JP4609104B2 - 定着装置および画像形成装置 - Google Patents
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Description
このような定着ベルト部材の回動速度の変動を抑制するための方法として、定着ベルト部材の端部と加圧ロール部材の端部とのそれぞれ対応する位置に各々ギヤを配設し、両者を噛合させながら回転させたり、定着ベルト部材の端部と加圧ロール部材の端部とのそれぞれ対応する位置に各々凹部(または凸部)と凸部(または凹部)とを配設し、両者を係合させながら回転させるように構成し、定着ベルト部材と加圧ロール部材との間に速度差が生じるのを抑制する技術も提案されている(例えば、特許文献2参照)。
さらに、駆動力伝達部材は、定着ベルト部材の両端部にて定着ベルト部材と接着剤により固定されることを特徴とすることができる。特に、駆動力伝達部材は、定着動作時の回転により定着ベルト部材の幅方向中央部側に向かう力が加わるように形成されたハス歯状のギヤを有することを特徴とすることもできる。
[実施の形態1]
図1は本実施の形態が適用される画像形成装置を示した概略構成図である。図1に示す画像形成装置は、一般にタンデム型と呼ばれる中間転写方式の画像形成装置であって、電子写真方式により各色成分のトナー像が形成される複数の画像形成ユニット1Y,1M,1C,1K、各画像形成ユニット1Y,1M,1C,1Kにより形成された各色成分トナー像を中間転写ベルト15に順次転写(一次転写)させる一次転写部10、中間転写ベルト15上に転写された重畳トナー画像を記録材(記録紙)である用紙Pに一括転写(二次転写)させる二次転写部20、二次転写された画像を用紙P上に定着させる定着装置60を備えている。また、各装置(各部)の動作を制御する制御部40を有している。
一方、用紙Pへの転写が終了した後、中間転写ベルト15上に残った残留トナーは、中間転写ベルト15の回動に伴ってクリーニング部まで搬送され、クリーニングバックアップロール34および中間転写ベルトクリーナ35によって中間転写ベルト15上から除去される。
図2は本実施の形態の定着装置60の構成を示す概略正面図であり、図3は図2におけるXX断面図である。図2および図3に示すように、本実施の形態の定着装置60は、無端状の周面を有する定着ベルト部材の一例としての定着ベルト61、定着ベルト61の外周面に圧接して配設され、定着ベルト61の回動に従動して回転する加圧部材(加圧ロール部材)の一例としての加圧ロール62、定着ベルト61の内側にて定着ベルト61を介して加圧ロール62に圧接配置される押圧パッド63、押圧パッド63等を支持する支持部材の一例としてのパッド支持部材64、定着ベルト61の外周面形状に倣って形成されるとともに定着ベルト61とは所定の間隙を持って配設され、定着ベルト61を長手方向に亘って電磁誘導加熱する電磁誘導加熱部材65、定着ベルト61の両端部に配設され、定着ベルト61の両端部の断面形状を円形に維持しつつ定着ベルト61を周方向に回転駆動する駆動力伝達部材の一例としてのエンドキャップ部材66、定着ベルト61の内側にて定着ベルト61の内周面に沿って配設され、電磁誘導加熱部材65による定着ベルト61への加熱効率を高めるフェライト部材67、定着ベルト61の温度を検知する温度検知センサ70により主要部が構成されている。
基層61aとしては、フッ素樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、PEEK樹脂、PES樹脂、PPS樹脂、PFA樹脂、PTFE樹脂、FEP樹脂等のフレキシブルで機械的強度に優れ、耐熱性を有する材料が好適に用いられる。厚さは、10〜150μm、好ましくは厚さ30〜100μmが適している。厚さが10μmより小さい場合には定着ベルト61としての強度が得られず、厚さが150μmより大きい場合には、フレキシブル性が損なわれ、また熱容量が大きくなって温度立ち上がり時間が長くなるからである。本実施の形態では、厚さ80μmのポリイミド樹脂からなるシート状部材を使用している。
