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JP4501344B2 - 二次電池 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、正極および負極と共に電解液を備え、電極反応種としてリチウム(Li)を用いた二次池に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、カメラ一体型VTR(ビデオテープレコーダ),デジタルスチルカメラ,携帯電話,携帯情報端末あるいはラップトップコンピュータなどのポータブル電子機器が多く登場し、これらの小型化および軽量化が図られている。それに伴い、これらの電子機器のポータブル電源として、電池、特に二次電池のエネルギー密度を向上させるための研究開発が活発に進められている。中でも、負極活物質として炭素材料を用い、電解質に炭酸エステルの混合物を用いたリチウムイオン二次電池は、従来の水系電解液二次電池である鉛電池,ニッケルカドミウム電池およびニッケル水素電池と比較して大きなエネルギー密度が得られるため広く実用化されている。このリチウムイオン二次電池によれば、充放電を500サイクル程度繰り返した後でも60%程度の放電容量を維持することが期待されるが、実際には電解液が電極活物質と徐々に反応して分解するため、300サイクル程度で60%程度の放電容量となり、その実現は困難であった。そこで、電解液に各種の添加剤を加え、電極の表面に被膜を形成することが広く行われている(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
【特許文献1】
特開2001−307736号公報
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、従来の添加剤では、ある程度の量を加えないと十分な被膜を形成することができなかったので、目的とする特性を向上させることはできても、他の特性が低下してしまったり、製造コストが高くなってしまうなどの問題があった。
【0005】
本発明はかかる問題点に鑑みてなされたもので、その目的は、有効な被膜の形成により電池特性を向上させることができる二次電池を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明による二次電池は、正極および負極と共に電解液を備え、電極反応種としてリチウムを用いたものであって、正極および負極のうちの少なくとも一方の表面に、パーフルオロペンタデカンを含む被膜を有し、電解液は、リチウム塩と、炭酸エステル、または、炭酸エステルおよびカルボン酸エステルとからなるものである。
【0009】
本発明による二次電池では、被膜を形成するパーフルオロペンタデカンを多量に用いなくても有効な被膜が形成される。
【0010】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。
【0011】
図1は本発明の一実施の形態に係る二次電池の断面構造を表すものである。この二次電池は、いわゆる円筒型といわれるものであり、ほぼ中空円柱状の電池缶11の内部に、帯状の正極21と負極22とがセパレータ23を介して巻回された巻回電極体20を有している。電池缶11は、例えばニッケル(Ni)のめっきがされた鉄(Fe)により構成されており、一端部が閉鎖され他端部が開放されている。電池缶11の内部には、液状の電解質である電解液が注入されセパレータ23に含浸されている。また、巻回電極体20を挟むように巻回周面に対して垂直に一対の絶縁板12,13がそれぞれ配置されている。
【0012】
