以下、本発明の実施形態について図に基づいて説明する。なお、以下の各実施形態相互において、互いに同一もしくは均等である部分には、図中、同一符号を付してある。
(第1実施形態)
以下、図面を用いて本発明の第1実施形態を説明する。図1は、本実施形態の車両用空調装置1の全体構成図であり、図2は、車両用空調装置1の電気制御部の構成を示すブロック図である。本実施形態では、この車両用空調装置1を、内燃機関であるエンジンEGおよび走行用電動モータから車両走行用の駆動力を得るハイブリッド車両に適用している。
本実施形態のハイブリッド車両は、車両停車時に外部電源(商用電源)から供給された電力を、車両に搭載されたバッテリ(車載バッテリ)81に充電可能なプラグインハイブリッド車両として構成されている。
このプラグインハイブリッド車両は、車両走行開始前の車両停車時に外部電源から供給された電力をバッテリ81に充電しておくことによって、走行開始時のようにバッテリ81の蓄電残量SOCが予め定めた走行用基準残量以上になっているときには、主に走行用電動モータの駆動力によって走行する運転モードとなる。以下、この運転モードをEV運転モードという。また、EV運転モードは特許請求の範囲に記載された第2運転モードに対応している。
一方、車両走行中にバッテリ81の蓄電残量SOCが走行用基準残量よりも低くなっているときには、主にエンジンEGの駆動力によって走行する運転モードとなる。以下、この運転モードをHV運転モードという。また、HV運転モードは特許請求の範囲に記載された第1運転モードに対応している。
より詳細には、EV運転モードは、主に走行用電動モータが出力する駆動力によって車両を走行させる運転モードであるが、車両走行負荷が高負荷となった際にはエンジンEGを作動させて走行用電動モータを補助する。つまり、走行用電動モータから出力される走行用の駆動力(モータ側駆動力)がエンジンEGから出力される走行用の駆動力(内燃機関側駆動力)よりも大きくなる運転モードである。
換言すると、内燃機関側駆動力に対するモータ側駆動力の駆動力比(モータ側駆動力/内燃機関側駆動力)が、少なくとも0.5より大きくなっている運転モードであると表現することもできる。
一方、HV運転モードは、主にエンジンEGが出力する駆動力によって車両を走行させる運転モードであるが、車両走行負荷が高負荷となった際には走行用電動モータを作動させてエンジンEGを補助する。つまり、内燃機関側駆動力がモータ側駆動力よりも大きくなる運転モードである。換言すると、駆動力比(モータ側駆動力/内燃機関側駆動力)が、少なくとも0.5より小さくなっている運転モードであると表現することもできる。
本実施形態のプラグインハイブリッド車両では、このようにEV運転モードとHV運転モードとを切り替えることによって、車両走行用の駆動力をエンジンEGのみから得る通常の車両に対してエンジンEGの燃料消費量を抑制して、車両燃費を向上させている。また、このようなEV運転モードとHV運転モードとの切り替え、および、駆動力比の制御は、後述する駆動力制御装置70によって制御される。
さらに、エンジンEGから出力される駆動力は、車両走行用として用いられるのみならず、発電機80を作動させるためにも用いられる。そして、発電機80にて発電された電力および外部電源から供給された電力は、バッテリ81に蓄えることができ、バッテリ81に蓄えられた電力は、走行用電動モータのみならず、車両用空調装置1を構成する電動式構成機器をはじめとする各種車載機器に供給できる。
次に、本実施形態の車両用空調装置1の詳細構成を説明する。この車両用空調装置1は、車載されたバッテリ81から供給される電力による車室内の空調に加えて、車両走行前の車両停車時に外部電源から供給される電力によって車室内の空調(例えば、プレ空調)を実行可能に構成されている。
本実施形態の車両用空調装置1は、図1に示す冷凍サイクル10、室内空調ユニット30、図2に示す空調制御装置50等を備えている。
まず、室内空調ユニット30は、車室内最前部の計器盤(インストルメントパネル)の内側に配置されて、その外殻を形成するケーシング31内に送風機32、蒸発器15、ヒータコア36、PTCヒータ37等を収容したものである。
ケーシング31は、車室内に送風される送風空気の空気通路を形成しており、ある程度の弾性を有し、強度的にも優れた樹脂(例えば、ポリプロピレン)にて成形されている。ケーシング31内の送風空気流れ最上流側には、内気(車室内空気)と外気(車室外空気)とを切替導入する内外気切替手段としての内外気切替箱20が配置されている。
より具体的には、内外気切替箱20には、ケーシング31内に内気を導入させる内気導入口21および外気を導入させる外気導入口22が形成されている。さらに、内外気切替箱20の内部には、内気導入口21および外気導入口22の開口面積を連続的に調整して、ケーシング31内へ導入させる内気の風量と外気の風量との風量割合を変化させる内外気切替ドア23が配置されている。
従って、内外気切替ドア23は、ケーシング31内に導入される内気の風量と外気の風量との風量割合を変化させる吸込口モードを切り替える風量割合変更手段を構成する。より具体的には、内外気切替ドア23は、内外気切替ドア23用の電動アクチュエータ62によって駆動され、この電動アクチュエータ62は、後述する空調制御装置50から出力される制御信号によって、その作動が制御される。
また、吸込口モードとしては、内気導入口21を全開とするとともに外気導入口22を全閉としてケーシング31内へ内気を導入する内気モード、内気導入口21を全閉とするとともに外気導入口22を全開としてケーシング31内へ外気を導入する外気モード、さらに、内気モードと外気モードとの間で、内気導入口21および外気導入口22の開口面積を連続的に調整することにより、内気と外気の導入比率を連続的に変化させる内外気混入モードがある。
内外気切替箱20の空気流れ下流側には、内外気切替箱20を介して吸入した空気を車室内へ向けて送風する送風手段である送風機32(ブロア)が配置されている。この送風機32は、遠心多翼ファン(シロッコファン)を電動モータにて駆動する電動送風機であって、空調制御装置50から出力される制御電圧によって回転数(送風能力)が制御される。従って、この電動モータは、送風機32の送風能力変更手段を構成している。
送風機32の空気流れ下流側には、蒸発器15が配置されている。蒸発器15は、その内部を流通する冷媒と送風機32から送風された送風空気とを熱交換させて、送風空気を冷却する冷却手段として機能する。具体的には、蒸発器15は、圧縮機11、凝縮器12、気液分離器13および膨張弁14等とともに、蒸気圧縮式の冷凍サイクル10を構成している。
ここで、本実施形態に係る冷凍サイクル10の主要な構成について説明すると、圧縮機11は、エンジンルーム内に配置され、冷凍サイクル10において冷媒を吸入し、圧縮して吐出するものであり、吐出容量が固定された固定容量型圧縮機構11aを電動モータ11bにて駆動する電動圧縮機として構成されている。電動モータ11bは、インバータ61から出力される交流電圧によって、その作動(回転数)が制御される交流モータである。
また、インバータ61は、後述する空調制御装置50から出力される制御信号に応じた周波数の交流電圧を出力する。そして、この回転数制御によって、圧縮機11の冷媒吐出能力が変更される。従って、電動モータ11bは、圧縮機11の吐出能力変更手段を構成している。
凝縮器12は、エンジンルーム内に配置されて、内部を流通する冷媒と、室外送風機としての送風ファン12aから送風された車室外空気(外気)とを熱交換させることにより、圧縮機11吐出冷媒を凝縮させる室外熱交換器である。送風ファン12aは、空調制御装置50から出力される制御電圧によって稼働率、すなわち、回転数(送風空気量)が制御される電動式送風機である。
気液分離器13は、凝縮器12にて凝縮された冷媒を気液分離して余剰冷媒を蓄えるとともに、液相冷媒のみを下流側に流すレシーバである。膨張弁14は、気液分離器13から流出した液相冷媒を減圧膨張させる減圧手段である。蒸発器15は、膨張弁14にて減圧膨張された冷媒を蒸発させて、冷媒に吸熱作用を発揮させる室内熱交換器である。これにより、蒸発器15は、送風空気を冷却する冷却用熱交換器として機能する。
以上が本実施形態に係る冷凍サイクル10の主要構成の説明であり、以下、室内空調ユニット30の説明に戻る。ケーシング31内において、蒸発器15の空気流れ下流側には、蒸発器15通過後の空気を流す加熱用冷風通路33、冷風バイパス通路34といった空気通路、並びに、加熱用冷風通路33および冷風バイパス通路34から流出した空気を混合させる混合空間35が形成されている。
