JP5475358B2 - 2次元電気泳動方法 - Google Patents
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上記課題を解決するための本願第1発明の構成は、1次元目電気泳動ゲルの長手方向のゲル長が5〜10cmであって、2次元目電気泳動ゲルの泳動方向基端部のゲル濃度を3〜6%とした、2次元電気泳動方法である。
上記課題を解決するための本願第2発明の構成は、前記第1発明において、2次元目電気泳動ゲルがポリアクリルアミドゲル(PAG)である、2次元電気泳動方法である。
上記課題を解決するための本願第3発明の構成は、前記第1発明又は第2発明において、2次元目電気泳動ゲルを用いて行う電気泳動がSDS−PAGEである、2次元電気泳動方法である。
上記課題を解決するための本願第4発明の構成は、前記第1発明〜第3発明のいずれかにおいて、2次元目電気泳動ゲルの泳動方向先端側の部分のゲル濃度が高く設定されている、2次元電気泳動方法である。
本願発明者は、電気泳動用のゲルが網目構造を持ち、そのゲル濃度がゲルの網目構造の密度を意味することから、第1に、2次元目電気泳動ゲルにおける泳動方向基端部のゲル濃度が、蛋白質が1次元目電気泳動ゲルより2次元目電気泳動ゲルへ移行する際の関門(バリア)になっていると考えた。第2に、蛋白質の2次元目電気泳動ゲルへの移行は、この関門のバリア性の高さと、移行しようとする蛋白質スポットの相互間隔及びスポット中の蛋白質濃度との相対関係によって規定されると考えた。
本発明で用いる2次元目電気泳動ゲルの種類は、必ずしも限定されないが、ポリアクリルアミドゲル(PAG)を好ましく例示することができる。
本発明の2次元電気泳動方法において、2次元目電気泳動の種類は必ずしも限定されないが、SDS−PAGEを好ましく例示することができる。
本発明の2次元電気泳動方法においては、必要に応じて(例えば、2次元目電気泳動における分離能を高くしたい場合等には)、2次元目電気泳動ゲルの泳動方向先端側の部分のゲル濃度を高く設定することにより、対応することができる。
本発明の1次元目電気泳動は特に限定されないが、等電点電気泳動を好ましく例示することができる。1次元目に等電点電気泳動を行う場合は、検体中の蛋白質等の分離対象物質が有する等電点を利用して分離を行う。正に荷電した分離対象物質は陰極側に移動し、他方、負に荷電した分離対象物質は陽極側に移動する。そして、等電点(pI)と等しいpHのゲルの位置で分離対象物質の正味の電荷がゼロとなり、泳動を止める。よって泳動開始後は荷電状態の化合物が移動するので、電流が流れることとなる。
1次元目電気泳動ゲルは特に限定されないが、等電点電気泳動用ゲルを好ましく例示できる。ゲルの種類としては、ポリアクリルアミドゲルを好ましく例示することができる。1次元目電気泳動ゲルの形態は、2次元目電気泳動ゲルの検体適用側(泳動方向基端部側)にそなえることができる限りにおいて特に限定されない。棒状、円柱状を好ましい形態として例示することができる。
1次元目電気泳動が等電点電気泳動である場合において、泳動に用いられる機器は特に限定されない。しかし、小型装置・高分解能・高スループットを実現するためには、ゲル長5〜10cmのゲルの使用に合致した電気泳動用機器が好ましい。
本発明の2次元目電気泳動は特に限定されないが、SDS−PAGEを好ましく例示することができる。当該SDS−PAGEは、検体に界面活性剤であるSDS(ドデシル硫酸ナトリウム)を加え、検体に含まれる蛋白質の高次構造を解くと共に、蛋白質のアミノ酸残基の荷電もSDSによって相対的に減少させたもとで、分子篩効果を利用して電気泳動を行うものである。
2次元目電気泳動ゲルは特に限定されないが、SDS−PAGE用ゲルを好ましく例示できる。ゲルの種類は特に限定されないが、ポリアクリルアミドゲルを好ましく例示することができる。この場合、ゲル濃度はアクリルアミド濃度を示すこととなる。
1次元目電気泳動用ゲルのゲル長が短く設定されているので、2次元目として行うSDS−PAGEでは、その電気泳動用ゲルにおける泳動方向基端部のゲル濃度が3〜6%程度の低濃度であることが好ましい。
本発明である2次元電気泳動方法に適用される検体は特に限定されないが、動物、植物、微生物由来の抽出物や、化学、生化学的に合成された化合物、蛋白質、核酸等を含む種々の検体が適用できる。検体が生物細胞、特に動物細胞、とりわけヒト細胞の抽出物であることが好ましい。
(蛋白質の抽出)
