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JP5249825B2 - 有機太陽電池 - Google Patents

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Description

本発明は、有機太陽電池に関するものである。
産業の発展に伴ってエネルギーの使用量が飛躍的に増加しており、地球への環境負荷が小さく且つ経済的で高性能な新しいクリーンエネルギー源の研究開発が各所で行われている。ここで、太陽電池は、無限にあるといってよい太陽光を利用することから、新しいエネルギー源として注目されている。
ここにおいて、現在実用化されている太陽電池の殆どは、単結晶シリコン、多結晶シリコン、アモルファスシリコンを用いた無機シリコン系太陽電池である。しかし、無機シリコン系太陽電池は、その製造プロセスが複雑でコストが高いという欠点を有するため、広く一般家庭に普及するには至ってない。このような欠点を解消するために、簡単なプロセスで低コスト化・大面積化が可能な、有機材料を用いた有機太陽電池(有機発電素子)の研究が盛んになってきている。
一例として、有機太陽電池の一種であり、多孔質酸化チタン、ルテニウム色素、ヨウ素とヨウ素イオンを用いた光化学反応に基づく色素増感型太陽電池が、10%という高い変換効率を有することが発表された(非特許文献1参照)。
また、色素増感型太陽電池とは種類の異なる有機太陽電池である有機薄膜型太陽電池においても、低分子材料である電子供与性半導体および電子吸引性半導体を真空蒸着法により蒸着することで形成したダブルへテロ構造の発電層を一対の電極である正電極と負電極との間に備えた有機薄膜型太陽電池において、3.6%の変換効率が得られたたことが報告されている(非特許文献2参照)。
また、有機太陽電池における発電層の材料としては、低分子材料に限らず、高分子材料(ポリマー)を用いることの検討も進んでいる。これは、発電層の材料が低分子材料の場合には発電層を真空蒸着法により形成する必要があるのに対して、発電層の材料が高分子材料の場合には発電層を塗布・印刷技術を利用して形成でき、製造コストの低コスト化を図れるためである。
高分子材料を用いた有機太陽電池としては、共役系ポリマーとフラーレン誘導体との混合層を発電層として備えた有機薄膜型太陽電池で、近年、5.5%の変換効率を得たことが報告されており(非特許文献3参照)、様々な研究機関で高効率な有機薄膜型太陽電池を得るための工夫・検討がなされている。
ところが、有機薄膜型太陽電池は、有機EL素子(有機エレクトロルミネッセンス素子)と同じような構造、材料を用いていることから、実用化を図る上で耐久性に問題があった。
有機薄膜型太陽電池の耐久性の向上を図る手段としては、例えば、酸素や水分を除去することで光照射による特性の低下を抑える技術が報告されている(非特許文献4,5参照)。
Christophe J Barbe,et,al,「Nanocrystalline Titanium Oxide Electrodes for Photovoltaic Application」,J.Am.Ceram.Soc.,80,1997,p.3157-3171 P.Peumans,et,al,「Very-high-efficiency double-heterostructure copper phthalocyanine/C60 photovoltaic cells」,APPLIED PHYSICS LETTERS,VOLUME 79,NUMBER 1,2001,p.126-128 J.PEET,et,al,「Efficiency enhancement in low-bandgap polymer solar cells by processing with alkane dithiols」,nature materials,VOL 6,2007,p.497-500 Kenji Kawano,el,al,「Degradation of organic solar cells due to air exposure」,Solar Energy Materials & Solar cells.90,2006,p.3520-3530 H.Neugebauer et,al,「Stability and photodegradation mechanisms of conjugated polymer/fullerene plastic solar cells」, Solar Energy Materials & Solar cells.61,2000,p.35-42
