形成されているn型の領域を除去する必要もなくすことができる。
さらに、このp+型領域117(裏面側)は、印刷焼成法に代えて、ガスを用いた熱拡散法で形成することも可能である。この場合は、BBr3を拡散源として温度800〜1100℃程度で形成する。このとき、既に形成してある逆導電型領域114(表面側)には酸化膜などの拡散バリアをあらかじめ形成しておく。また、この工程によって反射防止膜116にダメージが生じる場合は、この工程を反射防止膜116形成工程の前に行うことができる。またドーピング元素濃度は、1×1018atom/cm3〜5×1021atom/cm3程度とする。これによってp型バルク領域115とこのp+型領域117との間にLow−High接合を形成することができる。
なお、p+型領域117の形成方法は、印刷焼成法やガスを用いた熱拡散法に限定されるものではなく、例えば、薄膜技術を用いて水素化アモルファスシリコン膜や微結晶シリコン相を含む結晶質シリコン膜などを基板温度400℃程度以下で形成しても良い。特にpn接合部を、薄膜技術を用いて形成した場合は、p+型領域117の形成も薄膜技術を用いて行うことが望ましい。このとき膜厚は10〜200nm程度とする。このとき、p+型領域117とp型バルク領域115との間にi型シリコン領域(不図示)を厚さ20nm以下で形成すると特性向上に有効である。ただし、薄膜技術を用いて形成する場合は、以下に述べる各プロセスの温度を考慮して後段プロセスほど低いプロセス温度となるようにその形成順序を決めることが望ましい。
なお、逆導電型領域114やp+型領域117を、薄膜技術を用いて形成した場合も、表面電極111、裏面集電極118及び裏面出力電極119は、印刷法、スパッタ法、蒸着法、などを用いて形成することができるが、プロセス温度は薄膜層のダメージを考慮して400℃以下にする。
本発明の光電変換素子は、さらに、光入射面側の半導体上に反射防止膜を有することが好ましい。
反射防止膜116の材料としては、SiNx膜(Si3N4ストイキオメトリを中心にして組成比(x)には幅がある)、TiO2膜、SiO2膜、MgO膜、ITO膜、SnO2膜、ZnO膜などを用いることができる。その厚さは、材料によって適宜選択されて、適当な入射光に対して無反射条件を実現できるようにする。ここで、反射防止膜材料の屈折率をnとし、無反射にしたい光の波長をλとすれば、(λ/n)/4=dが反射防止膜116の最適膜厚となる。例えば、一般的に用いられるSiNx膜(n=約2)の場合は、無反射としたい波長を太陽光スペクトル特性を考慮して600nmとするならば、膜厚を75nm程度とすれば良い。
反射防止膜116の製法としては、PECVD法、蒸着法、スパッタ法などを用い、pn接合部を薄膜技術で形成した場合は温度400℃以下でこれを形成する。なお反射防止膜116は、ファイヤースルー法で表面電極111を形成しない場合は、表面電極111を形成するために所定のパターンでパターニングしておく。パターニング法としてはレジストなどマスクに用いたエッチング法(ウェットあるいはドライ)や、反射防止膜116形成時にマスクを予め形成しておき、反射防止膜116形成後にこれを除去する方法を用いることができる。一方、反射防止膜116の上に表面電極111の電極材料を直接塗布し焼き付けることによって表面電極111と逆導電型領域114を電気的に接触させるいわゆるファイヤースルー法を用いる場合は前記パターニングの必要はない。このSiNx膜には、形成の際には表面パッシベーション効果、その後の熱処理の際にはバルクパッシベーション効果があり、反射防止の機能と併せて、太陽電池素子の電気特性を向上させる効果がある。
本発明の光電変換素子は、必要に応じて半田ディップ処理により表面電極111及び裏側電極上に半田領域を形成することができる。なお、半田材料を用いない半田レス電極とする場合は半田ディップ処理を省略する。
次に、図12を用いて、光電変換素子による電流の発生について以下に説明する。
光電変換素子11の光入射面側である反射防止膜116の側から光が入射すると、半導体領域113において、吸収・光電変換されて電子−正孔対(光生成キャリア)が生成される。この光励起起源の電子キャリアおよび正孔キャリア(光生成キャリア)によって、太陽電池素子11の表側に設けられた略線状の表面電極111と、裏側に設けられた裏側電極118、119との間に光起電力が生じ、発生した光生成キャリアはこれらの電極で集められて、出力端子にまで導かれる。また、光起電力に応じて光電流とは反対方向にダイオード電流(≒暗電流)が流れる。なお、半導体領域113は、逆導電型領域114、p型バルク領域115およびp+型領域117から構成される。
