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JP5279182B2 - 車両の制御装置 - Google Patents

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Description

本発明は、車両の制御装置に関する。
下記特許文献1には、運転者の操舵による操舵トルクに基づいて補助操舵トルクを発生させる補助操舵トルク発生用制御手段(ソフトウエア)と、車両の旋回挙動に応じて同旋回挙動に対する操舵反力を発生させる反力発生用制御手段(ソフトウエア)とを備えた車両用操舵装置が開示されている。
特開平7−10023号公報
この装置では、補助操舵トルク発生用制御手段と反力発生用制御手段とが互いに独立した別個の制御ユニット(ハードウエア)内にそれぞれ備えられていて、反力発生用制御手段の故障が検出されたとき、反力発生用制御手段による前記操舵反力の発生が禁止されるようになっている。
即ち、操舵トルクの制御機能を達成するシステムが、互いに独立した別個の制御ユニット内にそれぞれ備えられた複数の制御手段から構成されている。これにより、センサ等の故障に対して前記システムのロバスト性が向上する。
ところで、このように、或る制御対象を制御する制御機能を達成するシステムが複数の制御手段(ソフトウエア)から構成される場合を考える。この場合、「或る制御手段による前記制御対象の基本制御」と「他の制御手段による前記基本制御を修正する修正制御」が干渉する場合がある。
例えば、制御対象が前輪の操舵角である場合において、ステアリングホイールの回転角度と車体速度等から前輪舵角を決定する基本制御に基づく前輪の転舵指示方向と、車両の走行安定性向上のために前輪舵角を修正してカウンタステア操作等を行う修正制御に基づく前輪の転舵指示方向が逆になる場合に基本制御と修正制御とが干渉する。
以下、本明細書では、或る制御に基づく制御対象の変化(指示)方向と他の制御に基づく同制御対象の変化(指示)方向とが逆となることを「制御干渉」と称呼する。本発明の目的は、このような制御干渉の発生を抑制し得る車両の制御装置を提供することにある。
本発明に係る車両の制御装置は、車両の状態に基づいて、前記車両の制御対象の基本制御量を決定するための演算を行う1つ又は複数の第1制御部(ソフトウエア)を有し前記1つ又は複数の第1制御部の演算結果に基づいて前記基本制御量を決定する第1制御手段(ソフトウエア)を備えた第1制御ユニット(ハードウエア)と、
前記車両の状態に基づいて、前記基本制御量の修正に使用される前記制御対象の修正制御量を決定するための演算を行う1つ又は複数の第2制御部(ソフトウエア)を有し前記1つ又は複数の第2制御部の演算結果に基づいて前記修正制御量を決定する第2制御手段(ソフトウエア)を備えた、前記第1制御ユニットとは独立した第2制御ユニット(ハードウエア)と、
前記基本制御量を前記修正制御量分だけ修正して得られる前記制御対象の目標制御量に基づいて前記制御対象を制御する制御対象制御手段(ソフトウエア、(ハードウエア))と、
前記制御対象が前記修正制御量を利用して修正されている状態である前記第2制御手段の作動状態にあるか否かを判定する判定手段(ソフトウエア)と、
前記第2制御手段の作動状態と判定されている場合、前記1つ又は複数の第1制御部の全ての演算結果を一定に保持する、又はゼロに向けて徐々に戻す制御停止手段(ソフトウエア)と、を備えている。
ここにおいて、前記制御対象制御手段は、前記第1制御ユニット内に備えられることが好ましく、前記判定手段は、前記第2制御ユニット内に備えられることが好ましく、前記制御停止手段は、前記第1制御ユニット内に備えられることが好ましい。
前記制御対象は、例えば、前輪の操舵角、後輪の操舵角、及びステアリングホイールの操舵トルク等である。以下、或る制御部の演算結果を一定に保持、又はゼロに向けて徐々に戻すことを、制御部の(制御機能の)「停止」と称呼する。
上記構成によれば、前記第2制御手段の作動状態と判定されている場合、即ち、第1制御手段による制御対象の制御(基本制御)と第2制御手段による制御対象の制御(修正制御)との間で制御干渉が発生し得る場合、基本制御に係わる第1制御部の全てが停止する。即ち、基本制御機能が完全に停止する。従って、基本制御と修正制御との間での制御干渉の発生が抑制され得る。また、制御対象の修正制御機能は継続して確保され得る。なお、本発明では、基本制御に係わる複数の第1制御部と修正制御に係わる複数の第2制御部との間で制御干渉が発生し得る組み合わせが存在していることが前提とされている。
ここで、前記判定手段は、例えば、前記修正制御量がゼロからゼロを含む所定範囲外の値に変化した時点から、前記修正制御量が前記所定範囲内に維持される期間が所定期間に達した時点までの間、前記第2制御手段の作動状態にあると判定するように構成され得る。
これにより、修正制御量が過渡的に極短期間だけ前記微小範囲内の値となる場合(例えば、修正制御量が「0」をまたいで変化する場合等)において、「第2制御手段の作動状態」と判定され続け得る。換言すれば、「第2制御手段の作動状態」と判定されている状態から「第2制御手段の作動状態」でないと一旦判定されその極短期間後に再び「第2制御手段の作動状態」と判定されるような、判定結果が短い時間間隔で不必要に反転する事態が防止され得る。この結果、基本制御と修正制御との間での制御干渉の発生が適切に抑制され得る。
或いは、前記判定手段は、前記修正制御量がゼロを含む所定範囲外であるとき、前記第2制御手段の作動状態にあると判定するように構成され得る。即ち、修正制御量が前記微小範囲内の場合、常に「第2制御手段の作動状態」でないと判定される。しかしながら、この場合、上述したように、修正制御量が過渡的に極短期間だけ前記微小範囲内の値となる場合において、判定結果が短い時間間隔で不必要に反転する事態が発生し得、この結果、基本制御と修正制御との間での制御干渉の発生が適切に抑制され得ない場合が生じ得る。以下、或る制御部の演算結果がゼロからゼロを含む所定範囲外の値に変化した時点から同制御部の演算結果が前記所定範囲内に維持される期間が所定期間に達した時点までの間、或いは、同演算結果がゼロを含む所定範囲外であるとき、同制御部の「作動状態」と称呼する。
また、前記第1制御部が複数存在する場合においては、前記制御停止手段は、前記第2制御手段の作動状態と判定されている場合、前記複数の第1制御部のうちの一部であってその演算結果に基づく前記制御対象の変化方向が前記1つ又は複数の第2制御部の演算結果の何れかに基づく前記制御対象の修正方向と逆になり得るもの、の少なくとも1つを停止するように構成されてもよい。
これによれば、基本制御と修正制御との間で制御干渉が発生し得る場合、基本制御に係わる複数の第1制御部のうち第2制御部の何れかと制御干渉し得るもののみが停止する。換言すれば、基本制御に係わる複数の第1制御部のうち第2制御部の何れかと制御干渉し得ないものは停止しない。従って、制御対象の基本制御機能を或る程度確保しながら基本制御と修正制御との間での制御干渉の発生が抑制され得る。
ところで、修正制御に係わる複数の第2制御部の一部のみが第1制御部の何れかと制御干渉し得る場合も考えられる。この場合、前記判定手段は、前記複数の第2制御部のうちの一部であってその演算結果に基づく前記制御対象の修正方向が前記1つ又は複数の第1制御部の演算結果の何れかに基づく前記制御対象の変化方向と逆になり得るもの、の演算結果の少なくとも1つが、ゼロからゼロを含む所定範囲外の値に変化した時点から同演算結果の少なくとも1つが前記所定範囲内に維持される期間が所定期間に達した時点までの間、或いは、同演算結果の少なくとも1つがゼロを含む所定範囲外であるとき、前記第2制御手段の作動状態にあると判定するように構成されてもよい。
これによれば、修正制御に係わる複数の第2制御部のうち第1制御部の何れかと制御干渉し得るものの少なくとも1つが作動状態にある場合、「第2制御手段の作動状態」と判定される。換言すれば、修正制御に係わる複数の第2制御部のうち第1制御部の何れかと制御干渉し得ないものが作動状態となっても、第1制御部の全て又は一部が停止されない。即ち、制御対象の基本制御機能が不必要に停止・制限される事態が防止され得る。
また、第1制御部及び第2制御部が共に複数存在する場合においては、前記判定手段は、前記第2制御部の作動状態(即ち、前記制御対象が前記第2制御部の演算結果を利用して修正されている状態)にあるか否かを前記各第2制御部のそれぞれについて独立して判定するように構成され、前記制御停止手段は、前記判定手段の判定結果に基づいて、前記複数の第1制御部の全て、又は前記複数の第1制御部の一部であってその演算結果に基づく前記制御対象の変化方向が前記作動状態と判定されている前記第2制御部の演算結果に基づく前記制御対象の修正方向と逆になり得るものの少なくとも1つ、の演算結果を一定に保持する、又はゼロに向けて徐々に戻すように構成されてもよい。
これによれば、修正制御に係わる複数の第2制御部のうちの何れが作動状態にあるかに依存して、同作動状態にある第2制御部と制御干渉し得る第1制御部が、選択的に停止される。従って、上記と同様、制御対象の基本制御機能が不必要に停止・制限される事態が防止され得る。加えて、作動状態にある第2制御部との制御干渉の程度に応じて停止される第1制御部が選択され得る。従って、制御対象の基本制御機能が不必要に停止・制限される事態がより確実に防止され得る。
