JP4754862B2 - 色素増感太陽電池およびその製造方法 - Google Patents
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Description
透明支持体21の表面に形成された透明導電膜22上に、酸化チタン粒子からなる多孔性半導体層23を形成し、その多孔性半導体層23に色素を吸着させる。対極25に白金膜26などの触媒をコーティングし、半導体層23と白金膜26を対面するように透明支持体21と対極25を重ねあわせ、その間に電解液を注入して電解液層24とし、透明支持体21と対極25の側面をエポキシ樹脂27などで封止する。このようにして色素増感太陽電池が作製される。
特開平11−126917号公報(特許文献4)には、ゲル状電解質が、カーボネート基、窒素原子を含有する複素環又は4級アンモニウム塩から選ばれた一価の有機残基を有する構成単位の少なくとも一種類を含む色素増感太陽電池が記載されている。
特開平11−339866号公報(特許文献5)には、作用電極と対極の間に高分子多孔膜等の固体層を有し、その固体層の空隙に電解液を保持している色素増感太陽電池が記載されている。
特開2001−160427号公報(特許文献6)には、ハロゲン含有化合物とN、P、Sの元素を含む化合物を用いてオニウム塩の重合体を形成することにより電解質組成物をゲル化させてゲル状電解質を得た色素増感太陽電池が記載されている。
特開2001−210390号公報(特許文献7)には、3次元的に架橋した高分子化合物に酸化還元性電解液を含浸させた構成の固体電解質(ゲル状電解質)を有する色素増感太陽電池が記載されている。
非特許文献 J. Am. Chem. Soc. 2003, 125, 1166-1167には溶融塩にSiO2の微粒子を混合することにより溶融塩を固体化した電解質を用いた色素増感太陽電池が記載されている。
しかしながら、液体電解質に対して高分子化合物形成材料を添加することにより粘度が増加し、多孔性半導体層内に含浸させることが困難となる。また、高分子化合物が多孔性半導体層内の空孔に存在することにより電荷の輸送が疎外され、電流の低下につながる。一方、液体電解質を固体化するための高分子化合物形成材料の添加量を減少させると、固体状態を保持することが困難であると共に、液体電解質の保持力が低下する。そのため、固体電解質を用いた色素増感太陽電池においては、液体電解質を用いた場合に比べて光電変換効率が低下するという問題があった。
また、特許文献5の色素増感太陽電池では、電解液を固体層に保持しているが、この固体層は空孔の大きさが0.01〜5μmと大きく、リチウム二次電池などで多く用いられているセパレータと同等の大きさであることから、液漏れを防ぐことは困難である。
また、本発明の別の観点によれば、支持体上に形成された電極層の上に、色素を吸着した多孔性半導体層を形成する工程と、前記多孔性半導体層の内部の空隙内および表面側に第1電解質層および第2電解質層を形成する工程と、前記第2電解質層の上に電極層および支持体を形成する工程を備え、前記第1電解質層が、多孔性半導体層内に溶融塩を含有する液体電解質を含浸させるか、または多孔性半導体層内に固体電解質を形成することよりなり、前記第2電解質層が、固体電解質を形成することよりなる色素増感太陽電池の製造方法が提供される。
以下、この色素増感太陽電池の各構成要素について説明する。
支持体は、太陽電池の受光面となる部分では光透過性が必要となるため、少なくとも一方が光透過性を有する材料からなればよく、他方の支持体は光透過性を有さない材料で構成されていてもよく、あるいは、両面を光透過性の材料として、両面からの光入射が可能な太陽電池を構成してもよい。
本発明において「光透過性」とは、少なくとも光電変換層の色素に実効的な感度を有する波長の光を実質的に透過させることを意味し、必ずしもすべての波長領域の光に対して透過性を有することを意味しない。
支持体を構成する材料としては、250℃以上の耐熱性を有するものが好ましく、その厚さは0.2〜5mm程度が好ましい。
可撓性フィルム(以下、「フィルム」という)は、例えば、ポリエステル、ポリアクリル、ポリイミド、テフロン(登録商標)、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート(PET)などの長期耐候性のシートやフィルムが挙げられる。
支持体上に加熱を伴って他の層を形成する場合、例えば、250℃程度の加熱を伴って電極層を形成する場合には、上記のフィルム材料の中でも、250℃以上の耐熱性を有するテフロン(登録商標)が特に好ましい。
