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JP5559620B2 - 透明導電膜付基板 - Google Patents

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Description

本発明は、例えば薄膜太陽電池の製造に好適な透明導電膜付基板に関し、さらに詳細には、酸化亜鉛透明導電膜の耐湿性を向上させた透明導電膜付基板に関する。
近年、光電変換装置のなかで、太陽電池を含む光電変換装置の低コスト化、高効率化を両立するために原材料が少なくてすむ薄膜光電変換装置が注目され、開発が精力的に行われている。特に、ガラス等の安価な基板上に低温プロセスを用いて良質の半導体層を形成する方法が低コストを実現可能な方法として期待されている。
一般的に、薄膜光電変換装置を形成するためには、その一部に透明電極層を備えることが不可欠である。薄膜光電変換装置は、透明電極層と裏面電極層の間に、1つ以上の光電変換ユニットを含んで形成され、光は透明電極層側から入射される。
透明電極層は、例えば、酸化錫(SnO)、酸化亜鉛(ZnO)などの透明導電性酸化物(以下、TCOともいう。)が用いられ、一般に化学気相成長法(CVD)、スパッタリング法、真空蒸着などの方法で形成される。薄膜光電変換装置に用いられる透明電極層はその表面に微細な凹凸を有することにより、入射光の散乱を増大させる効果を有することが望ましい。というのも、薄膜光電変換装置は、従来のバルクの単結晶や多結晶シリコンを使用した光電変換装置に比べて光電変換層を薄くすることが可能であるが、反面、薄膜全体の光吸収が膜厚によって制限されてしまうという問題がある。そこで、光電変換層を含む光電変換ユニットに入射した光をより有効に利用するために、光電変換ユニットに接する透明電極層あるいは金属層の表面を凹凸化(テクスチャ化)し、その界面で光を散乱した後、光電変換ユニット内へ入射させることで光路長を延長させ、光電変換層内での光吸収量を増加させる工夫がなされている。この技術は「光閉じ込め」と呼ばれており、高い光電変換効率を有する薄膜光電変換装置を実用化する上で、重要な要素技術となっている。
光電変換ユニットはpn接合またはpin接合の半導体層からなる。光電変換ユニットにpin接合を用いる場合、p型層、i型層及びn型層がこの順、またはその逆順に積層されてなり、その主要部を占めるi型の光電変換層が非晶質のものは非晶質光電変換ユニットと呼ばれ、i型層が結晶質のものは結晶質光電変換ユニットと呼ばれている。半導体層には、シリコン系薄膜半導体として、非晶質シリコン、結晶質シリコンなどが用いられている。
薄膜光電変換装置の一例であるシリコン系薄膜光電変換装置は、通常、光電変換ユニットに、p型層、実質的に真性な光電変換層であるi型層、およびn型層からなるpin接合を用いている。このうちi型層に非晶質シリコンを用いたものを非晶質シリコン光電変換ユニット、結晶質を含むシリコンを用いたものを結晶質シリコン光電変換ユニットと呼ぶ。なお、非晶質あるいは結晶質のシリコン系材料としては、半導体を構成する主要元素としてシリコンのみを用いる場合だけでなく、炭素、酸素、窒素、ゲルマニウムなどの元素をも含む合金材料も用い得る。また、導電型層の主要構成材料としては、必ずしもi型層と同質のものである必要はなく、例えば非晶質シリコン光電変換ユニットのp型層に非晶質シリコンカーバイドを用い得るし、n型層に結晶質を含むシリコン層(微結晶シリコンとも呼ばれる)も用い得る。
薄膜光電変換装置の変換効率を向上させる方法として、2つ以上の光電変換ユニットを積層した、積層型と呼ばれる構造を採用した薄膜光電変換装置が知られている。この方法においては、薄膜光電変換装置の光入射側に大きな光学的禁制帯幅(バンドギャップともいう)を有する光電変換層を含む前方光電変換ユニットを配置し、その後ろに順に小さなバンドギャップを有する光電変換層を含む後方光電変換ユニットを配置することにより、入射光の広い波長範囲にわたる光電変換を可能にし、入射する光を有効利用することにより装置全体としての変換効率の向上が図られている。積層型薄膜光電変換装置の中でも、非晶質光電変換ユニットと結晶質光電変換ユニットを積層したものはタンデム型薄膜光電変換装置と称される。なお、本願では、相対的に光入射側に配置された光電変換ユニットを前方光電変換ユニットと呼び、これよりも相対的に光入射側から遠い側に隣接して配置された光電変換ユニットを後方光電変換ユニットと呼ぶ。
