以下、本発明の一実施形態を説明する。
図1には、本発明の一実施形態に係るレーザプリンタ1000の概略構成が示されている。
このレーザプリンタ1000は、光走査装置1010、感光体ドラム1030、帯電チャージャ1031、現像ローラ1032、転写チャージャ1033、除電ユニット1034、クリーニングユニット1035、トナーカートリッジ1036、給紙コロ1037、給紙トレイ1038、レジストローラ対1039、定着ローラ1041、排紙ローラ1042、排紙トレイ1043、通信制御装置1050、及び上記各部を統括的に制御するプリンタ制御装置1060などを備えている。なお、これらは、プリンタ筐体1044の中の所定位置に収容されている。
通信制御装置1050は、ネットワークなどを介した上位装置(例えばパソコン)との双方向の通信を制御する。
感光体ドラム1030は、円柱状の部材であり、その表面には感光層が形成されている。すなわち、感光体ドラム1030の表面が被走査面である。そして、感光体ドラム1030は、図1における矢印方向に回転するようになっている。
帯電チャージャ1031、現像ローラ1032、転写チャージャ1033、除電ユニット1034及びクリーニングユニット1035は、それぞれ感光体ドラム1030の表面近傍に配置されている。そして、感光体ドラム1030の回転方向に沿って、帯電チャージャ1031→現像ローラ1032→転写チャージャ1033→除電ユニット1034→クリーニングユニット1035の順に配置されている。
帯電チャージャ1031は、感光体ドラム1030の表面を均一に帯電させる。
光走査装置1010は、帯電チャージャ1031で帯電された感光体ドラム1030の表面に、上位装置からの画像情報に基づいて変調された光束を照射する。これにより、画像情報に対応した潜像が感光体ドラム1030の表面に形成される。ここで形成された潜像は、感光体ドラム1030の回転に伴って現像ローラ1032の方向に移動する。なお、この光走査装置1010の構成については後述する。
トナーカートリッジ1036にはトナーが格納されており、該トナーは現像ローラ1032に供給される。
現像ローラ1032は、感光体ドラム1030の表面に形成された潜像にトナーカートリッジ1036から供給されたトナーを付着させて画像情報を顕像化させる。ここでトナーが付着した潜像(以下では、便宜上「トナー像」ともいう)は、感光体ドラム1030の回転に伴って転写チャージャ1033の方向に移動する。
給紙トレイ1038には記録紙1040が格納されている。この給紙トレイ1038の近傍には給紙コロ1037が配置されており、該給紙コロ1037は、記録紙1040を給紙トレイ1038から1枚づつ取り出し、レジストローラ対1039に搬送する。該レジストローラ対1039は、給紙コロ1037によって取り出された記録紙1040を一旦保持するとともに、該記録紙1040を感光体ドラム1030の回転に合わせて感光体ドラム1030と転写チャージャ1033との間隙に向けて送り出す。
転写チャージャ1033には、感光体ドラム1030の表面上のトナーを電気的に記録紙1040に引きつけるために、トナーとは逆極性の電圧が印加されている。この電圧により、感光体ドラム1030の表面のトナー像が記録紙1040に転写される。ここで転写された記録紙1040は、定着ローラ1041に送られる。
定着ローラ1041では、熱と圧力とが記録紙1040に加えられ、これによってトナーが記録紙1040上に定着される。ここで定着された記録紙1040は、排紙ローラ1042を介して排紙トレイ1043に送られ、排紙トレイ1043上に順次スタックされる。
除電ユニット1034は、感光体ドラム1030の表面を除電する。
クリーニングユニット1035は、感光体ドラム1030の表面に残ったトナー(残留トナー)を除去する。残留トナーが除去された感光体ドラム1030の表面は、再度帯電チャージャ1031に対向する位置に戻る。
次に、前記光走査装置1010の構成について説明する。
この光走査装置1010は、一例として図2に示されるように、偏向器側走査レンズ11a、像面側走査レンズ11b、ポリゴンミラー13、光源14、カップリングレンズ15、開口板16、アナモルフィックレンズ17、反射ミラー18、及び走査制御装置(図示省略)などを備えている。そして、これらは、ハウジング30の中の所定位置に組み付けられている。
なお、以下では、便宜上、主走査方向に対応する方向を「主走査対応方向」と略述し、副走査方向に対応する方向を「副走査対応方向」と略述する。
カップリングレンズ15は、光源14から射出された光束を略平行光とする。光源14とカップリングレンズ15はアルミニウム製の一つの保持部材に固定され、ユニット化されている。
開口板16は、開口部を有し、カップリングレンズ15を介した光束のビーム径を規定する。
アナモルフィックレンズ17は、開口板16の開口部を通過した光束を、反射ミラー18を介してポリゴンミラー13の偏向反射面近傍に副走査対応方向に関して結像する。
光源14とポリゴンミラー13との間の光路上に配置される光学系は、偏向器前光学系とも呼ばれている。本実施形態では、偏向器前光学系は、カップリングレンズ15と開口板16とアナモルフィックレンズ17と反射ミラー18とから構成されている。
ポリゴンミラー13は、一例として内接円の半径が18mmの6面鏡を有し、各鏡がそれぞれ偏向反射面となる。このポリゴンミラー13は、副走査対応方向に平行な軸の周りを等速回転しながら、反射ミラー18からの光束を偏向する。