また、完成した太陽電池を他の構造体に取り付けるときに支持体を利用することができる。すなわち、ガラス基板などの支持体の周辺部を、金属加工部品とねじを用いて他の支持体に容易に取り付けることができる。
電極層は、太陽電池の受光面となる部分では光透過性が必要となるため、少なくとも一方が光透過性を有する材料からなればよく、他方の電極層(以下対電極と称する場合がある)は光透過性を有さない材料で構成されていてもよく、あるいは、一対の電極層を光透過性の材料として、両面からの光入射が可能な太陽電池を構成してもよい。
受光面側の電極層(以下、集電電極層と称する場合がある)は、支持体上に形成され、支持体の片面に発生した電子を集める機能を有する。
受光面側の電極層である集電電極層を構成する材料としては、ITO(インジウム−スズ複合酸化物)、IZO(インジウム−亜鉛複合酸化物)、フッ素をドープした酸化スズ、ボロン、ガリウムまたはアルミニウムをドープした酸化亜鉛、ニオブをドープした酸化チタンなどの透明導電性金属酸化物などが挙げられる。
したがって、集電電極層が、少なくとも1層の、金属層および/または金属酸化物層からなるのが好ましい。
集電電極層の膜厚は、0.1〜30μm程度、好ましくは0.3〜5μmである。
電極層が多孔質半導体層とショットキー接続されていると、障壁を越えるためにエネルギーロスが起きてしまうため、光電変換層中の電子を電極層へスムーズに移動させるために、電極層は、光電変換層を構成する多孔質半導体層とオーミック接続されているのが好ましい。
導電膜は透明でもよいし、不透明であってもよい。例えば、N型又はP型の元素半導体(例えば、シリコン、ゲルマニウム等)又は化合物半導体(例えば、GaAs、InP、ZnSe、CsS等);金、白金、銀、銅、アルミニウム等の金属;チタン、タンタル、タングステン等の高融点金属;ITO、SnO2、フッ素ドープのSnO2、CuI、ZnO等の透明導電材料からなる膜が挙げられる。これらの導電膜は、常法によって形成され、その膜厚は0.1μm〜5μm程度が適当である。
多孔質半導体層は、半導体から構成され、その形態は、粒子状、表面および内部に微細な多数の空隙を有する膜状などの種々な形態のものを用いることができるが、膜状の形態であることが好ましい。
半導体粒子の製造方法としては、水熱合成法などのゾルーゲル法、硫酸法、塩素法などが挙げられ、目的の微粒子を製造できる方法であればどんな方法を用いてもよいが、結晶性の観点より、水熱合成法により合成することが好ましい。
多孔性半導体層の膜厚は、特に限定されるものではないが、透過性、変換効率などの観点より、0.5〜50μm程度が好ましく、0.5〜40μm程度がより好ましい。また電解質層が内部に十分浸透し、形成できるために空隙率は40〜80%が好ましい。
太陽電池の光電変換効率を向上させるためには、後述する色素を多孔質半導体層により多く吸着させることが必要である。このため、膜状の多孔質半導体層では、比表面積が大きなものが好ましく、例えば10〜500m2/g程度、さらに好ましくは20〜200m2/gである。なお、本明細書において示す比表面積はBET吸着法により測定した値である。
スクリーン印刷法で多孔質半導体層を印刷する場合には、印刷後のダレを少なくするために、数回に分けて印刷してもよい。また、数回に分けて印刷する場合には、異なる材料や粒径を有する半導体粒子を含有するペーストを印刷してもよい。
材料となる半導体微粒子を用意し、その半導体粒子を、高分子などの有機化合物と共に、分散剤、有機溶媒、水などに加え、分散させて懸濁液を調整し、その混合溶液を透明基板により担持された透明導電膜上に塗布する。半導体粒子と共に溶媒に有機化合物を添加することで、焼成時に燃焼することにより多孔性半導体層の隙間を確保することも可能となる。また焼成時に燃焼する有機化合物の分子量や添加量を制御することで空隙率を変化させることができる。
また半導体粒子と共に添加する有機化合物としては、ポリエチレングリコール、エチルセルロースなどの高分子が挙げられるが、作製するTiO2懸濁液中に溶解し、焼成するときに燃焼して除去できるものであれば何でも用いることができる。
形成する多孔性半導体層としては、粒径がほぼ同じ半導体粒子により形成された単層膜だけでなく、粒径や種類の異なった半導体粒子を含む懸濁液を多層塗布したりすることもできる。一度の塗布で膜厚が不足の場合には、多層塗布することにより膜厚を増加させることもできる。
多孔質半導体層に吸着して光増感剤として機能する色素としては、種々の可視光領域および赤外光領域に吸収を持つものであって、半導体層に強固に吸着させるために、色素分子中にカルボキシル基、アルコキシ基、ヒドロキシル基、ヒドロキシアルキル基、スルホン酸基、エステル基、メルカプト基、ホスホニル基などのインターロック基を有するものが好ましい。これらの中でも、カルボン酸基およびカルボン酸無水基が特に好ましい。なお、インターロック基は、励起状態の色素と多孔質半導体層の伝導帯との間の電子移動を容易にする電気的結合を提供するものである。