導電性層61bは、電磁誘導加熱部材65が誘起する磁界により誘導発熱する層(発熱層)であり、鉄、コバルト、ニッケル、銅、アルミニウム、クロム等の金属層を1〜80μm程度の厚さで形成したものが用いられる。また、導電性層61bの材質および厚さは、電磁誘導による渦電流によって充分な発熱が得られる固有抵抗値を実現するように適宜選択される。本実施の形態では、厚さ10μm程度の銅を使用している。
ところで、カラー画像を印刷する場合、特に写真画像等の印刷時には、用紙P上で大きな面積領域に亘ってベタ画像が形成されることが多い。そのため、用紙Pやトナー像の凹凸に定着ベルト61の表面(表面離型層61d)が追従できない場合には、トナー像に加熱ムラが発生して、伝熱量が多い部分と少ない部分とで定着画像に光沢ムラが発生する。すなわち、伝熱量が多い部分は光沢度が高く、伝熱量が少ない部分では光沢度が低くなる。このような現象は、弾性層61cの厚さが10μmより小さい場合に生じ易い。そこで、弾性層61cの厚さは、10μm以上、より好ましくは50μm以上に設定するのが好ましい。一方、弾性層61cが500μmより大きい場合には、弾性層61cの熱抵抗が大きくなり、定着装置60のクイックスタート性能が低下する。そこで、弾性層61cの厚さは、500μm以下、より好ましくは300μm以下に設定するのが好ましい。
また、弾性層61cのゴム硬度としては、高すぎると用紙Pやトナー像の凹凸に追従しきれず定着画像に光沢ムラが発生し易い。そこで、弾性層61cのゴム硬度としては50゜(JIS−A:JIS−K A型試験機)以下、より好ましくは35゜以下が適している。
さらに、弾性層61cの熱伝導率λに関しては、λ=6×10−4〜2×10−3[cal/cm・sec・deg ]が適している。熱伝導率λが6×10−4[cal/cm・sec・deg ]よりも小さい場合には熱抵抗が大きく、定着ベルト61の表層(表面離型層61d)における温度上昇が遅くなる。一方、熱伝導率λが2×10−3[cal/cm・sec・deg ]よりも大きい場合には、硬度が過度に高くなったり、圧縮永久歪みが悪化する。そのため、熱伝導率λは6×10−4〜2×10−3[cal/cm・sec・deg ]、より好ましくは8×10−4〜1.5×10−3[cal/cm・sec・deg ]に設定するのが好ましい。
また、表面離型層61dの厚さは、5〜50μmが好ましい。表面離型層61dの厚さが5μmよりも小さい場合には、塗膜時に塗りムラが生じて離型性の悪い領域が形成されたり、耐久性が不足するといった問題が発生するからである。また、表面離型層61dが50μmを超える場合には、熱伝導が悪化するという問題が発生し、特に樹脂系の材質で形成された表面離型層61dでは硬度が高くなりすぎ、弾性層61cが有する機能を低下させるからである。なお、本実施の形態では、厚さ30μmのPFAを使用している。
ここで、表面離型層61dにおけるトナー離型性を向上するため、表面離型層61dにトナーオフセット防止のためのオイル(離型剤)を塗布するオイル塗布機構を定着ベルト61に当接させて配設することも可能である。特に、低軟化物質を含有しないトナーを用いた場合には効果的である。
押圧パッド63の定着ベルト61との接触面の断面形状は、定着装置60に求められる用紙剥離性能や定着性能により任意に設定することができる。本実施の形態の定着装置60では、エンドキャップ部材66によって形状が円形に維持された定着ベルト61と略同じ曲率を持つ曲面で形成されている。ただし、剥離性能や定着性能をさらに高めるために、接触面の曲率を用紙Pの搬送方向に沿って変化するように形成することも可能である。
