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JP5589379B2 - ディスプレイカバーガラス用ガラス基板の製造方法 - Google Patents

ディスプレイカバーガラス用ガラス基板の製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、ディスプレイ装置、典型的には携帯電話、携帯情報端末(PDA)、タッチパネルなどの入力機能を兼ね備えた表示装置等のカバーガラスに有用なガラス基板の製造方法に関するものである。
近年、携帯電話、PDA等のモバイル機器やタッチパネルなどの入力機能を兼ね備えた表示装置等に対して、ディスプレイの保護ならびに美観を高めるためのカバーガラス(保護ガラス)が用いられることが多くなっている。
このようなディスプレイカバーガラス用ガラス基板は、薄型で高い強度を備えていることが要求されており、化学強化法によって強度を高めたガラス基板が通常用いられている。
他方、このようなモバイル機器やタッチパネル付表示装置には、衛生性への配慮が求められている。
不特定多数の人に利用される駅の券売機や銀行のATM、医療施設内で用いられる機器等のタッチパネル付表示装置は、それら使用環境ゆえ様々な菌が付着する可能性が高い。また、モバイル機器についても、使用者は限られるものの使用頻度が非常に多く同様の問題を有している。
そのため、これら機器・装置において、特に人が触れる機会の多いディスプレイカバーガラス用ガラス基板に抗菌性を付与することが望まれている。
これに対し、抗菌性に優れ、強度的にも優れたガラスが特開平11−228186号公報(特許文献1)に開示されている。これによれば、硝酸銀と硝酸カリウムとの溶融塩を用いてナトリウムを含むガラスを処理することで、ガラスに含まれるナトリウムイオンをカリウムイオン及び銀イオンの双方で置換することでガラスに抗菌性と高い強度(曲げ強度)を付与できるとされている。また、透明性にも優れたガラスを提供するため、ガラスのナトリウムイオンが置換されるMを提供できる化合物と抗菌性物質との割合(重量比)を特定範囲とすることが好ましいとされている。
特開平11−228186号公報
しかしながら、本発明者が特許文献1に記載のソーダ石灰ガラスAを用意し、透明性が◎であった実施例のガラスを作製して透明性を確認したところ、ディスプレイカバーガラス用ガラス基板としては可視光域の透過率が低く、不十分であることがわかった。その理由として、銀イオンはカリウムイオンに対し拡散が早く、所望の強度が得られるように処理を行うとガラス中に過剰に銀イオンが拡散し、拡散した銀イオンがコロイド化することでガラスが着色し、可視域の特定波長に対し吸収性を有するためであると考えられる。
本発明は上記事情に鑑みてなされたもので、高い強度と抗菌性に優れるだけでなく、ディスプレイ装置のカバーガラスとして好適な高い透明性と可視透過率とを備えたディスプレイカバーガラス用ガラス基板を低コストで製造する方法を提供することを目的とする。
本発明者は、ガラスに抗菌性を付与する銀イオン拡散層中の銀のコロイド化がガラスの透明性を阻害することに着目し、所定濃度のKNOとAgNOとを少なくとも含む溶融塩中において化学強化処理と抗菌処理を同時に行う工程とすることにより、銀コロイドの吸収波長である428nm付近の透過率を特定範囲に制御でき、ディスプレイカバーガラス用ガラス基板として好適な強度、抗菌性と透明性が低コストで得られることを見出した。
すなわち、本発明のディプレイカバーガラス用ガラス基板の製造方法は、ガラス基板表面に表面圧縮応力層と抗菌性物質含有層とを備え、該ガラス基板の波長428nmにおける透過率T1と波長650nmにおける透過率T2との比(T1/T2)が0.95以上、かつ該ガラス基板の板厚が0.1〜3.0mmでの波長428nmにおける透過率が86%以上のディスプレイカバーガラス用ガラス基板の製造方法であって、
