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JP5121099B2 - インクジェット用インク、及びインクジェット記録方法 - Google Patents

インクジェット用インク、及びインクジェット記録方法 Download PDF

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勝浩 城田
明広 毛利
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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明はインク、特にインクジェット方式のプリントで用いられるインクおよびインクジェットプリント(記録)方法に関するものである。本発明は、紙や布、革、不織布、OHP用紙等の各種の記録媒体に記録し得る機器の全て、例えば、インクジェット記録方式を適用した、プリンタ、複写機、ファクシミリ等の事務機器等に適用可能である。
【0002】
【従来の技術】
インクジェットプリント方式は、低騒音で低ランニングコストであり、高速プリントが可能で、装置の小型化が容易であり、更にカラー化が容易である等の種々の利点を有し、プリンタや複写機等において広く利用されている方式である。このようなプリンタ等では、一般に、吐出特性、定着性等のプリント特性やプリント画像のにじみや光学反射濃度、発色性等のプリント品位などの観点から用いるインクが選択される。
【0003】
インクジェットに適宜使用されるインクは、その含有する色材により、染料インクまたは顔料インクの二種類に大別されることは広く知られたところである。このうち顔料インクは、染料インクに比べて耐水性、耐光性に優れ、また、鮮明な文字品位を可能とする等の利点を有している。
【0004】
顔料インクに含まれる顔料は、通常高分子分散剤等の分散剤を用いてインク中に安定に分散させられている。具体的な作用としては、高分子分散剤に顔料粒子を吸着させ、主に高分子分散剤の電気的反発力等を利用し、顔料粒子の凝集をもたらす顔料粒子間に作用する分子間力に打ち勝たせて、インク中に安定に分散させているものである。従って、インク中には顔料の量に応じて高分子分散剤を添加する必要がある。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
このようなインクを普通紙上にインクジェット記録法を用いて印字を行うと、水分等のインク溶媒の紙への浸透、及び空気中への蒸発により顔料同士が凝集する。この際、紙上での挙動としては高分子分散剤の量が多い程凝集力が強くなる。その為、プリント媒体上に形成されるインクドットの径は通常用いられているインクジェット用染料インクに比べ小さく、また、紙に衝突した際の歪んだ形状に近いままのドット形状となる。よって画像を形成するのに十分な記録濃度を有し、かつ白すじ等の発生がないような記録に必要なドット径のインクドットを得る為には、インクジェットヘッドからのインクの吐出体積を大きめに調整する必要がある。しかし、これは高分子分散剤が吸着した顔料粒子の凝集力が強いことによる紙中への浸透性の低下と相まって、インクのプリント媒体への定着の遅延を招き、或いは記録画像の耐擦過性を低下させることがあった。
【0006】
ドット径の拡大、定着性の向上を図る為にインクのプリント媒体への浸透性の向上を目的としてインクに浸透剤を含有させることも考えられている。しかし、この方法はドット形状の劣化(いわゆるフェザリング等のドット周囲形状の劣化)、紙の裏面へのインクの浸透(いわゆる裏抜け)等の、高品位な記録画像を目指す上では好ましくない現象を併発する場合がある。また、色材がプリント媒体内部に浸透してしまう為、ドット径は比較的大きくなってもインクドットの光学濃度はあまり高くならない場合が多い。
【0007】
上記高分子分散剤の添加量による問題点を解決するために、自己分散型の顔料を用いたインクが提案されている。このインクは、前記した分散剤によって分散させられた顔料を含むインクに比べて紙上での顔料の凝集力が弱い為か、ドット径の拡大を図ることができるが、未だ十分とはいえない。
【0008】
この様に記録画像の品位を左右する様々な要素、例えばインクの定着性、インクドット径の拡大、インクドット内での濃度の均一性、インクドット自体の高い光学濃度等を高いレベルで満たし、なおかつインクとしての安定性、特にはインクジェット用インクとして安定に吐出させられるような特性をも満足するようなインクそしてプリント方法は、より一層の向上を目指して未だ研究の途上にある。
【0009】
本発明の目的は、記録媒体に付与したインク滴に対して、記録媒体の表面方向には適度に広がり、また、記録媒体の厚み方向への浸透は抑制され、その結果として適切な広がりを有するドット径を有し、且つドット内の画像濃度が高く且つ均一であり、しかもフェザリングが殆ど観察されない、外形の優れたドットを与えることができ、しかも撥水処理されているインクジェット記録ヘッドのオリフィス面に対して付着しにくいインクを提供する点にある。
【0010】
また、本発明の他の目的は、記録媒体に付与したインク滴に対して、記録媒体の表面方向には適度に広がり、また、記録媒体の厚み方向への浸透は抑制され、その結果として適度な広がりを有し、且つドット内の光学濃度が高く、均一であり、しかもフェザリングが殆ど観察されない外形の優れたドットによって形成された画像を与えることのできるインクジェット記録方法を提供する点にある。
【0011】
また、本発明の他の目的は、プリント媒体へのインクの付与量を抑えつつ、画像濃度の高い、高品位な画像を安定して形成することのできるインクジェット記録方法を提供する点にある。
【0014】
【課題を解決するための手段】
上記の目的を達成することのできる本発明の実施態様の1つとしてのインクは、色材として少なくとも第1の顔料及び第2の顔料を水性媒体中に分散状態で含むインクであって、該第1の顔料が少なくとも1つのアニオン性基が直接もしくは他の原子団を介して該第1の顔料の表面に結合されている自己分散型の顔料であり、該第2の顔料が高分子分散剤によって該水性媒体に分散させることのできる顔料であり、該インクは更に該第2の顔料の分散剤として機能する高分子分散剤を含み、該高分子分散剤はベンジルメタクリレートとメタクリル酸をモノマーとして得られた共重合体であることを特徴とするものである。
【0016】
そして上記のインクは、インクジェット記録用のインクとすることができるものである。
【0021】
本発明にかかるインクジェット記録方法の一態様は、インクをインクジェット記録方法を用いてプリント媒体に向けて吐出させて、該プリント媒体上に画像を記録する工程を含むインクジェット記録方法において、該インクが上記構成のインクジェット記録用インクであることを特徴とするものである。
【0028】
本発明は、前記したように、より一層のインクジェット記録画像の高品質化を目指した研究の過程において、自己分散型顔料と高分子分散剤によって水性媒体に分散させることのできる顔料と高分子分散剤とが混在したインクが画像の高画質化に求められる様々な要素を非常に高いレベルで満足し、且つインク自体の安定性にも優れていることを見出したことに基づくものである。
【0029】
即ち、記録ヘッドから吐出されるこの形態におけるインクとしては、自己分散型顔料(第1の顔料)が、高分子分散剤によって水性媒体に分散させることができる顔料(第2の顔料)の分散剤として働く為か、インク全体としては、高分子分散剤の量が少なくなってもインク中の顔料は安定して分散状態を維持させることができた。さらに、このインクを用いて紙に印字した場合、そのドット径は第2の顔料及びそれを分散させる高分子分散剤を含むインクや第1の顔料(自己分散型顔料)のみを含むインクによるドット径と比較して大きく、しかも均一に紙面に拡散し、光学濃度も高く、比較的定着性も早くなった。
【0030】
