JP5110199B2 - チタンアルミナイド鋳造品及びその結晶粒微細化方法 - Google Patents
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Description
本発明は、チタンアルミナイド鋳造品及びその結晶粒微細化方法に係り、特に、トラックのディーゼルエンジン等に搭載されるターボチャージャーや、高温下で連続使用される回転部材等に用いられるチタンアルミナイド鋳造品及びその結晶粒微細化方法に関するものである。
AlとTiとの金属間化合物であるチタンアルミナイド(TiAl)は、軽量で、高強度である等といった特性を有していることから、航空機や自動車用エンジンの回転部材等に有望とされている。
これらの部材にチタンアルミナイドを用いるには、チタンアルミナイドがクリープ強度(特に高温クリープ強度)及び疲労強度を高いレベルで満足すること、即ち、チタンアルミナイドのクリープ特性(特に高温クリープ特性)及び疲労特性が良好であることが要求される。
チタンアルミナイドの金属組織形態の1つに全面ラメラ組織があるが、この組織のチタンアルミナイドは、クリープ特性に優れていることが知られている。また、β相安定化型元素(W、Nb、Ta、Cr等)を添加したチタンアルミナイドは、クリープ特性に優れたものが多いことが知られている。これは、これらの元素を添加すると、Al成分量との兼ね合いから、初晶がβ相で凝固を開始した場合、結晶粒の粗大化が生じ、即ち、金属組織が粗大組織となるためであり、これによって、クリープ強度が向上する。
ところが、疲労特性の向上という観点では、金属組織の結晶粒はできるだけ微細であることが好ましい。つまり、クリープ特性の向上と疲労特性の向上は相反する要求であり、その両立は困難であった。
以上の事情を考慮して創案された本発明の目的は、金属組織の結晶粒が微細であり、クリープ特性及び疲労特性がいずれも良好なチタンアルミナイド鋳造品及びその結晶粒微細化方法を提供することにある。
上記目的を達成すべく本発明のチタンアルミナイド鋳造品は、Fe及びVの双方を含有するチタンアルミナイド鋳造品において、化学組成が、
Al:46〜50原子%、
Fe、Vの両元素を総量で5原子%以下(但し、Feの含有量は17.5−0.3x原子%以下(x:Alの含有量))、
C:0.1〜0.4原子%、
残部:Ti及び不可避的不純物であり、
金属組織の平均結晶粒径が50〜300μm、金属組織中に析出するC基析出物の平均粒径が1μm以下であるものである。
Al:46〜50原子%、
Fe、Vの両元素を総量で5原子%以下(但し、Feの含有量は17.5−0.3x原子%以下(x:Alの含有量))、
C:0.1〜0.4原子%、
残部:Ti及び不可避的不純物であり、
金属組織の平均結晶粒径が50〜300μm、金属組織中に析出するC基析出物の平均粒径が1μm以下であるものである。
以上の構成によれば、疲労特性を向上させるべく金属組織の結晶粒の微細化を図っても、クリープ特性の著しい低下のおそれがないチタンアルミナイド鋳造品を得ることができる。
一方、本発明に係るチタンアルミナイド鋳造品の結晶粒微細化方法は、上記のチタンアルミナイド鋳造品と同じ化学組成の合金溶湯を金型内に鋳込んだ後、その鋳造体を冷却する際に、1500〜1100℃の温度域で、150〜250℃/minの冷却速度で冷却するものである。
以上の方法によれば、上記化学組成のチタンアルミナイド鋳造品を、完全2相(α+γ相)の層状組織に、かつ、結晶粒微細に形成することができる。
以上要するに本発明によれば、次のような優れた効果を発揮する。
(1)疲労特性を向上させるべく金属組織の結晶粒の微細化を図っても、クリープ特性の著しい低下のおそれがないチタンアルミナイド鋳造品を得ることができる。
