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JP5254889B2 - カーボンブラック含有高導電性フッ素ゴム組成物 - Google Patents

カーボンブラック含有高導電性フッ素ゴム組成物 Download PDF

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Description

本発明は、導電性フッ素ゴム組成物に関するものである。特にカーボンブラックを配合してゴム組成物に導電性を付与したカーボンブラック含有導電性フッ素ゴム組成物に関するものである。
フッ素ゴムは分子中にフッ素原子を有するため、他のゴムに比べて、耐熱性、耐薬品性、耐油性、耐候性などが特に優れている。このため、自動車産業や半導体製造産業を中心に、過酷な使用条件や、メンテナンスフリーが求められる分野から広く利用されてきた。
使用条件における種々の要求を満たすべく、これまでに、様々なタイプのフッ素ゴムが開発されてきた。これらについては、ポリマーの構造、架橋系によって、いろいろな種類のものが存在する。
フッ素ゴムポリマーの構造としては、ビニリデンフルオライド、ヘキサフルオロプロペン、テトラフルオエチレン、ペンタフルオロプロペン、トリフルオロエチレン、ビニルフルオライド、メチルビニルエーテル、プロピルビニルエーテルなどの1種または2種以上との共重合体などが例示され、ビニリデンフルオライドとヘキサフルオロプロペンを共重合した二元系フッ素ゴム、これにテトラフルオエチレンを共重合させた三元系フッ素ゴムなどが例示される。
フッ素ゴムの架橋には、アミン系、ポリオール系(ビスフェノール系)およびパーオキサイド系の3種類がある。架橋系によっては必須配合剤が存在し、この架橋系の選択がフッ素ゴムの特徴を引き出す上で重要になっている。アミン系とポリオール系は、アミンやオニウム塩を触媒としてフッ素ゴム分子鎖から脱フッ酸反応により二重結合を形成させ、この二重結合にジアミンまたは、ビスフェノール化合物を付加させて架橋を行う。このとき、フッ酸中和のため、金属酸化物を配合する必要がある。また、ポリオール系では、架橋剤自身に触媒作用がないため、共触媒として、水酸化カルシウムが配合される。
パーオキサイド系のフッ素ゴムは、フッ素ゴム分子中に架橋サイトとして、ヨウ素や臭素を導入したものが主流で、詳細なポリマーの構成は、ポリマー製造各社により異なっている。パーオキサイド系の架橋剤として、多官能不飽和化合物が挙げられ、トリアリルイソシアヌレート(TAIC)などが使用される。このTAICとフッ素ゴムの架橋サイトが、開始剤(架橋促進剤)として用いる有機過酸化物(パーオキサイド)から発生したラジカルによって反応することで架橋が起こる。パーオキサイド架橋系のフッ素ゴムでは、金属酸化物などの受酸剤を必要としないので、耐水性や耐酸性に非常に優れたフッ素ゴムが得られることが知られている。
フッ素ゴムに導電性を付与することについては、溶剤を頻繁に使用する作業場で、導電性フッ素ゴムを静電気防止シートとして使用したり、ガソリンなどの燃料を使用する環境で、滑り止め静電気防止作業マットに使用するといったニーズに対して検討が行われてきており、フッ素ゴム単体がもつ耐薬品性、耐油性に加えて、カーボンブラックやその他の導電性付与剤や導電性添加材を配合することによって、導電性を持たせてゴムシート化することが行われてきた。
しかしながら、フッ素ゴムはゴム自体の硬度が高く、加工性が悪いため、フィラーや添加剤を混練して成型加工する上で、フッ素ゴムに大量のカーボンブラックを添加して導電性を高めることは事実上困難であり、その結果、フッ素ゴムにカーボンブラックを添加するだけでは、表面抵抗が10の13乗Ωのオーダのゴムしか得られず、高導電性フッ素ゴムはおろか、抵抗値が半導体領域の導電性のフッ素ゴムを得ることも困難であった。また、なんとか多量のカーボンブラックを配合してフッ素ゴムの導電性を高めても、ゴム弾性や伸びといったゴムの機械的特性が低下し、ゴム組成物としての機能を果たせなくなってしまっていた。