本発明の光電変換モジュールは、光電変換素子から構成されることが好ましい。
光電変換モジュールは、複数の光電変換素子を直列または並列に接続して、発生する電気出力を向上させ、実用的な電気出力を取り出せるものをいう。光電変換モジュールは、光電変換素子1枚では得られなかった十分な電気出力を得ることが可能となる。
図15および29にて光電変換モジュールを示す。なお、図15は、一般的な太陽電池モジュールの構造を示す断面図であり、図16は、図15の太陽電池モジュールを光入射面側から見た上視図である。
光電変換モジュールは、図15に示されるように、透明部材142の上に、透明のエチレンビニルアセテート共重合体(EVA)などからなる表側充填材144、配線部材141によって隣接太陽電池素子の表面電極と裏面電極とを交互に接続された複数の光電変換素子11、EVAなどからなる裏側充填材145、および、ポリエチレンテレフタレート(PET)や金属箔をポリフッ化ビニル樹脂(PVF)で挟み込んだ裏面保護材143を順次積層し、さらに、ラミネータ中にて脱気、加熱して押圧することによって一体化することにより作製されることが好ましい。
配線部材141は、通常、厚さが0.1〜0.2mm、幅が約2mmの銅箔の全面を半田材料によって被覆したのち、所定の長さに切断することにより得られることが好ましい。
光電変換モジュールとしては、複数の光電変換素子を、直列または並列に電気接続したものがあげられる。
光電変換モジュールは、複数の光電変換素子が直列接続されている場合、複数の素子の最初の素子と最後の素子の電極の一端を、出力取出部である端子ボックス147に、出力取出配線146によって接続していることが好ましい。
光電変換モジュールは、図16に示すように、必要に応じてアルミニウムなどの枠148を周囲にはめ込むことが好ましい。
上述の説明では、シングル接合の場合について説明したが、半導体多層膜からなる薄膜接合層をバルク基板使用接合素子に積層して形成した多接合型であっても、本発明を適用することができる。
また、上述の説明では、バルク型シリコン太陽電池を例にとったが、発明の原理・目的を逸脱しない限り任意の形態とすることができる。すなわち、光入射面を有する結晶シリコンを構成要素にもつpn接合部を備えた光電変換素子であって、前記光入射面への光照射によって前記半導体領域で生じた光生成キャリアを電流として集める太陽電池以外の光センサーなどの光電変換素子一般に適用できる。
また、ガラス層中に前記半導体基板表面に接触せずに存在する金属粒子を含んでいても構わない。このように、ガラス層内に金属粒子を含むことで、導通経路として[金属電極−ガラス層−金属粒子−ガラス層−金属粒子−半導体]となるため、効果的に低抵抗化が実現されている可能性がある。
実施例にもとづいて本発明を詳細に説明するが、本発明は実施例に限定されるものではない。
以下に示す作製法により、素子を作製した。
多結晶シリコン基板は、キャスト法によって鋳造された多結晶シリコンインゴットをスライスすることで得られた基板を用いた。このとき、ドーパントはB(ボロン)とし、比抵抗値は約2Ωcmとした。基板厚は250μmとした。
次に素子化にあたっては、前記した最適の実施形態で説明した内容に沿って素子作製を行ったが、本発明に関わる多結晶シリコン基板の表面凹凸形成、及び表電極形成においては、以下のような条件で実施した。
まず、表面凹凸形成は、RIE法を用いて行い、予め条件出しした適当なエッチング条件を基準にして、主にエッチング時間とガス流量をパラメーターにし、表1及び表2に示す各実験条件に対応する凹凸形状を形成した。RIE条件としては、塩素ガス(Cl2)、酸素ガス(O2)、及び六フッ化硫黄ガス(SF6)を、体積割合として1:5:5程度の混合割合となるようにエッチング室に導入し、反応ガス圧力を7Pa程度、プラズマをかけるRFパワー密度を5kW/m2程度として、5分間程度エッチング処理を行った。
また、表面凹凸形成後、POCl3を拡散源とした熱拡散法により逆導電型領域114を形成した。