さらに、パッド支持部材64の加圧ロール62と対向する部分には押圧パッド63が取り付けられており、定着ベルト61を介して加圧ロール62から押圧パッド63に作用する押圧力をパッド支持部材64によって負担している。そのため、パッド支持部材64を構成する材質としては、加圧ロール62から押圧力を受けた際の撓み量が所定のレベル以下、好ましくは1mm以下となる程度の剛性を有するものが用いられる。そのため、後述する電磁誘導加熱部材65による磁束の影響によって加熱されにくい必要をも考慮して、例えば、ガラス繊維入りPPS、フェノール、ポリイミド、液晶ポリマー等の耐熱性樹脂、耐熱ガラス、固有抵抗が小さく誘導加熱の影響を受けにくいアルミニウム等の金属が用いられる。本実施の形態では、パッド支持部材64は、本体部分の断面形状が加圧ロール62からの押圧力方向に長軸を有する長方形で形成され、軸部64aの断面形状が略円形に形成されたアルミニウムで構成されている。
エンドキャップ部材66を構成する材質としては、機械的特性に優れ、耐熱性の高い所謂エンジニアリングプラスチックスが適している。例えば、フェノール樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、PEEK樹脂、PES樹脂、PPS樹脂、LCP樹脂、それらにガラスやカーボンを含有させた樹脂等を選択することができる。
このように、定着ベルト61の両端部にエンドキャップ部材66を装着することによって、定着ベルト61におけるエンドキャップ部材66の固定部66aの端面から内側に10数mm離れた部分においても、定着ベルト61の外周面より外力を与えればそれによって凹むことはあるが、定着ベルト61全体にねじりトルクを与えた場合でも定着ベルト61にねじれは生じにくくなり、容易に座屈することはなくなる。一般に、定着ベルト61のようなベルト部材を用いた定着装置に作用するトルクは0.1〜0.5N・mであり、この程度のトルクに対しては、定着ベルト61の両端部にエンドキャップ部材66を装着した構成によって、定着ベルト61において座屈が生じることを抑制することが可能となる。
また、定着ベルト61の両端部から軸方向に向けて圧縮力を受けた場合においても、定着ベルト61はこのような軸方向の圧縮力によって容易に座屈することもない。このような軸方向に作用する圧縮力は、定着ベルト61がいずれか一方に片寄り移動するのを規制する際に発生する。しかし、このような圧縮力の大きさは一般には1〜5Nであって、この程度の圧縮力に対しても、定着ベルト61の両端部にエンドキャップ部材66を装着した構成によって、座屈することを抑制することが可能となる。
また、エンドキャップ部材66が配設されることで定着ベルト61の両端部の断面形状が円形を維持するため、定着ベルト61の内部には押圧パッド63以外に定着ベルト61を支持する部材がなくとも(図3参照)、定着ベルト61の幅方向における通紙域に対応する部分においても、両端部にエンドキャップ部材66が装着された定着ベルト61自体の剛性によって略一定の円形を維持しながら回転する。
さらに、本実施の形態の定着装置60では、定着ベルト61の半径方向に関して、押圧パッド63の外周面(定着ベルト61の内周面と当接する面)の位置と、エンドキャップ部材66の固定部66aの外周面の位置とが略一致するように設定されている。すなわち、押圧パッド63の外周面と固定部66aの外周面とは略同じ平面内に位置するように設定している。それにより、定着ベルト61の回転軸の位置が定着ベルト61の両端部と通紙域とで略一致するように設定されるので、定着ベルト61の安定した回転を実現することが可能となる。
台座65aは、絶縁性および耐熱性を有する材料からなり、例えば、フェノール樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、液晶ポリマー樹脂等を用いることができる。また、励磁コイル65bとしては、例えば、耐熱性の絶縁材料(例えば、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂等)によって相互に絶縁された直径φ0.5mmの銅線材を複数本束ねたリッツ線を長円形状や楕円形状、長方形状等の閉ループ状に複数回(例えば、11ターン)巻いたものが用いられる。そして、励磁コイル65bは接着剤によって固められることでその形状を維持しながら台座65aに固定されている。