溶液中の色素濃度は、使用する色素および溶媒の種類は適宜調整することができ、吸着機能を向上させるためにはある程度高濃度である方が好ましい。例えば5×10-5モル/リットル以上の濃度であれば良い。
また、色素吸着時に、色素を溶解した溶液にデオキシコール酸やグアニジンチオシアネートのような色素の吸着に影響を及ぼす、あるいは共吸着する物質を混合しておいてもよい。
本発明の色素増感太陽電池において、電解質層は、多孔性半導体層の内部の空隙内に形成された第1電解質層と、多孔性半導体層の表面側に形成された第2電解質層とを有する。
第1電解質層は、溶融塩を含有する液体電解質または固体電解質からなり、第2電解質層は固体電解質からなる。
液体電解質としては、酸化還元種を含む液体状態のものであればよい。具体的には、酸化還元種とこれを溶解可能な溶媒からなるものが挙げられるが、一般に電池や太陽電池などにおいて使用することができるものであれば特に限定されない。酸化還元種としてはLiI、NaI、KI、CaI2等の金属ヨウ化物とヨウ素の組み合わせおよびLiBr、NaBr、KBr、CaBr2等の金属臭化物と臭素の組み合わせ、ヨウ化物イオンからなる塩とヨウ素の組み合わせ、臭化物イオンからなる塩と臭素の組み合わせが好ましく、この中でも、LiIとヨウ素の組み合わせあるいはヨウ化物イオンからなる塩とヨウ素の組み合わせが好ましい。また、これらの酸化還元種としては金属ヨウ化物とヨウ化物イオンからなる塩とヨウ素の組み合わせのように数種類を用いてもよい。
本発明で用いられる溶融塩は、溶媒を含まず、イオンのみから構成される液体状態の塩であって、酸化還元種の生成に関与するか否かに関わらず用いることができ、1種または2種以上を混合して用いることができる。本発明において、溶融塩は、例えばInorg. Chem. 1996,35,1168-1178、Electrochemistry. 2002, 2, 130-136、特表平9−507334号公報、特開平8−259543号公報などに開示された、電池や太陽電池などにおいて一般的に使用することができるものであればよく、特に限定されないが、室温(25℃)より低い融点を有する塩か、室温より高い融点を有していても他の溶融塩や溶融塩以外の電解質塩と溶解させることにより室温で液体状態を有する塩であることが好ましい。
溶融塩として具体的には以下のようなものが挙げられる。
固体電解質としては、電子、ホール、イオンを輸送できる導電性材料で構成され、太陽電池の電解質として用いることができるものを使用でき、例えば、ポリカルバゾール、トリフェニルアミン等のホール輸送材、テトラニトロフロオルレノン等の電子輸送材、ポリロール等の導電性ポリマー、液体電解質を高分子化合物により固体化した固体電解質、液体電解質を微粒子にて固体化した固体電解質、ヨウ化銅、チオシアン酸銅等のP型半導体などが挙げられるが、液体電解質を高分子化合物により固体化した固体電解質および液体電解質を微粒子により保持した固体電解質が好ましい。
ここで、本発明において、液体電解質を固体化した固体電解質とは、高分子化合物にて液体電解質が保持されてなる固体状の高分子電解質(流動性を有さない状態の電解質)を意味する。また、液体電解質を微粒子にて保持した固体電解質とは、微粒子と混合されることにより流動性を有さない状態となった電解質を意味する。
液体電解質を固体化するための高分子化合物としては、混合溶媒と電解質で構成される電解液を保持できるものであればよく、(a)ポリ(メタ)アクリレート類、(b)イソシアネート基を有する化合物Aと活性水素基を有する化合物Bを重付加したもの、(c)エポキシ樹脂類などが挙げられ、中でも(a)および(b)が好ましい。
本発明において、固体電解質が、ゲル状物に電解質組成物が浸透してなる場合は上記(a)が用いられ、液体電解質を含有する高分子化合物形成材料が高分子化してなる場合は上記(b)が用いられる。
ポリ(メタ)アクリレート類としては、一般式(I)で表されるモノマー単位を重合していられたものを用いることができる。