ところで、有機薄膜太陽電池の実用化には、光を電気に効率良く変換し、その特性を長時間維持することが必要である。しかしながら、有機太陽電池の耐久性の向上を図るために、上記非特許文献4,5に開示された技術を適用して酸素や水分を除去しても特性の劣化は徐々に進行してしまう。
本発明は上記事由に鑑みて為されたものであり、長寿命化が可能な有機太陽電池を提供することを目的とするものである。
請求項1の発明は、一対の電極間に電子供与性半導体と電子吸引性半導体との混合層を有する有機太陽電池素子を備えた有機太陽電池であって、混合層中に蓄積された電荷を混合層外へ放出させるように混合層を加熱可能な加熱手段を備えることを特徴とする。
この発明によれば、混合層中に蓄積された電荷を混合層外へ放出させるように混合層を加熱する加熱手段を備えているので、加熱手段により混合層を加熱することによって、有機太陽電池素子に蓄積された電荷を発電に寄与させることができるともに、当該電荷が放出されることで有機太陽電池素子の特性が回復するから、長寿命化を図れる
請求項2の発明は、請求項1の発明において、基板と、基板の一表面側に形成された前記有機太陽電池素子と、前記有機太陽電池素子を覆う形で基板の前記一表面側に形成された表面保護層とを備えることを特徴とする。
請求項3の発明は、請求項1又は2の発明において、前記加熱手段は、前記有機太陽電池素子の外部に設けられ通電されることにより発熱して伝熱により前記混合層を加熱する発熱体であること特徴とする。
この発明によれば、前記混合層を加熱する際の前記混合層の均熱化を図れる。
請求項4の発明は、請求項1又は2の発明において、前記一対の電極の少なくとも一方が抵抗体であり、当該抵抗体が前記加熱手段を構成していることを特徴とする。
この発明によれば、前記加熱手段を前記有機太陽電池素子とは別途に設ける必要がなく、低コスト化を図れる。
請求項5の発明は、請求項1又は2の発明において、前記一対の電極の少なくとも一方が金属電極であり、前記加熱手段は、前記有機太陽電池素子の外部に設けられ通電されることにより前記金属電極を誘導加熱するコイルからなることを特徴とする。
この発明によれば、前記加熱手段により前記有機太陽電池素子への入射光が遮られるのを防止することができる。
請求項1の発明では、加熱手段により混合層を加熱することによって、太陽電池素子に蓄積された電荷を発電に寄与させることができるともに、当該電荷が放出されることで太陽電池素子の特性を回復できるから、長寿命化を図れるという効果がある。
実施形態1の有機太陽電池を示し、(a)は概略断面図、(b)は概略正面図である。 同上の特性説明図である。 同上の特性説明図である。 同上の特性説明図である。 実施形態2の有機太陽電池を示し、(a)は概略断面図、(b)は概略正面図である。 実施形態3の有機太陽電池を示し、(a)は概略断面図、(b)は概略正面図である。 実施形態4の有機太陽電池を示し、(a)は概略断面図、(b)は概略正面図である。 実施形態5の有機太陽電池を示す概略断面図である。
(実施形態1)
本実施形態の有機太陽電池は、図1に示すように、平面視矩形状(図示例では、平面視長方形状)の基板1と、基板1の一表面側(図1(b)における上面側)に形成された有機太陽電池素子2と、有機太陽電池素子2を覆う形で基板1の上記一表面側に形成された表面保護層3とを備えている。
有機太陽電池素子2は、基板1の上記一表面側に形成された正電極21と、正電極21上に形成された正孔輸送層22と、正孔輸送層22上に形成され太陽光を吸収して発電する発電層(光電変換層)である混合層23と、混合層23上に形成された電子輸送層24と、電子輸送層24上に形成された負電極25とを備えている。なお、本実施形態では、正電極21と負電極25とが一対の電極を構成している。
上述の有機太陽電池は、基板1として透光性基板を用いるとともに、正電極21を透明電極により構成してあり、基板1の他表面を太陽光(外来光)の光入射面としている。