また、励磁コイル65bおよびフェライト部材67と、定着ベルト61の導電性層61bとの間の距離は、可能な限り近接させて設置することが磁束の吸収効率を高めるために好ましいことから、これらの距離は5mm以内、例えば、2.5mm程度に設定されている。この場合、かかる設定条件を満たせば、励磁コイル65bと定着ベルト61の導電性層61bとの間の距離は一定である必要はない。
なお、その際には、定着ベルト61の温度は、温度検知センサ70での計測値に基づいて、画像形成装置の制御部40(図1参照)が励磁コイル65bに供給する電力量または高周波電流の供給時間等を制御することにより、所定の温度に維持されている。
本実施の形態の画像形成装置において、トナー像を形成する動作が開始されるのと略同時に、定着装置60では定着ベルト61を駆動するための駆動モータ80および電磁誘導加熱部材65に電力が供給され、定着装置60が起動する。すると、定着ベルト61が回動されて、加圧ロール62がそれに従動して回転する。さらに、定着ベルト61が電磁誘導加熱部材65と対向する加熱領域を通過することで、定着ベルト61の導電性層61bには渦電流が誘導され、定着ベルト61は発熱する。そして、定着ベルト61が均一に所定の温度に加熱された状態で、未定着トナー像を担持した用紙Pが、定着ベルト61と加圧ロール62とが圧接された定着ニップ部Nに送り込まれる。通紙域における定着ニップ部N内では、用紙Pおよび用紙Pに担持されたトナー像は加熱および加圧され、トナー像が用紙P上に定着される。その後、用紙Pは定着ベルト61から剥離されて、画像形成装置の排出部に設けられた排紙載置部に搬送される。その際に、定着後の用紙Pを定着ベルト61から完全に分離するための補助手段として、定着ベルト61の定着ニップ部Nの下流側に、剥離補助部材75を配設することも可能である。
本実施の形態の定着装置60では、定着ベルト61がトナー像の定着に必要な所定の温度に均一に加熱されているので、光沢ムラやオフセット等の発生が抑制された良好なトナー像が形成される。また、高速に定着ベルト61を加熱することができるので、オンデマンド性に優れ、待機時の電力消費も大きく低減することができる。さらに、定着ベルト61は、両端部ではエンドキャップ部材66の固定部66aが装着されてエンドキャップ部材66が接触しているが、通紙域では押圧パッド63以外の部材に接触することなく回動する。そのため、定着ベルト61と他の部材との接触による熱の流出を極めて少なく抑えることができるので、定着ベルト61に生じた熱を定着処理に効率の良く使用することができる。
さらに、定着ベルト61の回動速度、及び回転軌道を安定させることが可能となる。そのため、定着ベルト61を周方向に亘って均一に加熱することが可能となる。図6は、定着ベルト61が回動する際の定着ベルト61の周方向における表面温度の変動を計測した結果を表す図である。図6に示したように、本実施の形態の定着装置60では定着ベルト61の温度ムラは4℃程度であり、定着ベルト61が加圧ロール62に従動された構成(従来例)ではかかる温度ムラが10℃程度であったことと比較して、格段に改善させることも可能となる。
具体的には、固定部66aを定着ベルト61に対して内嵌挿入し、固定部66aの外周面と定着ベルト61の内周面との接合面の全周面に接着剤を塗布して固定している。この場合、固定部66aを定着ベルト61に対して外嵌挿入し、固定部66aの内周面と定着ベルト61の外周面とを接合させ、固定部66aの内周面と定着ベルト61の外周面との接合面の全周面に接着剤を塗布して固定することもできる。また、他の方法としては、固定部66aを定着ベルト61に挿入し、固定部66aの外周面と定着ベルト61の内周面との接合面の全周面において定着ベルト61とエンドキャップ部材66とを強く嵌合させて固定している。さらには、定着ベルト61の外側から定着ベルト61を介して固定部66aをリング状の締め具で締め付けて、固定部66aの外周面と定着ベルト61の内周面との接合面の全周面において定着ベルト61とエンドキャップ部材66とを強く嵌合させて固定している。
