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JP4802461B2 - 光重合開始剤及びそれを用いた光硬化性材料 - Google Patents

光重合開始剤及びそれを用いた光硬化性材料 Download PDF

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JP4802461B2 JP2004213782A JP2004213782A JP4802461B2 JP 4802461 B2 JP4802461 B2 JP 4802461B2 JP 2004213782 A JP2004213782 A JP 2004213782A JP 2004213782 A JP2004213782 A JP 2004213782A JP 4802461 B2 JP4802461 B2 JP 4802461B2
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Description

本発明は、光重合開始剤及びそれを用いた光硬化性組成物に関する。さらに詳しくは、本発明は紫外線などの活性光線による硬化反応系組成物の重合開始剤として用いることができ、硬化反応させる際の臭気の発生が少なく作業環境の悪化を抑制し得ると共に、重合硬化後の硬化物からアウトガスを低減することができる光重合開始剤、及びこの光重合開始剤を含み、各種用途に好適な光硬化性組成物に関するものである。
多官能性の光重合性オリゴマーやモノマーを主成分とする紫外線などの光照射により開始される重合を利用した硬化反応は、従来の溶媒を含む乾燥方法(乾燥固化)や加熱による硬化反応と比較して、省資源、省エネルギー、環境保全、省スペース、生産性などの面から、優れた方法であり、現在、多くの分野において採用されている。この光硬化反応は、これまで、主として建材や家具のクリア塗装、紙の艶ニス、印刷・製版材料の作製、印刷インキ、接着剤、感光性ドライフィルムなどの分野で利用されてきた。近年、上記光硬化反応は、その硬化物の優れた物性などから、光学レンズの成形・加工、歯科材料の加工、プラスチックフィルムや光ディスク、金属材料などの表面加工、感圧接着剤(粘着剤)、電子部品の封止材、プリント回路基材のソルダーレジスト、半導体ウエハのダイシング用粘着テープなどにも利用分野が広がってきている。特に、電子部品の封止や接着の用途では、環境対策の面や作業性の面から無溶剤型の光硬化性材料が重要視されている。光硬化性材料は、一般にポリエステルアクリレート系、エポキシアクリレート系、ウレタンアクリレート系、ポリエーテルアクリレート系、ポリブタジエンアクリレート系、シリコーンアクリレート系などの光重合性オリゴマー、単官能アクリレート系や多官能アクリレート系などの光重合性モノマー(反応性希釈剤)を主材料とし、これにベンゾフェノン系、アセトフェノン系、ベンゾイン系、チオキサントン系などの光重合開始剤や、必要により用いられる光重合促進剤、重合禁止剤、接着性向上剤、レベリング剤、チクソ性付与剤、カップリング剤、可塑剤、消泡剤、充填剤、溶剤、着色剤などの各種添加剤を含むものである。ところで、上記光硬化性材料における光重合開始剤としては、従来、水素引抜き型や自己開裂型の低分子量化合物(光ラジカル発生剤)、例えばベンゾフェノン類、アセトフェノン類、ベンゾイン類、α−ヒドロキシケトン類、α−アミノケトン類、α−ジケトン類、α−ジケトンジアルキルアセタール類、アントラキノン類、チオキサントン類、ホスフィンオキシド類などが用いられてきた。しかしながら、これらの低分子量光重合開始剤においては、反応性には優れているものの、未反応の重合開始剤や該重合開始剤の分解残渣が、硬化時あるいは硬化物から揮発して臭気を発生させたり、マイグレーションを起こし、作業環境を悪化させると共に、電子部品の封止や接着の用途では、被着体やその周囲を汚染するなどの問題があった。
