本発明の実施形態について図面を参照しながら詳細に説明する。なお、図中同一または相当部分には同一符号を付してその説明は繰返さない。
[第1の実施形態]
図1は、本発明の第1の実施形態による面発光レーザ素子の概略断面図である。図1を参照して、本発明の第1の実施形態による面発光レーザ素子100は、基板101と、反射層102,103,107,108と、スペーサー層104,106と、活性層105と、選択酸化層109と、コンタクト層110と、SiO2層111、絶縁性樹脂112と、p側電極113と、n側電極114とを備える。なお、面発光レーザ素子100は、780nm帯の面発光レーザ素子である。
基板101は、面方位が(111)A面方向に傾斜角15度で傾斜した(100)n型ガリウム砒素(n−GaAs)からなる。反射層102は、n−Al0.95Ga0.05As/n−Al0.35Ga0.65Asの対を一周期とした場合、35.5周期の[n−Al0.95Ga0.05As/n−Al0.35Ga0.65As]からなり、基板101の一主面に形成される。そして、n−Al0.95Ga0.05AsおよびnAl0.35Ga0.65Asの各々の膜厚は、面発光レーザ素子100の発振波長をλとした場合、λ/4n(nは半導体層の屈折率)である。
反射層103は、AlGaInP系材料からなり、反射層102に接して形成される。スペーサー層104は、(Al0.1Ga0.9)0.5In0.5Pからなり、反射層103に接して形成される。活性層105は、Ga0.8In0.2P0.2As0.8/(Al0.1Ga0.9)0.5In0.5Pの対を一周期とした場合、3周期の[Ga0.8In0.2P0.2As0.8/(Al0.1Ga0.9)0.5In0.5P]からなり、スペーサー層104に接して形成される。
スペーサー層106は、(Al0.1Ga0.9)0.5In0.5Pからなり、活性層105に接して形成される。反射層107は、AlGaInP系材料からなり、スペーサー層106に接して形成される。
反射層108は、p−Al0.95Ga0.05As/p−Al0.35Ga0.65Asの対を一周期とした場合、29.5周期の[n−Al0.95Ga0.05As/n−Al0.35Ga0.65As]からなり、反射層107に接して形成される。そして、p−Al0.95Ga0.05Asおよびp−Al0.35Ga0.65Asの各々の膜厚は、λ/4n(nは半導体層の屈折率)である。
選択酸化層109は、p−AlAsからなり、反射層108中に設けられる。そして、選択酸化層109は、非酸化領域109aと酸化領域109bとからなり、20nmの膜厚を有する。
コンタクト層110は、p−GaAsからなり、反射層108上に形成される。SiO2層111は、反射層103の一部の一主面と、スペーサー層104、活性層105、スペーサー層106、反射層107,108、選択酸化層109およびコンタクト層110の端面とを覆うように形成される。
絶縁性樹脂112は、SiO2層111に接して形成される。p側電極113は、コンタクト層110の一部および絶縁性樹脂112上に形成される。n側電極114は、基版101の裏面に形成される。
そして、反射層102,103および反射層107,108の各々は、活性層105で発振した発振光をブラッグの多重反射により反射して活性層105に閉じ込める半導体分布ブラッグ反射器を構成する。
また、酸化領域109bは、非酸化領域109aよりも小さい屈折率を有する。そして、酸化領域109bは、p側電極113から注入された電流が活性層105へ流れる経路を非酸化領域109aに制限する電流狭窄部を構成するとともに、活性層105で発振した発振光を非酸化領域109aに閉じ込める。これによって、面発光レーザ素子100は、低閾値電流での発振が可能となる。
図2は、図1に示す4個の反射層102,103,107,108、2つのスペーサー層104,106および活性層105の断面図である。図2を参照して、活性層105は、井戸層105A,105C,105Eと、障壁層105B,105Dとからなる。井戸層105A,105C,105Eの各々は、Ga0.8In0.2P0.2As0.8からなり、障壁層105B,105Dの各々は、(Al0.1Ga0.9)0.5In0.5Pからなる。このように、活性層105は、3層の井戸層と、2層の障壁層とからなる。そして、井戸層105Aは、スペーサー層104に接し、井戸層105Eは、スペーサー層106に接している。
反射層102は、低屈折率層1021と、高屈折率層1022とを交互に積層した構造からなる。低屈折率層1021は、n−Al0.95Ga0.05Asからなり、高屈折率層1022は、n−Al0.35Ga0.65Asからなる。そして、最も下側に配置された低屈折率層1021は、基板101に接する。
反射層103は、低屈折率層1031と、高屈折率層1032とからなる。低屈折率層1031は、n−(Al0.7Ga0.3)0.5In0.5Pからなり、高屈折率層1032は、n−(Al0.1Ga0.9)0.5In0.5Pからなる。そして、高屈折率層1032(=n−(Al0.1Ga0.9)0.5In0.5P)は、反射層102の低屈折率層1021(=n−Al0.95Ga0.05As)に接して形成され、低屈折率層1031(=n−(Al0.7Ga0.3)0.5In0.5P)は、スペーサー層104(=(Al0.1Ga0.9)0.5In0.5P)に接して形成される。
反射層107は、低屈折率層1071と、高屈折率層1072とからなる。低屈折率層1071は、p−(Al0.7Ga0.3)0.5In0.5Pからなり、高屈折率層1072は、p−(Al0.1Ga0.9)0.5In0.5Pからなる。
反射層108は、低屈折率層1081と、高屈折率層1082とを交互に積層した構造からなる。低屈折率層1081は、p−Al0.95Ga0.05Asからなり、高屈折率層1082は、p−Al0.35Ga0.65Asからなる。そして、最も上側に配置された高屈折率層1082は、コンタクト層110に接する。
そして、反射層107中の高屈折率層1072(=p−(Al0.1Ga0.9)0.5In0.5P)は、反射層108の低屈折率層(=p−Al0.95Ga0.05As)に接して形成され、反射層107中の低屈折率層1071(=p−(Al0.7Ga0.3)0.5In0.5P)は、スペーサー層106(=Al0.1Ga0.9)0.5In0.5P)に接して形成される。