電池缶11の開放端部には、電池蓋14と、この電池蓋14の内側に設けられた安全弁機構15および熱感抵抗素子(Positive Temperature Coefficient;PTC素子)16とが、ガスケット17を介してかしめられることにより取り付けられており、電池缶11の内部は密閉されている。電池蓋14は、例えば、電池缶11と同様の材料により構成されている。安全弁機構15は、熱感抵抗素子16を介して電池蓋14と電気的に接続されており、内部短絡あるいは外部からの加熱などにより電池の内圧が一定以上となった場合にディスク板15Aが反転して電池蓋14と巻回電極体20との電気的接続を切断するようになっている。熱感抵抗素子16は、温度が上昇すると抵抗値の増大により電流を制限し、大電流による異常な発熱を防止するものであり、例えば、チタン酸バリウム系半導体セラミックスにより構成されている。ガスケット17は、例えば、絶縁材料により構成されており、表面にはアスファルトが塗布されている。
【0013】
巻回電極体20は、例えば、センターピン24を中心に巻回されている。巻回電極体20の正極21にはアルミニウム(Al)などよりなる正極リード25が接続されており、負極22にはニッケルなどよりなる負極リード26が接続されている。正極リード25は安全弁機構15に溶接されることにより電池蓋14と電気的に接続されており、負極リード26は電池缶11に溶接され電気的に接続されている。
【0014】
正極21は、例えば、図示しないが、対向する一対の面を有する正極集電体の両面あるいは片面に正極合剤層が設けられた構造を有している。正極集電体は、例えば、アルミニウム箔,ニッケル箔あるいはステンレス箔などの金属箔により構成されている。正極合剤層は、例えば、正極活物質として軽金属であるリチウムを吸蔵および離脱することが可能な正極材料(以下、リチウムを吸蔵・離脱可能な正極材料という。)のいずれか1種または2種以上を含んでおり、必要に応じて炭素材料などの導電剤およびポリフッ化ビニリデンなどの結着剤を含んでいてもよい。
【0015】
リチウムを吸蔵・離脱可能な正極材料としては、例えば、リチウム酸化物,リチウム硫化物あるいはリチウムを含む層間化合物などのリチウム含有化合物が適当であり、これらの2種以上を混合して用いてもよい。特に、エネルギー密度を高くするには、一般式Lix MO2 で表されるリチウム複合酸化物あるいはリチウムを含んだ層間化合物が好ましい。なお、Mは1種類以上の遷移金属を含むことが好ましく、具体的には、コバルト(Co),ニッケル,マンガン(Mn),鉄,アルミニウム,バナジウム(V)およびチタン(Ti)からなる群のうちの少なくとも1種を含むことが好ましい。xは、電池の充放電状態によって異なり、通常、0.05≦x≦1.10の範囲内の値である。このようなリチウム複合酸化物の具体例としては、コバルト酸リチウム(LiCoO2 ),ニッケル酸リチウム(LiNiO2 ),あるいはマンガンスピネル(LiMn2 4 )などが挙げられる。また、他にも、オリビン型結晶構造を有するリン酸鉄リチウム(LiFePO4 )などのリン酸化合物も高いエネルギー密度を得ることができるので好ましい。
【0016】
リチウムを吸蔵・離脱可能な正極材料としては、また、他の金属化合物あるいは高分子材料が挙げられる。他の金属化合物としては、例えば、酸化チタン、酸化バナジウムあるいは二酸化マンガンなどの酸化物、または硫化チタンあるいは硫化モリブデンなどの二硫化物が挙げられ、高分子材料としては、例えば、ポリアニリンあるいはポリチオフェン等の導電性高分子が挙げられる。
【0017】
負極22は、図示しないが、例えば、正極21と同様に、対向する一対の面を有する負極集電体の両面あるいは片面に、負極合剤層が設けられた構造を有している。負極集電体は、例えば、銅箔,ニッケル箔あるいはステンレス箔などの金属箔により構成されている。
【0018】
負極合剤層は、例えば、負極活物質としてリチウムを吸蔵および離脱することが可能な負極材料(以下、リチウムを吸蔵・離脱可能な負極材料という。)のいずれか1種または2種以上を含んでおり、必要に応じて正極21と同様の結着剤を含んでいてもよい。リチウムを吸蔵・離脱可能な負極材料としては、炭素材料,金属酸化物あるいは高分子材料などが挙げられる。炭素材料としては、難黒鉛化性炭素,人造黒鉛,コークス類,グラファイト類,ガラス状炭素類,有機高分子化合物焼成体,炭素繊維,活性炭あるいはカーボンブラック類などが挙げられる。このうち、コークス類には、ピッチコークス,ニードルコークスあるいは石油コークスなどがあり、有機高分子化合物焼成体というのは、フェノール類やフラン類などの高分子材料を適当な温度で焼成して炭素化したものをいう。また、金属酸化物としては、酸化鉄,酸化ルテニウム,酸化モリブデンあるいは酸化スズなどが挙げられ、高分子材料としてはポリアセチレンあるいはポリピロールなどが挙げられる。