そこで、このような問題を解決するために、例えばポリマー化した光重合開始剤を用いることが提案されている(特許文献1、特許文献2及び特許文献3)。しかしながら、これらのポリマー化には複数の合成工程が必要であり、製造が容易ではない。また合成されたポリマーは広い分子量分布を持つ為、所望の分子量に調整することも困難である。更に、ポリマーが嵩高くなることでモノマーとの相溶性低下も来す可能性がある。また、特許文献4には、液晶パネル用シール剤が開示され、ここには光開始剤としてベンゾイル化合物とアクリロイル基を持つウレタン化合物らしき光開始剤が開示されるが、その製造方法については何ら説明がない。
特公平2−36582号公報 特開平10−279894号公報 特開2002−187906号公報 特開2001−133794号公報
本発明は、紫外線などの活性光線による重合ないし硬化に重合開始剤として用いることができ、重合硬化反応させる際の臭気の発生が少なく作業環境の悪化を抑制し得ると共に、重合硬化後の硬化物からのアウトガスを低減することができる光重合開始剤、及びこの光重合開始剤を含み、作業環境性及び光硬化性が良好で、かつ優れた硬化物の物性を持つ、各種用途に好適な光硬化性組成物を提供することを目的とする。
本発明の光重合開始剤は、(a)下記一般式(1)
Figure 0004802461
(式中、Rはヒドロキシ基又はヒドロキシアルコキシ基を表し、R及びR3 はそれぞれ独立にアルキル基を表す)で示される水酸基含有ベンゾイル化合物と(b)イソシアネート化合物とのウレタン化反応生成物からなることを特徴とする。
本発明の光硬化性組成物は、(X)上記の光重合開始剤及び(Y)光重合性オリゴマー及び/又は光重合性モノマーを必須成分とすることを特徴とする。
本発明の光重合開始剤は、活性光線による硬化反応系における重合開始剤として用いられ、硬化反応させる際の臭気の発生が少なく、作業環境の悪化を抑制し得ると共に重合開始剤の昇華による濃度低下を抑制して、未硬化物中の有効な重合開始剤濃度を保持することができる上、他成分との相溶性も良好であって、優れた物性を有する硬化物を与えることができる。この光重合開始剤を含む本発明の光硬化性材料は、作業環境性及び光硬化性が良好で、かつ優れた物性をもつ光硬化物が得られ、無溶媒型や水性エマルジョン型の接着剤や粘着剤を始め、各種用途に好適に用いられる。
本発明の光重合開始剤(X)は、(a)下記一般式(1)で示される水酸基含有ベンゾイル化合物とイソシアネート化合物のウレタン化反応により得られる。
Figure 0004802461
式中、Rはヒドロキシ基、ヒドロキシメトキシ基、ヒドロキシエトキシ基、ヒドロキシプロポキシ基などのヒドロキシアルコキシ基であり、R及びRはメチル基、エチル基、プロピル基などのアルキル基である。
アルキル基の炭素数は特に制限されないが、6以下が好ましい。Rはオルソ、メタ、パラのいずれの位置に結合していてもよい。
本発明の光重合触媒を製造するためのウレタン化反応に用いる上記一般式(1)で示される水酸基含有ベンゾイル化合物の具体例としては、1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−フェニル]−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロパン−1−オン、1−[4−(2−ヒドロキシメトキシ)−フェニル]−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロパン−1−オン、1−[4−(2−ヒドロキシプロポキシ)−フェニル]−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロパン−1−オン、1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−フェニル]−2−ヒドロキシ−2−エチル−1−プロパン−1−オンなどを挙げることができる。
次に、上記の水酸基含有ベンゾイル化合物(a)とのウレタン化反応に用いるイソシアネート化合物(b)としては、ウレタン化合物の原料として使用されている公知のモノイソシアネート化合物、ジイソシアネート化合物、トリ以上のポリイソシアネート化合物が挙げられるが、好ましくはジイソシアネート化合物、ポリイソシアネート化合物及びこれらの変性体が用いられる。
