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JP5189869B2 - 電解液及び色素増感型太陽電池 - Google Patents

電解液及び色素増感型太陽電池 Download PDF

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Description

本発明は電解液及び色素増感型太陽電池に関する。
色素増感型太陽電池の電解液には、有機溶媒を用いたものや、イオン性液体を用いたものが知られている。例えば、イオン性液体とN−メチル−ベンゾイミダゾールを含む電解液からなる色素増感型太陽電池が報告されている(非特許文献1)。
Kuang D. et.al.,J.AM.CHEM.SOC.128,7732−7733(2006)
色素増感型太陽電池には、高い光電変換効率と高い耐久性が求められているが、これらの特性を同時に満足させることは従来困難であった。
そこで、本発明の目的は、色素増感型太陽電池に用いた場合に、光電変換効率が高く耐久性が大幅に向上した色素増感型太陽電池を得ることを可能にする、電解液を提供することである。
発明者らは、上記課題を解決するため鋭意研究を重ねた結果、ベンゾイミダゾール環に直接結合した炭素数3〜11の飽和炭化水素基を有するベンゾイミダゾール誘導体を使用することが有効であることを見出し、本発明を完成させるに至った。
すなわち、本発明の電解液は、沃素と、沃素イオン源である沃素化合物と、ベンゾイミダゾール環に直接結合した炭素数3〜11の飽和炭化水素基を有するベンゾイミダゾール誘導体と、を含む。
このような電解液を備える色素増感型太陽電池は、光電変換効率が高く、大幅に向上した耐久性を示す。
また、上記の沃素化合物は、イオン性液体であってよい。イオン性液体を用いることにより、電解液を密封するシール材への負荷を低減することができ、色素増感型太陽電池の耐久性を更に向上させることができる。
本発明の電解液は、上記の沃素化合物とは別に、粘度10〜30mPa・sのイオン性液体を更に含んでよい。このような粘度を持つイオン性液体を電解液に添加することで、電解液全体の粘度を下げることができる。この結果、この電解液を色素増感型太陽電池に使用した場合に光電変換効率をより向上させることができる。
本発明の電解液は、グアニジン塩及びリチウム塩から選ばれる、少なくとも1種の塩を更に含むことができる。これにより、この電解液を色素増感型太陽電池に使用した場合に、初期の光電変換効率を更に上昇させることが可能である。
上記の塩はグアニジン塩であることがより好ましい。この結果、この電解液を使用した色素増感型太陽電池の耐久性を更に上昇させることが可能である。
また、本発明は上記の電解液を備える、色素増感型太陽電池を提供する。本発明の色素増感型太陽電池は、高い光電変換効率と共に大幅に向上した耐久性を示し、実用性に優れる。
本発明によれば、色素増感型太陽電池に用いた場合に、光電変換効率が高く耐久性が大幅に向上した色素増感型太陽電池を得ることを可能にする、電解液を提供することができる。
以下、必要に応じて図面を参照しながら、好適な実施形態を説明する。なお、図面の説明において同一要素には同一符号を付し、重複する説明を省略する。また、図面は理解を容易にするため一部を誇張して描いており、寸法比率は説明のものとは必ずしも一致しない。
(色素増感型太陽電池の製造方法)
(第1実施形態)
図1は、第1実施形態に係る色素増感型太陽電池20を示す断面図である。色素増感型太陽電池20は、後述するように本発明の電解液Eを備える。
色素増感型太陽電池20は、主として、光電極10と、対極CEと、光電極10と対極CEの間に挟まれたシール材5と、シール材5により光電極10と対極CEとの間に形成される間隙に充填された電解液Eとから構成されている。
光電極10は、主として、受光面F2を有する半導体電極2と、当該半導体電極2の受光面F2上に隣接して配置された透明電極(透明導電性基板)1と、半導体電極2に付着される増感剤とから構成されている。半導体電極2は、主として酸化チタン粒子で構成されており、具体的には酸化チタン粒子に上記の増感剤が吸着されている。そして、半導体電極2は、電解液Eと接触している。なお、電解液Eは半導体電極2の酸化チタン粒子の細孔にも滲み込んでいる。ここで、酸化チタンとしては、伝導帯の下端のエネルギー準位がより高く、開放端電圧がより高いことから、ルチル型TiOよりもアナターゼ型TiOが好ましい。
この色素増感型太陽電池20は、透明電極1を透過して半導体電極2に照射される光によって、半導体電極2内の酸化チタン粒子に吸着されている増感剤が励起され、この増感剤から半導体電極2内の酸化チタン粒子へ電子が注入される。そして、半導体電極2内の酸化チタン粒子に注入された電子は、透明電極1に集められて外部に取り出される。
透明電極1としては、通常の色素増感型太陽電池又は無機固体型太陽電池に搭載される透明電極を使用できる。透明電極1は、例えば導電性ガラス基板からなる透明基板4のうち半導体電極2の側に透明導電膜3を積層した構成を有する。この透明導電膜3としては、液晶パネル等に用いられる透明導電膜を用いればよい。
透明電極1としては、例えば、フッ素ドープSnOコートガラス、ITOコートガラス、ZnO:Alコートガラス、アンチモンドープ酸化スズ(SnO−Sb)、等が挙げられる。また、酸化スズや酸化インジウムに原子価の異なる陽イオン若しくは陰イオンをドープした透明電極、メッシュ状、ストライプ状など光が透過できる構造にした金属電極をガラス基板等の基板上に設けたものも透明電極として使用できる。