上記イソシアネート基を有する化合物Aは、化合物の中に1つ以上のイソシアネート基を有するものであればよい。具体的にはトルエンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート、キシレンジイソシアネートなどの芳香族イソシアネート(A1)、ヘキサメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート等の脂肪族イソシアネート(A2)、イソホロンジイソシアネート、シクロヘキシルジイソシアネート等の脂環族イソシアネート(A3)が挙げられ、(A1)〜(A3)の2量体、3量体などの多量体および変性体であっても良い。また、低分子アルコールと芳香族イソシアネート、脂肪族イソシアネートまたは脂環族イソシアネートのアダクト体(A4)、高分子構造を有する化合物と、上記の具体例にイソシアネートを予め付加反応させた化合物であって、イソシアネート基を1つ以上有する分子量500〜100,000のプレポリマー(A5)などが挙げられる。
具体的な高分子構造はその一部又は全てが、ポリエーテル、ポリエステル、ポリカプロラクトン、ポリヘキサメチレンカーボネート、ポリシロキサン、ポリオレフィン、ポリブタジエン、ポリイソプレン、ポリスチレン、ポリビニルピリジン、ポリビニルメチルエーテル、ポリビニルイソブチルエーテル、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ポリアクリル酸アルキルエステル、ポリメタクリル酸アルキルエステル、ポリアクリルアミド、ポリアクリロニトリル、ポリビニリデンアニド、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルアルコール、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリフッ化ビニル、ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリビニルピロリドン、ポリビニルカルバゾール、ポリエチレンテレフタラート、ナイロン、ポリアミド、ポリイミド、ポリカーボネート、ポリベンズイミダゾール、ポリアミン、ポリイミン、ポリスルフィド、ポリフォスファゼン、天然高分子から構成される。
その中でも特にポリエーテル、ポリエステル、ポリカプロラクトン、ポリシロキサン、ポリオレフィン、ポリブタジエン、ポリイソプレン、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ポリアクリルアミド、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリカーボネート、ポリフォスファゼンを有するものが望ましい。
イソシアネート基を有する化合物Aとして以上の具体例が挙げられるが、上述の化合物より二種類以上用いることもできる。
具体的な高分子構造はその一部又は全てが、ポリエーテル、ポリエステル、ポリカプロラクトン、ポリヘキサメチレンカーボネート、ポリシロキサン、ポリオレフィン、ポリブタジエン、ポリイソプレン、ポリスチレン、ポリビニルピリジン、ポリビニルメチルエーテル、ポリビニルイソブチルエーテル、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ポリアクリル酸アルキルエステル、ポリメタクリル酸アルキルエステル、ポリアクリルアミド、ポリアクリロニトリル、ポリビニリデンアニド、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルアルコール、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリフッ化ビニル、ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリビニルピロリドン、ポリビニルカルバゾール、ポリエチレンテレフタラート、ナイロン、ポリアミド、ポリイミド、ポリカーボネート、ポリベンズイミダゾール、ポリアミン、ポリイミン、ポリスルフィド、ポリフォスファゼン、天然高分子から構成されるものである。
その中でも特にポリエーテル、ポリエステル、ポリカプロラクトン、ポリシロキサン、ポリオレフィン、ポリブタジエン、ポリイソプレン、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ポリアクリルアミド、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリカーボネート、ポリフォスファゼンを有するものが望ましい。
イソシアネート基と反応性を有する化合物Bとして以上の具体例が挙げられるが、上述の化合物Bより、2種類以上用いることもできる。
化合物Aと化合物Bの混合比は、化合物A、Bの組み合わせによって異なり、また高分子の架橋性および色素増感太陽電池に求められる性能などにより適宜決定することができる。