このような現象が観察される理由は明らかでないが、以下のようなメカニズムによるものと推測される。即ち、高分子分散剤が吸着した第2の顔料と第1の顔料とはインク中においては電気的に反発し、少なくとも高分子分散型顔料のみのインクに比べて顔料の凝集力が弱くなっている。このようなインクが紙面に印字されると、第2の顔料には高分子分散剤が吸着しているため、インク中の色材は紙の厚み方向には浸透し難い。一方、紙面(横)方向に対しては、第2の顔料と高分子分散剤とを含むインクの場合はインクの溶媒の紙への浸透、蒸発による水分の減少と共に急激に高分子同士が絡み合って、或いは高分子が顔料間に架橋することによって、顔料が強く凝集してしまうのに対し、本態様のインクは第1の顔料が混在していることによって上記高分子の絡み合い、又は架橋を防止或いは抑制し、また、第1の顔料と高分子分散剤との反発によってインク中の顔料同士の強力な分子間力が緩和され、その結果としてインクが紙面の横方向に拡散し易くなっており、しかもその拡散は緩和されているものの顔料同士の凝集力の影響を受けているために無秩序な拡散とはなっていないものと考えられる。これが少ない吐出量での大きなドット径及びドットの真円性の確保及び複数のドットが連なった場合のなじみ性、即ち良好なスムージング性となって現れると考えられる。そしてこの紙面上での現象は、該インクのブリストウ法におけるKa値が1ml・m-2・msec-1/2未満、即ちプリント媒体に対して比較的浸透性を低く設計した場合には特に顕著となり、高画質化には有利に働く。
【0031】
上記のごとく、インクジェットにおける記録特性を考慮した場合には自己分散型顔料(第1の顔料)が、高分子分散剤によって水性媒体に分散させることができる顔料(第2の顔料)がインクとして混合された顔料インクにおいて、特に第2の顔料の比表面積及び吸油量が上記性能に関わることが予測される。
【0032】
すなわち、例えば顔料としてカーボンブラックを用いた場合で説明すると、比表面積、吸油量の値が大きくなるとカーボンブラックの表面活性が非常に高くなり、安定分散に必要となる高分子分散剤量が多くなる。また、高分子分散剤量を多くすると顔料表面に吸着していない高分子分散剤量も増大し、結果的にインクの粘度の増大等によりインクジェット連続吐出性等の性能に悪影響を及ぼす。
【0033】
また、インクジェット適性を満足する範囲内での高分子分散剤量でインクを調整してもインクの安定性が悪化する。一般的に比表面積、吸油量の値が大きい顔料はインクのpHの影響を受けやすく、保存中のインクpHの低下により、顔料の凝集、沈降等の問題を発生しやすい。
【0034】
このことは本発明による第1の顔料と第2の顔料を混合して用いた場合においては第2の顔料を単独で用いる場合ほど顕著ではないが若干の問題を発生する場合がある。
【0035】
上記問題を鑑み、第2の顔料であるカーボンブラックは、そのBET法による比表面積が300m2/g以下で、かつDBP吸油量150ml/100gが以下であることが好ましい。
【0036】
上記のように本発明によるインクを用いることにより、画像の高画質化に求められる様々な要素を非常に高いレベルで満足し、且つインクの安定性にも優れていることを見出した。
【0037】
また、本態様のインクは上述したようにインクタンク中における分散安定性という点で良好であり、また、印字特性としてもやはり上述したようにドット径が大きく、画像の光学濃度が高く、耐擦過性が良好で、ドットの真円性が良好である等の大きな効果を持つ。
【0038】
尚、本発明においては2種の自己分散型顔料と高分子分散剤によって水性媒体に分散させることのできる顔料と高分子分散剤を混在するインクについて説明したが顔料分散体の種類は、2種に限らず複数の自己分散型顔料を用いても良いし、2種以上の高分子分散剤によって水性媒体に分散させることのできる上記に示した範囲内の比表面積、吸油量を有する顔料を用いても良い。
【0039】
【発明の実施の形態】
次に本発明について、本発明の目的を達成することのできる実施態様の一つとしてのインクに基づき詳細に説明する。本発明にかかるインクは、例えば1つのアニオン性基が直接もしくは他の原子団を介して表面に結合している自己分散型の顔料(第1の顔料)と高分子分散剤を用いて水性媒体に分散させることのできる顔料(第2の顔料)と該高分子分散剤とを含んでいることを基本の構成とする。なお、本発明では、この高分子分散剤として、ベンジルメタクリレートとメタクリル酸をモノマーとして得られた共重合体を用いる。
【0040】
以下このインクについて順次説明する。
【0041】
(第1の顔料)
自己分散型の顔料とは、水溶性高分子化合物等の分散剤を用いることなしに水、水溶性有機溶剤あるいはこれらを混合した液体に対して安定して分散状態を維持し、インクジェット記録技術を用いたオリフィスからの正常なインク吐出に支障を来すような、顔料同志の凝集体を該液体中で生じることのないような顔料を指す。このような顔料としては、例えば少なくとも1つのアニオン性基が直接もしくは他の原子団を介して顔料表面に結合させたものが好適に用いられ、具体的な例は、少なくとも1つのアニオン性基が直接あるいは他の原子団を介して表面に結合しているカーボンブラックを含むものである。
【0042】
このようなカーボンブラックに結合されているアニオン性基の例としては、例えば、−COOM、−SO3M、−PO3HM、−PO32、−SO2NH2、−SO2NHCOR等(但し、式中のMは水素原子、アルカリ金属、アンモニウム、または、有機アンモニウムを表わし、Rは炭素数1〜12の直鎖状または分岐鎖状のアルキル基、置換基もしくは未置換のフェニル基又は置換基もしくは未置換のナフチル基を表わす)が挙げられる。ここでRが置換基を有するフェニル基、又は置換基を有するナフチル基である場合の置換基としては、例えば炭素数1〜6の直鎖若しくは分岐鎖状のアルキル基等が挙げられる。
【0043】
上記「M」のアルカリ金属としては、例えば、リチウム、ナトリウム、カリウム等が挙げられ、また、「M」の有機アンモニウムとしては、モノ乃至トリメチルアンモニウム、モノ乃至トリエチルアンモニウム、モノ乃至トリメタノールアンモニウム等が挙げられる。
【0044】
これらのアニオン性基の中で、特に−COOMや−SO3Mはカーボンブラックの分散状態を安定化させる効果が大きい為好ましい。
【0045】
ところで上記した種々のアニオン性基は他の原子団を介してカーボンブラックの表面に結合したものを用いることが好ましい。他の原子団としては、例えば、炭素原子1〜12の直鎖状もしくは未置換のアルキレン基、置換基もしくは未置換のフェニレン基又は置換基もしくは未置換のナフチレン基が挙げられる。ここでフェニレン基やナフチレン基に結合していてもよい置換基の例としては、炭素数1〜6の直鎖状もしくは分岐鎖状のアルキル基等が挙げられる。他の原子団を介してカーボンブラックの表面に結合させるアニオン性基の具体例としては、例えば、−C24COOM、−PhSO3M、−PhCOOM等(但し、Phはフェニル基を表わし、Mは上記と同様に定義される)が挙げられるが、勿論、これらに限定されることはない。
【0046】
上記した様な、アニオン性基を直接もしくは他の原子団を介して表面に結合させたカーボンブラックは例えば以下の方法によって製造することができる。即ち、カーボンブラック表面に−COONaを導入する方法として、例えば、市販のカーボンブラックを次亜塩素酸ソーダで酸化処理する方法が挙げられる。また、例えば、カーボンブラック表面に−Ar−COONa基(但し、Arはアリール基を表す。)を結合させる方法として、NH2−Ar−COONa基に亜硝酸を作用させたジアゾニウム塩とし、カーボンブラック表面に結合させる方法が挙げられるが、勿論、本発明はこれに限定されるわけではない。
【0047】
(第2の顔料)
本実施形態のインクに用いることのできる第2の顔料は、インクの分散媒、具体的には例えば水性媒体に対して高分子分散剤の作用によって分散させることができる顔料が挙げられる。即ち、顔料粒子の表面に高分子分散剤が吸着した結果として初めて水性媒体に対して安定に分散させ得るような顔料が好適に用いられる。
【0048】
上述したように本発明の態様においてはBET法による比表面積300m2/g以下、かつDBP吸油量150ml/100g以下のカーボンブラックを用いることが好ましい。
【0049】
具体的には、NO.2300、NO.900、MCF88、NO.33、NO.40、NO.45、NO.52、MA7、MA8、NO.2200B(以上三菱化成製)、RAVEN1255(コロンビア製)、REGAL400R、 REGAL330R、REGAL660R、MOGUL L(キャボット製)、Color Black FW1、COLOR Black FW18、Color Black S170、Color Black S150、Printex 35、Printex U(デグッサ)等の市販品を使用することが出来る。また、本発明のために新たに調製されたものでもよい。
