JP4522559B2 - 中綿式筆記具における中綿交換機構 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、インクを含浸させた中綿を内蔵したサインペンやマーキングペン等の中綿式筆記具に関し、更に詳しくは、着脱交換可能な中綿を備えた中綿式筆記具における中綿交換機構に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来の中綿式筆記具は、軸筒内が開放されてしまうと、中綿内のインクが乾燥し易く、また、手で掴んだ際にインクが噴出し易く、その上、中綿から噴出したインクで手を汚しやすい等の問題を生じることから、容易に軸筒が開放されることのない構造にしたものであった。したがって、万年筆のようにインクカートリッジを交換することができず、ペン体や軸筒等の中綿以外の部品に支障がなくとも使い捨て交換されているのが現状であった。
しかしながら、近年では、環境保護やごみ処理問題等の観点から、リサイクル性を有し、廃棄される部品が少ない筆記具が求められている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は上記従来事情に鑑みてなされたものであり、その目的とする処は、中綿を交換できるようにすることで、インクを消耗しきってしまった際に中綿交換によって中綿以外の部品をそのまま使用できるようにした中綿式筆記具における中綿交換機構を提供することにある。
【0004】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するための本発明の技術的手段は、軸筒内の中綿に含浸しているインクを先口内のペン体に供給する中綿式筆記具において、前記軸筒を、開閉可能に接続された前軸筒と後軸筒とにより構成するとともに、それら両軸筒の接続部に気密構造を設けてなり、前記中綿を、軸方向への着脱を可能に前記軸筒内に嵌合することで、交換用中綿に交換可能としたことを特徴とする。
【0005】
上記技術的手段によれば、インクが消耗された際、軸筒内を開放し、中綿を軸方向へ着脱することにより交換を可能にする。尚、中綿交換前は、前軸筒と後軸筒と接続部の気密構造により軸筒内が気密された状態であるため、中綿に含浸されたインクを乾燥させてしまうことがない。
【0006】
また、中綿を着脱可能にする手段として好ましくは、上記軸筒内に、上記中綿を軸心方向へ押圧するとともに該中綿の軸方向の着脱を可能にする中綿嵌合突起を形成する。
また、上記中綿の交換の際に手を汚さないようにするために、更に好ましくは、上記中綿の外周面を、インクを透過させない非透過性皮膜により形成する。
【0007】
また、上記中綿式筆記具に用いる中綿交換機構は、中綿を着脱自在に嵌合した軸筒が開閉可能とされた中綿式筆記具と、筒状のカートリッジケースに収容された交換用中綿との組合せであって、前記カートリッジケースは、一端側が開放されて、その開口部から前記交換用中綿の端部を突出するように形成し、前記交換用中綿を軸方向への着脱を可能に嵌合するとともに、その嵌合力を上記軸筒内における中綿への嵌合力よりも弱くしていることを特徴とする。
【0008】
この中綿交換機構では、上記中綿式筆記具の中綿交換の際、カートリッジケースの一端側を開放し、その開口部から突出した交換用中綿の端部を、中綿が引き抜かれた後の中綿式筆記具に嵌合させて、カートリッジケースを引くようにすれば、該カートリッジケース内での交換用中綿への嵌合力が、上記中綿式筆記具の軸筒内での中綿への嵌合力よりも弱いため、交換用中綿は、カートリッジケースから引き抜かれて、上記中綿式筆記具内に嵌着された状態となる。
【0009】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1は、本発明に係わる中綿式筆記具の一例を示す。