次に、表面電極形成は、Agペーストを印刷・焼成する方法で形成した。このとき、Agペーストは全実験条件で同一の材料を用い、印刷条件も同一とした(Agペースト中において、Ag100重量部に対するガラスフリットの含有量2重量部、Ag100重量部に対する有機ビヒクルの含有量20重量部)。RTP処理は、IR(近赤外)ランプを用いたIR焼成炉を用いて行い、焼成条件については、焼成によって電極/Si界面に形成されるガラス層厚が極端に厚くなったり、不足したりしない条件を、前記RIE法での基準エッチング条件で得られた基板を素子化に用いた場合について予め求めておき(FF特性が良好となる焼成条件を予め求めておき)、これを基準条件として全実験条件に適用した。実験条件は、昇温速度は35℃/秒および降温速度は37℃/秒、焼成ピーク温度750℃とした。
また、表面電極形成に先だっての反射防止膜116形成においては、PECVD法を用い、膜厚約75nm前後狙いのSiNx膜を形成した。さらに、図14に示されるように、裏電極(裏面集電極118、裏面出力電極119)形成には、それぞれAlペーストおよびAgペーストを印刷・焼成する方法で形成した。また、Alペーストを印刷・焼成することにより、p+型領域117を形成した。
次に、以上で得られた素子について、素子特性の測定と、表Ag電極とシリコン界面のコンタクト抵抗の測定を行った。
素子特性は、ソーラーシミュレーターを用いたAM1.5条件下でV−I特性測定を行い、これから、短絡電流密度Jsc、開放電圧Voc、曲線因子FFの諸特性を求めた。
コンタクト抵抗の測定にあたっては、素子をフィンガー電極方向と垂直方向にカットすることで幅約10mm程度の短冊状の測定サンプルを作製し、以下の(1)〜(6)の手順により行った。
(1) 短冊状サンプル上の複数のフィンガー電極に関して、コンタクト抵抗を評価したいフィンガー電極をひとつ選択する。
(2) 選択したフィンガー電極と、これに隣接するフィンガー電極(第1隣接フィンガー電極)間の抵抗を測定する。
(3) 選択したフィンガー電極と、前記第1隣接フィンガー電極と隣接するフィンガー電極のうち既述のフィンガー電極ではないフィンガー電極(第2隣接フィンガー電極)間の抵抗を測定する。
(4) 上記測定を、第n隣接フィンガー電極まで繰り返す。
(5) 上記で得られたフィンガー電極間抵抗値とフィンガー電極間距離について、フィンガー電極間抵抗値Rms×短冊状サンプル幅W(W:短冊状サンプル上のフィンガー電極の長さ)をY軸に、フィンガー電極間距離LをX軸にしてプロットし、そのプロット点列の近似直線のY切片を求めた。このY切片がm×ρc/Dcを与える。ここでmは定数、ρcはコンタクト抵抗、Dcはコンタクト面の幅で通常フィンガー電極の線幅Wfで置き換えることができる。このとき定数mは、Ag電極/Si間がオーミック接触である場合は2、整流性接触(ショットキー接触)である場合には1とする。経験的にはm=1とした場合に各種実験結果と整合する傾向にあり、本発明の説明においてもm=1として以下述べる。
(6) コンタクト抵抗ρc(単位は[Ωcm2])は、ρc=Y切片×Dc によって求められる。
以上の(1)〜(6)の要領で、コンタクト抵抗測定はセル面内の任意の位置において可能となる。実際には、素子面内にほぼ均等に分散させた20点(4行×5列)の測定点範囲で行い、その平均値を改めてその素子のコンタクト抵抗評価値ρcとした(以後、特に断らない限り、ρcと表記するときは、この素子のコンタクト抵抗評価値とする)。
コンタクト抵抗ρc[Ωcm2]は、素子にした場合、r_cnt=(ρc/Dc)×(Dp−Wf) の面直列抵抗[Ωcm2]成分として素子特性に影響する(以後、r_cntをコンタクト抵抗起源の素子換算面直列抵抗と言う)。ここで、Dc:コンタクト幅(前記)、Dp:フィンガー電極ピッチ、Wf:フィンガー電極幅 であり、前記したように通常、Dc≒Wf とみなしてよい。なお、素子面積がSの場合、この素子の該コンタクト抵抗に起因した直列抵抗成分は r_cnt/ S [Ω] と書かれる。
ここで、前記コンタクト抵抗起源の素子換算面直列抵抗とそれ以外の全成分とを合わせた素子トータルとしての素子面直列抵抗(以後単に素子面直列抵抗と言う)をrs[Ωcm2]とすると、素子面積がSの場合の素子の直列抵抗をRsとしたとき、Rs=rs/ S [Ω]と書くことができる。Rsは、素子のV-I特性(明特性及び暗特性、あるいは単に暗特性)から公知の方法で算出することができるのでrsを求めることができる。
