JP4598320B2 - 方向性電磁鋼板の製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、主として変圧器その他の電気機器等の鉄芯として利用される方向性電磁鋼板の製造方法に関するものである。特に、脱炭焼鈍の昇温速度および雰囲気を制御することにより、皮膜特性と磁気特性に優れた方向性電磁鋼板の製造方法を提供する。
【0002】
【従来の技術】
多くの電気機器に磁気鉄芯として用いられる方向性電磁鋼板は、通常Siを2.0〜7%含有し、製品の結晶組織を{110}〈001〉方位に高度に集積させた鋼板である。方向性電磁鋼板の製品特性として、鉄損(W17/50(1.7T、50Hzの励磁条件下での電力損失)で代表される)が低く、磁束密度(B8(800A/mにおける磁束密度)で代表される)が高いことが要求される。特に、最近では地球環境保全や省エネルギーの見地から、電力損失の少ない鉄芯材料、すなわち鉄損の低い方向性電磁鋼板が求められている。また、製品の結晶粒組織を{110}〈001〉方位に集積しB8を大きくすることは、励磁特性を高めることにより鉄損低減に有効である。このため、方向性電磁鋼板の鉄損及び磁束密度向上のための技術開発が重ねられてきた。
【0003】
方向性電磁鋼板の一般的な製造方法は以下の通りである。Siを2〜7%以下含有する珪素鋼スラブを熱延し、1回もしくは中間焼鈍をはさむ2回の冷延により最終板厚に仕上げる。その後、湿潤水素雰囲気中の焼鈍(脱炭焼鈍)により、脱炭とSiO2を主体とするサブスケールの形成および一次再結晶を行う。続いてMgOを主体とする焼鈍分離剤を水に懸濁してスラリー状にして塗布、乾燥の後コイルに巻き取り、最終仕上げ焼鈍を行う。この最終仕上げ焼鈍により、二次再結晶が起こり鋼板の結晶粒組織が{110}〈001〉方位に集積する。同時に鋼板表面においては、焼鈍分離剤中のMgOとサブスケール中のSiO2が反応してフォルステライト(Mg2SiO4)を主体とする焼鈍皮膜が形成される。二次再結晶のためのインヒビターとしてAlNを用いた場合には、この焼鈍皮膜はMgAl2O4も含有する。この焼鈍皮膜に対し、以下では、通常の呼称である、グラス皮膜を用いることとする。仕上げ焼鈍後の方向性珪素鋼板には必要に応じて絶縁コーティングが施される。
【0004】
鉄損を下げるための典型的な技術のひとつに、いわゆる磁区細分化処理があげられる。例えば、積み鉄芯用の材料として、仕上げ焼鈍後の鋼板にレーザービームを照射して局部的な微小歪を与える方法が特開昭58−26405号公報等に開示されている。また、巻き鉄芯用に対しては、珪素鋼板を鉄芯に加工した後の歪取り焼鈍によっても磁区細分化効果の消失しない方法が、特開昭62−8617号公報に開示されている。
【0005】
磁束密度向上のための典型的な技術のひとつに、特公昭40−15644号公報に開示されている製造方法があげられる。これは、AlNとMnSをインヒビターとして機能させ、最終冷延工程における圧下率を80%を超える強圧下とする製造方法である。この方法によれば、最終仕上げ焼鈍時に起こる二次再結晶により、{110}〈001〉方位に結晶粒の方位が集積し、B8が1.87T以上の高磁束密度を有する方向性電磁鋼板が得られる。この製造方法ではある程度の鉄損低減をはかることができるが、二次再結晶粒径が10mm程度と大きくなり、いわゆる磁区細分化処理を施さない場合には、高い磁束密度から期待される十分に低い鉄損値は得られていなかった。
【0006】
これに対し、特公平6−51187号公報に、二次再結晶粒組織の方位集積度を損ねることなしに二次再結晶粒径を小さくし鉄損を下げる方法が開示されている。この方法は、一次再結晶のための焼鈍(通常は脱炭焼鈍)において、140℃/秒以上の昇温速度で675℃以上の温度に加熱し、続いて脱炭処理し、さらに通常の最終仕上焼鈍により二次再結晶を起こさせるものである。一次再結晶焼鈍の昇温速度を上昇することにより、二次再結晶粒径が小さくなる。