基板1を構成する透光性基板は、無色透明な基板に限らず、多少の着色がなされたものでもよい。ここにおいて、基板1を構成する透光性基板としては、ソーダライムガラス基板や無アルカリガラス基板などのガラス基板を用いているが、ガラス基板に限らず、例えば、ポリエステル、ポリオレフィン、ポリアミド樹脂、エポキシ樹脂、フッ素系樹脂などにより形成されたプラスチックフィルムやプラスチック基板などを用いればよい。ここで、ガラス基板は、すりガラス状のものでもよい。また、基板1は、当該基板1内に当該基板1の母材とは屈折率の異なる粒子、粉体、泡等を含有させることによって、光拡散性を付与したものでもよい。また、基板1を有機太陽電池素子2の光入射面側に設けない場合は、基板1の材料等は特に限定するものではなく、有機太陽電池素子2を支持できるものであればよい。
また、正電極21は、混合層23中に発生したホールを効率よく収集するための電極であり、正電極21の材料としては、ITOを採用しているが、ITOに限定するものではなく、仕事関数の大きな金属、合金、電気伝導性化合物、あるいはこれらの混合物を用いることが好ましく、HOMO(Highest Occupied Molecular Orbital)準位との差が大きくなりすぎないように仕事関数が4eV以上6eV以下のものを用いるのが好ましい。このような正電極2の材料としては、例えば、金などの金属、CuI、ITO、SnO2、ZnO、IZO等、PEDOT、ポリアニリン等の導電性高分子及び任意のアクセプタ等でドープした導電性高分子、カーボンナノチューブ等の導電性光透過性材料を挙げることができる。ここにおいて、正電極21は、基板1の上記一表面側に、真空蒸着法、スパッタ法、塗布法等によって形成すればよい。ここで、本実施形態のように太陽光を正電極21を透過させて混合層23に入射させるためには、正電極2の光透過率を70%以上にすることが好ましい。さらに、正電極21は、シート抵抗を数百Ω/□以下とすることが好ましく、100Ω/□以下とすることが特に好ましい。ここで、正電極21の膜厚は、当該正電極21の光透過率、シート抵抗等の特性に応じて適宜設定すればよく、当該正電極21の材料により異なるが、500nm以下、好ましくは10〜200nmの範囲で適宜設定すればよい。
また、負電極25は、混合層23中に発生した電子を効率よく収集するための電極であり、負電極25の材料としては、仕事関数の小さい金属、合金、電気伝導性化合物及びこれらの混合物からなる材料を用いることが好ましく、LUMO(Lowest Unoccupied Molecular Orbital)準位との差が大きくなりすぎないように仕事関数が1.9eV以上5eV以下のものを用いるのが好ましい。このような負電極25の材料としては、例えば、アルカリ金属、アルカリ金属のハロゲン化物、アルカリ金属の酸化物、アルカリ土類金属、希土類等、およびこれらと他の金属との合金、例えばナトリウム、ナトリウム−カリウム合金、リチウム、マグネシウム、マグネシウム−銀混合物、マグネシウム−インジウム混合物、アルミニウム−リチウム合金、Al/LiF混合物などを挙げることができる。またアルミニウム、AlとAl23との混合物等も用いることができる。また、負電極25は、アルカリ金属の酸化物、アルカリ金属のハロゲン化物、あるいは金属酸化物からなる薄膜を下地膜として、当該下地膜上に上述の仕事関数が5eV以下である材料からなる少なくとも一層の薄膜を積層するようにしてもよい。このような負電極25としては、例えば、アルカリ金属からなる薄膜とAlからなる薄膜との積層膜、アルカリ金属のハロゲン化物からなる薄膜とアルカリ土類金属からなる薄膜とAlからなる薄膜との積層膜、Al23からなる極薄膜(ここでは、トンネル注入により電子を流すことが可能な10Å以下の薄膜)とAlからなる薄膜との積層膜などが挙げられる。上述の負電極25は、基板1の上記一表面側に、真空蒸着法、スパッタ法、塗布法等によって形成すればよい。
また、上述の混合層23に用いる有機化合物の電子供与性半導体としては、導電性高分子材料の一種であるポリ(3−ヘキシルチオフェン)(以下、P3HTと略称する)を採用しているが、これに限らず、例えば、フタロシアニン系顔料、インジゴ、チオインジゴ系顔料、キナクリドン系顔料、メロシアニン化合物、シアニン化合物、スクアリウム化合物、多環芳香族化合物、また有機電子写真感光体に用いられる電荷移動剤、電気伝導性有機電荷移動錯体、更には他の導電性高分子材料等を挙げることができるが、溶媒に可溶であればよく、これらに限定するものではない。