以上のようにしてもとめた実験条件1〜10の素子におけるコンタクト抵抗ρc、コンタクト抵抗起源の素子換算面直列抵抗r_cnt、素子面直列抵抗rs、及び素子特性との関係を表1に示す。
ここで、図7にはρcとFF特性との関係を、図8にはrsとFF特性の関係を、図9にはρcとrsとの関係を示す。なお、測定手法上、rsが素子全体の平均的値を示すのに対して、前記ρcやr_cntは素子面内の一部領域の測定値の平均値で代表させるとなるため、両者間の厳密な定量的関係付けは一般には困難であることが多い。しかしながら、図7〜図9に示すごとく、両者間には比例関係が認められ、コンタクト抵抗と特性との関係を以下議論する上での実際的な支障は特にない。
図7、8および9ではどの場合も、直線状の逆比例関係または比例関係が確認されている。これにより、表面電極部のコンタクト抵抗が直列抵抗成分の主成分のひとつとして素子特性に影響していることが明らかである。
次に、前記コンタクト抵抗評価値に最も近い値を有するコンタクト抵抗測定箇所について、表面電極/シリコン界面の断面TEM観察による構造解析を行った。構造解析においては、TEM写真から、ガラス層の厚さt、銀粒子の厚さ粒径m、銀粒子の長さ粒径n、凹凸の高さo、および凹凸のピッチの長さpに注目し、その値を読み取った。解析用のTEM写真としては、最大写真長が約5μmとなるような倍率で撮影したものを用いた。図10に、実験条件9、7および4、ならびに図11−1〜図11−4において、それぞれ実験条件1、5、8および10のTEM写真を示す。また、表2に、断面TEM観察結果と前記コンタクト抵抗評価結果とをまとめて示す。
なお、ガラス層の厚さとは、半導体の基板主面に対して垂直方向におけるガラス層の長さのうち最大値、金属粒子の厚さ粒径とは、半導体の基板主面に対して垂直方向における金属粒子の長さのうち最大値、金属粒子の長さ粒径とは、半導体の基板主面と平行な方向における金属粒子の長さのうち最大値、凹凸の高さとは、半導体の基板主面に対して垂直方向における、隣接する凸部の頂点と凹部の底点との間の高低差のうち最大値、凹凸のピッチの長さとは、半導体の基板主面と平行な方向における、隣接する凸部の頂点間における長さのうち最大値をいう。
図3としてコンタクト抵抗評価値と銀粒子の厚さ粒径m/ガラス層の厚さt(m/t)との関係をプロットした図を示す。非常に明瞭な反比例の関係が明らかである。また、m/tが約0.5よりも小さくなると、急激にコンタクト抵抗値が上昇することもわかる。すなわち、充分に小さいコンタクト抵抗を実現するにはm/tを0.5以上にする必要があり、好ましくは0.6以上、より好ましくは0.7以上とするのが望ましいことがわかる。
また、図5に、コンタクト抵抗評価値と、銀の長さ粒径/ガラス層の厚さ(n/t)との関係を示す。コンタクト抵抗評価値と、銀の長さ粒径/ガラス層の厚さ(n/t)とが反比例の関係をとっていることが明らかである。また、n/tが約1.0よりも小さくなると、急激にコンタクト抵抗値が上昇することもわかる。すなわち、充分に小さいコンタクト抵抗を実現するにはn/tを1.0以上にする必要があり、好ましくは2.0以上とするのが望ましいことがわかる。
図4はコンタクト抵抗評価値と、凹凸の高さ/ガラス層の厚さ(o/t)の関係を示した図である。ここでも、明瞭な反比例の関係が明らかである。また、o/tが約0.25よりも小さくなると急激にコンタクト抵抗値が上昇することもわかる。すなわち、充分に小さいコンタクト抵抗を実現するにはo/tを0.25以上にする必要があり、好ましくは0.5以上とするのが望ましいことがわかる。
さらに、図6には、コンタクト抵抗評価値と、凹凸のピッチの長さ/ガラス層の厚さ(p/t)との関係を示す。コンタクト抵抗と、凹凸のピッチの長さとガラス層の厚さとの比との間にも反比例関係があることが明らかである。また、p/tが約1.5よりも小さくなると急激にコンタクト抵抗値が上昇することもわかる。すなわち、充分に小さいコンタクト抵抗を実現するには、p/tを1.5以上にする必要があり、好ましくは2.0以上とするのが望ましいことがわかる。
以上、ガラス層の厚さと、RIEにより得られた凹凸の構造とを制御することで、充分に低いコンタクト抵抗を実現することが可能であり、高特性の光電変換素子及び光電変換モジュールを実現できることが示された。