導電性フッ素ゴムの抵抗を下げるために、種々の検討が行われており、例えば、特許文献1には、フッ素ゴムに炭素繊維を配合して電気抵抗を低下させたフッ素ゴム組成物が開示されている。また、特許文献2には、フッ素ゴムに特定のオニウム塩化合物を配合して優れた導電性を有して低硬度のフッ素ゴム組成物とすることが開示されている。
特公平3−34497号公報 特開平8−59940号公報
しかしながら、特許文献1のように炭素繊維を配合して導電性を高めた場合には、炭素繊維の配向性が出るために、方向によって抵抗値が変化して安定しなくなり、また、機械的物性にも不安定さが出るという傾向があり、炭素繊維によらずに導電性フッ素ゴムの電気抵抗を低下させることが求められていた。
また、特許文献2に記載された技術によれば、炭素繊維は使用しないものの、導電性を改善できるレベルが、表面抵抗値で10の6乗から10の11乗Ωのオーダにとどまっており、半導体領域の電気抵抗を有する導電性フッ素ゴムとはできても、例えば表面抵抗で1000Ω以下のオーダの高導電性フッ素ゴムを得ることはできなかった。
したがって、本発明の目的は、カーボンブラックの配合によって導電性を付与しながらも、高導電性を有すると共にゴムとして好ましい機械的特性を有するフッ素ゴム組成物を提供することにある。
また、本発明の他の目的は、カーボンブラックが配合された高導電性フッ素ゴム組成物において、カーボンブラックの配合量を調整する以外の、電気抵抗を調整するための方法を提供することにある。
発明者は、鋭意検討の結果、過酸化物架橋可能な特定の3元系フッ素ゴムに、FEFカーボンブラックと、トリアリルイソシアヌレートを配合すると、フッ素ゴムのゴム弾性を失わずに導電性を大幅に高めることができることを知見し、本発明を完成させた。
本発明は、過酸化物架橋が可能な特定の3元系フッ素ゴムに、特定のカーボンブラックと、架橋剤として特定の多官能不飽和化合物と、架橋促進剤として有機過酸化物を配合し、表面抵抗のオーダを1000Ω以下としたカーボンブラック含有高導電性フッ素ゴム組成物である。
前記3元系フッ素ゴム、ビニリデンフルオライドとヘキサフルオロプロピレン、そしてテトラフルオロエチレンを共重合させたフッ素ゴムである。また、前記多官能不飽和化合物、トリアリルイソシアヌレートである。また、前記カーボンブラックは、FEFカーボンである。
また、本発明は、導電性フッ素ゴムの導電性の調整方法であって、前記カーボンブラック含有高導電性フッ素ゴム組成物のトリアリルイソシアヌレートの配合量を増加させることにより、表面抵抗を低下させる導電性調整方法である(請求項)。
本発明によれば、導電添加材としてはカーボンブラックを配合するだけで、表面抵抗1000Ω以下の高導電性フッ素ゴムが得られるという効果が得られる。そして、本発明のカーボンブラック含有高導電性フッ素ゴム組成物は、フッ素ゴムとしてのゴム弾性や強度・伸びといった機械的特性を保っている。
また、本発明のカーボンブラック含有高導電性フッ素ゴム組成物は、金属化合部を実質的に含まないので、周辺環境に金属イオンなどが溶出するおそれがない。したがって、耐酸性や耐液性が要求される分野や金属イオンの溶出が問題となりやすい半導体製造装置分野などに特に好適に使用できる。
さらに、3元系フッ素ゴムを、ビニリデンフルオライドとヘキサフルオロプロピレン、そしてテトラフルオロエチレンを共重合させたフッ素ゴムとし、多官能不飽和化合物を、トリアリルイソシアヌレートとし、さらに、カーボンブラックを、FEFカーボンとしているので、より効果的に導電性を高めながらフッ素ゴムのゴム特性を維持できる。