エポキシ樹脂としては、グリシジルエーテル類とアミン系硬化剤や非アミン系硬化剤等との共重合体が挙げられる。グリシジルエーテル類としては、例えば、エチレングリコールジグリシジルエーテル、ジエチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、グリセリンジグリシジルエーテル、フェニルグリシジルエーテル、水添ビスフェノールAジグリシジルエーテル等が挙げられ、ジエチレングリコールジグリシジルエーテル、ジプロピレングリコールが好ましい。アミン系硬化剤としては、例えば、ジアミノエチレン、ジアミノエチレングリコール、ジアミノプロピレングリコール、ジアミノジエチレングリコール、ジアミノジプロピレングリコール等が挙げられ、ジアミノジエチレングリコール、ジアミノジプロピレングリコールが好ましい。非アミン系硬化剤としては、エチレングリコール、グリセリン、クレゾール、無水フタル酸、無水ピロメリット酸、無水マレイン酸等、カルボン酸系架橋剤として、テレフタル酸、アセトンジカルボン酸等が挙げられる。
液体電解質を高分子化合物にて保持する方法としては、(d)固体化する前の高分子化合物形成材料と液体電解質とを混合し、高分子化合物形成材料を重合して固体化する方法、(e)重合により固体化した高分子化合物に液体電解質を含浸させる方法が挙げられる。
(e)の場合、固体化前の高分子化合物形成材料が、ヨウ素が重合禁止剤として働くラジカル重合により固体化する(メタ)アクリレート類などを用い、高分子化合物形成材料と溶媒との混合物を重合してゲル状物を形成した後、ヨウ素を含む液体電解質中にゲル状物を浸すことにより、液体電解質が含浸したゲル状電解質が作製される。
液体電解質を保持するための微粒子としては、酸化物微粒子や炭素化合物微粒子などを用いることができる。具体的な酸化物微粒子としては、酸化ケイ素、二酸化チタン、酸化アルミニウム等からなる微粒子が挙げられ、これらの酸化物微粒子の平均粒径は5〜500nmが好ましく、10〜50nmが特に好ましい。また具体的な炭素化合物微粒子としては、シングルウォールカーボンナノチューブ、マルチウォールカーボンナノチューブ、カーボンブラック等からなる微粒子が挙げられ、シングルウォールカーボンナノチューブとマルチウォールカーボンナノチューブについては、長さが10nm〜1μmが好ましい。カーボンブラックなどは平均粒径が、20nm〜200nmが好ましく、30nm〜100nmが好ましい。
色素が吸着した多孔性半導体層の内部側の第1電解質層の形成方法は、多孔性半導体層の空孔内部に液体電解質を含浸させる(または注入する)ことによって形成する方法(f)と、多孔性半導体層の空孔内部に、上記(d)の液体電解質と高分子化合物形成材料との混合液を含浸させ、高分子化合物形成材料を重合させて混合液を固体化することにより液体電解質を保持した固体電解質を形成する方法を採用できる。
このようにして多孔性半導体層の空隙内に形成された第1電解質層は、多孔性半導体層の表面の固体上にも薄い膜として存在する場合がある(特に第1電解質層が固体電解質の場合)。
P型半導体を固体電解質として用いる場合、短絡を防ぐため、多孔性半導体層と集電電極層の間に酸化チタンなどの下塗り層を設けても良い。下塗り層の形成方法としては、スプレーパイロリシス法、真空蒸着法、スパッタリング法、キャスト法、スピンコート法、ディップ法、電解めっき法などが挙げられる。
多孔性半導体層の空孔内部に、上記(f)または(d)のように第1電解質層を形成した後、その上に固体電解質からなる第2電解質層を形成する。
第2電解質層の形成方法として、液体電解質を高分子化化合物にて固体化して固体電解質を形成する場合は、上記(d)および(e)と同様に行なうことができる。なお、第1電解質層を液体電解質とし、その上に(e)の方法で第2電解質層を形成する場合、第1電解質層中にヨウ素が含まれていると第2電解質層を構成するための高分子化合物形成材料の重合が進行しない。そのため、多孔性半導体層内へのヨウ素の注入(含浸)は、第2電解質層形成時に、先ず多孔性半導体層の表面側にゲル状物の層を形成し、次いでゲル状物を液体電解質へ浸漬することにより、液体電解質中のヨウ素が上層のゲル状物に浸透し、さらに多孔性半導体層へも浸透することによって行なわれる。
このようにして形成された第2電解質層と第1電解質層の界面は、少なくとも多孔性半導体層の表面側の空隙内に現れ、場合によっては多孔性半導体層の表面側の固体(例えば酸化チタン)上にも現れる。
2〜7重量部添加するのが好ましく、3〜5重量部添加するのが特に好ましい。また、液体電解質に対して炭素化合物微粒子を0.5〜4重量部添加するのが好ましく、2〜3重量部添加するのが特に好ましい。また、酸化物微粒子と炭素化合物微粒子を併用する場合は、液体電解質に対して酸化物微粒子を2〜5重量部、炭素化合物微粒子を0.5〜2重量部添加するのが好ましく、酸化物微粒子を2〜4重量部、炭素化合物微粒子を1〜2重量部添加するのが特に好ましい。
