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JP4855321B2 - 吹付け材料及びそれを用いた吹付け工法 - Google Patents

吹付け材料及びそれを用いた吹付け工法 Download PDF

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JP4855321B2 JP2007100055A JP2007100055A JP4855321B2 JP 4855321 B2 JP4855321 B2 JP 4855321B2 JP 2007100055 A JP2007100055 A JP 2007100055A JP 2007100055 A JP2007100055 A JP 2007100055A JP 4855321 B2 JP4855321 B2 JP 4855321B2
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Description

本発明は、セメント系の吹付材料に関する。
直径が2〜5mの小断面の導水路トンネル等は、トンネルボーリングマシン(TBM)で掘削されるケースが多く、掘削後の岩盤の安定化に吹付コンクリートが用いられている。しかしながら、従来の吹付けでは大型の施工機械を使用し、使用するコンクリートを坑外から搬入したりなければならないため、作業スペースやコンクリートの作業時間を制約してしまうという課題があった。
この課題を解決する手段として、バッチ練りのモルタルと、カルシウムアルミネートを含有する急硬材スラリーを併用して、作業時間の短縮と作業環境とを改善した吹付工法(特許文献1)や、TBMで掘削できる小断面トンネルにおいて、施工性を高めた吹付材料として、セメント、最大粒径2.5mmの骨材、消石灰含有物質、及びアルカリ金属アルミン酸塩を含有する吹付材料(特許文献2)が提案されている。
しかしながら、カルシウムアルミネートを含有する急硬材スラリーを用いた場合、吹付け直後の急結性を改良する必要があった。又、セメント、最大粒径2.5mmの骨材、消石灰含有物質、及びアルカリ金属アルミン酸塩を含有する吹付材料は、アルカリ金属アルミン酸塩を使用しているため、作業員への薬傷対策を十分配慮する必要があった。そのために、作業員は吹付け時には完全防護具を着用しなければならず、作業性が劣ってしまうという課題があった。さらに、長期強度の発現性や耐久性の点を改良する必要があった。
作業員への薬傷対策や長期強度の耐久性の改善を講じた吹付け材料(特許文献3)が開発されたが、この材料は水和活性の高いカルシウムアルミネートを使用しており、水と混練後の材料圧送性を確保するために多量の有機酸を使用してカルシウムアルミネートの水和を抑制しているが、一方で、低温環境下では有機酸の遅延の影響が大きく、優れた急結性状が得られずに厚く吹き付けることができず、吹付け後に吹付け面が剥落する場合があった。
また、吹付け材料のリバウンドを低減すべく、開発が行われているが(非特許文献4)、施工コスト低減や施工速度向上の観点から、さらなる削減が必要である。
さらに、高性能化した酸性液体急結剤とアルカリ金属炭酸塩及び/又はアルカリ金属リン酸塩含有のセメントコンクリートとを含有してなる吹付け材料が開発された(特許文献5)。しかしながら、リバウンド率に関しては課題があり、さらにリバウンド率を低減した高い技術が求められていた。
本発明者は、前記課題を解消すべく種々検討を重ねた結果、特定の吹付材料の使用により、前記課題を解消される知見を得て本発明を完成するに至った。
特開平3−122040号 特開平9−227198号 特開2000−1355号 川添 純雄ほか、アルカリフリー液体急結剤を用いた吹付けコンクリートの適応と評価、pp.47−56、鴻池組技術研究報告、2002 特開2005−35856号
本発明は、人体への安全性が高く、材料の圧送性が良好で、低温時でも優れた物性が得られ、リバウンドの少ない吹付け材料を提供することを目的とする。
本発明は、上記の課題を解決するために、以下の手段を採用する。
