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JP4803571B2 - ポリウレタン発泡体とその製造方法 - Google Patents

ポリウレタン発泡体とその製造方法 Download PDF

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本発明は、ポリウレタン発泡体に関し、特には化粧用パフに好適なポリウレタン発泡体とその製造方法に関する。
従来、リキッドファンデーション用の化粧用パフは、リキッドファンデーション中に含まれる溶媒としての水分がパフ内に染み込まないように、独立気泡構造を主体とするゴムスポンジやシリコーンフォームからなるものが使用されている。
しかし、独立気泡構造を主体とする発泡体からなる化粧用パフは、誤って強く圧縮すると独立気泡が破裂してリキッドファンデーションに適さなくなるため、取り扱いに注意が必要である。一方、連続気泡構造を主体とする軟質ポリウレタン発泡体等からなる化粧用パフは、パフの表面と内部が連続気泡によって通じているため、リキッドファンデーション中の水分がパフ内に吸収され、肌へのリキッドファンデーション塗布量が安定しない問題がある。さらに、従来の軟質ポリウレタン発泡体は、発泡剤と触媒の他にシリコーン系界面活性剤からなる整泡剤等が添加剤として用いられているため、化粧用パフを軟質ポリウレタン発泡体で構成した場合に、軟質ポリウレタン発泡体中に含まれる添加剤がパフ表面から溶出して肌を汚染するおそれがある。しかも、従来においては、軟質ポリウレタン発泡体に整泡剤等の添加剤を用いないと、良好な発泡体が得られなくなるため、添加剤の使用による溶出を抑えることができなかった。
特開平8−24041号公報 特開平8−173238号公報
本発明は前記の点に鑑みなされたもので、連続気泡を有し、しかも表面からの水分の浸透を妨げる撥水性を有し、さらには肌に対する汚染性が少ない発泡体の提供を目的とする。
請求項1の発明は、プレポリマーとポリオールを触媒及び発泡剤の存在下反応させることにより得られる軟質スラブポリウレタン発泡体において、前記プレポリマーが、炭素数8以上のモノオールとイソシアネート化合物の反応により得られた末端イソシアネート基を有するプレポリマーからなり、前記炭素数8以上のモノオールが、n−オクタノール、デカノール、n−ステアリルアルコールの少なくとも一つであり、前記イソシアネート化合物がメチレンジフェニルジイソシアネートであり、前記プレポリマーはNCO%が10〜30%、粘度が2.1〜11.3(Pa・s、25℃)であることを特徴とするポリウレタン発泡体に係る。
請求項2の発明は、請求項1において、前記発泡体に整泡剤を含まないことを特徴とする。
請求項3の発明は、請求項1または2において、前記発泡体が化粧用パフに用いられるものであることを特徴とする。
請求項4の発明は、プレポリマーとポリオールを触媒及び発泡剤の存在下反応させることにより得られる軟質スラブポリウレタン発泡体の製造方法において、前記プレポリマーが、炭素数8以上のモノオールとイソシアネート化合物の反応により得られた末端イソシアネート基を有するプレポリマーからなり、前記炭素数8以上のモノオールが、n−オクタノール、デカノール、n−ステアリルアルコールの少なくとも一つであり、前記イソシアネート化合物がメチレンジフェニルジイソシアネートであり、前記プレポリマーはNCO%が10〜30%、粘度が2.1〜11.3(Pa・s、25℃)であり、前記発泡体が化粧用パフに用いられるものであり、前記発泡体をパフ形状に裁断することを特徴とするポリウレタン発泡体の製造方法に係る。
請求項5の発明は、請求項4において、前記プレポリマーとポリオールを触媒及び発泡剤の存在下で反応させる際に整泡剤を添加しないことを特徴とする。
本発明によれば、プレポリマーとポリオールを触媒及び発泡剤の存在下反応させることにより得られる軟質スラブポリウレタン発泡体において、前記プレポリマーが、炭素数8以上のモノオールとイソシアネート化合物の反応により得られた末端イソシアネート基を有するプレポリマーからなるため、連続気泡を有し、しかも表面からの水分の浸透を妨げる撥水性を有し、さらに、溶出物のない発泡体を得ることができ、化粧用パフとして好適な発泡体が得られる。本発明におけるポリウレタン発泡体の配合原料としては、ポリオール、末端イソシアネート基を有するプレポリマー、触媒、発泡剤を含み、さらには発泡体成形後も溶出しない添加剤であるならば、制限なく使用できる。