ヒトケラチノサイトからなる再構成3次元培養皮膚(株式会社ジャパン・ティッシュ・エンジニアリング製の商品名LabCyte EPI-MODEL 12)の培養物1枚(約1cm2)を、蛋白質抽出液であるmammalian cell lysis
kit;MCL1(SIGMA−ALDRICH社製)500μlに浸漬し、4℃で2時間、voltexを使用して振とう破砕した。この振とう破砕の後、蛋白質抽出液を回収した。上記のmammalian cell lysis kit;MCL1の組成は下記の通りである。
50mM Tris−HCl pH7.5
1mM EDTA
250mM NaCl
0.1%(w/v) SDS
0.5%(w/v) Deoxycholic acid sodium salt
1%(v/v) Igepal CA-630(SIGMA−ALDRICH社製の界面活性剤(Octylphenoxy)polyethoxyethanol)
適量のProtease Inhibitor
その後、2D-CleanUPキット〔GEヘルスケアバイオサイエンス株式会社(以下、GE社と省略する)製〕を使用して2回の沈殿操作を行った。第1回目の沈殿操作は、回収した上記蛋白質抽出液にTCAを加えて沈殿を行い、当該操作で生じた沈殿(TCA沈殿)を回収した。第2回目の沈殿操作は、回収した前記TCA沈殿にアセトンを加えて沈殿を行い、当該操作で得られた沈殿(検体)を回収した。回収した当該検体は全量500μgであった。
得られた検体の一部30μgを1次元目等電点電気泳動用ゲルの膨潤用緩衝液であるDeStreak Rehydration Solution(GE社製)130μlに溶解し、1次元目等電点電気泳動用の検体溶液(膨潤用検体溶液)とした。DeStreak Rehydration Solutionの組成は以下の通りである。
7M Thiourea
2M Urea
4%(w/v) CHAPS:
3-[(3-Cholamidopropyl)dimethylammonio]propanesulfonate
0.5%(v/v) IPGbuffer;GE社製
適量のDeStreakReagent;GE社製
適量のBPB(ブロモフェノールブルー)
(1次元目等電点電気泳動用ゲルの調製)
前記したIPG法により、本実施例で用いる1次元目の等電点電気泳動用ゲル(ポリアクリルアミドゲル)を調製した。このゲルは長さが7cmで径が0.3cmの棒状ゲルであり、T=4%、C=3%であって、pHの範囲を3〜10に設定した。
上記の1次元目等電点電気泳動用ゲルを前記した1次元目等電点電気泳動用の検体溶液(膨潤用検体溶液)130μlに浸漬した後、シリコンオイルを流し込み、シリコンオイルがゲルを覆った状態で、一晩、室温にて検体溶液をゲルに浸透させた。その後、当該シリコンオイルは廃棄した。
本実施例においては、電気泳動機器としてGE社製のIPGphor とCup Loading Manifold Light Kitを使用した。
上記の1次元目の等電点電気泳動を行った後、等電点電気泳動機器からゲルを取り外し、還元剤を含む平衡化緩衝液に当該ゲルを浸漬して、15分・室温にて振とうした。上記還元剤を含む平衡化緩衝液の組成は以下の通りである。
100mM Tris−HCl(pH8.0)
6M Urea
30%(v/v) Glycerol
2%(w/v) SDS
1%(w/v) DTT
次に、上記還元剤を含む平衡化緩衝液を除き、ゲルをアルキル化剤を含む平衡化緩衝液に浸漬して、15分・室温にて振とうし、SDS平衡化したゲルを得た。上記アルキル化剤を含む平衡化緩衝液の組成は以下の通りである。
100mM Tris−HCl(pH8.0)
6M Urea
30%(v/v) Glycerol
2%(w/v) SDS
2.5%(w/v) Iodoacetamide
(2次元目のSDS−PAGE)
本実施例においては、電気泳動機器としてInvitrogen社製のXCell SureLock Mini-Cellを使用した。2次元目泳動用ゲルはInvitrogen社製NuPAGE 4-12% Bis-Tris Gels(検体適用方向のゲル長は8cm、泳動方向のゲル長は8cm)を使用した。
また、以下の組成の泳動用緩衝液を調製し、使用した。
50mM MOPS
50mM Tris base
0.1%(w/v) SDS
1mM EDTA
又、本実施例においては上記泳動用緩衝液に0.5%(w/v)のアガロースS(ニッポンジーン社製:融解温度≦90℃、ゲル化温度37℃〜39℃のいわゆる高融点アガロース)と適量のBPB(ブロモフェノールブルー)を溶解させた接着用アガロース溶液を使用した。