以下、本発明による車両の制御装置の実施形態について図面を参照しつつ説明する。図1は、この実施形態の機能ブロック図である。図1に示すように、この実施形態は、或る制御対象(第1制御対象、例えば、前輪舵角)を制御するアクチュエータ(ACT)1の駆動制御を行うECUである第1制御ユニットU1(ハードウエア)と、他の制御対象(第2制御対象、例えば、車輪の制・駆動力)を制御するアクチュエータ(ACT)3の駆動制御を行うECUである第2制御ユニットU2(ハードウエア)とを備えている。第1制御ユニットU1と、第2制御ユニットU2とは、通信バスで互いに通信可能に接続された別個独立のECUである。
第1制御ユニットU1は、各種センサ信号、通信信号等により得られる車両の(走行)状態に基づいて第1制御対象の第1制御(基本制御)に使用される基本制御量を計算する第1制御手段A1(ソフトウエア)と、第2制御ユニットU2から送信される前記基本制御を修正する第2制御(修正制御)に使用される修正制御量と前記基本制御量とを加算(重畳)して第1目標制御量を算出する加算手段B1(ソフトウエア)と、前記第1目標制御量に基づいてACT1へ駆動信号を送出するアクチュエータ駆動処理部C1(ソフトウエア)と、ACT1が正常に作動しているか否かを監視する正常作動監視手段D1(ソフトウエア)と、後述する制御停止手段E1(ソフトウエア)とを備える。
第1制御手段A1は、前記基本制御量を計算するための演算を行うi個(i:自然数)の第1制御部(第1制御要素、第1制御モード)(第11制御部A11、第12制御部A12、・・・、第1i制御部A1i)(ソフトウエア)と、第1制御手段A1の制御量(=基本制御量)を計算する第1制御手段の制御量演算部A1T(ソフトウエア)とを備えている。
第2制御ユニットU2は、各種センサ信号、通信信号等により得られる車両の(走行)状態に基づいて第2制御対象の制御に使用される第2目標制御量を計算する第3制御手段A3(ソフトウエア)と、前記第2目標制御量に基づいてACT3へ駆動信号を送出するアクチュエータ駆動処理部B3(ソフトウエア)とを備える。
第3制御手段A3は、前記第2目標制御量を計算するための演算を行うk個(k:自然数)の第3制御部(第31制御部A31、・・・、第3k制御部A3k)(ソフトウエア)と、第3制御手段A3の制御量(=第2目標制御量)を計算する第3制御手段の制御量演算部A3T(ソフトウエア)を備えている。
第2制御ユニットU2は、更に、各種センサ信号、通信信号等により得られる車両の(走行)状態に基づいて前記修正制御量を計算する第2制御手段A2(ソフトウエア)を備えている。第2制御手段A2は、前記修正制御量を計算するための演算を行うj個(j:自然数)の第2制御部(第2制御要素、第2制御モード)(第21制御部A21、第22制御部A22、・・・、第2j制御部A2j)(ソフトウエア)と、第2制御手段A2の制御量(=修正制御量)を計算する第2制御手段の制御量演算部A2T(ソフトウエア)とを備えている。ここで、第1制御手段A1の制御量(=基本制御量)と第2制御手段A2の制御量(=修正制御量)とは、制御対象が同じ第1制御対象(ACT1)であり、同一次元の物理量である。制御量演算部A2Tは、この修正制御量を第1制御ユニットU1内の加算手段B1に送信するとともに、後述する制御フラグを第1制御ユニットU1内の制御停止手段E1に送信する。
このように、前記基本制御量に基づく基本制御と前記修正制御量に基づく修正制御とは、制御対象が同じ第1制御対象(ACT1)である。基本制御は、第1制御対象(ACT1)の通常的な(恒常的な)制御である。修正制御は、例えば、走行中の車両のヨー方向の運動における安定化が必要な場合にのみ前記基本制御量を前記修正制御量で修正することで基本制御を修正する臨時的な制御である。即ち、修正制御量は、通常は「0」であり、例えば、走行中の車両のヨー方向の運動における安定化が必要な場合にのみ「0」以外の値となる。
ここで、基本制御に係わる第1制御手段A1内のi個の第1制御部のうちの第11制御部A11と、修正制御に係わる第2制御手段A2内のj個の第2制御部のうちの第21制御部A21との間では、上述した「制御干渉」が発生し得るものとする。この場合における「制御干渉」とは、第11制御部A11の演算結果に基づく第1制御対象(ACT1)の変化(指示)方向と、第21制御部A21の演算結果に基づく第1制御対象(ACT1)の修正(指示)方向(修正される第1制御対象(ACT1)の変化(指示)方向)とが逆になる現象を意味する。
以下、説明の便宜上、修正制御量が「0」から「0」を含む所定の微小範囲外の値に変化した時点から前記修正制御量が前記微小範囲内に連続して維持される期間が所定期間に達した時点までの期間、或いは、修正制御量が前記微小範囲外にある期間を、第2制御手段の「作動状態」と称呼する。同様に、j個の第2制御部A21〜A2j内の或る制御部の演算結果が「0」から「0」を含む所定の微小範囲外の値に変化した時点からその制御部の演算結果が前記微小範囲内に連続して維持される期間が所定期間に達した時点までの期間、或いは、その制御部の演算結果が前記微小範囲外にある期間を、その制御部の「作動状態」と称呼する。更には、i個の第1制御部A11〜A1i内の或る制御部の演算結果を一定に保持、又は「0」に向けて徐々に戻すことを、その制御部の(制御機能の)「停止」と称呼する。
この実施形態では、以下の6通りのパターンの何れか1つを用いて係る制御干渉の発生が抑制される。以下、順に説明していく。
<パターン1>
制御フラグは、第2制御手段が「作動状態」にある場合に「1」に、第2制御手段が「作動状態」にない場合に「0」に設定される。制御フラグの値が送信される制御停止手段E1は、制御フラグが「1」の場合、第1制御部A11〜A1iの全てを「停止」する。即ち、パターン1では、第2制御手段が「作動状態」にある場合、第1制御部の全てが「停止」され、第1制御対象の基本制御機能が完全に「停止」する。これにより、第1制御対象の基本制御と修正制御との間での制御干渉(より具体的には、第11制御部A11と第21制御部A21との間での制御干渉)の発生が抑制される。なお、第1制御対象の修正制御機能は継続して確保され得る。
<パターン2>
制御フラグは、パターン1と同様、第2制御手段が「作動状態」にある場合に「1」に、第2制御手段が「作動状態」にない場合に「0」に設定される。制御停止手段E1は、制御フラグが「1」の場合、第1制御部A11〜A1iのうち第21制御部A21との間で制御干渉が発生し得る第11制御部A11のみを「停止」する。即ち、パターン2では、第2制御手段が「作動状態」にある場合、第1制御部のうち第2制御部の何れかと制御干渉が発生し得る部分のみが「停止」される。
換言すれば、第1制御部のうち第2制御部の何れかと制御干渉し得ないものは「停止」されない。従って、第1制御対象の基本制御機能を或る程度確保しながら第1制御対象の基本制御と修正制御との間での制御干渉の発生が抑制される。
<パターン3>
制御フラグは、第2制御部A21〜A2jのうち第1制御部の何れかと制御干渉し得るものの少なくとも1つ(本例では、第21制御部A21)が「作動状態」にある場合、第2制御手段が「作動状態」にあるものとして「1」に設定され、第21制御部A21が「作動状態」にない場合、第2制御手段が「作動状態」にないものとして「0」に設定される。制御停止手段E1は、制御フラグが「1」の場合、パターン1と同様、第1制御部A11〜A1iの全てを「停止」する。
即ち、パターン3では、第2制御部A21〜A2jのうち第1制御部の何れかと制御干渉し得るものの少なくとも1つが「作動状態」にある場合、第1制御部の全てが「停止」され、第1制御対象の基本制御機能が完全に「停止」する。これにより、第1制御対象の基本制御と修正制御との間での制御干渉の発生が抑制される。加えて、第2制御部A21〜A2jのうち第1制御部の何れかと制御干渉し得ないもの(本例では、第22制御部A22、・・・、第2j制御部A2j)が「作動状態」となっても、第1制御部の全てが「停止」されない。即ち、第1制御対象の基本制御機能が不必要に停止・制限される事態が防止され得る。
<パターン4>
制御フラグは、パターン3と同様、第2制御部A21〜A2jのうち第1制御部の何れかと制御干渉し得るものの少なくとも1つ(本例では、第21制御部A21)が「作動状態」にある場合に「1」に設定され、第21制御部A21が「作動状態」にない場合に「0」に設定される。制御停止手段E1は、制御フラグが「1」の場合、パターン2と同様、第1制御部A11〜A1iのうち第21制御部A21との間で制御干渉が発生し得る第11制御部A11のみを「停止」する。
従って、パターン4では、パターン2とパターン3の効果が発揮され得る。即ち、第1制御対象の基本制御機能を或る程度確保しながら第1制御対象の基本制御と修正制御との間での制御干渉の発生が抑制され得、且つ、第1制御対象の基本制御機能が不必要に停止・制限される事態が防止され得る。
<パターン5>