上述のフタロシアニン系顔料としては、中心金属がCu、Zn、Co、Ni、Pb、Pt、Fe、Mg等の2価のもの、無金属フタロシアニン、アルミニウムクロロフタロシアニン、インジウムクロロフタロシアニン、ガリウムクロロフタロシアニン等のハロゲン原子が配位した3価金属のフタロシアニン、その他、バアナジルフタロシアニン、チタニルフタロシアニン等の酸素が配位したフタロシアニン等があるが、これらに限定するものではない。
また、多環芳香族化合物としては、アントラセン、テトラセン、ペンタセン、或いは、それらの誘導体などがあるが、特にこれらに限定されるものではない。
また、電荷移動剤としては、ヒドラゾン化合物、ピラゾリン化合物、トリフェニルメタン化合物、トリフェニルアミン化合物等があるが、これらに限定するものではない。
また、電気伝導性有機電荷移動錯体としては、テトラチオフルバレン、テトラフェニルテトラチオフラバレン等があるが、これらに限定するものではない。
また、電子を供与する導電性高分子材料としては、上述のP3HTの他、ポリ(3−アルキルチオフェン)、ポリパラフェニレンビニレン誘導体、ポリフルオレン誘導体、チオフェン系ポリマー、導電性高分子のオリゴマー等の有機溶媒に可溶なものが挙げられるが、これらに限定するものではない。
また、上述の混合層23に用いる電子吸引性半導体としては、フラーレン誘導体である[6,6]−フェニルC61−ブチリック アシッド メチル エステル(以下、PCBMと略称する)を採用しているが、これに限らず、例えば、粒径が1nm〜100nm程度の化合物半導体ナノ結晶や、C60やC70、C84などの高次フラーレンを含有するフラーレン誘導体などからなる低分子材料や導電性高分子材料、カーボンナノチューブなどを用いることもできる。ここで、化合物半導体ナノ結晶の形状は、特に限定するものではなく、ロッド状、球状、テトラポッド状でもよい。化合物半導体ナノ結晶の具体的な材料としてはInP、InAs、GaP、GaAs等のIII-V族化合物半導体、CdSe、CdS、CdTe、ZnS等のII-VI族化合物半導体、ZnO、SiO2、TiO2、Al23等の酸化物半導体、CuInSe2、CuInS等を挙げることができるが、特にこれらに限定されるものではない。また、混合層23は、多数のロッド状の化合物半導体ナノ結晶が、電子輸送層24と接する形で200nm以下の間隔で配置されるようにしてもよいが、この間隔は特に限定するものではない。
なお、混合層23の電子供与性半導体および電子吸引性半導体は、高分子材料、低分子材料のいずれかに限定するものではなく、どちらを採用してもよい。
また、正電極21と混合層23との間に介在させる上述の正孔輸送層22の材料としては、ポリエチレンジオイサイドチオフェン:ポリスチレンスルフォネート(PEDOT:PSS)を採用しているが、これに限らず、正孔を輸送する能力を有し、混合層4からの正孔移動効果を有するとともに、正電極21に対して優れた正孔移動効果を有し、また、電子をブロックするような特性を有し、かつ薄膜形成能力の優れた化合物などが挙げられる。具体的には、例えば、フタロシアニン誘導体、ナフタロシアニン誘導体、ポルフィリン誘導体、N,N’−ビス(3−メチルフェニル)−(1,1’−ビフェニル)−4,4’−ジアミン(TPD)や4,4’−ビス[N−(ナフチル)−N−フェニル−アミノ]ビフェニル(α−NPD)等の芳香族ジアミン化合物、オキサゾール、オキサジアゾール、トリアゾール、イミダゾール、イミダゾロン、スチルベン誘導体、ピラゾリン誘導体、テトラヒドロイミダゾール、ポリアリールアルカン、ブタジエン、4,4’,4”−トリス(N−(3−メチルフェニル)N−フェニルアミノ)トリフェニルアミン(m−MTDATA)、及びポリビニルカルバゾール、ポリシラン、アミノピリジン誘導体、ポリエチレンジオイサイドチオフェン(PEDOT)等の導電性高分子等の高分子材料が挙げられるが、これらに限定されるものではない。また、正孔輸送性を有する三酸化モリブデン、五酸化バナジウム、三酸化タングステン、酸化レニウム等の無機酸化物やp形半導体である酸化ニッケル、酸化銅などの無機酸化物等も用いることができ、無機材料であっても正孔輸送性を有していれば、これらに限られることなく使用することができる。