透明基板4としては、液晶パネル等に用いられる透明基板を用いてよい。透明基板として、具体的には透明なガラス基板、ガラス基板表面を適当に荒らすなどして光の反射を防止したもの、すりガラス状の半透明のガラス基板など光を透過するものが挙げられる。なお、透明基板4は、光を透過するものであれば、透明プラスチック板、透明プラスチック膜、無機物透明結晶体などでもよいが、特に透明ガラスであることが好ましい。
半導体電極2に付着される増感剤は、可視光領域および/または赤外光領域に吸収を持つ増感剤であれば特に限定されるものではない。増感剤は、200nm〜10μmの波長の光により励起されて電子を放出するものが好ましい。
ここで、増感剤は、有機系色素を含む。有機系色素とは、金属錯体や有機色素等を示す。金属錯体としては銅フタロシアニン、チタニルフタロシアニン等の金属フタロシアニン、クロロフィルまたはその誘導体、ヘミン、ルテニウム、オスミウム、鉄及び亜鉛の錯体(例えば、シス−ジシアネート−N,N’−ビス(2,2’−ビピリジル−4,4’−ジカルボキシレート)ルテニウム(II))等が挙げられる。有機色素としては、メタルフリーフタロシアニン、シアニン系色素、メロシアニン系色素、キサンテン系色素、トリフェニルメタン系色素等を用いることができる。
対極CEは、電解液Eに含有される酸化還元対の酸化体に電子を反応させて還元体を得る還元反応を高効率で進行させることができる材料から構成されるものであれば特に限定されるものではなく、例えば、シリコン太陽電池、液晶パネル等に通常用いられている透明電極と同じものを用いることができる。
対極CEとしては、例えば前述の透明電極1と同じ構成を有するものが用いられ、その透明導電膜(図示せず)の側が電解液Eに接触されるように配置されている。この他に対極CEとしては、透明電極1と同様の透明導電膜3上にPt等の金属薄膜電極を形成し、金属薄膜電極を電解液Eの側に向けて配置させるものであってもよい。また、透明電極1の透明導電膜3に白金を少量付着させたものや、白金などの金属薄膜なども対極CEとして使用できる。さらに、多孔質の炭素電極を対極として用いてもよい。
電解液Eは沃素(I)と、沃素イオン(I)源である沃素化合物と、ベンゾイミダゾール環に直接結合した炭素数3〜11の飽和炭化水素基を有するベンゾイミダゾール誘導体と、を含む。
電解液E中の沃素の濃度は0.05〜0.5mol/Lであることが好ましい。
沃素イオン源である沃素化合物は、イオン性液体であることが更に好ましい。イオン性液体を用いれば、電解液Eに有機溶媒を含む必要がなくなるため、電解液Eを密封するシール材5への負荷を低減することができ、色素増感型太陽電池の耐久性を向上させることができる。沃素イオン源であるイオン性液体としてはプロピルメチルイミダゾリウムヨージド(以下、PMIIと略記する)が例示できる。電解液E中の沃素イオン源である沃素化合物の濃度は0.5〜5mol/Lであることが好ましい。
ベンゾイミダゾール誘導体は、ベンゾイミダゾール環に直接結合した炭素数3〜11の飽和炭化水素基を有するベンゾイミダゾール誘導体であることが好ましい。飽和炭化水素基の炭素数が2以下である場合及び12以上である場合においては、電解液Eを色素増感型太陽電池に使用しても、耐久性向上の効果が小さい場合がある。したがって、飽和炭化水素基の炭素数は3〜11であることが好ましく、4〜6であることが更に好ましい。飽和炭化水素基は直鎖状であってもよいし、分岐していてもよいが、直鎖状であることがより好ましい。また、飽和炭化水素基はヒドロキシル基やアルデヒド基を有しないものである。ヒドロキシル基やアルデヒド基があると電解液E中の水分と反応しやすく耐久性向上の効果が得られない場合がある。より具体的には、ベンゾイミダゾール誘導体は下記一般式(I)で示される構造を持つことが好ましい。式中、Rは炭素数3〜11の飽和炭化水素基である。
Figure 0005189869
電解液E中のベンゾイミダゾール誘導体の濃度が0.2mol/L以下や2mol/L以上である場合は、電解液Eを色素増感型太陽電池に使用しても、耐久性向上の効果が小さい場合がある。したがって、電解液E中のベンゾイミダゾール誘導体の濃度は0.21〜1.9mol/Lであることが好ましく、0.4〜0.8mol/Lであることがより好ましく、0.4〜0.6mol/Lであることが特に好ましい。
また、電解液Eは、上記の沃素イオン源である沃素化合物とは別に、粘度10〜30mPa・sのイオン性液体を更に含むことがより好ましい。電解液Eは、上記のように炭素数の多い飽和炭化水素基を有するベンゾイミダゾール誘導体を含むため、粘度が上昇する傾向にある。そこで、このような粘度の低いイオン性液体を電解液Eに添加することによって電解液E全体の粘度を下げることが重要である。電解液Eの粘度を下げることにより、電解液Eを色素増感型太陽電池に使用した場合に光電変換効率を更に高めることができる。粘度10〜30mPa・sのイオン性液体としては、エチルメチルイミダゾリウム ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、エチルメチルイミダゾリウム ビス(フルオロスルホニル)イミド、アリルメチルイミダゾリウム ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、エチルメチルイミダゾリウムテトラシアノボレートなどのイミダゾリウム塩が例示できる。
