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JP4833827B2 - 異方性冷却素子およびこれを備えたペルチェモジュール、発光ダイオード素子、半導体レーザ素子 - Google Patents

異方性冷却素子およびこれを備えたペルチェモジュール、発光ダイオード素子、半導体レーザ素子 Download PDF

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Description

本発明は、熱伝導率が面に垂直方向に比して面内方向で高い異方性熱伝導部材を用いた異方性冷却素子およびこれを備えたペルチェモジュール、発光ダイオード素子、半導体レーザ素子に関する。
従来、半導体素子、半導体レーザ素子、およびこれらのモジュール等(以下、発熱素子等という。)の発熱体の冷却は、Cu、Al等の熱伝導率の高い材料からなるヒートシンクを発熱素子等に取り付ける方法が広く用いられてきた。この方法では、発熱素子等にヒートシンクを接触させ、ヒートシンクを介して熱が放熱される。また、ヒートシンクは、発熱素子等内の熱分布の均一性を高くする機能も有し、発熱素子等内の局所的に突出して温度の高い部分を除去することができる。そして、高い放熱性能を必要とする場合は、ファンを用いて空冷する方法、特定の気体、液体等の冷却媒体を循環させて冷却する方法等がとられる。さらに、ヒートシンクを用いて放熱する方法、ファンを用いて空冷する方法、特定の気体・液体等の冷却媒体を循環させて冷却する方法を組み合わせる方法等がある。
また、ペルチェ素子を半導体素子に接触させ、省スペースと高い冷却性能とを両立させる冷却方法も用いられている。さらに、近年、携帯端末等では、内蔵する半導体素子からの熱を熱電対等の熱電素子で電力に変換して電源にフィードバックし、電力の消費をできるだけ低減しようとする技術も検討されている。かかる用途での熱電素子の利用の場合でも、熱電変換効率の観点から高熱側と冷熱側での熱分布の均一化が必要となる。
携帯電話機等の携帯端末には、機能の拡大、送信電力の増大等の要求が一層高まってきている。かかる要求に応えるためには、内蔵する半導体素子からの発熱量の増大の問題を解決しなければならない。極言すると、現状のままの放熱方法では、手で持つことさえ不可能になると言われている。そのため、内蔵する半導体素子の効率的な冷却技術がきわめて重要となってきている。また、機能の拡大に伴う部品点数の増大により、半導体素子に用いられる冷却手段は省スペース化が可能なものでなければならない。
ここで、等方的な熱伝導部材を用いたのでは、熱が輸送の途中で拡散してしまい、効果的に輸送できず、冷却、熱電変換等を効率的に行うことができないという問題があった。そのため、熱伝導部材として、例えばα−Si3N4リッチ相とβ−Si3N4リッチ相とを交互に積層して多層化した多層熱伝導部材を形成し、異層界面におけるフォノン散乱を利用して、層に垂直な方向のフォノン散乱を生じやすくし、この方向の熱絶縁性(以下、層垂直方向熱絶縁性という。)を向上させる方法なども検討されている(例えば、特許文献1参照)。しかし、この熱絶縁材料は、固溶体のある層と固溶体のない層とを積層したものであり、積層厚が100μm程度とフォノンの自由行程距離よりも大幅に大きい厚さであり、さらに本発明のように膜厚方向には熱絶縁化しているが、膜面内では高熱伝性を有していない。
特開平8−276537号公報
しかしながら、従来の多層熱伝導部材を用いた冷却素子および異方性熱電素子では、層に垂直方向の熱浸透率である層垂直方向熱浸透率を低く抑えて高い冷却効率および熱電変換効率を実現するのが困難であるという問題があった。これは、多層熱伝導部材を構成する各層の膜厚が100μm程度以上と、フォノンの平均自由行程よりも大幅に大きく、多層熱伝導部材が熱を面内に効率よく閉じ込めることができず、相当量の熱が熱輸送の際に拡散してしまうことによるものであった。
本発明は、このような問題を解決するためになされたもので、省スペースかつ冷却効率の向上が可能な異方性冷却素子およびこれを備えたペルチェモジュール、発光ダイオード素子、半導体レーザ素子を実現することを目的とする。
上記課題を解決するために、本発明の第1の態様に係る異方性冷却素子は、取り付けられる半導体素子または半導体モジュールよりも熱伝導率の高い材料からなる熱伝導層と対象とするフォノンの平均自由行程および波長に応じて層厚が決定される熱共振体層とが交互に積層された異方性熱伝導部材と、前記半導体素子または半導体モジュールから前記異方性熱伝導部材を介して伝達した熱を吸熱して冷却または放熱する1つ以上の冷却放熱手段と、を備えたことを特徴とする。
この態様によれば、熱伝導層と熱共振体層を交互に積層された異方性熱伝導部材により層に垂直方向の熱浸透率である層垂直方向熱浸透率が低く抑えられると共に、半導体素子または半導体モジュールからの熱が異方性熱伝導部材を介して冷却放熱手段に伝達されるので、省スペースかつ冷却効率および熱電変換効率の向上が可能な異方性冷却素子を実現できる。なお、ここにいう「対象とするフォノン」は、共振を起こす周波数のフォノン、つまり、共振条件を満たす波長のフォノンという意味で用いている。
本発明の他の態様に係る異方性冷却素子は、前記半導体素子または半導体モジュールと前記異方性熱伝導部材との間に接触層が設けられていることを特徴とする。この態様によれば、熱接触抵抗が低減され、半導体素子または半導体モジュールから異方性熱伝導部材への熱の伝達を効率化できる。
本発明の他の態様に係る異方性冷却素子は、前記異方熱性伝導部材と前記冷却放熱手段との間に接触層が設けられていることを特徴とする。この態様によれば、熱接触抵抗が低減され、異方性熱伝導部材から冷却放熱手段への熱の伝達を効率化でき、冷却効率が向上する。
本発明の他の態様に係る異方性冷却素子は、少なくとも1つ以上の異方性熱伝導部材が、前記半導体素子または半導体モジュールの1つの面上の一部または全部に接触するように設けられ、各異方性熱伝導部材が対応する接触層を介して冷却放熱手段に接続されていることを特徴とする。
本発明の他の態様に係る異方性冷却素子は、少なくとも1つ以上の異方性熱伝導部材が、前記半導体素子または半導体モジュールの対向する1対の面の各面上の一部または全部に接触するように設けられ、各異方性熱伝導部材が対応する接触層を介して冷却放熱手段に接続されていることを特徴とする。