また、負電極25と混合層23との間に介在させる上述の電子輸送層24の材料としては、例えば、バソクプロイン、バソフェナントロリン、及びそれらの誘導体、TPBi、シロール化合物、トリアゾール化合物、トリス(8−ヒドロキシキノリナート)アルミニウム錯体、ビス(4−メチル−8−キノリナート)アルミニウム錯体、オキサジアゾール化合物、ジスチリルアリレーン誘導体、シロール化合物、TPBI(2,2’,2″−(1,3,5−ベンゼントリル)トリス−[1−フェニル−1H−ベンツイミダゾール])等があげられるが、電子輸送性を有する材料であればよく、特にこれらに限定されるものでない。また、電子輸送層24の材料は、混合層23の材料として挙げた化合物半導体ナノ結晶や、C60やC70、C84等の高次フラーレンを含有するフラーレン誘導体等からなる低分子材料や、導電性高分子、カーボンナノチューブなども用いることができ、電子輸送性材料であれば特に限定されることなく使用することができる。ここで、電子輸送層24に用いる材料としては、電子移動度が10-6cm2/Vs以上の材料が好ましく、10-5cm2/Vs以上の材料がより好ましい。
また、上述の表面保護層3の材料としては、ガスバリア性を有する材料を採用すればよく、例えば、フッ素系化合物、フッ素系高分子、その他の有機分子、高分子材料等を採用すればよい。ここで、表面保護層3は、基板1の上記一表面側に、蒸着法、スパッタ法、CVD法、プラズマ重合法等によって形成してもよいし、高分子材料の溶液をスピンコート法のような塗布法により塗布してから紫外線硬化あるいは熱硬化させる方法や、その他の方法によって形成することも可能である。また、表面保護層3は、汎用のポリマーからなる絶縁膜とガスバリア性を有するAl膜などの金属膜と汎用のポリマーからなる絶縁膜との積層膜により構成してもよく、この場合には、各絶縁膜を塗布法により形成し、金属膜をスパッタ法などの緻密性の高い金属膜を成膜可能な方法により形成すればよい。また、表面保護層3は、光透過性およびガスバリア性を有するフィルム状や板状の構造体で形成することも可能であり、前者の場合は例えば真空ラミネート法により基板1の上記一表面に周部を固着すればよく、後者の場合は例えば紫外線硬化樹脂などのシール剤(接着剤)により基板1の上記一表面に周部を固着すればよい。このような光透過性を有する表面保護層3を採用する場合には、負電極25を透明電極により構成すれば、太陽光を表面保護層3および負電極25を通して混合層23に入射させることができるので、基板1を必ずしも透光性基板により構成する必要がなくなるとともに、正電極21を必ずしも透明電極により構成する必要がなくなる。なお、表面保護層3側から混合層23に太陽光を入射させる場合には、表面保護層3の光透過率を70%以上にすることが好ましい。
また、本実施形態の有機太陽電池では、基板1の上記一表面上に、正電極21に電気的に接続された外部接続電極21aと、負電極25に電気的に接続された外部接続電極25aとが形成されており、基板1の上記一表面側において有機太陽電池素子2の側面には、負電極25と外部接続電極25aとの接続部位と正電極21とを電気的に絶縁するための絶縁膜4が形成されている。
また、図1に示した構成では、有機太陽電池素子2が正孔輸送層22および電子輸送層24を備えており、正電極21/正孔輸送層22/混合層23/電子輸送層24/負電極25の層構造を有しているが、有機太陽電池素子2の層構造は特に限定するものではなくて、少なくとも正極層21と負電極25との間に混合層23を備えていればよく、例えば、正電極21/発電層23/負電極25の層構造でもよいし、正電極21/正孔輸送層22/混合層23/負電極25の層構造や、正電極21/混合層23/電子輸送層24/負電極25の層構造などでもよい。
ところで、本願発明者は、鋭意研究の結果、上述の有機太陽電池素子2について光照射により特性(変換効率)が低下した後に有機太陽電池素子2を混合層23の材料に応じて決まる特定の温度で加熱することにより、有機太陽電池素子2の特性が回復するとともに、光照射によって混合層23内に蓄積された電荷が取り出されるという知見を得た。
そこで、本実施形態の有機太陽電池は、混合層23中に蓄積された電荷を混合層23外へ放出させるように混合層23を加熱可能な加熱手段8を備えている。ここにおいて、加熱手段8は、通電されることにより発熱するシリコンラバーヒータからなる発熱体により構成してあり、表面保護層3上に表面保護層3と接する形で設けてある。したがって、加熱手段8は、伝熱により有機太陽電池素子2を加熱するように配置されている。
以下、上述の知見について、図2〜図4を参照しながら説明する。
図2〜図4は、下記の実施例1〜5の有機太陽電池について特性を測定した結果である。