【0007】
しかし、単に一次再結晶焼鈍あるいは脱炭焼鈍の昇温速度を大きくしただけでは、低い鉄損は得られない。高い方位集積度や小さな二次再結晶粒径という冶金学的鉄損低減効果を実際に発揮させるためには、鋼板に引っ張り応力を付与する必要がある。最終仕上焼鈍で生成するフォルステライトを主体とするグラス皮膜は鋼板に比較して熱膨張係数が小さいため、鋼板に引っ張り応力を与え、鉄損低減に大きく貢献する。したがって、良好なグラス皮膜を形成させる必要がある。
【0008】
しかしながら、昇温速度の変更は、脱炭焼鈍で生成するサブスケールの性質を変えてしまい、グラス皮膜の形成が損なわれ、皮膜による鋼板への張力付与効果が不十分になり、二次再結晶粒径の低減による鉄損改善効果は減退する。
【0009】
グラス皮膜を良好に形成することは、鉄損低減に必要なばかりではなく、トランス製造工程においても重要である。特に巻きトランスの場合、製造工程において方向性電磁鋼板に曲げ加工が加えられ、その際にグラス皮膜が剥離することがある。したがって、グラス皮膜には優れた皮膜密着性が要求される。一次再結晶焼鈍ないし脱炭焼鈍の昇温速度の変更は、グラス皮膜の密着性を悪化させる。
【0010】
また、グラスの密着性を向上させるために、グラス/鋼板界面において、グラス皮膜が部分的に鋼板部に食い込んだような形態とし、結果的にグラスと鋼板が共存する領域を作り出すことによってグラス皮膜の密着性を向上させる効果がある。しかしながら、このような構造とした場合、グラス/鋼板共存領域において、鋼板に凹凸が生じることになり、そのような領域におけるグラス/鋼板境界において誘発される磁荷によって不規則な磁区が鋼板部に形成され、鉄損特性を悪化させる場合がある。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、従来の方向性電磁鋼板に比較して皮膜特性(皮膜密着性)と磁気特性(鉄損特性)のいずれにおいても優れた方向性電磁鋼板の製造方法を提供するものである。
【0012】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、皮膜特性(皮膜密着性)と磁気特性(鉄損特性)が優れた方向性電磁鋼板を得るために、様々な電磁鋼板を製作し、皮膜と鋼板部の界面における構造を調査解析を行い、さらに、皮膜密着性と鉄損特性も調査した。これらの電磁鋼板を作る際には以下の点に注意して行った。即ち、脱炭焼鈍の昇温過程の昇温速度と雰囲気、脱炭焼鈍の均熱過程の雰囲気を種々変えた後に最終仕上焼鈍を行って製作した。その結果以下の特徴を見出した。
【0013】
皮膜密着性が良好のものは、皮膜と鋼板の界面において、皮膜が鋼板部分に部分的に2μm〜5μmの深さで食い込んでおり、皮膜と鋼板の共存する領域が存在しており、この領域において鋼板の結晶粒は1μm以下〜5μmの微細な結晶粒となっている。さらにこれら、皮膜密着性が良好なもののうち、鉄損特性に劣るものについては、この皮膜、鋼板共存部分における鋼板の結晶方位分布は、二次再結晶によって生成される{110}〈001〉方位、あるいはそれから10度以内の方位偏差を持った結晶粒の占める割合が非常に多く、鉄損特性も良好なものは、結晶方位分布は、二次再結晶によって生成される{110}〈001〉方位、あるいはそれから10度以内の方位偏差を持った結晶粒の占める割合が少なく、一次再結晶時の結晶方位分布の特徴を持った結晶方位粒の占める割合が多い。
【0014】
このように、皮膜密着性が良好であり、かつ鉄損特性に優れたグラス皮膜及び鋼板を得る為には、好ましくは、脱炭焼鈍工程の昇温段階の少なくとも600℃以上の温度域を95℃/s以上の昇温速度で800℃以上に加熱し、かつこの温度域の雰囲気を以下の(a)もしくは(b)のいずれかとし、