本発明の他の態様に係る異方性冷却素子は、積層された半導体素子または半導体モジュールの各半導体素子または半導体モジュール間に1つ以上の異方性熱伝導部材が半導体素子または半導体モジュールに接触するように設けられ、前記各異方性熱伝導部材が対応する接触層を介して冷却放熱手段に接続されていることを特徴とする。
本発明の他の態様に係る異方性冷却素子は、前記異方性熱伝導部材が、端面または端面近傍の所定の領域にいずれか1つ以上の前記接触層を形成する接触領域を有することを特徴とする。
本発明の他の態様に係る異方性冷却素子は、前記異方性熱伝導部材のいずれか1つ以上の前記熱伝導層が、前記異方性熱伝導部材のいずれか1つ以上の前記接触領域内の一部または全部で露出していることを特徴とする。
本発明の他の態様に係る異方性冷却素子は、冷却放熱手段の異方性熱伝導部材との接触領域の形状が、対応する異方性熱伝導部材の接触領域内の熱伝導層が露出した部分と密着する形状となっていることを特徴とする。
本発明の他の態様に係る異方性冷却素子は、冷却放熱手段の異方性熱伝導部材との接触領域に形成された接触層がナノ粒子からなる材料を主要材料として含むナノ粒子含有材料を用いて形成されることを特徴とする。この態様によれば、接触層を、ナノ粒子が異方性熱伝導部材と各冷却放熱手段との間の隙間を密に埋めることができ、もって熱接触抵抗を低く抑えることができる。
本発明の他の態様に係る異方性冷却素子は、前記接触層のナノ粒子が、接触層のナノ粒子が、銀、銅若しくは金のいずれか、又は酸化銀若しくは酸化銅のいずれかからなることを特徴とする。この態様によれば、ナノ粒子として、銀、銅若しくは金のいずれか、又は酸化銀若しくは酸化銅のいずれかからなるものを用いることは、熱接触抵抗を更に低く抑えることができる。
本発明の他の態様に係る異方性冷却素子は、前記ナノ粒子含有材料がナノ粒子からなる材料以外に、バインダ樹脂および界面活性剤のうちの1つ以上を含むことを特徴とする。この態様によれば、ナノ粒子を異方性熱伝導部材または各冷却放熱手段に良好に固定できる。
本発明の他の態様に係る異方性冷却素子は、前記ナノ粒子が少なくとも酸化銀および酸化銅を含む酸化物のうちのいずれか1つ以上の物質からなる場合、さらに、炭化物、遷移金属酸化物、典型金属酸化物、又は、典型金属元素の合金の酸化物を還元用焼結助剤として含むことを特徴とする。この態様によれば、酸化物に対する還元反応が促進し、金属ナノ粒子が形成しやすくなる。
本発明の他の態様に係る異方性冷却素子は、前記ナノ粒子含有材料がハンダ粒子からなる材料又はハンダ粒子を含む材料であることを特徴とする。この態様によれば、異方性熱伝導部材と各冷却放熱手段の接着性を向上させ、バインダ樹脂および界面活性剤等を要しない。
本発明の他の態様に係る異方性冷却素子は、前記ナノ粒子の平均の直径が1nm以上200nm以下であることを特徴とする。
本発明の他の態様に係る異方性冷却素子は、前記ナノ粒子含有材料を用いて形成される接触層の厚さが200nm以下であることを特徴とする。
本発明の他の態様に係る異方性冷却素子は、前記ナノ粒子含有材料がレーザ光の照射又は高周波電磁波の印加によって焼成され、接触層を形成することを特徴とする。
本発明の他の態様に係る異方性冷却素子は、いずれか1つ以上の前記冷却放熱手段が、それぞれヒートシンク又はペルチェ素子を用いて構成されることを特徴とする。この態様によれば、冷却放熱手段としてペルチェ素子を用いることで、高機能の実現に伴って増大した熱を効果的に吸熱できる。
本発明の他の態様に係る異方性冷却素子は、いずれか1つ以上の前記冷却放熱手段をゼーベック素子で置き換えたことを特徴とする。この態様によれば、冷却放熱手段としてゼーベック素子を用いることは、変換して得られた電気エネルギーを内蔵する電池に帰還させることによってエネルギー消費を低減できる。
本発明の他の態様に係る異方性冷却素子を有するペルチェモジュールは、少なくともペルチェ素子が複数同一面内に放熱面または冷却面を揃えて配置された冷却手段と、前記冷却手段を前記放熱面と前記冷却面との両方から挟持する1対の受熱基板と、前記冷却手段と前記受熱基板との間に配置される、熱伝導率の高い材料からなる熱伝導層と対象とするフォノンの平均自由行程および波長に応じて層厚を調整する熱共振体層とが交互に積層された部材である異方性熱伝導部材とを備えた異方性冷却素子を有することを特徴とする。
本発明の他の態様に係る異方性冷却素子を有するペルチェモジュールは、ペルチェ素子が複数同一面内に放熱面または冷却面を揃えて配置された冷却手段と、前記ホルダー基板の対向する面上に配置される、前記冷却手段の前記放熱面と前記冷却面との間に設けられ、前記冷却手段を保持するホルダー基板と、熱伝導率の高い材料からなる熱伝導層と対象とするフォノンの平均自由行程および波長に応じて層厚を調整する熱共振体層とが交互に積層された異方性熱伝導部材とを備えた異方性冷却素子を有することを特徴とする。
本発明の第2の態様に係る発光ダイオード素子は、異方性熱伝導部材と冷却手段とを有する異方性冷却素子と、前記発光体としての発光ダイオードチップと、基板とを備え、前記基板上に前記異方性熱伝導部材が形成されており、前記異方性熱伝導部材の表面上に前記発光ダイオードチップが実装されていることを特徴とする。
この態様によれば、基板上に異方性熱伝導部材を形成し、この異方性熱伝導部材の表面上に発光ダイオードチップを実装することで発光ダイオード素子を作製できるので、図16に示す従来技術のような素子設計上、構造に制約がなくなる。これにより、構造が簡単で、汎用基板への高効率成膜が可能となり、製造コストを低減することができる。また、異方性熱伝導部材により発光ダイオードチップ全体の温度、特にそのピーク温度が下げられるので、発光ダイオードの長寿命化を図れる。
本発明の他の態様に係る発光ダイオード素子は、前記異方性熱伝導部材の側面と前記基板の側面のうち、少なくとも前記異方性熱伝導部材の側面に前記冷却放熱手段が設けられていることを特徴とする。この態様によれば、異方性熱伝導部材により層に垂直方向の熱浸透率である層垂直方向熱浸透率が低く抑えられると共に、発光ダイオードチップからの熱が異方性熱伝導部材を介して冷却放熱手段に伝達され、放熱されるので、省スペースかつ冷却効率および熱電変換効率の向上が可能な発光ダイオード素子を実現できる。
