JP5196932B2 - 水素吸蔵合金、該水素吸蔵合金を用いた水素吸蔵合金電極及びニッケル水素二次電池 - Google Patents
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Description
ニッケル水素二次電池の負極用の水素吸蔵合金としては、従来、LaNi5等のCaCu5型合金(希土類-Ni系水素吸蔵合金)が用いられているが、電池の高容量化のため、希土類-Ni系水素吸蔵合金における希土類元素の一部をMg元素で置換した希土類-Mg-Ni系水素吸蔵合金が開発されている。
そこで、特許文献1は、特定の組成を有する希土類-Mg-Ni系水素吸蔵合金を開示しており、当該希土類-Mg-Ni系水素吸蔵合金を用いることによって、高容量で、充放電サイクル寿命に優れたニッケル水素二次電池が提供されるとされている。
そして、このような乾電池を代替する用途でも、希土類-Mg-Ni系水素吸蔵合金を使用したニッケル水素二次電池によれば、その容量の高さから、機器の駆動時間を延ばすことができると期待されている。
かかる問題の解決のため、ニッケル水素二次電池の作動電圧を高めることは、希土類-Mg-Ni系水素吸蔵合金を用いた場合には困難であった。これは、希土類-Mg-Ni系水素吸蔵合金では、従来の希土類-Ni系水素吸蔵合金に比べ、希土類元素等のAサイトの元素に対するNi等のBサイトの元素の比が低く、固有の性質として水素平衡圧が低いためである。
。
すなわち、本発明によれば、一般式:(NdaDybAc)1−wMgwNixAlyTz(ただし、式中、Aは、La,Ce,Pr,Pm,Sm,Eu,Gd,Tb,Ho,Er,Tm,Yb,Lu,Sc,Zr,Hf,Ca及びYよりなる群から選ばれる少なくとも1種の元素を表し、Tは、V,Nb,Ta,Cr,Mo,Mn,Fe,Co,Ga,Zn,Sn,In,Cu,Si,P及びBよりなる群から選ばれる少なくとも1種の元素を表し、添字a,b,cはそれぞれ、a>0,b>0,c≧0,a+b+c=1で示される関係を満たし、添字w,x,y,zはそれぞれ、0.10≦w≦0.25,0.05≦y≦0.35,0≦z≦0.5,3.2≦x+y+z≦3.8で示される範囲にある。)にて表される組成を有する水素吸蔵合金が提供される(請求項1)。
好ましくは、前記添字cは0.1以下である(請求項3)。
また本発明によれば、請求項1乃至3の何れか1項に記載の水素吸蔵合金からなる粒子と、前記粒子を保持した導電性を有する芯体とを備えることを特徴とする水素吸蔵合金電極が提供される(請求項4)。
請求項2の水素吸蔵合金では添字bが0<b<0.15の範囲にある。これにより、当該水素吸蔵合金をニッケル水素二次電池等に適用したときに、サイクル寿命の向上が一層図られる。
請求項1の水素吸蔵合金では、添字wが0.10≦w≦0.25の範囲にある。これにより、当該水素吸蔵合金をニッケル水素二次電池等に適用したときに、サイクル寿命の向上及び高作動電圧化が一層図られる。
請求項5のニッケル水素二次電池は、上述した水素吸蔵合金電極を具備したことによって、高容量であり、サイクル寿命が長く、且つ、作動電圧が高い。このため、当該ニッケル水素二次電池は、例えば乾電池を代替することが可能であり、工業的価値が高い。
このニッケル水素二次電池は例えばAAサイズの円筒型電池であり、図1に示したように、上端が開口した有底円筒形状をなす外装缶10を備えている。外装缶10の底壁は導電性を有し、負極端子として機能する。外装缶10の開口内には、リング状の絶縁パッキン12を介して導電性を有する円板形状の蓋板14が配置され、これら蓋板14及び絶縁パッキン12は外装缶10の開口縁をかしめ加工することにより外装缶10の開口縁に固定されている。
正極24は、多孔質構造を有する導電性の正極基板と、正極基板の空孔内に保持された正極合剤とからなり、正極合剤は、正極活物質粒子と、必要に応じて正極24の特性を改善するための種々の添加剤粒子と、これら正極活物質粒子及び添加剤粒子の混合粒子を正極基板に結着するための結着剤とからなる。
(NdaDybAc)1−wMgwNixAlyTz…(1)
で示される。
まず、上述の組成となるよう金属原料を秤量して混合し、この混合物を例えば高周波溶解炉で溶解してインゴットにする。得られたインゴットに、900〜1200℃の温度の不活性ガス雰囲気下にて5〜24時間加熱する熱処理を施し、インゴットの金属組織をAB5型構造とAB2型構造とを合わせたような超格子構造にする。この後、インゴットを粉砕し、篩分けにより所望粒径に分級して、水素吸蔵合金粒子36を得ることができる。