(a)体積分率で10-6〜10-1の酸素を含有する不活性ガス、
(b)雰囲気の構成成分をH2OとH2もしくはH2Oと不活性ガスもしくはH2OとH2と不活性ガスとし、かつ、H2O分圧が8×10-5〜5×10-1、
一方、脱炭焼鈍の均熱時における雰囲気の構成成分をH2とH2OもしくはH2、H2Oと不活性ガスとしかつH2O分圧のH2分圧に対する比PH2O/PH2を0.05〜0.75とすることが必要である。また、脱炭焼鈍時の雰囲気を制御するために流すガスの流量の総和を、その雰囲気下で脱炭焼鈍される電磁鋼板表面積で割ることで得られる、単位面積当り雰囲気流量については、 0.01Nm3/min・m2〜1 Nm3/min・m2 とすることを特徴とする。単位面積当り雰囲気流量が0.01Nm3/min・m2 未満であると皮膜密着性が低下し、また、1Nm3/min・m2 を超えると原単位が悪化するのでその上限は1Nm3/min・m2とする。
【0015】
本発明はこれらの知見に基づくものであり、その要旨とするところは以下の通りである。
(1)質量%で、C:0.005%以下、Si:2.0〜7.0%を含み、残部がFe及び不可避的不純物からなる鋼板の表面にMg、Si、Alを主とする酸化物からなる焼鈍皮膜を有し、皮膜と鋼板の境界より3μm以内の鋼板部分、あるいは、皮膜と鋼板結晶粒の混在領域における鋼板結晶粒の結晶方位分布が、Goss方位からの偏差角度が10度以内の結晶方位粒の存在割合が0.5以下である方向性電磁鋼板を製造する方法であって、脱炭焼鈍工程の昇温段階の少なくとも600℃以上の温度域を95℃/s以上の昇温速度で800℃以上に加熱し、かつ、この温度域の雰囲気が体積分率で10 −6 〜10 −1 の酸素を含有する不活性ガスで構成され、脱炭焼鈍の均熱時における雰囲気の構成成分をH 2 とH 2 OもしくはH 2 、H 2 Oと不活性ガスとし、かつ、H 2 O分圧のH 2 分圧に対する比PH 2 O/PH 2 を0.05〜0.75とし、また、単位面積当り雰囲気流量を、0.83Nm 3 /min・m 2 から1Nm 3 /min・m 2 の範囲とすることを特徴とする方向性電磁鋼板を製造する方法。
(2)質量%で、C:0.005%以下、Si:2.0〜7.0%を含み、残部がFe及び不可避的不純物からなる鋼板の表面にMg、Si、Alを主とする酸化物からなる焼鈍皮膜を有し、皮膜と鋼板の境界より3μm以内の鋼板部分、あるいは、皮膜と鋼板結晶粒の混在領域における鋼板結晶粒の結晶方位分布が、Goss方位からの偏差角度が10度以内の結晶方位粒の存在割合が0.5以下である方向性電磁鋼板を製造する方法であって、脱炭焼鈍工程の昇温段階の少なくとも600℃以上の温度域を95℃/s以上の昇温速度で800℃以上に加熱し、かつ、この温度域の雰囲気が雰囲気の構成成分をH 2 OとH 2 もしくはH 2 Oと不活性ガスもしくはH 2 OとH 2 と不活性ガスとし、かつ、H 2 O分圧が8×10 −5 〜5×10 −1 であり、また、脱炭焼鈍の均熱時における雰囲気の構成成分をH 2 とH 2 OもしくはH 2 、H 2 Oと不活性ガスとし、かつ、H 2 O分圧のH 2 分圧に対する比PH 2 O/PH 2 を0.05〜0.75とし、また、単位面積当り雰囲気流量を、0.83Nm 3 /min・m 2 から1Nm 3 /min・m 2 の範囲とすることを特徴とする方向性電磁鋼板を製造する方法。
(3)磁区細分化処理を施すことを特徴とする、(1)または(2)に記載の方向性電磁鋼板を製造する方法。
【0016】
【発明の実施の形態】
以下、本発明について詳細に説明する。
【0017】