光電変換ユニットの上に形成される裏面電極層としては、例えば、Al、Agなどの金属層をスパッタリング法または真空蒸着法などにより形成する。また、光電変換ユニットと上記金属層との間に、酸化インジウム錫(ITO)、SnO、ZnOなどのTCOからなる層を形成しても構わない。
上述のような薄膜光電変換ユニットは、SnOやZnOなどのTCOからなる透明電極層の上に形成される。TCOの中でも、特にSnOが、透明電極層として従来から広く用いられている。近年では、長波長領域の光に対する透過率、光閉じ込め効果の指標となるヘイズ率の制御性、更には水素ラジカルに対する耐還元性の点で優れたZnOも、透明電極層として用いられるようになってきた。
一般的に、薄膜光電変換装置用に用いられるZnO薄膜は、「光閉じ込め」効果を発現させるための表面凹凸形状が必要であることから、多結晶薄膜でなければならない。一方で、多結晶ZnOの粒界がキャリア輸送の妨げ(ポテンシャル障壁)となり、この障壁を越える確率が移動度に比例することから、障壁が高くなると移動度が低下する傾向がある。結晶粒の表面には多くの未結合手(ダングリングボンドともいう)があり、粒界には隙間があることが知られている。例えば多結晶金属のような場合には、トンネル効果によりキャリア移動が可能であるため無視することができるが、多結晶ZnOにおいては結晶粒の表面のダングリングボンドがZnもしくはOであり、イオン結合力が支配的であるため、ZnのダングリングボンドにOが吸着しやすい。つまり、ZnOはイオン結合力が支配的であり、酸素吸着や膜中への酸素取り込みが顕著であることから、耐湿性の高い多結晶ZnO薄膜の作製には高度な成膜技術が必要となる。
非特許文献1では、酸化亜鉛の高温多湿環境下における経時変化は結晶粒界における粒界散乱効果に起因していることを明らかにしている。すなわち、高温多湿下では、膜表面や粒界に存在するダングリングボンド(酸素欠損)への酸素吸着が高温水蒸気で促進しているとしている。この酸素吸着により、膜表面近傍のイオン化ドナー(正イオン)のポテンシャルは膜の内部まで広がり、電子の移動を妨げる。非特許文献1では、膜厚増加によって、膜の内部までのポテンシャルの広がりを抑制することで耐湿性の向上が可能であるとしている。しかしながら、薄膜シリコン系太陽電池用に用いられる酸化亜鉛では、光閉じ込め効果を高めるため膜表面での凹凸が激しく、必然的に、膜表面や粒界に存在するダングリングボンドが多くなることから、耐湿性の改善が困難となる傾向がある。特に、低圧熱CVD法を用いて低温成膜した酸化亜鉛膜では、自然成長する結晶粒凹凸がテクスチャ形状を形成し、膜中の結晶粒界やその界面に隙間が多く存在するため、膜厚増加のみでは十分な耐湿性を確保できない。したがって、酸化亜鉛膜中の微細構造(結晶粒界やその界面における欠陥)制御することが求められる。
一般的に、結晶構造評価としてエックス線回折法がよく用いられている。このような分析評価方法によって、結晶配向性や結晶子サイズ等が評価できる。結晶配向性は、基板上での種々結晶核(種結晶)から成長した結晶粒の配向性を示すことになり、間接的には膜の緻密性を示すことになる。また、結晶子サイズは多結晶薄膜の単結晶成分であるため、最小単位の結晶粒界を示すことになる。つまり、エックス線回折法によって、耐湿性を間接的に評価することは可能である。しかしながら、前述したように、耐湿性は膜表面や粒界に存在する酸素欠損(膜中欠陥)への酸素吸着減少によって引き起こされると考えられるため、耐湿性を評価するには膜中の欠陥を直接的に評価することが望ましいと言える。