ところが、本実施の形態の定着装置60では、回転駆動する対象が強度・剛性の低い薄肉の定着ベルト61であるため、溝部または孔部と凸部との嵌合部分による部分的な結合方法では、嵌合部分に応力が集中することによって定着ベルト61の強度が嵌合部分において容易に限界を超えてしまい、定着ベルト61に亀裂等の破損が生じる。そのために、回転駆動力を定着ベルト61に効率的に伝達することができないばかりか、最終的には定着ベルト61の破断が生じて、定着装置の機能を不能にさせるという事態を招く可能性が大きい。
また、その一方で、一方の端部において定着ベルト61とエンドキャップ部材66とを接着剤を用いて結合固定し、かかる端部とは反対側の端部においては、エンドキャップ部材66の固定部66aの外径が、定着ベルト61のベルト内径よりもやや大きい状態で形成しておき、定着ベルト61を押し広げるように嵌め合わせて固定するように構成することもできる。この場合には、さらに嵌合部分をリング状の締め具によって締め付けることもできる。このように、エンドキャップ部材66の固定部66aを定着ベルト61に嵌合して固定することによっても、接着剤によって固定する端部の場合に比べて結合力は若干低下するものの、接合面の一部分に応力が集中しないように、エンドキャップ部材66から伝達される回転駆動力をエンドキャップ部材66と定着ベルト61との接合面の周面全域に亘って摩擦力によって均等に伝達しながら、充分な駆動伝達力を伝達することが可能である。
そのため、定着ベルト61の一方の端部において定着ベルト61とエンドキャップ部材66とを接着剤を用いて固定し、他方の端部において定着ベルト61とエンドキャップ部材66とを嵌合させて固定することにより、それぞれの端部で異なる本実施の形態の結合方法を用いることによっても、定着ベルト61を駆動するのに必要なトルクの反力として定着ベルト61の両端部に作用するせん断力を、定着ベルト61の両端部に装着したそれぞれのエンドキャップ部材66の固定部66aにおいて分散させることができる。そのため、応力集中により定着ベルト61が破損することを確実に抑制しながら、安定して定着ベルト61を回転駆動させることが可能となる。
図7は定着ベルト61の内部に、押圧パッド63やフェライト部材67、さらには温度検知センサ70等が取り付けられたパッド支持部材64を装着する際の組立の方法を示す図である。かかる構成を採用することにより、定着装置60の量産時の組立工程においては、まず定着ベルト61は、その定着ベルト61の一方の端部にエンドキャップ部材66が接着剤を用いた結合方法で固定された状態で、一つのパーツとして扱うことができる。そして、図7に示すように、このエンドキャップ部材66が接着固定された定着ベルト61の内部に、エンドキャップ部材66が接着されていない端部側から、押圧パッド63、フェライト部材67、温度検知センサ70等が取り付けられたパッド支持部材64が挿入される(図中矢印C)。その際に、パッド支持部材64の軸部64aにはリード線を通すための溝部(凹部)64bが設けてあり、温度検知センサ70のリード線は、その溝部64bから外部に引き出すことができる。そして、エンドキャップ部材66を嵌合する側の定着ベルト61の端部に、エンドキャップ部材66を定着ベルト61のベルト内径をやや押し広げるように嵌め込む(図中矢印D)。その際には、温度検知センサ70のリード線をエンドキャップ部材66の内径を通してから、エンドキャップ部材66を定着ベルト61に嵌合させる。