また、このニッケル水素二次電池では、水素吸蔵合金粒子36を構成する希土類-Mg-Ni系水素吸蔵合金が、上記した式(1)で示される組成を有し、Dyを含有することによって、耐アルカリ性及び水素吸蔵量を維持しながら、水素平衡圧が高い。このため、このニッケル水素二次電池は、高容量で、サイクル寿命が長く、且つ、作動電圧が高い。
実施例1
(1)負極の作製
希土類成分の内訳が、原子数比で、20%のPr、40%のNd、及び40%のDyになるように希土類成分の原材料を用意し、そして、希土類成分の原材料、Mg、Ni及びAlを原子数比で0.85:0.15:3.3:0.20:0.10の割合で含有する水素吸蔵合金の塊を誘導溶解炉を用いて調製した。この合金をアルゴン雰囲気中で1000℃、10時間の熱処理を行い、組成が(Pr0.20Nd0.40Dy0.40)0.85Mg0.15Ni3.3Al0.2Zn0.1で表わされる超格子構造の希土類-Mg-Ni系水素吸蔵合金のインゴットを得た。
この合金粒子100質量部に対してポリアクリル酸ナトリウム0.4質量部、カルボキシメチルセルロース0.1質量部、および、ポリテトラフルオロエチレン分散液(分散媒:水、固形分60質量部)2.5質量部を加えた後、混練して負極合剤のスラリーを得た。
(2)正極の作製
金属Niに対して、Znが3質量%、Coが1質量%の比率となるように、硫酸ニッケル、硫酸亜鉛および硫酸コバルトの混合水溶液を調製し、この混合水溶液に攪拌しながら水酸化ナトリウム水溶液を徐々に添加した。この際、反応中のpHを13〜14に保持して水酸化ニッケル粒子を析出させ、この水酸化ニッケル粒子を10倍量の純水にて3回洗浄したのち、脱水、乾燥した。
(3)ニッケル水素二次電池の組立て
上記のようにして得られた負極及び正極を、ポリプロピレンまたはナイロン製の不織布よりなるセパレータを介して渦巻状に巻回して電極群を形成し、この電極群を外装缶に収容したのち、この外装缶内に、リチウム、ナトリウムを含有した濃度30質量%の水酸化カリウム水溶液を注入して、図1に示した構成を有し、公称容量が2500mAhであるAAサイズのニッケル水素二次電池を組立てた。
水素吸蔵合金の組成を(Pr0.35Nd0.50Dy0.15)0.85Mg0.15Ni3.3Al0.2Zn0.1にしたこと以外は実施例1の場合と同様にして、ニッケル水素二次電池を組立てた。
実施例3
水素吸蔵合金の組成を(Pr0.30Nd0.60Dy0.10)0.85Mg0.15Ni3.3Al0.2Zn0.1にしたこと以外は実施例1の場合と同様にして、ニッケル水素二次電池を組立てた。
水素吸蔵合金の組成を(Pr0.30Nd0.60Dy0.10)0.85Mg0.15Ni2.9Al0.2Zn0.1にしたこと以外は実施例1の場合と同様にして、ニッケル水素二次電池を組立てた。
実施例5
水素吸蔵合金の組成を(Pr0.30Nd0.60Dy0.10)0.85Mg0.15Ni3.5Al0.2Zn0.1にしたこと以外は実施例1の場合と同様にして、ニッケル水素二次電池を組立てた。
水素吸蔵合金の組成を(Pr0.10Nd0.80Dy0.10)0.85Mg0.15Ni3.3Al0.2Zn0.1にしたこと以外は実施例1の場合と同様にして、ニッケル水素二次電池を組立てた。
実施例7
水素吸蔵合金の組成を(Pr0.20Nd0.40Dy0.40)0.75Mg0.25Ni3.3Al0.2Zn0.1にしたこと以外は実施例1の場合と同様にして、ニッケル水素二次電池を組立てた。
水素吸蔵合金の組成を(Pr0.20Nd0.40Dy0.40)0.90Mg0.10Ni3.3Al0.2Zn0.1にしたこと以外は実施例1の場合と同様にして、ニッケル水素二次電池を組立てた。
比較例1
水素吸蔵合金の組成を(Pr0.30Nd0.70)0.85Mg0.15Ni3.3Al0.2Zn0.1にしたこと以外は実施例1の場合と同様にして、ニッケル水素二次電池を組立てた。
水素吸蔵合金の組成を(Pr0.20Nd0.40Dy0.40)0.85Mg0.15Ni3.5Zn0.1にしたこと以外は実施例1の場合と同様にして、ニッケル水素二次電池を組立てた。
比較例3
水素吸蔵合金の組成を(Pr0.20Nd0.40Dy0.40)0.85Mg0.15Ni3.1Al0.4Zn0.1にしたこと以外は実施例1の場合と同様にして、ニッケル水素二次電池を組立てた。