加熱用冷風通路33には、蒸発器15通過後の空気を加熱するためのヒータコア36およびPTCヒータ37が、送風空気流れ方向に向かってこの順に配置されている。ヒータコア36は、エンジンEGを冷却するエンジン冷却水(以下、単に冷却水という。)と蒸発器15通過後の送風空気とを熱交換させて、蒸発器15通過後の送風空気を加熱する加熱手段として機能する。
具体的には、ヒータコア36とエンジンEGは、冷却水配管によって接続されて、ヒータコア36とエンジンEGとの間を冷却水が循環する冷却水回路40が構成されている。そして、この冷却水回路40には、冷却水を循環させるための冷却水ポンプ40aが配置されている。この冷却水ポンプ40aは、空調制御装置50から出力される制御電圧によって回転数(冷却水循環流量)が制御される電動式の水ポンプである。
PTCヒータ37は、PTC素子(正特性サーミスタ)を有し、このPTC素子に電力が供給されることによって発熱して、ヒータコア36通過後の空気を加熱する補助加熱手段(補助空気加熱手段)としての電気ヒータである。なお、本実施形態のPTCヒータ37を作動させるために必要な消費電力は、冷凍サイクル10の圧縮機11を作動させるために必要な消費電力よりも少ない。
より具体的には、このPTCヒータ37は、図3に示すように、複数(本実施形態では、3本)のPTCヒータ37a、37b、37cから構成されている。なお、図3は、本実施形態のPTCヒータ37の電気的接続態様を示す回路図である。
図3に示すように、各PTCヒータ37a、37b、37cの正極側はバッテリ81側に接続され、負極側は各PTCヒータ37a、37b、37cが有する各スイッチ素子SW1、SW2、SW3を介して、グランド側へ接続されている。各スイッチ素子SW1、SW2、SW3は、各PTCヒータ37a、37b、37cが有する各PTC素子h1、h2、h3の通電状態(ON状態)と非通電状態(OFF状態)とを切り替えるものである。
さらに、各スイッチ素子SW1、SW2、SW3の作動は、空調制御装置50から出力される制御信号によって、独立して制御される。従って、空調制御装置50は、各スイッチ素子SW1、SW2、SW3の通電状態と非通電状態とを独立に切り替えることによって、各PTCヒータ37a、37b、37cのうち、通電状態となり加熱能力を発揮するものを切り替えて、PTCヒータ37全体としての加熱能力を変化させることができる。
一方、冷風バイパス通路34は、蒸発器15通過後の空気を、ヒータコア36およびPTCヒータ37を通過させることなく、混合空間35に導くための空気通路である。従って、混合空間35にて混合された送風空気の温度は、加熱用冷風通路33を通過する空気および冷風バイパス通路34を通過する空気の風量割合によって変化する。
そこで、本実施形態では、蒸発器15の空気流れ下流側であって、加熱用冷風通路33および冷風バイパス通路34の入口側に、加熱用冷風通路33および冷風バイパス通路34へ流入させる冷風の風量割合を連続的に変化させるエアミックスドア39を配置している。従って、エアミックスドア39は、混合空間35内の空気温度(車室内へ送風される送風空気の温度)を調整する温度調整手段を構成する。
より具体的には、エアミックスドア39は、エアミックスドア用の電動アクチュエータ63によって駆動される回転軸と、その一端側に回転軸が連結された板状のドア本体部を有して構成される、いわゆる片持ちドアで構成されている。また、エアミックスドア用の電動アクチュエータ63は、空調制御装置50から出力される制御信号によって、その作動が制御される。
さらに、ケーシング31の送風空気流れ最下流部には、混合空間35から空調対象空間である車室内へ温度調整された送風空気を吹き出す吹出口24〜26が配置されている。この吹出口24〜26としては、具体的に、車室内の乗員の上半身に向けて空調風を吹き出すフェイス吹出口24、乗員の足元に向けて空調風を吹き出すフット吹出口25、および、車両前面窓ガラス内側面に向けて空調風を吹き出すデフロスタ吹出口26が設けられている。
また、フェイス吹出口24、フット吹出口25、およびデフロスタ吹出口26の空気流れ上流側には、それぞれ、フェイス吹出口24の開口面積を調整するフェイスドア24a、フット吹出口25の開口面積を調整するフットドア25a、デフロスタ吹出口26の開口面積を調整するデフロスタドア26aが配置されている。
これらのフェイスドア24a、フットドア25a、デフロスタドア26aは、吹出口モードを切り替える吹出口モード切替手段を構成するものであって、図示しないリンク機構を介して、吹出口モードドア駆動用の電動アクチュエータ64に連結されて連動して回転操作される。なお、この電動アクチュエータ64も、空調制御装置50から出力される制御信号によってその作動が制御される。
また、吹出口モードとしては、フェイス吹出口24を全開してフェイス吹出口24から車室内乗員の上半身に向けて空気を吹き出すフェイスモード、フェイス吹出口24とフット吹出口25の両方を開口して車室内乗員の上半身と足元に向けて空気を吹き出すバイレベルモード、フット吹出口25を全開するとともにデフロスタ吹出口26を小開度だけ開口して、フット吹出口25から主に空気を吹き出すフットモード、およびフット吹出口25およびデフロスタ吹出口26を同程度開口して、フット吹出口25およびデフロスタ吹出口26の双方から空気を吹き出すフットデフロスタモードがある。
さらに、乗員が後述する操作パネル60のスイッチをマニュアル操作することによって、デフロスタ吹出口を全開してデフロスタ吹出口から車両フロント窓ガラス内面に空気を吹き出すデフロスタモードとすることもできる。
また、本実施形態の車両用空調装置1では、図示しない電熱デフォッガを備えている。電熱デフォッガは、車室内窓ガラスの内部あるいは表面に配置された電熱線であって、窓ガラスを加熱することで防曇あるいは窓曇り解消を行う窓ガラス加熱手段である。この電熱デフォッガについても空調制御装置50から出力される制御信号によって、その作動を制御できるようになっている。
さらに、本実施形態の車両用空調装置1では、乗員が着座する座席の表面温度を上昇させる補助加熱手段としてのシート空調装置90を備えている。具体的には、このシート空調装置90は、座席表面に埋め込まれた電熱線で構成され、電力を供給されることによって発熱するシート加熱手段である。
そして、室内空調ユニット10の各吹出口24〜26にから吹き出される空調風によって車室内の暖房が不十分となり得る際に作動させて乗員の暖房感を補う機能を果たす。なお、このシート空調装置90は、空調制御装置50から出力される制御信号によって作動が制御され、作動時には座席の表面温度を約40℃程度となるまで上昇させるように制御される。
次に、図2により、本実施形態の電気制御部について説明する。空調制御装置50および駆動力制御装置70は、CPU、ROMおよびRAM等を含む周知のマイクロコンピュータとその周辺回路から構成され、そのROM内に記憶された制御プログラムに基づいて各種演算、処理を行い、出力側に接続された各種機器の作動を制御する。
駆動力制御装置70の出力側には、エンジンEGを構成する各種エンジン構成機器および走行用電動モータへ交流電流を供給する走行用インバータ等が接続されている。各種エンジン構成機器としては、具体的に、エンジンEGを始動させるスタータ、エンジンEGに燃料を供給する燃料噴射弁(インジェクタ)の駆動回路(いずれも図示せず)等が接続されている。
また、駆動力制御装置70の入力側には、バッテリ81の端子間電圧VBを検出する電圧計、バッテリ81へ流れ込む電流ABinあるいはバッテリ81から流れる電流ABioutを検出する電流計、アクセル開度Accを検出するアクセル開度センサ、エンジン回転数Neを検出するエンジン回転数センサ、車速Vvを検出する車速センサ(いずれも図示せず)等の種々のエンジン制御用のセンサ群が接続されている。
空調制御装置50の出力側には、送風機32、圧縮機11の電動モータ11b用のインバータ61、送風ファン12a、各種電動アクチュエータ62、63、64、第1〜第3PTCヒータ37a、37b、37c、冷却水ポンプ40a、シート空調装置90等が接続されている。
また、空調制御装置50の入力側には、車室内温度Trを検出する内気センサ51、外気温Tamを検出する外気センサ52(外気温検出手段)、車室内の日射量Tsを検出する日射センサ53、圧縮機11吐出冷媒温度Tdを検出する吐出温度センサ54(吐出温度検出手段)、圧縮機11吐出冷媒圧力Pdを検出する吐出圧力センサ55(吐出圧力検出手段)、蒸発器15からの吹出空気温度(蒸発器温度)TEを検出する蒸発器温度センサ56(蒸発器温度検出手段)、エンジンEGから流出した冷却水の冷却水温度Twを検出する冷却水温度センサ58、車室内の窓ガラス近傍の車室内空気の相対湿度を検出する湿度検出手段としての湿度センサ、窓ガラス近傍の車室内空気の温度を検出する窓ガラス近傍温度センサ、および窓ガラス表面温度を検出する窓ガラス表面温度センサ等の種々の空調制御用のセンサ群が接続されている。