実施例1〜5の有機太陽電池は、基板1をガラス基板、正電極21をITO膜として、正電極21が形成された基板1の上記一表面側に正孔輸送層22を形成した。正孔輸送層22の形成にあたっては、正孔輸送層22の材料をPEDOT:PSS(スタルク社製)、正孔輸送層22の膜厚を40nmとした。ここで、正孔輸送層22を形成する際の前処理としては、アセトン、イソプロピルアルコール、セミコクリーン、超純水で各10分間の超音波洗浄を行なった後、イソプロピルアルコールの蒸気で洗浄してから、乾燥させ、その後、大気圧プラズマによる表面清浄化処理を3分間行った。
また、混合層23の形成にあたっては、電子供与性半導体としてP3HT(メルク社製、レジオレギュラータイプ)を、電子吸引性半導体(ホール供与性半導体)としてフラーレン誘導体であるPCBM(Solenne社製)を用い、P3HTとPCBMとを質量比1:2〜1:0.2の割合で、1,2−ジクロロベンゼンとクロロホルムとを容積比6:4で混合した混合溶媒に溶解させた。そして、正電極21および正孔輸送層22を形成した基板1を露点−76℃以下、酸素1ppm以下のドライ窒素雰囲気のグローブボックスに移送し、正孔輸送層22上に、P3HTとPCBMとを混合溶媒に溶解させた溶液をスピンコートし、膜厚が200nmの混合層23を形成した。ここで、P3HTとPCBMとの質量比について、実施例1では1:2とし、実施例2では1:1とし、実施例3では1:0.7とし、実施例4では1:0.4とし、実施例5では1:0.2とした。
また、負電極25の形成にあたっては、真空蒸着法により、膜厚が100nmのAl膜からなる負電極25を形成した。
次に、正電極21、正孔輸送層22、混合層23および負電極25を形成した基板1を、露点−76℃以下のドライ窒素雰囲気のグローブボックスに大気に暴露することなく搬送した。一方、吸水材として酸化カルシウムを練り込んだゲッターをガラス製の封止板に粘着剤で貼り付けるとともに、封止板の外周部には予め紫外線硬化樹脂製のシール剤を塗布しておき、グローブボックス内において基板1に封止板をシール剤で張り合わせ、UVでシール剤を硬化させることによって、板状の構造体である封止板からなる表面保護層3を形成した。
また、加熱手段8としては、シリコンラバーヒータ(アズワン社製)を表面保護層3に接するように設けた。
上述の図2のイ〜ニは、それぞれ、実施例1〜5の有機太陽電池について、エアマス1.5G、100mW/cm2の擬似太陽光を基板1の上記他表面に照射して有機太陽電池素子2の変換効率の経時変化を測定した結果を示すものであり、図2から、実施例1〜5のいずれも照射開始からの経過時間が長くなるにつれて変換効率が低下していることが分かる。なお、図2および図3の変換効率は、各実施例1〜5それぞれにおいて、照射開始時の変換効率を1として規格化した値である。
また、上述の図3のイ〜ニは、それぞれ、実施例1〜5の有機太陽電池について、エアマス1.5G、100mW/cm2の擬似太陽光を基板1の上記他表面に照射して8時間照射した後で、有機太陽電池を150℃に加熱した場合の加熱前後の変換効率を測定した結果を示すものであり、図3から、150℃での加熱後(図3の横軸の「後」)の方が加熱前(図3の横軸の「前」)よりも変換効率が高くなり、しかも、照射開始時の変換効率に回復していることが分かる。なお、有機太陽電池の加熱にあたっては、周囲にヒータが設けられた筒を有するメタルチャンバーの中に有機太陽電池を入れ、ヒータの温度を150℃まで10℃/minの昇温速度で加熱した。
また、上述の図4のイ〜ニは、それぞれ、実施例1〜5の有機太陽電池について、エアマス1.5G、100mW/cm2の擬似太陽光を基板1の上記他表面に照射して8時間照射した後で、各有機太陽電池を−73℃(200K)から150℃(423K)まで10℃/minの昇温速度で加熱したときの電流密度の変化を示している。ここで、電流密度は、有機太陽電池素子2の出力電流を有機太陽電池素子2における混合層23のうち正電極21および負電極25と重なる領域の平面積(発電面積)で割ることにより得た値である。
図4のイ〜ニから、混合層23がP3HTとPCBMとを用いて形成された実施例1〜5の有機太陽電池では、有機太陽電池に擬似太陽光を8時間照射することで変換効率が低下した後でも、150℃まで加熱することにより、混合層23に蓄積された電荷のほとんどが外部へ取り出されるものと推測される。