これらのイソシアネート化合物は、脂肪族(環状を包含する)イソシアネートと芳香族イソシアネートに分けられる。脂肪族イソシアネートとしては、例えば、メチルイソシアネート、クロロメチルイソシアネート、エチルイソシアネート、2−ブロモエチルイソシアネート、n−プロピルイソシアネート、n−ブチルイソシアネート、t−ブチルイソシアネート、ペンチルイソシアネート、ヘプチルイソシアネート、エチルイソシアネートアセテート、オクタデシルイソシアネート、アリルイソシアネート、シクロヘキシシルイソシアネート、トリクロロメチルイソシアネート、クロロスルフォニルイソシアネート、3−イソシアネートプロピルジメチルクロロシラン、オクチルイソシアネート、3−ヨードプロピルイソシアネート、ヘキシルイソシアネート、メチルイソシアネートクロロフォルメート、テトラヒドロ−2−ピラニルイソシアネート、ウンデシルイソシアネート、エチル−3−イソシアネートプロピオナート、エチル−2−イソシアネート−3−メチルブチラート、シクロプロピルイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、ジシクロヘキサメタン−4,4−ジイソシアネート、1,12−ジシクロシアネートドデカン、トリメチルヘキサメチレンジアミンジソシアネート、テトライソシアネートシラン、ブトキシシラントリイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、1,4−シクロヘキサンジイソシアネート、1,5−ジイソシアネート−2−メチルペンタン、1,4−ジイソシアネートブタン、1,3−ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン、メタンジイソシアネート、トリメチル−1,6−ジイソシアネートヘキサン、1,8−ジイソシアネートオクタン、ジメリルジイソシアネートなどを挙げることができる。
芳香族イソシアネートとしては、例えば、フェニルイソシアネート、2−フルオロフェニルイソシアネート、2,5−ジフルオロフェニルイソシアネート、2−クロロイソシアネート、2,3−ジクロロフェニルイソシアネート、2,5−ジクロロフェニルイソシアネート、2−メトキシフェニルイソシアネート、2,4−ジメトキシフェニルイソシアネート、2,5−ジメトキシフェニルイソシアネート、2−トリフルオロフェニルイソシアネート、2,5−ジメチルフェニルイソシアネート、3−ブロモイソシアネート、3−クロロフェニルイソシアネート、3,4−ジクロロフェニルイソシアネート、3−トリフルオロフェニルイソシアネート、4−ブロモフェニルイソシアネート、4−フルオロフェニルイソシアネート、4−メトキシフェニルイソシアネート、p−トリルイソシアネート、p−トルエンスルフォニルイソシアネート、ベンゾイルイソシアネート、1−フェニルエチルイソシアネート、1−ナフチルイソシアネート、1−(1−ナフチル)エチルイソシアネート、2−ニトロフェニルイソシアネート、ベンゼンスルフォニルイソシアネート、ベンジルイソシアネート、4−クロロベンジルスルフォニルイソシアネート、3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニルイソシアネート、2,4,6−トリブロモフェニルイソシアネート、2,5−ジフルオロフェニルイソシアネート、メチルー2−イソシアネートベンゾエート、2,3−ジメチルフェニルイソシアネート、2−エチル−5−エチルフェニルイソシアネート、5−クロロ−2,4−ジメトキシフェニルイソシアネート、3−(メチルチオ)フェニルイソシアネート、エチル−3−イソシアネートベンゾエート、3−アセチルフェニルイソシアネート、4−ヨードフェニルイソシアネート、4−メチル−3−ニトロフェニルイソシアネート、トリフェニルメチルイソシアネート、4−シアノフェニルイソシアネート、フェネチルイソシアネート、ジメチル−5−イソシアネートイソフタレート、フェニルイソシアネートフォルメート、2−ビフェニリルイソシアネート、3−イソプロペンチル−α、α―ジメチルベンジルイソシアネート、トリフェニルシリルイソシアネート、3,5−ジメチルイソキサゾール−4−イソシアネート、1−アダマンチルイソシアネート、PMPI、4−(6−メチル−2−ベンゾチアゾイル)フェニルイソシアネート、3−メチルベンジルイソシアネート、9H−フルオレン−9−イル−イソシアネート、トリレン−2,6−ジイソシアネート、トリレン−2,4−ジイソシアネート、1,3−フェニレンジイソシアネート、1,4−フェニレンジイソシアネート、4−クロロ−6−メチル−1,3−フェニレンジイソシアネート、3,3’−ジメトキシ− 