制御フラグは、第2制御部A21〜A2jのそれぞれについて設けられ、各制御部について、制御部が「作動状態」にある場合に対応する制御フラグが「1」に設定され同制御部が「作動状態」にない場合に「0」に設定される。制御停止手段E1は、j個の制御フラグの値に基づいて第1制御部A11〜A1iの全てを「停止」する。この場合、例えば、第2制御部A21〜A2jのうち第1制御部の何れかと制御干渉し得るものの少なくとも1つ(本例では、第21制御部A21)に対応する制御フラグが「1」の場合、第1制御部A11〜A1iの全てが「停止」される。これにより、パターン3と同様の効果が発揮され得る。
<パターン6>
制御フラグは、パターン5と同様、第2制御部A21〜A2jのそれぞれについて設定される。制御停止手段E1は、j個の制御フラグの値に基づいて、第1制御部A11〜A1iのうち「作動状態」と判定されている第2制御部と制御干渉し得るものを選択的に「停止」する。この場合、例えば、第21制御部A21に対応する制御フラグが「1」の場合、第21制御部A21との間で制御干渉が発生し得る第11制御部A11のみが「停止」される。これにより、パターン4と同様の効果が発揮され得る。加えて、「作動状態」にある第2制御部との制御干渉の程度に応じて停止される第1制御部が選択され得る。従って、第1制御対象の基本制御機能が不必要に停止・制限される事態がより確実に防止され得る。
なお、第2制御手段或いは第2制御部の「作動状態」に対応する期間としては、「修正制御量或いはその制御部の演算結果が前記微小範囲外にある期間」を使用するよりも、「修正制御量或いはその制御部の演算結果が「0」から「0」を含む所定の微小範囲外の値に変化した時点から前記修正制御量或いはその制御部の演算結果が前記微小範囲内に連続して維持される期間が所定期間に達した時点までの期間」を使用した方が好ましい。
これにより、修正制御量或いはその制御部の演算結果が過渡的に極短期間だけ前記微小範囲内の値となる場合(例えば、「0」をまたいで変化する場合等)において、第2制御手段或いはその制御部の「作動状態」と判定され続け得る。換言すれば、「作動状態」と判定されている状態から「作動状態」でないと一旦判定されその極短期間後に再び「作動状態」と判定されるような、判定結果が短い時間間隔で不必要に反転する事態が防止され得る。この結果、基本制御と修正制御との間での制御干渉の発生が適切に抑制され得る。
以上、本発明による車両の制御装置の実施形態について説明した。次に、この実施形態の具体例である本発明による車両の制御装置の各実施例について図面を参照しつつ説明する。
(第1実施例)
図2は、本発明の第1実施例に係る制御装置(以下、「本装置」と称呼する。)を搭載した車両の概略構成を示している。本装置は、前輪操舵制御機構20と、後輪操舵制御機構30と、ハイドロリックユニット40とを含んでいる。
前輪操舵制御機構20では、運転者に操作されるステアリングホイール21が、アッパステアリングシャフト22、ステアリングギヤ比可変機構VGRS(STRf)、ロアステアリングシャフト23を介して電動パワーステアリング機構(EPS)に接続されている。これにより、ステアリングホイール21の回転がEPSに伝達されるようになっている。
EPSは、周知の構成の一つにより構成されていて、ロアステアリングシャフト23の回転運動をロッド24の車体左右方向の並進運動に変換するとともに、ロアステアリングシャフト23から受ける回転トルクを助勢する方向にロッド24を駆動するアシスト力をモータMTeにより発生するようになっている。以上より、運転者によりステアリングホイール21が回転操作されると、運転者の操舵トルクが前記アシスト力により助勢されながら、前輪FL,FRが転舵されるようになっている。
STRfは、モータMTfと、図示しないギヤ機構部とから構成されていて、モータMTfの(絶対)回転角度を制御することで、アッパステアリングシャフト22に対するロアステアリングシャフト23の相対回転角度(以下、単に「相対角」とも称呼する。)を調整可能となっている。これにより、相対角を制御することで、前輪FL,FRの舵角に対するステアリングホイール21の回転角度の比率(ステアリングギヤ比)が変更可能に構成されている。
後輪操舵制御機構30は、後輪操舵機構STRrを有している。STRrは、モータMTrと、図示しないギヤ機構部とから構成されていて、モータMTrの(絶対)回転角度を制御することで、ロッド31の車体左右方向における位置を調整可能となっている。これにより、モータMTrの回転角度を制御することで、後輪RL,RRの舵角が変更可能に構成されている。
ハイドロリックユニット(HU)40は、複数の電磁弁、液圧ポンプ、モータ等を備えた周知の構成を有している。HU40は、非制御時では、運転者によるブレーキペダルBPの操作に応じたブレーキ液圧を各車輪のホイールシリンダW**にそれぞれ供給し、制御時では、ブレーキペダルBPの操作とは独立してホイールシリンダW**内のブレーキ液圧を車輪毎に調整できるようになっている。
なお、各種記号等の末尾に付された「**」は、同各種記号等が何れの車輪に関するものであるかを示すために同各種記号等の末尾に付される「fl」,「fr」等の包括表記であり、「fl」は左前輪、「fr」は右前輪、「rl」は左後輪、「rr」は右後輪を示している。例えば、ホイールシリンダW**は、左前輪ホイールシリンダWfl,
右前輪ホイールシリンダWfr, 左後輪ホイールシリンダWrl, 右後輪ホイールシリンダWrrを包括的に示している。
本装置は、車輪速度Vw**を検出する車輪速度センサ51**と、ステアリングホイール21の(中立位置からの)回転角度θswを検出するステアリングホイール回転角度センサ52と、運転者のステアリングホイール21の操舵トルクTswを検出する操舵トルクセンサ53と、車体のヨーレイトYrを検出するヨーレイトセンサ54と、車体前後方向における前後加速度Gxを検出する前後加速度センサ55と、車体横方向における横加速度Gyを検出する横加速度センサ56と、前輪FL,FRの実際の舵角(実前輪舵角δfa)を検出する前輪舵角センサ57と、後輪RL,RRの実際の舵角(実後輪舵角δra)を検出する後輪舵角センサ58と、ホイールシリンダ圧力Pw**を検出するホイールシリンダ圧力センサ59**と、電子制御装置(ECU)60とを備えている。
ECU60は、互いに通信バスCBで接続された互いに独立した複数のECU(ECU0〜4)から構成されたマイクロコンピュータである。ECU60は、HU40、及び前記センサ51〜59と電気的に接続されている。ECU60内のECU0〜4は専用の制御をそれぞれ実行するようになっている。
具体的には、ECU0は、車輪速度センサ51**、前後加速度センサ55等からの信号に基づいて周知のアンチスキッド制御(ABS制御)、トラクション制御(TCS制御)等のスリップ抑制制御(制・駆動力制御)を実行する制駆動力制御ユニットである。ECU1は、ステアリングホイール回転角度センサ52、車輪速度センサ51**等からの信号に基づいて前輪操舵角制御を実行する前輪操舵角制御ユニットである。ECU2は、前輪舵角センサ57、車輪速度センサ51**等からの信号に基づいて後輪操舵角制御を実行する後輪操舵角制御ユニットである。ECU3は、操舵トルクセンサ53からの信号に基づいて周知の電動パワーステアリング制御を実行するパワーステアリング制御ユニットである。ECU4は、図示しないエンジン、オートマチックトランスミッション等のパワートレイン系の制御を実行するパワートレイン系制御ユニットである。
この第1実施例では、前輪操舵角制御ユニットECU1が図1の第1制御ユニットU1に対応し、制駆動力制御ユニットECU0が図1の第2制御ユニットU2に対応している。以下、前輪操舵角制御ユニットECU1、及び制駆動力制御ユニットECU0について説明する。
<前輪操舵角制御ユニットECU1>
図3は、前輪操舵角制御ユニットECU1の機能ブロック図である。図3において、図1における機能ブロックと同じ機能を発揮する機能ブロックについては図1の符号と同じ符号が付されている(他の図も同様)。
図3に示すように、前輪操舵角制御ユニットECU1の制御対象(前記第1制御対象)は前輪操舵角δfであり、モータMTf(図2を参照)が図1のACT1に対応している。前輪操舵角制御手段A1が図1の第1制御手段A1に対応し、前輪操舵角制御手段A1は、図1の第1制御部A11〜A1iに対応する前輪操舵比制御部A11及び微分ステア制御部A12と、図1の第1制御手段の制御量演算部A1Tに対応する前輪基本操舵角目標値演算部A1Tとを備えている。
前輪操舵比制御部A11は、車輪速度Vw**から周知の式の1つに基づいて計算される車体速度Vxと図4に示したテーブルとに基づいて、前輪舵角に対するステアリングホイール21の回転角度の比率である前輪操舵比SGfを求める。これにより、車体速度Vxが小さい場合、前輪操舵比SGfが小さい値(クイック)に設定されて車両の取り回し性が向上し、車体速度Vxが大きい場合、前輪操舵比SGfが大きい値(スロー)に設定されて車両の操向安定性が向上する。
微分ステア制御部A12は、車両のヨー応答性を改善するためにあり、ステアリングホイールの回転角度θswの時間微分値dθswと図5に示したテーブルとに基づいて微分ステア角度θswbを求める。