図1(a)に、本発明の製造方法により得られた鋼板の板厚とグラス皮膜の密着性との相関を示す。皮膜の密着性は20mm径の曲率で曲げた場合の皮膜剥離が発生しない割合(%)で評価している。すなわち、同一条件で製造された130前後の製品コイルから各コイルにつき6枚程度試験片を採取し、皮膜剥離が生じた頻度を示している。本発明、すなわち黒四角印は、すべての板厚において従来製品の黒丸印に比較して密着性が向上している。
【0018】
図1(b)には、得られた鉄損特性の板厚依存性を示す。本発明、すなわち、黒四角印は、すべての板厚において従来製品の黒丸印に比較して鉄損値が減少している。
【0019】
これらの鋼板ついて、断面を観察し、皮膜及び鋼板の界面を観察し、皮膜が根を張るように鋼板部分に5μm〜10μmの深さで食い込み、結果的に鋼板と皮膜が共存している領域ができていることが分かった。このような領域が形成されることは、皮膜密着性を向上させる効果を持つ。しかしながら、このような領域の存在は、磁場印加時に鋼板表面部分に生成される磁区構造を乱し、結果的に鉄損特性に悪影響を与えてしまうことが懸念される。そこで、この界面部分の結晶方位分布を調査した。結晶方位分布を測定する場合、ラウエ法等、X線回折を利用した方法やRHEED法やLEED法等電子線の回折を利用した方法等があるが、いずれも、界面における数μmの幅の領域における結晶方位分布を測定するには空間分解能の点で困難がある。1μm以下の径に収束させた電子線を試料に照射し、後方散乱された電子線によって形成される菊池パターンによって電子線照射部の結晶方位を測定し、照射する電子線をスキャンすることによって試料面の結晶方位分布を測定する電子線後方散乱法が、現状では、このような目的には適している。従って、この方法を用いて、試料断面における皮膜、鋼板共存部分の鋼板の結晶方位分布を測定した。このような部分を測定するに際して、グラス皮膜を1μm径のダイアモンド砥粒で軽く研磨して皮膜の上部のみを薄く剥いで、部分的に皮膜が残り、鋼板表面が部分的に露出した状態にして鋼板表面上部から行った。測定においては、1mm四方の領域を20μmステップでスキャンし、観察場所を変え、同様な測定を行い、それを繰り返し、観察場所による影響を平準化した。また、皮膜を剥がさずに、断面を研磨して、断面部分での観察も行った。断面観察においては、鋼板表面に沿った測定領域の長さを600μm以上とり、鋼板厚み方向に10μmとり、0.2μmステップでスキャンして測定した。測定する断面の長さは、その試料の特徴を抽出できるほどに統計的に充分な長さである必要があるが、600μm以上とすることが好ましい。測定された結晶方位のうち、信頼性の低いものについては、測定結果を棄却し、信頼性の高いもののみ解析対象とした。ここで、信頼性とは、信頼性指数あるいはコンフィデンスインデックス等と呼ばれるパラメタで判定する。信頼性指数は、菊地パターンを認識して結晶方位を判定する際のアルゴリズムによって算出されるものであり、1以下の数値で表され、数値が大きいほど判定結果の信頼性が高い。通常、この値が0.1以上であれば信頼できると考えられている。本解析においては、信頼性指数が0.2以上の結果を解析対象とした。
【0020】
本発明のような電磁鋼板の場合、鋼板中心部などの鋼板内部においては、二次再結晶によって{110}〈001〉結晶方位が発達しているが、各点において測定された結晶方位が一次再結晶方位か二次再結晶方位か判別するために、{110}〈001〉結晶方位からの結晶方位の偏差角度を求めた。これは、測定結晶方位行列に{110}〈001〉結晶方位行列の逆行列を右からかけることによって得られるが、この際、{110}〈001〉方位と等価な対称性を持つ24個の結晶方位行列についても逆行列を求め、測定結晶方位に対する結晶方位偏差角度を求める。このようにして得ることができる24個の方位偏差角度のうち最小のものを、{110}〈001〉結晶方位に対する結晶方位偏差角度とする。
【0021】