本発明の色素増感太陽電池は、上述の各構成要素以外にも、電極層と対極との間において、第1電解質層および第2電解質層の周囲に封止層を形成してもよい。
封止層を構成する材料としては、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、ポリイソブチレン系樹脂、ホットメルト樹脂、ガラスフリットなどが好ましく、これらは2種類以上を2層以上にして用いることもできる。酸化還元性電解質の溶剤としてニトリル系溶剤、カーボネート系溶剤を使用する場合には、シリコーン樹脂やホットメルト樹脂(例えば、アイオノマー樹脂)、ポリイソブチレン系樹脂、ガラスフリットが特に好ましい。
以下に本発明の実施例を説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
チタンイソプロポキシド(キシダ化学株式会社製)125mL、pH調製剤である0.1M硝酸水溶液(キシダ化学株式会社製)750mLを混合し、80℃8時間加熱することにより、チタンイソプロポキシドの加水分解反応を進行させ、ゾル液を調製した。次に、チタン製オートクレーブにて230℃で11時間、粒子成長させた。次に、超音波分散を30分間行うことで、平均粒径15nmの酸化チタン粒子を含むコロイド溶液Iの作製を行い、2倍のエタノールを加え、5000rpmにて遠心分離を行うことにより酸化チタン粒子を作製した。なお、コロイド溶液に含まれるTiO2粒子の平均粒径は、光散乱光度計(大塚電子社製)を用いて、レーザー光の動的光散乱を解析することにより求めた。
上述の工程により作製した各コロイド溶液I〜III中の酸化チタン粒子を洗浄した後、エチルセルロース(キシダ化学株式会社製)とテルピネオール(キシダ化学株式会社製)を無水エタノールに溶解させたものを加え、攪拌することにより酸化チタン粒子を分散させた。その後、40mbarの真空下、50℃にてエタノールを蒸発させ、コロイド溶液I〜IIIから酸化チタンペースト(懸濁液I〜III)の作製を行った。なお、懸濁液I〜IIIにおいて、最終的な組成として、酸化チタン固体濃度20重量%、エチルセルロース10重量%、テルピネオール64重量%となるように濃度調整を行った。
また、焼成した多孔性半導体層3をFE−SEMにより観察した結果、柱状の微粒子が含まれていることを確認した。
なお、以下で説明する実施例1〜5および比較例1、2では、上記多孔性半導体層3および透明導電膜2を有する透明基板1を用いた。
まず、溶融塩である1−ヘキシル−3−メチルイミダゾリウムアイオダイドと、希釈溶媒であるアセトニトリルとプロピレンカーボネートの混合溶媒(容積比2:8)を、重量比7:3で混合した溶液に、ヨウ素、ヨウ化リチウム、4−Tert−ブチルピリジンを添加してヨウ素濃度0.1M/ヨウ化リチウム濃度0.1M/4−Tert−ブチルピリジン濃度0.3Mの酸化還元性液体電解質を作製した。そして、この液体電解質を次の方法で多孔質電極層3内に注入した。
まず、上記で作製した液体電解質120gに、化合物Aとして下記合成方法1により合成した化合物10.5g、化合物Bとしてポリエーテルアミン(HUNTSMAN社製、商品名:ジェファーミンT−5000)5gを溶解させ、モノマー溶液を調整した。調整したモノマー溶液を液体電解質が含浸した多孔性半導体層3上に滴下し、かつ、周囲にセパレータ6を設置し、白金膜7(膜厚1μm)を具備したITO導電性基板8を設置した。その後、90℃、60分間加熱することにより、化合物AとBが反応してなる高分子化合物により液体電解質が固体化して固体電解質5(第2電解質層)が形成され、多層型電解質が形成された。その後、周囲をエポキシ樹脂9により封止した。
実施例1の色素増感太陽電池は、測定条件:AM−1.5、照射光強度100mW/cm2の下での測定の結果、光電変換効率が8.1[%]の性能を有する色素増感太陽電池が得られた。その結果を表2に示した。
反応容器中に出発物質としてのグリセリン92g、触媒としての水酸化カリウム30gを仕込み、さらにエチレンオキサイド5950gとプロピレンオキサイド3970gを仕込み、130℃で10時間反応させた後、中和脱水処理を行って、分子量10000のエチレンオキサイド−プロピレンオキサイド共重合体を得た。得られた化合物100gにトリレンジイソシアネート5.3gと触媒としてのジブチルチンジラウレート0.05gを加え、80℃で3時間反応を行い、分子量10520(ゲル透過クロマトグラフィーにより測定)の化合物Aを得た。