【0050】
なお、第1の顔料に関しては特に比表面積、吸油量について制限が設けられるわけではない。
【0051】
該第1及び第2の顔料を合わせた色材の量は、インク全量に対し、0.1〜15重量%、より好ましくは、1〜10重量%である。第1の顔料と第2の顔料の比率(重量基準)は、95/5〜50/50、より好ましくは90/10〜70/30の範囲が好ましい。このような第1の顔料が多い場合においては、インクとしての分散安定性はもちろん、ヘッドの吐出安定性、特に吐出効率や吐出口面の濡れが少ないことによる信頼性を含めた安定性が発揮される。
【0052】
(高分子分散剤)
第1及び第2の顔料を含んでいる本発明にかかるインクにおいては、第2の顔料を水性媒体に分散させるための高分子分散剤は、例えば該第2の顔料の表面に吸着して該第2の顔料を水性媒体に安定して分散させる機能を有するものが好適に用いられる。
【0053】
具体的には、疎水性成分として、芳香環を含むモノマー単位を少なくとも含有する高分子共重合体が望ましく、その中でも芳香環を含むモノマー単位としては、スチレン、α−メチルスチレン、ベンジルアクリレート、ベンジルメタクリレート、フェニルアクリレート、フェニルメタクリレートが好ましい。これらの中でも特にベンジルメタクリレートが好ましい。ベンジルメタクリレート単位を少なくとも含有する高分子共重合体により分散したものを用いて本発明によるインクを作成し、印字評価を行ったところ、オリフィス面に対するインクのヌレ性が良好(この場合はじく)であり、インクジェットヘッドによる吐出持続性が非常に良好であることが明らかになった。また、この場合、インクジェットヘッドのオリフィス面をシリコン系の材料を含む撥インク剤で処理したものが特に好ましい。
【0054】
この理由については定かではないが、特にベンジルメタクリレート単位を少なくとも含有する高分子共重合体により分散した第2の顔料と自己分散型である第1の顔料を組み合わせて用いた場合には、ベンジルメタクリレート単位を少なくとも含有する高分子共重合体により何らかの理由で効果的に第1の顔料分もインク中で安定に分散状態を保ち、より効果的に撥インク処理されたインクジェットヘッドのオリフィス面に対しての付着が抑制されるものと考えられる。
【0055】
水に対する顔料の分散性を発現するために用いられる高分子分散体中の親水性成分としては、特にカルボキシル基を含むモノマーが好ましく用いられ、具体的には、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、イタコン酸、フマール酸等が好ましく用いられるがもちろんこれらに限られるものではない。これらの中でも特にアクリル酸、メタクリル酸が好ましく用いられる。
【0056】
さらに、この高分子分散体の酸価としては、100〜500の範囲が好ましい。
【0057】
また、上記高分子分散剤の第2の顔料に対する含有比(重量比)を10〜200%の範囲とすることは、第2の顔料のインク中での安定な分散状態を維持し、当該インクの良好なインクジェット吐出安定性を維持するうえで特に好ましいものである。
【0058】
また、同様に上記高分子分散剤の重量平均分子量を2000〜30000の範囲とすることは、第2の顔料のインク中での安定な分散状態を維持し、当該インクの良好なインクジェット吐出安定性を維持するうえで特に好ましいものである。
【0059】
さらに、第2の顔料の分散体は、好ましくは中性またはアルカリ性に調整されていることが、前記高分子分散剤の溶解性を向上させ、一層の長期保存性に優れた分散体とすることができるので望ましい。但し、この場合、インクジェット記録装置に使われている種々の部材の腐食の原因となる場合があるので好ましくは7〜10のpH範囲とされるのが望ましい。
【0060】
また、その際に用いられるpH調整剤としては、例えば、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン等の各種有機アミン、水酸化ナトリウム、水酸化リチウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属の水酸物等の無機アルカリ剤、有機酸や、鉱酸があげられる。
【0061】
(水性媒体)
第1及び2の顔料の分散媒となる水性媒体としては、水単独、あるいは水と水溶性有機溶剤を含むものが用いられる。この水溶性有機溶剤としては、例えば、メチルアルコール、エチルアルコール、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n−ブチルアルコール、sec−ブチルアルコール、tert−ブチルアルコール、イソブチルアルコール、n−ペンタノール等の炭素数1〜5のアルキルアルコール類;ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド等のアミド類;アセトン、ジアセトンアルコール等のケトン又はケトアルコール類;テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル類;ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等のオキシエチレン又はオキシプロピレン共重合体;エチレングリコール、プロピレングリコール、トリメチレングリコール、トリエチレングリコール、1、2、6−ヘキサントリオール等のアルキレン基が2〜6個の炭素原子を含むアルキレングリコール類;グリセリン;エチレングリコールモノメチル(又はエチル)エーテル、ジエチレングリコールモノメチル(又はエチル)エーテル、トリエチレングリコールモノメチル(又はエチル)エーテル等の低級アルキルエーテル類;トリエチレングリコールジメチル(又はエチル)エーテル、テトラエチレングリコールジメチル(又はエチル)エーテル等の多価アルコールの低級ジアルキルエーテル類;モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン等のアルカノールアミン類;スルホラン、N−メチル−2−ピロリドン、2−ピロリドン、1、3−ジメチル−2−イミダゾリジノン等が挙げられる。上記のごとき水溶性有機溶剤は、単独でも或いは混合物としても使用することができる。
【0062】
水溶性有機溶剤のインク中での量は、例えば80%未満、好ましくは5〜40%の範囲とすることができる。
【0063】
(染料の添加)
上記した態様のインクに染料を更に添加してもよい。即ち第1の顔料、第2の顔料及び第2の顔料を水性媒体に分散させるための分散剤を含むインクに対して更に染料を添加したインクは、記録媒体として表面にコート層として樹脂層を備えたプリント媒体に「ひび割れ」等のない、高品位な画像を形成することができる。染料を更に添加したインクによる樹脂層を備えたプリント媒体上の画像の「ひび割れ」が有効に防止できる理由は明らかでないが、記録媒体上では顔料の凝集物は細かい粒子となって存在し、その周囲を染料が取り囲み、また、凝集物が存在しない部分を染料が埋めた状態となる。また、第2の顔料の凝集力が第1の顔料の存在によって緩和されることは先に述べた通りであるが、染料の添加によって第2の顔料の凝集力がもう1段緩和され、インクの吸収性が普通紙等と比較して悪い記録媒体において生じ易い「ひび割れ」等のプリント画像の不均一を有効に抑えることができるものと考えられる。
【0064】
ここで用いることのできる染料としては本実施形態で使用する水性媒体に対して可溶なアニオン染料を挙げることができ、そのようなアニオン染料としては、公知の酸性染料、直接性染料、反応性染料等が好適に使用される。また、特に好ましくは、染料の骨格構造として、ジスアゾ、または、トリスアゾ構造を有する染料を用いることが良い。またさらに、骨格構造の異なる2種以上の染料をもちいることも好ましい。使用する染料として、黒色の染料以外で、色調が大きく異ならない範囲で、シアン、マゼンタ、イエロー等の染料を用いてもかまわない。
【0065】
(他の添加剤)
本発明の記録液は、上記の成分のほかに必要に応じて所望の物性値を持つ記録液とするために、界面活性剤、消泡材、防腐剤等を添加することができ、さらに、市販の水溶性染料などを添加することもできる。
【0066】