なお、本実施形態の蒸発器温度センサ56は、具体的に蒸発器15の熱交換フィン温度を検出している。もちろん、蒸発器温度センサ56として、蒸発器15のその他の部位の温度を検出する温度検出手段を採用してもよいし、蒸発器15を流通する冷媒自体の温度を直接検出する温度検出手段を採用してもよい。また、湿度センサ、窓ガラス近傍温度センサ、および窓ガラス表面温度センサの検出値は、窓ガラス表面の相対湿度RHWを算出するために用いられる。
さらに、空調制御装置50の入力側には、車室内前部の計器盤付近に配置された操作パネル60に設けられた各種空調操作スイッチからの操作信号が入力される。操作パネル60に設けられた各種空調操作スイッチとしては、具体的に、車両用空調装置1の作動スイッチ、オートスイッチ、運転モードの切替スイッチ、吹出口モードの切替スイッチ、送風機32の風量設定スイッチ、車室内温度設定スイッチ、現在の車両用空調装置1の作動状態等を表示する表示部等が設けられている。
オートスイッチは、乗員の操作によって車両用空調装置1の自動制御を設定あるいは解除する自動制御設定手段である。車室内温度設定スイッチは、乗員の操作によって車室内目標温度Tsetを設定する目標温度設定手段である。
また、空調制御装置50および駆動力制御装置70は、電気的に接続されて通信可能に構成されている。これにより、一方の制御装置に入力された検出信号あるいは操作信号に基づいて、他方の制御装置が出力側に接続された各種機器の作動を制御することもできる。例えば、空調制御装置50が駆動力制御装置70へエンジンEGの要求信号を出力することによって、エンジンEGの作動を要求することが可能となっている。なお、駆動力制御装置70では、空調制御装置50からのエンジンEGの作動を要求する要求信号(作動要求信号)を受信すると、エンジンEGの作動の要否を判定し、その判定結果に応じてエンジンEGの作動を制御する。
ここで、空調制御装置50および駆動力制御装置は、その出力側に接続された各種制御対象機器を制御する制御手段が一体に構成されたものであるが、それぞれの制御対象機器の作動を制御する構成(ハードウェアおよびソフトウェア)が、それぞれの制御対象機器の作動を制御する制御手段を構成している。
例えば、空調制御装置50のうち、送風手段である送風機32の作動を制御して、送風機32の送風能力を制御する構成が送風能力制御手段50aを構成し、圧縮機11の電動モータ11bに接続されたインバータ61から出力される交流電圧の周波数を制御して、圧縮機11の冷媒吐出能力を制御する構成が圧縮機制御手段を構成し、吹出口モードの切り替えを制御する構成が吹出口モード切替手段50bを構成し、冷却手段である蒸発器15の冷却能力を制御する構成が冷却能力制御手段50cを構成し、加熱手段であるヒータコア36の加熱能力を制御する構成が加熱能力制御手段を構成し、さらに、補助加熱手段であるPTCヒータ37やシート空調装置90の加熱能力を制御する構成が補助加熱制御手段50dを構成している。
また、空調制御装置50における駆動力制御装置70と制御信号の送受信を行う構成が、要求信号出力手段50fを構成している。また、駆動力制御装置70における空調制御装置50と制御信号の送受信を行うと共に、要求信号出力手段50f等からの出力信号に応じてエンジンEGの作動の要否を決定する構成(作動要否決定手段)が、信号通信手段70aを構成している。なお、本実施形態における空調制御装置50の要求信号出力手段50f、および駆動力制御装置70の信号通信手段70aは、加熱手段であるヒータコア36の加熱能力を調整するためにエンジンEGの作動を制御する作動制御手段を構成している。
次に、図4〜図12により、上記構成における本実施形態の車両用空調装置1の作動を説明する。図4は、本実施形態の車両用空調装置1のメインルーチンとしての制御処理を示すフローチャートである。この制御処理は、車両用空調装置1を構成する電動式構成機器をはじめとする各種車載機器にバッテリ81や外部電源等から電力が供給された状態で、車両用空調装置1の作動スイッチが投入されるとスタートする。なお、図4〜図12中の各制御ステップは、空調制御装置50が有する各種の機能実現手段を構成している。
まず、ステップS1では、フラグ、タイマ等の初期化、および上述した電動アクチュエータを構成するステッピングモータの初期位置合わせ等のイニシャライズが行われる。なお、このイニシャライズでは、フラグや演算値のうち、前回の車両用空調装置1の作動終了時に記憶された値が維持されるものもある。
次に、ステップS2では、操作パネル60の操作信号等を読み込んでステップS3へ進む。具体的な操作信号としては、車室内温度設定スイッチによって設定される車室内目標温度Tset、吸込口モードスイッチの設定信号等がある。
次に、ステップS3では、空調制御に用いられる車両環境状態の信号、すなわち上述のセンサ群51〜58の検出信号や、外部電源からの電力の供給状態を示す電力状態信号等を読み込む。なお、電力状態信号が、外部電源から車両に電力を供給可能な状態(プラグイン状態)を示す場合には、外部電源フラグがONされ、外部電源から車両に電力を供給できない状態(プラグアウト状態)を示す場合には、外部電源フラグがOFFされる。
また、このステップS3では、駆動力制御装置70の入力側に接続されたセンサ群の検出信号、および駆動力制御装置70から出力される制御信号等の一部も、駆動力制御装置70から読み込んでいる。
次に、ステップS4では、車室内吹出空気の目標吹出温度TAOを算出する。目標吹出温度TAOは、以下の数式F1により算出される。
TAO=Kset×Tset−Kr×Tr−Kam×Tam−Ks×Ts+C…(F1)
ここで、Tsetは車室内温度設定スイッチによって設定された車室内設定温度、Trは内気センサ51によって検出された車室内温度(内気温)、Tamは外気センサ52によって検出された外気温、Tsは日射センサ53によって検出された日射量である。Kset、Kr、Kam、Ksは制御ゲインであり、Cは補正用の定数である。
なお、目標吹出温度TAOは、車室内を所望の温度に保つために車両用空調装置1が生じさせる必要のある熱量に相当するもので、車両用空調装置1に要求される空調熱負荷として捉えることができる。
続くステップS5〜S13では、空調制御装置50に接続された各種機器の制御状態が決定される。まず、ステップS5では、エアミックスドア39の目標開度SWを目標吹出温度TAO、蒸発器温度センサ56によって検出された吹出空気温度TE、冷却水温度Twに基づいて算出する。
ステップS5の詳細については、図5のフローチャートを用いて説明する。まず、ステップS51では、以下数式F2により仮のエアミックス開度SWを算出して、ステップS52へ進む。
SWdd=[{TAO−(TE+2)}/{MAX(10、Tw−(TE+2))}]×100(%)…(F2)
なお、数式F2の{MAX(10、Tw−(TE+2))}とは、10およびTw−(TE+2)のうち大きい方の値を意味している。
続く、ステップS52では、ステップS51にて算出された仮のエアミックス開度SWddに基づいて、予め空調制御装置50に記憶された制御マップを参照して、エアミックス開度SWを決定して、ステップS6へ進む。なお、この制御マップでは、図5のステップS52に示すように、仮のエアミックス開度SWddに対するエアミックス開度SWの値を非線形的に決定している。
これは、前述の如く、本実施形態では、エアミックスドア39として片持ちドアを採用しているために、エアミックス開度SWの変化に対する実際の送風空気の流れ方向から見た冷風バイパス通路34の開口面積および加熱用冷風通路33の開口面積の変化が非線形的な関係となるからである。
次に、ステップS6では、送風機32の送風能力(具体的には、電動モータに印加するブロワモータ電圧)を決定する。
本実施形態では、車両燃費の低下やCO2の排出量の増加を抑制するために、外部電源からの電力によって車室内の暖房を実行する際には、後述するステップS11において、冷却水温度Tw等によらず、駆動力制御装置70へエンジンEGの作動を要求する要求信号(作動要求信号)を出力しないようにしている。
しかし、外部電源からの電力によって車室内の暖房を実行する際に、冷却水温度Twが低下していると、車室内へ低い温度の空気が送風されてしまうことがあり、乗員の快適性が悪化してしまう可能性がある。
そこで、本実施形態の車両用空調装置1は、外部電源からの電力によって車室内の暖房を実行する際には、送風機32の送風能力を低下させることで、乗員の快適性の悪化を抑制するようにしている。
このステップS6の詳細については、図6のフローチャートを用いて説明する。図6に示すように、まず、ステップS61では、操作パネル60のオートスイッチが投入(ON)されているか否かを判定する。この結果、オートスイッチが投入されていないと判定された場合は、ステップS62で、操作パネル60の風量設定スイッチによってマニュアル設定された乗員の所望の風量となるブロワモータ電圧が決定されて、ステップS7に進む。