前輪基本操舵角目標値演算部A1Tは、前記基本制御量に対応する前輪基本操舵角目標値δftを下記(1)式〜(3)式に従って求める。
δfgt=θsw/SGf ・・・(1)
δfbt=θswb/SGf ・・・(2)
δft=δfgt+δfbt ・・・(3)
加算手段B1は、前記前輪基本操舵角目標値δftと、制駆動力制御ユニットECU0から送信される前記修正制御量に対応する前輪修正操舵角目標値δfcとを加算(重畳)して、前記第1目標制御量に対応する前輪操舵角目標値(δft+δfc)を求める。
電気モータ駆動処理部C1は、前記前輪操舵角目標値(δft+δfc)に基づいてモータMTfへ駆動信号を送出する。これにより、前輪舵角δfが前輪操舵角目標値(δft+δfc)に基づいて制御される。
正常作動監視手段D1は、前輪操舵角目標値(δft+δfc)、或いは、実前輪舵角δfaの時間変化率(変化勾配)が所定の正常判定用基準値よりも大きいか否かを監視し、前輪操舵角目標値(δft+δfc)、或いは、実前輪舵角δfaの時間変化率(変化勾配)が、前記正常判定用基準値よりも小さい場合は前輪操舵角制御ユニットECU1の正常作動判定を行い、前記正常判定用基準値よりも大きい場合は前輪操舵角制御ユニットECU1の異常判定を行う。
<制駆動力制御ユニットECU0>
図6は、制駆動力制御ユニットECU0の機能ブロック図である。図6に示すように、制駆動力制御ユニットECU0の制御対象(前記第2制御対象)は制・駆動力であり、HU40(図2を参照)、及び駆動力アクチュエータ(例えば、スロットル弁駆動用モータ等(図示せず))が図1のACT3に対応している。制駆動力制御手段A3が図1の第3制御手段A3に対応し、制駆動力制御手段A3は、図1の第3制御部A31〜A3kに対応するアンチスキッド制御部A31、トラクション制御部A32、及び車両安定性制御部A33と、図1の第3制御手段の制御量演算部A3Tに対応する制・駆動力目標値演算部A3Tとを備えている。制・駆動力目標値演算部A3Tは、前記第2目標制御量に相当する制・駆動力目標値を計算する。アクチュエータ駆動処理部B31,B32は、図1のアクチュエータ駆動処理部B3に対応していて、前記制・駆動力目標値に基づいてHU40及び駆動力アクチュエータへそれぞれ駆動信号を送出する。
制駆動力制御ユニットECU0は、更に、図1の第2制御手段A2に対応する前輪修正操舵角制御手段A2を備える。前輪修正操舵角制御手段A2は、車両のヨー方向の運動における安定性を向上させるために、車両のヨー方向の運動状態を表す値に基づいて前輪修正操舵角目標値δfcを出力する。ここで、「ヨー方向の運動状態を表す値」とは、後述するアンダーステア及びオーバーステアの程度を表す運動状態量偏差であり、車両のヨー方向の運動の原因となる左右輪の制動力差、駆動力差である。前輪修正操舵角制御手段A2は、図1の第2制御部A21〜A2jに対応するアンダーステア制御部A21、オーバーステア制御部A22、制動時μスプリット制御部A23、及び駆動時μスプリット制御部A24と、図1の第2制御手段の制御量演算部A2Tに対応する前輪修正操舵角目標値演算部A2Tとを備えている。
アンダーステア制御部A21は、アンダーステア時に、前輪操舵角δfの増大(従って、前輪スリップ角の増大)を抑制するため、前輪操舵比をより大きい値に変更する。オーバーステア制御部A22は、オーバーステア時に、旋回内向きのヨーモーメントを減少する、或いは、旋回外向きのヨーモーメントを増加するように前輪操舵角を自動調整する。
制動時μスプリット制御部A23は、左右輪の制動力差によって生じるヨーモーメントを打ち消すように、前輪操舵角を自動調整する。駆動時μスプリット制御部A24は、左右輪の駆動力差によって生じるヨーモーメントを打ち消すように、前輪操舵角を自動調整する。
より具体的には、図7に示したように、アンダーステア制御部A21及びオーバーステア制御部A22は、目標運動状態量演算部A211により計算された目標運動状態量Vmtと、実運動状態量演算部A212により計算された実運動状態量Vmaとを比較手段A213により比較することで、アンダーステア及びオーバーステアの程度を表す運動状態量偏差ΔVm_us,ΔVm_osをそれぞれ求める。ここで、「運動状態量」とは、車両のヨーレイト、横加速度、車体スリップ角、及び車体スリップ角速度のうちの少なくとも1つを用いて演算される値である。「目標運動状態量Vmt」は、ステアリングホイールの回転角度θsw、車体速度Vx等を用いて計算され、「実運動状態量Vma」は、ヨーレイトYr,横加速度Gy、車体速度Vx等を用いて計算される。
制動時μスプリット制御部A23は、制動力演算部A231により計算された制動力Bf**から左右輪の制動力差ΔBfを求める。駆動時μスプリット制御部A24は、駆動力演算部A241により計算された駆動力Df**から左右輪の駆動力差ΔDfを求める。
前輪修正操舵角目標値演算部A2Tは、前記修正制御量に対応する前輪修正操舵角目標値δfcを、上記運動状態量偏差ΔVm_us,ΔVm_os、制動力差ΔBf、及び駆動力差ΔDfに基づいて求める。これにより、前輪修正操舵角目標値δfcは、通常は「0」であり、アンダーステア、オーバーステアを抑制する必要がある場合、左右輪の制・駆動力差に基づくヨーモーメントによる車両の偏向を抑制する必要がある場合など、車両のヨー方向の運動における安定化が必要な場合にのみ「0」以外の値となる。
前輪修正操舵角目標値演算部A2Tは、この前輪修正操舵角目標値δfcを前輪操舵角制御ユニットECU1内の加算手段B1に送信するとともに、制御フラグを前輪操舵角制御ユニットECU1内の制御停止手段E1に送信する。このように、前輪基本操舵角目標値δftに基づく基本制御と前輪修正操舵角目標値δfcに基づく修正制御とは、制御対象が同じ前輪操舵角δf(MTf)である。
<第1実施例における制御干渉が発生する組み合わせ>
基本制御に係わる前輪操舵角制御手段A1内の2つの第1制御部のうちの前輪操舵比制御部A11と、修正制御に係わる前輪修正操舵角制御手段A2内の4つの第2制御部A21〜A24の各々との間では、上述した「制御干渉」が発生し得る。この場合における「制御干渉」とは、前輪操舵比制御部A11の演算結果に基づく前輪舵角δf(MTf)の変化(指示)方向と、第2制御部A21〜A24の各々の演算結果に基づく前輪舵角δf(MTf)の修正(指示)方向(修正される前輪舵角δf(MTf)の変化(指示)方向)とが逆になる現象を意味する。以下、それぞれの制御干渉について具体的に順に説明する。
<<前輪操舵比制御部A11−アンダーステア制御部A21>>
車両の旋回減速時では、前輪操舵比制御部A11は、前輪操舵比SGfを小さく(よりクイックに)する。このことは、ステアリングホイール21が保舵される場合、前輪が旋回内側方向に転舵指示されることを意味する。一方、アンダーステア制御部A21は、前輪操舵角δfの増大を抑制するため、前輪操舵比SGfを大きく(よりスローに)する。このことは、ステアリングホイール21が保舵される場合、前輪が旋回外側方向(中立位置に戻る方向)に転舵指示されることを意味する。これにより、上記制御干渉が発生する。このように、アンダーステア制御部A21が「作動状態」にある場合、前輪操舵比制御部A11を「停止」し、前輪操舵比SGfを固定して、前輪の旋回内側方向への転舵を抑制することが好ましい。
<<前輪操舵比制御部A11−オーバーステア制御部A22>>
車両の旋回減速時では、上述のごとく、前輪操舵比制御部A11は、前輪操舵比SGfを小さく(よりクイックに)する。このことは、ステアリングホイール21が保舵される場合、前輪が旋回内側方向に転舵指示されることを意味する。一方、オーバーステア制御部A22は、旋回内向きのヨーモーメントを減少する、或いは、旋回外向きのヨーモーメントを増加するため、前輪を中立位置の方向に、更には旋回外側方向に転舵指示する。これにより、上記制御干渉が発生する。このように、オーバーステア制御部A22が「作動状態」にある場合、前輪操舵比制御部A11を「停止」し、前輪操舵比SGfを固定して、前輪の旋回内側方向への転舵を抑制することが好ましい。
<<前輪操舵比制御部A11−制動時μスプリット制御部A23>>
μスプリット路面(車両の左右の路面摩擦係数が異なる路面)を旋回しながら走行している場合(旋回μスプリット路面走行時)において、高路面摩擦係数側が旋回内側に対応する場合、左右輪の制動力差は、旋回内向きのモーメントを発生させる。これを打ち消すため、制動時μスプリット制御部A23は、前輪を中立位置の方向に、更には旋回外側方向へ転舵指示する。一方、前輪操舵比制御部A11は、車両の減速により、前輪操舵比SGfを小さく(よりクイックに)する。即ち、前輪操舵比制御部A11は、ステアリングホイール21が保舵される場合、前輪を旋回内側方向へ転舵指示する。これにより、上記制御干渉が発生する。このように、制動時μスプリット制御部A23が「作動状態」にある場合、前輪操舵比制御部A11を「停止」し、前輪操舵比SGfを固定して、前輪の旋回内側方向への転舵を抑制することが好ましい。
<<前輪操舵比制御部A11−駆動時μスプリット制御部A24>>