電解液E中の粘度10〜30mPa・sのイオン性液体の比率が、沃素イオン源である沃素化合物を基準として10体積%以下や90体積%以上である場合は、電解液Eを色素増感型太陽電池に使用しても、光電変換効率を高める効果が小さい場合がある。したがって、電解液E中の粘度10〜30mPa・sのイオン性液体の比率は、沃素イオン源である沃素化合物を基準として、11〜89体積%であることが好ましく、30〜50体積%であることがより好ましく、30〜36体積%であることが特に好ましい。
電解液Eは、グアニジン塩及びリチウム塩から選ばれる、少なくとも1種の塩を更に含むことが好ましい。これらの塩を添加した電解液Eを色素増感型太陽電池に使用すると、初期の光電変換効率を更に上昇させることが可能である。グアニジン塩としては、チオシアン酸グアニジンを例示できる。電解液E中のグアニジン塩の濃度は0.1〜1mol/Lであることが好ましい。リチウム塩としては、沃化リチウムやサッカリンリチウムを例示できる。電解液E中のリチウム塩の濃度は0.01〜0.5mol/Lであることが好ましい。
上記の塩はリチウム塩であることがより好ましい。これにより、この電解液を色素増感型太陽電池に使用した場合に、初期の光電変換効率を更に上昇させることが可能であるだけでなく、高い耐久性を維持できる。これは、リチウム塩を用いると、沃素化合物、炭素数3〜11の飽和炭化水素基を有するベンゾイミダゾール誘導体、及び水などの不純物と反応し、耐久性向上の効果が小さくなる場合があるのに対して、リチウム塩の代わりに、例えばチオシアン酸グアニジンなどのグアニジン塩を、上記の炭素数3〜11の飽和炭化水素基を有するベンゾイミダゾール誘導体との組み合わせで用いることにより、耐久性向上の効果を小さくする反応が抑制されるためであると推測される。
シール材5は、電解液Eが、半導体電極2及び対極CEの側面から外部に漏れることを防止するためのものである。このシール材5としては、例えば、ポリエチレン等の熱可塑性樹脂フィルム、あるいはエポキシ系接着剤を使用することができる。
また、電解液Eを密封する目的で、シール材5に対し、光電極10及び対極CEを一体化するために使用する接着剤としては、電解液Eの成分ができる限り外部に漏洩しないように封止できるものであればよく、特に制限されないが、例えば、エポキシ樹脂、シリコン樹脂、エチレン/メタクリル酸共重合体、表面処理ポリエチレンからなる熱可塑性樹脂などを用いることができる。
次に、色素増感型太陽電池20の製造方法について説明する。
まず透明電極1を準備する。透明電極1は、TCOガラス基板等の透明基板4上に、先に述べたフッ素ドープSnO等の透明導電膜3を、スプレーコート法等の公知の薄膜製造技術を用いて形成することができる。透明導電膜3は、スプレーコート法の他にも、真空蒸着法、スパッタリング法、CVD法及びゾルゲル法等の公知の薄膜製造技術を用いて形成することができる。
次に、透明電極1の透明導電膜3上に半導体電極2を形成する。半導体電極2は以下のようにして形成される。
まず、酸化チタン粒子、分散剤、増粘剤、溶媒などを含む酸化チタン粒子含有組成物を準備する。そして、この酸化チタン粒子含有組成物を透明電極1の透明導電膜3上に塗布して焼成する。こうして、透明電極1の透明導電膜3上に半導体電極2が形成される。
ここで、酸化チタン粒子含有組成物の塗布方法は、例えばバーコーター法、印刷法などが挙げられる。
焼成の温度は、酸化チタン粒子含有組成物の組成にもよるため一概には言えないが、通常は300〜600℃であり、好ましくは400〜600℃である。焼成は通常、空気中等の酸化性雰囲気下で行われる。
次に、半導体電極2中に、浸着法等の公知の技術により増感剤を付着させる。こうして光電極10が得られる。このとき、増感剤は半導体電極2に付着(化学吸着、物理吸着または堆積など)させることにより付着させればよい。この付着方法は、例えば色素を含む溶液中に光電極10を浸漬するなどの方法を用いることができる。この際、溶液を加熱し還流させるなどして増感剤(例えば増感色素)の吸着、堆積を促進することができる。なお、このとき、色素の他に必要に応じて、銀等の金属やアルミナ等の金属酸化物を半導体電極2中に付着させてもよい。
次に、別途対極CEを形成する。ここで、対極CEの製造方法は特に限定されず、公知の方法により製造することができる。例えば対極CEが透明電極1と同様の構成を有する場合には、先に述べた透明電極1の製造方法と同様にして対極CEを作製すればよい。
次に、対極CEのうち半導体電極2と反対の側の面上に基板(図示せず)を配置し、半導体電極2及び対極CEの側面をシール材5で被覆する。次に、半導体電極2及び光電極10と対極CEとの間に形成される間隙の内部に電解液Eを注入する。
この電解液Eの注入は、例えば、光電極10、対極CE、又は、シール材5に予め設けておいた注入口を利用して行うことができる。この注入口は、電解液Eの注入を完了した後に所定の部材や樹脂により塞がれる。こうして色素増感型太陽電池20が得られる。
(第2実施形態)
図2は、第2実施形態に係る色素増感型太陽電池を示す断面図である。なお、第1実施形態の太陽電池20と同一の構成要素については同一符号を付し、重複する説明は省略する。
図2に示すように、本実施形態の太陽電池30は、多数の細孔を有した構造を有する多孔体層PSを半導体電極2と対極CEとの間に導入し、さらに、対極CEの形状及び構成を下記のようにしたこと以外は第1実施形態の太陽電池20と同様の構成を有している。