具体的には、本実施形態の風量設定スイッチは、Lo→M1→M2→M3→Hiの5段階の風量を設定することができ、それぞれ4V→6V→8V→10V→12Vの順にブロワモータ電圧が高くなるように決定される。
一方、ステップS61にて、オートスイッチが投入されていると判定された場合は、ステップS63で、ステップS4にて決定されたTAOに基づいて予め空調制御装置50に記憶された制御マップを参照して第1仮ブロワレベルf1(TAO)を決定する。
本実施形態における第1仮ブロワレベルf1(TAO)を決定する制御マップは、TAOに対する第1仮ブロワレベルf1(TAO)の値がバスタブ状の曲線を描くように構成されている。
すなわち、ステップS63に示すように、TAOの極低温域(本実施形態では、−30℃以下)および極高温域(本実施形態では、80℃以上)では、送風機32の風量が最大風量付近となるように第1仮ブロワレベルf1(TAO)を高レベルに上昇させる。
また、TAOが極低温域から中間温度域に向かって上昇すると、TAOの上昇に応じて送風機32の送風量が減少するように、第1仮ブロワレベルf1(TAO)を減少させる。さらに、TAOが極高温域から中間温度域に向かって低下すると、TAOの低下に応じて、送風機32の風量が減少するように第1仮ブロワレベルf1(TAO)を減少させる。そして、TAOが所定の中間温度域内(本実施形態では、10℃〜40℃)に入ると、送風機32の風量が低い風量となるように第1仮ブロワレベルf1(TAO)を低レベル(下限値)に低下させる。なお、上述の説明から明らかなように、この第1仮ブロワ電圧f1(TAO)は、TAOに基づいて決定される値であるから、車室内設定温度Tset、内気温Tr、外気温Tam、日射量Tsに基づいて決定される値に基づいて決定されている。
続くステップS64では、日射センサ53によって検出された日射量に基づいて、予め空調制御装置50に記憶された制御マップを参照して第2仮ブロワレベルf(日射量)を決定する。
本実施形態における第2仮ブロワレベルf(日射量)を決定する制御マップは、日射量の増大に応じて、第2仮ブロワレベルf(日射量)が増大するように構成されている。すなわち、ステップS64で示すように、日射量が多量となる場合(例えば、700W/m2以上)には、第2仮ブロワレベルf(日射量)を高レベル(上限値)に上昇させ、日射量が少量(例えば、100W/m2以下)となる場合に、第2仮ブロワレベルf(日射量)を低レベル(下限値)に低下させる。また、日射量が所定の中間域内(例えば、100〜700W/m2)であれば、日射量の増加に応じて、第2仮ブロワレベルf1(日射量)を高レベルに上昇させる。
続くステップS65では、車室内の空調熱負荷に基づいて、車室内の暖房の要否を判定する。換言すれば、ステップS65では、車室内の空調熱負荷に相当するTAOに基づいて、車室内温度を外気温度に対して上昇させる空調を実行するか否かを判定する。なお、本実施形態のステップS65の判定処理は、車室内の暖房の要否を判定する暖房要否判定手段を構成している。
具体的には、ステップS65の判定処理では、TAOが予め定められた暖房判定閾値(本実施形態では25℃)以上であれば、車室内の暖房が必要と判定し、暖房要否判定値f2(TAO)を「0」に設定する。
一方、TAOが予め定められた冷房判定閾値(本実施形態では20℃)未満であれば、車室内の暖房が不要(車室内の冷房が必要)と判定し、暖房要否判定値f2(TAO)を「1」に設定する。なお、暖房要否判定値f2(TAO)は、ステップS65の判定処理の結果(暖房の要否判定結果)を示すもので、車室内の暖房が必要である場合に「0」が設定され、車室内の暖房が不要である場合に「1」が設定される。
ここで、冷房判定閾値は、頻繁に車室内の暖房の要否が切り替わることを防止するため、暖房判定閾値よりも所定の値(本実施形態では5℃)だけ低く設定されており、この所定値は、制御ハンチング防止のためのヒステリシス幅として設定されている。
続くステップS66では、送風機32の送風能力を決定するために電動モータに印加する送風機電圧に対応するブロワレベルを決定する。このステップS66では、外部電源フラグ、暖房要否判定値f2(TAO)に応じてブロワレベルを決定する。
具体的には、ステップS66に示すように、外部電源フラグがOFF(プラグアウト状態)、すなわち外部電源から車両に電力を供給できない状態であれば、暖房要否判定値f2(TAO)によらず、第1仮ブロワレベルf1(TAO)、および第2仮ブロワレベルf(日射量)のうち大きい値となる仮ブロワレベルをブロワレベルとして決定する。言い換えれば、以下の数式F3に基づいてブロワレベルを決定する。
ブロワレベル=MAX(f1(TAO)、f(日射量))…(F3)
また、外部電源フラグがON(プラグイン状態)であり、且つ、暖房要否判定値f2(TAO)が「0」となっている際には、送風機32の送風能力を低下させるために、ブロワレベルを各仮ブロワレベルf1(TAO)、f(日射量)の最低レベル(本実施形態では6)よりも低い「0」に決定する。すなわち、外部電源から供給された電力によって車室内の空調を実行する際に、ステップS65で車室内の暖房が必要と判定されていれば、車室内の暖房が不要と判定されている際よりも送風機32の送風能力を低下させるために、送風機32の作動を停止させる。
一方、外部電源フラグがON(プラグイン状態)となっている際に、暖房要否判定値f2(TAO)が「1」であれば、外部電源フラグがOFFとなっている場合と同様に、第1仮ブロワレベルf1(TAO)、および第2仮ブロワレベルf(日射量)のうち大きい値となる仮ブロワレベルをブロワレベルとして決定する。この処理によれば、一旦、外部電源から電力が供給され、且つ、ステップS65にて車室内の暖房が必要と判定されたとしても、その後、日射や輻射等により車室内の温度が上昇して車室内の暖房が不要と判定されたときには、ブロワレベルを「0」に決定する処理を中止することとなる。
続くステップS67では、ステップS66にて決定したブロワレベルに基づいて、予め空調制御装置50に記憶された制御マップを参照して、送風機電圧(ブロワモータ電圧)を決定する。
次のステップS7では、吸込口モード、すなわち内外気切替箱の切替状態を決定する。この吸込口モードもTAOに基づいて、予め空調制御装置50に記憶された制御マップを参照して決定する。本実施形態では、基本的に外気を導入する外気モードが優先されるが、TAOが極低温域となって高い冷房性能を得たい場合等に内気を導入する内気モードが選択される。さらに、外気の排ガス濃度を検出する排ガス濃度検出手段を設け、排ガス濃度が予め定めた基準濃度以上となったときに、内気モードを選択するようにしてもよい。
次のステップS8では、吹出口モードを決定する。この吹出口モードも、TAOに基づいて、予め空調制御装置50に記憶された制御マップを参照して決定する。
本実施形態では、図7に示すように、TAOが低温域から高温域へと上昇するにつれて吹出口モードをフェイスモード→バイレベルモード→フットモードへと順次切り替える。
従って、夏季は主にフェイスモード、春秋季は主にバイレベルモード、そして冬季は主にフットモードが選択され易くなる。さらに、湿度センサの検出値から窓ガラスに曇りが発生する可能性が高い場合には、フットデフロスタモードあるいはデフロスタモードを選択するようにしてもよい。
次のステップS9では、圧縮機11の冷媒吐出能力(具体的には、回転数(rpm))を決定する。このステップS9では、ステップS4で決定したTAO等に基づいて、予め空調制御装置50に記憶されている制御マップを参照して、蒸発器15からの吹出空気温度TEの目標吹出温度TEOを決定する。
そして、この目標吹出温度TEOと吹出空気温度TEの偏差En(TEO−TE)を算出し、今回算出された偏差Enから前回算出された偏差En−1を減算した偏差変化率Edot(En−(En−1))とを用いて、予め空調制御装置50に記憶されたメンバシップ関数とルールとに基づいたファジー推論に基づいて、前回の圧縮機回転数fCn−1に対する回転数変化量Δf_Cを求める。
また、本実施形態の空調制御装置50に記憶されたメンバシップ関数とルールでは、上述の偏差Enと偏差変化率Edotに基づいて蒸発器15の着霜が防止されるようにΔf_Cが決定される。さらに、前回の圧縮機回転数fn−1に回転数変化量Δf_Cを加算した値を今回の圧縮機回転数fnとして更新する。なお、この圧縮機回転数fnの更新は、1秒毎の制御周期で実行される。
次のステップS10では、PTCヒータ37の作動本数および電熱デフォッガの作動状態を決定する。まず、PTCヒータ37の作動本数の決定について説明すると、ステップS10では、外気温Tam、ステップS51にて決定した仮のエアミックス開度SWdd、冷却水温度Twに応じて、PTCヒータ37の作動本数を決定する。