なお、面発光レーザ素子100においては、スペーサー層104,106および活性層105は、「共振器」を構成し、共振器の長さは、1波長(=λ)に設定される。
図3は、図2に示す2つの反射層102,108の一部、2つの反射層103,107、および共振器(=スペーサー層104,106および活性層105)のエネルギーバンド図である。
また、図4は、アルミニウム(Al)の組成比xとポテンシャルエネルギーとの関係を示す図である。図4において、縦軸は、ポテンシャルエネルギーを表し、横軸は、Al組成比xを表す。また、曲線k1は、AlxGa1−xAs(0≦x≦1)のポテンシャルエネルギーとAl組成比xとの関係を示し、曲線k2は、(AlxGa1−x)0.5In0.5P(0≦x≦1)のポテンシャルエネルギーとAl組成比xとの関係を示す。
図3を参照して、反射層103の低屈折率層1031は、n−(Al0.7Ga0.3)0.5In0.5Pからなり、反射層107の低屈折率層1071は、p−(Al0.7Ga0.3)0.5In0.5Pからなり、活性層105の井戸層105A,105C,105Eの各々は、Ga0.8In0.2P0.2As0.8からなり、障壁層105B,105Dの各々は、(Al0.1Ga0.9)0.5In0.5Pからなる。その結果、共振器の伝導帯のポテンシャルエネルギーは、約0.22eVであり、低屈折率層1031,1071の伝導帯のポテンシャルエネルギーは、約0.38eVであり、両者のエネルギー差は、0.16eVとなる。
また、n−(Al0.1Ga0.9)0.5In0.5Pからなる高屈折率層1032およびp−(Al0.1Ga0.9)0.5In0.5Pからなる高屈折率層1072の各々は、約−1.75eVである価電子帯のポテンシャルエネルギーを有し(図4の曲線k2参照)、n−Al0.95Ga0.05Asからなる低屈折率層1021およびpAl0.95Ga0.05Asからなる低屈折率層1081の各々は、約−1.84eVである価電子帯のポテンシャルエネルギーを有する(図4の曲線k1参照)ので、両者のエネルギー差は、−0.09eVである。
図5は、従来の面発光レーザ素子の共振器および反射層のエネルギーバンド図である。図5の(a)を参照して、従来の面発光レーザ素子200においては、共振器は、Ga0.5In0.5P(一般的には、AlGaInP系材料)からなり、低屈折率層a1は、Al0.95Ga0.05As(一般的には、AlGaAs系材料)からなる。その結果、面発光レーザ素子200において、共振器の伝導帯のポテンシャルエネルギーは、約0.22eVであり、低屈折率層a1のポテンシャルエネルギーは、約0.30eVであり、両者のエネルギー差は、0.08eVとなる。
また、図5の(b)を参照して、従来の面発光レーザ素子200Aにおいては、共振器は、Ga0.5In0.5P(一般的には、AlGaInP系材料)からなり、低屈折率層b1は、(Al0.7Ga0.3)0.5In0.5P(一般的には、AlGaInP系材料)からなり、高屈折率層b2は、Al0.35Ga0.65As(一般的には、AlGaAs系材料)からなる。その結果、低屈折率層b1の価電子帯のポテンシャルエネルギーは、約−1.94eVとなり、高屈折率層b2の価電子帯のポテンシャルエネルギーは、約−1.57eVとなり、両者のエネルギー差は、−0.37eVとなる。
したがって、この発明による面発光レーザ素子100は、共振器と反射層103,107との界面における伝導帯のエネルギー差を従来の面発光レーザ素子200よりも大きくできる。また、低屈折率層1031と高屈折率層1032とのエネルギー差を従来の面発光レーザ素子200Aよりも小さくできる。その結果、面発光レーザ素子100においては、従来の面発光レーザ素子よりもキャリアを活性層105に閉じ込めることができるとともに、反射層103,107の抵抗を大幅に低くでき、高出力を得ることができる。
また、反射層103の高屈折率層1032は、n−(Al0.1Ga0.9)0.5In0.5Pからなり、反射層102の低屈折率層1021は、n−Al0.95Ga0.05Asからなるので、反射層103の高屈折率層1032と反射層102の低屈折率層1021との界面にP系材料/As系材料の接合界面1023が形成される。
さらに、反射層107の高屈折率層1072は、p−(Al0.1Ga0.9)0.5In0.5Pからなり、反射層108の低屈折率層1081は、p−Al0.95Ga0.05Asからなるので、反射層107の高屈折率層1072と反射層108の低屈折率層1081との界面にP系材料/As系材料の接合界面1083が形成される(図3参照)。
一方、従来の面発光レーザ素子200においては、P系材料/As系材料の接合界面は、共振器と低屈折率層a1との界面に存在し、従来の面発光レーザ素子200Aにおいては、P系材料/As系材料の接合界面は、低屈折率層b1と高屈折率層b2との界面に存在する。
したがって、面発光レーザ素子100においては、P系材料/As系材料の接合界面1023,1083は、従来の面発光レーザ素子200,200Aよりも活性層から遠い位置に形成される。その結果、面発光レーザ素子100の寿命を長くできる。
なお、反射層103の[低屈折率層1031/高屈折率層1032]の組数および反射層107の[低屈折率層1071/高屈折率層1072]の組数は、1組に限らず、2以上の組数であってもよい。
図6は、熱伝導率とAl組成比xとの関係を示す図である。図6において、縦軸は、熱伝導率を表し、横軸は、Al組成比xを表す。また、曲線k3は、AlxGa1−xAs(0≦x≦1)の熱伝導率とAl組成比xとの関係を示し、曲線k4は、(AlxGa1−x)0.5In0.5P(0≦x≦1)の熱伝導率とAl組成比xとの関係を示す。
反射層103,107に(AlxGa1−x)0.5In0.5P(0≦x≦1)系の材料を用いた場合、反射層103、107の熱伝導率は、反射層103,107にAlxGa1−xAs(0≦x≦1)系の材料を用いる場合よりも低くなるので(曲線k3,k4参照)、反射層103の[低屈折率層1031/高屈折率層1032]の組数および反射層107の[低屈折率層1071/高屈折率層1072]の組数は、放熱特性を考慮してできる限り少ない組数に設定される。
図7、図8および図9は、それぞれ、図1に示す面発光レーザ素子100の作製方法を示す第1から第3の工程図である。図7を参照して、一連の動作が開始されると、有機金属気相成長法(MOCVD:Metal Organic Chemical Vapor Deposition)を用いて、反射層102,103、スペーサー層104、活性層105、スペーサー層106、反射層107,108、選択酸化層109、およびコンタクト層110を基板101上に順次積層する(図7の工程(a)参照)。
