JP5589379B2 - ディスプレイカバーガラス用ガラス基板の製造方法 - Google Patents
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このようなディスプレイカバーガラス用ガラス基板は、薄型で高い強度を備えていることが要求されており、化学強化法によって強度を高めたガラス基板が通常用いられている。
不特定多数の人に利用される駅の券売機や銀行のATM、医療施設内で用いられる機器等のタッチパネル付表示装置は、それら使用環境ゆえ様々な菌が付着する可能性が高い。また、モバイル機器についても、使用者は限られるものの使用頻度が非常に多く同様の問題を有している。
そのため、これら機器・装置において、特に人が触れる機会の多いディスプレイカバーガラス用ガラス基板に抗菌性を付与することが望まれている。
前記ガラス基板を75〜99.9999質量%のKNO3と0.0001〜0.1質量%(ただし、0.1質量%を含まず)のAgNO3と0を超え24.9質量%以下のNaNO 3 とを少なくとも含む溶融塩中において化学強化処理と抗菌処理とを同時に行う工程と、前記化学強化処理と抗菌処理をしたガラス基板を清浄化処理する工程とを有することを特徴とする。
また、前記ガラス基板表面の表面圧縮応力層及び抗菌性物質含有層は、ガラス基板表面から40μmの深さにおける銀量が0.2〜145μg/cm 2 であることを特徴とする。
また、前記ガラス基板は、ガラス組成として、モル百分率表示で、SiO2 55〜80%、Al2O3 0.1〜15%、B2O3 0〜15%、ZnO 0〜10%、Na2O 0.1〜15%、K2O 0〜10%、MgO+CaO 0〜16%を含有することを特徴とする。
また、前記ガラス基板表面の表面圧縮応力層は、3μm以上の深さと250MPa以上の表面圧縮応力とを備えることを特徴とする。
また、本発明のディプレイカバーガラス用ガラス基板は、タッチパネルディスプレイに用いられることを特徴とする。
また、本発明のディスプレイカバーガラス用ガラス基板の厚みは、モバイル機器に用いられる場合などで特に軽量化が要求される際には、典型的には0.2〜3.0mmが好ましい。0.2mm未満では、化学強化しても実用強度の観点から所望の強度が得られないおそれがある。3.0mm超では、軽量化の観点から好ましくない。より好ましくは0.5〜1.5mmである。
抗菌処理は、ガラス基板表面に抗菌性物質含有層を形成することでガラスに抗菌機能を付与する方法である。具体的には、ガラス基板表面に銀イオン拡散層を形成するものであり、ガラス基板を硝酸銀等の溶融塩中に含浸させることでガラス基板表面から基板内部にわたり銀イオン拡散層を形成するものである。ガラス基板表面に抗菌性物質含有層を形成する方法としては、銀をガラス原料に混合し溶融成型する方法や銀を含むコーティング層をガラス基板表面に形成する方法等、銀そのものを含有する層を形成する方法があるが、銀イオン拡散層を形成する方法は、これら方法と比べ磨耗などによる短期の抗菌性消耗が起こらず、ガラス基板表面の性質が著しく変化することがない。
そのため、本発明の製造方法においては、化学強化処理と抗菌処理とを同時に行うことで、低コストでの製造を可能としながら、ガラスの透過率に着目し、それらを限定することで銀コロイドに起因する光学特性の劣化のないディスプレイカバーガラス用ガラス基板として好適な光学特性を備えたガラス基板を製造することができる。
また、化学強化処理と抗菌処理に用いる溶融塩中のAgNO3濃度は、0.1質量%以上であると、ガラス基板内へ銀イオンが過剰に拡散し、銀コロイド発生によるガラスの着色が顕著となり、ディスプレイカバーガラス用ガラス基板として好適な光学特性が得られない。溶融塩中のAgNO3濃度は、好ましくは0.09質量%以下、さらに好ましくは0.08質量%以下、もっとも好ましくは0.07質量%以下である。また、0.0001質量%未満であると、ガラス基板が抗菌機能を十分に発揮できない。好ましくは、0.0005質量%以上、さらに好ましくは0.001質量%以上である。
なお、化学強化処理と抗菌処理に用いる溶融塩には、上記KNO3とAgNO3の他にNaNO3を含んでもよい。溶融塩にNaNO3を含有する場合は、24.9質量%以下とすることが好ましい。