このステップS10の詳細については、図8のフローチャートを用いて説明する。まず、ステップS101では、外気温に基づいてPTCヒータ37の作動の要否を判定する。具体的には、外気センサ52が検出した外気温が所定温度(本実施形態では、26℃)よりも高いか否かを判定する。
ステップS101にて、外気温が26℃よりも高いと判定された場合は、PTCヒータ37による吹出温アシストは必要無いと判断して、ステップS105に進み、PTCヒータ37の作動本数を0本に決定する。一方、ステップS101で、外気温が26℃よりも低いと判定された場合は、ステップS102に進む。
ステップS102、S103では、仮のエアミックス開度SWddに基づいてPTCヒータ37作動の要否を決定する。ここで、仮のエアミックス開度SWddが小さくなることは、加熱用冷風通路33にて送風空気を加熱する必要性が少なくなることを意味していることから、仮のエアミックス開度SWddが小さくなるに伴ってPTCヒータ37を作動させる必要性も少なくなる。
そこで、ステップS102では、ステップS5で決定した仮のエアミックス開度SWddを予め定めた基準開度と比較して、仮のエアミックス開度SWddが第1基準開度(本実施形態では、100%)以下であれば、PTCヒータ37を作動させる必要は無いものとして、PTCヒータ作動フラグf(SW)=OFFとする。
一方、仮のエアミックス開度SWddが第2基準開度(本実施形態では、110%)以上であれば、PTCヒータ37を作動させる必要があるものとして、PTCヒータ作動フラグf(SW)=ONとする。なお、第1基準開度と第2基準開度との開度差は、制御ハンチング防止のためのヒステリシス幅として設定されている。
そして、ステップS103では、ステップS102で決定したPTCヒータ作動フラグf(SW)がOFFであれば、ステップS105に進み、PTCヒータ37の作動本数を0本に決定する。一方、PTCヒータ作動フラグf(SW)がONであれば、ステップS104へ進み、PTCヒータ37の作動本数を決定して、ステップS11へ進む。
ステップS104では、冷却水温度Twに基づいて、予め空調制御装置50に記憶された制御マップを参照してPTCヒータ37の作動本数を決定する。具体的には、冷却水温度Twが上昇過程にあるときは、冷却水温度Tw<第1基準温度T1であれば作動本数を3本とし、第1基準温度T1≦冷却水温度Tw<第2基準温度T2であれば作動本数を2本とし、第2基準温度T2≦冷却水温度Tw<第3基準温度T3であれば作動本数を1本とし、第3基準温度T3≦冷却水温度Twであれば作動本数を0本とする。
一方、冷却水温度Twが下降過程にあるときは、第4基準温度T4<冷却水温度Twであれば作動本数を0本とし、第5基準温度T5<冷却水温度Tw≦第4基準温度T4であれば作動本数を1本とし、第6基準温度T6<冷却水温度Tw≦第5所定温度T2であれば作動本数を2本とし、冷却水温度Tw≦第6基準温度T6であれば作動本数を3本としてステップS11へ進む
なお、各基準温度には、T3>T2>T4>T1>T5>T6の関係があり、本実施形態では、具体的に、T3=75℃、T2=70℃、T4=67.5℃、T1=65℃、T5=62.5℃、T6=57.5℃としている。また、上昇過程および下降過程における各基準温度の温度差は、制御ハンチング防止のためのヒステリシス幅(本実施形態では7.5℃)として設定されている。
また、電熱デフォッガについては、車室内の湿度および温度から窓ガラスに曇りが発生する可能性が高い場合、あるいは窓ガラスに曇りが発生している場合は、電熱デフォッガを作動させる。
次のステップS11では、空調制御装置50から駆動力制御装置70へ出力される要求信号を決定する。この要求信号としては、エンジンEGの作動要求信号(エンジンON要求信号)等がある。
ここで、車両走行用の駆動力をエンジンEGのみから得る通常の車両では、走行時に常時エンジンを作動させているので冷却水も常時高温となる。従って、通常の車両では冷却水をヒータコア36に流通させることで十分な暖房能力を発揮することができる。
これに対して、本実施形態のプラグインハイブリッド車両では、車両走行用の駆動力を走行用電動モータからも得ることができることから、エンジンEGの作動を停止させることがあり、車両用空調装置1にて車室内の暖房を行う際に、冷却水の温度が暖房用の熱源として充分な温度にまで上昇していない場合がある。
そこで、本実施形態の車両用空調装置1は、走行用の駆動力を出力させるためにエンジンEGを作動させる必要がない走行条件であっても、所定条件を満した場合には、エンジンEGの駆動力を制御する駆動力制御装置70に対してエンジンEGの作動を要求する要求信号(作動要求信号)を出力して、冷却水温度を暖房用の熱源として充分な温度となるまで上昇させるようにしている。
ステップS11の詳細については、図9のフローチャートを用いて説明する。まず、ステップS1101では、冷却水温度Twに基づくエンジンEGの作動要求信号あるいは作動停止信号の出力を行うか否かの判定に用いる判定閾値としてのエンジンON水温TwonおよびエンジンOFF水温Twoffを決定する。なお、エンジンON水温Twonは、停止要求信号を出力することを決定する判定基準となる閾値であり、エンジンOFF水温Twoffは、エンジンEGの作動停止信号を出力することを決定する判定基準となる閾値である。
つまり、エンジンOFF水温Twoffは、駆動力制御装置70がエンジンEGを作動させて冷却水温度Twを昇温させる際の上限温度となる値である。つまり、駆動力制御装置70は、冷却水温度Twを昇温させる際に、冷却水温度TwがエンジンOFF水温TwoffとなるまでエンジンEGを作動させることになる。従って、本実施形態の制御ステップS1101は、上限温度決定手段を構成している。
具体的には、エンジンOFF水温Twoffは、車両用空調装置1が充分な暖房能力を発揮するために望ましい冷却水温度Twと、予め定められた基準温度(本実施形態では70℃)のうち小さい方の値に決定する。
ここで、車両用空調装置1が充分な暖房能力を発揮するために望ましい冷却水温度Twは、以下の数式F3を用いて算出する。
Tw={(TAO−ΔTptc)−(TE×0.2)}/0.8…(F3)
なお、ΔTptcは、PTCヒータ37の作動による吹出温上昇量、すなわち、各吹出口24〜26から車室内へ吹き出される空気の温度(吹出温)のうち、PTCヒータ37の発熱分が寄与した温度上昇量である。このΔTptcは、PTCヒータ37の作動本数の増加に伴って高い値が設定される。例えば、PTCヒータ37の作動本数が0本であればΔTptc=0℃、作動本数が1本であればΔTptc=3℃、作動本数が2本であればΔTptc=6℃、作動本数が3本であればΔTptc=9℃となるように設定されている。
ここで、冷却水目標温度f(TAO)から吹出温上昇量ΔTptcを減算した値は、車両用空調装置1が充分な暖房能力を発揮するために望ましい冷却水温度TwからPTCヒータ37を作動させることによる温度上昇分を減算した値なので、この温度をエンジンOFF水温Twoffとすれば、車両用空調装置1に確実に充分な暖房能力を発揮させることができる。
また、車両用空調装置1が充分な暖房能力を発揮するために望ましい冷却水温度Twと比較する基準温度は、確実にエンジンの作動停止信号を出力するための保護用の値として決定された値である。
一方、エンジンON水温Twonは、頻繁にエンジンがON/OFFするのを防止するため、エンジンOFF水温Twoffよりも所定の値(本実施形態では、5℃)だけ低く決定されており、この所定の値は、制御ハンチング防止のためのヒステリシス幅として設定されている。
続くステップS1102では、冷却水温度Twに応じて、エンジンEGの作動要求信号あるいは作動停止信号を出力するか否かの仮の要求信号フラグf(Tw)を決定する。具体的には、冷却水温度TwがステップS1101で決定されたエンジンON水温Twonより低ければ、仮の要求信号フラグf(Tw)=ONとしてエンジンEGの作動要求信号を出力することを仮決定し、冷却水温度TwがエンジンOFF水温Twoffより高ければ、仮の要求信号フラグf(Tw)=OFFとしてエンジンEGの作動停止信号を出力することを仮決定する。
続くステップS1103では、外部電源フラグ、吹出口モード、走行時の運転モード、目標吹出温度TAO、仮の要求信号フラグf(Tw)に基づいて、予め空調制御装置50に記憶されている制御マップを参照して、駆動力制御装置70へ出力される要求信号を決定する。
ここで、本実施形態のハイブリッド車両では、前述の如く、バッテリ81の蓄電残量SOCが予め定めた走行用基準残量以上となっている際には、バッテリ81の蓄電残量SOCが充分であるものとしてEV運転モードとし、バッテリ81の蓄電残量SOCが予め定めて走行用基準残量より少ない際には、バッテリ81の蓄電残量SOCが不充分であるものとして、HV運転モードとしている。