このような添加剤としては、着色剤、香料、充填材、可塑剤等が挙げられる。また、本発明によれば、従来ではポリウレタン発泡体の成形に必須とされ、しかも発泡体から溶出するおそれがある整泡剤の添加を不要にすることができた。本発明におけるNCO%の定義は、JIS K1603−1「プラスチック−ポリウレタン原料芳香族イソシアネート試験方法−第1部:イソシアネート基含有率の求め方」、3.定義、3.3イソシアネート基含有率、「試料中に存在する特定イソシアネート量を質量分率で表したもの」である。また、NCO%の測定方法は、JIS K1603−1、B法による。B法は、TDI、MDI及びポリメチレンポリフェニルイソシアネートの精製又は粗製イソシアネート及びこれから誘導される変性イソシアネートに適用できる。本発明における粘度は、JISK7301「熱硬化性ウレタンエラストマー用トリレンジイソシアネート型プレポリマー試験方法、6.一般性状試験方法、6.2粘度」に準拠する。
本発明におけるポリウレタン発泡体は、プレポリマーとポリオールを触媒及び発泡剤の存在下で反応させることにより得られる軟質スラブポリウレタン発泡体からなる。
本発明におけるプレポリマーは、炭素数8以上のモノオールとイソシアネート化合物の反応により得られる末端イソシアネート基を有するプレポリマーからなる。モノオールとは、1分子中に水酸基を1個有するもので、脂肪族モノオール、脂環族モノオール、芳香族モノオール等を挙げることができる。特に脂肪族という構造が、水との親和性に乏しく疎水性であること及びその立体構造に障害がなく高い反応性を示すことから、脂肪族モノオールが好ましい。また、本発明におけるモノオールは炭素数8以上のものが用いられる。炭素数8未満では、得られるポリウレタン発泡体が十分な撥水性を示さなくなる。炭素数8以上の脂肪族モノオールとしては、n−オクタノール、ノナノール、イソアニルアルコール、3,5,5−トリメチル−1−ヘキサノール、デカノール、イソトリデカノール、n−ステアリルアルコール等を挙げることができる。また、前記モノオールは炭素数が過度に大きくなると高融点となる傾向があるため、炭素数8〜18のモノオールが好ましい。それらの中でもn−オクタノール、デカノール、n−ステアリルアルコールが特に好ましい。なお、炭素数8以上のモノマーは一種類に限られず、二種類以上組み合わせて用いてもよい。
また、本発明において使用されるイソシアネート化合物としては、イソシアネート基を2以上有する脂肪族系または芳香族系ポリイソシアネート、それらの混合物、およびそれらを変性して得られる変性ポリイソシアネートを使用することができる。脂肪族系ポリイソシアネートとしては、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ジシクロヘキサメタンジイソシアネート等を挙げることができ、芳香族ポリイソシアネートとしては、トルエンジイソシアネート(TDI)、メチレンジフェニルジイソシアネート(MDI)、ナフタレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ポリメリックポリイソシアネート(クルードMDI)等を挙げることができる。特には、メチレンジフェニルジイソシアネート(MDI)が好ましい。前記メチレンジフェニルジイソシアネート(MDI)には、その変性体の場合、及び変性体との混合物の場合が含まれる。前記メチレンジフェニルジイソシアネート(MDI)を用いる場合は、微細な気泡が均一に分散した発泡体が得られやすく、化粧用パフに好適なポリウレタン発泡体が得られる。
前記プレポリマーは、前記モノオールとメチレンジフェニルジイソシアネート(MDI)を混合撹拌して反応させることによって得られる。前記プレポリマーのNCO%は、10〜30%が好ましい。10%未満の場合には高粘度になり、30%を超えると高硬度になる。このようにプレポリマーを予め合成した後に発泡体を成形することで、撥水基である炭素数8以上のアルキル基が、確実にウレタン骨格内に取り込まれ、得られるポリウレタン発泡体に撥水性を付与することができる。また、プレポリマーとしたことで、予めモノオールの全量を確実にイソシアネート化合物と結合させ、その後にプレポリマーとイソシアネート化合物を混合させるため、例えばモノオールとポリオールを混合させて予めポリオール成分を調製した後に、ポリオール成分とイソシアネート化合物を混合させるワンショット法による場合と比べ、モノオールとポリオールとの相溶性についての配慮が不要となり、製造作業が容易になる。