(2)(1)のチタンアルミナイド鋳造品を、完全2相(α+γ相)の層状組織に、かつ、結晶粒微細に形成することができる。
(1)疲労特性を向上させるべく金属組織の結晶粒の微細化を図っても、クリープ特性の著しい低下のおそれがないチタンアルミナイド鋳造品を得ることができる。
(2)(1)のチタンアルミナイド鋳造品を、完全2相(α+γ相)の層状組織に、かつ、結晶粒微細に形成することができる。
以下、本発明の好適一実施の形態を添付図面に基いて説明する。
高温クリープ特性及び鋳造性が良好なチタンアルミナイドとして、本発明者は、Ti−Al−Fe−V系合金又はTi−Al−Fe−V−B系合金(特願平10−95172号(特開平11−269584号公報)参照)、及びTi−Al−Mo−V系合金又はTi−Al−Mo−V−Si系合金(特願平11−161073号(特開2000−345260号公報)参照)を先行出願した。
上述したTi−Al−Fe−V系合金又はTi−Al−Fe−V−B系合金は、鋳造のままでも優れた高温クリープ特性を有するチタンアルミナイドである。また、Ti−Al−Mo−V系合金又はTi−Al−Mo−V−Si系合金は、Ti−Al−Fe−V系合金又はTi−Al−Fe−V−B系合金よりもAl含有量を増やすことで、機械的特性の向上、即ち高温クリープ強度の更なる向上を図ったチタンアルミナイドである。一般に、Al含有量が少ないと結晶粒は微細であり、Al含有量が多いと結晶粒は粗大となる。
先行出願の両チタンアルミナイドは、クリープ特性に主眼をおいたものであったため、その金属組織を、図7,図8に示すように、β凝固による粗大なラメラ組織とすることで、クリープ強度の向上を図っていた。しかし、金属組織の結晶粒が粗大であれば高クリープ強度が得られるものの、疲労特性が低下することから、これらのチタンアルミナイドは、疲労特性についてはあまり十分ではなかった。
そこで、本願発明のチタンアルミナイド鋳造品においては、C又はBを規定範囲内で含有させることで、金属組織の結晶粒の微細化を図り、先行出願の両チタンアルミナイドの良好な高温クリープ特性を維持しつつ、疲労特性の改善を図ったものである。
良好な高温クリープ特性を維持しつつ、疲労特性の改善を図ったチタンアルミナイド鋳造品(1)は、Mo、V、Siを含有し、
化学組成が、
Al:46〜50原子%、
Mo、V、及びSiの全元素が総量で5原子%以下(但し、Siの含有量は0.7原子%以下、Moの含有量は17.5−0.3x原子%以下(x:Alの含有量))、
C:0.1〜0.4原子%、より好ましくは0.2〜0.4原子%、
残部:Ti及び不可避的不純物で構成されるチタンアルミナイド鋳造品(1)である。
化学組成が、
Al:46〜50原子%、
Mo、V、及びSiの全元素が総量で5原子%以下(但し、Siの含有量は0.7原子%以下、Moの含有量は17.5−0.3x原子%以下(x:Alの含有量))、
C:0.1〜0.4原子%、より好ましくは0.2〜0.4原子%、
残部:Ti及び不可避的不純物で構成されるチタンアルミナイド鋳造品(1)である。
また、他のチタンアルミナイド鋳造品(2)は、Mo、V、及びSiを含有し、
化学組成が、
Al:46〜50原子%、
Mo、V、及びSiの全元素が総量で5原子%以下(但し、Siの含有量は0.7原子%以下、Moの含有量は17.5−0.3x原子%以下(x:Alの含有量))、
B:0.2〜1.20原子%、より好ましくは0.3〜1.20原子%、
残部:Ti及び不可避的不純物で構成されるチタンアルミナイド鋳造品(2)である。
化学組成が、
Al:46〜50原子%、
Mo、V、及びSiの全元素が総量で5原子%以下(但し、Siの含有量は0.7原子%以下、Moの含有量は17.5−0.3x原子%以下(x:Alの含有量))、