この場合、反射層102のn−Al0.95Ga0.05Asおよびn−Al0.5Ga0.65Asをトリメチルアルミニウム(TMA)、トリメチルガリウム(TMG)、アルシン(AsH3)およびセレン化水素(H2Se)を原料として形成し、反射層103のn−(Al0.7Ga0.3)0.5In0.5Pおよびn−(Al0.1Ga0.9)0.5In0.5Pをトリメチルアルミニウム(TMA)、トリメチルガリウム(TMG)、トリメチルインジウム(TMI)、ホスフィン(PH3)およびセレン化水素(H2Se)を原料として形成する。
また、スペーサー層104の(Al0.7Ga0.3)0.5In0.5Pをトリメチルアルミニウム(TMA)、トリメチルガリウム(TMG)、トリメチルインジウム(TMI)およびホスフィン(PH3)を原料として形成する。
さらに、活性層105のGa0.8In0.2P0.2As0.8をトリメチルガリウム(TMG)、トリメチルインジウム(TMI)、ホスフィン(PH3)およびアルシン(AsH3)を原料として形成し、活性層105の(Al0.1Ga0.9)0.5In0.5Pをトリメチルアルミニウム(TMA)、トリメチルガリウム(TMG)、トリメチルインジウム(TMI)、およびホスフィン(PH3)を原料として形成する。
さらに、スペーサー層106の(Al0.7Ga0.3)0.5In0.5Pをトリメチルアルミニウム(TMA)、トリメチルガリウム(TMG)、トリメチルインジウム(TMI)、およびホスフィン(PH3)を原料として形成する。
さらに、反射層107のp−(Al0.7Ga0.3)0.5In0.5Pおよびp(Al0.1Ga0.9)0.5In0.5Pをトリメチルアルミニウム(TMA)、トリメチルガリウム(TMG)、トリメチルインジウム(TMI)、ホスフィン(PH3)および四臭化炭素(CBr4)を原料として形成する。なお、四臭化炭素(CBr4)に代えて、ジメチル亜鉛(DMZn)を用いてもよい。
さらに、反射層108のp−Al0.95Ga0.05Asおよびp−Al0.35Ga0.65Asをトリメチルアルミニウム(TMA)、トリメチルガリウム(TMG)、アルシン(AsH3)および四臭化炭素(CBr4)を原料として形成する。この場合も、四臭化炭素(CBr4)に代えて、ジメチル亜鉛(DMZn)を用いてもよい。
さらに、選択酸化層109のp−AlAsをトリメチルアルミニウム(TMA)、アルシン(AsH3)および四臭化炭素(CBr4)を原料として形成し、コンタクト層110のp−GaAsをトリメチルガリウム(TMG)、アルシン(AsH3)および四臭化炭素(CBr4)を原料として形成する。この場合も、四臭化炭素(CBr4)に代えて、ジメチル亜鉛(DMZn)を用いてもよい。
その後、コンタクト層110の上にレジストを塗布し、写真製版技術を用いて、コンタクト層110上にレジストパターン120を形成する(図7の工程(b)参照)。
レジストパターン120を形成すると、その形成したレジストパターン120をマスクとして用いて、反射層103の一部、スペーサー層104、活性層105、スペーサー層106、反射層107,108、選択酸化層109およびコンタクト層110の周辺部をドライエッチングにより除去し、さらに、レジストパターン120を除去する(図7の工程(c)参照)。
なお、ドライエッチングは、Cl2,BCl3,SiCl4等のハロゲン系のガスを導入し、反応性イオンビームエッチング法(RIBE:Reactive Ion Beam Echting)、誘導結合プラズマエッチング法(ICP:Inductively Coupled Plasma)法および反応性イオンエッチング(RIE:Reactive Ion Echting)法等のプラズマを用いて行なわれる。
面発光レーザ素子100の反射層103,107、スペーサー層104,106および活性層105の領域においては、AlGaInPAs系の材料が用いられている。Inを含んだ材料のドライエッチングは、Inの塩化物の蒸気圧が低いので、AlGaAs系材料からなる半導体分布ブラッグ反射器(反射層102,108)に対してエッチング速度を小さくできる。すなわち、エッチング条件によりスペーサー層104,106および活性層105からなる共振器領域をエッチングをストップする層として利用できるので、エッチング速度のロット間のばらつきおよび面内分布を吸収することができ、選択酸化層109をエッチングし、かつ、エッチング深さが反射層102に至らないようにすることができる。このような、理由により、ハロゲン系のガスを用いて反射層103の一部、スペーサー層104、活性層105、スペーサー層106、反射層107,108、選択酸化層109およびコンタクト層110の周辺部をドライエッチングする。
次に、図8を参照して、図7に示す工程(c)の後、85℃に加熱した水を窒素ガスでバブリングした雰囲気中において、試料を425℃に加熱して、選択酸化層109の周囲を外周部から中央部に向けて酸化し、選択酸化層109中に非酸化領域109aと酸化領域109bとを形成する(図8の工程(d)参照)。
その後、気相化学堆積法(CVD:Chemical Vapour Deposition)を用いて、試料の全面にSiO2層111を形成し、写真製版技術を用いて光出射部となる領域およびその周辺領域のSiO2層111を除去する(図8の工程(e)参照)。
次に、試料の全体に絶縁性樹脂112をスピンコートにより塗布し、光出射部となる領域上の絶縁性樹脂112を除去する(図8の工程(f)参照)。
図9を参照して、絶縁性樹脂112を形成した後、光出射部となる領域上に所定のサイズを有するレジストパターンを形成し、試料の全面にp側電極材料を蒸着により形成し、レジストパターン上のp側電極材料をリフトオフにより除去してp側電極113を形成する(図9の工程(g)参照)。そして、基板101の裏面を研磨し、基板101の裏面にn側電極114を形成し、さらに、アニールしてp側電極113およびn側電極114のオーミック導通を取る(図9の工程(h)参照)。これによって、面発光レーザ素子100が作製される。