界面活性剤としては脂肪酸塩類、高級アルコール硫酸エステル塩類、液体脂肪油硫酸エステル塩類、アルキルアリルスルホン酸塩類等の陰イオン界面活性剤、ポリオキシエチレンアルキルエーテル類、ポリオキシエチレンアルキルエステル類、ポリオキシエチレンソルビタンアルキルエステル類、アセチレンアルコール、アセチレングリコール等の非イオン性界面活性剤があり、これらの1種または、2種以上を適宜選択して使用できる。
【0067】
その使用量は記録液全量に対して0.01から5重量%が望ましい。この際、記録液の表面張力は30mN/m(dyne/cm)以上になるように活性剤の添加する量を決定する事は、本発明のような記録方式におけるノズル先端のぬれによる印字よれ(記録液滴の着弾点のズレ)等の事態を引き起こしてしまうことを極めて有効に防止することができることから好ましいものである。
【0068】
更に言えば、このインクのブリストウ法におけるKa値を1ml/(m2・msec1/2)未満とすることは、印字品位、例えば記録画像のシャープネスやODなどのより一層の高品位化を図るうえで極めて有効である。
【0069】
(記録方法)
本実施態様にかかるインクは、プリント媒体に対して公知のインク付与手段を用いて付与して画像を形成する。本発明の好しい実施形態におけるインク付与方式は、公知のインクジェットプリント方式である。すなわち、プリントヘッドからプリント媒体にインクを吐出してプリントを行う形態に、本発明のインクが好適に用いられる。プリントヘッドにおける吐出方式は、ピエゾ方式等の公知の方式を採用できるが、好しい実施形態としては、インクに熱エネルギーを作用させ、これによってインク中に気泡を生じさせこの気泡の圧力によりインクを吐出する方式である。
【0070】
なお、プリントヘッドから吐出されるインクがプリント媒体において打ち込まれる量は、単位面積当り0.014ピコリットル(pl)以下であることが好しい。より具体的には、360dpiで70pl以下、600dpiで25pl以下であることが好ましい。これは、色材として1種類の顔料のみのインクを用いた場合、特に普通紙ではエリアファクターが不足しODを低下させる場合があるが、本実施形態のインクによれば先に述べた様に エリアファクターを大きくできるため、それ程の打ち込み量を必要としないためである。
【0071】
また、上述した本実施形態のインクを用いて、このインクを収納したインクカートリッジやインクを収容したインク収納部とそのインクを吐出させる手段とが一体化され、インクジェットプリンターに着脱可能に構成された記録ヘッド等のインク収納容器を作製することもできる。
【0072】
更には前述した自己分散型カーボンブラックを色材として含む、本実施態様にかかるブラックインクと他のカラーインク、例えばイエローインク、マゼンタインク及びシアンインクから選ばれる少なくとも1つのカラーインクとが各々独立したインク収納部に収容されたインクセット等も又本発明の一実施形態に含まれる。
【0073】
先に述べた、本発明者らの知見に基づく第1の顔料と第2の顔料及び高分子分散剤との相互作用がもたらす顔料の凝集力の緩和、そしてそれがもたらすプリント媒体上に優れた画像を形成できるという効果は、これらの成分を含む単一のインクによってももちろん達成されるものであるが、例えば、記録媒体上にてこれらの成分を液体の状態で接触させることによっても同様の効果が奏せられるものである。具体的には例えは図10に示す様に、第1の顔料を含む第1のインクを第1のインクジェットヘッド1001から吐出させてプリント媒体の所定の位置に付着せしめる工程と、該第1の顔料の表面に結合している基と同一の極性を有する高分子分散剤及びノニオン性高分子分散剤の少なくとも一方と第2の顔料を含む第2のインクを第2のインクジェットヘッド1002から吐出させて該プリント媒体1003の、該第1のインクが付与された箇所もしくは該第1のインクが付与される箇所に付与する工程とを、該第1のインクと第2のインクとが該プリント媒体上で互いが液体の状態で混合される様なタイミングで行なうことによっても、エリアファクタが大きく、外形形状に優れ、また、ドット内で画像濃度が高くまた、均一なインクドットを形成することができる。
【0074】
更には図11に示す様に、一方では第1のインクジェットヘッド1101から第1の顔料を含む第1のインクを吐出させ(1104)、他方では第2のインクジェットヘッド1102から該第1の顔料の表面に結合している基と同一の極性を有する高分子分散剤及びノニオン性高分子分散剤の少なくとも一方と第2の顔料を含む第2のインクを吐出させ(1105)、各々のインクジェットヘッドから吐出させたインク同士(1104、1105)をプリント媒体1103への付着前に合体させ、該第1のインクと第2のインクとを混合せしめたインク1106をプリント媒体1103の所定の部位に付着させる方法によっても、プリント媒体1103上で第1のインクと第2のインクとが液体の状態で接触してなる状態を実現することができる。なおここで各々のインクを付与するプリント媒体1103上の位置は、これらのインクが液体状態で接触しさえすれば、各々の付与位置が多少ずれていてもよいことは言うまでもない。
【0075】
なおここで第1のインクと第2のインクとを混合せしめたインクのブリストウ法におけるKa値は1ml・m-2・msec-1/2未満となるように各インクを調製しておくことが好ましい。
【0076】
同様に第1の顔料、第2の顔料、高分子分散剤及び染料との相互作用によってもたらされる顔料の凝集力の緩和効果、そしてそれがプリント媒体上、特に樹脂コート層を備えたプリント媒体上に優れた画像を形成できるという効果は、形成した画像が示す優れた効果もまた上記の4つの成分を含む単一のインクばかりでなく、記録媒体上にてこれらの成分を液体の状態で接触させることによっても同様の効果が奏せられるものである。即ち図12に示す様に、第1の顔料を含む第1のインクを第1のインクジェットヘッド1201から吐出させてプリント媒体の所定の位置に付着せしめるステップと、該第1の顔料の表面に結合している基と同一の極性を有する高分子分散剤及びノニオン性高分子分散剤の少なくとも一方と第2の顔料を含む第2のインクを第2のインクジェットヘッド1202から吐出させて該プリント媒体1204の該所定の位置に付与するステップと、該第1の顔料の表面に結合している基と同極性の染料を含む第3のインクを第3のインクジェットヘッド1203から吐出させて該プリント媒体1204の該所定の位置に付与するステップとを、該第1のインクと第2のインクと該第3のインクとが該プリント媒体上で互いが液体の状態で混合される様なタイミングで行なうことによっても、エリアファクタが大きく、外形形状に優れ、また、ドット内で画像濃度が高くまた、均一なインクドットを形成することができる。なおここで各々のインクを付与するプリント媒体1204上の位置は、これらのインクが液体状態で接触しさえすれば、各々の付与位置が多少ずれていてもよいことは言うまでもない。
【0077】
更には図13に示す様に、第1のインクジェットヘッド1301から第1の顔料を含む第1のインクを吐出させ(1302)、第2のインクジェットヘッド1303から該第1の顔料の表面に結合している基と同一の極性を有する高分子分散剤及びノニオン性高分子分散剤の少なくとも一方と第2の顔料を含む第2のインクを吐出させ(1304)、第3のインクジェットヘッド1305から該第1の顔料の表面に結合している基と同極性の染料を含む第3のインクを吐出させ(1306)、各々のインクジェットヘッドから吐出させたインク同士をプリント媒体1308への付着前に合体させ、該第1のインクと第2のインクと第3のインクとを混合せしめたインク(1307)をプリント媒体1308の所定の部位に付着させる方法によっても、プリント媒体1308上で第1のインクと第2のインクと第3のインクとが液体の状態で接触してなる状態を実現することができる。この場合にもまた第1のインク、第2のインク及び第3のインクとが混合せしめられたインクのブリストウ法におけるKa値は1ml・m-2・msec-1/2未満となるように各インクを調製しておくことが好ましい。
【0078】
(プリント媒体)
本実施形態に使用するプリント媒体としては、特に限定されず、例えば紙、不織布、OHP用紙、革等を用いることができる。そしてコート層として樹脂層が形成されたプリント媒体に本発明の態様の1つのインクをインクジェット法を用いて付与した場合、前述のコート層上に形成される画像の「ひび割れ」を極めて有効に防止することができることは先に述べた通りである。