本発明の第3の態様に係る半導体レーザ素子は、異方性熱伝導部材と冷却手段とを有する異方性冷却素子と、前記発光体としての発光層とおよび電流狭窄層を有する半導体レーザ素子と、を備え、前記異方性冷却素子の異方性熱伝導部材が前記電流狭窄層の内部、上部および下部のいずれかに形成されていることを特徴とする。
この態様によれば、電流狭窄層の内部、上部および下部のいずれかに形成された異方性熱伝導部材により半導体レーザ素子の発光層近傍の温度分布が平坦化されて、発光層近傍のピーク温度が下げられる。これにより、発光層近傍の低温化、特に発光層近傍のピーク温度の低温化を図ることができるので、半導体レーザ素子の長寿命化を図ることができる。
本発明の他の態様に係る半導体レーザ素子は、前記半導体レーザ素子の側面に前記冷却放熱手段が設けられていることを特徴とする。この態様によれば、異方性熱伝導部材により層に垂直方向の熱浸透率である層垂直方向熱浸透率が低く抑えられると共に、半導体レーザ素子からの熱が異方性熱伝導部材を介して冷却放熱手段に伝達されるので、省スペースかつ冷却効率および熱電変換効率の向上が可能な半導体レーザ素子を実現できる。
本発明によれば、層に垂直方向の熱浸透率である層垂直方向熱浸透率を低く抑えるようにした積層構造の異方性熱伝導部材を用いた半導体素子または半導体モジュール、発光ダイオード素子、半導体レーザ素子からの熱を冷却放熱手段に移送するようにしたため、省スペースかつ冷却効率および熱電変換効率の向上が可能な異方性冷却素子を実現できる。
以下、本発明の各実施形態について、図面を用いて詳細に説明する。
(第1実施態様)
図1は、本発明の第1実施態様に係る異方性冷却素子の断面構造を示す模式図である。図1において、異方性冷却素子100は、発熱体としての半導体素子または半導体モジュール10に取り付けられる異方性熱伝導部材110と、異方性熱伝導部材110を介して伝達した熱を吸熱して冷却または放熱する1つ以上の冷却放熱手段120、120と、異方性熱伝導部材110と各冷却放熱手段120、120とを熱的に接触させる、冷却放熱手段120、120毎の接触層とを備えるように構成される。
図2は、本発明の第1実施態様に係る異方性冷却素子100の異方性熱伝導部材の断面構造の一例を模式的に示す図である。図2において、異方性熱伝導部材110は、少なくとも面内で半導体素子または半導体モジュール10よりも熱伝導率の高い材料からなる複数の熱伝導層111〜111nと、対象とするフォノンの平均自由行程および波長に応じて層厚が決定される熱共振体層112〜112(n+1)とが交互に積層されて構成される。ここで、熱伝導層111〜111nの層数、各熱伝導層111〜111nの膜厚は、輸送する熱量に応じて決定される。
各熱共振体層112〜112(n+1)は、フォノンの平均自由行程が長い材料によって構成され、層厚が対象とするフォノンの平均自由行程よりも短く、かつ、以下の条件を満たすように厚さになっている。
mλ/2.2<t<mλ/1.8 (mは整数)
ここで、mは自然数であり、λは対象とするフォノンの波長、つまり共振条件を満たすフォノンの波長である。
熱伝導層111〜111は、例えば、Au、Ag、Cu等の熱伝導率の高い材料を用いて形成され、熱伝導層112〜112(n+1)は、Si等の平均自由行程を長くできる材料を用いて形成される。熱共振体層112〜112(n+1)の厚さは、Siを材料に用いる場合、例えば、数nm〜数十nmとし、動作温度でのフォノンの平均自由行程よりも短くする。
熱伝導層111〜111および熱共振体層112〜112(n+1)の成膜方法として、例えば、CVD法、MBE法、イオンクラスタビーム法等を用いことができる。これらの成膜方法を用いて熱伝導層111〜111および熱共振体層112〜112(n+1)を単結晶もしくは膜厚方向に結晶が連続し膜厚方向には結晶粒界が存在しない結晶膜によって構成することは、層内の結晶粒界等でのフォノンの散乱を除去または低減できるため、好ましい。
また、結晶膜によって構成される熱共振体層112〜112(n+1)は、対象とするフォノンの平均自由行程が熱共振体層112〜112(n+1)の膜厚以上となる大きさおよび数の結晶粒界を有するのでもよい。このような結晶粒界を有する結晶膜で熱共振体層112〜112(n+1)を構成するによって、成膜方法および条件を緩和することができる。ただし、熱伝導層111〜111および熱共振体層112〜112(n+1)の成膜方法は、上記の方法に限定されるものではなく、その他の結晶膜の成膜方法を用いるのでも、連続的な膜を形成するその他の適切な成膜方法を用いるのでもよい。
Agからなり厚さ6nmの熱伝導層111〜111とSiからなり厚さ6nmの熱共振体層112〜112(n+1)とを交互に50層ずつSi基板上に積層して得られた異方性熱伝導部材110と、同様の形状の単層のSiシートとを対象に、熱浸透率について比較した。サーモリフレクタンス法を用いて測定した結果、Si基板上に形成された異方性熱伝導部材110およびSiシートに対して、熱浸透率は、それぞれ、1100、35000Js−0.5−2−1となった。すなわち、異方性熱伝導部材110の熱浸透率がSiシートの熱浸透率の1/20以下の値となった。
このように、異方性熱伝導部材110を用いることによって層に垂直方向への熱の拡散を抑えることが可能となり、ヒートシンク等への熱伝達を効率的にすることができるため、冷却効率が5倍以上も飛躍的に改善できる。
以下、本発明の第1実施態様に係る異方性冷却素子100の作用について、図面を参照して説明する。まず、半導体素子または半導体モジュール10が発生した熱は、異方性熱伝導部材110に伝わっていき、異方性熱伝導部材110内を温度勾配に応じて流れる。熱は、異方性熱伝導部材110内を温度の低い冷却放熱手段120、120側に伝達し、冷却放熱手段120、120で外部に放熱される。ここで、異方性熱伝導部材110は、熱伝導率の異方性が高いため、熱は、外部に拡散せず異方性熱伝導部材110内の2次元的空間に閉じ込められたまま冷却放熱手段120、120側に伝達する。その結果、半導体素子または半導体モジュール10を効率良く冷却できると共に、小型化できる。さらに、半導体素子または半導体モジュール10内の温度分布の偏りを減少させることが可能となる。