また、本発明の導電性フッ素ゴムの導電性調整方法(請求項)によれば、カーボンブラックの配合量をかならずしも変化させなくとも、トリアリルイソシアヌレートの配合量を変化さることでも電気抵抗を調整できるので、より広い範囲で、導電性とゴムの機械的特性(ゴム硬度その他ゴムの諸特性)の両方を所望の特性に調整した導電性フッ素ゴムが得られる。
四探針法による表面抵抗値の測定原理を示す模式図である。 実施例1〜5における、多官能不飽和化合物の配合量と表面抵抗値の関係を示すグラフである。 実施例6〜10における、多官能不飽和化合物の配合量と表面抵抗値の関係を示すグラフである。 比較例1〜5における、多官能不飽和化合物の配合量と表面抵抗値の関係を示すグラフである。 比較例6〜10における、多官能不飽和化合物の配合量と表面抵抗値の関係を示すグラフである。 比較例11〜15における、多官能不飽和化合物の配合量と表面抵抗値の関係を示すグラフである。
本発明の実施形態を説明する。本発明のカーボンブラック含有高導電性フッ素ゴム組成物は、過酸化物架橋が可能な3元系フッ素ゴムに、カーボンブラックと、架橋剤として多官能不飽和化合物と、架橋促進剤として有機過酸化物を配合したフッ素ゴム組成物であり、ゴム組成物の表面抵抗のオーダが1000Ω以下であるようなカーボンブラック含有高導電性フッ素ゴム組成物である。以下、各構成要素について説明する。
(フッ素ゴム)
本発明に使用するフッ素ゴムは、過酸化物(パーオキサイド)で架橋可能な3元系フッ素ゴムである。3元系フッ素ゴムポリマーの構造としては、ビニリデンフルオライド、ヘキサフルオロプロペン、テトラフルオエチレン、ペンタフルオロプロペン、トリフルオロエチレン、ビニルフルオライド、メチルビニルエーテル、プロピルビニルエーテルなどのプレポリマーを3種共重合させた共重合体が本発明に使用でき、特に、ビニリデンフルオライドとヘキサフルオロプロペンとテトラフルオエチレンを共重合させた三元系フッ素ゴムが好ましく使用できる。
(カーボンブラック)
本発明で導電性添加材として使用するカーボンブラックは、一般的にゴム工業用として市販されているものが使用でき、具体的には、天然ガス、石油系または石炭系重質油などを不完全燃焼、あるいは熱分解によって精製されたものが使用できる。また、カーボンブラックは製造方法によって、チャンネルブラック、ファーネスブラック、サーマルブラック、アセチレンブラックなどに分類される。前記製造方法によるカーボンであればいずれも使用することができるが、本発明に使用するカーボンブラックとして特に好ましいのは、ファーネスブラックとアセチレンブラックである。
本発明の導電性フッ素ゴム組成物の導電性を高めるためには、配合するカーボンブラックが、以下の性状を備えるカーボンブラックであることが特に好ましい。即ち、カーボンブラックの窒素吸着比表面積が、9〜150[m2/g](平方メートル/グラム)、DBP吸油量が30〜170[cm3/100g](立方センチメートル/100グラム)、算術平均粒子径が15〜300[nm](ナノメートル)の性状範囲にあるカーボンブラックである。なお、これら性状の試験方法及び算出方法については、JIS K 6217:1997(ゴム用カーボンブラックの基本性能の試験法)に準拠して行うものであり、窒素吸着比表面積は、脱気したカーボンブラックを液体窒素に浸せきさせ、平衡時におけるカーボンブラック表面に吸着した窒素量を測定し,この値から比表面積(m2/g)を算出するものであり、DBP吸収量とは、カーボンブラック100gに吸収可能なDBP(可塑剤の一種であるジブチルフタレートの略)吸収量(cm3)を測定するものであり、算術平均粒子径とは、カーボンブラック凝集体を構成する小さなカーボンブラック粒子成分を電子顕微鏡で観察して粒子径を測定し算術平均をとって算出した平均直径である。
上記性状を備え、市販されているファーネスカーボンブラックとしては、ISAF、HAF、MAF、FEF、GPF、SRF、FTなどが挙げられる。