より具体的には、図10の図表に示すように運転モードが決定されている。また、乗員の操作によって、駆動力制御装置70に対して、EV運転モードを実行しないことを要求するEVキャンセルスイッチが投入(ON)されている際には、バッテリ81の蓄電残量SOCが充分であっても、HV運転モードとしている。
本実施形態のステップS1103では、外部電源により電力が供給されている際の環境負荷の増大を抑制しつつ、乗員の快適性の悪化を抑制するために、図9の図表に示すように、外部電源フラグがON(プラグイン状態)となっている際には、吹出口モード、走行時の運転モード、目標吹出温度TAO、仮の要求信号フラグf(Tw)によらず、駆動力制御装置70へ出力する要求信号をエンジンEGの作動を停止する信号に決定する。これにより、外部電源から供給された電力によって車室内の空調を実行する際には、駆動力制御装置70へエンジンEGの作動を要求する要求信号の出力が禁止される。
一方、外部電源フラグがOFF(プラグアウト状態)となっている際には、吹出口モード、走行時の運転モード、目標吹出温度TAO、仮の要求信号フラグf(Tw)に応じて、駆動力制御装置70へ出力する要求信号を決定する。
まず、走行時の運転モードのうち、HV運転モードは、アクセル開度といった車両走行負荷等に応じてエンジンEGが頻繁にオンされる運転モードであり、EV運転モードに比べて、冷却水温度が低くなってしまう状況が少ないことから、TAOや仮の要求信号フラグf(Tw)に応じて要求信号を決定する。
具体的には、外部電源フラグがOFFであって、且つ、吹出口モードがフェイスモードであり、さらに、走行時の運転モードがHV運転モードとなっている際には、TAOが予め定めた基準温度(本実施形態では20℃)未満であれば、仮の要求信号フラグf(Tw)によらず、エンジンEGを停止させる要求信号に決定し、TAOが基準温度以上である場合には、仮の要求信号フラグf(Tw)をそのまま要求信号に決定する。なお、基準温度は、吹出口モードをバイレベルモードからフェイスモードに切り替える閾値(本実施形態では28℃:図7参照)よりも低い温度が設定されている。
また、乗員の快適性の悪化を抑制しつつ、車両燃費の悪化の抑制を図るために、外部電源フラグがOFFであって、且つ、吹出口モードがフェイスモードであり、さらに、走行時の運転モードがEV運転モードとなっている際には、駆動力制御装置70へ出力する要求信号をエンジンEGの作動を停止する信号に決定する。
また、外部電源フラグがOFFであって、且つ、吹出口モードがフットモードやバイレベルモードといったフェイスモード以外になっている際には、乗員の下半身に低い温度の空気が吹き出されることで、乗員の快適性の著しい悪化を招く可能性がある。
このため、外部電源フラグがOFFであって、且つ、吹出口モードがフットモードやバイレベルモードといったフェイスモード以外である場合には、乗員の下半身に向けて低い温度の空気が吹き出されてしまうことを避けるために、運転モードやTAOによらず、仮の要求信号フラグf(Tw)をそのまま要求信号に決定する。
次に、ステップS12では、冷却水回路40にてヒータコア36とエンジンEGとの間で冷却水を循環させる冷却水ポンプ40aを作動させるか否かを決定する。このステップS12の詳細については、図11のフローチャートを用いて説明する。まず、ステップS121では、冷却水温度Twが吹出空気温度TEより高いか否かを判定する。
ステップS121にて、冷却水温度Twが吹出空気温度TE以下となっている場合は、ステップS124へ進み、冷却水ポンプ40aを停止(OFF)させることを決定する。その理由は、冷却水温度Twが吹出空気温度TE以下となっている場合に冷却水をヒータコア36へ流すと、ヒータコア36を流れる冷却水が蒸発器15通過後の空気を冷却してしまうことになるため、かえって吹出口からの吹出空気温度を低くしてしまうからである。
一方、ステップS121にて、冷却水温度Twが吹出空気温度TEより高い場合は、ステップS122へ進む。ステップS122では、送風機32が作動しているか否かが判定される。ステップS122にて、送風機32が作動していないと判定された場合は、ステップS124に進み、省動力化のために冷却水ポンプ40aを停止(OFF)させることを決定する。
一方、ステップS122にて送風機32が作動していると判定された場合は、ステップS123へ進み、冷却水ポンプ40aを作動(ON)させることを決定する。これにより、冷却水ポンプ40aが作動して、冷却水が冷媒回路内を循環するので、ヒータコア36を流れる冷却水とヒータコア36を通過する空気とを熱交換させて送風空気を加熱することができる。
次に、ステップS13では、シート空調装置90の作動要否を決定する。シート空調装置90の作動状態は、ステップS5で決定した目標吹出温度TAO、仮のエアミックス開度Sdd、ステップS2で読み込んだ外気温Tamに基づいて、予め空調制御装置50に記憶されている制御マップを参照して決定される。
このステップS13の詳細については、図12のフローチャートを用いて説明する。まず、ステップS1301では、外気温に基づいてシート空調装置90の作動の要否を判定する。具体的には、外気センサ52が検出した外気温が所定温度(本実施形態では、26℃)よりも高いか否かを判定する。
ステップS1301にて、外気温が26℃よりも高いと判定された場合は、シート空調装置90による補助暖房が必要ないと判断して、ステップS1305に進み、シート空調装置90を非作動(OFF)とすることを決定する。
一方、ステップS1301で、外気温が26℃よりも低いと判定された場合は、ステップS1302、S1303に進み、仮のエアミックス開度SWddに基づいてシート空調装置90の作動の要否を決定する。ここで、仮のエアミックス開度SWddが小さくなることは、加熱用冷風通路33にて送風空気を加熱する必要性が少なくなることを意味していることから、仮のエアミックス開度SWddが小さくなるに伴ってシート空調装置90を作動させる必要性も少なくなる。
そこで、ステップS1302では、ステップS5で決定した仮のエアミックス開度SWddを予め定めた基準開度と比較して、仮のエアミックス開度SWddが第1基準開度(本実施形態では、100%)以下であれば、シート空調装置90を作動させる必要は無いものとして、シート空調作動フラグf(SW)=OFFとする。
一方、仮のエアミックス開度SWddが第2基準開度(本実施形態では、110%)以上であれば、シート空調装置90を作動させる必要があるものとして、シート空調作動フラグf(SW)=ONとする。なお、第1基準開度と第2基準開度との開度差は、制御ハンチング防止のためのヒステリシス幅として設定されている。
そして、ステップS1303の判定処理において、ステップS1302で決定したシート空調作動フラグf(SW)がOFFであれば、ステップS1305に進み、シート空調装置90を非作動(OFF)とすることを決定して、ステップS14へ進む。
一方、ステップS1303の判定処理において、シート空調作動フラグf(SW)がONであれば、ステップS1304へ進み、シート空調装置90の加熱レベルを決定して、ステップS14へ進む。
ステップS1304では、TAOに基づいて予め空調制御装置50に記憶された制御マップを参照してシート空調装置90の加熱レベルを決定する。本実施形態の加熱レベルは、OFF→Lo→Me→Hiの4段階に設定することができ、それぞれLo→Me→Hiの順にシート空調装置90の加熱能力が増加するように構成されている。
具体的には、TAOが上昇過程にあるときは、TAO<第1基準温度T1であればシート空調装置90を非作動(OFF)とし、第1基準温度T1≦TAO<第2基準温度T2であれば加熱レベルを低レベルLoとし、第2基準温度T2≦TAO<第3基準温度T3であれば加熱レベルを中間レベルMeとし、第3基準温度T3≦TAOであれば加熱レベルを高レベルHiとしてステップS14へ進む。
一方、TAOが下降過程にあるときは、第4基準温度T4<TAOであれば加熱レベルを高レベルHiとし、第5基準温度T5<TAO≦第4基準温度T4であれば加熱レベルを中間レベルMeとし、第6基準温度T6<TAO≦第5基準温度T5であれば加熱レベルを低レベルLoとし、TAO≦第6基準温度T6であればシート空調装置90を非作動(OFF)としてステップS14へ進む。
なお、各基準温度には、T3>T4>T2>T5>T1>T6の関係があり、本実施形態では、具体的に、T3=75℃、T4=70℃、T2=65℃、T5=60℃、T1=55℃、T6=50℃としている。また、上昇過程および下降過程における各基準温度の温度差(本実施形態では5℃)は、制御ハンチング防止のためのヒステリシス幅として設定されている。