前記ガラス基板を75〜99.9999質量%のKNOと0.0001〜0.1質量%(ただし、0.1質量%を含まず)のAgNO0を超え24.9質量%以下のNaNO を少なくとも含む溶融塩中において化学強化処理と抗菌処理とを同時に行う工程と、前記化学強化処理と抗菌処理をしたガラス基板を清浄化処理する工程とを有することを特徴とする。
また、前記ガラス基板表面の表面圧縮応力層及び抗菌性物質含有層は、ガラス基板表面から40μmの深さにおける銀量が0.2〜145μg/cm であることを特徴とする。
また、前記ガラス基板は、ガラス組成として、モル百分率表示で、SiO 55〜80%、Al 0.1〜15%、B 0〜15%、ZnO 0〜10%、NaO 0.1〜15%、KO 0〜10%、MgO+CaO 0〜16%を含有することを特徴とする。
また、前記ガラス基板表面の表面圧縮応力層は、3μm以上の深さと250MPa以上の表面圧縮応力とを備えることを特徴とする。
また、本発明のディプレイカバーガラス用ガラス基板は、タッチパネルディスプレイに用いられることを特徴とする。
本発明によれば、高い強度と抗菌性に優れるだけでなく、銀コロイドに起因するガラスの着色を抑制することで、高い透明性と可視透過率とを備えたディスプレイカバーガラス用ガラス基板を低コストで製造することができる。
本発明のディスプレイカバーガラス用ガラス基板の製造方法は、前記ガラス基板を75〜99.9999質量%のKNOと0.0001〜0.1質量%(ただし、0.1質量%を含まず)のAgNOとを少なくとも含む溶融塩中において化学強化処理と抗菌処理とを同時に行う工程と、前記化学強化処理と抗菌処理を行ったガラス基板を清浄化処理する工程とを有する。
ガラス基板は、化学強化処理と抗菌処理とを行う前段階で板成形される。板成形する工程については、その詳細は特に限定されないが、たとえば種々の原料を適量調合し、約1400〜1600℃に加熱し溶融した後、脱泡、撹拌などにより均質化し、周知のフロート法、ダウンドロー法、プレス法などによって板状に成形し、徐冷後所望のサイズに切断、研磨加工を施して製造される。特に大量のガラスを低コストで板成形する場合は、フロート法を用いることが好ましい。
また、本発明のディスプレイカバーガラス用ガラス基板の厚みは、モバイル機器に用いられる場合などで特に軽量化が要求される際には、典型的には0.2〜3.0mmが好ましい。0.2mm未満では、化学強化しても実用強度の観点から所望の強度が得られないおそれがある。3.0mm超では、軽量化の観点から好ましくない。より好ましくは0.5〜1.5mmである。
化学強化処理と抗菌処理を同時に行う工程は、ガラス基板表面のナトリウムイオンと溶融塩中のカリウムイオンとがイオン交換されること、かつガラス基板中に溶融塩中の銀イオンが拡散し銀イオン拡散層が形成されること、の2つが同時に行われることであり、ガラス基板表面に表面圧縮応力層と抗菌性物質含有層とが1回の処理工程において形成されるものである。具体的には、加熱された硝酸カリウム(KNO)と硝酸銀(AgNO)とを少なくとも含む溶融塩中にガラス基板を浸漬する方法が挙げられる。
化学強化処理は、ガラス基板表面に表面圧縮応力層を形成することでガラスの強度を向上させる方法の1つであり、ガラス転移点以下の温度でイオン交換によりガラス基板表面のイオン半径が小さなアルカリ金属イオン(典型的にはLiイオン、Naイオン)をイオン半径のより大きいアルカリ金属イオン(典型的にはKイオン)に交換する方法である。
抗菌処理は、ガラス基板表面に抗菌性物質含有層を形成することでガラスに抗菌機能を付与する方法である。具体的には、ガラス基板表面に銀イオン拡散層を形成するものであり、ガラス基板を硝酸銀等の溶融塩中に含浸させることでガラス基板表面から基板内部にわたり銀イオン拡散層を形成するものである。ガラス基板表面に抗菌性物質含有層を形成する方法としては、銀をガラス原料に混合し溶融成型する方法や銀を含むコーティング層をガラス基板表面に形成する方法等、銀そのものを含有する層を形成する方法があるが、銀イオン拡散層を形成する方法は、これら方法と比べ磨耗などによる短期の抗菌性消耗が起こらず、ガラス基板表面の性質が著しく変化することがない。