前記「旋回μスプリット路面走行時」において、高路面摩擦係数側が旋回内側に対応する場合、左右輪の駆動力差は、旋回外向きのモーメントを発生させる。これを打ち消すため、駆動時μスプリット制御部A24は、前輪を旋回内側方向へ転舵指示する。一方、前輪操舵比制御部A11は、車両の加速により、前輪操舵比SGfを大きく(よりスローに)する。即ち、前輪操舵比制御部A11は、ステアリングホイール21が保舵される場合、前輪を旋回外側方向(中立位置に戻る方向)へ転舵指示する。これにより、上記制御干渉が発生する。このように、駆動時μスプリット制御部A24が「作動状態」にある場合、前輪操舵比制御部A11を「停止」し、前輪操舵比SGfを固定して、前輪の旋回外側方向への転舵を抑制することが好ましい。
<第1実施例における制御干渉を抑制するための処理>
第1実施例では、例えば、以下の処理を行って制御干渉が抑制され得る。
1.制御フラグは、前輪修正操舵角制御手段A2が「作動状態」にある場合に「1」に、前輪修正操舵角制御手段A2が「作動状態」にない場合に「0」に設定される。そして、前輪操舵角制御ユニットECU1内の制御停止手段E1は、制御フラグが「1」の場合、第2制御部A21〜A24の何れかと制御干渉し得る前輪操舵比制御部A11のみを「停止」する(上記パターン2に相当)。前輪修正操舵角制御手段A2の修正制御機能、並びに、微分ステア制御部A12の制御機能は継続して確保され得る。
2.制御フラグは、上記1.と同様に設定される。ここで、前輪操舵角制御において、前輪操舵比制御部A11は第1制御部の主たる部分である。このため、上記1.の制御フラグが「1」の場合、第1制御部の全て(具体的には、前輪操舵比制御部A11、及び微分ステア制御部A12)を「停止」してもよい(上記パターン1に相当)。
3.制御フラグは、第2制御部A21〜A24のそれぞれについて設けられ、各制御部について、制御部が「作動状態」にある場合に対応する制御フラグが「1」に設定され同制御部が「作動状態」にない場合に「0」に設定される。制御停止手段E1は、4個の制御フラグの値に基づいて第1制御部A11,A12の全てを「停止」する(上記パターン5に相当)。この場合、例えば、前輪操舵比制御部A11と制御干渉し得る第2制御部A21〜A24のうち少なくとも1つに対応する制御フラグが「1」の場合、第1制御部A11,A12の全てが「停止」される。
4.制御フラグは、上記3.と同様に設定される。制御停止手段E1は、4個の制御フラグの値に基づいて、第1制御部A11,A12のうち「作動状態」と判定されている第2制御部と制御干渉し得るものを選択的に「停止」する(上記パターン6に相当)。この場合、例えば、前輪操舵比制御部A11と制御干渉し得る第2制御部A21〜A24のうち少なくとも1つに対応する制御フラグが「1」の場合、前輪操舵比制御部A11が「停止」される。
以上、説明した「制御干渉を抑制するための処理」が終了した時点以降では、前輪基本操舵角目標値δftは、前輪基本操舵角目標値演算部A1Tにより計算される値に徐々に(所定の速度をもって)近づけられていく。
なお、上記1.と同様に設定される制御フラグが「1」のとき、制御停止手段E1は、正常作動監視手段D1を「停止」してもよい。また、上記3.と同様に設定される4つの制御フラグの少なくとも1つが「1」の場合、制御停止手段E1は、正常作動監視手段D1を「停止」してもよい。これにより、前輪基本操舵角目標値δftに前輪修正操舵角目標値δfcが急激に重畳されることによる前輪操舵角目標値(δft+δfc)、或いは、実前輪舵角δfaの時間変化率(変化勾配)の急激な増大に伴って前輪操舵角制御ユニットECU1が正常であるにもかかわらず異常であるとの誤判定がなされる事態が抑制され得る。
(第2実施例)
次に、本発明の第2実施例に係る制御装置について説明する。この第2実施例では、後輪操舵角制御ユニットECU2が図1の第1制御ユニットU1に対応し、制駆動力制御ユニットECU0が図1の第2制御ユニットU2に対応している。以下、後輪操舵角制御ユニットECU2、及び制駆動力制御ユニットECU0について説明する。
<後輪操舵角制御ユニットECU2>
図8は、後輪操舵角制御ユニットECU2の機能ブロック図である。図8に示すように、後輪操舵角制御ユニットECU2の制御対象(前記第1制御対象)は後輪操舵角δrであり、モータMTr(図2を参照)が図1のACT1に対応している。後輪操舵角制御手段A1が図1の第1制御手段A1に対応し、後輪操舵角制御手段A1は、図1の第1制御部A11〜A1iに対応する後輪操舵比制御部A11及び回頭性制御部A12と、図1の第1制御手段の制御量演算部A1Tに対応する後輪基本操舵角目標値演算部A1Tとを備えている。
後輪操舵比制御部A11は、前記車体速度Vxと図9に示したテーブルとに基づいて、前輪舵角に対する後輪舵角の比率である後輪操舵比SGrを求める。これにより、車両の重心のスリップ角がゼロに、或いは低減され得、車両のヨーレイトと横加速度の位相差が低減され得る。
回頭性制御部A12は、車両の回頭性を改善するためにあり、具体的には、位相遅れ制御、或いは位相反転制御が行われる。これらの制御では、ステアリングホイールの回転角度θswの時間微分値dθswと図10に示したテーブルとに基づいて遅れ時間τphが求められる。そして、位相遅れ制御では、前輪の操舵に対して後輪を同位相に転舵する場合において、後輪の操舵時期を遅れ時間τphだけ遅らせて車両のヨーが発生し易くされる。位相反転制御では、前輪の操舵に対して後輪を同位相に転舵する場合において上記遅れ時間τphに対応する期間だけ後輪が逆位相方向に操舵されて、車両のヨーが積極的に発生させられる。
後輪基本操舵角目標値演算部A1Tは、下記(4)式に従って求められる値δrgtに上記位相遅れ制御、或いは位相反転制御に対応する処理を施して前記基本制御量に対応する後輪基本操舵角目標値δrtを求める。ここで、δfaは、前記実前輪舵角である。
δrgt=δfa・SGr ・・・(4)
加算手段B1は、前記後輪基本操舵角目標値δrtと、制駆動力制御ユニットECU0から送信される前記修正制御量に対応する後輪修正操舵角目標値δrcとを加算(重畳)して、前記第1目標制御量に対応する後輪操舵角目標値(δrt+δrc)を求める。
電気モータ駆動処理部C1は、前記後輪操舵角目標値(δrt+δrc)に基づいてモータMTrへ駆動信号を送出する。これにより、後輪舵角δrが後輪操舵角目標値(δrt+δrc)に基づいて制御される。
正常作動監視手段D1は、後輪操舵角目標値(δrt+δrc)、或いは、実後輪舵角δraの時間変化率(変化勾配)が所定の正常判定用基準値よりも大きいか否かを監視し、後輪操舵角目標値(δrt+δrc)、或いは、実後輪舵角δraの時間変化率(変化勾配)が、前記正常判定用基準値よりも小さい場合は後輪操舵角制御ユニットECU2の正常作動判定を行い、前記正常判定用基準値よりも大きい場合は後輪操舵角制御ユニットECU2の異常判定を行う。
<制駆動力制御ユニットECU0>
図11は、制駆動力制御ユニットECU0の機能ブロック図である。図12は、図11に示した、アンダーステア制御部A21、オーバーステア制御部A22、制動時μスプリット制御部A23、及び駆動時μスプリット制御部A24の詳細を示した機能ブロック図である。
図11と図6との比較、及び、図12と図7との比較から理解できるように、第2実施例における制駆動力制御ユニットECU0は、上記第1実施例における制駆動力制御ユニットECU0において、前輪修正操舵角目標値δfcを計算する前輪修正操舵角制御手段A2を、後輪修正操舵角目標値δrcを計算する後輪修正操舵角制御手段A2に置き換えたものである。従って、この点以外に関して第2実施例における制駆動力制御ユニットECU0についての詳細な説明は省略する。
後輪修正操舵角制御手段A2は、車両のヨー方向の運動における安定性を向上させるために、車両のヨー方向の運動状態を表す値に基づいて後輪修正操舵角目標値δrcを出力する。ここで、「ヨー方向の運動状態を表す値」とは、後述するアンダーステア及びオーバーステアの程度を表す運動状態量偏差であり、車両のヨー方向の運動の原因となる左右輪の制動力差、駆動力差である。後輪修正操舵角制御手段A2は、図1の第2制御部A21〜A2jに対応するアンダーステア制御部A21、オーバーステア制御部A22、制動時μスプリット制御部A23、及び駆動時μスプリット制御部A24と、図1の第2制御手段の制御量演算部A2Tに対応する後輪修正操舵角目標値演算部A2Tとを備えている。
アンダーステア制御部A21は、アンダーステア時に、旋回外向きのヨーモーメントを減少する、或いは、旋回内向きのヨーモーメントを増加するように、後輪操舵角を自動調整する。オーバーステア制御部A22は、オーバーステア時に、旋回内向きのヨーモーメントを減少する、或いは、旋回外向きのヨーモーメントを増加するように、後輪操舵角を自動調整する。
制動時μスプリット制御部A23は、左右輪の制動力差によって生じるヨーモーメントを打ち消すように、後輪操舵角を自動調整する。駆動時μスプリット制御部A24は、左右輪の駆動力差によって生じるヨーモーメントを打ち消すように、後輪操舵角を自動調整する。