【0019】
リチウムを吸蔵・離脱可能な負極材料としては、また、リチウムと合金を形成可能な金属元素あるいは半金属元素の単体、合金または化合物が挙げられる。なお、合金には2種以上の金属元素からなるものに加えて、1種以上の金属元素と1種以上の半金属元素とからなるものも含める。その組織には固溶体,共晶(共融混合物),金属間化合物あるいはそれらのうちの2種以上が共存するものがある。
【0020】
リチウムと合金を形成可能な金属元素あるいは半金属元素としては、例えば、マグネシウム(Mg),ホウ素(B),ヒ素(As),アルミニウム,ガリウム(Ga),インジウム(In),ケイ素(Si),ゲルマニウム(Ge),スズ(Sn),鉛(Pb),アンチモン(Sb),ビスマス(Bi),カドミウム(Cd),銀(Ag),亜鉛(Zn),ハフニウム(Hf),ジルコニウム(Zr),イットリウム(Y),パラジウム(Pd)あるいは白金(Pt)が挙げられる。これらの合金あるいは化合物としては、例えば、化学式Mas Mbt Liu 、あるいは化学式Map Mcq Mdr で表されるものが挙げられる。これら化学式において、Maはリチウムと合金を形成可能な金属元素および半金属元素のうちの少なくとも1種を表し、MbはリチウムおよびMa以外の金属元素および半金属元素のうちの少なくとも1種を表し、Mcは非金属元素の少なくとも1種を表し、MdはMa以外の金属元素および半金属元素のうちの少なくとも1種を表す。また、s、t、u、p、qおよびrの値はそれぞれs>0、t≧0、u≧0、p>0、q>0、r≧0である。
【0021】
中でも、短周期型周期表における4B族の金属元素あるいは半金属元素の単体、合金または化合物が好ましく、特に好ましいのはケイ素あるいはスズ、またはこれらの合金あるいは化合物である。これらは結晶質のものでもアモルファスのものでもよい。
【0022】
このような合金あるいは化合物について具体的に例を挙げれば、LiAl,AlSb,CuMgSb,SiB4 ,SiB6 ,Mg2 Si,Mg2 Sn,Ni2 Si,TiSi2 ,MoSi2 ,CoSi2 ,NiSi2 ,CaSi2 ,CrSi2 ,Cu5 Si,FeSi2 ,MnSi2 ,NbSi2 ,TaSi2 ,VSi2 ,WSi2 ,ZnSi2 ,SiC,Si3 4 ,Si2 2 O,SiOv (0<v≦2),SnOw (0<w≦2),SnSiO3 ,LiSiOあるいはLiSnOなどがある。
【0023】
セパレータ23は、正極21と負極22とを隔離し、両極の接触による電流の短絡を防止しつつ、リチウムイオンを通過させるものである。このセパレータ23は、例えば、ポリテトラフルオロエチレン,ポリプロピレンあるいはポリエチレンなどの合成樹脂製の多孔質膜、またはセラミック製の多孔質膜により構成されており、これら2種以上の多孔質膜を積層した構造とされていてもよい。
【0024】
セパレータ23に含浸された電解液は、溶媒と、この溶媒に溶解された電解質塩であるリチウム塩とを含んで構成されている。溶媒としては、化1に示した炭酸エチレン、化2に示した炭酸プロピレン、炭酸ジメチル、炭酸ジエチル、炭酸エチルメチル、化3に示した炭酸ブチレン、化4に示した炭酸フルオロエチレンあるいは化5に示した炭酸トリフルオロプロピレン等の炭酸エステル、または、ギ酸メチル、ギ酸エチル、酢酸メチル、酢酸エチル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、酪酸メチル、酪酸エチル、イソ酪酸メチルあるいはイソ酪酸エチル等の鎖状カルボン酸エステル、または、化6に示したγ−ブチロラクトンあるいは化7に示したγ−バレロラクトン等の環状カルボン酸エステルを用いることができる。また、テトラヒドロピランあるいは1、3−ジオキサン等の環状エーテルも鎖状カルボン酸エステルよりも粘度が高いので用いることができる。更に、N,N’−ジメチルホルムアミド、化8に示したN−メチルピロリドン、化9に示したN−メチルオキサゾリジノン等のアミド化合物、または、化10に示したスルホラン等の硫黄化合物、または、化11に示したテトラフルオロホウ酸1−エチル−3−メチルイミダゾリウム等の常温溶融塩も用いることができる。特に、主溶媒としては、炭酸エステルを用いることが好ましい。炭酸エステルは酸化や還元に対して安定で高電圧を得ることができるからである。また、カルボン酸エステルも、融点および粘度が低いので低温特性を向上させることができると共に、電気伝導度が高く負荷特性も向上させることができるので好ましい。但し、カルボン酸エステルは、耐還元性が低いため負極22で分解してサイクル特性を低下させる虞があるので、炭酸エステルと混合して用いることが好ましい。
【0025】
【化1】
Figure 0004501344
【0026】
【化2】
Figure 0004501344
【0027】
【化3】
Figure 0004501344
【0028】
【化4】
Figure 0004501344
【0029】
【化5】
Figure 0004501344
【0030】
【化6】
Figure 0004501344
【0031】
【化7】
Figure 0004501344
【0032】
【化8】
Figure 0004501344
【0033】
【化9】
Figure 0004501344
【0034】
【化10】
Figure 0004501344
【0035】
【化11】
Figure 0004501344
【0036】
リチウム塩としては、例えば、ヘキサフルオロリン酸リチウム(LiPF6 )、テトラフルオロホウ酸リチウム(LiBF4 ),過塩素酸リチウム(LiClO4 )、ヘキサフルオロヒ酸リチウム(LiAsF6 ),トリフルオロメタンスルホン酸リチウム(CF3 SO3 Li)、化12に示したビス[トリフルオロメタンスルホニル]イミドリチウム((CF3 SO2 2 NLi),トリス(トリフルオロメタンスルホニル)メチルリチウム((CF3 SO2 3 CLi)あるいはビス[ペンタフルオロエタンスルホニル] イミドリチウム((C2 5 SO2 2 NLi)などが挙げられ、これらのいずれか1種または2種以上を混合して用いてもよい。
【0037】
【化12】
Figure 0004501344
【0038】
なお、電解液に代えてゲル状の電解質を用いてもよい。ゲル状の電解質は、保持体に電解液を保持させたものである。保持体は、例えば、高分子化合物または無機化合物により構成されている。高分子化合物としては、例えば、ポリエチレンオキサイドあるいはポリエチレンオキサイドを含む架橋体などのエーテル系高分子化合物、ポリメタクリレートなどのエステル系高分子化合物あるいはアクリレート系高分子化合物、またはポリフッ化ビニリデンあるいはフッ化ビニリデンとヘキサフルオロプロピレンとの共重合体などのフッ素系高分子化合物が挙げられ、これらのうちのいずれか1種または2種以上が混合して用いられる。特に、酸化還元安定性の観点からは、フッ素系高分子化合物を用いることが望ましい。
【0039】
また、この二次電池では、正極21および負極22のうちの少なくとも一方の表面に、電解液よりも表面張力が小さく、かつ電解液に不溶性の化合物を含む被膜を有している。このような化合物は、電極の表面に薄い膜を生成して広がるため、僅かな量でも電極の表面を広く被覆することができる。よって、この二次電池では、被膜を形成する化合物を多量に用いなくても、電解液の分解反応を抑制するのに有効な被膜が形成されている。なお、被膜は、上記化合物として1種を含んでいてもよいが、複数種を含んでいてもよい。
【0040】
電解液よりも表面張力が小さく、かつ電解液に不溶性の化合物としては、上述の電解液を用いた場合、例えば、シロキサン,パールフルオロポリエーテル,パーフルオロアルカン(飽和フッ化炭素)あるいはそれらの誘導体が挙げられる。中でも室温において液体のものが好ましく、また、単独では固体であっても複数種を混合した状態で液体のものも好ましい。