この中綿式筆記具Aは、一端側(図1における下端側)の前軸筒10と他端側(図1における上端側)の後軸筒20とを着脱可能に螺合接続してなる軸筒1内に中綿2を備え、該中綿2に含浸しているインクを、毛細管力によって前記前軸筒10内の細書き用ペン体3及び前記後軸筒内の太書き用ペン体4へ供給するように構成した両頭式の水性中綿式筆記具であり、後軸筒20を時計方向へ回して外すことで、中綿2が露出されて交換できるように構成してある。
【0010】
前軸筒10は、一端側に先口11を一体に有する先細筒状を呈し、その他端側の内周面には後軸筒20を螺合接続するための接続部12を形成している。また、この前軸筒10内の先口11側には、中綿2を軸心方向へ押圧する縦長の中綿嵌合突起10aが、周方向に複数配置されている(図1(c)参照)。
【0011】
先口11は、その軸心部に細書き用ペン体3を保持し、該細書き用ペン体3の外周には、落下衝撃等で中綿2から細書き用ペン体3側に急激に吐出するインクを、一時的に貯溜するインク貯溜部11aが形成されている。
【0012】
インク貯溜部11aは、軸方向に延びペン先側が袋状の縦溝を、周方向に複数形成してなり、中綿2から急激に吐出した際のインクを、前記各縦溝の毛細管力により一時的に貯溜し、細書き用ペン体3側に流出させることなく中綿2に吸収させることで、細書き用ペン体3からのインクのボタ落ちを防止するものである。
【0013】
後軸筒20は、一端側(図1における上端側)に先口21を一体に有するとともに、その他端側の外周面には、上記前軸筒10の接続部12に螺合接続するための被接続部22を形成している。また、この後軸筒20内の先口21側には、中綿2を軸心方向へ押圧する縦長の中綿嵌合突起20aが、周方向に複数形成されている(図1(b)参照)。
【0014】
この中綿嵌合突起20aは、その突端部の内径d2を前記前軸筒10の中綿嵌合突起10aの突端部の内径d1よりも小さくすることで、前記前軸筒10の中綿嵌合突起10aよりも嵌合力が強くなるように構成されている。
したがって、前軸筒10から後軸筒20が外される際、中綿2は、後軸筒20に嵌着されたままの状態で、前軸筒10から外される。
【0015】
先口21は、軸心部に太書き用ペン体4を保持するとともに、該太書き用ペン体4の外周にインク貯溜部21aを形成している。尚、この先口21の構成は、基本的に上記前軸筒10と同様であるため、重複する詳細説明を省略する。
【0016】
前軸筒10の接続部12は、左ねじに形成された雌ねじ部12aと、該雌ねじ部12aの前後の環状突起12b,12cとからなる。
また、後軸筒20の被接続部22は、左ねじに形成された雄ねじ部22aと、該雄ねじ部22aの前後の環状突起22b,22cとからなる。
【0017】
そして、これら接続部12及び被接続部22は、後軸筒20と前軸筒10との螺合接続の際に、環状突起12bが環状突起22bを乗り越えて嵌合することで気密性を確保する気密構造を構成するとともに、環状突起12cが環状突起22cを乗り越えて嵌合することにより、ねじの緩み止め構造を構成する。
【0018】
中綿2は、筒状の非透過性皮膜2a内に充填された多数の合成樹脂繊維に水性インクを含浸させてなり、その前端面に細書き用ペン体3が挿入され、また後端面には太書き用ペン体4が挿入された状態で、軸筒1内に挿着されて上記中綿嵌合突起10a,20aに嵌合されている。
前記非透過性皮膜2aの材質は、水性インクを透過させないものであれば特に限定されるものでないが、本実施の形態ではポリプロピレンやポリエチレン等を用いている。
【0019】
尚、図中符号5と符号6は、筆記の際、用途に応じて選択的に外される細書き側キャップと太書き側キャップである。
【0020】
次に、上記中綿式筆記具Aの中綿2を交換する際に用いる中綿交換機構について説明する。
この中綿交換機構Bは、図2に示すように、一端側を開閉可能に構成した筒状のカートリッジケース7内に、上記中綿2と同構成の交換用中綿2’を備えている。
【0021】
カートリッジケース7は、有底の筒体30の開口部31に着脱可能なキャップ40を嵌合してなる。
筒体30は、一端側が開放された際に、その開口部31から交換用中綿2’の端部が突出するように、全長を交換用中綿2’よりも短く形成するとともに、該筒体30の内周面と内臓される交換用中綿2’との間に、上記後軸筒20の被接続部22側の周壁が挿入可能とされるクリアランスcを有するように形成されている。