面発光レーザ素子100においては、上述したように、共振器と反射層103,107との界面における伝導帯のエネルギー差を従来の面発光レーザ素子よりも大きくでき、反射層103,107中における価電子帯のエネルギー差を従来の面発光レーザ素子よりも小さくできる。その結果、面発光レーザ素子100においては、従来の面発光レーザ素子よりもキャリアを活性層105に閉じ込めることができるとともに、反射層103,107の抵抗を大幅に低くでき、高出力を得ることができる。
上記においては、反射層103の低屈折率層1031および反射層107の低屈折率層1071は、(Al0.7Ga0.3)0.5In0.5Pからなると説明したが、この発明においては、これに限らず、低屈折率層1031,1071は、一般的には、(AlxGa1−x)0.5In0.5P(0≦x≦1)から構成されていればよい。
また、上記においては、反射層103の高屈折率層1032および反射層107の高屈折率層1072は、(Al0.1Ga0.9)0.5In0.5Pからなると説明したが、この発明においては、これに限らず、高屈折率層1032,1072は、一般的には、(AlyGa1−y)0.5In0.5P(0≦y<x≦1)から構成されていればよい。
[第2の実施形態]
図10は、第2の実施形態による面発光レーザ素子の概略断面図である。図10を参照して、第2の実施形態による面発光レーザ素子100Aは、図1に示す面発光レーザ素子100の反射層103,107をそれぞれ反射層103A,107Aに代えたものであり、その他は、面発光レーザ素子100と同じである。
図11は、図10に示す2つの反射層102,103Aの断面図である。図11を参照して、反射層103Aは、図2に示す反射層103に中間層1033を追加したものであり、その他は、反射層103と同じである。
中間層1033は、n−(Al0.4Ga0.6)0.5In0.5Pからなり、低屈折率層1031と高屈折率層1032との間に形成される。
図12は、図10に示す2つの反射層107A,108の他の断面図である。図12を参照して、反射層107Aは、図2に示す反射層107に中間層1073を追加したものであり、その他は、反射層107と同じである。
中間層1073は、p−(Al0.4Ga0.6)0.5In0.5Pからなり、低屈折率層1071と高屈折率層1072との間に形成される。
図13は、図10に示す2つの反射層102,108の一部、2つの反射層103A,107A、および共振器(=スペーサー層104,106および活性層105)のエネルギーバンド図である。
図13を参照して、中間層1033は、高屈折率層1032のバンドギャップと低屈折率層1031のバンドギャップとの間のバンドギャップを有する。また、中間層1073は、高屈折率層1072のバンドギャップと低屈折率層1071のバンドギャップとの間のバンドギャップを有する。
低屈折率層1031のAl組成比と高屈折率層1032のAl組成比との差が大きい場合、反射層103における価電子帯のバンド不連続が大きくなるので、低屈折率層1031のAl組成比と高屈折率層1032のAl組成比との中間のAl組成比を有する中間層1033を低屈折率層1031と高屈折率層1032との間に挿入することにより、反射層103Aにおける価電子帯のバンド不連続が小さくなり、反射層103Aの抵抗を小さくできる。
また、低屈折率層1071のAl組成比と高屈折率層1072のAl組成比との差が大きい場合、反射層107における価電子帯のバンド不連続が大きくなるので、低屈折率層1071のAl組成比と高屈折率層1072のAl組成比との中間のAl組成比を有する中間層1073を低屈折率層1071と高屈折率層1072との間に挿入することにより、反射層107Aにおける価電子帯のバンド不連続が小さくなり、反射層107Aの抵抗を小さくできる。
従って、反射層103A,107A中にそれぞれ中間層1033,1073を設けることによって、反射層103A,107Aの抵抗を低減して面発光レーザ素子100Aの出力を高くできる。
なお、面発光レーザ素子100Aは、図7、図8および図9に示す工程(a)〜工程(h)に従って作製される。この場合、工程(a)においては、反射層103,107に代えてそれぞれ反射層103A,107Aが積層される。
また、上記においては、中間層1033は、n−(Al0.4Ga0.6)0.5In0.5Pからなり、中間層1073は、p−(Al0.4Ga0.6)0.5In0.5Pからなると説明したが、この発明においては、これに限らず、中間層1033は、n−(AlzGa1−z)0.5In0.5P(0≦z≦1,y<z<x)からなり、中間層1073は、p−(AlzGa1−z)0.5In0.5P(0≦z≦1,y<z<x)からなっていればよい。
さらに、中間層1033は、低屈折率層1031から高屈折率層1032へ向けてバンドギャップが連続的または階段的に小さくなる複数のn−(AlzGa1−z)0.5In0.5Pから構成されていてもよく、中間層1073は、低屈折率層1071から高屈折率層1072へ向けてバンドギャップが連続的または階段的に小さくなる複数のp−(AlzGa1−z)0.5In0.5Pから構成されていてもよい。
その他は、第1の実施形態と同じである。
[第3の実施形態]
図14は、第3の実施形態による面発光レーザ素子の概略断面図である。図14を参照して、第3の実施形態による面発光レーザ素子100Bは、図1に示す面発光レーザ素子100の反射層103,107をそれぞれ反射層103B,107Bに代えたものであり、その他は、面発光レーザ素子100と同じである。
図15は、図10に示す2つの反射層102,103Bの断面図である。図15を参照して、反射層103Bは、図11に示す反射層103Aに中間層1034を追加したものであり、その他は、反射層103Aと同じである。
中間層1034は、n−(Al0.4Ga0.6)0.5In0.5Pからなり、低屈折率層1031と共振器との間に形成される。
図16は、図10に示す2つの反射層107B,108の他の断面図である。図16を参照して、反射層107Bは、図12に示す反射層107Aに中間層1074を追加したものであり、その他は、反射層107Aと同じである。
中間層1074は、p−(Al0.4Ga0.6)0.5In0.5Pからなり、低屈折率層1071と共振器との間に形成される。
図17は、図14に示す2つの反射層102,108の一部、2つの反射層103B,107B、および共振器(=スペーサー層104,106および活性層105)のエネルギーバンド図である。