(1)カルシウムアルミノシリケート、硫酸カルシウム、早強セメント、および最大粒径1.2mm以下の骨材を含有するモルタル100部と、アルカリ金属元素及び/又はフッ素を含む酸性液体急結剤を固形分換算で1〜5部を含有してなる吹付け材料であり、モルタル100部中、カルシウムアルミノシリケートが1〜10部、硫酸カルシウムが1〜10部、早強セメントが20〜55部、および最大粒径1.2mm以下の骨材が40〜70部であり、最大粒径1.2mm以下の骨材100部中、0.6〜1.2mmの骨材が20〜70部、0.6mm未満の骨材が80〜30部である吹付け材料。
(2)酸性液体急結剤の固形分濃度が、25〜70%である前記(1)に記載の吹付け材料。
(3)最大粒径1.2mm以下の骨材が石灰石である前記(1)又は前記(2)に記載の吹付け材料。
(4)酸性液体急結剤100部中に、アルカリ金属元素がRO換算(Rはアルカリ金属)で1〜5部含有してなる前記(1)〜(3)のいずれか一項に記載の吹付け材料。
(5)酸性液体急結剤100部中に、フッ素を1〜5部含有してなる前記(1)〜(4)のいずれか一項に記載の吹付け材料。
(6)カルシウムアルミノシリケート、硫酸カルシウム、早強セメント、及び最大粒径1.2mm以下の骨材を含有するモルタル100体積部に対して、繊維を0.2〜1.2体積部含有してなる前記(1)〜(5)のいずれか一項に記載の吹付け材料。
(外割)
(7)カルシウムアルミノシリケート、硫酸カルシウム、早強セメント、および最大粒径1.2mm以下の骨材を含有するモルタル100部に対して、水酸化カルシウムを0.5〜5部含有してなる前記(1)〜(6)のいずれか一項に記載の吹付け材料。
(8)カルシウムアルミノシリケート、硫酸カルシウム、早強セメント、および最大粒径1.2mm以下の骨材を含有するモルタル100部に対して、1A族元素を含有するヒドロキシル酸塩を0.005〜0.5部含有してなる前記(1)〜(7)のいずれか一項に記載の吹付け材料。
(9)前記(1)〜(8)のいずれか一項に記載の吹付け材料を用いる吹付け工法において、カルシウムアルミノシリケート、硫酸カルシウム、早強セメント、および最大粒径1.2mm以下の骨材を含有するモルタルを混合してプレミックスモルタルとし、プレミックスモルタルを水で混練し、水で混練したプレミックスモルタルと酸性液体急結剤とを吹付け直前に混合する吹付け工法。
(10)プレミックスモルタルと水を、連続的に水を供給する連続練りミキサーを使用して混練し、混練したモルタルを圧送後、吹付け直前に酸性液体急結剤と混合して吹付ける前記(9)に記載の吹付け工法。
本発明の吹付け材料及び吹付け工法を用いることにより、小断面トンネルのような狭い作業空間での吹付け作業においても、作業者の安全性の高い環境が確保できる。又、吹付後の初期強度や長期強度が高いために、吹付け厚さが2〜3cmでも、掘削後の地山や岩盤を安定化させることができる。さらに、連続ミキサーポンプを使用することにより、作業効率が高まる。
以下、本発明を詳細に説明する。なお、本発明における部や%は、特に規定のない限り質量基準である。
本発明において、カルシウムアルミノシリケート、硫酸カルシウム、早強セメントのセメント系材料、最大粒径1.2mm以下の骨材を含有してなる材料をモルタルと呼ぶ。
本発明で使用するカルシウムアルミノシリケートは、本発明の酸性液体急結剤と反応して、初期に急結性を付与する成分である。カルシウムアルミノシリケートとは、カルシアを含む原料、アルミナを含む原料およびシリカを含む原料とを混合して、キルンでの焼成や、電気炉での溶融等の熱処理をして得られる。主たる成分はCaO―Al―SiOであり、水和活性を有する物質の総称である。この成分の一部が、アルカリ金属酸化物、アルカリ土類金属酸化物、酸化チタン、酸化鉄、アルカリ金属ハロゲン化物、アルカリ土類金属ハロゲン化物、アルカリ金属硫酸塩、及びアルカリ土類金属硫酸塩等と置換した化合物も使用可能である。結晶構造は、結晶質、非晶質いずれであってもよいが、高い急結性を付与することから非晶質のものを用いることが好ましい。