ガラス基板に対して、化学強化処理と抗菌処理とを同時に行うと、処理工程や清浄化工程を削減できるため、ガラス基板を低コストで製造できるというメリットがある。しかし、銀イオンとカリウムイオンのガラス基板表面への拡散速度を比較すると、銀イオンの方が拡散速度が早く、所望の強度が得られる表面圧縮応力層を形成するのに必要な時間だけ化学強化処理を行うと、銀イオンが過剰にガラス基板表面に入ってしまい、銀コロイドに起因する着色が生じ、ディスプレイカバーガラス用ガラス基板に求められる光学特性が得られないことがわかった。
そのため、本発明の製造方法においては、化学強化処理と抗菌処理とを同時に行うことで、低コストでの製造を可能としながら、ガラスの透過率に着目し、それらを限定することで銀コロイドに起因する光学特性の劣化のないディスプレイカバーガラス用ガラス基板として好適な光学特性を備えたガラス基板を製造することができる。
化学強化処理と抗菌処理に用いる溶融塩中のKNO濃度は、75質量%未満であると、ガラス基板表面に形成される表面圧縮応力が十分でなく、ディスプレイカバーガラス用ガラス基板として好適な強度特性が得られない。溶融塩中のKNO濃度は、好ましくは80質量%以上、さらに好ましくは85質量%以上、もっとも好ましくは90質量%以上である。また、溶融塩中のKNO濃度が高いほど、表面圧縮応力は高くなることから、溶融塩中のKNO濃度は、好ましくは99.9999質量%以下である。
また、化学強化処理と抗菌処理に用いる溶融塩中のAgNO濃度は、0.1質量%以上であると、ガラス基板内へ銀イオンが過剰に拡散し、銀コロイド発生によるガラスの着色が顕著となり、ディスプレイカバーガラス用ガラス基板として好適な光学特性が得られない。溶融塩中のAgNO濃度は、好ましくは0.09質量%以下、さらに好ましくは0.08質量%以下、もっとも好ましくは0.07質量%以下である。また、0.0001質量%未満であると、ガラス基板が抗菌機能を十分に発揮できない。好ましくは、0.0005質量%以上、さらに好ましくは0.001質量%以上である。
なお、化学強化処理と抗菌処理に用いる溶融塩には、上記KNOとAgNOの他にNaNOを含んでもよい。溶融塩にNaNOを含有する場合は、24.9質量%以下とすることが好ましい。
化学強化処理と抗菌処理とを同時に行う工程における処理条件は、ガラス基板の厚さによっても異なるが、375〜500℃の前述の溶融塩中にガラス基板を2〜20時間浸漬させることが典型的である。経済的な観点から処理温度は380〜450℃、処理時間(浸漬時間)は2〜16時間の条件でガラス基板を処理することが好ましく、より好ましくは処理温度が400〜440℃、処理時間は2〜10時間である。
清浄化処理する工程は、化学強化処理と抗菌処理とを同時に行う工程にて用いた硝酸カリウム(KNO)と硝酸銀(AgNO)を含む溶融塩や汚れをガラス基板表面から除去する。これは、ガラス基板表面に汚れがあると、ガラス基板の光学特性にムラ等が生じるためである。洗浄方法については特に限定されないが、たとえばガラス基板に蒸留水などを吹き付ける方法や水槽中にガラス基板を浸漬し超音波振動を付加する方法、研磨剤を用いて擦り洗いする方法などが挙げられる。
本発明で得られるディスプレイカバーガラス用ガラス基板は、基板表面に表面圧縮応力層を備える。ガラス基板表面に表面圧縮応力層を備えることで、ガラス基板の強度を飛躍的に向上させることができる。
ディスプレイカバーガラス用ガラス基板の表面圧縮応力層は、3μm以上の深さであることが好ましい。深さが3μm未満では、ディスプレイカバーガラス用途としては強度が不十分であり、また、ガラス基板表面の耐傷性(加傷に対する圧痕の入りやすさ)が劣化する。表面圧縮応力層の深さは、好ましくは5〜100μmであり、さらに好ましくは7〜60μmである。
また、ディスプレイカバーガラス用ガラス基板の表面圧縮応力は、250〜1050MPaであることが好ましい。表面圧縮応力が250MPa未満では、ディスプレイカバーガラス用途としては強度が不十分であり、またガラス基板表面の耐傷性が劣化する。また、1050MPaを超えると、内部引張応力が大きくなり、衝撃等によりクラックがガラス基板内部に進展した際に爆発的な破壊が起こるため安全上好ましくない。表面圧縮応力は、好ましくは300〜800MPaであり、さらに好ましくは350〜550MPaである。