【0022】
この筒体30内の開口部31側には、キャップ40に嵌合させるための環状突起32と、同キャップ40を掛止するための掛止突起33が形成されている。掛止突起33は、筒体30内周面から突出し、周方向に複数配置されている。
また、同筒体30内の底面側には、交換用中綿2’を軸心方向へ押圧する縦長の交換用中綿嵌合突起30aが、周方向に複数配置されている。
【0023】
この交換用中綿嵌合突起30aは、その突端部の内径d1を、上記前軸筒10の中綿嵌合突起10aの突端部の内径d1と同径にしている。すなわち、この交換用中綿嵌合突起30aが交換用中綿2’に嵌合されるその嵌合力は、上記後軸筒20の中綿嵌合突起20aが中綿2に嵌合される嵌合力よりも弱くしてある。
【0024】
キャップ40は、交換用中綿2’の端部に被冠され、その開口部40a側の外周面には、筒体30内の環状突起32を乗り越えて気密性を保持すべく嵌合する環状突起41と、同筒体30内の複数の掛止突起33を乗り越えさせて掛止する環状突起42とを形成している。
したがって、このキャップ40は、筒体30の開口部31に嵌め込まれた際、筒体30の環状突起32とキャップ40の環状突起41との乗り越え嵌合によりカートリッジケース7内の気密を確保するとともに、筒体30の掛止突起33がキャップ40の環状突起42に掛止される。
【0025】
尚、交換用中綿2’については、上記中綿式筆記具Aの中綿2と同構成であるため、同一部分に同一符号を付けることで、重複説明を省略する。
【0026】
次に、上記中綿式筆記具Aに用いる中綿交換機構Bにより、中綿2が交換用中綿2’へ交換される手順を詳細に説明する。
先ず、図3(a)に示すように、前軸筒10を後軸筒20から外す。この際、前軸筒10の雌ねじ部12a及び後軸筒20の雄ねじ部22aが左ねじの構成となっているため、後軸筒20が時計方向に回される。中綿2は、後軸筒20内に嵌合された状態で残される。
そして、図3(b)に示すように、後軸筒20から露出された状態の中綿2は、軸方向へ引っ張られることで後軸筒20との嵌合から外されて、取り除かれる。
【0027】
次に、図3(c)に示すように、上記のようにして中綿2が取り除かれた後軸筒20内に、中綿交換機構Bのカートリッジ7内に嵌合収納されている交換用中綿2’が挿着される。この際、キャップ40が外された状態のカートリッジ7が、筒体30から突出した交換用中綿2’を後軸筒20内に挿入させるようにして、軸方向へ押される。すると、後軸筒20の被接続部22側がカートリッジ7の筒体30内周面と交換用中綿2’との間のクリアランスcに入り込むため、筒体30から突出した交換用中綿2’の端部が後軸筒20内の奥まで入り込み、該交換用中綿2’の端面に太書き用ペン体4の後端部が挿入されるとともに、同交換用中綿2’に後軸筒20内の中綿嵌合突起20aが嵌合される。
【0028】
そして、図3(d)に示すように、カートリッジ7の筒体30が引き抜かれる。この際、交換用中綿2’と筒体30の交換用中綿嵌合突起30aとの嵌合が、同交換用中綿2’と後軸筒20の中綿嵌合突起20aとの嵌合よりも弱い嵌合力であるため、交換用中綿2’が後軸筒20の中綿嵌合突起20aに嵌合されたまま、筒体30のみが引き抜かれる。
【0029】
尚、上記実施の形態では、交換用中綿2’と筒体30の交換用中綿嵌合突起30aとの嵌合力を、同交換用中綿2’と後軸筒20の中綿嵌合突起20aとの嵌合力よりも弱くするために、上述したように交換用中綿嵌合突起30aの突端部の内径d1を中綿嵌合突起20aの突端部の内径d2よりも大きくしているが、例えば、交換用中綿嵌合突起30aの長さを中綿嵌合突起20aの長さよりも短くしたり、交換用中綿嵌合突起30aの数を中綿嵌合突起20aの数よりも少なくして摩擦を減少する等、他の技術的手段によって、前記嵌合力を変えるようにしても構わない。
【0030】