偏向器側走査レンズ11aは、ポリゴンミラー13で偏向された光束の光路上に配置されている。
像面側走査レンズ11bは、偏向器側走査レンズ11aを介した光束の光路上に配置されている。そして、この像面側走査レンズ11bを介した光束が、感光体ドラム1030の表面に照射され、光スポットが形成される。この光スポットは、ポリゴンミラー13の回転に伴って感光体ドラム1030の長手方向に移動する。すなわち、感光体ドラム1030上を走査する。このときの光スポットの移動方向が「主走査方向」である。また、感光体ドラム1030の回転方向が「副走査方向」である。
ポリゴンミラー13と感光体ドラム1030との間の光路上に配置される光学系は、走査光学系とも呼ばれている。本実施形態では、走査光学系は、偏向器側走査レンズ11aと像面側走査レンズ11bとから構成されている。なお、偏向器側走査レンズ11aと像面側走査レンズ11bの間の光路上、及び像面側走査レンズ11bと感光体ドラム1030の間の光路上の少なくとも一方に、少なくとも1つの折り曲げミラーが配置されても良い。
光源14は、一例として図3に示されるように、面発光レーザ素子100を有している。なお、本明細書では、レーザ発振方向をZ軸方向とし、Z軸方向に垂直な面内における互いに直交する2つの方向をX軸方向及びY軸方向として説明する。
面発光レーザ素子100は、設計上の発振波長が780nm帯の面発光レーザであり、基板101、下部半導体DBR103、下部スペーサ層104、活性層105、上部スペーサ層106、上部半導体DBR107、コンタクト層109などを有している。
基板101は、n−GaAs単結晶基板である。
下部半導体DBR103は、一例として図4に示されるように、第1の下部半導体DBR1031と、第2の下部半導体DBR1032と、第3の下部半導体DBR1033とを有している。
第1の下部半導体DBR1031は、不図示のバッファ層を介して基板101の+Z側の面上に積層され、n−AlAsからなる低屈折率層103aと、n−Al0.3Ga0.7Asからなる高屈折率層103bのペアを36.5ペア有している。低屈折率層103aは高屈折率層103bよりも熱伝導率が大きい(図23参照)。各屈折率層の間には、電気抵抗を低減するため、一方の組成から他方の組成へ向かって組成を徐々に変化させた組成傾斜層(図示省略)が設けられている。そして、各屈折率層はいずれも、隣接する組成傾斜層の1/2を含んで、発振波長をλとするとλ/4の光学厚さとなるように設定されている。
第2の下部半導体DBR1032は、第1の下部半導体DBR1031の+Z側に積層され、低屈折率層103aと高屈折率層103bのペアを3ペア有している。各屈折率層の間には、電気抵抗を低減するため、一方の組成から他方の組成へ向かって組成を徐々に変化させた組成傾斜層(図示省略)が設けられている。そして、低屈折率層103aは、隣接する組成傾斜層の1/2を含んで、3λ/4の光学厚さとなるように設定され、高屈折率層103bは、隣接する組成傾斜層の1/2を含んで、λ/4の光学厚さとなるように設定されている。この第2の下部半導体DBR1032が、いわゆる「放熱構造体」となる。また、第2の下部半導体DBR1032における低屈折率層103aが、いわゆる「放熱層」となる。
第3の下部半導体DBR1033は、第2の下部半導体DBR1032の+Z側に積層され、低屈折率層103aと高屈折率層103bのペアを1ペア有している。各屈折率層の間には、電気抵抗を低減するため、一方の組成から他方の組成へ向かって組成を徐々に変化させた組成傾斜層(図示省略)が設けられている。そして、各屈折率層はいずれも、隣接する組成傾斜層の1/2を含んで、λ/4の光学厚さとなるように設定されている。
このように、下部半導体DBR103は、低屈折率層と高屈折率層のペアを40.5ペア有している。
下部スペーサ層104は、第3の下部半導体DBR1033の+Z側に積層され、ノンドープの(Al0.1Ga0.9)0.5In0.5Pからなる層である。
活性層105は、下部スペーサ層104の+Z側に積層され、一例として図5に示されるように、3層の量子井戸層105aと4層の障壁層105bとを有している。各量子井戸層105aは、圧縮歪みを誘起する組成であるGaInPAsからなり、バンドギャップ波長が約780nmである。また、各障壁層105bは、引張歪みを誘起する組成であるGa0.6In0.4Pからなる。
上部スペーサ層106は、活性層105の+Z側に積層され、ノンドープの(Al0.1Ga0.9)0.5In0.5Pからなる層である。
下部スペーサ層104と活性層105と上部スペーサ層106とからなる部分は、共振器構造体とも呼ばれており、その厚さが1波長の光学厚さとなるように設定されている。なお、活性層105は、高い誘導放出確率が得られるように、電界の定在波分布における腹に対応する位置である共振器構造体の中央に設けられている。
また、活性層105で発生した熱は、主として下部半導体DBR103を介して基板101に放熱されるようになっている。基板101は、その裏面が導電性接着剤等を用いてパッケージに装着されており、熱は基板101からパッケージに放熱される。