B:0.2〜1.20原子%、より好ましくは0.3〜1.20原子%、
残部:Ti及び不可避的不純物で構成されるチタンアルミナイド鋳造品(2)である。
ここで、上記のチタンアルミナイド鋳造品(1)、(2)において、Vの含有量は、1.8原子%以下の任意の値であるが、好ましくは1原子%以下、特に好ましくは0.5原子%前後である。
次に、チタンアルミナイド鋳造品(1)、(2)の結晶粒微細化方法を以下に説明する。
先ず、化学組成が、
Al:46〜50原子%、
Mo、V、及びSiの全元素が総量で5原子%以下(但し、Siの含有量は0.7原子%以下、Moの含有量は17.5−0.3x原子%以下(x:Alの含有量))、
C:0.1〜0.4原子%又はB:0.2〜1.20原子%、
残部:Ti及び不可避的不純物となるように金属元素の添加量を調整した後、溶解を行う。
Al:46〜50原子%、
Mo、V、及びSiの全元素が総量で5原子%以下(但し、Siの含有量は0.7原子%以下、Moの含有量は17.5−0.3x原子%以下(x:Alの含有量))、
C:0.1〜0.4原子%又はB:0.2〜1.20原子%、
残部:Ti及び不可避的不純物となるように金属元素の添加量を調整した後、溶解を行う。
次に、溶解した合金溶湯を金型内に鋳込んで鋳造体を形成する。この鋳造体を冷却する際、1500〜1100℃の温度域で、150〜250℃/minの冷却速度で冷却する。これによって、鋳放し材の金属組織において、γ相の単相が析出することはなく、完全2相(α+γ相)の層状組織が結晶粒微細に形成されると共に、結晶粒界に微細なC基又はB基析出物が析出した本実施の形態に係るチタンアルミナイド鋳造品が得られる。
次に、上記のチタンアルミナイド鋳造品(1)、(2)の作用について説明する。
上記のチタンアルミナイド鋳造品(1)の金属組織の光学顕微鏡観察図を図1に示し、図1の部分拡大図を図2に示し、チタンアルミナイド鋳造品(2)の金属組織の光学顕微鏡観察図を図3に示し、図3の部分拡大図を図4に示す。
チタンアルミナイド鋳造品の母材中に、Cを0.1〜0.4原子%(又はBを0.2〜1.20原子%)の範囲で含有させることで、最初にマトリックス(α+γ相の完全2相)中にC基(又はB基)析出物が析出し、これらの析出物が核となって結晶粒が微細化し、図1,図2(又は図3,図4)に示すように、図7,図8と比較して金属組織の結晶粒が微細なチタンアルミナイド鋳造品が得られる。
この時、C(又はB)の含有量が規定範囲よりも多いと、C基(又はB基)析出物が過剰に析出すると共に、過剰に析出したこれらの析出物が結晶粒を必要以上に微細化し、クリープ強度の低下を招いてしまう。また、結晶の凝固終了時におけるC基(又はB基)析出物が粗大になってしまい、これらの析出物が後に破壊の起点となってしまう。逆に、C(又はB)の含有量が規定範囲よりも少ないと、結晶粒の微細化に全く寄与しない。よって、結晶粒の凝固終了時におけるC基(又はB基)析出物は、その量はできるだけ少なく、かつ、そのサイズはできるだけ微細であることが好ましいことから、C(又はB)の含有量は上記範囲に規定される。
これらのチタンアルミナイド鋳造品(1)、(2)においては、上記規定範囲内でCを添加することで、図2に示すように、結晶粒界に、平均粒径が1μm以下、好ましくは0.5μm以下の粒状のC基析出物が析出する。又は、上記規定範囲内でBを添加することで、図4に示すように、結晶粒界に、平均長さが15μm以下、好ましくは10μm以下のフレーク状のB基析出物(図4中の多数の黒点)が析出する。この微細なC基(又はB基)析出物が結晶核として析出することで、金属組織における結晶粒の平均粒径が50〜300μm、好ましくは50〜150μmに微細化する。