前記プレポリマーとの反応に使用されるポリオールは、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオールの何れでもよい。本発明において使用可能なポリエーテルポリオール及びポリエステルポリオールは、ポリウレタン発泡体に用いられるものであれば、特に限定されるものではない。ポリエーテルポリオールとしては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ブチレングリコール、ネオペンチルグリコール、グリセリン、ペンタエリスリトール、トリメチロールプロパン、ソルビトール、シュークロース等の多価アルコールにエチレンオキサイド、プロピレンオキサイド等のアルキレンオキサイドを付加したポリエーテルポリオール等を挙げることができる。
また、エステル系ポリオールとしては、マロン酸、コハク酸、アジピン酸等の脂肪族カルボン酸やフタル酸等の芳香族カルボン酸と、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール等の脂肪族グリコール等とから重縮合して得られたポリエステルポリオール等を挙げることができる。その他、ポリエーテルポリオール中でエチレン性不飽和化合物を重合させて得られるポリマーポリオールも使用することができる。
本発明において触媒は、軟質ポリウレタン発泡体用として公知のものが使用され、特に限定されない。使用可能な触媒として、例えば、トリエチルアミン、トリエチレンジアミン、テトラメチルグアニジン等のアミン触媒や、ジブチルチンジラウレート、スタナスオクトエート等の錫触媒や、フェニル水銀プロピオン酸塩あるいはオクテン酸鉛等の金属触媒(有機金属触媒とも称される。)が挙げられる。触媒の配合量は、触媒の種類によって適宜決定されるが、ポリオール100重量部に対し0.3〜2.0重量部程度が一般的である。
本発明において発泡剤は、水が使用される。水の配合量は、軟質スラブポリウレタン発泡体の密度により異なるが、通常、ポリオール100重量部に対して1〜3重量部程度とされる。
前記軟質スラブポリウレタン発泡体は、前記プレポリマー、ポリオール、触媒及び発泡剤に、発泡体成形後も溶出しない添加剤を適宜添加して混合撹拌し、大気圧下で反応させて発泡を行うことにより得られる。適宜添加される添加剤は、発泡体成形後も溶出しない添加剤であれば、制限を受けず使用することができる。そのような添加剤は、例えば着色剤、香料、充填材、可塑剤等を挙げることができ、求められる発泡体の色等に応じて添加される。また、イソシアネートインデックス(INDEX、イソシアネート基と反応しうる活性水素基に対するイソシアネート基の百分率)は、90〜130が好ましい。イソシアネートインデックスが90未満の場合には発泡体の弾性が失われ、低反発となる一方、130より大になると高硬度になる。
前記軟質スラブポリウレタン発泡体の密度は適宜とされるが、80〜300kg/mが好ましい。前記範囲よりも密度が小さくなると、配合調整しても量産に適する安定した発泡体の成形が困難であり、前記範囲よりも密度が大になると、単位体積に占める樹脂量が多くなると共に、気泡構造により得られるクッション性が低くなる。
前記軟質スラブポリウレタン発泡体は、所要サイズに切り出され、表面が除去されて所望のポリウレタン発泡体とされる。なお、ポリウレタン発泡体から化粧用パフを形成する場合、前記ポリウレタン発泡体はパフ形状に裁断される。
以下、実施例及び比較例を具体的に示すが、本発明はこれら実施例のみに限定されるものではない。
表1に示す配合にしたがい、プレポリマー1〜5を製造した。プレポリマーの製造は、メチレンジフェニルジイソシアネートに、イソブチルアルコールあるいはモノオール(n−オクタノールまたはデカノールあるいはn−ステアリルアルコール)を、表1の割合で添加し、常温で1時間、ミキサー(回転数5000rpm)で混合撹拌した後、24時間常温放置することにより行った。プレポリマー1〜5のNCO%及び25℃の粘度は表1に示す通りである。比較例に用いられるプレポリマー1の粘度(Pa・s,25℃)は1.3であり、一方、実施例に用いられるプレポリマー2〜5の粘度(Pa・s,25℃)についてはプレポリマー2が2.1、プレポリマー3が2.4、プレポリマー4が3.2、プレポリマー5が11.3である。なお、撹拌時粘度は、全ての添加原料を撹拌した直後の粘度であり、撹拌時温度は、全ての添加原料を撹拌した直後の粘度である。
Figure 0004803571