4,4’−ビフェニレンジイソシアネート、3,3’−ビトリレン− 4,4’−ビフェニレンジイソシアネート、4,4’−ジイソシアネート −3,3’−ジメチルジフェニルメタン、α,α−ジメチル−α,4−フェネチルジイソシアネート、4−ブロモ−6−メチル−1,3−フェニレンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、トリレン−2,5−ジイソシアネート、4,4’−メチレンビス(2−クロロフェニルイソシアネート)、1,5−ナフタレンジイソシアネート、メチルイジントリ−p−フェニレントリイソシアネート、3,3’−ジクロロジフェニル− 4,4’−ジイソシアネート、2−フルオロ−1,3−ジイソシアネートベンゼン、1−クロロメチルー2,4―ジイソシアネートベンゼン、4,4’−メチレンビス(2,6−ジエチルフェニル)イソシアネート、2,2−ビス(4−イソシアネートフェニル)ヘキサフルオロプロパン、4,4’−オキシビス(フェニルイソシアネート)、2,4,6−トリメチル−1,3−フェニレンジイソシアネート、トリス(p−イソシアネートフェニル)アミン、α,4−トリレンジイソシアネート、m−キシリレンジイソシアネート、1,3−ビス(2−イソシアネート−2−プロピル)ベンゼンなどを挙げることができる。ウレタン化反応に用いる両成分はそれぞれ2種以上を併用してもよい。
ウレタン化反応はヒドロキシ基(OH基)とイソシアネート基(NCO基)との公知のウレタン化反応に従って行うことができる。一般式(1)で示される水酸基含有ベンゾイル化合物は、一般式中のRで示される置換基のOH基以外に、RとRが結合した炭素原子に結合したOH基も有するが、イソシアネート基とのウレタン化反応ではRのOH基が優先的に反応する。
ウレタン化反応は周知のように化学量論反応である。本発明の光重合触媒は、水酸基含有ベンゾイル化合物のRのOH基とイソシアネート基とが実質的に消費され且つ水酸基含有ベンゾイル化合物のRとRが結合する炭素に結合しているOH基が実質的に残存している状態の反応生成物であることが好ましい。
ウレタン化反応は、このように水酸基含有ベンゾイル化合物とイソシアネート化合物のイソシアネート基当量を調節して両者を混合し、ウレタン化反応で一般に用いられる有機酸、有機錫その他の周知の加水分解触媒の存在下に加熱することで容易に行うことができる。
具体的には、ベンゾイル化合物の置換基(R)に含まれる水酸基1モルに対して、ジイソシアネート化合物であれば0.5モルを反応させることで、ジイソシアネート化合物の2つNCO基にベンゾイル化合物のRのOH基が反応して分子内に2つベンゾイル基を有するウレタン化合物を合成することができる。同様に、モノイソシアネート化合物を使用する場合はベンゾイル化合物1モルに対し1モルのモノイソシアネート化合物を、トリイソシアネート化合物を使用する場合は、トリイソシアネート化合物1モルに対し3モルのベンゾイル化合物を反応されることによって、ウレタン化合物を合成することができる。これらのウレタン化合物が本発明の光重合触媒である。
なお、上記ウレタン化による光重合開始剤の生成は、IR(赤外線吸収スペクトル)によりイソシアネート基のピークが消失することで容易に確認できる。
上記のとおりウレタン化反応により合成された本発明の光重合開始剤は、一般に重合性のモノマーやオリゴマーに添加混合されて光重合性の組成物として使用されるが、光硬化性の良さや硬化物中への取り込まれ易さなどから1分子中にベンゾイル基を複数もつ化合物、即ちイソシアネート化合物としてジイソシアネート化合物又はポリイソシアネート化合物を用いて合成したウレタン化合物がより好ましい。