【0041】
シロキサンとしては、具体的には、化13で表される構造部を有する化合物が挙げられる。
【0042】
【化13】
Figure 0004501344
【0043】
R1,R2としては、例えば、水素基(−H)、アルキル基(−Cm H2m+1 )、ビニル基(−CH=CH2 )等の多重結合を有する炭化水素基、フェニル基(−C6 5 )に代表されるアリル基、部分フッ素化または全フッ素化されたフッ素化アルキル基(−Cm 2m+1)、アルコール基(−Cm 2mOH)、カルボン酸基(−Cm 2mCOOH)、アルコキシ基(−OCm 2m+1)、カルボン酸エステル基(−O−CO−Cm 2m+1)、アクリロキシ基(−Cm 2m−O−CO−CH=CH2 )あるいはメタクリロキシ基(−Cm 2m−O−CO−C(CH3 )=CH2 )が挙げられる。R1およびR2はそれぞれ必ずしも1種類である必要はなく、2種類以上を含んでいてもよい。また、R1およびR2は同一でもよく、異なっていてもよい。mおよびnはそれぞれ任意の整数である。このようなシロキサンとしては、具体的には、ポリ(ジメチルシロキサン),ポリ(メチルヒドロシロキサン)あるいはポリ(メチルフェニルシロキサン)が挙げられ、これらは非常に安価であるので経済的で好ましく、特に、ポリ(ジメチルシロキサン)およびポリ(メチルフェニルシロキサン)は、材料費が電池1万本に対して1円程度であり、電池の製造費用に対して殆ど無視することができるのでより好ましい。
【0044】
パールフルオロポリエーテルとしては、化14で表される構造部を有する化合物が挙げられる。
【0045】
【化14】
Figure 0004501344
【0046】
R3としては、例えば、フッ素基(−F)、パーフルオロアルキル基(Cm 2m+1)、パーフルオロアルキルエーテル基(−OCm 2m+1)、パーフルオロアルコール基(−Cm 2mOH)、パーフルオロカルボン酸基(−Cm 2mCOOH)あるいはパーフルオロカルボン酸エステル基(−Cm 2mCOOCm 2m+1)が挙げられ、q>pである。p=0の場合もある。R3は必ずしも1種類である必要はなく、2種類以上を含んでいてもよい。m,pおよびqはそれぞれ任意の整数である。このようなパーフルオロポリエーテルとしては、具体的には、ポリ(テトラフルオロエチレンオキサイド)あるいはポリ(ヘキサフルオロプロピレンオキサイド)が挙げられる。
【0047】
パーフルオロアルカンとしては、化15で表されるものが挙げられ、その構造は、直鎖状でも枝分かれしていてもよい。
【0048】
【化15】
a 2a+2
式中、aは任意の整数を表す。
【0049】
このようなパーフルオロアルカンとしては、a≧5で沸点が室温以上のものが好ましく、例えば、パーフルオロペンタデカン(C1532)が挙げられる。
【0050】
これら電解液よりも表面張力が小さく、かつ電解液に不溶性の化合物の含有量は、電解液に対する質量比で100ppm以上1000ppm以下の範囲内であることが好ましい。この範囲内とすれば、被膜の厚さを必要以上に厚くすることなく、電解液の分解反応を抑制することができるからである。
【0051】
この二次電池は、例えば、次のようにして製造することができる。
【0052】
まず、例えば、正極活物質と導電剤と結着剤とを混合して正極合剤を調製し、この正極合剤をN−メチルピロリドンなどの溶剤に分散させて正極合剤塗液とする。次いで、この正極合剤塗液を正極集電体に塗布して乾燥させたのち、圧縮成型して正極合剤層を形成し、正極21を作製する。
【0053】
また、例えば、負極活物質と結着剤とを混合して負極合剤を調製し、この負極合剤をN−メチルピロリドンなどの溶剤に分散させて負極合剤塗液とする。次いで、この負極合剤塗液を負極集電体に塗布して乾燥させたのち、圧縮成型して負極合剤層を形成し、負極22を作製する。
【0054】