ディスプレイカバーガラス用ガラス基板の抗菌性物質含有層である銀イオン拡散層は、ガラス基板表面から40μmの深さにおける銀量が0.2〜145μg/cm2であることが好ましい。ガラス基板の銀量が0.2μg/cm2未満では、抗菌効果が十分でない。また、145μg/cm2を超えると銀イオン拡散層に拡散する銀量が多くなりすぎて、銀コロイドに起因するガラスの着色が生じるため好ましくない。銀量は、好ましくは1.0〜140μg/cm2であり、さらに好ましくは3.0〜130μg/cm2である。さらに好ましくは5.0〜125μg/cm2であり、もっとも好ましくは8.0〜120μg/cm2である。
ガラス基板の銀量と抗菌効果との関連について、本発明者は以下の方法で確認した。まず、板状のホウケイ酸塩ガラス(PYREX(登録商標))を用意し、ガラス基板表面から40μmの深さにおける銀量が0.2、0.4、0.6μg/cm2となる抗菌処理済のガラス基板をそれぞれ作成した。これらガラス基板について、JIS Z 2801(抗菌性試験方法)に基づき、規格条件で24時間後のガラスサンプルに確認される菌数(大腸菌、黄色ぶどう球菌)を確認した。なお、滅菌率は同じ条件で処理された無加工フィルムとの比較で算出した。その結果、銀量が0.2μg/cm2のガラス基板については、90%以上の菌が死滅しており、銀量が0.4、0.6μg/cm2のガラス基板については、99%以上の菌が死滅していた。これらより、ガラス基板表面から40μmの深さにおける銀量が0.2μg/cm2以上であれば、抗菌効果を備えていると考えた。
また、ガラス基板表面は、全面に表面圧縮応力層と抗菌性物質含有層とを備えたものとする以外に、ガラス基板表面の一部分には表面圧縮応力層と抗菌性物質含有層のいずれも形成されない箇所があってもよい。
ここで、波長428nmを用いた理由は、銀コロイドによりガラスが着色した際の吸収波長がこの付近で極大となることから、銀コロイドによるガラスの着色の有無を直接的に判定できるためである。また、波長650nmを用いた理由は、銀コロイドによりガラスが着色すると428nm付近の波長帯だけでなく、前後100nm程度の幅で透過率に影響があるため、この影響を受けない可視域波長であるという点で選択した。そして、ガラス基板の波長428nmにおける透過率T1と波長650nmにおける透過率T2との比(T1/T2)が0.95以上及びガラス基板の板厚が0.1〜3.0mmでの波長428nmにおける透過率が86%以上としたが、このような透過率特性を備えることで、銀コロイドによるガラス基板の着色がなく、ディスプレイカバーガラス用ガラス基板に好適な高い透明性と可視透過率とを備えたガラス基板が得られる。ここで、ガラス基板の板厚が0.1〜3.0mmでの波長428nmにおける透過率が86%未満、もしくはガラス基板の波長428nmにおける透過率T1と波長650nmにおける透過率T2との比(T1/T2)が0.95未満であると、銀コロイドに起因するガラスの着色が目視により認識できる程度に透明性と可視透過率が低くなり、ディスプレイ装置に用いると表示画面の視認性を低下させるため好ましくない。
MgO及びCaOは、イオン交換速度を低下させる効果が比較的小さいものであり、MgO+CaOが16%以下の範囲で含有させてもよい。MgO+CaOが16%超ではイオン交換速度が低下する、失透しやすくなる、または歪点が低くなりすぎるおそれがある。好ましくは15%以下、より好ましくは13%以下である。
ZrO2は、必須ではないが、イオン交換速度を大きくするために5%までの範囲で含有してもよい。5%超ではイオン交換速度を大きくする効果が飽和し、また溶融性が悪化して未溶融物としてガラス中に残る場合が起こる。ZrO2を含有する場合、その含有量は好ましくは0.5%以上、典型的には1%以上である。
ガラスの溶融の際の清澄剤として、SO3、塩化物、フッ化物、Sb2O3、As2O3などを適宜含有してもよい。
また、ガラス基板の透明性及び可視透過率に影響がある、可視域に吸収をもつFe2O3、NiO、Cr2O3など原料中の不純物として混入するような成分はできるだけ減らすことが好ましく、各々質量百分率表示で0.15%以下であることが好ましく、より好ましくは0.05%以下である。