本発明の光硬化性組成物において用いられる(Y)光重合性オリゴマー及び/又は光重合性モノマーは、分子の末端又は側鎖にエチレン性の二重結合を有する化合物であり、特に分子末端又は側鎖に(メタ)アクリロイル基を有するラジカル重合性の化合物が好適である。
分子末端又は側鎖に(メタ)アクリロイル基を有するラジカル重合性オリゴマーの具体例としては、例えばポリエステルアクリレート系、エポキシアクリレート系、ウレタンアクリレート系、ポリエーテルアクリレート系、ポリブタジエンアクリレート系、シリコーンアクリレート系各種重合性オリゴマーが挙げられる。ここで、ポリエステルアクリレート系オリゴマーとしては、例えば多価カルボン酸と多価アルコールの縮合によって得られる両末端に水酸基を有するポリエステルオリゴマーの水酸基を(メタ)アクリル酸でエステル化することにより、あるいは、多価カルボン酸にアルキレンオキシドを付加して得られるオリゴマーの末端の水酸基を(メタ)アクリル酸でエステル化することにより得ることができる。エポキシアクリレート系オリゴマーは、例えば、比較的低分子量のビスフェノール型エポキシ樹脂やノボラック型エポキシ樹脂のオキシラン環に、(メタ)アクリル酸を反応しエステル化することにより得ることができる。また、このエポキシアクリレート系オリゴマーを部分的に二塩基性カルボン酸無水物で変性したカルボキシル変性型のエポキシアクリレートオリゴマーも用いることができる。ウレタンアクリレート系オリゴマーは、例えば、ポリエーテルポリオールやポリエステルポリオールとポリイソシアナートの反応によって得られるポリウレタンオリゴマーを、(メタ)アクリル酸でエステル化することにより得ることができ、ポリオールアクリレート系オリゴマーは、ポリエーテルポリオールの水酸基を(メタ)アクリル酸でエステル化することにより得ることができる。
これらのオリゴマーは、光硬化性材料の用途に応じて適宜選択される。例えば光硬化性、硬度、耐熱性、電気特性などが要求される分野では、主にエポキシアクリレート系が使用され、柔軟性、強靭性、耐摩耗性、耐薬品性などが要求される分野では、主にウレタンアクリレート系が使用される。また、低粘度、ハンドリング性、低価格などが要求される分野では、主にポリエステルアクリレート系やポリエーテルアクリレート系が使用され、アルカリ現像性、硬度、耐熱性などが要求されるソルダーレジストなどの分野では、主にカルボキシル変性型のエポキシアクリレート系が使用される。光重合性オリゴマーとしては、他にポリブタジエンオリゴマーの側鎖にアクリレート基をもつ疎水性の高いポリブタジエンアクリレート系オリゴマー、主鎖にポリシロキサン結合をもつシリコーンアクリレート系オリゴマー、小さな分子内に多くの反応性基をもつアミノプラスト樹脂を変性したアミノプラスト樹脂アクリレート系オリゴマーなどがあり、それぞれの特性が発揮できる分野で利用されている。この光重合性オリゴマーは、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。前記光重合性オリゴマーは、いずれも比較的粘度が高く、また、分子量が増加するに伴い、その粘度が上昇する。したがって、この光重合性オリゴマーを単独で光硬化させると、架橋反応が十分に進行しない場合や、逆に架橋密度が高くなり、硬化物が脆くなる場合がある。したがって、本発明においては、粘度調整、光架橋反応の促進、硬化物の架橋密度の調整などのために、単官能性や多官能性の光重合性モノマーを併用することができる。
分子末端又は側鎖に(メタ)アクリロイル基を有するラジカル重合性モノマーとしては、例えばシクロヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、イソボニル(メタ)アクリレートなどの単官能性アクリレート類、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールアジペートジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニルジ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ジシクロペンテニルジ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド変性リン酸ジ(メタ)アクリレート、アリル化シクロヘキシルジ(メタ)アクリレート、イソシアヌレートジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、プロピオン酸変性ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、プロピレンオキシド変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリス(アクリロキシエチル)イソシアヌレート、プロピオン酸変性ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレートなどが挙げられる。これらの光重合性モノマーは1種用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。なお、この光重合性モノマーは、光硬化性材料の用途によっては、前述の光重合性オリゴマーを用いずに、光重合性化合物として単独で用いる場合もある。
本発明の(X)光重合開始剤と(Y)光重合性オリゴマー及び/又は光重合性モノマーの配合割合は、前記(Y)成分の光重合性オリゴマーや光重合性モノマーの合計量100重量部に対し、通常0.01〜20重量部、好ましくは0.2〜10重量部の範囲で配合される。0.01重量部未満であると有効な光硬化性が得られず、一方20重量部を超えると組成物の保存安定性が低下したり光硬化させた硬化物の物性が低下する場合がある。
本発明の光硬化性組成物には、本発明の目的が損なわれない範囲で、所望により、各種添加剤、例えば光重合促進剤、重合禁止剤、架橋剤、接着性向上剤、レベリング剤、チクソ性付与剤、カップリング剤、可塑剤、消泡剤、充填剤、溶剤、着色剤などを適宜配合することができる。上記光重合促進剤としては、例えばp−ジメチルアミノ安息香酸エステルや第三級アミン類などが、重合禁止剤としては、例えばハイドロキノン、p−ベンゾキノン、ハイドロキノンモノメチルエーテル、ピロガロール、t−ブチルカテコールなどが、架橋剤としては、例えばポリイソシアネート化合物、エポキシ化合物、金属キレート化合物、アジリジン化合物、オキサゾリン化合物などが、充填剤としては、例えばシリカ、硫酸バリウム、タルク、クレー、炭酸カルシウム、水酸化アルミニウムなどが、着色剤としては、例えばフタロシアニンブルー、フタロシアニングリーン、酸化チタン、カーボンブラックなどの公知の着色用顔料などが用いられる。この光硬化性材料の光硬化に用いる活性光線としては、実用面から紫外線が好ましく、その照射光源としては、低圧水銀灯、中圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、キセノンランプ、メタルハライドランプなどが一般的である。本発明の光硬化性材料は、例えば接着剤、粘着剤、印刷インキ、建材や家具のクリア塗装、紙の艶ニス、感光性樹脂版、感光性ドライフィルム、光学レンズの成形・加工、歯科材料の加工、プラスチックフィルムや光ディスク、金属材料などの表面加工、電子部品の封止材、プリント回路基材のソルダーレジスト、半導体ウエーハのダイシング用粘着テープ、液晶パネル、エレクトロルミネッセンスパネル等のシール剤、レジスト膜、ビルドアップ工法用の層間絶縁材などの用途に用いることができる。
次に、本発明を実施例によりさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの例によってなんら限定されるものではない。
実施例:
(合成例1:光重合開始剤PI−1の合成)
3リットルの3つ口フラスコに、(a)構成成分として1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−フェニル]−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロパン−1−オン 225部(1mol)、イソシアネート化合物としてイソホロンジイソシアネートを110部(0.5mol)、希釈溶剤としてメチルエチルケトンを450部、重合禁止剤として2,6−ジ−tert−ブチル−p−クレゾールを1.5部を秤量し、攪拌しながら60℃まで昇温させ、1時間後に合成触媒としてジラウリン酸ジ−n−ブチル錫0.3部を添加して3時間攪拌をして反応をさせた後、減圧蒸留にて希釈溶剤を除去し、目的とする光重合開始剤PI−1を得た。