上部半導体DBR107は、上部スペーサ層106の+Z側に積層され、p−Al0.9Ga0.1Asからなる低屈折率層107aと、p−Al0.3Ga0.7Asからなる高屈折率層107bのペアを24ペア有している。そして、各屈折率層の間には、電気抵抗を低減するため、一方の組成から他方の組成へ向かって組成を徐々に変化させた組成傾斜層(図示省略)が設けられている。そして、各屈折率層はいずれも、隣接する組成傾斜層の1/2を含んで、λ/4の光学厚さとなるように設定されている。
上部半導体DBR107における低屈折率層の1つには、p−AlAsからなる被選択酸化層が厚さ30nmで挿入されている。この被選択酸化層の挿入位置は、上部スペーサ層106から光学的に5λ/4離れた位置であり、上部スペーサ層106から3ペア目の低屈折率層中である。
コンタクト層109は、上部半導体DBR107の+Z側に積層され、p−GaAsからなる層である。
なお、このように基板101上に複数の半導体層が積層されたものを、以下では、便宜上「積層体」ともいう。
次に、面発光レーザ素子100の製造方法について簡単に説明する。
(1)上記積層体を有機金属気相成長法(MOCVD法)あるいは分子線エピタキシャル成長法(MBE法)による結晶成長によって作成する。
ここでは、III族の原料には、トリメチルアルミニウム(TMA)、トリメチルガリウム(TMG)、トリメチルインジウム(TMI)を用い、V族の原料にはアルシン(AsH3)ガス、ホスフィン(PH3)ガスを用いている。また、p型ドーパントの原料には四臭化炭素(CBr4)を用い、n型ドーパントの原料にはセレン化水素(H2Se)を用いている。
(2)積層体の表面に一辺が20μmの正方形状のレジストパターンを形成する。
(3)Cl2ガスを用いるECRエッチング法で、正方形状のレジストパターンをフォトマスクとして四角柱状のメサを形成する。ここでは、エッチングの底面は下部スペーサ層104中に位置するようにした(図3参照)。なお、メサの大きさ(1辺の長さ)は10μm以上とすることが好ましい。あまり小さいと動作時に熱がこもり、特性が低下するおそれがあるからである。
(4)フォトマスクを除去する。
(5)積層体を水蒸気中で熱処理する。ここでは、メサの外周部から被選択酸化層中のAlが選択的に酸化される。そして、メサの中央部に、Alの酸化層108aによって囲まれた酸化されていない領域108bを残留させる(図3参照)。これにより、発光部の駆動電流の経路をメサの中央部だけに制限する、酸化狭窄構造体が形成される。上記酸化されていない領域108bが電流通過領域(電流注入領域)である。ここでは、種々の予備実験の結果から、電流通過領域108bが所望の大きさとなるように、熱処理の条件(保持温度、保持時間等)を適切に選択している。
(6)気相化学堆積法(CVD法)を用いて、SiNあるいはSiO2からなる保護層111を形成する(図3参照)。
(7)ポリイミド112で平坦化する(図3参照)。
(8)メサ上部にP側電極コンタクトの窓開けを行う。ここでは、フォトレジストによるマスクを施した後、メサ上部の開口部を露光してその部分のフォトレジストを除去した後、BHFにてポリイミド112及び保護層111をエッチングして開口する。
(9)メサ上部の光出射部となる領域に一辺10μmの正方形状のレジストパターンを形成し、p側の電極材料の蒸着を行なう。p側の電極材料としてはCr/AuZn/Auからなる多層膜、もしくはTi/Pt/Auからなる多層膜が用いられる。
(10)光出射部の電極材料をリフトオフし、p側の電極113を形成する(図3参照)。
(11)基板101の裏側を所定の厚さ(例えば100μm程度)まで研磨した後、n側の電極114を形成する(図3参照)。ここでは、n側の電極114はAuGe/Ni/Auからなる多層膜である。
(12)アニールによって、p側の電極113とn側の電極114のオーミック導通をとる。これにより、メサは発光部となる。
(13)チップ毎に切断する。
ここで、下部半導体DBR103が、仮に40.5ペアからなる第1の下部半導体DBR1031のみで構成される第1の場合(図6参照)と、37.5ペアからなる第1の下部半導体DBR1031と3ペアからなる第2の下部半導体DBR1032とで構成される第2の場合(図7参照)と、本実施形態と同様に36.5ペアからなる第1の下部半導体DBR1031と3ペアからなる第2の下部半導体DBR1032と1ペアからなる第3の下部半導体DBR1033とで構成される第3の場合とについて吸収損失を計算した。第1の場合に対する第2の場合の吸収損失の増加量を100%とすると、第1の場合に対する第3の場合の吸収損失の増加量は約77%であった。すなわち、第3の下部半導体DBR1033によって、吸収損失の増加量を約23%低減することができることがわかった。なお、第3の下部半導体DBR1033におけるペア数を3ペアとした場合(図8参照)には、第1の場合に対する吸収損失の増加量は約46%であった。
なお、不純物濃度(不純物のドーピング濃度)を3×1018(cm−3)、及び5×1018(cm−3)としても、吸収損失の低減効果は同様であった。また、波長を変えても吸収損失の低減効果は同様であった。さらに、第2の下部半導体DBR1032におけるペア数を5ペアとしても、吸収損失の低減効果は同様であった。
そして、本実施形態における下部半導体DBR103の熱抵抗を計算すると、2720(K/W)であった。一方、上記第1の場合(図6参照)及び上記第2の場合(図7参照)の熱抵抗を計算すると、それぞれ3050(K/W)及び2670(K/W)であった。このことから、下部半導体DBR103の熱抵抗に関して、第3の下部半導体DBR1033は、ほとんど悪影響を及ぼさないことがわかる。