携帯機器用の半導体素子、パワー素子向けの半導体素子、これらのモジュール等で用いられるパッケージでは、半導体チップの劣化を防ぐためにラミネート加工が施されており、パッケージ内の半導体素子から熱を逃がすためにヒートシンクを取り付けても有効に熱を逃がすことが難しい。そのため、以上説明したように本発明の第1実施形態では、半導体チップ等の半導体素子または半導体モジュール10に直に異方性熱伝導部材110を接触させ、さらに異方性熱伝導部材110の端部にヒートシンク等の冷却放熱手段120、120を設けて放熱する構成とし、効果的に放熱できるようにした。
(第2実施形態)
図3は、本発明の第2実施形態に係る異方性冷却素子100の異方性熱伝導部材110と半導体素子または半導体モジュール10との接続を説明するための模式的な断面図である。異方性熱伝導部材110には、中央部等に半導体素子または半導体モジュール10をマウントする所定の領域(以下、マウント領域と言う。)
が設けられ、異方性熱伝導部材110は、マウント領域で半導体素子または半導体モジュール10に接触層131を介して接触するようになっている。ここで、異方性熱伝導部材110のマウント領域で、図3に示すように、いずれかの熱伝導層111(x:1〜n)が露出するように構成される。本例では、熱伝導層111〜111のうち熱伝導層111と熱伝導層111が、半導体素子または半導体モジュール10の外面に露出している。
このようにマウント領域を構成することは、熱接触抵抗を低減し、半導体素子または半導体モジュール10から異方性熱伝導部材110への熱の伝達を効率化できるため、好ましい。
(第3実施形態)
図4に示す本発明の第3実施形態に係る異方性冷却素子100では、異方性熱伝導部材110のマウント領域で、図3に示す上記第2実施形態の場合よりも多くの熱伝導層111(x:1〜n)が露出するように構成される。このようにマウント領域を構成することは、熱接触抵抗をさらに低減し、半導体素子または半導体モジュール10から異方性熱伝導部材110への熱の伝達をより一層効率化できるため、好ましい。
なお、異方性熱伝導部材110が熱を輸送する主要な熱伝導層111(p:1〜n)を有する場合、上記の「x」として、この「p」または「p」の近傍とすることは、さらに熱接触抵抗の低減等の観点から好ましい。
(第4実施形態)
図5に示す本発明の第4実施形態に係る異方性冷却素子100では、異方性熱伝導部材110は、端面又は端面近傍の所定の領域に、各冷却放熱手段120、120との良好な熱接触をとるための階段状の接触領域を有する。異方性熱伝導部材110は、接触領域の一部または全部でマウント領域と同様に、いずれか1つ以上の熱伝導層111〜111が露出するように構成される。図5で符号「141」は、異方性熱伝導部材110と各冷却放熱手段120、120との間に設けられた接触層である。
接触層141は、図5に示すように、冷却放熱手段120、120毎に設けられ、異方性熱伝導部材110と各冷却放熱手段120、120とを熱的に接触させるようになっている。接触層141を、ナノ粒子含有材料を用いて形成することは、ナノ粒子が異方性熱伝導部材110と各冷却放熱手段120、120との間の隙間を密に埋めることができ、もって熱接触抵抗を低く抑えることができるため好ましい。
ナノ粒子として、銀、銅若しくは金のいずれか、又は酸化銀若しくは酸化銅の物質からなるものを用いるのでもよい。このナノ粒子として、Au、Ag、Cu等の熱伝導率の高い物質からなるものを用いることは、熱接触抵抗を更に低く抑えることができるため好ましい。また、ナノ粒子含有材料がナノ粒子からなる材料以外にバインダ樹脂および界面活性剤のうちの1つ以上を含むのは、ナノ粒子を異方性熱伝導部材110または各冷却放熱手段120、120に良好に固定できるため好ましい。バインダ樹脂および界面活性剤のうちの1つ以上を含むナノ粒子含有材料として、例えば、Au、Ag、Cu等の熱伝導率の高い金属のナノ粒子を含む金属ナノペーストを用いるのでもよい。
なお、ナノ粒子含有材料をハンダ粒子からなる材料又はハンダ粒子を含む材料とすることは、異方性熱伝導部材110と各冷却放熱手段120、120の接着性を向上させ、バインダ樹脂および界面活性剤等を要しないこと等の観点から好ましい。ここで、ナノ粒子が酸化銀、酸化銅等の酸化物のうちのいずれか1つ以上の物質からなる場合、ナノ粒子含有材料は、さらに、炭化物、遷移金属酸化物、典型金属酸化物、又は、典型金属元素の合金の酸化物を還元用焼結助剤として含むのでもよい。このようにすることによって、酸化物に対する還元反応が促進し、金属ナノ粒子が形成しやすくなるからである。
ここで、ナノ粒子として、平均の直径が1nmから200nm以下のものを用いることができる。接触層の形成は、ナノ粒子含有材料を接触領域内に塗布した後に、レーザ光を照射すること、例えばMHz台以上の高周波電磁波を印加すること等によってナノ粒子含有材料を加熱し、ナノ粒子含有材料を焼成する方法等を用いて行われる。ナノ粒子含有材料を用いて形成される接触層の厚さとして、ナノ粒子の径の上限とほぼ同じ200nm以下とするのが良いが、熱抵抗低減の観点からは、100nm以下が好ましく、さらには数十nm以下等のものが好ましい。また、ナノ粒子のサイズが小さくなると、ナノ粒子自体の融点が低下する効果もあり、特にこの点では、ナノ粒子のサイズは100nm以下が好ましい。
マウント領域と同様に、異方性熱伝導部材110が熱を輸送する主要な熱伝導層111(p:1〜n)を有する場合、上記の「x」として、この「p」または「p」の近傍とすることは、さらに熱接触抵抗の低減等の観点から好ましい。
なお、熱伝導層111〜111が露出した異方性熱伝導部材110の接触領域の形状は、階段状に限らず、異方性熱伝導部材110の厚さが接触領域において異方性熱伝導部材110の中央側から端面側に向けて単調に減少するものであっても良い。
具体的には、異方性熱伝導部材110の厚さが、冷却放熱手段1201,1202側の端面に向けて徐々にまたは単調に増加する、刃状、階段状、又はこれらを組み合わせた形状等が好ましい。ただし、本発明は異方性熱伝導部材110の厚さが接触領域において上記のように減少する構成には限定されず、その他の構成でもよい。また、上記のように異方性熱伝導部材110が熱を輸送する主要な熱伝導層111(p:1〜n)を有する場合、接触領域の断面形状を、この「p」または「p」の近傍の熱伝導層との接触面積が高なるようにすることは、熱接触抵抗を低減し、冷却、放熱等を効率的に行うという観点から好ましい。