<生成化合物の評価> 得られた光重合開始剤について、赤外線吸収スペクトル(FT−IR)にて2240cm−1付近のイソシアネート基の吸収の消失を確認し、NCO%が0.1%以下であることを確認した。
(合成例2:光重合開始剤PI−2の合成)
5リットルの3つ口フラスコに、(a)構成成分として1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−フェニル]−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロパン−1−オン 225部(1mol)、イソシアネート化合物としてヘキサメチレンジイソシアネートを84部(0.5mol)、希釈溶剤としてメチルエチルケトンを450部、重合禁止剤として2,6−ジ−tert−ブチル−p−クレゾールを1.5部を秤量し、攪拌しながら60℃まで昇温させ、1時間後に合成触媒としてジラウリン酸ジ−n−ブチル錫0.3部を添加して3時間攪拌をして反応をさせた後、減圧蒸留にて希釈溶剤を除去し、目的とする光重合開始剤PI−2を得た。
<生成化合物の評価> 得られた光重合開始剤について、赤外線吸収スペクトル(FT−IR)にて2240cm−1付近のイソシアネート基の吸収の消失を確認し、NCO%が0.1%以下であることを確認した。
(合成例3:光重合開始剤PI−3の合成)
合成例1において、重合防止剤を2,6−ジ−tert−ブチル−p−クレゾールに代えて、4−メトキシフェノールヒドロキノンとして、実施例1と同様に光重合開始剤PI−3を得た。
(合成例4:光重合開始剤PI−4の合成)
合成例1において、希釈溶剤をメチルエチルケトンに代えて、トルエンとして、実施例1と同様に光重合開始剤PI−4を得た。
次に上記で合成した光重合開始剤を含む光硬化性組成物に係わる実施例について、詳細に説明する。
(実施例1)
光重合開始剤として合成例1で合成したウレタン化合物PI1,をそれぞれ5質量部、光重合性オリゴマーとしてビスフェノールA型エポキシアクリレートオリゴマー70質量部、光重合性モノマーとして2−ヒドロキシエチルメタアクリレート30質量部を添加し、攪拌しながら60℃まで昇温させ、2時間攪拌を続けて、本発明の光硬化性組成物を得た。
(実施例2)
光重合開始剤として合成例1で合成したウレタン化合物PI1を5重量部、光重合性オリゴマーとしてウレタンアクリレートオリゴマー(ダイセル・ユーシービー(株)社製 商品名Ebecryl230)を60質量部、光重合性モノマーとしてイソボロニルアクリレート40質量部を添加し、攪拌しながら60℃まで昇温させ、2時間攪拌を続けて、本発明の光硬化性材料を得た。
(実施例3及び4)
光重合開始剤として合成例2で合成したウレタン化合物PI2を用い、実施例1同様にして光硬化性組成物を得た(実施例3)、また、光重合開始剤として合成例2で合成したウレタン化合物PI2を用い、実施例2同様にして光硬化性組成物を得た(実施例4)。
(実施例5及び6)
光重合開始剤として合成例3で合成したウレタン化合物PI−3を用い、実施例1同様にして光硬化性組成物を得た(実施例5)、また、光重合開始剤として合成例4で合成したウレタン化合物PI4を用い、実施例1同様にして光硬化性組成物を得た(実施例6)。
(比較例1,2,3)
実施例1において、光重合開始剤としてPI1の代わりに1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン(チバ・スペシャリティ・ケミカルズ(株)社製 商品名イルガキュア184)、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン(チバ・スペシャリティ・ケミカルズ(株)社製 商品名ダロキュア1173)、及び1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−フェニル]−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロパン−1−オン(チバ・スペシャリティ・ケミカルズ(株)社製 商品名イルガキュア2959)をそれぞれ用い、実施例1と同様にして光硬化性材料をそれぞれ得た。