水素吸蔵合金の組成を(Pr0.30Nd0.60Dy0.10)0.85Mg0.15Ni3.6Al0.2Zn0.1にしたこと以外は実施例1の場合と同様にして、ニッケル水素二次電池を組立てた。
比較例5
水素吸蔵合金の組成を(Pr0.30Nd0.60Dy0.10)0.85Mg0.15Ni2.8Al0.2Zn0.1にしたこと以外は実施例1の場合と同様にして、ニッケル水素二次電池を組立てた。
水素吸蔵合金の組成を(Pr0.20Nd0.40Dy0.40)0.70Mg0.30Ni3.3Al0.2Zn0.1にしたこと以外は実施例1の場合と同様にして、ニッケル水素二次電池を組立てた。
比較例7
水素吸蔵合金の組成を(Pr0.20Nd0.40Dy0.40)0.95Mg0.05Ni3.3Al0.2Zn0.1にしたこと以外は実施例1の場合と同様にして、ニッケル水素二次電池を組立てた。
2.電池評価
(1)作動電圧
実施例1〜8及び比較例1〜7の各電池について、0.1Cの電流で16時間充電してから、0.2Cの電流で放電させたときの中間作動電圧を測定した。これらの結果を比較例1の中間作動電圧との差(単位:mV)として表1に示す。
(2)サイクル寿命
実施例1〜8及び比較例1〜7の各電池について、1.0Cの電流で1時間充電してから1.0Cの電流で終止電圧0.8Vまで放電する電池容量測定を繰り返し、電池が放電できなくなるまでのサイクル数(サイクル寿命)を数えた。これらの結果を、比較例1の結果を100とした相対値にして表1に示す。
表1からは以下のことが明らかである。
(i)Dyを含有しない比較例1(b=0)に比べ、Dyを含有する実施例1(b=0.4)では、作動電圧が大きく向上している。また、実施例1ではサイクル寿命も向上しており、希土類-Mg-Ni系水素吸蔵合金において、Dyを含有させることは、高作動電圧化とサイクル寿命の向上を両立させる要素技術であることがわかる。
ただし、Dyの含有量を削減すると作動電圧が低下するため、サイクル寿命と作動電圧のバランスを考えると、添字bは、0.10≦b<0.15の範囲にあるのがより望ましい。
一方、実施例5及び比較例5から、B/A比を3.2より下げると作動電圧が急激に低下することがわかる。これよりB/A比、すなわちx+y+zは、3.2≦x+y+z≦3.8の範囲に設定される。好ましくは、x+y+zは、3.3≦x+y+z≦3.5の範囲に設定される。
(vii)実施例1〜8において、添字zは0.1であったが、添字zは、0≦z≦0.5の範囲に設定される。添字zを0.5以下に設定するのは、Niを別の元素で置換すると、合金容量が低下し、Alを別の元素で置換すると、耐食性が低下するためである。
(viii)実施例1〜8では、希土類-Mg-Ni系水素吸蔵合金がNdを含んでいたけれども、Ndの添字aを0よりも大に設定するのは、比較的入手しやすい希土類元素でありながら、平衡圧を上げる効果が高く、また、耐酸化性が高いためである。
最後に本発明の水素吸蔵合金及び水素吸蔵合金電極は、ニッケル水素二次電池以外の他の物品にも適用可能であるのは勿論である。
36 水素吸蔵合金粒子
Claims (5)
- 一般式:(NdaDybAc)1−wMgwNixAlyTz
(ただし、式中、Aは、La,Ce,Pr,Pm,Sm,Eu,Gd,Tb,Ho,Er,Tm,Yb,Lu,Sc,Zr,Hf,Ca及びYよりなる群から選ばれる少なくとも1種の元素を表し、Tは、V,Nb,Ta,Cr,Mo,Mn,Fe,Co,Ga,Zn,Sn,In,Cu,Si,P及びBよりなる群から選ばれる少なくとも1種の元素を表し、添字a,b,cはそれぞれ、a>0,b>0,c≧0,a+b+c=1で示される関係を満たし、添字w,x,y,zはそれぞれ、0.10≦w≦0.25,0.05≦y≦0.35,0≦z≦0.5,3.2≦x+y+z≦3.8で示される範囲にある。)にて表される組成を有する水素吸蔵合金。 - 前記添字bは0<b<0.15の範囲にあることを特徴とする請求項1に記載の水素吸蔵合金。
- 前記添字cは0.1以下であることを特徴とする請求項1又は2に記載の水素吸蔵合金。
- 請求項1乃至3の何れか1項に記載の水素吸蔵合金からなる粒子と、前記粒子を保持した導電性を有する芯体とを備えることを特徴とする水素吸蔵合金電極。
- 請求項4に記載の水素吸蔵合金電極を負極として具備したことを特徴とするニッケル水素二次電池。
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