実施例2の色素増感太陽電池の製造では、実施例1において多孔性半導体層3の内部に浸透させた液体電解質の代わりに、実施例1で用いたモノマー溶液において酸化還元性液体電解質に対する化合物Aと化合物Bの添加量を半分にし、そのモノマー溶液を多孔性半導体層上、実施例1と同様に真空化で滴下した。更にその上に実施例1に準じて第二電解質層を形成するためのモノマー溶液を滴下し、周囲にセパレータを設置し、白金膜(膜厚1μm)を具備したITO導電性基板を設置した。その後、90℃、60分間加熱することにより、化合物AとBとが反応してなる高分子化合物により酸化還元性電解液が固体化して固体電解質(第1電解質層と第2電解質層)を形成した。その後、周囲をエポキシ樹脂9により封止した。
実施例2の色素増感太陽電池は、測定条件:AM−1.5、照射光強度100mW/cm2の下での測定の結果、光電変換効率が7.6[%]であった。その結果を表2に示した。
実施例3の色素増感太陽電池の製造では、まず、第1電解質層を実施例1に準じて形成した。次に、第2電解質の形成に際しては、まず、溶融塩であるメチルプロピルイミダゾリウムアイオダイドに、ヨウ素、N−メチルベンズイミダゾールを添加して、ヨウ素濃度0.5M/N−メチルベンズイミダゾール濃度0.5Mの液体電解質を作製した。次に、この液体電解質に対して平均粒径15nmのシリカ微粒子を5重量%添加して混合し、このペースト状の混合物を多孔性半導体層の表面に塗布して、第2電解質層を形成し、周囲にセパレータを設置し、次いで、白金膜を有するITO導電性基板を設置し、エポキシ樹脂で周囲を封止して色素増感太陽電池を完成した。
実施例3の色素増感太陽電池は、測定条件:AM−1.5、照射光強度100mW/cm2の下での測定の結果、光電変換効率が7.8[%]であった。その結果を表2に示した。
実施例4の色素増感太陽電池の製造では、まず、第1電解質層を実施例1に準じて形成した。次に、第2電解質の形成に際しては、まず、溶融塩であるエチルメチルイミダゾリウムビストリフルオロメチルスルフォニルイミドに、エチルメチルイミダゾリウムアイオダイド、ヨウ化リチウム、ヨウ素、4−tert−ブチルピリジンを添加してエチルメチルイミダゾリウムアイオダイド濃度1.5M/ヨウ化リチウム濃度0.1M/ヨウ素濃度0.15M/4−tert−ブチルピリジン濃度0.5Mの液体電解質を作製した。次に、この液体電解質に対してシングルウォールカーボンナノチューブ微粒子(平均粒径1.3nm)を1.0重量%添加して混合し、このペースト状の混合物を多孔性半導体層の表面に塗布して第2電解質層を形成し、周囲にセパレータを設置し、次いで、白金膜を有するITO導電性基板を設置し、エポキシ樹脂で周囲を封止して色素増感太陽電池を完成した。
実施例4の色素増感太陽電池は、測定条件:AM−1.5、照射光強度100mW/cm2の下での測定の結果、光電変換効率が7.5[%]であった。その結果を表2に示した。
実施例5の色素増感太陽電池の製造では、まず、実施例2に準じて多孔性半導体層内部に第1電解質層を形成し、その後、実施例3に準じて多孔性半導体層の表面に第2電解質層を形成し、次いで、白金膜を有するITO導電性基板を設置し、エポキシ樹脂で周囲を封止して色素増感太陽電池を完成した。
実施例5の色素増感太陽電池は、測定条件:AM−1.5、照射光強度100mW/cm2の下での測定の結果、光電変換効率が7.4[%]であった。その結果を表2に示した。
比較例1では、実施例1と同様の真空条件下において、実施例1における第2電解質層の形成で用いたモノマー溶液中に、多孔性半導体層を有する基板を約20分間浸漬し、その後、90℃、60分間加熱して高分子化を行なって固体電解質層を形成して、単層型電解質層を形成した。その後、ITO導電性基板を設置し、エポキシ樹脂で周囲を封止して色素増感太陽電池を完成した。
比較例1の色素増感太陽電池は、測定条件:AM−1.5、照射光強度100mW/cm2の下での測定の結果、光電変換効率が6.5[%]であった。その結果を表2に示した。
比較例2では、実施例4における第2電解質層の形成で用いたペースト状の混合物を多孔性半導体層の表面に塗布して、周囲にセパレータを設置し、単層型電解質を形成した。次いで、白金膜を有するITO導電性基板を設置し、エポキシ樹脂で周囲を封止して色素増感太陽電池を完成した。
比較例2の色素増感太陽電池は、測定条件:AM−1.5、照射光強度100mW/cm2の下での測定の結果、光電変換効率が4.8[%]であった。その結果を表2に示した。