すなわち、多孔体層PSは、電解液Eを保持可能であり、電子伝導性を有さない多孔体であれば特に限定されない。例えば、多孔体層PSとして、ルチル型の酸化チタン粒子により形成した多孔体を使用してもよい。また、ルチル型の酸化チタン以外の構成材料としては、ジルコニア、アルミナ、シリカ等が挙げられる。更に、この多孔体層PSは、光電極10を透過する光を反射してその反射光を再び光電極10内に照射する光反射層としての機能も有している。これにより、光電極10における光の利用効率を向上させることができる。また、この電解液Eは半導体電極2内にも保持されている。また、対極CEが多孔質の炭素電極の場合には対極CE中にも保持されている。ここで、多孔体層PSが半導体電極2の裏面F22を覆う部分と、半導体電極2のうち裏面F22に隣接する側面を密着して覆う鍔状の縁部分とを有している。そして、この鍔状の縁部分は、光電極10のうちの透明電極1を貫通して透明基板4に接触している。具体的には、鍔状の縁部分は、透明電極1の受光面F1の法線方向に延びており、透明電極1と導通している。
この透明電極1と多孔体層PSとの接続部についてより詳細に説明すると、この接続部において、透明電極1の透明導電膜3の一部は、例えばレーザスクライブ等の技術により完全に削りとられ、透明基板4の表面が露出される深さの溝9が形成されている。そして、この溝9の部分に多孔体層PSの鍔状に形成された縁部分が挿入されている。
次に、対極CEについて説明する。図1に示した太陽電池20では対極CEとして透明電極1と同様の構成を有する電極が採用されているのに対し、本実施形態に係る太陽電池30では、対極CEとして、導電性の炭素材料を構成材料として含む炭素電極が採用されている。
対極CE(炭素電極)は、例えば、カーボンブラック粒子と、グラファイト粒子と、アナターゼ型の酸化チタン粒子等の導電性酸化物粒子とを構成材料として形成された多孔質の電極である。この多孔質の対極CE(炭素電極)の細孔内には、電解液Eが保持される。なお、多孔質の炭素電極である対極CE中には、例えば、電極反応の速度をより速やかに進行させる観点から、Pt微粒子等の触媒微粒子が分散担持されていてもよい。
この対極CE(炭素電極)も、多孔体層PSのうち半導体電極2の裏面F22を覆う部分を覆う部分と、多孔体層PSの鍔状の縁部分とを密着して覆うための鍔状の縁部分とを有している。そして、この対極CE(炭素電極)の鍔状の縁部分も、光電極10の透明電極1の受光面F1の法線方向に延びてその先端が透明電極1の透明導電膜3の表面に密着するように接続されている。
更に、対極CE(炭素電極)のうち多孔体層PSと反対側の面上には、防湿フィルム7が隣接するように配置される。また、半導体電極2の側面のうち多孔体層PSの鍔状の縁部分で覆われていない部分、及び、多孔体層PSの側面のうち、対極CEの鍔状の縁部分で覆われていない部分は、図1に示した太陽電池20に使用されているものと同様のシール材5を密着させることによりシールされている。更に、対極CEの鍔状の縁部分の外表面に対してもシール材5が密着するように配置されている。このように、防湿フィルム7と、シール材5を配置することにより、半導体電極2及び多孔体層PSのそれぞれの内部に含有されている電解液の電池40外部への逸散が充分に防止される。
以上のように、太陽電池30は、光電極10の透明電極1に多孔体層PSと対極CEとがそれぞれ一体化された構成を有している。そして、多孔体層PSの鍔状の縁部分により、光電極10と対極CEとの電気的な接触が防止されている。なお、光電極10と対極CEとの電気的な接触(光電極10と対極CEとの間での電子移動)が充分に防止されるのであれば、図2において、多孔体層PSの鍔状の縁部分を設けずに、半導体電極2の側面と対極CEの鍔状の縁部分の内側面とが見かけ上接触している状態の構成としてもよい。この場合、溝9内には半導体電極2の構成材料が挿入される。
次に、太陽電池30の製造方法について説明する。
先ず、透明電極1を準備する。透明電極1の形成方法は、基本的には、先に述べた太陽電池20の製造方法で説明した透明電極1の製造方法と同様である。但し、本実施形態では、透明導電膜3を透明基板4上に形成した後、レーザスクライブ処理により、透明導電膜3の一部を削り、透明基板4の表面を露出させ、内部に充填物の無い状態の溝9(図2参照)を形成する点で第1実施形態における透明電極1の形成方法と相違する。
この溝9を形成した後、透明電極1の透明導電膜3上に半導体電極2の前駆体層(又は半導体電極2)を形成する(第1工程)。この場合、溝9を回避するように透明導電膜3の表面上に、上述した酸化チタン粒子含有組成物を塗布し、焼成又は紫外線照射することによって半導体電極2を形成する。但し、このとき、溝9中にも半導体電極2の前駆体層(又は半導体電極2)が形成されるようにし、次いで、レーザスクライブ処理により、溝9を埋める半導体電極2の前駆体層(又は半導体電極2)の部分を削り取り、再び透明基板4の表面を露出させ、内部に充填物の無い状態の溝9(図2参照)を形成してもよい。
次に、絶縁性の多孔体材料を含む液を調製し、当該液を半導体電極2上に塗布し、次いで乾燥させることにより、半導体電極2と、半導体電極2上に形成される多孔体層PSの前駆体層とを備えた積層体を得る。ここで、多孔体層PSの前駆体層(又は多孔体層PS)は、例えば、ルチル型の酸化チタン等の電気的絶縁性の多孔体層PSの構成材料を含む分散液(スラリー)を調製し、これを半導体電極2の面F22上に塗布し乾燥させることにより得ることができる。