(第5実施形態)
図6に示す本発明の第5実施形態に係る異方性冷却素子100では、異方性熱伝導部材110の端面又は端面近傍の所定の領域に、冷却放熱手段120、120と図5に示す第4実施形態よりも大きな面積で熱接触をとるための接触領域が形成されている。図6で符号「142」は、異方性熱伝導部材110と各冷却放熱手段120、120との間に設けられた接触層である。
(第6実施形態)
図7は本発明の第6実施形態に係る異方性冷却素子500を示している。
上記冷却放熱手段120、120は、例えば、異方性熱伝導部材110を介して伝達した熱を放熱するヒートシンク、伝達した熱を吸熱して冷却するペルチェ素子等によって構成される。冷却放熱手段をペルチェ素子とする構成としては、上記の構成における冷却放熱手段120、120をペルチェ素子で置き換えたものに加えて、図7に示す異方性冷却素子500のように、ペルチェ素子520、520の放熱面Hと対向する冷却面Cを異方性熱伝導部材510に接触するように取り付ける構成等がある。図7で符号「20」は半導体素子または半導体モジュールである。半導体素子または半導体モジュール20の上面に異方性熱伝導部材510が取り付けられている。また、冷却放熱手段の一部をゼーベック素子で置き換えた構成でもよい。この構成では、ゼーベック素子が異方性熱伝導部材110を介して伝達した熱を電気エネルギーに変換し、得られた電気エネルギーは内蔵する電池に帰還される。
冷却放熱手段としてペルチェ素子を用いることは、高機能の実現に伴って増大した熱を効果的に吸熱できるため好ましい。また、冷却放熱手段としてゼーベック素子を用いることは、変換して得られた電気エネルギーを内蔵する電池に帰還させることによってエネルギー消費を低減できるため好ましい。冷却放熱手段の異方性熱伝導部材との接触領域の形状は、対応する異方性熱伝導部材の接触領域の形状に応じて決定され、異方性熱伝導部材の接触領域内の熱伝導層が露出した部分と密着する形状となっている。
(第7実施形態)
図8は本発明の第7実施形態に係る異方性冷却素子601を示している。
冷却放熱手段621、621は、図8に示すように、異方性熱伝導部材611から離れた位置に配置され、例えばヒートリード631、631を介して異方性熱伝導部材611に接続される構成となっている。図8で符号「30」は半導体素子または半導体モジュールである。なお、冷却放熱手段621、621は、基板であってもよい。
(第8実施形態)
図9は本発明の第8実施形態に係る異方性冷却素子602を示している。
異方性熱伝導部材612は、半導体素子または半導体モジュール40の対向する1対の面の各面上の一部または全部に接触するように設けられ、各異方性熱伝導部材612が対応する接触層を介して冷却放熱手段622、622に接続されるのでもよい。
この構成においても、冷却放熱手段622、622は、図9に示すように、異方熱伝導部材612から離れた位置に配置され、例えばヒートリード632、632を介して異方性熱伝導部材612に接続される。また、図示しないヒートシンクが半導体素子または半導体モジュール40と基板との間に半導体素子または半導体モジュールと基板によって挟持されるように形成され、異方性熱伝導部材612と冷却放熱手段622、6221との接続はヒートリード632、632等によって行われるような構成である。
(第9実施形態)
図10は本発明の第8実施形態に係る異方性冷却素子700を示している。
図10に示すように、半導体素子または半導体モジュール50が積層され、各半導体素子または半導体モジュール50間に異方性熱伝導部材710が半導体素子または半導体モジュール50に接触するように又は半導体素子または半導体モジュール50を挟むように設けられるのでもよい。そして、図10に示す例では、各異方性熱伝導部材710がヒートリード720を介して冷却放熱手段としての基板730に接続されている。ここで、ヒートリード720が異方性熱伝導部材710の接触領域に設けられた接触層に取り付けられ、半導体素子または半導体モジュール50が同様にマウント領域に設けられた接触層に取り付けられるのは、熱接触抵抗を低減できるため好ましい。上記の構成のように、各半導体素子または半導体モジュール50間に異方性熱伝導部材710を設けることによって、内部の半導体素子または半導体モジュール50からの熱を効果的に放熱できるため、極めて好ましい。また、半導体素子または半導体モジュール50が半導体回路等からなる場合、必要に応じて貫通電極740を設け各半導体素子または半導体モジュール50間を接続するのでもよい。
(第10実施形態)
図11は、本発明の第10実施形態に係る異方性冷却素子801の断面構造を示すペルチェモジュールの模式図である。図11において、異方性冷却素子801は、ペルチェ素子が複数同一面内に放熱面または冷却面を揃えて配置された冷却手段811と、冷却手段811を放熱面と冷却面との両方から挟持する1対の受熱基板831、831と、冷却手段811と受熱基板831、831との間に配置される異方性熱伝導部材821、821とを備えた構成を有する。図12のような構成とすることにより、ペルチェ素子が複数同一面内に放熱面または冷却面を揃えて配置されたペルチェモジュールが得られる。
ここで、冷却手段811が有するペルチェ素子は、例えば、導電型の異なる不純物がドープされた2種類の半導体が銅等の金属で接続された構成を有する。ここで、上記の半導体として、Bi、Te、Sb、Se、Si、Ge、Gd、Fe、Pb、Cu、Ag等の化合物から成るものを用いることができる。
異方性熱伝導部材821、821は、本発明の第1実施態様で説明したものと同様の積層構造を有する。ここで、ペルチェ素子が設けられるマウント領域は、垂直方向の熱伝導性を考慮して受熱基板831、831側近くまで掘り込んだ例えば凹状の断面形状を有するのでもよい。
(第11実施形態)
図12は、本発明の第11実施形態に係る異方性冷却素子810の断面構造を示すペルチェモジュールの模式図である。