図17を参照して、中間層1034は、共振器を構成するスペーサー層104のバンドギャップと低屈折率層1031のバンドギャップとの間のバンドギャップを有する。また、中間層1074は、共振器を構成するスペーサー層106のバンドギャップと低屈折率層1071のバンドギャップとの間のバンドギャップを有する。
スペーサー層104のAl組成比と低屈折率層1031のAl組成比との差が大きい場合、反射層103Aにおける価電子帯のバンド不連続が大きくなるので、スペーサー層104のAl組成比と低屈折率層1031のAl組成比との中間のAl組成比を有する中間層1034をスペーサー層104と低屈折率層1031との間に挿入することにより、反射層103Bにおける価電子帯のバンド不連続が小さくなり、反射層103Bの抵抗を小さくできる。
また、スペーサー層106のAl組成比と低屈折率層1071のAl組成比との差が大きい場合、反射層107Aにおける価電子帯のバンド不連続が大きくなるので、低屈折率層1071のAl組成比と高屈折率層1072のAl組成比との中間のAl組成比を有する中間層1074をスペーサー層106と低屈折率層1071との間に挿入することにより、反射層107Bにおける価電子帯のバンド不連続が小さくなり、反射層107Bの抵抗を小さくできる。
従って、反射層103B,107B中にそれぞれ中間層1034,1074を設けることによって、反射層103B,107Bの抵抗を低減して面発光れレーザ素子100Bの出力を高くできる。
なお、面発光レーザ素子100Bは、図7、図8および図9に示す工程(a)〜工程(h)に従って作製される。この場合、工程(a)においては、反射層103,107に代えてそれぞれ反射層103B,107Bが積層される。
また、上記においては、中間層1034は、n−(Al0.4Ga0.6)0.5In0.5Pからなり、中間層1074は、p−(Al0.4Ga0.6)0.5In0.5Pからなると説明したが、この発明においては、これに限らず、中間層1034は、n−(AlzGa1−z)0.5In0.5P(0≦z≦1,y<z<x)からなり、中間層1074は、p−(AlzGa1−z)0.5In0.5P(0≦z≦1,y<z<x)からなっていればよい。
さらに、中間層1034は、低屈折率層1031からスペーサー層104へ向けてバンドギャップが連続的または階段的に小さくなる複数のn−(AlzGa1−z)0.5In0.5Pから構成されていてもよく、中間層1074は、低屈折率層1071からスペーサー層106へ向けてバンドギャップが連続的または階段的に小さくなる複数のp−(AlzGa1−z)0.5In0.5Pから構成されていてもよい。
その他は、第1の実施形態と同じである。
[第4の実施形態]
次に、本発明の第4の実施形態について用いて説明する。第4の実施形態による面発光レーザ素子100Cは、図18に示されるように、上記面発光レーザ素子100の反射層102を反射層102Aに代えたものであり、その他は、面発光レーザ素子100と同じである。
反射層102Aは、n−AlAsからなる低屈折率層1021aとn−Al0.35Ga0.65Asからなる高屈折率層1022とをペアとして、35.5ペア有している。すなわち、上記面発光レーザ素子100の反射層102における低屈折率層1021を低屈折率層1021aに代えたものである。
本第4の実施形態では、反射層102Aの低屈折率層1021aに、AlGaAs系材料よりも熱抵抗が小さいAlAs層を用いているため、活性層で発生した熱をより効果的に基板側へ放出することができる。従って、活性層の温度上昇を抑制することが可能となり光出力の増大等VCSELの特性を向上させることができる。
ところで、熱特性のみを考慮すると、高屈折率層もGaAsとするのがより望ましいが、活性層での発光波長が850nm以下の場合には、GaAs層での吸収が存在するため用いることはできない。
なお、上記第4の実施形態では、反射層102Aにおいて、全ての低屈折率層1021aの光学厚さがλ/4の場合について説明したが、これに限定されるものではなく、例えば、図19に示されるように、前記反射層102Aにおいて、反射層103と接する低屈折率層1021aの光学厚さを3λ/4としても良い。これにより、活性層105で発生した熱をさらに効率的に基板側へ放出させることができる。
この場合に、反射層103と接する低屈折率層1021aの光学厚さを5λ/4や7λ/4としても良い。要するに、反射層103と接する低屈折率層1021aの光学厚さは、λ/4以上であっても良い。
また、この場合に、反射層103と接する低屈折率層1021aだけでなく、反射層103に近い複数の低屈折率層1021aの光学厚さをλ/4以上としても良い。
また、反射層103において、各屈折率層におけるAl組成の差が大きい場合には、前述した面発光レーザ素子100Aと同様に、低屈折率層1031と高屈折率層1032との間に、前記中間層1033を挿入しても良い(図20参照)。これにより、バンドの不連続性が小さくなり、素子抵抗を低減することができる。なお、中間層内でバンドギャップが段階状に徐々に変化するように、中間層が複数の半導体層から形成されていても良い。
また、反射層107において、各屈折率層におけるAl組成の差が大きい場合には、前述した面発光レーザ素子100Aと同様に、低屈折率層1071と高屈折率層1072との間に、前記中間層1073を挿入しても良い(図20参照)。これにより、バンドの不連続性が小さくなり、素子抵抗を低減することができる。なお、中間層内でバンドギャップが段階状に徐々に変化するように、中間層が複数の半導体層から形成されていても良い。
また、反射層103において、低屈折率層1031とスペーサー層104におけるAl組成の差が大きい場合には、前述した面発光レーザ素子100Bと同様に、低屈折率層1031とスペーサー層104との間に、接合層としての前記中間層1034を挿入しても良い(図20参照)。これにより、バンドの不連続性が小さくなり、素子抵抗を低減することができる。なお、中間層内でバンドギャップが段階状に徐々に変化するように、中間層が複数の半導体層から形成されていても良い。
また、反射層107において、低屈折率層1071とスペーサー層106における各屈折率層におけるAl組成の差が大きい場合には、前述した面発光レーザ素子100Bと同様に、低屈折率層1071とスペーサー層106との間に、接合層としての前記中間層1074を挿入しても良い(図20参照)。これにより、バンドの不連続性が小さくなり、素子抵抗を低減することができる。なお、中間層内でバンドギャップが段階状に徐々に変化するように、中間層が複数の半導体層から形成されていても良い。