ここで、多孔体層PSの前駆体層を形成した後、更に、空気中等の酸化雰囲気下、400〜600℃の温度範囲で熱処理することにより、多孔体層PSの前駆体層を焼成して多孔体層PSを形成してもよい。この場合、熱処理の温度が400℃未満であると、前駆体層の焼成を十分に行うことができなくなる傾向が大きくなる。また、熱処理の温度が600℃を超えると、透明電極1の電気抵抗が増大する傾向が大きくなると共に透明基板4に歪みが発生し多孔体層PSの前駆体層(又は、焼成後の多孔体層PS)の一部又は全部が剥離し電池性能が低下する傾向が大きくなる。
ただし、多孔体層PSの前駆体層を焼成して多孔体層PSを形成するための熱処理を省いても、後で、半導体電極2の前駆体層及び多孔体層の前駆体層の熱処理を一括して行うことにより、多孔体層PSの前駆体層を焼成して多孔体層PSを形成することができる。このため、製造効率を向上させる観点からは、ここの段階での熱処理は省くことが好ましい。
なお、半導体電極2の前駆体層(又は半導体電極2)の作製が完了した段階で透明電極1に溝9が形成されていない場合には、レーザスクライブ処理により、多孔体層PSの前駆体層(又は多孔体層PS)の一部を削り、透明基板4の表面を露出させ、内部に充填物の無い状態の溝9(図2参照)を形成すればよい。このとき、レーザスクライブ処理により、多孔体層PSの鍔状の縁部分のうち対極CE(炭素電極)が形成される側の表面を削り、多孔体層PSの形状を整える。
次に、導電性の炭素材料を含む液を調製し、当該液を、上記のようにして得られる積層体上に塗布し、次いで乾燥させることにより、積層体上に対極CE(炭素電極)の前駆体層を形成する。
対極CE(炭素電極)の前駆体層を形成する方法は特に限定されず、例えば、以下の手法で形成することができる。すなわち、カーボンブラック粒子と、グラファイト粒子と、アナターゼ型の酸化チタン粒子等の導電性酸化物粒子と、アセチルアセトン等の有機溶媒と、イオン交換水と、界面活性剤とを含むスラリー(或いはこのスラリーに増粘剤を添加したカーボンペースト)を調製し、これを多孔体層PSの前駆体層上に塗布し乾燥させることにより形成することができる。上記のスラリー(或いはペースト)の塗布、乾燥の一連の作業を繰り返すことにより、得られる対極CE(炭素電極)の厚さを調節することができる。
ここで、対極CE(炭素電極)の前駆体層を形成した後、更に、400〜600℃の温度範囲で熱処理することにより、多孔体層PSの前駆体層を焼成して対極CE(炭素電極)を形成してもよい。この場合、熱処理の温度が400℃未満であると、前駆体層の充分な焼成を行うことができなくなる傾向が大きくなる。
また、熱処理の温度が600℃を超えると、透明電極1の電気抵抗が増大する傾向が大きくなる。また、この場合には、基板4に歪みが発生し、以下に示す(i)〜(iii)の現象のうちの少なくとも1つが発生して電池性能が低下する傾向が大きくなる。
(i):半導体電極2の前駆体層(又は、焼成後の半導体電極2)の一部又は全部が剥離する現象、
(ii):多孔体層PSの前駆体層(又は焼成後の多孔体層PS)の一部又は全部が剥離する現象、
(iii):対極CEの前駆体層(又は焼成後の対極CE)の一部又は全部が剥離する現象。
また、ここでの熱処理は、酸化雰囲気下及び非酸化雰囲気下(酸化剤を含まない雰囲気、例えば、希ガスなどの不活性ガス、窒素などの上記の温度範囲で化学的に不活性なガス中)の何れで行ってもよいが、酸化雰囲気下で行う場合には、対極CE(炭素電極)の劣化をより確実に防止する観点から、400〜550℃の温度範囲で行うことが好ましい。ただし、対極CE(炭素電極)の前駆体層を焼成して対極CE(炭素電極)を形成するための熱処理を省いても、後述の熱処理により、対極CE(炭素電極)の前駆体層を焼成して対極CE(炭素電極)を形成することができるので、製造効率を向上させる観点からは、ここの段階での熱処理は省くことが好ましい。
次に、チタン化合物を含む処理液を調製し、当該処理液中に、透明電極1、半導体電極2、多孔体層PS及び対極CEからなる積層体を浸漬し、次いで、当該積層体を前記処理液から取り出して洗浄し、酸化雰囲気下、400〜600℃の温度範囲で熱処理する。ただし、酸化雰囲気下での熱処理は、対極CEの劣化をより確実に防止する観点から400〜550℃の温度範囲で行うことが好ましい。
この工程における処理手順、処理条件は、先に述べた太陽電池20の製造方法と同様である。すなわち、処理液に含まれるチタン化合物としては、三塩化チタン、チタンアルコキシド又はチタン錯体が好ましい。また、チタン化合物として、四塩化チタンも好ましい。溶媒又は分散媒としては、水、アルコール、エーテル類、ケトン類等が挙げられる。また、これら溶媒又は分散媒のうちの少なくとも2種を任意に混合して使用してもよい。
また、使用する処理液に含まれるチタン化合物が三塩化チタン、チタンアルコキシド又はチタン錯体である場合、処理液中に得られる積層体を浸漬する際の温度は0〜50℃であることが好ましい。
更に、使用する処理液に含まれるチタン化合物が四塩化チタンである場合、処理液中に得られる積層体を浸漬する際の温度は0〜120℃であることが好ましい。また、使用する処理液中のチタン化合物の濃度は0.01〜0.20mol/Lであることが好ましい。