(評価方法)
実施例1〜6および比較例1〜3を用いて得られた光硬化性材料について以下に示す物性評価を行った。
<光硬化性試験>
各光硬化性組成物を30mmΦのポリキャップに1g秤量し、ランプ高さ15cmの高圧水銀灯80W/cmを用い、積算光量3000mJ/cm2の紫外線を照射したものについて評価した。評価基準 ○:表面にべたつきのない優れた硬化物が得られた。 △:表面がべたつく硬化物が得られた。 ×:表面のべたつきがひどい又は未硬化
<臭気性試験>
硬化の際の臭気発生の有無について調べた。 評価基準 ○:臭気なし ×:臭気あり
<接着力試験>
(試験片作成方法)
ガラス板に図1を示すように光硬化性材料を塗布し、他方のガラス板と貼り合わせ、ランプ高さ15cmの高圧水銀灯80W/cmを用い、積算光量3000mJ/cm2の紫外線を照射したものを試験片として評価に用いた。
(評価方法)
試験片の両端をチャックに固定し、引張速度50mm/minにて引張せん断荷重をかけ、試験片が破壊するまでの最大荷重を測定し、次式より引張せん断接着強さを算出した。
Figure 0004802461
本発明の光重合開始剤は、活性光線による硬化反応系における重合開始剤として用いることができ、硬化反応させる際の臭気の発生が少なく、作業環境の悪化を抑制し得ると共に重合開始剤の昇華による濃度低下を抑制し、硬化物中の有効な重合開始剤濃度を保持することができる上、他成分との相溶性も良好であって、優れた物性を有する硬化物を与えることができる。また、この高分子量光重合開始剤を含む本発明の光硬化性材料は、作業環境性及び光硬化性が良好で、かつ優れた物性をもつ光硬化物が得られ、無溶媒型や接着剤や粘着剤を始め、各種用途に好適に用いられる。したがって、特に硬化物からのアウトガスの発生を抑制できるため、液晶ディスプレイの封止用シール剤や有機ELディスプレイ用シール剤、HDD周辺に使用される接着剤などの接着シール剤として有用である。
実施例の接着力試験で用いたガラス板の貼り合わせ状態を示す説明図。

Claims (6)

  1. (X)成分として(a)下記一般式(1)
    Figure 0004802461
    (式中、Rはヒドロキシ基又はヒドロキシアルコキシ基を表し、R及びRはそれぞれ独立にアルキル基を表す)で示される水酸基含有ベンゾイル化合物と(b)分子中に重合性炭素炭素不飽和結合をもたないイソシアネート化合物とのウレタン化反応生成物からなる光重合開始剤及び(Y)成分として(メタ)アクリロイル基を有するラジカル重合性オリゴマーを必須成分とすることを特徴とする光硬化性接着用組成物
  2. (a)水酸基含有ベンゾイル化合物が、一般式(1)においてRがヒドロキシ基又は炭素数6以下のヒドロキシアルコキシ基であり、R及びRがそれぞれ独立に炭素数6以下のアルキル基である化合物である請求項1に記載の組成物。
  3. (Y)成分がラジカル重合性オリゴマーと共に(メタ)アクリロイル基を有するラジカル重合性モノマーも含有する請求項1又は2に記載の組成物
  4. (b)イソシアネート化合物がヘキサメチレンジイソシアネートである請求項1〜3のいずれか1項に記載の組成物。
  5. (Y)成分の(メタ)アクリロイル基を有するラジカル重合性オリゴマーが、ポリエステルアクリレート系、エポキシアクリレート系、ウレタンアクリレート系、ポリエーテルアクリレート系、ポリブタジエンアクリレート系又はシリコーンアクリレート系のラジカル重合性オリゴマー(メタ)アクリレートからなる群から選ばれる少なくとも1つである請求項1〜4のいずれか1項に記載の組成物。
  6. 液晶ディスプレイ又は有機ELディスプレイのシール剤として用いるための請求項1〜5のいずれか1項に記載の組成物。
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