続いて、正極集電体に正極リード25を溶接などにより取り付けると共に、負極集電体に負極リード26を溶接などにより取り付ける。そののち、正極21と負極22とをセパレータ23を介して巻回し、正極リード25の先端部を安全弁機構15に溶接すると共に、負極リード26の先端部を電池缶11に溶接して、巻回した正極21および負極22を一対の絶縁板12,13で挟み電池缶11の内部に収納する。次いで、電解液に、電解液よりも表面張力が小さく、かつ電解液に不溶性の化合物を分散させて懸濁液を作製し、この懸濁液を電池缶11の内部に注入する。これにより、上記化合物が正極21および負極22のうちの少なくとも一方の表面に広がり薄い皮膜が形成される。そののち、電池缶11の開口端部に電池蓋14,安全弁機構15および熱感抵抗素子16をガスケット17を介してかしめることにより固定する。これにより、図1に示した二次電池が完成する。
【0055】
この二次電池では、充電を行うと、例えば、正極21からリチウムイオンが離脱し、電解質を介して負極22に吸蔵される。放電を行うと、例えば、負極22からリチウムイオンが離脱し、電解質を介して正極21に吸蔵される。その際、上記被膜により、電解液の分解反応が抑制される。
【0056】
このように本実施の形態では、正極21および負極22のうちの少なくとも一方の表面に、電解液よりも表面張力が小さく、かつ電解液に不溶性の化合物、例えば、シロキサン,パーフルオロポリエーテル,パーフルオロアルカンおよびそれらの誘導体からなる群のうちの少なくとも1種の化合物を含む被膜を有するようにしたので、被膜を形成する化合物を多量に用いなくても、電解液の分解反応を有効に抑制することができる。よって、被膜の形成による悪影響および製造コストを小さく抑えつつ、サイクル特性などの電池特性を向上させることができる。従って、電池交換までの寿命を長くすることができるので、従来と同頻度で交換するのであれば、より放電容量が大きな状態で使用することができる。
【0057】
特に、電解液よりも表面張力が小さく、かつ電解液に不溶性の化合物の含有量を、電解液に対する質量比で100ppm以上1000ppm以下の範囲内とするようにすればより高い効果を得ることができる。
【0058】
また、ポリ(ジメチルシロキサン),ポリ(メチルヒドロシロキサン)およびポリ(メチルフェニルシロキサン)からなる群のうちの少なくとも1種の化合物を含む被膜を有するようにすれば、より少ない製造コストで電池特性を向上させることができる。
【0059】
なお、上記実施の形態では、負極活物質としてリチウムを吸蔵・離脱可能な負極材料を用いたいわゆるリチウムイオン二次電池を例に挙げて説明したが、他の二次電池についても、上記被膜を有するようにすれば、同様の効果を得ることができる。すなわち、サイクル特性などの電池特性を向上させることができる。
【0060】
他の二次電池としては、例えば、負極活物質としてリチウム金属を用いたいわゆるリチウム二次電池が挙げられる。リチウム二次電池は、例えば、負極がリチウム金属などにより構成されることを除き、上記二次電池と同様の構成を有し、同様にして製造することができる。
【0061】
【実施例】
更に、本発明の具体的な実施例について、図1を参照して詳細に説明する。
【0062】
参考例1−1〜1−3)
まず、正極活物質であるコバルト酸リチウム(LiCoO2 94質量部と導電剤であるグラファイト3質量部と、結着剤であるポリフッ化ビニリデン3質量部とを均一に混合したのち、この混合物にN−メチルピロリドンを添加し正極合剤塗液を得た。次いで、得られた正極合剤塗液を、幅56mm、長さ550mm、厚み20μmのアルミニウム箔よりなる正極集電体に均一に塗布して乾燥させ、厚み70μmの正極合剤層を正極集電体の両面に形成し、正極21を作製した。そののち、正極集電体の一端にアルミニウム製の正極リード25を取り付けた。
【0063】
また、負極活物質である黒鉛94質量部と結着剤であるポリフッ化ビニリデン6質量部とを均一に混合したのち、この混合物にN−メチルピロリドンを添加し負極合剤塗液を得た。次いで、得られた負極合剤塗液を、幅58mm、長さ600mm、厚み15μmの銅箔よりなる負極集電体に均一に塗布して乾燥させ、厚み70μmの負極合剤層を負極集電体の両面に形成し、負極22を作製した。そののち、負極集電体の一端にニッケル製の負極リード26を取り付けた。