ここで、本実施形態の有機太陽電池は、混合層23中に蓄積された電荷を混合層23外へ放出させるように混合層23を加熱する加熱手段8を備えているので、加熱手段8により混合層23を加熱することによって、有機太陽電池素子2に蓄積された電荷を発電に寄与させることができるともに、当該電荷が放出されることで有機太陽電池素子2の特性(変換効率)が回復するから、長寿命化を図れる。
ここにおいて、加熱手段8による加熱温度は、混合層23に用いる有機化合物のガラス転移点温度(Tg)付近の温度が最適で、例えば、有機化合物がP3HTの場合、140〜170℃が好ましく、上述の図4からも分かるように、PH3Tのガラス転移点温度である150℃が特に好ましい。ここで、加熱温度が140℃よりも低いと、混合層23へ与えられる熱エネルギーが不十分であり、混合層23に蓄積された電荷による電流を有機太陽電池素子2の外部に十分に取り出すことができず、電荷が有機太陽電池素子2内に残存しているため、有機太陽電池素子2の変換効率が初期の変換効率と略同じ変換効率まで回復しない。また、加熱温度が高すぎると、有機材料の破壊が生じ、特性を低下させてしまうことになる。
また、正電極21と負電極25との少なくとも一方を抵抗体として当該抵抗体に通電し、当該通電による抵抗体の発熱により混合層23を加熱するようにしてもよい。ここにおいて、抵抗体を構成するには、有機太陽電池素子2の発電に必要な仕事関数を有する材料(正電極21であれば例えばITO、負電極25であれば例えばAlなど)からなる低抵抗層と、当該低抵抗層に比べて抵抗の高い材料(例えば、SnO2などのような酸化物半導体、比較的抵抗の高い金属など)からなる高抵抗層とを組み合わせるようにすればよい。この場合は、例えばSnO2膜からなる高抵抗層を、混合層23への外来光を遮断しない部分に、例えばストライプ状に形成してもよいし、また、極細のグリッド状に形成することで外来光の遮断を最小限に抑えるようにしてもよい。上述のように一対の電極である正電極21と負電極25との少なくとも一方が抵抗体であり、当該抵抗体が加熱手段8を構成するようにすれば、加熱手段8を有機太陽電池素子2とは別途に設ける必要がなく、低コスト化を図れる。
なお、本実施形態では、正電極21のみを透明電極としてあるが、負電極25のみ、あるいは正電極21と負電極25との両方を透明電極として、加熱手段8の平面形状を枠状の形状とし且つ表面保護層3を透光性材料により形成するようにしてもよい。
(実施形態2)
本実施形態の有機太陽電池の基本構成は実施形態1と略同じであって、図5に示すように、発熱体からなる加熱手段8が基板1の上記他表面に接する形で配置され、有機太陽電池素子2の投影領域を囲む枠状の形状に形成されている点が相違する。なお、実施形態1と同様の構成要素には同一の符号を付して説明を省略する。
しかして、本実施形態の有機太陽電池では、加熱手段8が基板1の上記他表面に接する形で配置され、有機太陽電池素子2の投影領域を囲む枠状の形状に形成されているので、有機太陽電池素子2の発電面積の低下による発電量の低下を防止することができる。ここで、加熱手段8は、混合層23へ導入される外来光を遮断しない部分に設けてあればよく、設ける位置は特に限定するものではない。
加熱手段8を構成する発熱体としては、実施形態1と同様のシリコンラバーヒータを用いてもよいし、あるいは、上記投影領域を囲むように適宜パターニングしたSnO2膜により構成してもよく、SnO2膜に通電することにより発熱させるようにしてもよい。
なお、本実施形態では、正電極21のみを透明電極としてあるが、負電極25のみ、あるいは正電極21と負電極25との両方を透明電極として、表面保護層3を透光性材料により形成するようにしてもよい。
(実施形態3)
本実施形態の太陽電池の基本構成は実施形態1と略同じであって、図6に示すように、加熱手段8を基板1と正電極21との間に設けてある点が相違する。なお、実施形態1と同様の構成要素には同一の符号を付して説明を省略する。
本実施形態では、加熱手段8として、例えば、透光性材料からなる母材に線状のヒータが埋設されたものを用いるか、あるいは、透光性を有する金属薄膜により形成してもよいし、あるいは、負電極25および表面保護層3それぞれが透光性を有するように材料を選択してもよい。
(実施形態4)
本実施形態の有機太陽電池の基本構成は実施形態1と略同じであって、図7に示すように、加熱手段8が、有機太陽電池素子2の外部に設けられ通電されることにより金属電極からなる負電極25を誘導加熱するコイルからなる点が相違する。すなわち、金属電極からなる負電極25が誘導加熱されることで混合層23が加熱される。なお、実施形態1と同様の構成要素には同一の符号を付して説明を省略する。