従来では、固体電解質を多孔性半導体層内部に形成させる場合、液体電解質を固体化させるための高分子化合物形成材料(モノマー単位)などを含んだ溶液を多孔性半導体層内部に注入する必要があるため、高分子化合物形成材料を含有することにより粘度が高くなって流動性が低下して多孔性半導体層の中心部まで注入できなかったり、高分子化合物自体が多孔性半導体層内部の電荷輸送を阻害してしまうため、変換効率が低下していた。
しかし本発明では、実施例1〜5のように、第1電解質層の形成において、多孔性半導体層内部に、流動性の良好な液体電解質もしくは液体電解質を固体化させるための高分子化合物形成材料を流動性が良好な状態で注入するため、(ア)多孔性半導体層の内部まで液体電解質が十分に浸透している点、(イ)電荷輸送が阻害されない程度の添加量の少ない高分子化合物形成材料が孔性半導体層の中心部まで十分に浸透し、かつ、高分子化合物となって液体電解質を保持している点、(ウ)液体電解質が溶融塩を含有することによって揮発が抑制される点、(エ)第2電解質層によって、多孔性半導体層内の液体電解質の漏れ防止およびより一層の揮発抑制を図り、かつ、第2電解質層自体も液体電解質が固体化されて揮発抑制となる点などによって、実施例1〜5は高い変換効率を示し、特に上記(ア)および(イ)によるものと考えられる。
2 電極層(透明導電膜)
3 多孔性半導体層
4 液体電解質(第1電解質層)(実施例1)
5 固体電解質層(第2電解質層)(実施例1)
6 セパレータ
7 触媒層(白金膜)
8 対電極付き支持体(ITO導電性基板)
9 封止剤
21 透明支持体
22 透明導電体膜
23 多孔性半導体層
24 電解液層
25 対極
26 白金膜
27 エポキシ樹脂
Claims (13)
- 一対の支持体間に、電極層、色素を吸着した多孔性半導体層、電解質層および電極層を備え、
前記電解質層が、前記多孔性半導体層の内部の空隙内に形成された第1電解質層と、多孔性半導体層の表面側に形成された第2電解質層とを有し、
前記第1電解質層が、溶融塩を含有する液体電解質、あるいは前記溶融塩を含有する液体電解質を高分子化合物にて保持してなる固体電解質からなり、
前記第2電解質層が、前記溶融塩を含有する液体電解質を高分子化合物または微粒子にて保持してなる固体電解質からなることを特徴とする色素増感太陽電池。 - 前記第1電解質層の前記液体電解質と、前記第2電解質層の前記液体電解質とが、同じ組成である請求項1に記載の色素増感太陽電池。
- 前記高分子化合物は、イソシアネート基を有する化合物と活性水素基を有する化合物との反応物である請求項1または2に記載の色素増感太陽電池。
- 微粒子が、酸化ケイ素、二酸化チタン、酸化アルミニウム、シングルウォールカーボンナノチューブ、マルチウォールカーボンナノチューブおよびカーボンブラックから選択される1種または2種以上である請求項1〜3のいずれか1つに記載の色素増感太陽電池。
- 前記多孔性半導体層が、平均粒径の異なる半導体粒子からなる層状構造を有する請求項1〜4の何れか1つに記載の色素増感太陽電池。
- 前記半導体粒子が二酸化チタンからなる請求項5に記載の色素増感太陽電池。
- 前記二酸化チタンが柱状結晶を含んでいる請求項6に記載の色素増感太陽電池。
- 前記色素がRu金属錯体色素である請求項1〜7のいずれか1つに記載の色素増感太陽電池。
- 前記液体電解質が、ヨウ素とヨウ素化合物からなる酸化還元種を含む請求項1〜8のいずれか1つに記載の色素増感太陽電池。
- 支持体上に形成された電極層の上に、色素を吸着した多孔性半導体層を形成する工程と、前記多孔性半導体層の内部の空隙内および表面側に第1電解質層および第2電解質層を形成する工程と、前記第2電解質層の上に電極層および支持体を形成する工程を備え、
前記第1電解質層が、多孔性半導体層内に溶融塩を含有する液体電解質を含浸させるか、または多孔性半導体層内に固体電解質を形成することよりなり、
前記第2電解質層が、固体電解質を形成することよりなることを特徴とする色素増感太陽電池の製造方法。 - 前記固体電解質は、溶融塩を含有する液体電解質と高分子化合物形成材料との混合物が高分子化してなるか、または溶融塩を含有する液体電解質と微粒子との混合物にて形成されてなる請求項10に記載の色素増感太陽電池の製造方法。
- 前記高分子化合物形成材料が、イソシアネート基を有する化合物および活性水素基を有する化合物である請求項11に記載の色素増感太陽電池の製造方法。
- 前記微粒子が、酸化ケイ素、二酸化チタン、酸化アルミニウム、シングルウォールカーボンナノチューブ、マルチウォールカーボンナノチューブおよびカーボンブラックから選択される1種または2種以上である請求項11に記載の色素増感太陽電池の製造方法。
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