金属組織の結晶粒度とクリープ強度及び結晶粒度と疲労強度の関係を図5に示す。ここで、図5中の、破線A1はC又はB添加無しのチタンアルミナイド鋳造品のクリープ強度特性を、実線A2は本発明に係るチタンアルミナイド鋳造品のクリープ強度特性を、実線Bはチタンアルミナイド鋳造品の疲労強度特性を示している。
図5に示すように、一般に、結晶粒の微細化に伴って、クリープ強度は著しく低下し、疲労強度は著しく向上する(破線A1、実線B参照)。これは、金属が変形する時は、結晶粒が微細であると、粒界すべり、結晶拡散クリープ変形が容易となり、その結果、金属の変形が容易となるためである。しかし、チタンアルミナイド鋳造品においては、結晶粒内に析出する微細なC基(又はB基)析出物が結晶粒の微細化に寄与すると共に、転位のピン止めとして作用する(ピン止め効果)。このため、疲労強度は著しく向上し、かつ、クリープ強度は大幅に低下することはなく(実線A2参照)、即ちクリープ強度の著しい低下を防ぐことができ、チタンアルミナイド鋳造品の機械的特性が改善される。尚、析出したC基(又はB基)析出物が粗大であれば、チタンアルミナイド鋳造品の機械的特性改善に寄与しないことは言うまでもない。
ここで、C及びBを両方添加してもよいが、その場合、C,Bの内、特にCの添加量を極微量に制御しなければならなくなる。Cの添加量があまりにも少ないと、合金の溶製時にCが全量揮発してしまうおそれがあり、Cの制御が著しく困難となるので、合金設計上、あまり好ましくない。
上記のチタンアルミナイド鋳造品(1)、(2)を、自動車やトラックのターボチャージャーや、高温下で連続使用される回転部材等に対して適用した場合、機械的特性、特に高温クリープ特性及び疲労特性に全く問題がなく、また、製造コストも前述した先行出願の両チタンアルミナイドと同等であることから、コストの大幅な上昇のおそれもない。つまり、高性能、高信頼性のターボチャージャー又は高温回転部材を安価に大量生産することが可能となる。
また、これらのチタンアルミナイド鋳造品は、そのまま金属部品として利用することが可能であるが、これらの鋳造品は鋳放し材であるため、鋳造欠陥を有しているおそれもある。このため、必要に応じて、これらの鋳造品に対して、HIP処理や均質化処理等の熱処理を施し、鋳造欠陥を除去するようにしてもよい。この時の熱処理条件は、800〜1100℃の温度範囲又は({1220+25(Al原子%−44)}+10)以上の温度で熱処理を施すと共に、100℃/min以上の速度で冷却する。
次に、本発明の実施の形態について説明する。
前述したチタンアルミナイド鋳造品(1)、(2)は、Ti−Al−Mo−V系の合金であった。これに対して、本発明の実施の形態に係るチタンアルミナイド鋳造品は、チタンアルミナイド鋳造品(1)、(2)の化学組成の内、Moの少なくとも一部をFeで置き換え、Ti−Al−Fe−V系としたものである。
具体的には、本発明の実施の形態に係るチタンアルミナイド鋳造品は、Fe及びVを含有し、
化学組成が、
Al:46〜50原子%、
Fe、Vの両元素を総量で5原子%以下(但し、Siの含有量は0.7原子%以下、Feの含有量は17.5−0.3x原子%以下(x:Alの含有量))、
C:0.1〜0.4原子%、より好ましくは0.2〜0.4原子%、
残部:Ti及び不可避的不純物で構成されるTi−Al−Fe−V系合金である。
化学組成が、
Al:46〜50原子%、
Fe、Vの両元素を総量で5原子%以下(但し、Siの含有量は0.7原子%以下、Feの含有量は17.5−0.3x原子%以下(x:Alの含有量))、
C:0.1〜0.4原子%、より好ましくは0.2〜0.4原子%、
残部:Ti及び不可避的不純物で構成されるTi−Al−Fe−V系合金である。