なお、上記第10実施形態では、受熱基板831、831が、冷却手段811を放熱面と冷却面との両方から挟持する構成について説明したが、本実施形態に係る異方性冷却素子802では、図12に示すように、受熱基板831、831に代えて冷却放熱手段812を保持するホルダー基板832を設け、異方性熱伝導部材822、822がホルダー基板832の対向する面上に配置される構成としている。ホルダー基板が図12に示す構成を採用する場合は、可撓性を有するペルチェモジュールが得られる。
(第12実施形態)
次に、本発明を具体化した第12実施形態に係る半導体素子を図13に基づいて説明する。
本実施形態に係る半導体素子は、図1、図2で説明した異方性冷却素子の異方性熱伝導部材を放熱に利用した半導体素子としてハイパワーLED(発光ダイオード)素子である。
半導体素子としてのハイパワーLED素子70は、異方性熱伝導部材としての異方性熱伝導膜71と、発熱体としてのLEDチップ72と、基板73とを備える。基板73は汎用基板である。この基板73上に異方性熱伝導膜71が形成されている。この異方性熱伝導膜71の表面上にLEDチップ72が実装されている。異方性熱伝導膜71は、上記第1実施形態で説明した異方性熱伝導部材110(図1、図2参照)と同様の構成を有する。
ハイパワーLED素子70の両側面には、冷却放熱手段74が接触層75をそれぞれ介して配置されており、異方性熱伝導膜71の露出した両端面が接触層75をそれぞれ介してペルチェ素子74と熱的に良好に接触するようになっている。冷却放熱手段74としては、例えばペルチェ素子が用いられる。
ここで、本実施形態に係る半導体素子70との比較例として、2つの従来技術を図16および図17に基づいて説明する
図16は、複合構造によりハイパワーLED素子の放熱をする従来のハイパワーLED素子を示している。このハイパワーLED素子は、金属製の基板である金属ベース76と、中央に開口部を有するように金属ベース76の表面に形成された樹脂層77と、樹脂層77の開口部で露出した金属ベース76の表面および樹脂層77の一部の表面上に、V字形状の断面を有するように形成されたAlNパッケージ78と、このAlNパッケージ78中央の平坦面上に実装されたLEDチップ79とを備えている。この従来技術では、素子設計上、構造に制約がある。
また、図17は、高熱発熱パッケージ構造によりハイパワーLED素子の放熱をする従来のハイパワーLED素子を示している。このハイパワーLED素子は、AlN製のAlN基板80と、AlN基板80中央の表面上に実装されたLEDチップ81と、LEDチップ81の周囲を囲むようにAlN基板80の表面上に形成されたAlNパッケージ82とを備えている。この従来技術では、基板自体がAlN製であり、部品コストが高くなる。
以上の構成を有する第12実施形態によれば、以下の作用効果を奏する。
板73上に異方性熱伝導膜71を形成し、この異方性熱伝導膜71の表面上にLEDチップ72を実装することでハイパワーLED素子70を作製できるので、図16に示す上記従来技術のような素子設計上、構造に制約がなくなる。これと共に、基板73は汎用基板で良いので、部品コストを低減できる。これにより、構造が簡単で、汎用基板への高効率成膜が可能となり、製造コストを低減することができる。
方性熱伝導膜71によりLEDチップ72全体の温度分布が平坦化されて、LEDチップ72のピーク温度が下げられるので、ハイパワーLED素子70の長寿命化を図ることができる。
方性熱伝導膜71の露出した両端面が接触層75をそれぞれ介してペルチェ素子74と熱的に良好に接触するようになっている。このため、異方性熱伝導膜71により層に垂直方向の熱浸透率である層垂直方向熱浸透率が低く抑えられると共に、LEDチップ72からの熱が異方性熱伝導膜71を介してペルチェ素子74に伝達され、放熱されるので、省スペースかつ冷却効率および熱電変換効率の向上が可能なハイパワーLED素子を実現できる。
(第13実施形態)
次に、本発明を具体化した第13実施形態に係る半導体レーザ素子を図14および図15に基づいて説明する。
本実施形態に係る半導体レーザ素子は、上記各実施形態で説明した異方性冷却素子の異方性熱伝導部材を放熱に利用した半導体レーザ素子である。図14はこの半導体レーザ素子の概略構成を示す斜視図で、図15はその詳細な構造を一部破断して示した斜視図である。なお、図14と図15は同じ構成の半導体素子を示しているが、図14は異方性熱伝導膜を電流狭窄層の内部に形成した例を示してあり、図15は異方性熱伝導膜を電流狭窄層の下部に形成した例を示してある。
半導体素子としての半導体レーザ素子90は、図14に示すように、多重量子井戸(MQW)層からなる活性層91と電流狭窄層92とを有し、異方性熱伝導部材としての異方性熱伝導膜93が電流狭窄層92の内部に形成されている。
また、半導体レーザ素子90は、図14および図15に示すように、基板103と、基板103の裏面側に形成された下部電極94と、基板103の表面側に順に形成されたn型下部クラッド層95、活性層91、p型上部クラッド層96、p型コンタクト層97および上部電極98と、を備える。電流狭窄層92は、n型下部クラッド層95に隣接するp型層92と、p型上部クラッド層96に隣接するn型層92とを有する。符号「99」はトンネル接合である。
本実施形態では、異方性熱伝導膜93は、電流狭窄層92の内部で、p型層92とn型層92との間に形成されている。この異方性熱伝導膜93は、以下の製造方法で形成する。
まず、電流狭窄のためのp型層92を形成後、異方性熱伝導膜93を形成し、その後、n型層92を形成する。
また、図14において、符号「150」は半導体レーザ素子90の光出射側端面に形成された反射防止膜(AR膜)或いは非反射膜であり、符号「15」はその光反射側端面に形成された高反射膜(HR膜)である。なお、図14において、高反射膜150の奥は本来見えないが、高反射膜150を透視的に示して半導体レーザ素子90の光出射側端面の断面構造が見えるようにしてある。そして、半導体レーザ素子90の両側面には、図13に示すハイパワーLED素子70と同様に、冷却放熱手段が接触層をそれぞれ介して配置されており、異方性熱伝導膜93の露出した両端面が接触層をそれぞれ介してペルチェ素子等の冷却放熱手段と熱的に良好に接触するようになっている。