更に、チタン化合物を含む処理液から処理後の積層体を取り出して洗浄する場合の洗浄液としては、希塩酸水溶液、エタノール、又は、メタノールを使用する。なお、この洗浄の処理は、積層体の外表面[半導体電極2(又は半導体電極2の前駆体層)、多孔体層PS(又は多孔体層PSの前駆体層)及び対極CE(又は対極CEの前駆体層)内部の細孔壁の表面を除く]に付着した余分な処理液を除去するための処理である。但し、この洗浄処理においては、半導体電極2(又は半導体電極2の前駆体層)、多孔体層PS(又は多孔体層PSの前駆体層)及び対極CE(又は対極CEの前駆体層)内部の細孔中に侵入させたチタン化合物を含む処理液は積層体外部に除去されないようにする。
次に、半導体電極2中に、浸着法等の公知の技術により増感剤を付着させる(第2工程)。こうして光電極10が得られる。増感剤は上述したように、有機系色素を含む。増感剤を半導体電極2に付着させる方法は、例えば色素を含む溶液中に、得られる積層体(光電極10と多孔体層PSと対極CEを一体化したもの)を浸漬するなどの方法を用いることができる。この際、溶液を加熱し還流させるなどして増感剤(例えば増感色素)の吸着、堆積を促進することができる。なお、このとき、色素の他に必要に応じて、銀等の金属やアルミナ等の金属酸化物を半導体電極2中に付着させてもよい。
次に、積層体(光電極10と多孔体層PSと対極CEを一体化したもの)の大きさに合わせた形状を有するシール材5を準備し、図2に示すように半導体電極2、多孔体層PS及び対極CE3の外部に露出した側面、及び、対極CEの鍔状の縁部の外表面にシール材5をそれぞれ配置し、熱溶着する。
次に、対極CEの裏面(対極CEのうち半導体電極2の裏面F22に平行な面であって、多孔体層PSと接触している面と反対側の外表面)に、図2に示すように防湿フィルム7を配置して熱融着する。
次に、太陽電池30の内部(半導体電極2、多孔体層PS及び対極CE)に上記の電解液Eを注入する。この電解液Eの注入は、例えば、光電極10、対極CE、又は、シール材5に予め設けておいた注入口を利用して行うことができる。この注入口は、電解液Eの注入を完了した後に所定の部材や樹脂により塞がれる。こうして太陽電池30が得られる。
(第3実施形態)
図3は、第3実施形態に係る色素増感型太陽電池を示す断面図である。なお、第1及び第2実施形態の太陽電池と同一の構成要素には同一符号を付し、重複する説明を省略する。
図3に示すように、本実施形態に係る太陽電池40は、複数の電池を併設したモジュールの形態を有する。具体的には、図3に示す太陽電池40は、図2に示した太陽電池30をそれぞれ複数個直列に並設する場合の一例(3個直列に併設する場合)を示している。
さらに具体的に説明すると、図3に示す太陽電池40は、図2に示す太陽電池30を複数個並設させ、各太陽電池30の透明電極を1つの共通の透明電極として使用している。以下、各太陽電池30のうち透明電極を除いた部分を「単セル」と呼ぶこととする。
太陽電池40においては、3つある単セルのうち中央の単セルの対極CEは、透明導電膜3を介して隣の単セルの半導体電極2に電気的に接続され、中央の単セルの半導体電極2は、透明導電膜3を介して、残りの単セルの対極CEに電気的に接続されている。従って、3つの単セルは直列に接続されることとなる。
本実施形態において、透明電極は、透明基板4上に、透明導電膜3及び集電電極6を順次形成した構成を有する。ここで、集電電極6は、光電極10における光電流をより増大させるために透明導電膜3よりも低い抵抗を有している。このような集電電極6としては、例えば銀(Ag)又はチタン(Ti)などの金属が用いられる。また集電電極6の形状は特に限定されず、例えばメッシュ状となっている。
隣り合う単セルのシール材5は、一体化されて隣り合う単セルの間の間隙を充填しており、且つ、すべての単セルの対極CEをも覆っている。従って、各単セルのうちの対極CEと防湿フィルム7との間にもシール材5が設けられることになる。
次に、太陽電池40の製造方法について説明する。
まず透明電極11を準備する。すなわち、透明基板4上に透明導電膜3及び集電電極6を順次形成したものを準備する。次に、単セルの数と同数の溝9を、レーザスクライブ処理法などによって、互いに平行に且つ所定の間隔で形成する。
次に、スクリーン印刷法によって、上述した酸化チタン粒子含有組成物を、透明電極11のうち集電電極6側の表面上に各溝9を回避するように塗布する。酸化チタン粒子含有組成物は、粘度調整剤を含んでいることが好ましい。粘度調整剤を含んでいることにより、印刷後の酸化チタン粒子含有組成物の形状が保持され、流動化が防止されるので、隣り合う酸化チタン粒子含有組成物同士の合体が十分に防止される。その結果、単セル間の短絡が十分に防止された太陽電池40が得られる。
次に、多孔体層PS、対極CEを形成する。半導体電極2への増感剤の付着は、第1実施形態の場合と同様である。次に、すべての単セル(本実施形態では3つ)を覆うようにシール材5を配置して熱溶着させる。最後に、防湿フィルム7をシール材5に貼付して、太陽電池40の製造が完了する。なお、多孔体層PS、対極CE、シール材5の形成方法については、第2実施形態における多孔体層PS、対極CE、シール材5の形成方法と同様である。