本実施の形態に係るチタンアルミナイド鋳造品は、チタンアルミナイド鋳造品(1)、(2)と同様の効果が得られることは言うまでもない。また、本実施の形態に係るチタンアルミナイド鋳造品は、チタンアルミナイド鋳造品(1)、(2)と比較して、Moを含有していないため、製造コストの低減を図ることができる。
以下に、チタンアルミナイド鋳造品(1)、(2)と本発明のチタンアルミナイド鋳造品を、実施例1〜19として、比較例1〜6と先行例1、2と併せて説明する。
Al、Mo又はFe、V、Si、C又はB、残部Ti+不可避的不純物からなる合金溶湯を溶解製造した後、1500〜1100℃の温度域において150〜250℃/minの冷却速度を保ちながら冷却し、化学組成の異なる28種類の鋳造体を作製した(実施例1〜19、比較例1〜7、先行例1,2)。
各鋳造体の化学組成を図9の表1に示す。
次に、各鋳造体について、組織観察、クリープ特性、及び疲労特性の評価を行った。また、これらの評価を基に総合評価を行った。各評価結果を図10の表2に示す。
(組織観察)
組織観察方法としては、各鋳造体を切断し、その切断面を光学顕微鏡及び反射電子像によりミクロ組織解析を行い、C基又はB基析出物のサイズ、結晶粒微細化の効果の有無を観察した。ここで、結晶粒微細化の効果が著しかったものは◎、有ったものは○、無かったものは×とした。
(クリープ特性評価)
クリープ特性の評価方法としては、各鋳造体を平行部φ6×30mmの試験片に加工し、大気中で荷重240MPa、温度760℃の条件でクリープラプチャ試験を行い、クリープ破断寿命(hr)を測定した。
(疲労特性評価)
疲労特性の評価方法としては、周波数60Hzの三角波を用い、各鋳造体に対して、室温で、応力振幅R(最小応力/最大応力)が0.1、平均応力が192.5MPaの疲労試験を行い、破断に至るまでのサイクル数(回)を測定した。この時、疲労特性が良好なものを○、先行例1,2と同等又は同等以上のものを△とした。
(組織観察)
組織観察方法としては、各鋳造体を切断し、その切断面を光学顕微鏡及び反射電子像によりミクロ組織解析を行い、C基又はB基析出物のサイズ、結晶粒微細化の効果の有無を観察した。ここで、結晶粒微細化の効果が著しかったものは◎、有ったものは○、無かったものは×とした。
(クリープ特性評価)
クリープ特性の評価方法としては、各鋳造体を平行部φ6×30mmの試験片に加工し、大気中で荷重240MPa、温度760℃の条件でクリープラプチャ試験を行い、クリープ破断寿命(hr)を測定した。
(疲労特性評価)
疲労特性の評価方法としては、周波数60Hzの三角波を用い、各鋳造体に対して、室温で、応力振幅R(最小応力/最大応力)が0.1、平均応力が192.5MPaの疲労試験を行い、破断に至るまでのサイクル数(回)を測定した。この時、疲労特性が良好なものを○、先行例1,2と同等又は同等以上のものを△とした。
図10の表2に示すように、C又はBの添加の無い先行例1,2の鋳造体においては、クリープ破断寿命は500hr以上と長く、高温クリープ特性に優れているものの、結晶粒が粗大であることから、疲労特性が良好でなかった。これらを踏まえた総合評価が○にとどまった。
これに対して、Cを規定範囲内で添加したチタンアルミナイド鋳造品(1)の実施例1〜4、11〜13、チタンアルミナイド鋳造品(2)の実施例5〜7、14〜16、本発明の実施例5〜7,17〜19鋳造体においては、C基析出物のサイズは微細又はやや大であり、全ての鋳造体で結晶粒の微細化効果が観察され、疲労特性はいずれも良好であった。また、クリープ破断寿命は300〜500hr程度であり、先行例1,2と比較してクリープ破断寿命の著しい低下はなかった。これらを踏まえた総合評価が◎と良好であった。他方、Bを規定範囲内で添加した実施例8〜10,14〜16の鋳造体においては、B基析出物のサイズは粗大であり、全ての鋳造体で結晶粒の微細化効果が観察され、疲労特性はいずれも良好であった。また、クリープ破断寿命は400hr以上であり、先行例1,2と比較してクリープ破断寿命の著しい低下はなかった。これらを踏まえた総合評価が◎と良好であった。ここで、実施例1,11,17又は実施例8,14の鋳造体においては、結晶粒微細化の効果は得られるものの、C又はBの含有量がやや少ないため、疲労特性が先行例1,2と同等又は同等以上の△となり、これらを踏まえた総合評価は○にとどまった。