本発明で得られるディスプレイカバーガラス用ガラス基板は、基板表面に抗菌性物質含有層を備える。ガラス基板表面に抗菌性物質含有層を備えることで、ガラス基板に抗菌機能を付与することができる。
ディスプレイカバーガラス用ガラス基板の抗菌性物質含有層である銀イオン拡散層は、ガラス基板表面から40μmの深さにおける銀量が0.2〜145μg/cmであることが好ましい。ガラス基板の銀量が0.2μg/cm未満では、抗菌効果が十分でない。また、145μg/cmを超えると銀イオン拡散層に拡散する銀量が多くなりすぎて、銀コロイドに起因するガラスの着色が生じるため好ましくない。銀量は、好ましくは1.0〜140μg/cmであり、さらに好ましくは3.0〜130μg/cmである。さらに好ましくは5.0〜125μg/cmであり、もっとも好ましくは8.0〜120μg/cmである。
ガラス基板の銀量と抗菌効果との関連について、本発明者は以下の方法で確認した。まず、板状のホウケイ酸塩ガラス(PYREX(登録商標))を用意し、ガラス基板表面から40μmの深さにおける銀量が0.2、0.4、0.6μg/cmとなる抗菌処理済のガラス基板をそれぞれ作成した。これらガラス基板について、JIS Z 2801(抗菌性試験方法)に基づき、規格条件で24時間後のガラスサンプルに確認される菌数(大腸菌、黄色ぶどう球菌)を確認した。なお、滅菌率は同じ条件で処理された無加工フィルムとの比較で算出した。その結果、銀量が0.2μg/cmのガラス基板については、90%以上の菌が死滅しており、銀量が0.4、0.6μg/cmのガラス基板については、99%以上の菌が死滅していた。これらより、ガラス基板表面から40μmの深さにおける銀量が0.2μg/cm以上であれば、抗菌効果を備えていると考えた。
前述のとおり本発明のディスプレイカバーガラス用ガラス基板の製造方法においては、表面処理圧縮層と抗菌性物質含有層とが同時に形成されるため、ガラス基板表面ではナトリウムイオンがカリウムイオンに置換されている部分(表面処理圧縮層)と銀イオンが拡散する部分(抗菌性物質含有層)とが混在した状態となっている。
また、ガラス基板表面は、全面に表面圧縮応力層と抗菌性物質含有層とを備えたものとする以外に、ガラス基板表面の一部分には表面圧縮応力層と抗菌性物質含有層のいずれも形成されない箇所があってもよい。
本発明のディスプレイカバーガラス用ガラス基板の製造方法は、ガラス基板の波長428nmにおける透過率T1と波長650nmにおける透過率T2との比(T1/T2)が0.95以上、かつ該ガラス基板の板厚が0.1〜3.0mmでの波長428nmにおける透過率が86%以上のガラス基板を製造する方法である。
ここで、波長428nmを用いた理由は、銀コロイドによりガラスが着色した際の吸収波長がこの付近で極大となることから、銀コロイドによるガラスの着色の有無を直接的に判定できるためである。また、波長650nmを用いた理由は、銀コロイドによりガラスが着色すると428nm付近の波長帯だけでなく、前後100nm程度の幅で透過率に影響があるため、この影響を受けない可視域波長であるという点で選択した。そして、ガラス基板の波長428nmにおける透過率T1と波長650nmにおける透過率T2との比(T1/T2)が0.95以上及びガラス基板の板厚が0.1〜3.0mmでの波長428nmにおける透過率が86%以上としたが、このような透過率特性を備えることで、銀コロイドによるガラス基板の着色がなく、ディスプレイカバーガラス用ガラス基板に好適な高い透明性と可視透過率とを備えたガラス基板が得られる。ここで、ガラス基板の板厚が0.1〜3.0mmでの波長428nmにおける透過率が86%未満、もしくはガラス基板の波長428nmにおける透過率T1と波長650nmにおける透過率T2との比(T1/T2)が0.95未満であると、銀コロイドに起因するガラスの着色が目視により認識できる程度に透明性と可視透過率が低くなり、ディスプレイ装置に用いると表示画面の視認性を低下させるため好ましくない。