このような構成を有する半導体レーザ素子90では、下部電極(陰極)94と上部電極(陽極)98間に電流を注入すると、上部電極98から注入された電流は、左右の電流狭窄層92により電流流路を制限されて横方向に流れた後、トンネル接合99を通過して流れ、正孔となって活性層91に至る。こうして活性層91に注入された正孔は、下部電極94から注入される電子と再結合されて発光する。この発光した光が光出射側端面の反射防止膜150と光反射側端面の高反射膜151間を往復することで増幅されてレーザ発振に至り、反射防止膜150を通過してレーザ光として外部へ出射される。
以上の構成を有する第12実施形態によれば、以下の作用効果を奏する。
流狭窄層92内部に形成された異方性熱伝導膜93により半導体レーザ素子90の発光層91近傍の温度分布が平坦化されて、発光層91近傍のピーク温度が下げられる。これにより、発光層91近傍の低温化、特に発光層91近傍のピーク温度の低温化を図ることができるので、半導体レーザ素子90の長寿命化を図ることができる。
導体レーザ素子90の両側面には、冷却放熱手段が接触層をそれぞれ介して配置され、異方性熱伝導膜93の露出した両端面が接触層をそれぞれ介してペルチェ素子等の冷却放熱手段と熱的に良好に接触するようになっている。これにより、異方性熱伝導膜93により層に垂直方向の熱浸透率である層垂直方向熱浸透率が低く抑えられると共に、半導体レーザ素子90からの熱が異方性熱伝導膜93を介して冷却放熱手段に伝達されるので、省スペースかつ冷却効率および熱電変換効率の向上が可能な半導体レーザ素子90を実現できる。
なお、この発明は以下のように変更して具体化することもできる。
記第2実施形態では、異方性熱伝導部材110は、マウント領域で半導体素子または半導体モジュール10に接触層131を介して接触するようしているが、異方性熱伝導部材110が半導体素子または半導体モジュール10に直に接触する構成にも本発明は適用可能である。
14に示す上記第13実施形態では、異方性熱伝導膜93を、電流狭窄層92の内部で、p型層92とn型層92との間に形成した例について説明したが、異方性熱伝導膜93を電流狭窄層92のp型層92の内部、或いは、n型層92の内部に形成しても良い。
た、異方性熱伝導膜93を図15に示すように電流狭窄層92の下部に形成してもよい。この異方性熱伝導膜93は、次の製造方法で形成する。メサストラップを形成後、周辺部分に異方性熱伝導膜93を形成し、その上層に電流狭窄のための電流狭窄層92を構成するp型層92と、n型層92を順次形成する。
た、異方性熱伝導膜93を電流狭窄層92の上部に形成してもよい。この異方性熱伝導膜93は、次の製造方法で形成する。電流狭窄のためのp型層92、n型層92を形成後、異方性熱伝導膜93を形成する。
のように、本発明は、異方性熱伝導膜93が活性層91の近傍に配置される構成、つまり、異方性冷却素子の異方性熱伝導部材としての異方性熱伝導膜93が電流狭窄層92の内部、上部および下部のいずれかに形成されている半導体レーザ素子に広く適用可能である。
本発明の異方性冷却素子は、熱伝導率の高い熱伝導層と熱共振層とを交互に積層した異方熱伝導部材を用いることで、冷却効率および熱電変換効率の向上並びに省スペース化が可能という効果を有し、かかる効果が有効なペルチェモジュール、発光ダイオード素子、半導体レーザ素子等の電子素子、電子機器、その他の冷却を行う異方性冷却素子等として有用である。
本発明の第1実施態様に係る異方性冷却素子の概略構成を示す断面図。 同異方性冷却素子の異方性熱伝導部材を示す拡大断面図。 本発明の第2実施態様に係る異方性冷却素子の主要部を示す断面図。 本発明の第3実施態様に係る異方性冷却素子の主要部を示す断面図。 本発明の第4実施態様に係る異方性冷却素子の主要部を示す断面図。 本発明の第5実施態様に係る異方性冷却素子の主要部を示す断面図。 本発明の第6実施態様に係る異方性冷却素子の主要部を示す断面図。 本発明の第7実施態様に係る異方性冷却素子の主要部を示す断面図。 本発明の第8実施態様に係る異方性冷却素子の主要部を示す断面図。 本発明の第9実施態様に係る異方性冷却素子の主要部を示す断面図。 本発明の第10実施態様に係る異方性冷却素子を有するペルチェモジュールの主要部を示す断面図。 本発明の第11実施態様に係る異方性冷却素子を有するペルチェモジュールの主要部を示す断面図。 本発明の第12実施態様に係るハイパワーLED素子の概略構成を示す断面図。 本発明の第13実施態様に係る半導体レーザ素子の概略構成を示す斜視図。 同半導体レーザ素子の詳細な構造を一部破断して示した斜視図。 ハイパワーLED素子の放熱をする従来のハイパワーLED素子の概略構成を示す断面図。 従来のハイパワーLED素子の概略構成を示す断面図。
符号の説明
10、20、30、40、50 半導体素子または半導体モジュール(発熱体)
70 ハイパワーLED素子(発光ダイオード素子)
71 異方性熱伝導膜
72 LEDチップ
73 基板
90 半導体レーザ素子
91 活性層
92 電流狭窄層
93 異方性熱伝導膜
100、500、601、602、700、801、802 異方性冷却素子
110、510、611、612、710、821、821、822、822
異方性熱伝導部材
111〜111(n+1) 熱伝導層
112〜112(n+1) 熱共振体層
120、120、621、621、622、622 冷却放熱手段
13、13 接触層
14、14 接触層
520、520、811、812 ペルチェ素子
631、6312、632、632、720 ヒートリード
730 基板
740 貫通電極
831、831 受熱基板
832 ホルダー基板

Claims (25)

  1. 取り付けられる半導体素子または半導体モジュールよりも熱伝導率の高い材料からなる熱伝導層と対象とするフォノンの平均自由行程および波長に応じて層厚が決定される熱共振体層とが交互に積層された異方性熱伝導部材と、
    前記半導体素子または半導体モジュールから前記異方性熱伝導部材を介して伝達した熱を吸熱して冷却または放熱する1つ以上の冷却放熱手段と、
    を備えたことを特徴とする異方性冷却素子。
  2. 前記半導体素子または半導体モジュールと前記異方性熱伝導部材との間に接触層が設けられていることを特徴とする請求項1に記載の異方性冷却子。
  3. 前記異方熱性伝導部材と前記冷却放熱手段との間に接触層が設けられていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の異方性冷却子。