[第5の実施形態]
次に、本発明の第5の実施形態について用いて説明する。第5の実施形態による面発光レーザ素子100Dは、図21に示されるように、上記面発光レーザ素子100の反射層103を反射層103Cに代えたものであり、その他は、面発光レーザ素子100と同じである。
反射層103Cは、AlGaAs系材料からなる低屈折率層1031a(例えば、前記低屈折率層1021と同じ、n−Al0.95Ga0.05As)及び高屈折率層1032a(例えば、前記高屈折率層1022と同じ、n−Al0.35Ga0.65As)を有している。なお、低屈折率層1031aがn−Al0.95Ga0.05As、高屈折率層1032aがn−Al0.35Ga0.65Asの場合は、反射層102と反射層103Cとからなる反射層は、同一の低屈折率層及び同一の高屈折率層から構成されることとなるため、1つの反射層とみなすことができる。
これにより、基板101と共振器との間にある反射層は、AlGaAs系材料のみで構成されることとなる。図6に示されるように、AlGaAs系材料は、あらゆる組成のAlGaInP系材料よりも熱抵抗が小さいため、活性層で発生した熱を効果的に基板側へ放出することができる。
なお、反射層107において、各屈折率層におけるAl組成の差が大きい場合には、前述した面発光レーザ素子100Aと同様に、低屈折率層1071と高屈折率層1072との間に、前記中間層1073を挿入しても良い(図22参照)。これにより、バンドの不連続性が小さくなり、素子抵抗を低減することができる。なお、中間層内でバンドギャップが段階状に徐々に変化するように、中間層が複数の半導体層から形成されていても良い。
また、反射層107において、低屈折率層1071とスペーサー層106における各屈折率層におけるAl組成の差が大きい場合には、前述した面発光レーザ素子100Bと同様に、低屈折率層1071とスペーサー層106との間に、接合層としての前記中間層1074を挿入しても良い(図23参照)。これにより、バンドの不連続性が小さくなり、素子抵抗を低減することができる。なお、中間層内でバンドギャップが段階状に徐々に変化するように、中間層が複数の半導体層から形成されていても良い。
[第6の実施形態]
次に、本発明の第6の実施形態について用いて説明する。第6の実施形態による面発光レーザ素子100Eは、図24に示されるように、上記面発光レーザ素子100Cの反射層103を反射層103Dに代えたものであり、その他は、面発光レーザ素子100Cと同じである。
反射層103Dは、n−AlAsからなる低屈折率層1031bとn−Al0.35Ga0.65Asからなる高屈折率層1032bとを有している。すなわち、低屈折率層1031bは、反射層102Aの低屈折率層1021aと同じであり、高屈折率層1032bは、反射層102Aの高屈折率層1022と同じである。そこで、反射層102Aと反射層103Dとからなる反射層は、同一の低屈折率層及び同一の高屈折率層から構成されることとなるため、1つの反射層とみなすことができる。
本第6の実施形態では、反射層103Dの低屈折率層1031bに、AlGaAs系材料よりも熱抵抗が小さいAlAsを用いているため、活性層で発生した熱をより効果的に基板側へ放出することができる。従って、活性層の温度上昇を抑制することが可能となり光出力の増大等VCSELの特性を向上させることができる。
ところで、熱特性のみを考慮すると、高屈折率層もGaAsとするのがより望ましいが、活性層での発光波長が850nm以下の場合には、GaAs層での吸収が存在するため用いることはできない。
なお、上記第6の実施形態では、反射層103Dにおいて、共振器と接する低屈折率層1031bの光学厚さがλ/4の場合について説明したが、これに限定されるものではなく、例えば、図25及び図26に示されるように、共振器と接する低屈折率層1031bの光学厚さを3λ/4としても良い。これにより、活性層で発生した熱をさらに効率的に基板側へ放出させることができる。
この場合に、共振器と接する低屈折率層1031bの光学厚さを5λ/4や7λ/4としても良い。要するに、共振器と接する低屈折率層1031bの光学厚さは、λ/4以上であっても良い。
また、この場合に、共振器と接する低屈折率層1031aだけでなく、反射層102Aにおける共振器に近い複数の低屈折率層1021aの光学厚さをλ/4以上としても良い(図27参照)。
図27に示される構成では、共振器の伝導帯のポテンシャルエネルギーは約0.22eV、低屈折率層1071の伝導帯のポテンシャルエネルギーは約0.38eVであり、両者のエネルギー差は0.16eVとなり大幅にキャリア閉じ込めを向上させることができる。なお、仮に、低屈折率層1071がp−Al0.95Ga0.05As、高屈折率層1072がp−Al0.35Ga0.65Asの場合には、共振器の伝導帯のポテンシャルエネルギーは約0.22eV、低屈折率層1071の伝導帯のポテンシャルエネルギーは約0.30eVであり、両者のエネルギー差は0.08eVである。
また、図27に示される構成では、高屈折率層1072の価電子帯のポテンシャルエネルギーは約−1.75eV、低屈折率層1071の価電子帯のポテンシャルエネルギーは約−1.84eVであり、両者のエネルギー差は−0.09eVとなり、大幅に素子抵抗を低減することができる。なお、仮に、低屈折率層1071がp−(Al0.7Ga0.3)0.5In0.5P、高屈折率層1072がp−Al0.35Ga0.65Asの場合には、低屈折率層1071の価電子帯のポテンシャルエネルギーは約−1.94eV、高屈折率層1072の価電子帯のポテンシャルエネルギーは約−1.57eVであり、両者のエネルギー差は−0.37eVである。
このように、本第6の実施形態では、キャリア閉じ込めの向上、素子抵抗の低減及び放熱特性向上のいずれについても従来以上の特性を期待することができる。
[応用例]
図28は、図1に示す面発光レーザ素子100を用いた面発光レーザアレイの平面図である。図28を参照して、面発光レーザアレイ300は、24個の面発光レーザ素子301〜324を備える。
24個の面発光レーザ素子301〜324の各々は、図1に示す面発光レーザ素子100からなり、二次元に配置される。3個の面発光レーザ素子301,309,317;302,310,318;303,311,319;304,312,320;305,313,321;306,314,322;307,315,323;308,316,324は、第1の基線に沿って等間隔に配置される。