カルシウムアルミノシリケート100部中の各成分の割合は、CaOが20〜60部、Alが20〜60部、及びSiOが6〜50部であることが好ましく、より好ましくは、CaOが30〜50部、Alが30〜50部、及びSiOが10〜30部である。各成分の割合がこの範囲外では、良好な急結性状が得られない場合や、水和活性が過剰となり、水と混練後の材料圧送性が悪くなる場合がある。
カルシウムアルミノシリケートの粒度は、ブレーン値で5000〜12000cm/gが好ましい。5000cm/g未満だと急結性や初期強度発現性が低下するおそれがあり、12000cm/gを超えると、粉砕の効率が低下し、安定したブレーン値が得られない場合がある。
カルシウムアルミノシリケートの使用量は、作業性、初期強度発現性、及び耐久性の点で、モルタル100部中、1〜10部が好ましく、1.5〜5部がより好ましい。1部未満だと凝結力や強度発現性が低下するおそれがあり、10部を越えるとモルタルの可使時間を確保できにくく、耐久性が得られないおそれがある。
本発明では、硫酸カルシウムを使用することで強度発現性を向上させることが可能である。硫酸カルシウムとしては、無水石膏、半水石膏及び二水石膏等が挙げられ、これらの中から選ばれた1種又は2種以上が使用可能である。無水石膏には、弗酸副生無水石膏や天然無水石膏が含まれる。これらの中では、強度発現性が優れることから無水石膏を使用することが好ましい。
硫酸カルシウムの粒度は、ブレーン値で3000〜10000cm/gが好ましく、4000〜7000cm/g以上が強度発現性の観点から特に好ましい。この範囲外では、すぐれた急結性状や強度発現性が得られない場合がある。
硫酸カルシウムの使用量は特に限定されないが、モルタル100部中、1〜10部が好ましく、1.5〜5部がより好ましい。1部未満では、優れた強度発現性が得られない場合があり、10部を超えると過剰に膨張して著しく強度が低下する場合がある。
本発明で使用する早強セメントとは、普通ポルトランドセメントよりも初期強度発現性が良好なセメントを指すものであり、例えば、早強ポルトランドセメントや微粒子の水硬性粉末を含有した微粒子セメント等が使用可能である。
早強セメントの使用量は、特に限定されないが、初期強度発現性やモルタル圧送性の観点からモルタル100部中、20〜55部が好ましく、30〜50部がより好ましい。
本発明で使用する骨材は、吹付けモルタルの耐久性やモルタル圧送性を向上するために使用するものである。骨材の種類は特に限定されるものではなく、天然砂、珪砂、及び石灰砂のいずれも使用することができる。骨材の中では、石灰石を用いることが、硬化体の耐久性の観点から好ましい。
骨材の使用量は、モルタル100部中、40〜70部が好ましく、55〜65部であることがより好ましい。この範囲外では、モルタルの圧送性や硬化体の耐久性が低下する場合がある。
骨材の最大粒径は、モルタルの圧送性向上や吹付けモルタルのリバウンド低減の観点から、1.2mm以下である。
骨材の粒度構成は、特に限定されるものではないが、骨材粒径0.6〜1.2mmと0.6mm未満の割合が、質量比で20:80〜70:30が好ましく、25:75〜40:60がより好ましい。この範囲外では、優れたモルタル圧送性が得られない場合がある。
本発明で使用する酸性液体急結剤は、セメント又はカルシウムアルミノシリケートと反応し、初期の凝結を促進し、強度発現性を向上するために使用するものである。
酸性液体急結剤は、アルミニウム成分やイオウ成分を主成分とし、アルカリ金属元素又はフッ素を必須として含有するものである。酸性液体急結剤には、アルカリ金属元素とフッ素の両方を含有してもよい。
アルミニウム成分の供給原料は特に限定されるものではないが、非晶質もしくは結晶質の水酸化アルミニウム、アルミニウムの硫酸塩及びアルミン酸塩等の無機アルミニウム化合物、有機アルミニウム化合物並びにアルミニウム錯体等の化合物が挙げられ、これらの中から選ばれた一種又は二種以上が使用可能である。本発明では、イオウ成分の供給原料ともなるアルミニウムの硫酸塩の使用が好ましい。