ここにおいて、加熱手段8を構成するコイルは、基板1の上記他表面上において、有機太陽電池素子2の投影領域を囲むコイル状の形状に形成されている点が相違する。ここにおいて、加熱手段8の材料としては銅を採用しているが、誘導加熱できる金属であればよく、特に銅に限定するものではない。
しかして、本実施形態の有機太陽電池においても、加熱手段8により有機太陽電池素子2への入射光が遮られるのを防止することができる。なお、本実施形態では、負電極25のみが金属電極により構成されているが、正電極21と負電極25との少なくとも一方が金属電極であればよく、両方とも金属電極により構成する場合には、少なくとも一方を透光性を有する膜厚に設定するか、あるいは、混合層23への外来光を遮る部分が少なくなるようにパターニングする必要がある。
(実施形態5)
本実施形態の有機太陽電池の基本構成は実施形態1と略同じであって、図8に示すように、加熱手段8が、基板1の上記他表面に固着された赤外線吸収シートにより構成されている点が相違する。なお、実施形態1と同様の構成要素には同一の符号を付して説明を省略する。
しかして、本実施形態の有機太陽電池では、有機太陽電池素子2において発電にはほとんど寄与しない赤外線を加熱手段8である赤外線吸収シートにより効率よく吸収して熱に変換することで有機太陽電池素子2を加熱することができるので、加熱手段8に通電する必要がなく、ランニングコストの低減を図れる。
なお、上記各実施形態において、有機太陽電池素子2の混合層23に蓄積された電荷を外部へ放出させる加熱手段8は、有機太陽電池素子2を構成する正電極21、正孔輸送層22、混合層23、電子輸送層24、負電極25に熱エネルギーを与えることで、正電極21、正孔輸送層22、混合層23、電子輸送層24、負電極25それぞれの熱振動を増幅させ、混合層23に捕獲されて蓄積された電荷を取り出すものであるが、混合層23に蓄積された電荷を取り出す手段としては、有機太陽電池素子2を構成する正電極21、正孔輸送層22、混合層23、電子輸送層24、負電極25の各材料間、または混合層23を形成する電子供与性半導体と電子吸引性半導体との間、の仕事関数あるいは電子親和力の差に相当するエネルギーを外部から与えることで有機太陽電池素子2内に捕獲されている電荷を取り出すことができる。このようなエネルギーを外部から与えることで混合層23の電荷を外部へ放出させる放出手段としては、例えば、上述の仕事関数あるいは電子親和力の差に相当する波長の光を照射することがあげられる。この場合のエネルギーとしては、0.5〜1.0eVのエネルギーを加えることが好ましく、0.6〜0.9eVのエネルギーがより好ましい(つまり、光の波長としては、1240〜2480nmが好ましく、1370〜2070nmの波長がより好ましい)。
1 基板
2 有機太陽電池素子
3 表面保護層
8 加熱手段
21 正電極(電極)
22 正孔輸送層
23 混合層
24 電子輸送層
25 負電極(電極)

Claims (5)

  1. 一対の電極間に電子供与性半導体と電子吸引性半導体との混合層を有する有機太陽電池素子を備えた有機太陽電池であって、混合層中に蓄積された電荷を混合層外へ放出させるように混合層を加熱可能な加熱手段を備えることを特徴とする有機太陽電池。
  2. 基板と、基板の一表面側に形成された前記有機太陽電池素子と、前記有機太陽電池素子を覆う形で基板の前記一表面側に形成された表面保護層とを備えることを特徴とする請求項1記載の有機太陽電池。
  3. 前記加熱手段は、前記有機太陽電池素子の外部に設けられ通電されることにより発熱して伝熱により前記混合層を加熱する発熱体であること特徴とする請求項1又は2記載の有機太陽電池。
  4. 前記一対の電極の少なくとも一方が抵抗体であり、当該抵抗体が前記加熱手段を構成していることを特徴とする請求項1又は2記載の有機太陽電池
  5. 前記一対の電極の少なくとも一方が金属電極であり、前記加熱手段は、前記有機太陽電池素子の外部に設けられ通電されることにより前記金属電極を誘導加熱するコイルからなることを特徴とする請求項1又は2記載の有機太陽電池。
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