カーボンブラックの配合部数は、所望されるゴム製品の特性や使用するポリマー成分及びカーボンブラックの性状により一律には規定できないが、ゴム製品の硬度とゴム弾性のバランス、また得られる導電性を考慮して、フッ素ゴムポリマー成分100重量部に対し、通常1〜100重量部が好適な配合部数であり、より好ましくは1〜50重量部である。
なお、本発明の高導電性フッ素ゴム組成物には、導電性材料の主体である上記カーボンブラック以外に、他の導電性材料(例えば導電性オイルや導電性フィラーなど)を配合することもできる。
(多官能不飽和化合物)
本発明で、架橋剤として使用する多官能不飽和化合物としては、トリアリルイソシアヌレート(TAIC)、トリメチロールプロパントリメタクリラート(TMPTMA)、トリメタリルイソシアヌレート(TMAIC)、トリアリルトリメリテート(TATM)、トリアミノピリミジン(TAPM)、トリアリルシアヌレート(TAC)などが挙げられ、パーオキサイド系フッ素ゴムで架橋剤として機能する。これら多官能不飽和化合物の中でも、トリアリルイソシアヌレート(TAIC)、および、トリメタリルイソシアヌレート(TMAIC)の使用が特に好ましい。
(有機過酸化物)
有機過酸化物は、主に樹脂・合成ゴムの重合開始剤、硬化剤、あるいは架橋剤として使用されているものが使用できる。一般的に、有機過酸化物は過酸化水素の誘導体であって、この分子内の酸素結合が存在することにより、比較的低い温度で熱的に分解し、容易に遊離ラジカルを生成する。この生成した遊離ラジカルが引き起こす反応としては、不飽和二重結合への付加反応および水素等の引き抜き反応が挙げられる。この反応の中で、後者の水素引き抜き反応を利用して、各種合成ゴム・合成樹脂の架橋剤や架橋促進剤、ポリプロピレンの改質剤などとして使用されている。
合成ゴムなどの架橋に用いられる有機過酸化物には、種々の系統の有機化酸化物があり、ゴムコンパウンドの混練中おける熱履歴による分解、スコーチの危険性がないこと、一定の架橋温度、一定の時間内で満足すべき架橋が行われることを考慮して、適宜使い分けられている。具体的には、有機化酸化物は、(i)ジアシルパーオキサイド、(ii)パーオキシエステル、(iii)ジアルキルパーオキサイド、(iv)パーケタールのグループに大別され、配合設計、成型条件などにより、その都度選択される。
本発明においては、高導電性を得るために、多量のカーボンブラックを配合処方するため、前記(i)アシル系のパーオキサイドは使用できないが、それ以外は全て使用可能である。その中でも、特に好ましいのは、(iii)アルキル系のパーオキサイドである。
また、本発明の導電性フッ素ゴム組成物には、必須成分ではないが、カーボンブラックの混練を助けるために、ステアリン酸などの滑剤を配合することが好ましい。また、必要に応じて、補強材や他の添加剤を配合してもよい。
本発明の実施に好適な架橋剤などの配合量の例を以下に示す。ゴム成分としてのフッ素ゴム100重量部に対し、多官能不飽和化合物は1〜10重量部、有機過酸化物は0.01〜15重量部、滑剤は0.1〜5重量部程度を配合することにより、混練やパーオキサイド架橋を好適に行うことができる。
以下に、本発明の導電性フッ素ゴム組成物に係るゴム製品の製造方法について説明する。本発明のカーボンブラック含有フッ素ゴム組成物は、各成分を任意の順序で配合し、十分に混合する事により調製できる。これら配合剤とゴム組成物の混合は、二本ロール、ニーダー、バンバリー、二軸混練押出機、および各種ミキサー、その他の混練機を使用して行う事ができ、十分に混練することにより薬剤が均一に分散された未加硫のゴム組成物を得ることができる。
上記工程により未加硫状態で得られた、カーボンブラック含有フッ素ゴム組成物を架橋させて、ゴム架橋物を製造するための方法には、従来公知の熱架橋方法を広く採用できる。例えば、所定の形状の金型内に充填して架橋を行う事により、所望の形状の架橋ゴム組成物を得ることができる。また、本発明のゴム組成物は、未加硫ゴム組成物を連続的に押出加工して、加熱炉を通して連続架橋を行って、長尺の帯状のゴム組成物を得ることもできる。加熱は二段階以上に分けて行う事もでき、架橋方法としては、LCM(液体架橋)、UHF(高周波架橋)、スチーム、遠赤外線など種々の架橋方法によることができる。