後輪修正操舵角目標値演算部A2Tは、前記修正制御量に対応する後輪修正操舵角目標値δrcを、上記運動状態量偏差ΔVm_us,ΔVm_os、制動力差ΔBf、及び駆動力差ΔDf(図12を参照)に基づいて求める。これにより、後輪修正操舵角目標値δrcは、通常は「0」であり、アンダーステア、オーバーステアを抑制する必要がある場合、左右輪の制駆動力差に基づくヨーモーメントによる車両の偏向を抑制する必要がある場合など、車両の安定化が必要な場合にのみ「0」以外の値となる。
後輪修正操舵角目標値演算部A2Tは、この後輪修正操舵角目標値δrcを後輪操舵角制御ユニットECU2内の加算手段B1に送信するとともに、制御フラグを後輪操舵角制御ユニットECU2内の制御停止手段E1に送信する。このように、後輪基本操舵角目標値δrtに基づく基本制御と後輪修正操舵角目標値δrcに基づく修正制御とは、制御対象が同じ後輪操舵角δr(MTr)である。
<第2実施例における制御干渉が発生する組み合わせ>
基本制御に係わる前輪操舵角制御手段A1内の2つの第1制御部のうちの後輪操舵比制御部A11と、修正制御に係わる後輪修正操舵角制御手段A2内の第2制御部A21〜A24のうちのアンダーステア制御部A21、制動時μスプリット制御部A23、及び駆動時μスプリット制御部A24の各々との間では、上述した「制御干渉」が発生し得る。この場合における「制御干渉」とは、後輪操舵比制御部A11の演算結果に基づく後輪舵角δr(MTr)の変化(指示)方向と、第2制御部A21,A23,A24の各々の演算結果に基づく後輪舵角δr(MTr)の修正(指示)方向(修正される後輪舵角δr(MTr)の変化(指示)方向)とが逆になる現象を意味する。以下、それぞれの制御干渉について具体的に順に説明する。
<<後輪操舵比制御部A11−アンダーステア制御部A21>>
車両の旋回減速時では、上述したように、ステアリングホイール21が保舵される場合、前輪が旋回内側方向に転舵指示される。従って、後輪操舵比制御部A11は、後輪を前輪と同位相方向の旋回内側方向に転舵指示する。一方、アンダーステア制御部A21は、旋回外向きのヨーモーメントを減少する、或いは、旋回内向きのヨーモーメントを増加するため、後輪を旋回外側方向(前輪と逆位相方向)に転舵指示する。これにより、上記制御干渉が発生する。このように、アンダーステア制御部A21が「作動状態」にある場合、後輪操舵比制御部A11を「停止」し、後輪操舵比SGrを「0」として、後輪の旋回内側方向への転舵を抑制することが好ましい。
<<後輪操舵比制御部A11−制動時μスプリット制御部A23>>
制動時μスプリット制御部A23は、左右輪の制動力差によるヨーモーメント(高路面摩擦係数側方向)を打ち消すため、後輪を高路面摩擦係数側方向(前輪と逆位相方向)に転舵指示する。一方、前輪は、左右輪の制動力差によるヨーモーメント(高路面摩擦係数側方向)を打ち消すため、低路面摩擦係数側方向に操舵される。これに伴い、後輪操舵比制御部A11は、後輪を前輪と同位相方向の低路面摩擦係数側方向に転舵指示する。これにより、上記制御干渉が発生する。このように、制動時μスプリット制御部A23が「作動状態」にある場合、後輪操舵比制御部A11を「停止」し、後輪操舵比SGfを「0」として、後輪の低路面摩擦係数側方向への転舵を抑制することが好ましい。
<<後輪操舵比制御部A11−駆動時μスプリット制御部A24>>
駆動時μスプリット制御部A24は、左右輪の駆動力差によるヨーモーメント(低路面摩擦係数側方向)を打ち消すため、後輪を低路面摩擦係数側方向(前輪と逆位相方向)に転舵指示する。一方、前輪は、左右輪の駆動力差によるヨーモーメント(低路面摩擦係数側方向)を打ち消すため、高路面摩擦係数側方向に操舵される。これに伴い、後輪操舵比制御部A11は、後輪を前輪と同位相方向の高路面摩擦係数側方向に転舵指示する。これにより、上記制御干渉が発生する。このように、駆動時μスプリット制御部A24が「作動状態」にある場合、後輪操舵比制御部A11を「停止」し、後輪操舵比SGfを「0」として、後輪の高路面摩擦係数側方向への転舵を抑制することが好ましい。
<第2実施例における制御干渉を抑制するための処理>
第2実施例では、例えば、以下の処理を行って制御干渉が抑制され得る。
1.制御フラグは、後輪修正操舵角制御手段A2が「作動状態」にある場合に「1」に、後輪修正操舵角制御手段A2が「作動状態」にない場合に「0」に設定される。そして、後輪操舵角制御ユニットECU2内の制御停止手段E1は、制御フラグが「1」の場合、第2制御部A21〜A24の何れかと制御干渉し得る後輪操舵比制御部A11のみを「停止」する(上記パターン2に相当)。後輪修正操舵角制御手段A2の修正制御機能、並びに、回頭性制御部A12の制御機能は継続して確保され得る。
2.制御フラグは、上記1.と同様に設定される。ここで、後輪操舵角制御において、回頭性制御として位相遅れ制御が実行される場合、回頭性制御部A12は、後輪操舵比制御A11に付随する制御部である。このため、上記1.の制御フラグが「1」の場合、第1制御部の全て(具体的には、後輪操舵比制御部A11、及び回頭性制御部A12)を「停止」してもよい(上記パターン1に相当)。
3.制御フラグは、第2制御部A21〜A24のそれぞれについて設けられ、各制御部について、制御部が「作動状態」にある場合に対応する制御フラグが「1」に設定され同制御部が「作動状態」にない場合に「0」に設定される。制御停止手段E1は、4個の制御フラグの値に基づいて第1制御部A11,A12の全てを「停止」する(上記パターン5に相当)。この場合、例えば、後輪操舵比制御部A11と制御干渉し得る第2制御部A21,A23,A24のうち少なくとも1つに対応する制御フラグが「1」の場合、第1制御部A11,A12の全てが「停止」される。
4.制御フラグは、上記3.と同様に設定される。制御停止手段E1は、4個の制御フラグの値に基づいて、第1制御部A11,A12のうち「作動状態」と判定されている第2制御部と制御干渉し得るものを選択的に「停止」する(上記パターン6に相当)。この場合、例えば、後輪操舵比制御部A11と制御干渉し得る第2制御部A21,A23,A24のうち少なくとも1つに対応する制御フラグが「1」の場合、後輪操舵比制御部A11が「停止」される。
5.制御フラグは、第1制御部の何れかと制御干渉し得る第2制御部A21,A23,A24のうちの少なくとも1つが「作動状態」にある場合に「1」に設定され、そうでない場合に「0」に設定される。制御停止手段E1は、制御フラグが「1」の場合、第1制御部A11,A12の全てを「停止」する(上記パターン3に相当)。
6.或いは、制御停止手段E1は、上記5.の制御フラグが「1」の場合、第2制御部A21〜A24の何れかと制御干渉し得る後輪操舵比制御部A11のみを「停止」する(上記パターン4に相当)。
以上、説明した「制御干渉を抑制するための処理」が終了した時点以降では、後輪基本操舵角目標値δrtは、後輪基本操舵角目標値演算部A1Tにより計算される値に徐々に(所定の速度をもって)近づけられていく。
なお、上記1.と同様に設定される制御フラグが「1」のとき、制御停止手段E1は、正常作動監視手段D1を「停止」してもよい。また、上記3.と同様に設定される4つの制御フラグの少なくとも1つが「1」の場合、制御停止手段E1は、正常作動監視手段D1を「停止」してもよい。これにより、後輪基本操舵角目標値δrtに後輪修正操舵角目標値δrcが急激に重畳されることによる後輪操舵角目標値(δrt+δrc)、或いは、実後輪舵角δfrの時間変化率(変化勾配)の急激な増大に伴って後輪操舵角制御ユニットECU2が正常であるにもかかわらず異常であるとの誤判定がなされる事態が抑制され得る。
(第3実施例)
次に、本発明の第3実施例に係る制御装置について説明する。この第3実施例では、パワーステアリング制御ユニットECU3が図1の第1制御ユニットU1に対応し、制駆動力制御ユニットECU0が図1の第2制御ユニットU2に対応している。以下、パワーステアリング制御ユニットECU3、及び制駆動力制御ユニットECU0について説明する。
<パワーステアリング制御ユニットECU3>
図13は、パワーステアリング制御ユニットECU3の機能ブロック図である。図13に示すように、パワーステアリング制御ユニットECU3の制御対象(前記第1制御対象)は操舵トルクTであり、モータMTe(図2を参照)が図1のACT1に対応している。パワーステアリング制御手段A1が図1の第1制御手段A1に対応し、パワーステアリング制御手段A1は、図1の第1制御部A11〜A1iに対応する、操舵力助勢制御部A11、慣性補償制御部A12、中立位置復帰制御部A13、及び操舵減衰制御部A14と、図1の第1制御手段の制御量演算部A1Tに対応する基本アシストトルク目標値演算部A1Tとを備えている。
操舵力助勢制御部A11は、操舵トルクセンサ53により得られる操舵トルクTsw、及び、前記車体速度Vxに基づいて運転者によるステアリングホイール21の操作力を軽減する。車体速度Vxが小さいときには前記操作力の軽減量が大きい値に設定され、車体速度Vxが増大するほど前記軽減量がより小さい値に設定される。慣性補償制御部A12は、パワーステアリング制御に使用されるモータMTeの慣性による応答遅れを補償する。中立位置復帰制御部A13は、ステアリングホイール21の中立位置への戻りを向上させる。操舵減衰制御部A14は、ステアリングホイール21の戻り過ぎを抑制し、操舵の収束性を向上させる。