このように、定着ベルト61の一方の端部においてエンドキャップ部材66を接着剤によって固定し、他方の端部においてエンドキャップ部材66を嵌合固定するように構成することで、定着ベルト61の内部に対して複数の部材を容易に組み込むことができるので、定着装置60の量産時における組み立て性の向上を図ることが可能となる。
本実施の形態の定着装置60においては、少なくとも定着ベルト61とエンドキャップ部材66とを嵌合させて固定する端部側に装着するエンドキャップ部材66は、ギヤ部66bのギヤ歯をハス歯形状に形成している。そして、そのギヤ部66bのギヤ歯の傾き方向は、図8(a)に示すように、通常の定着動作時における定着ベルト61の回転方向に伝達ギヤ85から回転駆動力が伝わった際には、定着ベルト61と嵌合される方向(定着ベルト61の幅方向の中央部に向かう方向:図中矢印E)に力が加わるように設定されている。
このように、少なくともエンドキャップ部材66を嵌合させて固定する端部側において、ギヤ部66bのギヤ歯の傾き方向を上記のように設定することにより、通常の定着動作時には、嵌合固定側のエンドキャップ部材66は常時定着ベルト61の幅方向中央部側に力を受けながら回転する。そのため、ギヤ部66bのギヤ歯を平歯で形成した場合(図8(b)参照)とは異なり、エンドキャップ部材66と定着ベルト61との嵌合が緩むことで(図中F部分)、エンドキャップ部材66が定着ベルト61から脱落したり、エンドキャップ部材66と定着ベルト61との間に隙間が生じて内部から潤滑剤が漏れ出したり、さらにはエンドキャップ部材66のギヤ部66bがフレーム69と擦れてトルクアップすることで定着ベルト61の回動速度が遅くなったり、定着ベルト61が座屈して破損に至る等のトラブルの発生を抑制することが可能となる。
ところで、上述したように、定着ベルト61の内周面には、押圧パッド63と定着ベルト61の内周面との摩擦力を低減する目的で潤滑剤を塗布している。そのため、潤滑剤が外部に漏洩しないように定着ベルト61を完全に封入するべく、エンドキャップ部材66と定着ベルト61とを嵌合固定した際には、定着ベルト61とエンドキャップ部材66とを密着させた状態で固定することが必要となる。エンドキャップ部材66を嵌合固定することによっても、定着ベルト61の内部を密封することは可能である。ところが、定着ベルト61とエンドキャップ部材66とを接着剤を用いて本実施の形態の結合方法で固定するように構成した場合とは異なり、接着剤のような定着ベルト61の内部と外部とを遮る遮蔽壁が存在しないため、エンドキャップ部材66の嵌合が若干緩んだ場合には、定着ベルト61の密封性が不充分となることがある。
そこで、図10に示したように、嵌め合わせて固定する側のエンドキャップ部材66においては、固定部66aの外周面に潤滑剤の漏洩を抑制するための1または複数のオイルシールリング77を配設している。オイルシールリング77を配設することで、オイルシールリング77が定着ベルト61の内部と外部とを遮る遮蔽壁として機能する。そのため、エンドキャップ部材66の嵌合が若干緩んだ場合においても、定着ベルト61とエンドキャップ部材66とを接着剤を用いて上述した結合方法で固定する構成と同様に、定着ベルト61の密封性を維持することが可能となる。
また、定着ベルト61の一方の端部において定着ベルト61とエンドキャップ部材66とを接着剤を用いて本実施の形態の結合方法で固定し、かかる端部とは反対側の端部においては定着ベルト61とエンドキャップ部材66とを嵌合固定による本実施の形態の結合方法で固定するように構成することもできる。このように両端部で異なる本実施の形態の結合方法により固定することによっても、一部分に応力が集中しないようにエンドキャップ部材66から伝達される回転駆動力を均等に受けながら、充分な駆動伝達力を定着ベルト61に伝達することが可能である。また、このように一方では接着固定し、他方では嵌合固定により定着ベルト61とエンドキャップ部材66とを結合することにより、定着ベルト61の内部に複数の部材を容易に組み込むことができるので、定着装置60の量産時における組み立て性の向上を図ることが可能となる。