次に、本発明のディスプレイカバーガラス用ガラス基板の製造方法に好適に用いることができるガラス組成について、特に断らない限りモル百分率表示含有量を用いて説明する。
SiOは、ガラスの骨格を構成する成分であり、必須である。55%未満ではガラスとして安定性が低下する、または耐候性が低下する。好ましくは60%以上である。なお、SiOが80%超ではガラスの粘性が増大し溶融性が著しく低下する。好ましくは75%以下、さらに好ましくは73%以下である。
Alは、イオン交換速度を向上させる成分であり、必須である。0.1%未満ではイオン交換速度が低下する。好ましくは1%以上、典型的には1.5%以上である。Alが15%超ではガラスの粘性が高くなり均質な溶融が困難になる。好ましくは11%以下、より好ましくは8%以下である。
は、高温での溶融性またはガラス強度の向上のため、例えば15%まで含有してよい。15%超ではガラスが不安定となる。好ましくは10%以下、より好ましくは8%以下である。また、抗菌処理におけるガラス基板表面の銀量を多くするためには、好ましくは5%以下、より好ましくは含有しないことである。
ZnOは、ガラスの高温での溶融性を向上するため、例えば10%まで含有してもよい。10%超ではガラスが不安定となる。好ましくは8%以下、より好ましくは6%以下である。また、抗菌処理におけるガラス基板表面の銀量を多くするためには、好ましくは3%以下、より好ましくは含有しないことである。
NaOは、イオン交換により表面圧縮応力層を形成させ、またガラスの溶融性を向上させる成分であり、必須である。0.1%未満ではイオン交換により所望の表面圧縮応力層を形成することが困難となる。好ましくは3%以上、典型的には6%以上である。NaOが15%超では、Tgしたがって歪点が低くなる、または耐候性が低下する。なお、Tgすなわち歪点が低いと、化学強化時に応力緩和が起こり、所望の化学強化特性を得ることが難しくなる。好ましくは14%以下、典型的には13%以下である。
Oは、溶融性を向上させる成分であるとともに、化学強化におけるイオン交換速度を大きくして所望の表面圧縮応力と表面圧縮応力層を得るようにするための成分であり、10%以下の範囲で含有することが好ましい。好ましくは0.1%以上、より好ましくは2%以上、典型的には3%以上である。KOが10%超では耐候性が低下する。好ましくは8%以下、典型的には6%以下である。
アルカリ土類金属酸化物は、溶融性を向上させる成分であるとともに、Tgしたがって歪点の調節に有効な成分である。
MgO及びCaOは、イオン交換速度を低下させる効果が比較的小さいものであり、MgO+CaOが16%以下の範囲で含有させてもよい。MgO+CaOが16%超ではイオン交換速度が低下する、失透しやすくなる、または歪点が低くなりすぎるおそれがある。好ましくは15%以下、より好ましくは13%以下である。
本発明のガラス基板は、典型的には、SiOを55〜80%、Alを0.1〜15%、Bを0〜15%、ZnOを0〜10%、NaOを0.1〜15%、KOを0〜10%、MgO+CaOを0〜16%である。
好ましいガラス基板の組成については、本質的に以上で説明した成分からなるが、本発明の目的を損なわない範囲でその他の成分を含有してもよい。そのような成分を含有する場合、それら成分の含有量の合計は10%以下であることが好ましく、典型的には5%以下である。例示的にその他成分について説明する。
BaOとSrOは、アルカリ土類金属酸化物の中でイオン交換速度を低下させる効果が最も大きいので、含有する場合はその含有量を1%未満とすることが好ましい。
ZrOは、必須ではないが、イオン交換速度を大きくするために5%までの範囲で含有してもよい。5%超ではイオン交換速度を大きくする効果が飽和し、また溶融性が悪化して未溶融物としてガラス中に残る場合が起こる。ZrOを含有する場合、その含有量は好ましくは0.5%以上、典型的には1%以上である。
ガラスの溶融の際の清澄剤として、SO、塩化物、フッ化物、Sb、Asなどを適宜含有してもよい。