次に、ステップS14では、上述のステップS5〜S13で決定された制御状態が得られるように、空調制御装置50より各種機器32、12a、61、62、63、64、12a、37、40a、80に対して制御信号および制御電圧が出力される。さらに、要求信号出力手段50cから駆動力制御装置70に対して、ステップS11にて決定された要求信号が送信される。
次に、ステップS15では、制御周期τの間待機し、制御周期τの経過を判定するとステップS2に戻るようになっている。なお、本実施形態は制御周期τを250msとしている。これは、車室内の空調制御は、エンジン制御等と比較して遅い制御周期であってもその制御性に悪影響を与えないからである。これにより、車両内における空調制御のための通信量を抑制して、エンジン制御等のように高速制御を行う必要のある制御系の通信量を十分に確保することができる。
本実施形態の車両用空調装置1は、以上の如く作動するので、送風機32から送風された送風空気が、蒸発器15にて冷却される。そして蒸発器15にて冷却された冷風は、エアミックスドア39の開度に応じて、加熱用冷風通路33および冷風バイパス通路34へ流入する。
加熱用冷風通路33へ流入した冷風は、ヒータコア36およびPTCヒータ37を通過する際に加熱されて、混合空間35にて冷風バイパス通路34を通過した冷風と混合される。そして、混合空間35にて温度調整された空調風が、混合空間35から各吹出口を介して車室内に吹き出される。
この車室内に吹き出される空調風によって車室内の内気温Trが外気温Tamより低く冷やされる場合には、車室内の冷房が実現されており、一方、内気温Trが外気温Tamより高く加熱される場合には、車室内の暖房が実現されることになる。
さらに、本実施形態の車両用空調装置1では、制御ステップS1103で説明したように、外部電源から供給された電力によって車室内の空調を実行する際には、空調制御装置50から駆動力制御装置70へのエンジンEGの作動を要求する要求信号(作動要求信号)の出力を禁止している。これにより、外部電源から供給された電力によって車室内の空調を実行する際の車両燃費の低下やCO2の排出量の増加を抑制することができる。また、車両燃費の低下を抑制することができる。
さらに、制御ステップS66で説明したように、外部電源から供給された電力によって車室内の空調を実行する際に、車室内の暖房が必要である場合には、送風機32の作動を停止するので、車室内の暖房時において、車室内へ低い温度の空気が送風されてしまうことを抑制することができる。
従って、外部電源からの電力によって車室内の空調が実行されている際に、環境負荷の増大を抑制しつつ、乗員の快適性の悪化を抑制することが可能となる。
また、本実施形態のように、外部電源から供給された電力によって車室内の暖房を実行する際に、送風機32の作動を停止することで、冷却水ポンプ40a等の各種機器の作動頻度を低下させるがことができ、各種機器の故障頻度の低減を図ることもできる。
さらに、本実施形態では、外部電源から供給された電力によって車室内の暖房を実行する際に送風機32の送風能力を低下(作動停止)させる構成としているが、制御ステップS66で説明したように、その後、車室内の温度が上昇して暖房要否判定値f2(TAO)が「1」になった際には、送風機32の送風能力の低下を中止するので、車室内の温度が過度に上昇してしまうことを抑制することができ、乗員の快適性を確保することができる。
さらにまた、本実施形態の車両用空調装置1では、制御ステップS1103で説明したように、運転モードがEV運転モードであって、且つ、吹出口モードがフェイスモードとなっている際には、空調制御装置50から駆動力制御装置70へエンジンEGの作動を要求する要求信号(作動要求信号)を出力しないようにしている。
これにより、EV運転モード時におけるエンジンEGの作動頻度を低下させることができるので、EV運転モード時における車両燃費の低下を抑制することができる。この際、EV運転モード時におけるエンジンEGの作動を要求する要求信号の出力停止を、乗員の快適性に影響の少ないフェイスモード時に制限することで、車室内に向けて低い温度の空気が吹き出されることに起因する乗員の快適性の悪化を抑制することができる。
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態について説明する。本実施形態では、図4の制御ステップS6に示す送風機電圧(ブロワモータ電圧)の決定処理、および図4の制御ステップS10に示すPTC作動本数の決定処理が第1実施形態と相違している。なお、本実施形態では、第1実施形態と同様または均等な部分についての説明を省略、または簡略化して説明する。
本実施形態では、外部電源フラグがON(プラグイン状態)であり、車室内の暖房が必要である場合には、制御ステップS6にて送風機32を作動させつつも、その送風能力を低下させると共に、制御ステップS10にて補助加熱手段(補助空気加熱手段)であるPTCヒータ37の加熱能力を増加させるようにしている。
本実施形態のステップS6の詳細について、図13のフローチャートを用いて説明する。なお、図13に示すステップS61〜S65までの処理は、第1実施形態と同様であるため説明を省略する。
本実施形態のステップS66´では、外部電源フラグがOFF(プラグアウト状態)であれば、第1実施形態と同様に、暖房要否判定値f2(TAO)によらず、第1仮ブロワレベルf1(TAO)、および第2仮ブロワレベルf(日射量)のうち大きい値となる仮ブロワレベルをブロワレベルとして決定する。
また、外部電源フラグがON(プラグイン状態)であり、車室内の暖房が必要である場合には、送風機32を作動させつつも、その送風能力を低下させるために、ブロワレベルを「1」に決定する。つまり、外部電源から供給された電力によって車室内の空調を実行する際に、ステップS65で車室内の暖房が必要と判定されていれば、車室内の暖房が不要と判定されている際よりも送風機32の送風能力を低下させるために、ブロワレベルを各仮ブロワレベルf1(TAO)、f(日射量)の最低レベル(本実施形態では6)よりも低い「1」に決定する。
一方、外部電源フラグがON(プラグイン状態)であり、車室内の暖房が必要でない場合には、第1実施形態と同様に、第1仮ブロワレベルf1(TAO)、および第2仮ブロワレベルf(日射量)のうち大きい値となる仮ブロワレベルをブロワレベルとして決定する。
続くステップS67では、ステップS66´にて決定したブロワレベルに基づいて、予め空調制御装置50に記憶された制御マップを参照して、送風機電圧(ブロワモータ電圧)を決定する。
次に、本実施形態のステップS10の詳細について、図14のフローチャートを用いて説明する。なお、図14に示すステップS101〜S103までの処理は、第1実施形態と同様であるため説明を省略する。
本実施形態では、図14に示すように、ステップS103にて、ステップS102で決定したPTCヒータ作動フラグf(SW)がONであれば、ステップS106に進み、外部電源から電力が供給可能な状態(プラグイン状態)であるか否かを判定する。具体的には、ステップS106では、ステップS3にて設定された外電源フラグのON/OFFに基づいて判定する。
そして、ステップS106の判定処理で外部電源から電力が供給可能な状態でないと判定された場合には、ステップS104に進み、冷却水温度Twに基づいて、予め空調制御装置50に記憶された制御マップを参照してPTCヒータ37の作動本数を決定してステップS11へ進む。
一方、ステップS106の判定処理で外部電源から電力が供給可能な状態であると判定された場合には、ステップS107に進み、ステップS65で説明した暖房要否判定値f2(TAO)に基づいて、車室内の暖房の要否を判定する。
ステップS107の判定処理で車室内の暖房が不要と判定された場合には、ステップS105に進み、冷却水温度TwによらずPTCヒータ37の作動本数を0本に決定してステップS11へ進む。
一方、車室内の暖房が必要と判定された場合には、ステップS108に進み、PTCヒータ37による送風空気の加熱能力を増大させるために、冷却水温度TwによらずPTCヒータ37の作動本数を3本に決定してステップS11へ進む。すなわち、外部電源から電力が供給され、車室内の暖房が必要である際には、車室内の暖房が不要となる際よりも、PTCヒータ37の加熱能力を増加させる。
以上説明した本実施形態では、外部電源から電力が供給され、且つ、車室内の暖房が必要である際には、送風機32を作動させるものの送風機32の送風能力を低下させ、さらに、PTCヒータ37の加熱能力を増大させるようにしている。
このように、外部電源から電力が供給され、且つ、車室内の暖房が必要とされている際に、送風機32を低い送風能力で作動させる一方で、補助空気加熱手段であるPTCヒータ37にて送風空気を加熱することで、エンジンEGを作動させることなく、送風空気の温度を上昇させることができる。従って、車室内へ低い温度の空気が送風されてしまうことを抑制することができ、乗員の快適性の悪化をより効果的に抑制することが可能となる。