基本アシストトルク目標値演算部A1Tは、第1制御部A11〜A14の演算結果に基づいて前記基本制御量に対応する基本アシストトルク目標値Ttを求める。
加算手段B1は、前記基本アシストトルク目標値Ttと、制駆動力制御ユニットECU0から送信される前記修正制御量に対応する修正アシストトルク目標値Tcとを加算(重畳)して、前記第1目標制御量に対応するアシストトルク目標値(Tt+Tc)を求める。
電気モータ駆動処理部C1は、前記アシストトルク目標値(Tt+Tc)に基づいてモータMTeへ駆動信号を送出する。これにより、操舵トルクTがアシストトルク目標値(Tt+Tc)に基づいて制御される。
正常作動監視手段D1は、アシストトルク目標値(Tt+Tc)、或いは、操舵トルクTswの時間変化率(変化勾配)が所定の正常判定用基準値よりも大きいか否かを監視し、アシストトルク目標値(Tt+Tc)、或いは、操舵トルクTswの時間変化率(変化勾配)が、前記正常判定用基準値よりも小さい場合はパワーステアリング制御ユニットECU3の正常作動判定を行い、前記正常判定用基準値よりも大きい場合はパワーステアリング制御ユニットECU3の異常判定を行う。
<制駆動力制御ユニットECU0>
図14は、制駆動力制御ユニットECU0の機能ブロック図である。図15は、図14に示した、アンダーステア制御部A21、オーバーステア制御部A22、制動時μスプリット制御部A23、及び駆動時μスプリット制御部A24の詳細を示した機能ブロック図である。
図14と図6との比較、及び、図15と図7との比較から理解できるように、第3実施例における制駆動力制御ユニットECU0は、上記第1実施例における制駆動力制御ユニットECU0において、前輪修正操舵角目標値δfcを計算する前輪修正操舵角制御手段A2を、修正アシストトルク目標値Tcを計算する修正アシストトルク制御手段A2に置き換えたものである。従って、この点以外に関して第3実施例における制駆動力制御ユニットECU0についての詳細な説明は省略する。
修正アシストトルク制御手段A2は、車両のヨー方向の運動における安定性を向上させるために、車両のヨー方向の運動状態を表す値に基づいて修正アシストトルク目標値Tcを出力する。ここで、「ヨー方向の運動状態を表す値」とは、後述するアンダーステア及びオーバーステアの程度を表す運動状態量偏差であり、車両のヨー方向の運動の原因となる左右輪の制動力差、駆動力差である。修正アシストトルク制御手段A2は、図1の第2制御部A21〜A2jに対応するアンダーステア制御部A21、オーバーステア制御部A22、制動時μスプリット制御部A23、及び駆動時μスプリット制御部A24と、図1の第2制御手段の制御量演算部A2Tに対応する修正アシストトルク目標値演算部A2Tとを備えている。
アンダーステア制御部A21は、アンダーステア時に、前輪操舵角が過大となることを抑制するため、前輪操舵角の増大方向の操舵反力を増大するように操舵トルクを調整する。オーバーステア制御部A22は、オーバーステア時に、前輪操舵角が減少するように(カウンタステア操作を促すように)前輪操舵角の減少方向への操舵トルクを付与する。
制動時μスプリット制御部A23は、左右輪の制動力差によって生じるヨーモーメントを打ち消す方向のステアリングホイール操作を促すように(カウンタステア操作を促すように)操舵トルクを付与する。駆動時μスプリット制御部A24は、左右輪の駆動力差によって生じるヨーモーメントを打ち消す方向のステアリングホイール操作を促すように(カウンタステア操作を促すように)操舵トルクを付与する。
修正アシストトルク目標値演算部A2Tは、前記修正制御量に対応する修正アシストトルク目標値Tcを、上記運動状態量偏差ΔVm_us,ΔVm_os、制動力差ΔBf、及び駆動力差ΔDf(図15を参照)に基づいて求める。これにより、修正アシストトルク目標値Tcは、通常は「0」であり、アンダーステア、オーバーステアを抑制する必要がある場合、左右輪の制駆動力差に基づくヨーモーメントによる車両の偏向を抑制する必要がある場合など、車両の安定化が必要な場合にのみ「0」以外の値となる。
修正アシストトルク目標値演算部A2Tは、この修正アシストトルク目標値Tcをパワーステアリング制御ユニットECU3内の加算手段B1に送信するとともに、制御フラグをパワーステアリング制御ユニットECU3内の制御停止手段E1に送信する。このように、基本アシストトルク目標値Ttに基づく基本制御と修正アシストトルク目標値Tcに基づく修正制御とは、制御対象が同じ操舵トルクT(MTe)である。
<第3実施例における制御干渉が発生する組み合わせ>
基本制御に係わるパワーステアリング制御手段A1内の4つの第1制御部のうちの操舵減衰制御部A14と、修正制御に係わる修正アシストトルク制御手段A2内の第2制御部A21〜A24のうちのオーバーステア制御部A22との間では、上述した「制御干渉」が発生し得る。この場合における「制御干渉」とは、操舵減衰制御部A14の演算結果に基づく操舵トルクT(MTe)の変化(指示)方向と、オーバーステア制御部A22の演算結果に基づく操舵トルクT(MTe)の修正(指示)方向(修正される操舵トルクT(MTe)の変化(指示)方向)とが逆になる現象を意味する。以下、この制御干渉について具体的に説明する。
<<操舵減衰制御部A14−オーバーステア制御部A22>>
操舵減衰制御部A14は、ステアリングホイール21が中立位置へ向けて戻る過程において、ステアリングホイールの戻り過ぎを抑制するために、前輪操舵角の増大方向へ操舵トルクを付与する指示を行う。一方、オーバーステア制御部A22は、前輪操舵角が減少するように(カウンタステア操作を促すように)前輪操舵角の減少方向へ操舵トルクを付与する指示を行う。これにより、上記制御干渉が発生する。このように、オーバーステア制御部A22が「作動状態」にある場合、操舵減衰制御部A14を「停止」し、前輪操舵角の増大方向への操舵トルクの付与を抑制することが好ましい。
<第3実施例における制御干渉を抑制するための処理>
第3実施例では、例えば、以下の処理を行って制御干渉が抑制され得る。
1.制御フラグは、修正アシストトルク制御手段A2が「作動状態」にある場合に「1」に、修正アシストトルク制御手段A2が「作動状態」にない場合に「0」に設定される。そして、パワーステアリング制御ユニットECU3内の制御停止手段E1は、制御フラグが「1」の場合、第2制御部A21〜A24の何れかと制御干渉し得る操舵減衰制御部A14のみを「停止」する(上記パターン2に相当)。修正アシストトルク制御手段A2の修正制御機能、並びに、第1制御部A11,A12,A13の制御機能は継続して確保され得る。
2.制御フラグは、第2制御部A21〜A24のそれぞれについて設けられ、各制御部について、制御部が「作動状態」にある場合に対応する制御フラグが「1」に設定され同制御部が「作動状態」にない場合に「0」に設定される。制御停止手段E1は、4個の制御フラグの値に基づいて、操舵減衰制御部A14のみを「停止」する(上記パターン6に相当)。この場合、例えば、操舵減衰制御部A14と制御干渉し得るオーバーステア制御部A22に対応する制御フラグが「1」の場合、操舵減衰制御部A14が「停止」される。
以上、説明した「制御干渉を抑制するための処理」が終了した時点以降では、基本アシストトルク目標値Ttは、基本アシストトルク目標値演算部A1Tにより計算される値に徐々に(所定の速度をもって)近づけられていく。
なお、上記1.と同様に設定される制御フラグが「1」のとき、制御停止手段E1は、正常作動監視手段D1を「停止」してもよい。また、上記2.と同様に設定される4つの制御フラグの少なくとも1つが「1」の場合、制御停止手段E1は、正常作動監視手段D1を「停止」してもよい。これにより、基本アシストトルク目標値Ttに修正アシストトルク目標値Tcが急激に重畳されることによるアシストトルク目標値(Tt+Tc)、或いは、操舵トルクTswの時間変化率(変化勾配)の急激な増大に伴ってパワーステアリング制御ユニットECU3が正常であるにもかかわらず異常であるとの誤判定がなされる事態が抑制され得る。
本発明は、上記実施形態、並びに、上記第1〜第3実施例に限定されることはなく、本発明の範囲内において種々の変形例を採用することができる。例えば、上記実施形態、並びに、上記第1〜第3実施例においては、第2制御ユニットU2内に、第2制御手段A2と第3制御手段A3とが備えられているが、第2制御ユニットU2内に第2制御手段A2が備えられる一方で第1、第2制御ユニットU1,U2とは独立した第3制御ユニットU3内に第3制御手段A3が備えられてもよい。
また、上記第1〜第3実施例においては、前輪操舵制御機構20において、ステアリングホイール21と操舵輪FL,FRとが機械的に接続されているが、ステアリングホイール21と操舵輪FL,FRとが機械的に接続されていない所謂ステア・バイ・ワイヤ方式の前輪操舵制御機構(即ち、ステアリングホイール21の回転角度θswを示す電気信号に基づいて前輪操舵制御を行う機構)を備えた車両に対しても、本発明は適用可能である。この場合、操舵操作部材として、ステアリングホイール21に代えて棒状部材(所謂、ジョイスティック)が使用されてもよい。