最近、酸化亜鉛膜中の微細構造評価の一つとして、ラマン散乱分光法を用いた分析方法が報告されている。非特許文献2では、単結晶ZnOに水素イオン注入装置により水素イオンを結晶中に打ち込むことで欠陥を形成し、その注入前後におけるラマンスペクトルを解析することで、欠陥を示すピーク「A(LO)」として結論付けている。しかしながら、現在のところ、イオン注入によるA(LO)ピークが酸素欠損に起因したものであるという明確な結果は明らかになっていない。
非特許文献3では、低圧熱CVD法により低温成膜した酸化亜鉛膜における粒界散乱効果とキャリア濃度との関係を明らかにしている。非特許文献3によれば、キャリア濃度が3×1020cm−3を超えた場合、結晶粒界のポテンシャル障壁におけるキャリア輸送はトンネル効果に起因した現象となることで粒界散乱効果の影響が著しく低減するとしている。したがって、キャリア濃度が3×1020cm−3を超えた場合、高温多湿環境下での抵抗変動は低減することが可能となる。しかしながら、キャリア濃度の増加は赤外領域の透過率低下を引き起こすため、赤外域までの光吸収が必要な多接合型薄膜シリコン太陽電池においては性能低下を引き起こす原因となりうる。
Thin Solid Film 516,1314(2008) Physical Review B 71,115213(2005) Applied Physics Letters 90,142107(2007)
本発明は、例えば薄膜シリコン光電変換装置に代表される薄膜光電変換装置用の基板として好適な、酸化亜鉛透明導電膜の酸素欠損を制御することで耐湿性を向上させた透明導電膜付基板を提供することを目的としている。
上記のような課題に鑑み、本発明者は鋭意検討した結果、以下の構成により課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、光入射側から順に、少なくとも透光性基板と、酸化亜鉛層とを備える透明導電膜付基板であって、酸化亜鉛のラマンスペクトルピーク強度比をE(high)/A(LO)>2.0としたことを特徴とする、透明導電膜付基板に関する。
好ましい実施態様は、前記酸化亜鉛のラマンスペクトルピーク強度比をE(high)/A(LO)≧5.0としたことを特徴とする、前記の透明導電膜付基板に関する。
本発明は、前記の透明導電膜付基板を製造する方法であって、原料に少なくとも水とジエチル亜鉛を用いる低圧熱CVD法により、水/ジエチル亜鉛の流量比2.0以上で、透光性基板上にバルク酸化亜鉛層が形成されることを特徴とする、透明導電膜付基板の製造方法に関する。一形態では、前記バルク酸化亜鉛層を形成後に、水/ジエチル亜鉛の流量比が2.0以下で酸化亜鉛層の最表面部が形成される。
好ましい実施態様は、酸化亜鉛層の最表面に還元性プラズマ処理を施すことを特徴とする、前記の透明導電膜付基板の製造方法に関する。
本発明によれば、耐湿性に影響を与える酸素欠損を直接的な評価手法により定量化し、制御することで、酸化亜鉛層を備える透明導電膜付基板の耐湿性を著しく改善することができる。これにより、本発明の基板を備えた薄膜光電変換装置は、例えばシート抵抗変化率が小さいなど、優れた耐環境信頼性を発現できる。
本発明の実施例・比較例に係るラマンスペクトル図である。 本発明の実施例・比較例に係る高温高湿試験前後のシート抵抗変化率を評価した結果を示す図である。
以下において本発明の好ましい実施の形態について以下に説明する。
前記透光性基板には公知のものを使用することができ、例えば、ガラス、透明樹脂等からなる板状部材やシート状部材が主に用いられる。特に透光性基板として、主にガラス基板を用いると、透過率が高く、安価であることから好ましい。
透光性基板は薄膜光電変換装置を構成した際に光入射側に位置することから、より多くの太陽光を透過させて光電変換ユニットに吸収させるために、できるだけ透明であることが好ましく、その観点からも材料としてはガラス板が好適である。同様の意図から、太陽光の光入射面における光反射ロスを低減させるために、透光性基板の光入射面に無反射コーティングを行うことが望ましい。