【0079】
コート層として樹脂層を備えたプリント媒体の例としては、例えば紙またはポリエステル等のプラスチックフィルム上に樹脂層を設けたものが知られている。コート層を構成する材料としては、水溶性樹脂、水分散樹脂等を主成分としたもので、この他カチオン性の化合物、界面活性剤、充填剤等を適宜使用してもよい。
【0080】
水溶性樹脂としては、例えば、ポリビニルアルコール、及びアニオン変性ポリビニルアルコール、カチオン変性ポリビニルアルコール、アセタール変性ポリビニルアルコール等のポリビニルアルコールの変性物;水系ポリウレタン;ポリビニルピロリドン、及びビニルピロリドンと酢酸ビニル共重合体、ビニルピロリドンとジメチルアミノエチル・メタクリル酸の共重合体、4級化したビニルピロリドンとジメチルアミノエチル・メタクリル酸の共重合体、ビニルピロリドンとメタクリルアミドプロピル塩化トリメチルアンモニウム共重合体等のポリビニルピロリドンの変性物;カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース等のセルロース系水溶性樹脂、及びカチオン化ヒドロキシエチルセルロース等のセルロースの変性物;ポリエステル、ポリアクリル酸(エステル)、メラミン樹脂、或いはこれらの変性物、少なくともポリエステルとポリウレタンとを含むグラフト共重合体等の合成樹脂、又、アルブミン、ゼラチン、カゼイン、でんぷん、カチオン化でんぷん、アラビアゴム、アルギン酸ソーダ等の天然樹脂を挙げることができる。
【0081】
又、水分散性樹脂としては、例えば、ポリ酢酸ビニル、エチレン−酢酸ビニル共重合体、ポリスチレン、スチレン−(メタ)アクリル酸エステル共重合体、(メタ)アクリル酸エステル系重合体、酢酸ビニル−(メタ)アクリル酸(エステル)共重合体、ポリ(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリルアミド系共重合体、スチレン−イソプレン共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−プロピレン共重合体、ポリビニルエーテル、シリコン−アクリル系共重合体等、多数列挙することができるが、勿論これらに限定されるものではない。
【0082】
また、以上の他、プリント媒体のコート層の材料として、カチオン性化合物も好適に使用される。このカチオン性化合物は、分子内にカチオン性部分を含むものであれば特に限定されるものではなく、例えば、モノアルキルアンモニウムクロライド、ジアルキルアンモニウムクロライド、テトラメチルアンモニウムクロライド、トリメチルフェニルアンモニウムクロライド、エチレンオキサイド付加アンモニウムクロライド、などの4級アンモニウム塩型のカチオン性界面活性剤、あるいは、アミン塩型のカチオン性界面活性剤、さらには、カチオン性部分を含むアルキルベタイン、イミダゾリウムベタイン、アラニン系などの両性界面活性剤でもよい。また、ポリマーあるいはオリゴマーとしては、ポリアクリルアミドのカチオン変性物、あるいは、アクリルアミドとカチオン性モノマーの共重合体、ポリアリルアミン、ポリアミンスルホン、ポリビニルアミン、ポリエチレンイミン、ポリアミド−エピクロルヒドリン樹脂、ポリビニルピリジニウムハライドなどが挙げられる。
【0083】
さらに、ビニルオキサゾリドン系モノマーの単独、あるいは、他の一般的なモノマーとの共重合体、ビニルイミダゾール系モノマーの単独、あるいは、他のモノマーとの共重合体などが挙げられる。
【0084】
上記の他のモノマーとしては、メタクリレート、アクリレート、アクリロニトリル、ビニルエーテル、酢酸ビニル、エチレン、スチレンなどが挙げられる。また、カチオン変性したセルロースなどでも良い。
【0085】
以上のようなカチオン変性化合物が好適に用いられるが、もちろん、カチオン性化合物はこれらに限定されるものではない。また、コート層の厚みに関しては、乾燥重量で0.1g/m2〜100g/m2の範囲で塗工されたものが好ましく、また、コート層を1層で構成したものの他、2層、3層構成等の多層構成で形成されたものでもよい。
【0086】
以上のようなコート層が形成されたプリント媒体は、本実施形態のインクを用いることにより、特に「ひび割れ」を防止する点で有効であることは上述の通りであるが、このような効果に加え、顔料自体、コート層に対する濡れ性が良く、これにより、コート層に対する濡れ性が劣る染料の欠点を補なうことができるという効果を得ることもできる。すなわち、本実施形態の顔料および染料の混合インクを用いることにより、色材として染料のみが含まれるインクを用いる場合に生ずるビーディングの発生を抑制することもできる。
【0087】
インクジェット記録装置として、第一に熱エネルギ−を利用した装置の主要部であるヘッド構成例を図1及び図2に示す。
【0088】
図1は、インク流路に沿ったヘッド13の断面図であり、図2は図1のA−B線での切断面図である。ヘッド13はインクを通す流路(ノズル)14を有するガラス、セラミック、シリコン又はプラスチック板等と発熱素子基板15とを接着して得られる。発熱素子基板15は酸化シリコン、窒化シリコン、炭化シリコン等で形成される保護層16、アルミニウム、金、アルミニウム−銅合金等で形成される電極17−1、17−2、HfB2、TaN、TaAl等の高融点材料から形成される発熱抵抗体層18、熱酸化シリコン、酸化アルミニウム等で形成される畜熱層19、シリコン、アルミニウム、窒化アルミニウム等の放熱性の良い材料で形成される基板20より成り立っている。
【0089】
上記ヘッドの電極17−1及び17−2にパルス状の電気信号が印加されると、発熱素子基板15のnで示される領域が急速に発熱し、この表面に接しているインクに気泡が発生し、その発生する圧力でメニスカス23が突出し、インクがヘッドのノズル14を通して吐出し、吐出オリフィス22よりインク小滴24となり、被記録材25に向かって飛翔する。
【0090】
図3には図1に示したヘッドを多数並べたマルチヘッドの外観図を示す。このマルチヘッドはマルチノズル26を有するガラス板27と、図1に説明したものと同じ様な発熱ヘッド28を接着して作られている。なおここではガラス板を用いたマルチヘッドを示したが、樹脂材料からなるマルチヘッドであっても何ら支障なく本発明に用いることができる。そして樹脂製のマルチヘッドとした場合には、インク吐出面へのインクの付着を抑えるために、撥水性を持たせることが好ましい。撥水性は、例えば図9に示すように、インク吐出口面に例えばシリコン系の材料やフッ素系の材料を含む撥水性の層901を担持させることで付与でき、そのような層は例えばシリコン系の材料やフッ素系の材料を含む撥水剤を塗布することによって形成することができる。
【0091】
図4に、このヘッドを組み込んだインクジェット記録装置の一例を示す。図4において、61はワイピング部材としてのブレ−ドであり、その一端はブレ−ド保持部材によって保持固定されており、カンチレバ−の形態をなす。ブレ−ド61は記録ヘッド65による記録領域に隣接した位置に配置され、又、本例の場合、記録ヘッド65の移動経路中に突出した形態で保持される。62は記録ヘッド65の突出口面のキャップであり、ブレ−ド61に隣接するホ−ムポジションに配置され、記録ヘッド65の移動方向と垂直な方向に移動して、インク吐出口面と当接し、キャッピングを行う構成を備える。更に、63はブレ−ド61に隣接して設けられるインク吸収体であり、ブレ−ド61と同様、記録ヘッド65の移動経路中に突出した形態で保持される。上記ブレ−ド61、キャップ62及びインク吸収体63によって吐出回復部64が構成され、ブレ−ド61及びインク吸収体63によって吐出口面に水分、塵埃等の除去が行われる。
【0092】
65は、吐出エネルギ−発生手段を有し、吐出口を配した吐出口面に対向する被記録材にインクを吐出して記録を行う記録ヘッド、66は記録ヘッド65を搭載して記録ヘッド65の移動を行うためのキャリッジである。キャリッジ66はガイド軸67と摺動可能に系合し、キャリッジ66の一部はモ−タ−68によって駆動されるベルト69と接続(不図示)している。これによりキャリッジ66はガイド軸67に沿った移動が可能となり、記録ヘッド65による記録領域及びその隣接した領域の移動が可能となる。51は被記録材を挿入するための紙給部、52は不図示のモ−タ−により駆動される紙送りロ−ラ−である。