また、ガラス基板の透明性及び可視透過率に影響がある、可視域に吸収をもつFe、NiO、Crなど原料中の不純物として混入するような成分はできるだけ減らすことが好ましく、各々質量百分率表示で0.15%以下であることが好ましく、より好ましくは0.05%以下である。
次に本発明のディプレイカバーガラス用ガラス基板の製造方法によって製造されたディプレイカバーガラス用ガラス基板について説明する。本発明のディプレイカバーガラス用ガラス基板の製造方法によって製造されたディプレイカバーガラス用ガラス基板は、タッチパネルディスプレイ等の入力機能を備えた表示装置のディスプレイ前面ガラスに好適に用いられる。タッチパネルディスプレイのカバーガラス用ガラス基板には、表示装置としての高い視認性と、接触による操作時の荷重負荷に耐えうる高い強度、不特定多数の人が使用しても衛生的である抗菌性が求められるが、本発明のディプレイカバーガラス用ガラス基板はこれら特性を十分に備えている。
また、前記ディスプレイカバーガラス用ガラス基板をディスプレイの前面ガラスとして用いることで、表示装置としての高い視認性と、操作や携帯時の負荷に耐えうる高い強度、衛生的に使用できる抗菌性を有するディスプレイ装置が得られる。
次に、本発明のディスプレイカバーガラス用ガラス基板の実施例及び比較例について説明する。以下の各実施例及び比較例では、表1にガラス組成を示すガラスA、B、C、Dを用いた。各ガラスは、表1の各成分の欄にモル百分率表示で示す組成になるように、酸化物、水酸化物、炭酸塩、硝酸塩等一般に使用されているガラス原料を適宜選択し、ガラスとして800gとなるように秤量し、混合した。ついで、白金製るつぼに入れ、1600℃の抵抗加熱式電気炉に投入し、3時間溶融し、脱泡、均質化した後、型材に流し込み、所定の温度で徐冷し、ガラスブロックを得た。このガラスブロックからサイズが40mm×40mm、厚みが0.3〜1.0mm程度になるように切断、研削し、最後に両面を鏡面に加工し、板状のガラスを得た。なお、ガラスAについてのみ、板成形をフロート法を用いて行い、サイズが40mm×40mmになるように切断、研削し、最後に両面を鏡面に加工し、板状のガラス基板を得た。
Figure 0005589379
次いで、得られた各ガラス基板をKNOとAgNOを少なくとも含む溶融塩に所定時間浸漬し、純水洗浄後に乾燥させることにより、表面に表面圧縮応力層と抗菌性物質含有層とを備えたガラス基板を得た。なお、各実施例及び比較例における化学強化処理及び抗菌処理の諸条件(溶融塩濃度、処理時間、処理温度)は、表2〜表4に記載のとおりである。
さらに、得られた化学強化処理及び抗菌処理済のガラス基板について、化学強化特性(表面圧縮応力層の深さ、表面圧縮応力)、波長428nmにおける透過率、透過率比(波長428nm/波長650nm)、ガラス基板表面に拡散した銀量(蛍光X線Ag強度)を測定した。
ここで、ガラス基板の表面圧縮応力及び表面圧縮応力層の深さは、表面応力計FSM−6000(折原製作所社製)を用いて測定した。また、透過率及び透過率比は、紫外可視近赤外分光光度計(JASCO社製、V570)を用いて得られた分光透過率から評価した。
さらに、ガラス基板表面に拡散した銀量は、蛍光X線測定装置(理学電機工業株式会社製ZSX Primus2)にて測定した。まず、銀量が既知の銀メッキミラーを蛍光X線測定装置を用いてAg−Lα強度を測定し、銀量とAg−Lα強度の検量線を作成した。そして、各実施例及び比較例のガラス基板のAg−Lα強度を測定して、銀量を測定された相対強度から換算して求めた。Ag−Lα強度はガラス中の約40μm程度の深さの分析が可能であり、この測定した相対値をガラス基板表面から40μmまでの深さに拡散した銀量の測定値とした。
上記で得られた各実施例及び比較例のガラス基板特性について表2〜表4に示す。なお、表における例1、例2、例10、例12、例14が本発明の実施例であり、例3〜例9、例11、例13、例15が比較例である。なお、比較例である例7〜例9は、それぞれ特開平11−228186号の実施例4、実施例7、実施例5に記載の処理条件を用いて化学強化処理と抗菌処理とを行った。
Figure 0005589379