本発明の実施形態に係る車両の制御装置の機能ブロック図である。 本発明の第1実施例に係る車両の制御装置を搭載した車両の概略構成図である。 図2に示した前輪操舵角制御ユニットに関する機能ブロック図である。 車体速度と前輪操舵比との関係を規定したテーブルを示したグラフである。 ステアリングホイールの回転角度の時間微分値と微分ステア角度との関係を規定したテーブルを示したグラフである。 図2に示した制駆動力制御ユニットに関する機能ブロック図である。 図6に示した第2制御部の詳細についての機能ブロック図である。 本発明の第2実施例に係る車両の制御装置の後輪操舵角制御ユニットに関する機能ブロック図である。 車体速度と後輪操舵比との関係を規定したテーブルを示したグラフである。 ステアリングホイールの回転角度の時間微分値と位相遅れ時間との関係を規定したテーブルを示したグラフである。 本発明の第2実施例に係る車両の制御装置の制駆動力制御ユニットに関する機能ブロック図である。 図11に示した第2制御部の詳細についての機能ブロック図である。 本発明の第3実施例に係る車両の制御装置のパワーステアリング制御ユニットに関する機能ブロック図である。 本発明の第3実施例に係る車両の制御装置の制駆動力制御ユニットに関する機能ブロック図である。 図14に示した第2制御部の詳細についての機能ブロック図である。
符号の説明
U1,U2,U3…第1、第2、第3制御ユニット、A1,A2,A3…第1、第2、第3制御手段、A11〜A1i…第1制御部、A21〜A2j…第2制御部、A31〜A3k…第3制御部、E1…制御停止手段

Claims (13)

  1. 車両の状態に基づいて、前記車両の制御対象の基本制御量を決定するための演算を行う1つ又は複数の第1制御部を有し前記1つ又は複数の第1制御部の演算結果に基づいて前記基本制御量を決定する第1制御手段を備えた第1制御ユニットと、
    前記車両の状態に基づいて、前記基本制御量の修正に使用される前記制御対象の修正制御量を決定するための演算を行う1つ又は複数の第2制御部を有し前記1つ又は複数の第2制御部の演算結果に基づいて前記修正制御量を決定する第2制御手段を備えた、前記第1制御ユニットとは独立した第2制御ユニットと、
    前記基本制御量前記修正制御量を加算して得られる前記制御対象の目標制御量に基づいて前記制御対象を制御する制御対象制御手段と、
    前記制御対象の目標制御量が前記修正制御量を利用して修正されている状態である前記第2制御手段の作動状態にあるか否かを判定する判定手段と、
    を備えた車両の制御装置であって、
    前記第2制御手段の作動状態と判定され、前記1つ又は複数の第1制御部と前記1つ又は複数の第2制御部との間で、前記第1制御部の演算結果に基づく前記制御対象の変化方向と前記第2制御部の演算結果に基づく前記制御対象の修正方向とが逆になり得る場合に、前記1つ又は複数の第1制御部の全ての演算結果を一定に保持する、又はゼロに向けて徐々に戻す制御停止手段を備えた車両の制御装置。
  2. 車両の状態に基づいて、前記車両の制御対象の基本制御量を決定するための演算を行う複数の第1制御部を有し前記複数の第1制御部の演算結果に基づいて前記基本制御量を決定する第1制御手段を備えた第1制御ユニットと、
    前記車両の状態に基づいて、前記基本制御量の修正に使用される前記制御対象の修正制御量を決定するための演算を行う1つ又は複数の第2制御部を有し前記1つ又は複数の第2制御部の演算結果に基づいて前記修正制御量を決定する第2制御手段を備えた、前記第1制御ユニットとは独立した第2制御ユニットと、
    前記基本制御量前記修正制御量を加算して得られる前記制御対象の目標制御量に基づいて前記制御対象を制御する制御対象制御手段と、
    前記制御対象の目標制御量が前記修正制御量を利用して修正されている状態である前記第2制御手段の作動状態にあるか否かを判定する判定手段と、
    を備えた車両の制御装置であって、
    前記第2制御手段の作動状態と判定され、前記複数の第1制御部と前記1つ又は複数の第2制御部との間で、前記第1制御部の演算結果に基づく前記制御対象の変化方向と前記第2制御部の演算結果に基づく前記制御対象の修正方向とが逆になり得る場合に、前記複数の第1制御部のうちの一部であってその演算結果に基づく前記制御対象の変化方向が前記1つ又は複数の第2制御部の演算結果の何れかに基づく前記制御対象の修正方向と逆になり得るもの、の少なくとも1つの演算結果を一定に保持する、又はゼロに向けて徐々に戻す制御停止手段を備えた車両の制御装置。
  3. 請求項1又は請求項2に記載の車両の制御装置において、
    前記判定手段は、
    前記修正制御量がゼロからゼロを含む所定範囲外の値に変化した時点から、前記修正制御量が前記所定範囲内に維持される期間が所定期間に達した時点までの間、前記第2制御手段の作動状態にあると判定するように構成された車両の制御装置。
  4. 請求項1又は請求項2に記載の車両の制御装置において、
    前記判定手段は、
    前記修正制御量がゼロを含む所定範囲外であるとき、前記第2制御手段の作動状態にあると判定するように構成された車両の制御装置。
  5. 請求項1又は請求項2に記載の車両の制御装置において、
    前記判定手段は、
    前記複数の第2制御部のうちの一部であってその演算結果に基づく前記制御対象の修正方向が前記1つ又は複数の第1制御部の演算結果の何れかに基づく前記制御対象の変化方向と逆になり得るもの、の演算結果の少なくとも1つが、ゼロからゼロを含む所定範囲外の値に変化した時点から、同演算結果の少なくとも1つが前記所定範囲内に維持される期間が所定期間に達した時点までの間、前記第2制御手段の作動状態にあると判定するように構成された車両の制御装置。
  6. 請求項1又は請求項2に記載の車両の制御装置において、
    前記判定手段は、
    前記複数の第2制御部のうちの一部であってその演算結果に基づく前記制御対象の修正方向が前記1つ又は複数の第1制御部の演算結果の何れかに基づく前記制御対象の変化方向と逆になり得るもの、の演算結果の少なくとも1つが、ゼロを含む所定範囲外であるとき、前記第2制御手段の作動状態にあると判定するように構成された車両の制御装置。
  7. 車両の状態に基づいて、前記車両の制御対象の基本制御量を決定するための演算を行う複数の第1制御部を有し前記複数の第1制御部の演算結果に基づいて前記基本制御量を決定する第1制御手段を備えた第1制御ユニットと、
    前記車両の状態に基づいて、前記基本制御量の修正に使用される前記制御対象の修正制御量を決定するための演算を行う複数の第2制御部を有し前記複数の第2制御部の演算結果に基づいて前記修正制御量を決定する第2制御手段を備えた、前記第1制御ユニットとは独立した第2制御ユニットと、
    前記基本制御量前記修正制御量を加算して得られる前記制御対象の目標制御量に基づいて前記制御対象を制御する制御対象制御手段と、
    前記制御対象の目標制御量が前記第2制御部の演算結果を利用して修正されている状態である前記第2制御部の作動状態にあるか否かを前記各第2制御部のそれぞれについて独立して判定する判定手段と、
    を備えた車両の制御装置であって、
    前記判定手段の判定結果に基づいて、前記複数の第1制御部と前記複数の第2制御部との間で、前記第1制御部の演算結果に基づく前記制御対象の変化方向と前記第2制御部の演算結果に基づく前記制御対象の修正方向とが逆になり得る場合に、前記複数の第1制御部の全て、又は前記複数の第1制御部のうちの一部であってその演算結果に基づく前記制御対象の変化方向が前記作動状態と判定されている前記第2制御部の演算結果に基づく前記制御対象の修正方向と逆になり得るものの少なくとも1つ、の演算結果を一定に保持する、又はゼロに向けて徐々に戻す制御停止手段を備えた車両の制御装置。
  8. 請求項7に記載の車両の制御装置において、
    前記判定手段は、
    前記第2制御部の演算結果がゼロからゼロを含む所定範囲外の値に変化した時点から、前記演算結果が前記所定範囲内に維持される期間が所定期間に達した時点までの間、前記第2制御部の作動状態にあると判定するように構成された車両の制御装置。
  9. 請求項7に記載の車両の制御装置において、
    前記判定手段は、
    前記第2制御部の演算結果がゼロを含む所定範囲外であるとき、前記第2制御部の作動状態にあると判定するように構成された車両の制御装置。
  10. 請求項1乃至請求項9の何れか一項に記載の車両の制御装置において、
    前記制御対象制御手段は、前記第1制御ユニット内に備えられた車両の制御装置。
  11. 請求項1乃至請求項10の何れか一項に記載の車両の制御装置において、
    前記判定手段は、前記第2制御ユニット内に備えられた車両の制御装置。
  12. 請求項1乃至請求項11の何れか一項に記載の車両の制御装置において、
    前記制御停止手段は、前記第1制御ユニット内に備えられた車両の制御装置。
  13. 請求項1乃至請求項12の何れか一項に記載の車両の制御装置において、
    前記制御対象は、前輪の操舵角、後輪の操舵角、及びステアリングホイールの操舵トルクの何れかである車両の制御装置。
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