【0093】
これらの構成により記録ヘッド65の吐出口面と対向する位置へ被記録材が給紙され、記録が進行につれて排紙ロ−ラ−53を配した排紙部へ排紙される。以上の構成において記録ヘッド65が記録終了してホ−ムポジションへ戻る際、吐出回復部64のキャップ62は記録ヘッド65の移動経路から退避しているが、ブレ−ド61は移動経路中に突出している。その結果、記録ヘッド65の吐出口がワイピングされる。尚、キャップ62が記録ヘッド65の吐出面に当接してキャッピングを行う場合、キャップ62は記録ヘッドの移動経路中に突出するように移動する。記録ヘッド65がホ−ムポジションから記録開始位置へ移動する場合、キャップ62及びブレ−ド61は上記したワイピングの時の位置と同一の位置にある。この結果、この移動においても記録ヘッド65の吐出口面はワイピングされる。
【0094】
上述の記録ヘッドのホ−ムポジションへの移動は、記録終了時や吐出回復時ばかりでなく、記録ヘッドが記録のために記録領域を移動する間に所定の間隔で記録領域に隣接したホ−ムポジションへ移動し、この移動に伴って上記ワイピングが行われる。
【0095】
図5は、記録ヘッドにインク供給部材、例えば、チュ−ブを介して供給されるインクを収容したインクカ−トリッジ45の一例を示す図である。ここで40は供給用インクを収納したインク収容部、例えば、インク袋であり、その先端にはゴム製の栓42が設けられている。この栓42に針(不図示)を挿入することにより、インク袋40中のインクをヘッドに供給可能にする。44は廃インクを受容するインク吸収体である。インク収容部としてはインクとの接液面がポリオレフィン、特にポリエチレンで形成されているものが好ましい。
【0096】
本発明で使用されるインクジェット記録装置としては、上述の様にヘッドとインクカ−トリッジとが別体となったものに限らず、図6に示すようなそれらが一体になったものにも好適に用いられる。図6において、70は記録ユニットであり、この中にはインクを収容したインク収容部、例えば、インク吸収体が収納されており、かかるインク吸収体中のインクが複数オリフィスを有するヘッド部71からインク滴として吐出される構成になっている。インク吸収体の材料としてはポリウレタンを用いることが本発明にとって好ましい。又、インク吸収体を用いず、インク収容部が内部にバネ等を仕込んだインク袋であるような構造でもよい。72はカ−トリッジ内部を大気に連通させるための大気連通口である。この記録ユニット70は図4に示す記録ヘッド65に換えて用いられるものであって、キャリッジ66に対して着脱自在になっている。
【0097】
次に、第二の力学的エネルギーを利用したインクジェット記録装置の形態として、複数のノズルを有するノズル形成基板と、ノズルに対向して配置される圧電材料と導電材料からなる圧力発生素子と、この圧力発生素子の周囲を満たすインクを備え、印加電圧により圧力発生素子を変位させ、インクの小液滴をノズルから吐出させるオンデマンドインクジェット記録ヘッドを挙げることができる。その記録装置の主要部である記録ヘッドの構成例を図7に示す。
【0098】
ヘッドは、インク室(不図示)に連通したインク流路80と、所望の体積のインク滴を吐出するためのオリフィスプレート81と、インクに直接圧力を作用させる振動板82と、この振動板82に接合され、電気信号により変位する圧伝素子83と、オリフィスプレート81、振動板等を指示固定するための基板84とから構成されている。
【0099】
図7において、インク流路80は、感光性樹脂等で形成され、オリフィスプレート81は、ステンレス、ニッケル等の金属を電鋳やプレス加工による穴あけ等により吐出口85が形成され、振動板82はステンレス、ニッケル、チタン等の金属フィルム及び高弾性樹脂フィルム等で形成され、圧電素子83は、チタン酸バリウム、PZT(lead zircoate titanat;Pb[Zr.Ti]O2)等の誘電体材料で形成される。
【0100】
以上のような構成の記録ヘッドは、圧電素子83にパルス状の電圧を与え、ひずみ応力を発生させ、そのエネルギーが圧電素子83に接合された振動板を変形させ、インク流路80内のインクを垂直に加圧しインク滴(不図示)をオリフィスプレートの吐出口85より吐出して記録を行うように動作する。
【0101】
この様な記録ヘッドは図4に示したものと同様な記録装置に組み込んで使用される。記録装置の細部の動作は先述と同様に行うもので差しつかえない。
【0102】
以上の説明から明らかなように、本発明によれば自己分散性の顔料(第1の顔料)と分散剤の作用によって初めて水性媒体に分散させることができる顔料(第2の顔料)及び該分散剤を含有したインクは、該第1の顔料自体が該第2の顔料の分散剤として機能するためか、分散剤の含有量が少なくても該第2の顔料はインク中で安定に分散しており、保存性の優れたインクを得られる。一方このインクを例えばプリントに用いた場合、記録媒体上で生じる第2の顔料と分散剤との相互作用によって生じる顔料の凝集が第1の顔料によって緩和されるためか、顔料の凝集物は細かい粒子状になってインクドット内に均一に分散し、適切な広がりを持つドット径を有し、且つドット内の画像濃度分布が均一で、また、フェザリング等が殆どない、周囲や外形形状の優れたインクドットを得ることができる。また、インクジェット記録ヘッドの、撥水処理されたオリフィス面に対するインクの付着を極めて有効に抑えることができ、安定したインクジェット記録を行うことができる。
【0103】
更に本発明の一態様にかかるインクによれば、撥水処理が施されているインク吐出口面に対する安定した「ぬれ性」(ここではインクがインク吐出口面に容易に付着しないか、付着しても容易に除去できることをいう)を示し、インクの吐出方向の精度が安定し、高品位な画像の安定した形成に極めて有効である。更にまた、本発明の別の態様にかかる、第1の顔料、第2の顔料、分散剤及び染料を含むインクは、染料によって顔料の凝集力がより緩和されるためか、記録媒体上では顔料の凝集物は細かい粒子状となる。一方、染料はこの粒子状の顔料の回りを取込み、全体としてプリント画像は凝集による不均一が抑制されたものとなる。そしてその効果は、このインクをインク吸収性の悪いプリント媒体に対してインクジェット記録した場合にもインクドットへの「ひび割れ」の発生を極めて有効に抑制でき、或いは防止することができる点において最も顕著に観察することができる。
【0104】
【実施例】
以下、上記実施形態の具体的実施例について以下に説明する。
(実施例1)
図8は第1実施例に係るフルラインタイプのプリント装置の概略構成を示す側面図である。
【0105】
このプリント装置1は、プリント媒体としての記録媒体の搬送方向(同図中矢印A方向)に沿って所定位置に配置された複数のフルラインタイプのプリントヘッドよりインクを吐出してプリントを行うインクジェットプリント方式を採用するものであり、不図示の制御回路に制御されて動作する。ヘッド群101gの各プリントヘッド101Bk、101C、101Mおよび101Yのそれぞれは、図中A方向に搬送される記録紙の幅方向(図の紙面に垂直な方向)に約7200個のインク吐出口を配列し、最大A3サイズの記録紙に対しプリントを行うことができる。
【0106】
記録紙103は、搬送用モータにより駆動される一対のレジストローラ114の回転によってA方向に搬送され、一対のガイド板115により案内されてその先端の位置合わせが行われた後、搬送ベルト111上に搬送される。エンドレスベルトである搬送ベルト111は2個のローラ112、113により保持されている。ローラ113が回転駆動されることで、記録紙103が搬送される。なお、搬送ベルト111に対する記録紙113の吸着は静電吸着によって行われる。ローラ113は不図示のモータ等の駆動源により記録紙103を矢印A方向に搬送する方向に回転駆動される。搬送ベルト111上を搬送されこの間に記録ヘッド群101gによって記録が行われた記録紙103は、ストッカ116上へ排出される。
【0107】
記録ヘッド群101gの各プリントヘッドは、本発明の実施形態について上記で説明した第1の顔料としてブラックの顔料(自己分散型カーボンブラック)、高分子分散剤によって水性媒体中に分散させられる第2の顔料及び該高分子分散剤を含有したインクを収容したヘッド101Bk、カラーインクを各々収容した各ヘッド(シアンヘッド101C、マゼンタヘッド101M、イエローヘッド101Y)が、記録紙103の搬送方向Aに沿って図示の通りに配置されている。そして、各プリントヘッドにより各色のインクを吐出することでブラックの文字やカラー画像のプリントが可能になる。