尚、B基析出物のサイズが「粗大」であるというのは、C基析出物のサイズと比較してのことであり、B基析出物のサイズ基準では「微細」である。
比較例3,7又は比較例2,5,6の鋳造体においては、結晶粒微細化の効果は得られるものの、C又はBの含有量が規定範囲よりも多いため、C又はBの含有量が規定範囲内のものと比較して、C基又はB基析出物のサイズが大きい(大又は極粗大である)ことから、クリープ破断寿命が低下した。これらを踏まえた総合評価は○にとどまった。
比較例1又は比較例4の鋳造体においては、C又はBの添加自体を行っていないため、クリープ特性及び疲労特性は先行例1,2の鋳造体と同程度であり、これらを踏まえた総合評価は○にとどまった。
次に、クリープ特性と疲労特性の関係を図6に示す。ここで、横軸はクリープ破断寿命(hr〔760℃,240MPa〕)を、縦軸はLCF(Life of Cycles to Failure)特性を示している。
図6に示すように、図中△印で示されるTi−Al−Mo−V系合金にSiを添加すると共に、Al含有量を増やすことで、Siによる析出強化及び結晶粒粗大化により、クリープ破断寿命が300hr程度から500hr程度に向上し、即ち高温クリープ特性が改善され、図中□印で示されるTi−Al−Mo−V−Si系合金が得られる。
このTi−Al−Mo−V−Si系合金にC又はBを添加することで、結晶粒が微細化してLCF特性が改善され、図中黒丸印で示される本発明に係るチタンアルミナイド鋳造品LCF特性が得られる。この時、C又はBの添加量があまりにも少ないと、図中○印で示すように、結晶粒微細化の効果が無く、LCF特性が改善されることはない。また、C又はBの添加量の多い、少ないによって、析出するC基又はB基析出物のサイズが粗大になったり、微細になったりする。この時、析出したC基又はB基析出物があまりにも粗大であると、高温クリープ特性の著しい低下を防ぐことができない。
以上、本発明の実施の形態は、上述した実施の形態に限定されるものではなく、他にも種々のものが想定されることは言うまでもない。
Claims (2)
- Fe及びVの双方を含有するチタンアルミナイド鋳造品において、化学組成が、
Al:46〜50原子%、
Fe、Vの両元素を総量で5原子%以下(但し、Feの含有量は17.5−0.3x原子%以下(x:Alの含有量))、
C:0.1〜0.4原子%、
残部:Ti及び不可避的不純物であり、
金属組織の平均結晶粒径が50〜300μm、金属組織中に析出するC基析出物の平均粒径が1μm以下であることを特徴とするチタンアルミナイド鋳造品。 - 請求項1に記載のチタンアルミナイド鋳造品と同じ化学組成の合金溶湯を金型内に鋳込んだ後、その鋳造体を冷却する際に、1500〜1100℃の温度域で、150〜250℃/minの冷却速度で冷却することを特徴とするチタンアルミナイド鋳造品の結晶粒微細化方法。
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JP2012097358A (ja) | 2012-05-24 |
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