【0064】
次いで、正極21と負極22とを厚み25μmの微多孔性ポリプロピレンフィルムよりなるセパレータ23を介して積層したのち、ワインダーで巻き取って巻回電極体20を形成し、この巻回電極体20を、直径18mm、長さ65mmのステンレスよりなる電池缶11の内部に収容した。なお、この電池の容量は2000mAhである。
【0065】
次いで、炭酸エチレンと炭酸プロピレンと炭酸ジメチルとヘキサフルオロリン酸リチウムとを20:10:50:20の質量比で混合した表面張力が約70mN/m(dyn/cm)〜80mN/mの電解液に、この電解液に不溶性の動粘度が100mm2 /S(cSt)、表面張力が約20mN/mのポリ(ジメチルシロキサン)を分散させて懸濁液を作製し、この懸濁液4.5gを電池缶11の内部に注入した。その際、電解液に対するポリ(ジメチルシロキサン)の含有量は質量比で、参考例1−1では100ppm、参考例1−2では500ppm、参考例1−3では1000ppmとした。
【0066】
そののち、ガスケット17を介して電池蓋14を電池缶11にかしめることにより、参考例1−1〜1−3について図1に示した円筒型の二次電池を得た。
【0067】
次いで、得られた参考例1−1〜1−3の二次電池を解体し観察した。その結果、正極21および負極22の表面にポリ(ジメチルシロキサン)を含む被膜が形成されていることが確認された。
【0068】
また、得られた参考例1−1〜1−3の二次電池について、充放電試験を行い、サイクル特性を調べた。その結果を図2に示す。図2において横軸はサイクル数(回)を示し、縦軸は放電容量維持率(%)を示している。なお、充電は2Aの定電流で電池電圧が4.2Vに達するまで行ったのち、4.2Vの定電圧で充電時間の総計が4時間に達するまで行い、放電は充電を30分間休止した後、2Aの定電流で電池電圧が3Vに達するまで行った。放電容量維持率は1サイクル目の放電容量に対する各サイクル目の放電容量の割合(%)として算出した。
【0069】
参考例1−1〜1−3に対する比較例1として、ポリ(ジメチルシロキサン)を用いないことを除き、他は参考例1−1〜1−3と同様にして二次電池を作製した。比較例1の二次電池についても、参考例1−1〜1−3と同様にして、充放電試験を行い、サイクル特性を調べた。その結果も図2に合わせて示す。
【0070】
図2から分かるように、正極21および負極22の表面にポリ(ジメチルシロキサン)を含む被膜を有する参考例1−1〜1−3では、その被膜がない比較例1に比べて、充放電を繰り返した際の放電容量維持率の低下が小さく、充放電を300サイクル繰り返しても60%超の放電容量維持率が得られた。また、充放電を繰り返した際の放電容量維持率の低下は、参考例1−2が最も小さかった。すなわち、正極21および負極22の表面にシロキサンを含む被膜を有するようすれば、僅かな添加量でもサイクル特性を向上させることができ、電解液に対するシロキサンの質量比を100ppm以上1000ppm以下の範囲内にすればより高い効果を得ることができることが分かった。
【0071】
参考例2−1〜2−3,実施例2−4)
参考例2−1,2−2,2−3,実施例2−4として、ポリ(ジメチルシロキサン)に代えて、電解液に不溶性の動粘度が100mm2 /S、表面張力が約20mN/mのポリ(メチルヒドロシロキサン)、ポリ(メチルフェニルシロキサン)、ポリ(ヘキサフルオロプロピレンオキサイド)、パーフルオロペンタデカンをそれぞれ用いたことを除き、他は参考例1−2と同様にして二次電池を作製した。参考例2−1〜2−3および実施例2−4の二次電池についても、参考例1−2と同様にして、解体して観察したところ、正極21および負極22の表面にポリ(メチルヒドロシロキサン)、ポリ(メチルフェニルシロキサン)、ポリ(ヘキサフルオロプロピレンオキサイド)またはパーフルオロペンタデカンを含む被膜が形成されていることが確認された。また、参考例1−2と同様にして、充放電試験を行い、サイクル特性を調べた。その結果を参考例1−2および比較例1の結果と共に図3に合わせて示す。