図9には、第3の下部半導体DBR1033のペア数と下部半導体DBR103の熱抵抗との関係が示されている。これによると、第3の下部半導体DBR1033のペア数が5ペアを超えると、第2の下部半導体DBR1032による放熱効果が半分以下となってしまう。このことから、第3の下部半導体DBR1033におけるペア数は1〜5ペアとするのが好ましい。
ところで、放熱層は、吸収損失を増加させるだけでなく、その上に積層される層の結晶性の低下をも引き起こすおそれがある。放熱層の上側(ここでは、+Z側)に積層される活性層の結晶性が低下すると、発光効率の低下を招く。仮に、下部半導体DBR103全体を40.5ペアからなる第2の下部半導体DBR1032とすると放熱効果は高いが活性層の結晶性を維持することは困難となる。このため、第2の下部半導体DBR1032におけるペア数は1〜5ペアとするのが好ましい。そして、第3の下部半導体DBR1033は、その上に積層される層の結晶性を回復させ、活性層への悪影響を低減させる効果もある。
また、酸化狭窄構造体を有する面発光レーザは、製造工程において、電気的または空間的に周囲と分離するためにメサ形状等のエッチングを行なう。このとき、Alの選択酸化ができるように被選択酸化層よりも深くエッチングする必要がある。被選択酸化層は、電流の広がりを抑える目的から、p側の半導体DBR(活性層よりも上側に設けられた上部半導体DBR)の活性層に近く、レーザ光の電界の定在波分布における活性層から1〜5番目の節に対応する位置に設けられるのが一般的である。しかしながら、エッチング深さの制御性の問題から、エッチング底面を被選択酸化層よりも深く、かつ、下部半導体DBRに至らないように制御することは困難である。特に、ウエハ面内の全体でエッチング深さを制御するには、エッチング時間の制御の他に、ウエハ面内でのエッチングの均一化、更には、結晶成長層の厚さの均一化が必要であり、エッチング底面が下部半導体DBRに至らないようにエッチングすることは、生産上、極めて困難である。
このため、下部半導体DBRを2段構成にすることが提案された(例えば、特開2003−347670号公報参照)。この提案においては、下部半導体DBRにおける基板側の大部分の低屈折率層にAlGaAsよりも熱伝導率が格段に大きいAlAsが用いられている。そして、下部半導体DBRにおける活性層側の低屈折率層には、従来のAlGaAsが用いられている。この場合には、共振器構造体に近い低屈折率層の熱伝導率を大きくすることは困難である。
本実施形態に係る面発光レーザ素子100では、半導体DBRの主たる材料をAlGaAs系材料とし、共振器構造体の材料をInを含むAlGaInPAs系材料としている。この場合には、共振器構造体のエッチング速度を半導体DBRのエッチング速度より小さくすることができる。これにより、エッチング底面が共振器構造体に達したことを、エッチングモニタで容易に検出することができる、そして、共振器構造体の中心付近まで精度良くエッチングすることができ、キャリアが拡がることを低減し、発振に寄与しないキャリアを低減することが可能となる。
以上の説明から明らかなように、本実施形態に係る面発光レーザ素子100では、下部半導体DBR103によって第1の半導体多層膜反射鏡が構成され、上部半導体DBR107によって第2の半導体多層膜反射鏡が構成されている。そして、第2の下部半導体DBR1032によって第1の部分反射鏡が構成され、第3の下部半導体DBR1033によって第2の部分反射鏡が構成されている。
また、高屈折率層103bによって第1の層が構成され、低屈折率層103aによって第2の層が構成されている。
以上説明したように、本実施形態に係る面発光レーザ素子100によると、活性層105を含む共振器構造体と、該共振器構造体を挟んで設けられ、低屈折率層と高屈折率層をペアとする複数のペアからなる下部半導体DBR103及び上部半導体DBR107とを備えている。そして、下部半導体DBR103は、熱伝導率の大きいn−AlAsからなる低屈折率層103aとそれよりも熱伝導率の小さいn−Al0.3Ga0.7Asからなる高屈折率層103bをペアとし、36.5ペアを有する第1の下部半導体DBR1031、3ペアを有する第2の下部半導体DBR1032、及び1ペアを有する第3の下部半導体DBR1033を含んでいる。
第2の下部半導体DBR1032では、低屈折率層103aは、隣接する組成傾斜層の1/2を含んで、3λ/4の光学厚さとなるように設定され、高屈折率層103bは、隣接する組成傾斜層の1/2を含んで、λ/4の光学厚さとなるように設定されている。
第3の下部半導体DBR1033は、共振器構造体と第2の下部半導体DBR1032との間に設けられ、各屈折率層はいずれも、隣接する組成傾斜層の1/2を含んで、λ/4の光学厚さとなるように設定されている。
これにより、吸収損失の増加を抑制しつつ、放熱効率を向上させることができるため、長寿命で、高い発光効率及び優れた温度特性を有することが可能となる。
本実施形態に係る光走査装置1010によると、光源14が面発光レーザ素子100を有しているため、安定した光走査を行うことが可能となる。
本実施形態に係るレーザプリンタ1000によると、光走査装置1010を備えているため、高品質の画像を形成することが可能となる。
また、面発光レーザ素子の寿命が格段に向上するので、書込みユニットもしくは光源ユニットの再利用が可能となる。