イオウ成分の供給原料は特に限定されるものではないが、硫黄や硫黄華のような元素状態の硫黄の他に、硫化物、硫酸又は硫酸塩、亜硫酸又は亜硫酸塩、チオ硫酸又はチオ硫酸塩並びに有機硫黄化合物等が挙げられ、これらの中から選ばれた一種又は二種以上が使用可能である。これらのうち、水への溶解性が高く、製造コストが安く、かつ、急結性状が優れる面から硫酸又は硫酸塩が好ましく、硫酸塩としては明礬類や硫酸アルミニウムが好ましい。
アルカリ金属成分の供給原料は特に限定されるものではないが、アルカリ金属元素、即ち、リチウム、ナトリウム及びカリウムを含む水溶性の化合物であれば特に制限されるものではなく、アルカリ金属元素の酸化物、過酸化物、塩化物、水酸化物、硝酸塩、亜硝酸塩、リン酸塩、ケイ酸塩、アルミン酸塩、硫酸塩、チオ硫酸塩、過硫酸塩、硫化塩、炭酸塩、重炭酸塩、シュウ酸塩、ホウ酸塩、フッ化物、ケイ酸塩、ケイフッ化物、明礬及び金属アルコキシドなどが使用可能であり、これらの中から選ばれた一種又は二種以上が使用可能である。これらの中では、アルカリ金属元素の硫酸塩、重炭酸塩、シュウ酸塩、フッ化物、ケイフッ化物又は明礬が好ましい。
フッ素成分を供給する原料としては、水に溶解又は分散する化合物であれば特に限定されるものではなく、フッ化物、ケイフッ化物、フッ化ホウ素塩、有機フッ素化合物及びフッ化水素酸等のフッ素化合物が挙げられ、これらの中から選ばれた一種又は二種以上が使用可能である。
本発明では、安全性が高く、製造コストが安く、かつ、凝結性状が優れる面から、フッ化物やケイフッ化物が好ましい。
アルカリ金属元素の使用量は、酸性液体急結剤100部中、酸化物換算で1〜5部が好ましく、2.1〜4部がより好ましい。1部未満では優れた急結性が得られない場合があり、5部を超えると強度発現性が阻害される場合がある。
フッ素の含有量は、酸性液体急結剤100部中、Fとして1〜5部が好ましく、2〜4部がより好ましい。1部未満では優れた急結性が得られない場合があり、5部を超えると強度発現性が阻害される場合がある。
本発明の酸性液体急結剤には、さらに、アルカノールアミンや安定化剤を含有させることが可能である。
アルカノールアミンとは、構造式においてN−C−OH構造を有する有機化合物である。ここで、Cはアルキル基又はアリル基と呼ばれる原子団であり、例えば、メチレン基、エチレン基及びN−プロピレン基等の直鎖型のアルキル基、イソプロピル基等の枝分かれ構造を有するアルキル基並びにフェニル基やベンジル基等の芳香族環を有するアリル基等が挙げられる。
また、Cは窒素原子と2箇所以上で結合していてもよく、Cの一部又は全部が環状構造であってもよい。
さらに、Cは複数の水酸基と結合していてもよく、アルキル基の一部に炭素や水素以外の元素、例えば、イオウ、フッ素、塩素、及び酸素等が含まれていてもよい。
本発明では、ジエタノールアミン及び/又はN,N−ジメチルエタノールアミンが好ましい。
本発明の酸性液体急結剤には、保存安定性を向上させる目的で、安定化剤として有機酸を含有させることが可能である。
安定化剤としては、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、ギ酸、クエン酸、リン酸類及びこれらの塩類が挙げられ、これらの中から選ばれた一種又は二種以上が使用可能である。
酸性液体急結剤は、各成分を完全に溶液化したものから懸濁化したものまで使用可能である。
酸性液体急結剤のpHは酸性であれば良く、pH2〜4が好ましい。pH2未満では優れた強度発現性が得られない場合があり、pH4を超えると液体急結剤の安定性が悪くなる場合がある。
酸性液体急結剤の固形分濃度は、25〜70%が好ましく、30〜60%がより好ましい。25%未満では優れた急結性が得られない場合があり、70%を超えると液の安定性が悪くなる場合がある。
酸性液体急結剤中のAl/SOモル比は特に限定されるものではないが、0.2〜0.6が好ましく、0.3〜0.5がより好ましい。モル比がこの範囲外では、優れた急結性が得られない場合がある。
酸性液体急結剤の使用量は、モルタル100部に対して、固形分換算で1〜5部が好ましく、1.5〜3部がより好ましい。1部未満では優れた急結性が得られない場合があり、5部を超えると硬化体の耐久性が低下する場合がある。