【0108】
図14は、図8に示したフルラインタイプのプリント装置1の制御構成を示すブロック図である。
【0109】
システムコントローラ201は、マイクロプロセッサをはじめ、本装置で実行される制御プログラムを格納するROM、マイクロプロセッサが処理を行う際にワークエリアとして使用されるRAM等を有し、装置全体の制御を実行する。モータ204はドライバ202を介してその駆動が制御され、図8に示すローラ113を回転させ、記録紙の搬送を行う。
【0110】
ホストコンピュータ206は、本実施例のプリント装置1に対してプリントすべき情報を転送し、そのプリント動作を制御する。受信バッファ207は、ホストコンピュータ206からのデータを一時的に格納し、システムコントローラ201によってデータ読み込みが行われるまでデータを蓄積しておく。フレームメモリ208は、プリントすべきデータをイメージデータに展開するためのメモリであり、プリントに必要な分のメモリサイズを有している。本実施例では、フレームメモリ208は記録紙1枚分を記憶可能なものとして説明するが、本発明はフレームメモリの容量によって限定されるものではない。
【0111】
バッファ209Pは、プリントすべきデータを一時的に記憶するものであり、プリントヘッドの吐出口数によりその記憶容量は変化する。プリント制御部210は、プリントヘッドの駆動をシステムコントローラ201からの指令により適切に制御するためのものであり、駆動周波数、プリントデータ数等を制御するとともに、さらには処理液を吐出させるためのデータも作成する。ドライバ211は、それぞれのインクを吐出させるためのプリントヘッド101Bk、101C、101M、101Yの吐出駆動を行うものであり、プリント制御部210からの信号により制御される。
【0112】
以上の構成において、ホストコンピュータ206からプリントデータが受信バッファ207に転送されて一時的に格納される。次に、格納されているプリントデータはシステムコントローラ201によって読み出されてバッファ209Pに展開される。また、紙詰まり、インク切れ、用紙切れ等を異常センサ222からの各種検知信号により検知することができる。
【0113】
プリント制御部210は、バッファ209P内のプリントデータに基づいて各プリントヘッドの吐出動作を制御する。
【0114】
本実施形態では、各プリントヘッドのインク吐出口は例えば600dpiの密度で配列され、また、記録紙の搬送方向において600dpiのドット密度でプリントを行う。これにより、本実施例でプリントされる画像等のドット密度はロー方向およびカラム方向のいずれも600dpiとなる。また、各ヘッドの吐出周波数は4KHzであり、また、各プリントヘッドの吐出量は、1吐出当り15plである。
【0115】
なお、本実施例のインクジェットプリント装置にあっては、図8に示すように、ブラックのヘッド101Bkとシアンのヘッド101Cとの間の距離Diを比較的大きくとり、これにより、プリント媒体においてBkインクがプリントされる領域とカラーインクがプリントされる領域の境界でのにじみによる混色を抑制することができる。しかしながら、コート層が形成されたプリント媒体を専用に用いる場合は、にじみ自体を抑制できるため、上記距離Diをより短かくでき、装置のサイズをより小型化されたものとすることが可能となる。
【0116】
本実施例で用いるBkインクの組成は次の通りである。なお、各成分は重量部で表示され、各成分の合計は100重量部である(以下表2〜5においても同様である)。
【0117】
【表1】
Figure 0005121099
【0118】
尚、上記顔料分散液1は次のようにして調製したものである。酸性カーボンブラック(商品名:MA−77(pH3.0、三菱化成社製))300gを水1000mlによく混合した後、これに次亜塩素酸ソーダ(有効塩素濃度12%)450gを滴下して、100〜105℃で10時間撹拌した。得られたスラリーを東洋濾紙No.2(アドバンティス社製)で濾過し、顔料粒子を充分に水洗した。この顔料ウェットケーキを水3000mlに再分散し、電導度0.2μsまで逆浸透膜で脱塩した。更に、この顔料分散液(pH=8〜10)を顔料濃度10重量%に濃縮した。以上の方法により、表面に、親水性の−COO- 基が直接結合したアニオン性に帯電した自己分散型カーボンブラックが分散された顔料分散液1を得た。
【0119】
また、上記した顔料分散液4は次のようにして調整したものである。分散剤としてベンジルメタクリレート−メタクリル酸共重合体(重量比率1:1、酸価400重量平均分子量9000)5部と、モノエタノールアミン4部と水81部を混合し、ウォーターバスで70℃に加温し、樹脂分を完全に溶解させた。この際溶解させる樹脂の濃度が低いと完全に溶解しないことがあるため、樹脂を溶解する際は、高濃度溶液をあらかじめ作成しておき、希釈して希望の樹脂溶液を調整してもよい。この溶液に、分散剤の作用によって初めて水性媒体に分散可能なカーボンブラック(BET法による比表面積150m2/g、DBP吸油量50ml/g)10部を加え、以下の条件にて30分間プレミキシングを行った。次いで以下の操作を行ない、上記カーボンブラックが分散剤によって水性媒体に分散された顔料分散体4を得た。
分散機:サイドグラインダー(五十嵐機械製)
粉砕メディア:ジルコニアビーズ1mm径
粉砕メディアの充填率:50%(体積)
粉砕時間:3時間
遠心分離処理(12000RPM、20分間)
こうして得られたインクのKa値は0.32ml/(m2・msec1/2)であった。上記、インクを前述したインクジェットプリント装置のインクタンクに充填し、360dpi×720dpiの解像度のオリフィス面がシリコン系の撥インク剤で処理された記録ヘッドを備えたインクジェットプリンタを用いて吐出周波数7.2kHzで印字を行なった。作成された画像でのドット径は大きく、画像の光学濃度も高く、耐擦過性が良好で、ドットの真円性が良好であり、白すじがない良好な画像を得た。
【0120】
また、上記インクのオリフィス面に対する撥インク性も非常に良好であり、その結果、吐出持続性能も良好で、1×108のパルスを与えた後でも不吐出、ヨレ等の発生はなかった。
【0121】
(実施例2)
Bkインクの他の実施例として、以下の成分のものを用いることもできる。
【0122】
【表2】
Figure 0005121099
【0123】
尚、上記顔料分散液2は次のようにして調製した。BET法による比表面積が230m2/gでDBP吸油量が70ml/100gのカーボンブラック10gと、p−アミノ−N−安息香酸3.41gとを水72gによく混合した後、これに硝酸1.62gを滴下して70℃で撹拌した。数分後、5gの水に1.07gの亜硝酸ナトリウムを溶かした溶液を加え、更に1時間撹拌した。得られたスラリーを東洋濾紙No.2(アドバンティス社製)で濾過し、顔料粒子を十分に水洗し、90℃のオーブンで乾燥させた後、この顔料に水を足して顔料濃度10重量%の顔料水溶液を作成した。以上の方法により、下記式で表したように、表面にフェニル基を介して親水性基が結合したアニオン性に帯電した自己分散型カーボンブラックが分散された顔料分散液2を得た。
【0124】
【化1】
Figure 0005121099
【0125】
また、顔料分散液4は実施例1と同様に調製したものである。
【0126】
こうして得られたインクのKa値は0.4ml/(m2・msec1/2)であった。上記、インクを前述したインクジェットプリント装置のインクタンクに充填し、360dpi×720dpiの解像度のオリフィス面がシリコン系の撥インク剤で処理された記録ヘッドを備えたインクジェットプリンタを用いて吐出周波数7.2kHzで印字を行なった。作成された画像でのドット径は大きく、画像の光学濃度も高く、耐擦過性が良好で、ドットの真円性が良好であり、白すじがない良好な画像を得た。
【0127】
また、上記インクのオリフィス面に対する撥インク性も非常に良好であり、その結果、吐出持続性能も良好で、1×108のパルスを与えた後でも不吐出、ヨレ等の発生はなかった。
【0128】
(実施例3)
Bkインクのさらに他の実施例として、以下の成分のものを用いることもできる。
【0129】
【表3】
Figure 0005121099
【0130】