【0072】
図3から分かるように、充放電を繰り返した際の放電容量維持率の低下は、参考例1−2と参考例2−1〜2−3および実施例2−4とであまり差がなかった。すなわち、正極21および負極22に電解液よりも表面張力が小さく、かつ電解液に不溶性の化合物を含む被膜を有するようにすれば、サイクル特性を向上させることができることが分かった。
【0073】
なお、上記実施例では、ポリシロキサン,パーフルオロポリエーテルおよびパーフルオロアルカンについて具体的に例を挙げて説明したが、他のポリシロキサン、他のパーフルオロポリエーテルまたは他のパーフルオロアルカンの被膜を有するようにしても同様の結果を得ることができる。また、電解液よりも表面張力が小さく、かつ電解液に不溶性の他の化合物を含む被膜を有するようにしても同様の結果を得ることができる。更に、上記実施例では、電解液を用いる場合について説明したが、高分子化合物または無機化合物よりなる保持体に電解液を保持させた電解質を用いても同様の結果を得ることができる。
【0074】
以上、実施の形態および実施例を挙げて本発明を説明したが、本発明は上記実施の形態および実施例に限定されるものではなく、種々変形可能である。例えば、上記実施の形態および実施例では、電解液よりも表面張力が小さく、かつ電解液に不溶性の化合物を電解液に分散させて、電池内においてその化合物を含む被膜を形成するようにしたが、電極に被膜を形成したのち、電池を組み立てるようにしてもよい。
【0075】
また、上記実施の形態および実施例では、電極反応種としてリチウムを用いる場合を説明したが、ナトリウム(Na)あるいはカリウム(K)などの他のアルカリ金属,またはマグネシウムあるいはカルシウム(Ca)などのアルカリ土類金属、またはアルミニウムなどの他の軽金属、またはリチウムあるいはこれらの合金を用いる場合についても、本発明を適用することができ、同様の効果を得ることができる。その場合、正極活物質,負極活物質および電解質塩は、その軽金属に応じて適宜選択される。他は上記実施の形態と同様に構成することができる。
【0076】
更に、本発明は、巻回構造を有する円筒型の二次電池に限らず、巻回構造を有する楕円型あるいは多角形型の二次電池、または正極および負極を折り畳んだりあるいは積み重ねた構造を有する二次電池についても適用することができる。加えて、いわゆるコイン型,ボタン型あるいはカード型などの二次電池についても適用することができる。また、二次電池に限らず、一次電池などの他の電池についても適用することができる。更に、電解液を使用する電気二重層キャパシタなどにも適用することができる。
【0077】
【発明の効果】
以上説明したように請求項1あるいは請求項2に記載の二次電池によれば、パーフルオロペンタデカンを含む被膜を有するようにしたので、被膜を形成する化合物を多量に用いなくても、電解液の分解反応を有効に抑制することができる。よって、被膜の形成による悪影響および製造コストを小さく抑えつつ、サイクル特性などの電池特性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の一実施の形態に係る二次電池の構成を表す断面図である。
【図2】 参考例1−1〜1−3に係る二次電池のサイクル特性を表す特性図である。
【図3】 参考例2−1〜2−3および実施例2−4に係る二次電池のサイクル特性を表す特性図である。

Claims (1)

  1. 正極および負極と共に電解液を備え、電極反応種としてリチウムを用いた二次電池であって、
    前記正極および負極のうちの少なくとも一方の表面に、パーフルオロペンタデカンを含む被膜を有し、
    前記電解液は、リチウム塩と、炭酸エステル、または、炭酸エステルおよびカルボン酸エステルと、からなる
    二次電池。
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