本発明では耐久性を向上するために繊維の使用が可能である。繊維の種類としては、セラミック繊維や耐アルカリガラス繊維やカーボン繊維などの無機系繊維、ポリエチレン繊維、ビニロン繊維、アラミド繊維及びポリアクリル繊維等の有機系繊維、並びにスチール繊維等の鋼繊維が挙げられる。これらの中では、セメントと骨材を乾式法により混合したドライモルタルの混合性や施工性の点で、耐アルカリガラス繊維、カーボン繊維、ポリエチレン繊維、ビニロン繊維及びポリアクリル繊維からなる群より選ばれた一種又は二種以上の繊維の使用が好ましい。
繊維の長さは特に限定されるものではないが、3〜30mmが好ましく、6〜12mmがより好ましい。
繊維の使用量は、モルタル100体積部に対して、0.2〜1.2体積部が好ましく、0.3〜0.8体積部がより好ましい。0.2体積部未満では目的とする強度が得られないおそれがあり、1.2体積部を越えるとモルタル混合時の混合分散性が悪化したり、強度発現性が低下したりするおそれがある。
本発明の吹付け材料では、さらに水酸化カルシウムを使用することで、初期の付着性を向上させることが可能である。本発明で使用する水酸化カルシウムは、生石灰やカーバイドが水和した際に生じる消石灰を含むものであり、コンクリートが水を使用する性質上、水と反応して水酸化カルシウムを多量に生成させる生石灰等の使用は可能である。
水酸化カルシウムの使用量は、モルタル100部に対して、0.5〜5部が好ましく、1〜3部がより好ましい。使用量が0.5部未満では、良好な付着性が得られない場合があり、5部を超えると優れた強度発現性が得られない場合がある。
本発明の吹付け材料ではカルシウムアルミノシリケートの反応を抑制し、水と混練後の材料圧送性を確保するために1A族元素を含有するヒドロキシル酸塩(以下、ヒドロキシル酸塩)を使用することができる。1A族元素を含有したものを使用することで、圧送性の保持と吹付け後の強度発現性の両立が可能となる。本発明で使用するヒドロキシル酸塩としては、クエン酸塩、グルコン酸塩、酒石酸塩及びリンゴ酸塩等が挙げられ、これらの中から選ばれた一種又は二種以上を使用できる。これらのなかでは特にクエン酸ナトリウム、グルコン酸ナトリウム、酒石酸ナトリウムが好ましい。
ヒドロキシル酸塩の使用量は、モルタル100部に対して、0.005〜0.5部が好ましく、0.01〜0.3部がより好ましい。0.005部未満だと目的とする材料の流動性が得られない場合があり、0.5部を越えると初期の強度発現性が小さくなる場合がある。
本発明では増粘剤を使用することができる。増粘剤とは、セメントコンクリートに粘性を与え、吹付直後のダレを防止し、リバウンド率を小さくし、粉塵発生を抑制するものをいう。増粘剤としては、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース及びヒドロキシエチルエチルセルロース等のセルロース類、アルギン酸、アルギン酸ナトリウム、β−1,3グルカン、プルラン、グアガム、カゼイン及びウェランガム等の多糖類、酢酸ビニル、塩化ビニル、メタクリル酸、アクリル酸、アクリル酸ナトリウム及び不飽和カルボン酸等のビニル重合体やこれらの共重合体並びに酢酸ビニル重合体やその共重合体をケン化しポリビニルアルコール骨格に変性したもの等のエマルジョン類等が挙げられ、これらの中から選ばれた一種又は二種以上が使用可能である。これらの中では、初期凝結を阻害しにくい点で、セルロース類が好ましい。
増粘剤の使用量は特に限定されないが、モルタル100部中、0.01〜0.5部が好ましく、0.02〜0.1部がより好ましい。0.01部未満では優れた前記した優れた物性が得られない場合があり、0.5部を超えると優れた強度発現性が得られない場合がある。
減水剤とは、一般にセメントコンクリートの流動性や急結材の分散安定性を改善するために使用するものであり、本発明の吹付け材料にも減水剤の使用が可能である。減水剤としては、液状や粉状のものいずれも使用できる。減水剤としては、ポリオール誘導体、リグニンスルホン酸塩やその誘導体及び高性能減水剤等が挙げられ、これらの中から選ばれた一種又は二種以上が使用可能である。これらの中では、高強度発現性や分散安定性の点で、高性能減水剤が好ましい。高性能減水剤の使用により、急結材の使用量を少なくでき、粉塵の発生量及び/又はリバウンド率が極めて少なくできる。