加えて、定着ベルト61とエンドキャップ部材66とを接着剤を用いて結合方法で固定する端部側においても、エンドキャップ部材66のギヤ部66bのギヤ歯をハス歯形状で形成して、通常の定着動作時における定着ベルト61の回転方向に伝達ギヤ84から回転駆動力が伝わった際には、定着ベルト61と嵌合される方向(定着ベルト61の幅方向の中央部に向かう方向)に力が加わるように設定することにより、定着ベルト61を軸方向の所定の位置に安定して位置させることが可能となる。それにより、回動時のエンドキャップ部材66とフレーム69との接触の発生を抑えて、安定した回転動作を行なうことが可能となる。
実施の形態1では、加熱手段として定着ベルト61を電磁誘導加熱する電磁誘導加熱部材65を用いた定着装置60が搭載された画像形成装置について説明した。実施の形態2では、図1に示した画像形成装置に搭載する定着装置であって、加熱手段としてハロゲンランプ等の熱源を用いた定着装置について説明する。尚、実施の形態1と同様な構成については同様な符号を用い、ここではその詳細な説明を省略する。
また、定着ベルト91の一方の端部において定着ベルト91とエンドキャップ部材66とを接着剤を用いて実施の形態1と同様の結合方法で固定し、かかる端部とは反対側の端部においては定着ベルト91とエンドキャップ部材66とを嵌合固定による結合方法で固定して、両端部で異なる結合方法により固定した構成とすることもできる。
さらに、少なくとも定着ベルト91とエンドキャップ部材66とを嵌合させて固定する端部側に装着するエンドキャップ部材66は、ギヤ部66b(図11では不図示)のギヤ歯をハス歯形状に形成し、そのギヤ部66bのギヤ歯の傾き方向は、通常の定着動作時における定着ベルト91の回転方向に伝達ギヤ85(図2参照)から回転駆動力が伝わった際には、定着ベルト91と嵌合される方向(定着ベルト91の幅方向の中央部に向かう方向)に力が加わるように設定している。この場合に、定着ベルト91とエンドキャップ部材66とを接着剤を用いて上述した結合方法で固定する端部側に装着するエンドキャップ部材66も、同様に構成することができる。
加えて、定着ベルト91の両端部において、定着ベルト91とエンドキャップ部材66とを接着剤を用いて上述した結合方法で固定するように構成し、それぞれのエンドキャップ部材66のギヤ部66bのギヤ歯をハス歯形状で形成するとともに、定着ベルト91と嵌合される方向(定着ベルト91の幅方向の中央部に向かう方向)に力が加わるようにハス歯の方向を設定することが可能である。
このような構成により、本実施の形態の定着装置90においても、実施の形態1と同様の効果を発揮することが可能である。
Claims (15)
- 回動可能な無端状の定着ベルト部材と、
前記定着ベルト部材の端部に配設され、当該定着ベルト部材に対して回転駆動力を伝達する駆動力伝達部材と、
前記定着ベルト部材の外表面に押圧して配設され、当該定着ベルト部材との間で定着ニップ部を形成する加圧部材とを備え、
前記駆動力伝達部材は、前記定着ベルト部材の周方向の全域に亘り当該定着ベルト部材に対して固定されるとともに、当該定着ベルト部材と固定される部分が、当該定着ベルト部材に挿入して配設され、当該定着ベルト部材の幅方向と直交する面内での断面が略円形を維持するように、略円筒形状に形成されたことを特徴とする定着装置。 - 前記駆動力伝達部材は、前記定着ベルト部材の内部を外部から密封するように装着されたことを特徴とする請求項1記載の定着装置。
- 前記駆動力伝達部材は、前記定着ベルト部材の一方の端部にて当該定着ベルト部材と接着剤により固定され、当該定着ベルト部材の他方の端部にて当該定着ベルト部材と嵌合により固定されることを特徴とする請求項1記載の定着装置。
- 前記駆動力伝達部材は、前記定着ベルト部材と嵌合により固定される側の当該駆動力伝達部材にて、定着動作時の回転により当該定着ベルト部材の幅方向中央部側に向かう力が加わるように形成されたハス歯状のギヤを有することを特徴とする請求項3記載の定着装置。