上記顔料分散液3は、次のようにして調製した。
【0131】
水5.3gに濃塩酸5gを溶かした溶液に、5℃においてアントラニル酸1.58gを加えた。この溶液を、アイスバスで撹拌することにより常に10℃以下に保ち、5℃の水8.7gに亜硝酸ナトリウム1.78gを加えた溶液を加えた。更に、15分撹拌した後、BET法による表面積が320m2/gでDBP吸油量が120ml/100gのカーボンブラック20gを混合した状態のまま加えた。その後、更に15分撹拌した。得られたスラリーを東洋濾紙No.2(アドバンティス社製)で濾過し、顔料分子を充分に水洗し、110℃のオーブンで乾燥させた後、この顔料に水を足して顔料濃度10重量%の顔料水溶液を作製した。以上の方法により、下記式で表したように、表面に、フェニル基を介して親水性基が結合したアニオン性に帯電した自己分散型カーボンブラックが分散した顔料分散液3を得た。また、顔料分散液4は実施例1と同様にして調製したものである。
【0132】
【化2】
Figure 0005121099
【0133】
また、顔料分散液4は実施例1と同様に調製したものである。
【0134】
上記、インクを前述したインクジェットプリント装置のインクタンクに充填し、360dpi×720dpiの解像度のオリフィス面がシリコン系の材料を含む撥インク剤で処理された記録ヘッドを備えたインクジェットプリンタを用いて吐出周波数7.2kHzで印字を行なった。作成された画像でのドット径は大きく、画像の光学濃度も高く、耐擦過性が良好で、ドットの真円性が良好であり、白すじがない良好な画像を得た。
【0135】
また、上記インクのオリフィス面に対する撥インク性も非常に良好であり、その結果、吐出持続性能も良好で、1×108のパルスを与えた後でも不吐、ヨレ等の発生はなかった。
【0136】
(比較例1)
以上示した実施例1〜3に対する比較例として、実施例1と同様に調製した顔料分散体4のみを用いて以下の成分のインクを作成した。
【0137】
【表4】
Figure 0005121099
【0138】
上記、インクを前述したインクジェットプリント装置のインクタンクに充填し、360dpi×720dpiの解像度のオリフィス面がシリコン系の撥インク剤で処理された記録ヘッドを備えたインクジェットプリンタを用いて吐出周波数7.2kHzで印字を行なった。作成された画像でのドット径は小さく、かつ耐擦過性が悪く、ドットの真円性も不良であり、白すじが発生した画像を得た。
【0139】
また、上記インクのオリフィス面に対する撥インク性は非常に悪く、その結果、吐出持続性能も不良で、1×108のパルスを与えた後でも不吐出、ヨレ等の発生が顕著であった。
【0140】
【発明の効果】
以上の説明から明らかなように、本発明によれば自己分散性の顔料(第1の顔料)と分散剤の作用によって初めて水性媒体に分散させることができる顔料(第2の顔料)及び該分散剤を含有したインクは、該第1の顔料自体が該第2の顔料の分散剤として機能するためか、分散剤の含有量が少なくても該第2の顔料はインク中で安定に分散しており、保存性の優れたインクを得られる。一方このインクを例えばプリントに用いた場合、記録媒体上で生じる第2の顔料と分散剤との相互作用によって生じる顔料の凝集が第1の顔料によって緩和されるためか、顔料の凝集物は細かい粒子状になってインクドット内に均一に分散し、適切な広がりを持つドット径を有し、且つドット内の画像濃度分布が均一で、またフェザリング等が殆どない、周囲や外形形状の優れたインクドットを得ることができる。
【0141】
更に本発明の別の態様にかかる、第1の顔料、第2の顔料、分散剤及び染料を含むインクは、染料によって顔料の凝集力がより緩和されるためか、記録媒体上では顔料の凝集物は細かい粒子状となる。一方、染料はこの粒子状の顔料の回りを取込み、全体としてプリント画像は凝集による不均一が抑制されたものとなる。そしてその効果は、このインクをインク吸収性の悪いプリント媒体に対してインクジェット記録した場合にもインクドットへの「ひび割れ」の発生を極めて有効に抑制でき、或いは防止することができる点において最も顕著に観察することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】インクジェット記録装置のヘッドの一例を示す縦断面図である。
【図2】インクジェット記録装置のヘッドの一例を示す横断面図である。
【図3】図1に示したヘッドをマルチ化したヘッドの外観斜視図である。
【図4】インクジェット記録装置の一例を示す概略斜視図である。
【図5】インクカートリッジの一例を示す縦断面図である。
【図6】記録ユニットの一例を示す斜視図である。
【図7】インクジェット記録ヘッドの別の構成例を示す概略断面図である。
【図8】本発明の一実施形態に係るインクジェットプリント装置の概略構成を示す側面図である。
【図9】撥水処理されたオリフィス面を有するインクジェット記録ヘッドの概略斜視図である。
【図10】本発明の他の実施態様にかかるインクジェット記録方法の概略説明図である。
【図11】本発明の他の実施態様にかかるインクジェット記録方法の概略説明図である。
【図12】本発明の他の実施態様にかかるインクジェット記録方法の概略説明図である。
【図13】本発明の他の実施態様にかかるインクジェット記録方法の概略説明図である。
【図14】図8に示したインクジェットプリント装置の制御構成を示すブロック図である。

Claims (13)

  1. 色材として少なくとも第1の顔料及び第2の顔料を水性媒体中に分散状態で含むインクであって、
    該第1の顔料が少なくとも1つのアニオン性基が直接もしくは他の原子団を介して該第1の顔料の表面に結合されている自己分散型の顔料であり、
    該第2の顔料が高分子分散剤によって該水性媒体に分散させることのできる顔料であり、
    該インクは更に該第2の顔料の分散剤として機能する高分子分散剤を含み、
    該高分子分散剤はベンジルメタクリレートとメタクリル酸をモノマーとして得られた共重合体である
    ことを特徴とするインク。
  2. 前記ベンジルメタクリレートと前記メタクリル酸の重量比が1:1である請求項1に記載のインク。
  3. 該第2の顔料がBET法による比表面積が300m/g以下、かつDBP吸油量150ml/100g以下のカーボンブラックである請求項1または2に記載のインク。
  4. 前記他の原子団は、炭素数1〜12の置換もしくは未置換のアルキレン基、置換もしくは未置換のフェニレン基、または置換もしくは未置換のナフチレン基である請求項1〜3のいずれかに記載のインク。
  5. 前記第1の顔料の表面に結合しているアニオン性基が、−COOM、−SOM、−POHM、−PO、−SONH、および−SONHCORからなる群から選択される少なくとも1つのアニオン性基であり、式中のMは水素原子、アルカリ金属、アンモニウム又は有機アンモニウムを表わし、Rは炭素原子数1〜12のアルキル基、置換若しくは未置換のフェニル基、又は置換若しくは未置換のナフチル基を表わす請求項1〜4のいずれかに記載のインク。
  6. 前記高分子分散剤の重量平均分子量が2000〜30000である請求項1〜5のいずれかに記載のインク。
  7. 前記高分子分散剤の酸価が100〜500である請求項1〜6のいずれかに記載のインク。
  8. 前記高分子分散剤の第2の顔料に対する含有比(重量比)が10〜200%であることを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載のインク。
  9. 前記第2の顔料がその表面に高分子分散剤を吸着することにより分散されている請求項1〜8のいずれかに記載のインク。
  10. 前記第1の顔料と第2の顔料との比率が95/5〜50/50の範囲にあることを特徴とする請求項1〜9のいずれかに記載のインク。
  11. 該インクが更に染料を含んでいる請求項1〜10のいずれかに記載のインク。
  12. 該インクがインクジェット用である請求項1〜11のいずれかに記載のインク。
  13. インクをインクジェット記録方法を用いてプリント媒体に向けて吐出させて、該プリント媒体上に画像を記録する工程を含むインクジェット記録方法において、該インクが請求項12に記載のインクであることを特徴とするインクジェット記録方法。
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