SyproRuby(Invitrogen社製)を用いてゲルの蛍光染色を行った。
上記一連の処理を施した2次元目泳動用ゲルをTyphoon9400(GE社製)を使用した蛍光イメージのスキャンに供した。2次元電気泳動の結果を図1(a)に示す。左端はSDS−PAGEにおいて使用されたマーカーである。
第2実施例では、2D−DIGEを行った。第2実施例においては、第1実施例に記載した手順の内、「(検体溶液の調製)」の項の手順を下記「(2D−DIGEにおける検体溶液の調製)」の項の手順に変更し、又、「(ゲルの蛍光染色)」のプロセスを省略した以外は、第1実施例と同様の手順の操作を行った。
得られた検体の全量を下記の組成の溶液100μlに溶解した。
30mM Tris−HCl(pH8.5)
2M ThioUrea
7M Urea
4%(w/v) CHAPS
溶解したサンプル20μgに対しCydye(GE社製)160pmolを添加し、その溶液の入った容器を氷上で30分間静置した。その後10mMリジン水溶液を0.5μl添加して更に10分間、容器を氷上で静置した。このような処理を行った後、溶液を等電点電気泳動に適した量である130μlまでDeStreak Rehydration Solutionでメスアップした。メスアップ後充分に攪拌し、氷上で10分以上静置して、1次元目の等電点電気泳動用の検体溶液とした。
本比較例においては、以下の1)〜3)以外は、検体の調製からゲルの蛍光染色及び解析に至る全てのステップを第1実施例と同様に行った。
1)1次元目等電点電気泳動用ゲルの膨潤用緩衝液であるDeStreak Rehydration Solution(GE社製)340μlに溶解する検体の総量を270μgとした。
2)1次元目等電点電気泳動用ゲルの長手方向のゲル長を18cmと泳動距離を長くし、以下のプロトコルで等電点電気泳動を行った。
使用機器;クールホレスター(登録商標)IPG-IEF Type-PX(アナテック株式会社)
電圧プログラムを、(1)定電圧工程として500V定電圧で1000Vhrまで泳動を行い(当該工程終了前の泳動30分間の電流量の変化が5μA以内であった。)、(2)10700Vhrかけて3000Vまで除々に電圧を上昇させ、(3)その後3500V定電圧で総Vhrが46700Vhrになるまでとし、1次元目の等電点電気泳動を行った。なお、本比較例における等電点電気泳動においては電流値の上限は設けていない。
3)2次元目ゲルの検体適用方向のゲル長を20cmとし、泳動方向のゲル長を20cmとし、当該泳動方向のアクリルアミド濃度を12%で固定し、30mA定電流で3時間泳動した。
使用機器;クールホレスター(登録商標)SDS-PAGE Dual-200(アナテック株式会社製)。
本比較例においては、以下の変更点以外は、検体の調製からゲルの蛍光染色及び解析に至る全てのステップを第1実施例と同様に行った。
泳動方向基端部のゲル濃度 : 10%
泳動方向先端側の部分のゲル濃度 : 20%
(泳動方向基端部から泳動方向先端側の部分へは直線的な濃度勾配を設けている)
2)解析におけるコントラスト(明暗)を第1実施例に比べて高く設定した。
2,4,6 2次元目SDS−PAGE用ゲル
Claims (3)
- ポリアクリルアミドゲルを用いた1次元目電気泳動ゲルとして、その長手方向のゲル長が5〜10cmであって、ポリアクリルアミドゲルを用いた2次元目電気泳動ゲルの検体適用側にそなえることができる扁平な棒状の形態を備えたものを用い、前記2次元目電気泳動ゲルの泳動方向基端部のゲル濃度を3〜6%とし、かつ、電気泳動を完了した前記1次元目電気泳動ゲルを前記2次元目電気泳動ゲル上へ設置する際、ゲル化温度が35〜40℃である高融点アガロースを流し込んで前記両者のゲルを接着させることを特徴とする2次元電気泳動方法。
- 前記2次元電気泳動方法において、2次元目電気泳動ゲルを用いて行う電気泳動がSDS−PAGEであることを特徴とする請求項1に記載の2次元電気泳動方法。
- 前記2次元電気泳動方法において、2次元目電気泳動ゲルの泳動方向先端側の部分のゲル濃度が高く設定されていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の2次元電気泳動方法。
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