また、上記実施の形態では、一例として両頭式の中綿式筆記具Aを示しているが、図4に示す一例のように、単頭式の中綿式筆記具Cを構成しても構わない。
この中綿式筆記具Cは、上記構成の中綿式筆記具Aにおける前軸筒10が、細書き用ペン体3及び該細書き用ペン体3側のキャップ5を有さないように、後尾側を閉鎖した軸筒10’に置き換えられたものであり、太書き用ペン体4側の構成については、上記中綿式筆記具Aと略同様の構成であるため、同一部分に同一の符号を付けることで、重複説明を省略する。
【0031】
尚、上記中綿交換機構Bにおけるカートリッジ7は、筒体30及びキャップ40の材質が特に限定されるものでないが、生分解性プラスチックを用いれば、自然環境保護の上で好ましい。
【0032】
【発明の効果】
本発明は、以上説明したように構成されているので、以下に記載されるような効果を奏する。
中綿式筆記具が着脱交換可能に中綿を備えているため、インクを消耗しきってしまった場合には、中綿のみをインクの充填された交換用中綿へ交換することで、軸筒やペン体等の中綿以外の部品をそのまま使用することができる。
更に、中綿式筆記具の軸筒内に中綿嵌合突起を形成する簡素な構造により、中綿の容易な着脱交換を可能にできる。
その上、中綿の外周面を非透過性皮膜で形成することにより、中綿内へのインクの貯溜をよくし、且つ中綿の着脱交換時においてインクで手を汚すことがないようにできる。
また、インクカートリッジケース内に交換用中綿を備えた中綿交換機構によれば、使用前の交換用中綿がインクを乾燥させたり噴出させることなく保管でき、その上、交換用中綿を嵌合する嵌合力が、上記中綿式筆記具の軸筒内で中綿が嵌合される嵌合力よりも弱いため、交換用中綿を中綿式筆記具の軸筒内に装着する際、交換用中綿に直接手を触れることなくカートリッジケースを手で持って中綿交換ができる。したがって、交換用中綿に手が触れてしまい、手を汚してしまったりインクを噴出させてしまうことがない。
【図面の簡単な説明】
【図1】 (a)は、本発明に係わる中綿式筆記具の一例を示す縦断面図、また、(b)は、同図(a)における(b)−(b)線断面図、更に、(c)は、同図(a)における(c)−(c)線断面図。
【図2】 (a)は、本発明に係わる中綿交換機構の一例を示す縦断面図、また、(b)は、同図(a)における(b)−(b)線断面図。
【図3】 中綿式筆記具の中綿が中綿交換機構を用いて交換される手順を(a)乃至(d)に順次示す縦断面図。
【図4】 本発明に係わる中綿式筆記具の他例を示す縦断面図。
【符号の説明】
1:軸筒 2:中綿
2’:交換用中綿 2a:非透過性皮膜
3:細書き用ペン体 4:太書き用ペン体
7:カートリッジケース 10:前軸筒
10a:中綿嵌合突起 20:後軸筒
20a:中綿嵌合突起 30:筒体
30a:交換用中綿嵌合突起 A,C:中綿式筆記具
B:中綿交換機構
Claims (3)
- 軸筒内の中綿に含浸しているインクを先口内のペン体に供給する中綿式筆記具と、筒状のカートリッジケースに収容された交換用中綿との組合せであって、
前記中綿式筆記具は、前記軸筒を、開閉可能に接続された前軸筒と後軸筒とにより構成するとともに、それら両軸筒の接続部に気密構造を設けてなり、前記中綿を、軸方向への着脱を可能に前記軸筒内に嵌合することで、前記交換用中綿に交換可能とし、
前記カートリッジケースは、一端側が開放されて、その開口部から前記交換用中綿の端部を突出するように形成し、前記交換用中綿を軸方向への着脱を可能に嵌合するとともに、その嵌合力を上記軸筒内における中綿への嵌合力よりも弱くしていることを特徴とする中綿式筆記具における中綿交換機構。 - 上記軸筒内には、上記中綿を軸心方向へ押圧するとともに該中綿の軸方向の着脱を可能にする中綿嵌合突起が形成されていることを特徴とする請求項1記載の中綿式筆記具における中綿交換機構。
- 上記中綿は、外周面がインクを透過させない非透過性皮膜により形成されていることを特徴とする請求項1又は2記載の中綿式筆記具における中綿交換機構。
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