本発明の作用効果を説明する。
本発明のカーボンブラック含有高導電性フッ素ゴム組成物においては、フッ素ゴムとして過酸化物架橋が可能な3元系フッ素ゴムを使用し、多官能不飽和化合物と組み合わせているので、高導電性となるのに十分なカーボンブラックを配合し、混練・架橋して、ゴム弾性を備えるゴム組成物を得ることができ、特に、導電性フッ素ゴムの表面抵抗のオーダを1000Ω以下とした高導電性領域の導電性フッ素ゴムにできる。
従来の技術常識では、フッ素ゴムにカーボンブラックを配合して高導電性フッ素ゴムを得ようとしても、カーボンブラックの過剰な配合によりゴム弾性が失われたり、十分な導電性が得られないと考えられていた。特に、過酸化物架橋系のフッ素ゴム組成物は、架橋前のポリマーでも硬度が高く、またグリーン強度も強いため、ニーダーやロールなどによる混練の作業性が非常に悪く、かなりの作業時間を要するものであって、カーボンブラックを大量に配合する用途には向かないと考えられていた。これは、混練中の温度上昇が激しいく、大量のマスターバッチを作るのが困難であり、混練機にかかる負担も大きくなるからである。
ところが、本発明によれば、そのメカニズムは良くわからないものの、そうした技術常識に反し、フッ素ゴムのゴム弾性や強度・伸びといった機械的特性を失わずに導電性が高められて、カーボンブラックの配合によってもゴム弾性を有する高導電性フッ素ゴムが得られるのである。
本発明のカーボンブラック含有高導電性フッ素ゴム組成物では、カーボンブラックの配合によって十分に導電性を高めることができ、特許文献1に記載の技術のように炭素繊維を配合する必要がないので、炭素繊維の配向に起因する電気抵抗や強度の不安定さといった問題も生じずに、電気抵抗や強度の安定に優れた高導電性フッ素ゴムが得られる。
また、本発明のカーボンブラック含有高導電性フッ素ゴム組成物では、架橋系に金属酸化物などを必要としないので、架橋したフッ素ゴムからの金属イオンなどの溶出が基本的に起こらない。したがって、本発明のカーボンブラック含有高導電性フッ素ゴム組成物は、耐液性や耐油性にすぐれるだけでなく、特に金属イオンなどの溶出を嫌う利用分野にも好適に使用でき、耐薬品性、特に耐酸性が要求される分野でも、金属元素の溶出の問題が生じない。
本発明のカーボンブラック含有高導電性フッ素ゴム組成物は、導電性が要求されると共に耐熱性、耐薬品性、耐油性、耐候性などの要求水準が高い分野で好ましく使用できるが、特に、ゴムシートやパッキン(シール材)、ゴムパッドに加工されて、半導体製造装置などの構成部品として、好ましく使用できる。
また、本発明のカーボンブラック含有高導電性フッ素ゴム組成物においては、後述する実施例において示されるように、多官能不飽和化合物の配合量を変更することにより、導電性フッ素ゴム組成物の電気抵抗を変化させることができ、具体的には、多官能不飽和化合物の配合量を多くすることで、導電性フッ素ゴム組成物の電気抵抗を低下させて、より高い導電性を有するようにできる。
従来の技術常識では、導電性フッ素ゴムの電気抵抗を変化させるためには、カーボンブラックの配合量を変化させることが必要であったが、その場合、得られるフッ素ゴムの硬度や諸物性も大きく変化してしまい、導電性とゴム硬度・機械的特性を両立できる配合を見つけ出すことが非常に難しかった。
一方、本発明の高導電性フッ素ゴムおよびその導電性調整方法によれば、カーボンブラックの配合量を変化させることなく電気抵抗を調整できるので、より広い範囲で、導電性とゴム硬度(その他ゴムの諸特性)の両方を所望の特性に調整した導電性フッ素ゴムが得られる。

[実施例]