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。例えば上記実施形態では、酸化チタン粒子含有組成物を透明電極1上に塗布した後、焼成して半導体電極2が形成されているが、酸化チタン粒子含有組成物を焼成する代わりに紫外線照射することによっても半導体電極2を形成することができる。すなわち、酸化チタン粒子含有組成物を焼成しなくても、紫外線照射することにより、光電流を増大させ得る半導体電極2を得ることができるのである。これは、紫外線照射によって、酸化チタンの光触媒効果が発現し、抵抗成分となる有機成分が分解されることによると本発明者らは考えている。またこのように焼成に代えて紫外線照射を行うことにより半導体電極2を形成して光電極を得る方法は、透明電極1が、高分子フィルムなどの耐熱性の低いものである場合に特に有効である。
紫外線照射後は、酸化チタン粒子含有組成物を加熱処理することが好ましい。この場合、紫外線照射で一旦還元された酸化チタン粒子表面が酸化され、その酸化された半導体電極2の結晶性が向上して半導体電極2における電子伝導性が、加熱処理をしない場合に比べてより向上する。
また、上記第1実施形態では、透明電極1と同様の構成を有する電極を対極CEとして備える太陽電池20について説明したが、この対極CEは、太陽電池30を構成する対極CE、すなわち、炭素電極としてもよい。この場合の対極CE(炭素電極)は、上記と同様の方法で作製できる。
なおこの場合、導電性の炭素材料を含む液を調製し、当該液を、基板上に塗布し、次いで乾燥させて対極CE(炭素電極)の前駆体層を形成した後、更に、400〜600℃の温度範囲で熱処理することにより、細孔を有する多孔質の対極CE(炭素電極)を形成してもよい。また、ここでの熱処理は、酸化雰囲気下及び非酸化雰囲気下(酸化剤を含まない雰囲気、例えば、希ガスなどの不活性ガス、窒素などの上記の温度範囲では化学的に不活性なガス中)の何れで行ってもよいが、酸化雰囲気下で行う場合には、炭素電極の劣化を、より確実に防止する観点から、400〜550℃の温度範囲で行うことが好ましい。
さらに、上記第3実施形態では、太陽電池30を複数個並設させ、各太陽電池30の透明電極を1つの共通の透明電極として使用した太陽電池が示されているが、本発明の太陽電池は、太陽電池20を単セルとして複数個並設させ、各単セルの透明電極を1つの共通の透明電極1として使用した太陽電池であってもよい。この場合、太陽電池は、単セルを並列接続したものとなる。
上記のようにして光電変換効率が高く、従来のものに比べて耐久性が大幅に向上した色素増感型太陽電池を提供することができる。
以下、本発明の実施例を示して、本発明を更に具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定される物ではなく、本発明の技術的思想を逸脱しない範囲での種々の変更が可能である。
(色素増感型太陽電池の作製)
透明導電膜(TCO)付きガラス基板上に、酸化チタン(アナタース型)のナノ粒子(平均粒径20nm)と、有機系分散剤と有機系増粘剤とターピネオール(溶媒)からなる酸化チタンペーストをスクリーン印刷法により塗布し、乾燥した後、450〜550℃で加熱焼成を行った。さらにその上に酸化チタンの粗大粒子(平均粒径200〜400nm)からなる酸化チタンペーストを用いて、反射層として機能する酸化チタン層を積層して、加熱焼成を行った。上記酸化チタン膜つきTCO基板を典型的な赤色色素(N719)の色素溶液に浸漬することにより、酸化チタンナノ粒子上に色素を吸着させ、光電極を作製した。
次に、対極として、電解液を注入する微小孔を設けたTCOガラス基板上に、塩化白金酸のアルコール溶液を塗布した後、350〜450℃で焼成することにより、白金ナノ粒子を有する透明な対極を作製した。
上記の光電極と対極を対向させ、その問に電極間隔を所定間隔に保つスペーサ兼、電解液を封止する機能のあるシールフィルム(ポリオレフィン系熱可塑性樹脂フィルム)を設けて、加熱融着させて、シールフィルムを介して光電極と対極を互いに接合した。
続いて、対極側の微小孔から電解液を注入した後、孔の上部にシールフィルム及びガラス薄板を設けて、シールフィルムを加熱融着させて、電解液を封入した。電解液には、沃素と、沃素イオン源である沃素化合物としてPMIIと、ベンゾイミダゾール誘導体として上記一般式(I)のRが炭素数4(実施例1)、6(実施例2)及び12(比較例1)の直鎖アルキル基であるベンゾイミダゾール誘導体と、を均質に混合したものを用いた。また、ベンゾイミダゾール誘導体に、精製したN−メチル−ベンゾイミダゾールを用いた電解液(比較例2)も作製した。
(加速耐久試験)
作製した色素増感型太陽電池に、60℃恒温下でキセノンランプによる連続光(1 sun)を照射し、加速耐久試験を行った。加速耐久試験の前後において、500Wのキセノンランプを搭載したAM1.5Gソーラシミュレータ(WXS−85−H、ワコム電創社製)とIVテスター(IV−9701、ワコム電創社製)を用いて、色素増感型太陽電池のIV特性を計測し、光電変換効率を求めた。
図4は、実施例及び比較例の電解液を用いて作製した色素増感型太陽電池を60℃、1 sun連続光照射の加速耐久試験に供した際の光電変換効率の推移を示したグラフである。図4において、縦軸は試験開始時の実施例1の光電変換効率を100%とした場合の光電変換効率を示す。その結果、比較例2の電解液に比べて、実施例1、実施例2の電解液を用いた色素増感型太陽電池は、光電変換効率をより長時間維持し、耐久性に優れることが判明した。また、比較例1の電解液を用いた結果に示されるように、上記一般式(I)のRが炭素数12の直鎖アルキル基であるベンゾイミダゾール誘導体では耐久性の向上が認められなかった。