Figure 0005589379
Figure 0005589379
得られた本発明の実施例のガラス基板は、ガラス基板の波長428nmにおける透過率T1と波長650nmにおける透過率T2との比(T1/T2)が0.95以上、波長428nmにおける透過率が86%以上でありディスプレイカバーガラス用ガラス基板として好適な高い透明性と可視透過率を備えていた。また、表面圧縮応力層の深さが3μm以上、表面圧縮応力が250MPa以上、ガラス基板表面から40μmの深さにおける銀量が0.2〜145μg/cmであり、高い強度と抗菌性を備えていると考えられる。
これに対し、比較例(例3、例11、例13、例15)のガラス基板は、溶融塩にAgNOを含まないために抗菌処理が行われず、ガラス基板表面に抗菌性物質含有層が存在しなかった(蛍光X線Ag強度がゼロ)。また、比較例(例4〜9)のガラス基板は、波長428nmの透過率及び透過率比が低く、ディスプレイカバーガラス用ガラス基板としては透明性と可視透過率の点で不十分であった。これは、化学強化処理と抗菌処理において銀イオンが過剰にガラス基板表面に拡散することにより、銀コロイドの発生によるガラスの着色が顕著となりガラスの光学特性が劣化したものと考えられる。さらに、比較例(例5、例6)のガラス基板は、表面圧縮応力が低く強度が十分でなかった。これは、溶融塩におけるAgNOの量が多いことによる銀イオンの優先的拡散による化学強化性能の劣化が考えられる。
本発明によれば、ガラス基板を75〜99.9999質量%のKNOと0.0001〜0.1質量%(ただし、0.1質量%を含まず)のAgNOを少なくとも含む溶融塩中において化学強化処理と抗菌処理を同時に行う工程と、前記化学強化と抗菌処理したガラス基板を清浄化処理する工程とを有することを特徴とするディプレイカバーガラス用ガラス基板の製造方法によって、強度と抗菌性に優れるだけでなく、銀コロイドに起因するガラスの着色を抑制することで、高い透明性及び可視透過率を備えたディスプレイカバーガラス用ガラス基板を提供することができる。

Claims (5)

  1. ガラス基板表面に表面圧縮応力層及び抗菌性物質含有層を備え、該ガラス基板の波長428nmにおける透過率T1と波長650nmにおける透過率T2との比(T1/T2)が0.95以上、かつ該ガラス基板の板厚が0.1〜3.0mmでの波長428nmにおける透過率が86%以上であるディプレイカバーガラス用ガラス基板の製造方法であって、
    前記ガラス基板を75〜99.9999質量%のKNOと0.0001〜0.1質量%(ただし、0.1質量%を含まず)のAgNO0を超え24.9質量%以下のNaNO を少なくとも含む溶融塩中において化学強化処理と抗菌処理とを同時に行う工程と、前記化学強化処理と抗菌処理をしたガラス基板を清浄化処理する工程とを有することを特徴とするディプレイカバーガラス用ガラス基板の製造方法。
  2. 前記ガラス基板表面の表面圧縮応力層及び抗菌性物質含有層は、ガラス基板表面から40μmの深さにおける銀量が0.2〜145μg/cm であることを特徴とする請求項1に記載のディスプレイカバーガラス用ガラス基板の製造方法。
  3. 前記ガラス基板は、ガラス組成として、モル百分率表示で、SiO 55〜80%、Al 0.1〜15%、B 0〜15%、ZnO 0〜10%、NaO 0.1〜15%、KO 0〜10%、MgO+CaO 0〜16%を含有することを特徴とする請求項1または請求項2に記載のディスプレイカバーガラス用ガラス基板の製造方法。
  4. 前記ガラス基板表面の該表面圧縮応力層は、3μm以上の深さと250MPa以上の表面圧縮応力とを備えることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載のディプレイカバーガラス用ガラス基板の製造方法。
  5. タッチパネルディスプレイに用いられることを特徴とする請求項1から請求項のいずれか1項に記載のディスプレイカバーガラス用ガラス基板の製造方法。
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