次に本発明を実施例により詳細に説明するが、本発明はこれらの例のみに限定されるものではない。本文中の部とは、全て重量部を意味する。なお、各実施例および比較例の配合及び試験結果を、実施例1〜5については表1に、実施例6〜10については表2に、比較例1〜5については表3に、比較例6〜10については表4に示す。
なお、各実施例及び比較例について得られた導電性フッ素ゴム組成物(架橋物)の物性評価は、以下のように行った。ゴムの硬度については、JIS K6253(1997)「加硫ゴム及び熱可塑性ゴムの硬さ試験方法」に準拠し、アスカー硬度計を使用して、JIS−Aのゴム硬度を測定した。ゴムの伸びや引っ張り強度の評価に関しては、JIS K6251(2004)「加硫ゴム及び熱可塑性ゴムの引張特性の求め方」に基づき、得られたゴムシートを所定形状のダンベルに加工して引っ張り試験に供し、応力ひずみ線図を測定して求めた。また、表面抵抗(表中では単に抵抗値と記載している)の測定は、JIS K1794に基づき四探針法にて行なった。四探針法は、図1にその原理を示すように、試料に4本の電極(四探針プローブ)を直線状に置き、外側の二探針(AとD)間に一定電流を流し、内側の二探針(BとC)間に生じる電位差を測定し抵抗を求める測定法である。本試験においては、三菱油化株式会社製の表面抵抗率計Loresta AP MCP−T400を使用して測定を行った。なお、表面抵抗の測定試料は厚さ2mmの架橋ゴムシートを用い、測定の環境温度は室温25℃で、探針AB間、BC間、CD間の距離はそれぞれ5mmのプローブを用いて測定を行っている。
(実施例1)
ゴム成分にフッ素ゴムとして、3元系(ビニリデンフルオライドとヘキサフルオロプロピレン、そしてテトラフルオロエチレンを共重合させたフッ素ゴムポリマー)のパーオキサイド架橋タイプのフッ素ゴム G902(ダイキン工業株式会社製)を100部使用し、カーボンブラックとして、FEFカーボン(ファーネスブラックの1種)である シーストG-SO(東海カーボン株式会社製)30部、架橋剤として、トリアリルイソシアヌレート(TAIC)(日本化成株式会社製)を1部、滑剤として、ステアリン酸(日油株式会社製)を1部配合して、加圧ニーダーを用いて混練しコンパウンドを得た。これにオープンロールにて、有機過酸化物であるパークミルD(日油株式会社製)を1部加えて、シート状に分出しした。得られた未架橋コンパウンドを規定の金型に入れて予備成型を行い、その後、熱プレス加工機にて、180℃×20分間保持して架橋し、厚さ2mmの架橋シートを得た。その後、2次加硫として、200℃×4時間、熱風式ギアオーブンで架橋を行って、特性試験に供した。
(実施例2)
実施例2として、架橋剤であるTAICを実施例1の1部の代わりに、2部配合した他は、実施例1と同じ配合及び混練・架橋工程を経てシート状ゴム試験片を得た。
(実施例3)〜(実施例5)
同様にして、架橋剤であるTAICを3部配合した他は、実施例1と同じ配合及び混練・架橋工程を経た実施例3のシート状ゴム試験片を得た。実施例4、5についても同様にTAICの配合量をそれぞれ4部、5部としてシート状ゴム試験片を得た。
実施例1ないし実施例5の導電性フッ素ゴム組成物においては、いずれもフッ素ゴムとしては適度なゴム弾性を有すると共に、伸びや強度も十分なフッ素ゴムシートが得られた。また、表面抵抗値のレベルも数十Ωのレベルであり、十分な導電性を有する高導電性フッ素ゴムが得られている。なお、表面抵抗値の測定は、プローブの方向を変えて3回行い、その平均値を求めて表に記載した。プローブの方向を変更しても、特に電気抵抗に大きな変化(ばらつき)は生じず、表面電気抵抗の測定は安定していた。
また、表面抵抗値は、実施例1の39Ωから実施例5の13Ωへと、架橋剤(TAIC)の量を増やすにしたがって単調に低下し、多官能不飽和化合物の量を増やすことで、電気抵抗を低下できることが確認された。実施例1〜実施例5における多官能不飽和化合物の量と表面抵抗の関係を、図2のグラフに示す。また、TAICの量を変えても、ゴムの物性には大きな変化はなかった。