高性能減水剤としては、アルキルアリルスルホン酸塩のホルマリン縮合物、ナフタレンスルホン酸塩のホルマリン縮合物、メラミンスルホン酸塩のホルマリン縮合物及びポリカルボン酸系高分子化合物等が挙げられ、液状や粉状のいずれの状態でも使用でき、これらの中から選ばれた一種又は二種以上が使用可能である。これらの中では、効果が大きい点で、ナフタレンスルホン酸塩のホルマリン縮合物、メラミンスルホン酸塩のホルマリン縮合物、又はポリカルボン酸系高分子化合物が好ましい。
本発明では、リン酸塩、ホウ酸若しくはその塩又はアルコール類等の凝結遅延剤を使用してもよい。微粉スラグ、微粉フライアッシュ、ベントナイト、メタカオリオン又はシリカフューム等の平均粒径10μm以下の超微粉を使用してもよい。急結材の急結性を向上させるために、アルカリ金属炭酸塩を使用してもよい。
本発明で使用する吹付材料の使用方法は特に限定されるものではないが、施工性の点で、吹付材料をカルシウムアルミノシリケート、石膏、早強セメント、最大粒径1.2mm以下の骨材等を含有してなるプレミックスモルタルと酸性液体急結剤を個別に圧送して吹付け直前に混合して吹付けることが好ましい。この場合、プレミックスモルタルに連続的に水を供給する連続練りミキサーを使用して混練したモルタルを圧送し、吹付け直前に酸性液体急結剤を添加して吹付ける方法が望ましい。
ここで、「吹付け直前に」とは、酸性液体急結剤を混合又は添加してから1分以内に吹付けを実施することである。
混練に使用する水の量は特に限定されるものではないが、ポンプで圧送が可能な流動性が得られるように、例えば、フロー値(JISR5201−1998準拠)で170〜230になるように水を加えることが好ましい。
混練りしたモルタルを圧送するポンプは特に限定されるものではなく、例えば、ピストン式ポンプ、スクイズ式ポンプ又はスネイク式ポンプ等のポンプを使用できる。これらの中では、作業性の点で、例えば、供給された吹付材料を混合機の先端の羽根で圧入された水と混練し、それに連結しているスネイク式のポンプで連続的に圧送する連続混練り圧送装置で混練り圧送する方法が、作業性の点で好ましい。
酸性液体急結剤を圧送するポンプは特に限定されるものではないが、ピストン式ポンプ、スクイズ式ポンプ又はスネイク式ポンプ等を使用することができる。
混練り圧送されたモルタルと、酸性液体急結剤とを混合する方法は特に限定されるものではないが、以下の方法が挙げられる。即ち、Y字管を用いてモルタルに酸性液体急結剤を混合する際、酸性液体急結剤をエアーで搬送し、吹付けることができる。又、リング周囲に数カ所の孔を有するインレットピースにポンプ圧送した酸性液体急結剤をエアーで圧入し、モルタルと混合し、吹付けることもできる。これらの中では、混合性の点で、インレットピースを使用する混合方法が好ましい。
この場合、吐出量は特に制限しないが、モルタルの吐出量は3m /h以下にすることが好ましい。
以下、本発明を実施例によって詳細に説明するが、本発明はこれらによって限定されるものではない。
(実験例1)
カルシウムアルミノシリケート5部(比較として、カルシウムアルミネート)、硫酸カルシウム5部、早強セメント30部、骨材60部のモルタル100部と、モルタル100体積部に対して繊維0.5体積部をナウターミキサーで混合してプレミックスモルタルを製造した。(繊維を使用しない場合も同様にプレミックスモルタルを製造した。)製造したプレミックスモルタルをドイツのPFT社製G4連続ミキサーポンプに投入し、水/プレミックスモルタル比が20%となるように水を添加し、2 m/hrの能力で連続混練り圧送した。圧送ホースの仕様はホース直径:1.25インチ、ホース長さ30mとした。又、表1に示す各酸性液体急結剤をプランジャー式ポンプで圧送し、水を除いたモルタル100部(繊維を含むプレミックスモルタルの場合は水と繊維を除いたもの100部)に対して1.5部になるように、ノズル手前に取り付けたインレツトピースから3.5kgf/cmのエアーとともに水と練り混ぜた後のプレミックスモルタルに添加、混合して吹付材料とし、側壁(高さ3.5m、幅2.5mの模擬トンネルの側壁)に厚さ2cmになるように1mの広さに吹付け、ポンプ圧送圧力とリバウンド率を測定した。結果を表1に併記する。