透明電極層としては、本発明においては酸化亜鉛(ZnO)層が用いられる。酸化亜鉛層としては酸化亜鉛を主成分とするものであればよいが、二元化合物が好ましい。なぜならば、多くの三元化合物(例えばホモロガス化合物、ZnIn3+m;m=2〜7)の場合、プラズマCVD法によるシリコン薄膜堆積中に、In原子がシリコン層へ拡散したり、界面において金属析出したりするからである。また、キャリア濃度を制御するための外因性ドナーとなるドーパント材料としては、B、Al、Ga、Si、Sc、F等が用いられうる。薄膜光電変換装置では、波長800nm以上の赤外領域における透過率が重要になるため、酸化亜鉛層のキャリア濃度が2×1020cm−3以下であることが好ましい。
本発明においては、後述する観点から、酸化亜鉛層のラマンスペクトルピーク強度比をE(high)/A(LO)>2.0とすることに特徴を有しており、更にはラマンスペクトルピーク強度比をE(high)/A(LO)≧5.0とすることがより好ましい。ここで、E(high)ピークとはWurtzite構造の高周波Eフォノンモードであり437cm−1に現れ、A(LO)ピークとは酸素欠損に由来したピークと考えられており574cm−1に現れるピークである。E(high)ピークが大きいほど酸化亜鉛の結晶性が高く緻密な微細構造を有するため良質な多結晶薄膜と考えられる。また、A(LO)ピークが小さいほど酸化亜鉛中の欠陥(ダングリングボンド)が少なく、水や酸素の膜中への浸入による結晶粒界の酸化反応が抑制できる。このように、E(high)/A(LO)ピークが高いほど、耐湿性が高い膜と考えられる。
ラマン散乱分光法は、ラマン散乱光の振動数と入射光の振動数の差(ラマンシフト)が物質の構造に特有の値をとることを利用した分子の構造や状態を知るための非破壊分析法として用いられている。最近では、ZnOの単結晶、多結晶バルク材料などに用いられ始めている。例えば、非特許文献3においては、単結晶ZnOに水素イオン注入装置によって、意図的に欠陥形成を行い、その際のピーク発現からAピークは欠陥に起因したものであると述べている。本発明は、微細構造(欠陥など)が評価できるラマン散乱分光法と、耐湿性は微細構造に起因しているという知見を基に、耐湿性とラマンスペクトルピーク強度比によって相関が得られると推測し、ラマン散乱分光法を用いてZnO薄膜の評価を行ったことから端を発している。
本発明における酸化亜鉛層は、例えば、低圧熱CVD法、スパッタリング法、ゾルゲル法、イオンプレーティング法等の成膜方法を用いて製造することができる。
特に、前記低圧熱CVD法は、200℃以下の低温度で成膜できるため、種々の基板を用いることができる利点があり、かつ、積層型薄膜光電変換装置を形成する場合に重要となる長波長域の光閉じ込め効果に有用な表面テクスチャ構造を備えもつ酸化亜鉛層を成膜できることから、好ましい。そのような低圧熱CVD装置を用いる場合、基板温度が150℃以上、圧力5〜1000Paの条件下で、原料ガスとしてジエチル亜鉛(DEZ)、水、ドーピングガス、および希釈ガスを用いて形成することができる。
本発明に係る酸化亜鉛層における酸化亜鉛のラマンスペクトル強度比をE(high)/A(LO)>2.0、好ましくはE(high)/A(LO)≧5.0とするためには、例えば、原料ガスで用いられるDEZと水の流量比率を調整することによって制御できる。例えば、DEZの流量を一定にし、水の流量を上げることによって、酸化亜鉛中の酸素比率を高めることが可能である。具体的には、HO/DEZ流量比を、2.0以上、好ましくは3.5以上に上げることで耐湿性を著しく向上させることができる。また一方で、水の流量比を一定にし、DEZの流量を上げることで、亜鉛比率を高めることが可能である。しかしながら、DEZの流量を変える場合、成膜速度も変わるため、水の流量を制御することが、膜厚の制御の点でより好ましい。
一般的に、低圧熱CVD法において、原料として用いるHO/DEZ流量比を変えることで、自発的に生じる酸化亜鉛の表面凹凸形状も変化する。特に、本発明の物性を有する酸化亜鉛の表面形状は、よりピラミッド形状が鋭くなるため、これまでは積層型薄膜光電変換装置の性能低下を引き起こすと考えられていた。しかしながら、本発明者は鋭意検討した結果、前記物性を有する透明導電膜付基板においても、光電変換装置の製造法を改良することで性能低下が引き起こされないことを明らかにした。