Figure 0005254889
(実施例6)
実施例6として、実施例1のフッ素ゴムであるG902の代わりに、G901(ダイキン工業株式会社製)を100部使用した以外は、実施例1と同じ配合及び混練・架橋工程を経たシート状ゴム試験片を得た。G901とG902は共に、ビニリデンフルオライドとヘキサフルオロプロピレン、そしてテトラフルオロエチレンを共重合させた3元系フッ素ゴムであり、主に粘度が異なる。
(実施例7)〜(実施例10)
実施例7として、架橋剤であるTAICを実施例6の1部の代わりに、2部配合した他は、実施例6と同じ配合及び混練・架橋工程を経たシート状ゴム試験片を得た。実施例8、9、10についても同様にTAICの配合量をそれぞれ3部、4部、5部としてシート状ゴム試験片を得た。
実施例6ないし実施例10の配合及び物性を表2に示すが、いずれも適度なゴム弾性を有すると共に、伸びや強度も十分なフッ素ゴムシートが得られた。また、表面抵抗値のレベルも数十Ωのレベルであり、十分な導電性を有する高導電性フッ素ゴムが得られている。また、表面抵抗値は、実施例6の97Ωから実施例10の36Ωへと、架橋剤(TAIC)の量を増やすにしたがって低下し、多官能不飽和化合物の量を増やすことで、電気抵抗を下げることができることが確認された。実施例6〜実施例10における多官能不飽和化合物の量と表面抵抗の関係を、図3のグラフに示す。また、TAICの量を変えても、ゴムの物性には大きな変化はなかった。
Figure 0005254889
(比較例1)
比較例1として、実施例1の3元系フッ素ゴムであるG902の代わりに、2元系フッ素ゴム(ビニリデンフルオライドとヘキサフルオロプロピレンを共重合させた2元系フッ素ゴム) G8001(ダイキン工業株式会社製)を100部使用し、カーボンブラックとして、シーストG-SOを60部にした以外は、実施例1と同じ配合及び混練・架橋工程を経てシート状ゴム試験片の作成を試みた。
(比較例2)〜(比較例5)
比較例2として、架橋剤であるTAICを比較例1の1部の代わりに、2部配合した他は、比較例1と同じ配合及び混練・架橋工程を経てシート状ゴム試験片の作成を試みた。比較例3、4、5についても同様にTAICの配合量をそれぞれ3部、4部、5部としてシート状ゴム試験片の作成を試みた。
比較例1ないし比較例5の配合及び物性を表3に示す。比較例1については、ゴム組成物が混練を行う時点で非常に硬くなってしまい、硬度測定や引っ張り試験ができるようなシート状ゴム試験片が製造できなかった。また、比較例2〜比較例5については、ゴムシート化はできたものの、その硬度が非常に高く、ダンベル化して引っ張り試験を行うことができなかった。比較例1〜5では、表面抵抗値のレベルは数Ωのレベルであり、十分な導電性を有する高導電性フッ素ゴムとなったものの、ゴム弾性やゴム組成物の物性低下が著しかった。また、表面抵抗値と、架橋剤(TAIC)の量の関係を調べたが、図4のグラフに示すように、2元系フッ素ゴムG8001を用いた比較例1〜5においては、多官能不飽和化合物の量と表面抵抗の間には、単調な相関関係が認められなかった。
Figure 0005254889
(比較例6)
比較例6として、比較例1のフッ素ゴムであるG8001の代わりに、G801(ダイキン工業株式会社製)を100部使用し、カーボンブラックとして、シーストG-SOの添加量を50部にした以外は、比較例1と同じ配合及び混練・架橋工程を経てシート状ゴム試験片の作成を試みた。G8001もG801も、ビニリデンフルオライドとヘキサフルオロプロピレンを共重合させた2元系フッ素ゴムであり、両者は主に粘度が異なる。
(比較例7)〜(比較例10)
比較例7として、比較例6の架橋剤であるTAICを1部の代わりに、2部配合した他は、比較例6と同じ配合及び混練・架橋工程を経てシート状ゴム試験片の作成を試みた。比較例8、9、10についても同様にTAICの配合量をそれぞれ3部、4部、5部としてシート状ゴム試験片の作成を試みた。