なお、上記実施形態では、第2の下部半導体DBR1032において、低屈折率層103aが、隣接する組成傾斜層の1/2を含んで、3λ/4の光学厚さとなるように設定される場合について説明したが、これに限定されるものではなく、低屈折率層103aが、隣接する組成傾斜層の1/2を含んで、1以上の整数nを用いて、(2n+1)λ/4を満足する光学厚さであれば良い。
また、上記実施形態では、第2の下部半導体DBR1032が低屈折率層103aと高屈折率層103bのペアを3ペア有する場合について説明したが、これに限定されるものではない。
また、上記実施形態では、第3の下部半導体DBR1033が低屈折率層103aと高屈折率層103bのペアを1ペア有する場合について説明したが、これに限定されるものではない。第3の下部半導体DBR1033は、低屈折率層103aと高屈折率層103bのペアを1ペア〜5ペア有していれば良い。
また、上記実施形態では、レーザ発振方向に直交する断面でのメサ形状が正方形の場合について説明したが、これに限定されるものではなく、例えば円形、楕円形あるいは長方形など任意の形状とすることができる。
また、上記実施形態において、下部半導体DBR103の共振器構造体に近い部分の不純物濃度を、他の部分よりも相対的に低くしても良い。吸収量は不純物濃度の増加に伴って増えるので、吸収の影響が大きい部分の不純物濃度を、吸収の影響が小さい部分の不純物濃度より相対的に低くすることで、低屈折率層の厚さを厚くしたことによる吸収量の増加を抑えることができる。例えば、下部半導体DBR103の共振器構造体に隣接する4ペアでの不純物濃度を5×1017(cm−3)とし、その他の不純物濃度を1×1018(cm−3)としても良い。
また、上記実施形態では、発光部の発振波長が780nm帯の場合について説明したが、これに限定されるものではない。感光体の特性に応じて、発光部の発振波長を変更しても良い。
また、面発光レーザ素子100は、画像形成装置以外の用途に用いることができる。その場合には、発振波長は、その用途に応じて、650nm帯、850nm帯、980nm帯、1.3μm帯、1.5μm帯等の波長帯であっても良い。
一例として図10には、設計上の発振波長が850nm帯の面発光レーザ素子100Aが示されている。
この面発光レーザ素子100Aは、基板201、下部半導体DBR203、下部スペーサ層204、活性層205、上部スペーサ層206、上部半導体DBR207、及びコンタクト層209などを有している。
基板201は、n−GaAs単結晶基板である。
下部半導体DBR203は、一例として図11に示されるように、第1の下部半導体DBR2031と、第2の下部半導体DBR2032と、第3の下部半導体DBR2033とからなっている。
第1の下部半導体DBR2031は、不図示のバッファ層を介して基板201の+Z側の面上に積層され、n−AlAsからなる低屈折率層203aとn−Al0.1Ga0.9Asからなる高屈折率層203bのペアを30.5ペア有している。低屈折率層203aは高屈折率層203bよりも熱伝導率が大きい(図23参照)。各屈折率層の間には、電気抵抗を低減するため、一方の組成から他方の組成へ向かって組成を徐々に変化させた組成傾斜層(図示省略)が設けられている。そして、各屈折率層はいずれも、隣接する組成傾斜層の1/2を含んで、発振波長をλとするとλ/4の光学厚さとなるように設定されている。
第2の下部半導体DBR2032は、第1の下部半導体DBR2031の+Z側に積層され、低屈折率層203aと高屈折率層203bのペアを5ペア有している。各屈折率層の間には、電気抵抗を低減するため、一方の組成から他方の組成へ向かって組成を徐々に変化させた組成傾斜層(図示省略)が設けられている。そして、低屈折率層203aは、隣接する組成傾斜層の1/2を含んで、3λ/4の光学厚さとなるように設定され、高屈折率層203bは、隣接する組成傾斜層の1/2を含んで、λ/4の光学厚さとなるように設定されている。
第3の下部半導体DBR2033は、第2の下部半導体DBR2032の+Z側に積層され、低屈折率層203aと高屈折率層203bのペアを1ペア有している。各屈折率層の間には、電気抵抗を低減するため、一方の組成から他方の組成へ向かって組成を徐々に変化させた組成傾斜層(図示省略)が設けられている。そして、各屈折率層はいずれも、隣接する組成傾斜層の1/2を含んで、λ/4の光学厚さとなるように設定されている。
下部スペーサ層204は、第3の下部半導体DBR2033の+Z側に積層され、ノンドープのAl0.4Ga0.6Asからなる層である。
活性層205は、下部スペーサ層204の+Z側に積層され、一例として図12に示されるように、3層の量子井戸層205aと4層の障壁層205bとを有している。各量子井戸層205aは、Al0.12Ga0.88Asからなり、各障壁層205bは、Al0.3Ga0.7Asからなる。
上部スペーサ層206は、活性層205の+Z側に積層され、ノンドープのAl0.4Ga0.6Asからなる層である。
下部スペーサ層204と活性層205と上部スペーサ層206とからなる部分は、共振器構造体とも呼ばれており、その厚さが1波長の光学厚さとなるように設定されている。なお、活性層205は、高い誘導放出確率が得られるように、電界の定在波分布における腹に対応する位置である共振器構造体の中央に設けられている。また、活性層205で発生した熱は、主として下部半導体DBR203を介して基板201に放熱されるようになっている。