次に、前記プレポリマー2〜5に、表2の配合にしたがってポリオール1、ポリオール2、触媒、発泡剤(水)を添加してミキサーで混合し、得られた混合物の900g程度を200mm×200mm×200mmの箱に投入し、自然発泡させ、その後、70℃の恒温槽に5時間放置した後、常温で20時間放置して実施例1〜5の軟質スラブポリウレタン発泡体を作成した。
Figure 0004803571
また、比較例1〜5の軟質スラブ発泡体を表2の配合にしたがって作成した。なお、比較例3については、プレポリマー1を用いて実施例と同様に行った。また、比較例1,2,4,5については、まずポリオール1、ポリオール2、触媒、整泡剤、発泡剤(水)、撥水用添加剤を表2の配合にしたがって混合し、その後、表1のメチレンジフェニルジイソシアネート(MDI)を添加して混合し、得られた混合物の900g程度を200mm×200mm×200mmの箱に投入し、自然発泡させ、その後、70℃の恒温槽に5時間放置した後、常温で20時間放置して軟質スラブポリウレタン発泡体を得た。
前記実施例1〜5、比較例1〜5及び参考のために示す市販のパフ用ポリウレタン発泡体からなる比較例6について、密度、接触角、肌に対する汚染性、及び連続気泡性を測定した。密度は、JIS K 6400にしたがって行った。また、接触角は、前記軟質スラブ発泡体から表面を除く10×20×50mmに裁断したポリウレタン発泡体を用い、その発泡体の表面の水との接触角を協和界面科学製、CA−D型接触角測定器により測定した。なお、接触角の測定値が大きい程、撥水性が良好である。汚染性は、100mm角のガラスに50mm×50mm×厚み10mmのポリウレタン発泡体を、50%の厚み(5mm)に圧縮して70℃の恒温槽に24時間放置後、ガラスからポリウレタン発泡体を剥がしてガラス表面への付着物を確認し、付着物が目視で確認される場合には汚染し易いと判断して「×」、付着物が確認されない場合には汚染し難いと判断して「○」とした。連続気泡性については、ASTM D 2856により測定し、連続気泡の多いものを○、少ないものを×とした。各測定結果を表2に示す。
測定結果から明らかなように、実施例1〜5の軟質ポリウレタンスラブ発泡体からなるポリウレタン発泡体は、比較例よりも接触角が大きくて撥水性が高く、さらに、汚染性が低く、連続気泡性であることがわかる。このように、本発明品は、表面からの水分の浸透を抑えることができ、しかも他物体に密着させた際に汚染性が低く、さらに連続気泡を有するため、リキッドファンデーション用として好適である。

Claims (5)

  1. プレポリマーとポリオールを触媒及び発泡剤の存在下反応させることにより得られる軟質スラブポリウレタン発泡体において、
    前記プレポリマーが、炭素数8以上のモノオールとイソシアネート化合物の反応により得られた末端イソシアネート基を有するプレポリマーからなり、
    前記炭素数8以上のモノオールが、n−オクタノール、デカノール、n−ステアリルアルコールの少なくとも一つであり、
    前記イソシアネート化合物がメチレンジフェニルジイソシアネートであり、
    前記プレポリマーはNCO%が10〜30%、粘度が2.1〜11.3(Pa・s、25℃)であることを特徴とするポリウレタン発泡体。
  2. 前記発泡体に整泡剤を含まないことを特徴とする請求項1に記載のポリウレタン発泡体。
  3. 前記発泡体が化粧用パフに用いられるものであることを特徴とする請求項1または2に記載のポリウレタン発泡体。
  4. プレポリマーとポリオールを触媒及び発泡剤の存在下反応させることにより得られる軟質スラブポリウレタン発泡体の製造方法において、
    前記プレポリマーが、炭素数8以上のモノオールとイソシアネート化合物の反応により得られた末端イソシアネート基を有するプレポリマーからなり、
    前記炭素数8以上のモノオールが、n−オクタノール、デカノール、n−ステアリルアルコールの少なくとも一つであり、
    前記イソシアネート化合物がメチレンジフェニルジイソシアネートであり、
    前記プレポリマーはNCO%が10〜30%、粘度が2.1〜11.3(Pa・s、25℃)であり、
    前記発泡体が化粧用パフに用いられるものであり、前記発泡体をパフ形状に裁断することを特徴とするポリウレタン発泡体の製造方法。
  5. 前記プレポリマーとポリオールを触媒及び発泡剤の存在下で反応させる際に整泡剤を添加しないことを特徴とする請求項4に記載のポリウレタン発泡体の製造方法。
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