(第3実施形態)
次に、本発明の第3実施形態について説明する。本実施形態では、図4の制御ステップS13に示すシート空調装置90の作動要否決定処理が第1、第2実施形態と相違している。なお、本実施形態では、第1、第2実施形態と同様または均等な部分についての説明を省略、または簡略化して説明する。
本実施形態では、外部電源フラグがOFF(プラグアウト状態)であり、車室内の暖房が必要となっている際には、車室内の暖房が不要となっている際よりも、シート空調装置90の加熱能力を増加させるようにしている。
本実施形態のステップS13の詳細については、図15のフローチャートを用いて説明する。なお、図15に示すステップS1301〜S1303までの処理は、第1実施形態と同様であるため説明を省略する。
本実施形態では、ステップS1303の判定処理において、ステップS1302で決定したシート空調作動フラグf(SW)がONであれば、ステップS1306に進み、外部電源から電力が供給可能な状態(プラグイン状態)であるか否かを判定する。具体的には、ステップS106では、ステップS3にて設定された外電源フラグのON/OFFに基づいて判定する。
そして、ステップS1306の判定処理において、外部電源から電力が供給可能な状態でないと判定された場合には、ステップS1304に進み、TAOに基づいて予め空調制御装置50に記憶された制御マップを参照してシート空調装置90の加熱レベルを決定し、ステップS14へ進む。
一方、ステップS1306の判定処理において、外部電源から電力が供給可能な状態(プラグイン状態)であると判定された場合には、ステップS1307に進み、ステップS65で説明した暖房要否判定値f2(TAO)に基づいて、車室内の暖房の要否を判定する。
ステップS1307の判定処理で車室内の暖房が不要と判定された場合には、ステップS1305に進み、シート空調装置90を非作動(OFF)とすることを決定して、ステップS14へ進む。
一方、車室内の暖房が必要と判定された場合には、ステップS1308に進み、予め空調制御装置50に記憶された制御マップを参照してシート空調装置90の加熱レベルを決定する。具体的には、ステップS1308に示す制御マップを参照して、シート空調装置90の加熱能力がTAOの増加に応じて上昇するように段階的に加熱レベルを決定する。
ここで、ステップS1308に示す制御マップは、車室内の暖房が必要と判定された際には、車室内の暖房が不要と判定された際に比べて、シート空調装置90が非作動に決定されるよりも加熱レベルが低レベルLoに決定され易くするために、ステップS1304に示す制御マップよりも第1基準温度T1、および第6基準温度T6が低めに設定されている。なお、本実施形態では、第1基準温度T1が25℃に設定され、第6基準温度T6が24℃に設定されている。
これにより、車室内の暖房が必要と判定された際には、車室内の暖房が不要と判定された際よりも、シート空調装置90が作動する頻度を増加させることができ、シート空調装置90の加熱能力を増加させることができる。
以上説明した本実施形態では、外部電源から電力が供給され、且つ、車室内の暖房が必要とされている際に、送風機32の送風能力を低下させると共に、補助加熱手段(シート加熱手段)であるシート空調装置90の加熱能力を増大させることで、エンジンEGを作動させることなく、乗員に暖房感を補うことができる。
従って、本実施形態では、第1、第2実施形態と同様に、外部電源から電力が供給されている際に、環境負荷の増大を抑制しつつ、乗員の快適性の悪化を抑制することが可能となる。
なお、本実施形態は、第1実施形態の如く、外部電源から電力が供給され、且つ、車室内の暖房が必要とされている際に、エンジンEGの作動を禁止すると共に、送風機32の作動を停止する構成に適用することができる。
さらに、本実施形態は、第2実施形態の如く、外部電源から電力が供給され、且つ、車室内の暖房が必要とされている際に、エンジンEGの作動を禁止すると共に、送風機32を低い送風能力で作動させ、さらに、PTCヒータ37の加熱能力を増加させる構成に適用することもできる。
(他の実施形態)
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、各請求項に記載した範囲を逸脱しない限り、各請求項の記載文言に限定されず、当業者がそれらから容易に置き換えられる範囲にも及び、かつ、当業者が通常有する知識に基づく改良を適宜付加することができる。例えば、以下のように種々変形可能である。
(1)上述の各実施形態では、外部電源から電力が供給され、且つ、車室内の暖房が必要とされている際に、エンジンEGの作動を禁止すると共に、送風機32の送風能力を低下させる構成を採用する例について説明したが、これに限定されない。例えば、外部電源から電力が供給され、且つ、車室内の暖房が必要とされている際に、エンジンEGの作動を禁止すると共に、シート空調装置90やPTCヒータ37の加熱能力を増加させる構成を採用してもよい。
これによっても、外部電源から供給された電力によって車室内の暖房を実行する際に、エンジンEGを作動させることなく、車室内へ低い温度の空気が送風されてしまうことを抑制することができ、乗員の快適性の悪化を抑制することが可能となる。
(2)上述の各実施形態では、制御ステップS104等において、冷却水温度Twに応じてPTCヒータ37の作動本数を変更することで、PTCヒータ37の加熱能力を段階的に調整する構成を採用する例について説明したがこれに限定されない。例えば、単にPTCヒータ37のON/OFFにより加熱能力を調整する構成を採用してもよいし、PTCヒータ37へ印加する電圧を変更することで、PTCヒータ37の加熱能力を連続的に調整する構成を採用してもよい。
(3)上述の各実施形態では、制御ステップS1304、S1308等において、TAOに応じてシート空調装置90の加熱レベルを変更することで、シート空調装置90の加熱能力を段階的に調整する構成を採用する例について説明したがこれに限定されない。例えば、シート空調装置90のON/OFFにより加熱能力を調整する構成を採用してもよいし、シート空調装置90へ印加する電圧を変更することで、シート空調装置90の加熱能力を連続的に調整する構成を採用してもよい。
(4)上述の各実施形態では、補助空気加熱手段としてPTCヒータ37を採用した例を説明したが、電力を供給することによって発熱する補助加熱手段であれば、抵抗加熱方式、誘電加熱方式等のヒータを採用することができる。
(5)上述の各実施形態で説明したように、運転モードがEV運転モードであって、且つ、吹出口モードがフェイスモードとなっている際には、空調制御装置50から駆動力制御装置70へエンジンEGの作動を要求する要求信号(作動要求信号)を出力しない構成とすることが望ましいが、これに限定されない。例えば、運転モードがEV運転モードであって、且つ、吹出口モードがフェイスモードとなっている際には、空調制御装置50から駆動力制御装置70へエンジンEGの作動を要求する要求信号(作動要求信号)の出力頻度を低下させる構成としたり、当該出力頻度を変更しない構成としたりしてもよい。
(6)上述の各実施形態では、外部電源から電力が供給され、且つ、車室内の暖房が必要である場合に、エンジンEGの作動を禁止するために、空調制御装置50の要求信号出力手段50fが、駆動力制御装置70の信号通信手段(作動要否決定手段)70aに対してエンジンEGの作動を要求する要求信号の出力しないようにしているが、これに限定されない。
例えば、空調制御装置50が駆動力制御装置70に対して出力する要求信号を、駆動力制御装置70の信号通信手段70aがエンジンEGを作動させる条件をエンジンEGが作動しないように変化させる要求信号としてもよい。
また、外部電源から電力が供給され、且つ、車室内の暖房が必要である場合に、エンジンEGの作動を禁止するために、駆動力制御装置70の信号通信手段(作動要否決定手段)70aにおいて、空調制御装置50の要求信号出力手段50fからエンジンEGの作動を要求する要求信号を受信拒否(無視)するようにしてもよい。
(7)上述の実施形態では、本発明の車両用空調装置1を、プラグインハイブリッド車両の車両走行用の駆動力について詳細を述べていないが、本発明の車両用空調装置1は、エンジンEGおよび走行用電動モータの双方から直接駆動力を得て走行可能な、いわゆるパラレル型のハイブリッド車両に適用してもよい。
また、エンジンEGを発電機80の駆動源として用い、発電された電力をバッテリ81に蓄え、さらに、バッテリ81に蓄えられた電力を供給されることによって作動する走行用電動モータから駆動力を得て走行する、いわゆるシリアル型のハイブリッド車両に適用してもよい。