- 前記駆動力伝達部材は、前記定着ベルト部材と接着剤により固定される側の当該駆動力伝達部材にて、定着動作時の回転により当該定着ベルト部材の幅方向中央部側に向かう力が加わるように形成されたハス歯状のギヤを有することを特徴とする請求項3記載の定着装置。
- 前記駆動力伝達部材は、前記定着ベルト部材の両端部にて当該定着ベルト部材と接着剤により固定されることを特徴とする請求項1記載の定着装置。
- 前記駆動力伝達部材は、定着動作時の回転により当該定着ベルト部材の幅方向中央部側に向かう力が加わるように形成されたハス歯状のギヤを有することを特徴とする請求項5記載の定着装置。
- 回動可能であって、フレキシブルな材料から形成された無端状の定着ベルト部材と、
前記定着ベルト部材の両端部に配設され、当該定着ベルト部材に対して回転駆動力を伝達する駆動力伝達部材と、
前記駆動力伝達部材を軸支する支持部材と、
前記定着ベルト部材の外表面に押圧して配設され、当該定着ベルト部材に従動回転するとともに当該定着ベルト部材との間で定着ニップ部を形成する加圧ロール部材とを備え、
前記駆動力伝達部材は、当該定着ベルト部材の内部を外部から密封するように装着されたことを特徴とする定着装置。 - 前記駆動力伝達部材は、少なくとも前記定着ベルト部材の一方の端部にて、当該定着ベルト部材の周方向の全域に亘って接着剤により当該定着ベルト部材に固定されることを特徴とする請求項8記載の定着装置。
- 前記駆動力伝達部材は、定着動作時の回転により、前記定着ベルト部材に対して当該定着ベルト部材の幅方向中央部側に向かう力を付与するように形成されたことを特徴とする請求項8記載の定着装置。
- 前記定着ベルト部材は、内周面に粘度300mm2/s以下の潤滑剤が塗布されたことを特徴とする請求項8記載の定着装置。
- 前記支持部材は、前記定着ベルト部材の内部と外部との間にリード線を通す凹部が形成されたことを特徴とする請求項8記載の定着装置。
- トナー像を形成するトナー像形成手段と、
前記トナー像形成手段によって形成されたトナー像を記録材上に転写する転写手段と、
前記記録材上に転写されたトナー像を当該記録材に定着する定着手段と、
前記定着手段を駆動する駆動手段とを含み、
前記定着手段は、
回動可能であって、フレキシブルな材料から形成された無端状の定着ベルト部材と、
前記定着ベルト部材の端部にて当該定着ベルト部材に対して回転駆動力を伝達する駆動力伝達部材と、
前記定着ベルト部材の外表面に押圧して配設され、当該定着ベルト部材との間で定着ニップ部を形成する加圧部材とを備え、
前記駆動力伝達部材は、前記定着ベルト部材の周方向の全域に亘り当該定着ベルト部材に対して固定されるとともに、当該定着ベルト部材と固定される部分が、当該定着ベルト部材に挿入して配設され、当該定着ベルト部材の幅方向と直交する面内での断面が略円形を維持するように、略円筒形状に形成されたことを特徴とする画像形成装置。 - 前記定着手段の前記駆動力伝達部材は、前記定着ベルト部材の内部を外部から密封するように装着されたことを特徴とする請求項13記載の画像形成装置。
- 前記定着手段の前記駆動力伝達部材は、前記定着ベルト部材に挿入して配設されるとともに当該定着ベルト部材の周方向の全域に亘って当該定着ベルト部材に対して固定される固定部と、前記駆動手段からの回転駆動力を受けるギヤ部とを有し、
前記定着手段は、少なくとも前記定着ベルト部材の一方の端部にて、当該定着ベルト部材が前記駆動力伝達部材の前記固定部と嵌合により固定されるとともに、当該駆動力伝達部材の前記ギヤ部が、当該定着手段の動作時に当該定着ベルト部材に対して幅方向中央部側に向かう力を付与するハス歯状のギヤで形成されたことを特徴とする請求項13記載の画像形成装置。
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