上部半導体DBR207は、上部スペーサ層206の+Z側に積層され、p−Al0.9Ga0.1Asからなる低屈折率層207aと、p−Al0.1Ga0.9Asからなる高屈折率層207bのペアを24ペア有している。そして、各屈折率層の間には、電気抵抗を低減するため、一方の組成から他方の組成へ向かって組成を徐々に変化させた組成傾斜層(図示省略)が設けられている。そして、各屈折率層はいずれも、隣接する組成傾斜層の1/2を含んで、λ/4の光学厚さとなるように設定されている。
上部半導体DBR207における低屈折率層の1つには、p−AlAsからなる被選択酸化層が厚さ30nmで挿入されている。この被選択酸化層の挿入位置は、上部スペーサ層206から光学的にλ/4離れた位置である。
コンタクト層209は、上部半導体DBR207の+Z側に積層され、p−GaAsからなる層である。
この面発光レーザ素子100Aは、前記面発光レーザ素子100と同様にして製造することができる。なお、図10における符号211は保護層、符号212はポリイミド、符号213はp側の電極、符号214はn側の電極、符号208aは酸化層、符号208bは電流通過領域である。この場合であっても、前記面発光レーザ素子100と同様な効果を得ることができる。
また、上記実施形態において、光源14は、前記面発光レーザ素子100に代えて、一例として図13に示される面発光レーザアレイ500を有しても良い。
この面発光レーザアレイ500は、複数(ここでは32個)の発光部が同一基板上に配置されている。ここでは、図13におけるM方向は主走査対応方向であり、S方向は副走査対応方向である。なお、発光部の数は32個に限定されるものではない。
面発光レーザアレイ500は、図14に示されるように、M方向からS方向に向かって傾斜した方向であるT方向に沿って8個の発光部が等間隔に配置された発光部列を4列有している。そして、これら4列の発光部列は、すべての発光部をS方向に伸びる仮想線上に正射影したときに等間隔cとなるように、S方向に等間隔dで配置されている。すなわち、32個の発光部は、2次元的に配列されている。なお、本明細書では、「発光部間隔」とは2つの発光部の中心間距離をいう。
ここでは、間隔cは3μm、間隔dは24μm、M方向の発光部間隔X(図14参照)は30μmである。
各発光部は、図14のA−A断面図である図15に示されるように、前述した面発光レーザ素子100と同様な構造を有している。そして、この面発光レーザアレイ500は、前述した面発光レーザ素子100と同様な方法で製造することができる。
ところで、通常、結晶成長層の厚さのばらつきやエッチング速度の基板(ウエハ)面内でのばらつきにより、所望のエッチング深さは発光部毎に異なる。しかしながら、エッチング深さを、全ての発光部について、エッチング底面が、被選択酸化層より深く、かつ被選択酸化層と同等のAl組成を有する下部半導体DBRの低屈折率層に至らないように制御することは困難である。
特に、面発光レーザアレイでは、発光部間隔の違いによりエッチング幅が異なるとエッチング速度が変化する。この場合には、上記ばらつきがなかったとしても、エッチング深さは発光部毎に異なってしまう。
面発光レーザアレイ500では、半導体DBRの主たる材料をAlGaAs系材料とし、共振器構造体の材料をInを含むAlGaInPAs系材料としているため、共振器構造体でのエッチング速度を半導体DBRでのエッチング速度よりも小さくすることができる。これにより、ウエハ面内、及びアレイチップ内では、下部半導体DBRまでエッチングが進まずに、エッチング底面が共振器構造体中に留まるように制御することができる。
このように、面発光レーザアレイ500では、エッチングを停止させる層を所定の位置に設けたのではなく、エッチング速度を遅くしているので、エッチングモニタでエッチング底面が共振器構造体に達したことがわかり、容易に制御できる。また、共振器構造体の中心付近までエッチングすることでキャリアが拡がることを低減し、発振に寄与しないキャリアを低減できる。
なお、エッチングを停止させる層を所定の位置に設ける場合には、深さ方向(ここでは、−Z方向)にはエッチングが進まないようにできるが、横方向(ここでは、XY平面に平行な方向)にはエッチングが進むため、メササイズがロット間で変動するなどの不都合が生じる。
また、面発光レーザアレイ500は、32ch(チャンネル)のマルチビーム光源であるが、放熱対策を施してあるので周辺の発光部への熱干渉が互いに抑えられており、同時に複数の発光部を駆動した時の特性変化は小さく、長寿命であった。
また、面発光レーザアレイ500では、各発光部を副走査対応方向に延びる仮想線上に正射影したときの発光部間隔が等間隔cであるので、点灯のタイミングを調整することで感光体ドラム1030上では副走査方向に等間隔で発光部が並んでいる場合と同様な構成と捉えることができる。
そして、上記間隔cが3μmであるため、光走査装置1010の光学系の倍率を約1.8倍とすれば、4800dpi(ドット/インチ)の高密度書込みができる。もちろん、主走査対応方向の発光部数を増加したり、前記間隔dを狭くして間隔cを更に小さくするアレイ配置としたり、光学系の倍率を下げる等を行えばより高密度化でき、より高品質の印刷が可能となる。なお、主走査方向の書き込み間隔は、発光部の点灯のタイミングで容易に制御できる。