また、8個の面発光レーザ素子301〜308;309〜316;317〜324は、第2の基線に沿って等間隔に配置される。この場合、隣接する2つの面発光レーザ素子の間隔は、dに設定される。
第1の基線は、第2の基線と所定の角度を成す。従って、8個の面発光レーザ素子301〜308;309〜316;317〜324の中心点を第1の基線へ投影したときの8個の投影点は、等間隔になり、その間隔は、hである。
面発光レーザ素子100は、面発光型であるのでアレイが容易であり、素子の位置精度も高い。また、面発光レーザ素子100は、上述したように、反射層103,107の抵抗を低減して発熱を抑制した構造からなる。したがって、面発光レーザアレイ300は、従来の面発光レーザアレイよりも素子間の間隔を小さくして高密度化できる。これにより、チップの取れ数が増加し、コストを低減できる。
また、高出力動作が可能な面発光レーザ素子100を同一基板上に多数集積することで、書込み光学系に応用した場合、同時にマルチビームでの書込みが容易となり、書込み速度が格段に向上し、書込みドット密度が上昇しても印刷速度を落とすことなく印刷できる。そして、同じ書込みドット密度の場合は、印刷速度を速くできる。
すなわち、通常、1回の主走査において、全ての面発光レーザ素子301〜324を画像データに対応させて点灯させた後、副走査を行ない、これらの工程を繰り返すことにより、画像記録が行なわれる。つまり、面発光レーザアレイ300に含まれる面発光レーザ素子の総数をnとすると、1回の主走査によってn行の画像記録が行なわれ、同一出力を有する1つのレーザ光源を用いた場合と比較して1/nの時間で画像記録を行なうことができる。
なお、面発光レーザアレイ300においては、面発光レーザ素子301〜324の各々は、面発光レーザ素子100A〜100Eのいずれかにより構成されていてもよい。
図29は、光走査装置の概略図である。図29を参照して、光走査装置400は、面発光レーザアレイ401と、コリメータレンズ402と、ポリゴンミラー403と、fθレンズ304とを備える。
面発光レーザアレイ401は、図28に示す面発光レーザアレイ300からなり、複数のビームを放射する。コリメータレンズ402は、面発光レーザアレイ401から放射された複数のビームを平行光にしてポリゴンミラー403へ導く。
ポリゴンミラー403は、所定の速度で時計方向に回転し、コリメータレンズ402から受けた複数のビームを主走査方向および副走査方向に走査させてf?レンズ404へ導く。fθレンズ404は、ポリゴンミラー403によって走査された複数のビームを感光体405に導く。この場合、fθレンズ404は、ポリゴンミラー403によって走査された複数のビームの全てが感光体405上で焦点が得られるように複数のビームを感光体405に導く。
このように、光走査装置400は、面発光レーザアレイ401からの複数のビームをコリメータレンズ402およびポリゴンミラー403等からなる同じ光学系を用い、ポリゴンミラー403を高速回転させるとともに、ドット位置を点灯のタイミングを調整して副走査方向に分離した複数の光スポットとして被走査面である感光体405上に集光する。
光走査装置400を用いて画像を書き込む場合、第1の基線に対する各面発光レーザ素子301〜324の各オフセット量を考慮することにより、感光帯405上での各面発光レーザ素子301〜324からのビームを一直線上に配置することができる。
また、同等の光出力、および同等のポリゴンミラーの回転速度を有する光書き込み系においては、レーザ光の本数がn本になった場合、感光体405を一回転させるのに必要な書き込み時間は1/nとなる、従来と比較して大幅な高速書き込みが可能となる。
図30は、光走査装置の他の概略図である。図30を参照して、光走査装置400Aは、図29に示す光走査装置400に受光素子406および移動手段407を追加したものであり、その他は、光走査装置400と同じである。
受光素子406は、移動手段407によって、レーザ光の光路外の位置aとレーザ光の光軸上の位置bとの間を移動させられる。そして、受光素子406は、レーザ光の光軸上の位置bへ移動すると、面発光レーザアレイ401から放射されたレーザ光を検知するとともに、その出力を測定する。
移動手段407は、光走査装置400Aが画像の書き込みを行なっている場合、受光素子406をレーザ光の光路外の位置aへ移動させ、光走査装置400Aが画像の書き込みを行なっていない場合、受光素子406をレーザ光の光軸の位置bへ移動させる。
一般に、半導体レーザーは、長期的な観点において通電と共に徐々に出力が低下する現象が確認されており、この現象は多かれ少なかれ、全ての半導体レーザーについて当てはまる。レーザー出力の変動は、潜像形成における感光体405上の電位むらとなって現れ、最終的には画像の濃度むらとなって観察される。したがって、均一な濃度の画像を形成する際には、レーザー光出力を均一にしなければならない。
そこで、光走査装置400Aが画像記録を行なっていない場合、受光素子406をレーザ光の光軸上へ移動させることにより、面発光レーザアレイ401から放射された複数のレーザ光の出力を測定でき、その測定に基づいて、複数のレーザ光の出力をほぼ均一に保持するように面発光レーザアレイ401の複数の面発光レーザ素子への注入電流を制御することにより、均一な濃度の画像を感光体405上に形成できる。
その他は、図29における説明と同じである。
図31は、光走査装置のさらに他の概略図である。図31を参照して、光走査装置400Bは、図29に示す光走査装置400にハーフミラー408および受光素子409を追加したものであり、その他は、光走査装置400と同じである。
ハーフミラー408は、コリメータレンズ402と、ポリゴンミラー403との間の光路上に配置される。そして、ハーフミラー408は、コリメータレンズ402からのレーザ光の一部をポリゴンミラー403へ透過させ、一部を受光素子409の方向へ反射する。受光素子409は、ハーフミラー408からの光を受光する。
ハーフミラー408によってレーザ光の一部を反射し、その反射光を受光素子409によって検出することにより、一切の移動手段を設けることなく、面発光レーザアレイ401から放射された複数のレーザ光の出力を測定でき、その測定に基づいて、複数のレーザ光の出力をほぼ均一に保持するように面発光レーザアレイ401の複数の面発光レーザ素子への注入電流を制御することにより、均一な濃度の画像を感光体405上に形成できる。その他は、図29における説明と同じである。