  4. 少なくとも1つ以上の異方性熱伝導部材が、前記半導体素子または半導体モジュールの1つの面上の一部または全部に接触するように設けられ、各異方性熱伝導部材が対応する接触層を介して冷却放熱手段に接続されていることを特徴とする請求項1に記載の異方性冷却素子。
  5. 少なくとも1つ以上の異方性熱伝導部材が、前記半導体素子または半導体モジュールの対向する1対の面の各面上の一部または全部に接触するように設けられ、各異方性熱伝導部材が対応する接触層を介して冷却放熱手段に接続されていることを特徴とする請求項1に記載の異方性冷却素子。
  6. 積層された半導体素子または半導体モジュールの各半導体素子または半導体モジュール間に1つ以上の異方性熱伝導部材が半導体素子または半導体モジュールに接触するように設けられ、前記各異方性熱伝導部材が対応する接触層を介して冷却放熱手段に接続されていることを特徴とする請求項1に記載の異方性冷却素子。
  7. 前記異方性熱伝導部材が、端面または端面近傍の所定の領域にいずれか1つ以上の前記接触層を形成する接触領域を有することを特徴とする請求項1乃至請求項6のいずれか1項に記載の異方性冷却素子。
  8. 前記異方性熱伝導部材のいずれか1つ以上の前記熱伝導層が、前記異方性熱伝導部材のいずれか1つ以上の前記接触領域内の一部または全部で露出していることを特徴とする請求項1乃至請求項7のいずれか1項に記載の異方性冷却素子。
  9. 冷却放熱手段の異方性熱伝導部材との接触領域の形状が、対応する異方性熱伝導部材の接触領域内の熱伝導層が露出した部分と密着する形状となっていることを特徴とする請求項1乃至請求項6のいずれか1項に記載の異方性冷却素子。
  10. 冷却放熱手段の異方性熱伝導部材との接触領域に形成された接触層がナノ粒子からなる材料を主要材料として含むナノ粒子含有材料を用いて形成されることを特徴とする請求項1乃至請求項9のいずれか1項に記載の異方性冷却素子。
  11. 前記接触層のナノ粒子が、銀、銅若しくは金のいずれか、又は酸化銀若しくは酸化銅のいずれかからなることを特徴とする請求項10に記載の異方性冷却素子。
  12. 前記ナノ粒子含有材料がナノ粒子からなる材料以外に、バインダ樹脂および界面活性剤のうちの1つ以上を含むことを特徴とする請求項10又は請求項11に記載の異方性冷却素子。
  13. 前記ナノ粒子が少なくとも酸化銀および酸化銅を含む酸化物のうちのいずれか1つ以上の物質からなる場合、さらに、炭化物、遷移金属酸化物、典型金属酸化物、又は、典型金属元素の合金の酸化物を還元用焼結助剤として含むことを特徴とする請求項11に記載の異方性冷却素子。
  14. 前記ナノ粒子含有材料がハンダ粒子からなる材料又はハンダ粒子を含む材料であることを特徴とする請求項10に記載の異方性冷却素子。
  15. 前記ナノ粒子の平均の直径が1nm以上200nm以下であることを特徴とする請求項10に記載の異方性冷却素子。
  16. 前記ナノ粒子含有材料を用いて形成される接触層の厚さが200nm以下であることを特徴とする請求項8乃至請求項15のいずれか1項に記載の異方性冷却素子。
  17. 前記ナノ粒子含有材料がレーザ光の照射又は高周波電磁波の印加によって焼成され、接触層を形成することを特徴とする請求項8乃至請求項16のいずれか1項に記載の異方性冷却素子。
  18. いずれか1つ以上の前記冷却放熱手段が、それぞれヒートシンク又はペルチェ素子を用いて構成されることを特徴とする請求項1乃至請求項17のいずれか1項に記載の異方性冷却素子。
  19. いずれか1つ以上の前記冷却放熱手段をゼーベック素子で置き換えたことを特徴とする請求項1乃至請求項17のいずれか1項に記載の異方性冷却素子。
  20. ペルチェ素子が複数同一面内に放熱面または冷却面を揃えて配置された冷却手段と、前記冷却手段を前記放熱面と前記冷却面との両方から挟持する1対の受熱基板と、前記冷却手段と前記受熱基板との間に配置される、熱伝導率の高い材料からなる熱伝導層と対象とするフォノンの平均自由行程および波長に応じて層厚を調整する熱共振体層とが交互に積層された部材である異方性熱伝導部材とを備えた異方性冷却素子を有することを特徴とするペルチェモジュール
  21. ペルチェ素子が複数同一面内に放熱面または冷却面を揃えて配置された冷却手段と、前記冷却手段の前記放熱面と前記冷却面との間に設けられ、前記冷却手段を保持するホルダー基板と、前記ホルダー基板の対向する面上に配置される、熱伝導率の高い材料からなる熱伝導層と対象とするフォノンの平均自由行程および波長に応じて層厚を調整する熱共振体層とが交互に積層された異方性熱伝導部材とを備えた異方性冷却素子を有することを特徴とするペルチェモジュール
  22. 取り付けられる発熱体よりも熱伝導率の高い材料からなる熱伝導層と対象とするフォノンの平均自由行程および波長に応じて層厚が決定される熱共振体層とが交互に積層された異方性熱伝導部材と前記異方性熱伝導部材を介して伝達した熱を吸熱して冷却または放熱する1つ以上の冷却放熱手段とを有する異方性冷却素子と、
    前記発光体としての発光ダイオードチップと、基板とを備え、前記基板上に前記異方性熱伝導部材が形成されており、前記異方性熱伝導部材の表面上に前記発光ダイオードチップが実装されていることを特徴とする発光ダイオード素子。
  23. 前記異方性熱伝導部材の側面と前記基板の側面のうち、少なくとも前記異方性熱伝導部材の側面に前記冷却放熱手段が設けられていることを特徴とする請求項22に記載の発光ダイオードチップが実装されている発光ダイオード素子。
  24. 取り付けられる発熱体よりも熱伝導率の高い材料からなる熱伝導層と対象とするフォノンの平均自由行程および波長に応じて層厚が決定される熱共振体層とが交互に積層された異方性熱伝導部材と前記異方性熱伝導部材を介して伝達した熱を吸熱して冷却または放熱する1つ以上の冷却放熱手段とを有する異方性冷却素子と、前記発光体としての発光層とおよび電流狭窄層を有する半導体レーザ素子と、を備え、前記異方性冷却素子の異方性熱伝導部材が前記電流狭窄層の内部、上部および下部のいずれかに形成されていることを特徴とする半導体レーザ素子
  25. 前記半導体レーザ素子の側面に前記冷却放熱手段が設けられていることを特徴とする請求項24に記載の半導体レーザ素子
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