また、この場合には、レーザプリンタ1000では書きこみドット密度が上昇しても印刷速度を落とすことなく印刷することができる。また、同じ書きこみドット密度の場合には印刷速度を更に速くすることができる。
ところで、2つの発光部の間の溝は、各発光部の電気的及び空間的分離のために、5μm以上とすることが好ましい。あまり狭いと製造時のエッチングの制御が難しくなるからである。
また、上記実施形態では、画像形成装置としてレーザプリンタ1000の場合について説明したが、これに限定されるものではない。
例えば、レーザ光によって発色する媒体(例えば、用紙)に直接、レーザ光を照射する画像形成装置であっても良い。
また、像担持体として銀塩フィルムを用いた画像形成装置であっても良い。この場合には、光走査により銀塩フィルム上に潜像が形成され、この潜像は通常の銀塩写真プロセスにおける現像処理と同等の処理で可視化することができる。そして、通常の銀塩写真プロセスにおける焼付け処理と同等の処理で印画紙に転写することができる。このような画像形成装置は光製版装置や、CTスキャン画像等を描画する光描画装置として実施できる。
また、一例として図16に示されるように、複数の感光体ドラムを備えるカラープリンタ2000であっても良い。
このカラープリンタ2000は、4色(ブラック、シアン、マゼンタ、イエロー)を重ね合わせてフルカラーの画像を形成するタンデム方式の多色カラープリンタであり、ブラック用の「感光体ドラムK1、帯電装置K2、現像装置K4、クリーニングユニットK5、及び転写装置K6」と、シアン用の「感光体ドラムC1、帯電装置C2、現像装置C4、クリーニングユニットC5、及び転写装置C6」と、マゼンタ用の「感光体ドラムM1、帯電装置M2、現像装置M4、クリーニングユニットM5、及び転写装置M6」と、イエロー用の「感光体ドラムY1、帯電装置Y2、現像装置Y4、クリーニングユニットY5、及び転写装置Y6」と、光走査装置2010と、転写ベルト2080と、定着ユニット2030などを備えている。
各感光体ドラムは、図16中の矢印の方向に回転し、各感光体ドラムの周囲には、回転順にそれぞれ帯電装置、現像装置、転写装置、クリーニングユニットが配置されている。各帯電装置は、対応する感光体ドラムの表面を均一に帯電する。帯電装置によって帯電された各感光体ドラム表面に光走査装置2010により光が照射され、各感光体ドラムに潜像が形成されるようになっている。そして、対応する現像装置により各感光体ドラム表面にトナー像が形成される。さらに、対応する転写装置により、転写ベルト2080上の記録紙に各色のトナー像が転写され、最終的に定着ユニット2030により記録紙に画像が定着される。
光走査装置2010は、前記面発光レーザ素子100と同様な面発光レーザ素子、及び前記面発光レーザアレイ500と同様な面発光レーザアレイのいずれかを含む光源を、色毎に有している。そこで、上記光走査装置1010と同様の効果を得ることができる。また、カラープリンタ2000は、この光走査装置2010を備えているため、上記レーザプリンタ1000と同様の効果を得ることができる。
ところで、カラープリンタ2000では、各部品の製造誤差や位置誤差等によって色ずれが発生する場合がある。このような場合であっても、光走査装置2010の各光源が前記面発光レーザアレイ500と同様な面発光レーザアレイを有していると、点灯させる発光部を選択することで色ずれを低減することができる。
図17には、本発明の一実施形態に係る光伝送システム3000の概略構成が示されている。この光伝送システム3000は、光送信モジュール3001と光受信モジュール3005が光ファイバケーブル3004で接続されており、光送信モジュール3001から光受信モジュール3005への一方向の光通信が可能となっている。
光送信モジュール3001は、光源3002と、外部から入力された電気信号に応じて、光源3002から出力されるレーザ光の光強度を変調する駆動回路3003とを有している。
光源3002は、一例として図18に示されるように、面発光レーザアレイ600を有している。
この面発光レーザアレイ600では、複数(ここでは10個)の発光部が同一基板上に1次元配列されている。なお、発光部の数は10個に限定されるものではない。
面発光レーザアレイ600の各発光部は、設計上の発振波長が1.3μm帯の面発光レーザであり、図18のA−A断面図である図19に示されるように、基板301、下部半導体DBR303、下部スペーサ層304、活性層305、上部スペーサ層306、上部半導体DBR307、及びコンタクト層309などを有している。
基板301は、n−GaAs単結晶基板である。
下部半導体DBR303は、一例として図20に示されるように、第1の下部半導体DBR3031と、第2の下部半導体DBR3032と、第3の下部半導体DBR3033とを有している。
第1の下部半導体DBR3031は、不図示のバッファ層を介して基板301の+Z側の面上に積層され、n−AlAsからなる低屈折率層303aと、n−GaAsからなる高屈折率層103bのペアを30.5ペア有している。低屈折率層303aは高屈折率層303bよりも熱伝導率が大きい。各屈折率層の間には、電気抵抗を低減するため、一方の組成から他方の組成へ向かって組成を徐々に変化させた組成傾斜層(図示省略)が設けられている。そして、各屈折率層はいずれも、隣接する組成傾斜層の1/2を含んで、発振波長をλとするとλ/4の光学厚さとなるように設定されている。