<使用材料>
セメント:早強ポルトランドセメント、市販品
骨材ア:新潟県青海産石灰砂乾燥品、最大粒径2.5mm(0.6〜2.5mm:0.6mm未満の混合比=30:70)、比較用
骨材イ:新潟県青海産石灰砂乾燥品、最大粒径1.5mm(0.6〜1.5mm:0.6mm未満の混合比=30:70)、比較用
骨材ウ:新潟県青海産石灰砂乾燥品、最大粒径1.2mm(0.6〜1.2mm:0.6mm未満の混合比=30:70)
カルシウムアルミノシリケート(CAS):CaO:43%、AlO3:43%、SiO:14%、非晶質、ブレーン値6000cm/g
カルシウムアルミネート(CA):C12 組成に相当品、CaO:50、Al:45、非晶質、ブレーン値6000cm/g、比較用
硫酸カルシウム:天然無水石膏、ブレーン5000cm/g
繊維:ビニロン繊維長さ6mm、クラレ社製
酸性液体急結剤A:(pH2.6、固形分はAl:9.5%、SO:18.5%、F:2.5%)、市販品
酸性液体急結剤B:(pH2.6、固形分はAl:9.5%、SO:18.5%、NaO:3.0%、F:2.5%)、市販品
酸性液体急結剤C:27%硫酸アルミニウム溶液(pH2.7、固形分はAl:8.1、SO:18.9%)、市販品、比較用
酸性液体急結剤D:(pH3.0、固形分はAl:9.5%、SO:18.5%、NaO:3%)、市販品
<測定方法>
ポンプ圧送圧力:モルタルを圧送する際の圧送圧力を測定した(上限25fgf/cm)。
リバウンド率:1分間側壁に吹付けた時の、(跳ね返った量/吹付量)×100 で示した(単位:%)。
1時間強度:JIS R 5201−2002に準拠して試験した。
Figure 0004855321

実験No.1−1に示すように、カルシウムアルミネートを使用した場合には、ポンプ圧送圧力が高くなり閉塞した。カルシウムアルミノシリケートを使用した実験No.1−2〜1−6の圧送圧力は12〜21kg/cmの範囲であり、圧送性可能となった。骨材の種類に着目すると、最大骨材粒径が1.2mm以下である骨材ウを用いた場合では、ポンプ圧送圧力が12〜15kgf/cmであり、圧送性が良好である。また、実験No.1−3〜1−5に示すように、最大骨材粒径が1.2mm以下では、優れたリバウンド率が得られた。一方、27%硫酸アルミニウム溶液の酸性液体急結剤を使用した実験No.1−2の場合よりも、フッ素やアルカリ金属を含有する実験No.1−5と1−6の方が、強度発現性が良好となった。
(実験例2)
カルシウムアルミノシリケート、硫酸カルシウム、早強セメント及び骨材のモルタル100部、モルタル100体積部に対して繊維0.5体積部、水酸化カルシウム、並びにヒドロキシル酸塩を表2の配合で混合してプレミックスモルタルを製造した。酸性液体急結Bを用いて、ポンプ圧送圧力と1時間強度を測定したこと以外は、実験例1と同様に試験した。結果を表2に併記する。なお、水/プレミックスモルタル比は20%である。
<使用材料>
骨材:骨材ウ、新潟県青海産石灰砂乾燥品、最大粒径1.2mm(0.6〜1.2mm:0.6mm未満の混合比=30:70)
硫酸カルシウム:天然無水石膏、ブレーン5000cm/g
繊維:ビニロン繊維長さ6mm、クラレ社製
水酸化カルシウム :市販品、ブレーン11100cm/g
ヒドロキシル酸塩:クエン酸ナトリウム、扶桑化学社品
<測定方法>
28日強度:20℃水中養生してJIS R 5201−2002に準拠して試験した。
Figure 0004855321

(実験例3)
表3に示す粒径構成の骨材と早強セメントを用いて、カルシウムアルミノシリケート5部、硫酸カルシウム5部、水酸化カルシウム3部のモルタル配合で、モルタル100部に対して酸性液体急結剤Bを1.5部使用したこと以外は、実験例1と同様に試験を行った。結果を表3に併記する。
Figure 0004855321

(実験例4)
表3の実験No.3−10の配合と材料を用いて、表4に示す量の酸性液体急結剤Bを使用したこと以外は実験例3と同様に試験を行った。結果を表4に併記する。