例えば、低圧熱CVD法において、意図的に酸化亜鉛層の最表面部を形成する際のHO/DEZ流量比を、好ましくは2.0以下、より好ましくは1.75以下に下げることにより、ピラミッド形状を緩やかにすることが可能である。ここで酸化亜鉛層の最表面部とは、酸化亜鉛層と光電変換ユニットのp型半導体層とからなる界面近傍を意味する。また、透光性基板近傍のバルク酸化亜鉛層を形成する際は、HO/DEZ流量比は、3.0以上であることが透明性の点で好ましい。
また、前記製造法に加えて、発電層成膜前に酸化亜鉛層の最表面をB/H等の還元性プラズマ処理を行うことで、酸化亜鉛層と光電変換層との界面特性を向上させることが可能である。例えば、前記処理条件としては、基板温度190℃、高周波パワー300W、圧力1.5Torr、B流量20sccm、水素流量5000sccm、放電時間300sが例示されるが、目的にあわせて適宜設定すればよい。
一方、亜鉛成分の原料ガスとしては、ジエチル亜鉛の他にジメチル亜鉛を用いることもできる。酸素成分の原料ガスとしては、例えば、酸素、二酸化炭素、一酸化炭素、酸化二窒素、二酸化窒素、二酸化硫黄、五酸化二窒素、アルコール類(R(OH))、ケトン類(R(CO)R’)、エーテル類(ROR’)、アルデヒド類(R(COH))、アミド類((RCO)(NH3−x)、x=1,2,3)、スルホキシド類(R(SO)R’)(ただし、上記RおよびR’はアルキル基)を用いることもできる。希釈ガスとしては希ガス(He、Ar、Xe、Kr、Rn)、窒素、水素などを用いることができる。ドーピングガスとしては、例えば、ジボラン(B)、アルキルアルミ、アルキルガリウムなどを用いることができる。例えば、DEZに対するBのガス組成比は0.05vol%以上が好ましい。DEZ、水は常温常圧で液体なので、加熱蒸発、バブリング、噴霧などの方法で気化させてから、供給することができる。
本発明において、酸化亜鉛層の平均膜厚は限定されるものではないが、500〜4000nmであることが好ましく、さらに800〜1900nmであることがより好ましい。なぜなら、ZnO膜が薄すぎれば、光閉じ込め効果に有効に寄与する表面凹凸を十分に付与すること自体が困難となり、また透明電極として必要な導電性が得られにくく、逆に厚すぎればZnO膜自体による光吸収により、ZnOを透過し光電変換ユニットへ到達する光量が減るため、変換効率が低下するからである。さらに、厚すぎる場合は、成膜時間の増大によりその製膜コストが増大する。
前記酸化亜鉛層の表面凹凸は、薄膜光電変換装置に適した光閉じ込め効果を得るために、透光性基板上に酸化亜鉛層を形成した状態で、10〜50%程度のヘイズ率を有することが好ましい。このようなヘイズ率を有する酸化亜鉛層の表面凹凸の平均高低差は10〜300nm程度である。酸化亜鉛層の表面凹凸が小さすぎる場合は十分な光閉じ込め効果を得ることができず、逆に表面凹凸が大きすぎる場合は光電変換装置に電気的および機械的な短絡を生じさせる原因となりうることから、光電変換装置の特性低下を引き起こす場合がある。
以下、本発明による実施例を説明する。本発明はその趣旨を超えない限り以下の実施例に限定されるものではない。
(比較例1)
本発明の比較例1として、酸化亜鉛層のラマンスペクトルピーク強度比E2(high)/A1(LO)=1.0となるZnO膜を形成した酸化亜鉛層を作製した。ラマンスペクトルは、顕微ラマン散乱分光装置を用いた。具体的には、厚み4mm、360mm×465mmのガラス基板の透光性基板上に前記ラマンスペクトルピーク強度比を有する酸化亜鉛層を低圧熱CVD法で形成した。この酸化亜鉛層は、基板温度を160℃、圧力25Pa、気化したDEZ(ジエチル亜鉛)の流量200sccm、気化した水の流量350sccm、希釈流量200sccm、水素流量400sccmで形成した。酸化亜鉛層の膜厚は、2300nmであり、初期シート抵抗は6Ω/□であった。作製した透明導電膜付基板の85℃、85%RH環境試験前後のシート抵抗変化率(試験後シート抵抗/試験前シート抵抗)は、5.8であった。
(実施例1)