第2の下部半導体DBR3032は、第1の下部半導体DBR3031の+Z側に積層され、低屈折率層303aと高屈折率層303bのペアを5ペア有している。各屈折率層の間には、電気抵抗を低減するため、一方の組成から他方の組成へ向かって組成を徐々に変化させた組成傾斜層(図示省略)が設けられている。そして、低屈折率層303aは、隣接する組成傾斜層の1/2を含んで、3λ/4の光学厚さとなるように設定され、高屈折率層303bは、隣接する組成傾斜層の1/2を含んで、λ/4の光学厚さとなるように設定されている。
第3の下部半導体DBR3033は、第2の下部半導体DBR3032の+Z側に積層され、低屈折率層303aと高屈折率層303bのペアを1ペア有している。各屈折率層の間には、電気抵抗を低減するため、一方の組成から他方の組成へ向かって組成を徐々に変化させた組成傾斜層(図示省略)が設けられている。そして、各屈折率層はいずれも、隣接する組成傾斜層の1/2を含んで、λ/4の光学厚さとなるように設定されている。
下部スペーサ層304は、第3の下部半導体DBR3033の+Z側に積層され、ノンドープのGaAsからなる層である。
活性層305は、下部スペーサ層304の+Z側に積層され、一例として図21に示されるように、3層の量子井戸層305aと4層の障壁層305bとを有している。各量子井戸層305aはGaInNAsからなる層であり、各障壁層305bはGaAsからなる層である。
上部スペーサ層306は、活性層305の+Z側に積層され、ノンドープのGaAsからなる層である。
下部スペーサ層304と活性層305と上部スペーサ層306とからなる部分は、共振器構造体とも呼ばれており、その厚さが1波長の光学厚さとなるように設定されている。なお、活性層305は、高い誘導放出確率が得られるように、電界の定在波分布における腹に対応する位置である共振器構造体の中央に設けられている。また、活性層305で発生した熱は、主として下部半導体DBR303を介して放熱されるようになっている。
上部半導体DBR307は、上部スペーサ層306の+Z側に積層され、低屈折率層307aとp−GaAsからなる高屈折率層307bのペアを26ペア有している。各屈折率層の間には、電気抵抗を低減するため、一方の組成から他方の組成へ向かって組成を徐々に変化させた組成傾斜層(図示省略)が設けられている。そして、各屈折率層はいずれも、隣接する組成傾斜層の1/2を含んで、λ/4の光学厚さとなるように設定されている。
上部半導体DBR307における低屈折率層の1つには、p−AlAsからなる被選択酸化層が厚さ20nmで挿入されている。この被選択酸化層の挿入位置は、上部スペーサ層306から光学的に5λ/4離れている。
なお、被選択酸化層が含まれる低屈折率層は、p−Al0.6Ga0.4Asからなる層であり、他の低屈折率層は、p−Al0.9Ga0.1Asからなる層である。また、被選択酸化層が含まれる低屈折率層では、被選択酸化層に隣接して厚さ35nmのp−Al0.8Ga0.2Asからなる中間層(図示省略)が設けられている。
この面発光レーザアレイ600は、前記面発光レーザ素子100と同様にして製造することができる。なお、図19における符号311は保護層、符号312はポリイミド、符号313はp側の電極、符号314はn側の電極、符号308aは酸化層、符号308bは電流通過領域である。
この面発光レーザアレイ600は、各発光部の下部半導体DBR303が、前記面発光レーザ素子100の下部半導体DBR103と同様な構成を有しているため、前記面発光レーザアレイ500と同様な効果を得ることができる。
なお、メサを形成する際にエッチングを共振器構造体中で停止させるため、スペーサ層として、GaAsからなる層に代えてIn(インジウム)を含むGaInPからなる層を用いても良い。
光源3002から出力された光信号は、光ファイバケーブル3004に結合し、該光ファイバケーブル3004を導波して光受信モジュール3005に入力される。なお、光ファイバケーブル3004は、一例として図22に示されるように、面発光レーザアレイ600の複数の発光部にそれぞれ対応する複数の光ファイバを有している。
光受信モジュール3005は、光信号を電気信号に変換する受光素子3006と、受光素子3006から出力された電気信号に対して信号増幅、及び波形整形等を行う受信回路3007とを有している。
本実施形態に係る光送信モジュール3001によると、光源3002が面発光レーザアレイ600を有しているため、安定した光信号を生成することが可能となる。その結果として、光伝送システム3000は、高品質の光伝送を行うことが可能となる。
そこで、光伝送システム3000は、家庭用、オフィスの室内用、機器内用等の短距離のデータ通信にも有効である。
また、均一な特性を有する複数の発光部が同一基板上に集積されているため、容易に、同時に多数ビームによるデータ伝送が可能となり、高速通信ができる。
さらに、面発光レーザは低消費電力で動作するので、特に機器の中に組み込んで利用した場合、温度上昇を低減させることができる。
なお、ここでは、発光部と光ファイバとを1対1に対応させる場合について説明したが、発振波長の異なる複数の面発光レーザ素子を1次元又は2次元にアレイ状に配置して、波長多重送信することにより伝送速度をさらに増大させることも可能である。
また、ここでは、一方向通信の構成例を示しているが、双方向通信の構成をとることもできる。