Figure 0004855321

(実施例5)
表3の実験No.3−10の配合と材料を用いて、表5に示す酸性液体急結剤(Al:8.5%、SO:19.5%)を使用したこと以外は実験例3と同様に試験した。結果を表5に併記する。
Figure 0004855321

(実施例6)
表6に示す組成のカルシウムアルミノシリケートを使用したこと以外は、実験No.3−10の配合と材料を用いて、実験例3と同様に試験した。比較として、カルシウムアルミノシリケートの代わりに高炉スラグを同量使用した場合についても試験した。結果を表6に併記する。
<使用材料>
高炉スラグ:組成(CaO:44%、SiO:31%、Al:15%)、 新日鐵セメント社製、ブレーン6000cm/g
Figure 0004855321

なお、急結性の高いカルシウムアルミネートと凝結遅延剤の併用、及び高炉スラグと酸性液体急結剤を併用しても、本願発明の優れた効果を持つ吹付け材料を得ることはできなかった。
本発明の吹付け材料及び吹付け工法を用いることにより、小断面トンネルのような狭い作業空間での吹付け作業においても、作業者の安全性の高い環境が確保できた。又、吹付後の初期強度や長期強度が高いために、吹付け厚さが2〜3cmでも、掘削後の地山や岩盤を安定化させることができる。さらに、連続ミキサーポンプを使用することにより、作業効率が高まった。

Claims (10)

  1. カルシウムアルミノシリケート、硫酸カルシウム、早強セメント、および最大粒径1.2mm以下の骨材を含有するモルタル100部と、アルカリ金属元素及び/又はフッ素を含む酸性液体急結剤を固形分換算で1〜5部を含有してなる吹付け材料であり、モルタル100部中、カルシウムアルミノシリケートが1〜10部、硫酸カルシウムが1〜10部、早強セメントが20〜55部、および最大粒径1.2mm以下の骨材が40〜70部であり、最大粒径1.2mm以下の骨材100部中、0.6〜1.2mmの骨材が20〜70部、0.6mm未満の骨材が80〜30部である吹付け材料。
  2. 酸性液体急結剤の固形分濃度が、25〜70%である請求項1に記載の吹付け材料。
  3. 最大粒径1.2mm以下の骨材が石灰石である請求項1又は請求項2に記載の吹付け材料。
  4. 酸性液体急結剤100部中に、アルカリ金属元素がRO換算(Rはアルカリ金属)で1〜5部含有してなる請求項1〜3のいずれか一項に記載の吹付け材料。
  5. 酸性液体急結剤100部中に、フッ素を1〜5部含有してなる請求項1〜4のいずれか一項に記載の吹付け材料。
  6. カルシウムアルミノシリケート、硫酸カルシウム、早強セメント、及び最大粒径1.2mm以下の骨材を含有するモルタル100体積部に対して、繊維を0.2〜1.2体積部含有してなる請求項1〜5のいずれか一項に記載の吹付け材料。
  7. カルシウムアルミノシリケート、硫酸カルシウム、早強セメント、および最大粒径1.2mm以下の骨材を含有するモルタル100部に対して、水酸化カルシウムを0.5〜5部含有してなる請求項1〜6のいずれか一項に記載の吹付け材料。
  8. カルシウムアルミノシリケート、硫酸カルシウム、早強セメント、および最大粒径1.2mm以下の骨材を含有するモルタル100部に対して、1A族元素を含有するヒドロキシル酸塩を外割で0.005〜0.5部含有してなる請求項1〜7のいずれか一項に記載の吹付け材料。
  9. 請求項1〜8のいずれか一項に記載の吹付け材料を用いる吹付け工法において、カルシウムアルミノシリケート、硫酸カルシウム、早強セメント、および最大粒径1.2mm以下の骨材を含有するモルタルを混合してプレミックスモルタルとし、プレミックスモルタルを水で混練し、水で混練したプレミックスモルタルと酸性液体急結剤とを吹付け直前に混合する吹付け工法。
  10. プレミックスモルタルと水を、連続的に水を供給する連続練りミキサーを使用して混練し、混練したモルタルを圧送後、吹付け直前に酸性液体急結剤と混合して吹付ける請求項9に記載の吹付け工法。
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