(加速耐久試験)
沃素と、PMIIと、上記一般式(I)のRが炭素数4の直鎖アルキル基であるベンゾイミダゾール誘導体と、粘度13mPa・sのイミダゾリウム塩と、を含む電解液(実施例3)及び、沃素と、PMIIと、上記一般式(I)のRが炭素数6の直鎖アルキル基であるベンゾイミダゾール誘導体と、粘度13mPa・sのイミダゾリウム塩と、を含む電解液(実施例4)を用いて、色素増感型太陽電池を作製した。また、沃素と、PMIIと、N−メチル−ベンゾイミダゾールと、有機溶媒のガンマブチロラクトンを含む電解液(比較例3)を用いて、色素増感型太陽電池を作製した。
図5は、実施例3、実施例4及び比較例3の電解液を用いて作製した色素増感型太陽電池を60℃、1 sun連続光照射の加速耐久試験に供した際の光電変換効率の推移を示したグラフである。図5において、縦軸は、実施例3の試験開始時の光電変換効率を100%とした場合の光電変換効率を示す。その結果、比較例3の電解液に比べて、実施例3及び実施例4の電解液を用いた色素増感型太陽電池は、より高い光電変換効率を示し、また、より長い耐久性を示した。
(交流インピーダンス測定)
図6(A)は色素増感型太陽電池の内部構造を示す模式図である。Rは対極と電解液の界面における酸化還元反応抵抗を示し、Rは光電極と電解液の界面抵抗を示し、Rは電解液のI 及びIの拡散抵抗を示し、Rは透明導電膜(TCO)の抵抗を示す。図6(B)は、図6(A)の色素増感型太陽電池に相当する回路図である。
上記の加速耐久試験の前後において、周波数アナライザ(5080、NF ELECTRONIC INSTRUMENTS社製)とポテンシオスタット(HZ−3000、北斗電工製)を用いて、色素増感型太陽電池の交流インピーダンス計測を実施した。その際、キセノンランプからの白色光照射下で、開放端電圧付近でインピーダンスの10mHz−100kHzでの周波数帯域での周波数応答を測定した。
図7は、実施例2の電解液及び比較例2の電解液を用いた色素増感型太陽電池の交流インピーダンス測定を行った結果を示すグラフである。その結果、実施例2の電解液を用いた色素増感型太陽電池では、加速耐久試験の前後において、沃素イオンの拡散抵抗に相当するR成分の円弧がほとんど変化しなかった。これは、加速耐久試験後も沃素レドックスが機能しており、沃素イオンの拡散抵抗が小さいことを示す。図には示さないが、実施例1の電解液を用いた色素増感型太陽電池においても、実施例2の電解液を用いた色素増感型太陽電池と同様の結果が得られた。これに対し、比較例2の電解液を用いた色素増感型太陽電池では、加速耐久試験後において、R成分の円弧が増大した。これは、沃素イオンの拡散抵抗が増大した結果、加速耐久試験後に性能が劣化したことを示す。
N−メチル−ベンゾイミダゾールは、酸化チタン粒子上に吸着した有機系色素の隙間に存在し、有機系色素から酸化チタンに注入された電子が、電解液に逆電子移動することを防止する効果を持つことが知られている。今回、ベンゾイミダゾール誘導体に結合する飽和炭化水素鎖をメチル基よりも長くすることにより、疎水性効果を持たせたことで、耐久性を阻害する水分などの不純物による、有機系色素やベンゾイミダゾール誘導体の攻撃を抑制することができ、耐久性を向上できたと考えられる。しかし、炭化水素鎖が長すぎると耐久性の向上は見られなかった。
第1実施形態に係る色素増感型太陽電池を示す断面図である。 第2実施形態に係る色素増感型太陽電池を示す断面図である。 第3実施形態に係る色素増感型太陽電池を示す断面図である。 光電変換効率の推移を示したグラフである。 光電変換効率の推移を示したグラフである。 (A)は色素増感型太陽電池の内部構造を示す模式図である。(B)は、(A)の色素増感型太陽電池に相当する回路図である。 (A)は、実施例2の電解液を用いた色素増感型太陽電池の交流インピーダンス測定を行った結果を示すグラフである。(B)は、比較例2の電解液を用いた色素増感型太陽電池の交流インピーダンス測定を行った結果を示すグラフである。
符号の説明
1…透明電極(透明導電性基板)、2…半導体電極、3…透明導電膜、4…透明基板、5…シール材、6…集電電極、7…防湿フィルム、9…レーザスクライブにより形成され
た溝、10…光電極、20、30、40…色素増感型太陽電池、CE…対極、F1,F2,F3…受光面、F22…半導体電極2の裏面、PS…多孔体層、E…電解液。

Claims (4)

  1. 沃素と、沃素イオン源である沃素化合物と、ベンゾイミダゾール環に直接結合した炭素数3〜11の飽和炭化水素基を有するベンゾイミダゾール誘導体と、を含み、
    前記沃素化合物が、イオン性液体であり、
    前記沃素化合物とは別に、粘度10〜30mPa・sのイオン性液体を更に含み、当該イオン性液体が、エチルメチルイミダゾリウム ビス(フルオロスルホニル)イミド、アリルメチルイミダゾリウム ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド又はエチルメチルイミダゾリウムテトラシアノボレートである、電解液。
  2. グアニジン塩及びリチウム塩から選ばれる、少なくとも1種の塩を更に含む、請求項に記載の電解液。
  3. 前記塩がグアニジン塩である、請求項に記載の電解液。
  4. 請求項1〜のいずれか一項に記載の電解液を備える、色素増感型太陽電池。
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