また、前記ディスプレイカバーガラス用ガラス基板をディスプレイの前面ガラスとして用いることで、表示装置としての高い視認性と、操作や携帯時の負荷に耐えうる高い強度、衛生的に使用できる抗菌性を有するディスプレイ装置が得られる。
ここで、ガラス基板の表面圧縮応力及び表面圧縮応力層の深さは、表面応力計FSM−6000(折原製作所社製)を用いて測定した。また、透過率及び透過率比は、紫外可視近赤外分光光度計(JASCO社製、V570)を用いて得られた分光透過率から評価した。
さらに、ガラス基板表面に拡散した銀量は、蛍光X線測定装置(理学電機工業株式会社製ZSX Primus2)にて測定した。まず、銀量が既知の銀メッキミラーを蛍光X線測定装置を用いてAg−Lα強度を測定し、銀量とAg−Lα強度の検量線を作成した。そして、各実施例及び比較例のガラス基板のAg−Lα強度を測定して、銀量を測定された相対強度から換算して求めた。Ag−Lα強度はガラス中の約40μm程度の深さの分析が可能であり、この測定した相対値をガラス基板表面から40μmまでの深さに拡散した銀量の測定値とした。
これに対し、比較例(例3、例11、例13、例15)のガラス基板は、溶融塩にAgNO3を含まないために抗菌処理が行われず、ガラス基板表面に抗菌性物質含有層が存在しなかった(蛍光X線Ag強度がゼロ)。また、比較例(例4〜9)のガラス基板は、波長428nmの透過率及び透過率比が低く、ディスプレイカバーガラス用ガラス基板としては透明性と可視透過率の点で不十分であった。これは、化学強化処理と抗菌処理において銀イオンが過剰にガラス基板表面に拡散することにより、銀コロイドの発生によるガラスの着色が顕著となりガラスの光学特性が劣化したものと考えられる。さらに、比較例(例5、例6)のガラス基板は、表面圧縮応力が低く強度が十分でなかった。これは、溶融塩におけるAgNO3の量が多いことによる銀イオンの優先的拡散による化学強化性能の劣化が考えられる。
Claims (5)
- ガラス基板表面に表面圧縮応力層及び抗菌性物質含有層を備え、該ガラス基板の波長428nmにおける透過率T1と波長650nmにおける透過率T2との比(T1/T2)が0.95以上、かつ該ガラス基板の板厚が0.1〜3.0mmでの波長428nmにおける透過率が86%以上であるディプレイカバーガラス用ガラス基板の製造方法であって、
前記ガラス基板を75〜99.9999質量%のKNO3と0.0001〜0.1質量%(ただし、0.1質量%を含まず)のAgNO3と0を超え24.9質量%以下のNaNO 3 とを少なくとも含む溶融塩中において化学強化処理と抗菌処理とを同時に行う工程と、前記化学強化処理と抗菌処理をしたガラス基板を清浄化処理する工程とを有することを特徴とするディプレイカバーガラス用ガラス基板の製造方法。 - 前記ガラス基板表面の表面圧縮応力層及び抗菌性物質含有層は、ガラス基板表面から40μmの深さにおける銀量が0.2〜145μg/cm 2 であることを特徴とする請求項1に記載のディスプレイカバーガラス用ガラス基板の製造方法。
- 前記ガラス基板は、ガラス組成として、モル百分率表示で、SiO2 55〜80%、Al2O3 0.1〜15%、B2O3 0〜15%、ZnO 0〜10%、Na2O 0.1〜15%、K2O 0〜10%、MgO+CaO 0〜16%を含有することを特徴とする請求項1または請求項2に記載のディスプレイカバーガラス用ガラス基板の製造方法。
- 前記ガラス基板表面の該表面圧縮応力層は、3μm以上の深さと250MPa以上の表面圧縮応力とを備えることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載のディプレイカバーガラス用ガラス基板の製造方法。
- タッチパネルディスプレイに用いられることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか1項に記載のディスプレイカバーガラス用ガラス基板の製造方法。
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