比較例6ないし比較例10の配合及び物性を表4に示す。比較例6については、ゴム組成物が混練時点で非常に硬くなってしまい、硬度測定や引っ張り試験ができるようなシート状ゴム試験片が製造できなかった。また、比較例7、比較例8については、ゴムシート化はできたものの、ダンベル化して引っ張り試験を行うことができなかった。比較例9、比較例10については、ゴムシート化して、さらにダンベル化して引っ張り試験を行うこともできたが、ゴムが硬く、伸びに乏しく、強度も弱いものとなってしまった。また、比較例7〜10では、表面抵抗値のレベルは100〜200Ωのレベルであり、十分な導電性を有する高導電性フッ素ゴムとはなったものの、ゴム弾性やゴム組成物の物性低下が著しかった。また、表面抵抗値と、架橋剤(TAIC)の量の関係を調べたが、図5のグラフに示すように、2元系フッ素ゴムG801を用いた比較例6〜10においては、多官能不飽和化合物の量と表面抵抗の間には、単調な相関関係が認められなかった。
Figure 0005254889
(比較例11)
比較例11として、比較例1のカーボンブラック(シーストG-SO)の添加量を30部にした以外は、比較例1と同じ配合及び混練・架橋工程を経てシート状ゴム試験片の作成を試みた。
(比較例12)〜(比較例15)
比較例12として、比較例11の架橋剤であるTAICを1部の代わりに、2部配合した他は、比較例11と同じ配合及び混練・架橋工程を経てシート状ゴム試験片の作成を試みた。比較例13、14、15についても同様にTAICの配合量をそれぞれ3部、4部、5部としてシート状ゴム試験片の作成を試みた。
比較例11ないし比較例15の配合及び物性を表4に示す。比較例11〜比較例15のいづれについても、硬度測定や引っ張り試験ができるようなシート状ゴム試験片が製造できた。また、比較例11〜比較例14では、表面抵抗値のレベルは50〜70Ωのレベルであり、十分な導電性を有する高導電性フッ素ゴムにはなったものの、ゴム組成物の物性、特に伸びの物性低下が著しかった。また、表面抵抗値と、架橋剤(TAIC)の量の関係を調べたが、図6のグラフに示すように、比較例11〜14においては、多官能不飽和化合物の量と表面抵抗の間には、単調な相関関係は認められなかった。なお、比較例15については、表面抵抗値が非常に大きく(10の6乗Ωのオーダ以上の半導体領域の抵抗になっているものと推定される)、使用した測定装置では測定ができなかった。
Figure 0005254889
本発明によれば、有機過酸化物架橋によってカーボンブラックを含有した高導電性フッ素ゴム組成物を提供することができると共に、当該ゴム組成物により成型されたゴム製品が、フッ素ゴムが持つ特性、即ち有機過酸化物架橋における純粋性(金属化合物などが溶出しない)、耐薬品性、耐熱性、耐オゾン性、耐プラズマ性に優れ、機械的強度に加えゴム弾性を有した上で導電性を付与することができ、なおかつ導電性のコントロールができるため、特に半導体製造装置などに好ましく使用でき、産業上の利用価値が高い。
1 サンプル
2 電極
3 電流計
4 電圧計

Claims (2)

  1. ビニリデンフルオライドとヘキサフルオロプロピレン、そしてテトラフルオロエチレンを共重合させた過酸化物架橋が可能な3元系フッ素ゴムに、
    FEFカーボンブラックと、
    架橋剤としてトリアリルイソシアヌレートと、
    架橋促進剤として有機過酸化物を配合し、
    表面抵抗のオーダを1000Ω以下としたカーボンブラック含有高導電性フッ素ゴム組成物。
  2. 請求項1に記載のカーボンブラック含有高導電性フッ素ゴム組成物のトリアリルイソシアヌレートの配合量を増加させることにより、表面抵抗を低下させる導電性調整方法。
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