本発明の実施例1として、酸化亜鉛層のラマンスペクトルピーク強度比E2(high)/A1(LO)=3.5となるZnO膜を形成した酸化亜鉛層を作製した。具体的には、厚み4mm、360mm×465mmのガラス基板の透光性基板上に前記ラマンスペクトルピーク強度比を有する酸化亜鉛層を低圧熱CVD法で形成した。この酸化亜鉛層は、基板温度を160℃、圧力25Pa、気化したDEZの流量200sccm、気化した水の流量600sccm、希釈流量200sccm、水素流量400sccmで形成した。酸化亜鉛層の膜厚は、2100nmであり、初期シート抵抗は6Ω/□であった。作製した光電変換装置用基板の85℃、85%RH環境試験前後のシート抵抗変化率は、2.5であった。
(実施例2)
本発明の実施例2として、酸化亜鉛層のラマンスペクトルピーク強度比E2(high)/A1(LO)=5.0となるZnO膜を形成した酸化亜鉛層を作製した。具体的には、厚み4mm、360mm×465mmのガラス基板の透光性基板上に前記ラマンスペクトルピーク強度比を有する酸化亜鉛層を低圧熱CVD法で形成した。この酸化亜鉛層は、基板温度を160℃、圧力25Pa、気化したDEZの流量200sccm、気化した水の流量700sccm、希釈流量200sccm、水素流量400sccmで形成した。酸化亜鉛層の膜厚は、1900nmであり、初期シート抵抗は6Ω/□であった。作製した光電変換装置用基板の85℃、85%RH環境試験前後のシート抵抗変化率は、1.3であった。
(実施例3)
本発明の実施例3として、酸化亜鉛層のラマンスペクトルピーク強度比E2(high)/A1(LO)=7.0となるZnO膜を形成した酸化亜鉛層を作製した。具体的には、厚み4mm、360mm×465mmのガラス基板の透光性基板上に前記ラマンスペクトルピーク強度比を有する酸化亜鉛層を低圧熱CVD法で形成した。この透明電極層は、基板温度を160℃、圧力25Pa、気化したDEZの流量200sccm、気化した水の流量800sccm、希釈流量200sccm、水素流量400sccmで形成した。酸化亜鉛層の膜厚は、1700nmであり、初期シート抵抗は8Ω/□であった。作製した光電変換装置用基板の85℃、85%RH環境試験前後のシート抵抗変化率は、1.1であった。
ラマンスペクトル測定結果を図1に、シート抵抗変化率の結果を図2に示す。
比較例1及び実施例1の結果は、酸化亜鉛層のラマンスペクトルピーク強度比E(high)/A(LO)を1.0から3.5と高めることで、85℃、85%RH環境試験前後シート抵抗変化率を5.8から2.5まで低減でき、耐湿性が向上すること示している。また、実施例2及び実施例3の結果は、ラマンスペクトルピーク強度比E(high)/A(LO)≧5.0とすることで、85℃、85%RH環境試験前後シート抵抗変化率≒1とすることが可能となり、シート抵抗変化のほとんどない耐湿性の高い透明導電膜付基板を実現できることを示している。

Claims (5)

  1. 光入射側から順に、少なくとも透光性基板と、酸化亜鉛層とを備える透明導電膜付基板であって、酸化亜鉛層のラマンスペクトルピーク強度比をE2(high)/A1(LO)>2.0としたことを特徴とする、透明導電膜付基板。
  2. 前記酸化亜鉛層のラマンスペクトルピーク強度比をE2(high)/A1(LO)≧5.0としたことを特徴とする、請求項1に記載の透明導電膜付基板。
  3. 請求項1または2に記載の透明導電膜付基板を製造する方法であって、原料に少なくとも水とジエチル亜鉛を用いる低圧熱CVD法により、水/ジエチル亜鉛の流量比2.0以上で、透光性基板上にバルク酸化亜鉛層が形成されることを特徴とする、透明導電膜付基板の製造方法。
  4. 前記バルク酸化亜鉛層を形成後に、水/ジエチル亜鉛の流量比が2.0以下で酸化亜鉛層の最表面部が形成されることを特徴とする、請求項3に記載の透明導電膜付基板の製造方法。
  5. 前記酸化亜鉛層の最表面に還元性プラズマ処理を施すことを特徴とする、請求項3または4に記載の透明導電膜付基板の製造方法。
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