図32は、光走査装置のさらに他の概略図である。図32を参照して、光走査装置400Cは、図31に示す光走査装置400Bに拡大レンズ410を追加したものであり、その他は、光走査装置400Bと同じである。
拡大レンズ410は、ハーフミラー408と、受光素子409との間に配置される。そして、拡大レンズ410は、ハーフミラー408からの複数のレーザ光を所定の倍率で拡大し、その拡大した複数のレーザ光を受光素子409へ導く。
面発光レーザアレイ401から放射される複数のレーザ光の間隔は、狭いため、それぞれを分離して検出することは困難である。
したがって、拡大レンズ410によって複数のレーザ光のビームピッチを拡大して受光素子409に導くことによって、複数のレーザ光の出力を正確に測定できる。その結果、その正確な測定に基づいて、複数のレーザ光の出力をほぼ均一に保持するように面発光レーザアレイ401の複数の面発光レーザ素子への注入電流を正確に制御でき、均一な濃度の画像を感光体405上に正確に形成できる。
なお、拡大レンズ410を光走査装置400Aに追加するようにしてもよい。この場合、移動手段407は、拡大レンズ410を受光素子406と同時に位置aまたは位置bへ移動させる。その他は、図29および図31における説明と同じである。
図33は、光走査装置のさらに他の概略図である。図33を参照して、光走査装置400Dは、図29に示す光走査装置400に受光素子411を追加したものであり、その他は、光走査装置400と同じである。
受光素子411は、fθレンズ404の出射面404A側であって、レーザ光の走査方向の終端に配置される。
電子写真においては、図33におけるポリゴンミラー403による主走査が終了した後、感光体ドラムを副走査方向に所定の量走査することの繰り返しによって、画像形成がなされている。したがって、主走査と副走査は、予め決められたタイミングによって行われているが、ポリゴンミラー403の回転むらによりずれが生じ、1つの画像分の主走査を行う間にそのずれが蓄積し、高品質な画像形成を妨げる恐れがある。
そこで、光走査装置400Dにおいては、主走査方向終端に走査されたレーザ光を検知する受光素子411を設け、2回の主走査終了の信号に同期して副走査を行うことにより、ポリゴンミラー403の回転むらによる画像品質の低下を防止することができ、高品質な画像記録を行うことができる。
図34は、電子写真装置の概略図である。図34を参照して、電子写真装置500は、感光体ドラム501と、光走査装置502と、クリーニングユニット503と、帯電ユニット504と、現像ユニット505と、トナー506と、転写ユニット507と、除電ユニット508とを備える。
光走査装置502、クリーニングユニット503、帯電ユニット50と、現像ユニット505、トナー506、転写ユニット507および除電ユニット508は、感光体ドラム501の周囲に配置される。
光走査装置502は、図29に示す光走査装置400からなり、上述した方法によって複数のレーザ光を用いて感光体ドラム501上に潜像を形成する。クリーニングユニット503は、感光体ドラム501上に残留しているトナー509を除去する。
帯電ユニット504は、感光体ドラム501の表面を帯電させる。現像ユニット505は、トナー506を感光体ドラム501の表面に導き、光走査装置502によって形成された潜像にトナー現像を施す。
転写ユニット507は、トナー画像を転写する。除電ユニット508は、感光体ドラム501上の潜像を消去する。
電子写真装置500において、一連の動作が開始されると、帯電ユニット504は、感光体ドラム501の表面を帯電させ、光走査装置502は、複数のレーザ光によって感光体ドラム501上に潜像を形成する。そして、現像ユニット505は、光走査装置502によって形成された潜像にトナー現像を施し、転写ユニット507は、トナー画像を転写する。これにより、トナー画像が記録紙510上に転写され、その後、トナー画像は、定着ユニット(図示せず)によって熱定着を施され、電子写真画像の形成が完了する。
一方、除電ユニット508は、感光体ドラム501上の潜像を消去し、クリーニングユニット503は、感光体ドラム501上に残留したトナーを除去する。これにより、一連の動作は終了し、上述した動作を繰り返すことにより、電子写真画像を連続、かつ、高速に出力することができる。
なお、電子写真装置500においては、光走査装置502は、光走査装置400A,400B,400C,400Dのいずれかから構成されていてもよい。
今回開示された実施形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施形態の説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
100,100A,100B,100C,100D,100E,200,200A,301〜324…面発光レーザ素子、101…基板、102,102A,103,103A,103B,103C,103D,107,107A,107B,108…反射層、104,106…スペーサー層、105…活性層、105A,105C,105E…井戸層、105B,105D…障壁層、109…選択酸化層、109a…非酸化領域、109b…酸化領域、110…コンタクト層、111…SiO2層、112…絶縁性樹脂、113…p側電極、114…n側電極、120…レジストパターン、300,401…面発光レーザアレイ、400,400A,400B,400C,400D,502…光走査装置、402…コリメータレンズ、403…ポリゴンミラー、404…fθレンズ、405…感光体、406,409,411…受光素子、407…移動手段、408…ハーフミラー、410…拡大レンズ、500…電子写真装置、501…感光体ドラム、503…クリーニングユニット、504…帯電ユニット、505…現像ユニット、506,509…トナー、507…転写ユニット、508…除電ユニット、510…記録紙、1021,1021a,1031,1031a,1031b,1071,1081…低屈折率層、1022,1032,1032a,1032b,1072,1082…高屈折率層、1023,1083…接合界面、1033,1073…中間層、1034,1074…中間層(接合層)、105A,105C,105E…井戸層、105B,105D…障壁層。