このようにして求めた偏差角度の分布を図2に示す。これは、前述のように、鋼板表面を薄く研磨し、皮膜を一部取り除き、鋼板表面上部より1mm四方の領域を20μmステップでスキャンし、測定した場合の結果である。ここで、皮膜を研磨にて取り除く際に、研磨された皮膜厚さを制御しつつ研磨する必要があるが、通常の研磨では著しく困難である。好ましくは、半導体製造に用いられる化学機械研磨の手法を用いるのがよい。図2(a)は、本発明になる材料、図2(b)は、従来材料についてのものである。これらの図より、これらの材料間の特徴的な差異が明瞭に示される。即ち、本発明の材料においては、{110}〈001〉結晶方位からの偏差角度が10度未満の測定点が少なく、従来材料においては、ほとんどが偏差角度が10度未満の領域に入っているということである。この特徴をより明瞭とするためにその累積頻度を、図3に示す。図3(a)及び図3(b)は、各々、図2(a)及び図2(b)に対応した累積頻度曲線である。本発明になる材料においては、偏差角度10度未満のものが30%であり、従来材料においては80%となっている。これは、本発明になる材料と従来材料の特徴の差異を明瞭に示すものである。以下、{110}〈001〉結晶方位からの偏差角が10度未満の方位を二次再結晶方位、10度以上の方位を一次再結晶方位ということとする。以上より、従来材においては、皮膜直下において一次再結晶方位はほとんど残存していないが、本発明材においては、皮膜直下においては、かなりの量の一次再結晶方位の残存が見られることが分る。
【0022】
次に、断面において測定した結晶方位マップの代表的なものを図4に示す。本測定においては、被測定断面において、鋼板表面平行方向に800μm、鋼板厚み方向に7μmの領域を0.2μmステップでスキャンして測定した。図4に示す結晶方位マップは、そのようにして得られた結晶方位マップの一部を拡大して表示したものである。図4(a)が、本発明になる材料についてのもの、図4(b)が従来の材料についてのものである。また、図5〜図8は、断面において測定した図4の結晶方位マップと同様に、被膜と鋼板の境界より板厚方向に7μmまでを、板厚xが1μm厚ごとの範囲のそれぞれにおいて2505点ずつ測定し、測定点における結晶方位のGoss方位からの偏差角度δΘG が10度(°)以下の点と、10度(°)超の点の存在頻度を示したものである。
【0023】
図5〜図6からわかるように、本発明材においては、境界より板厚方向に3μm以下では、Goss方位からの偏差角度が10度以下となる点が50%以下存在するのに対し、従来材では、図7〜図8から判るように、境界より板厚方向に1μmを超えると、ほとんどがGoss方位からの偏差角度が10度以下となっている。なお、図4〜図8において、(1)(黒色部)は、Goss方位から10度以上の偏差角度を持つ結晶方位の領域、(2)(灰色部)は、Goss方位に近い方位を持つ二次再結晶領域、(3)(白色部)は、測定できなかった点あるいは信頼性の低い点を示す。本発明になる材料については、皮膜直下に、二次再結晶方位以外の方位、即ち、一次再結晶方位の結晶粒が存在し、従来材料についてはそれが見られず、図2及び図3から得られる知見と一致した知見を得る。しかしながら、一次再結晶方位は、図4に明らかなように、数μm程度の広がりをもった結晶粒として遍在しているため、観察領域の長さが数十μm程度だと観察されない可能性が高い。従って、観察領域の長さは、100μm以上である必要があるが、600μm以上であることが好ましい。前述のように800μmの長さに渡って断面観察した結果を解析して得られた、二次再結晶方位の存在比率の、鋼板深さ方向の累積比率分布F(z)を図9に示す。ここでzは、皮膜鋼板界面近傍から測った鋼板深さ方向の距離である。また、z=0となる面、即ち皮膜鋼板界面を定義する必要があるが、本測定においては、皮膜表面部まで含む断面で電子線をスキャンして得られた電子線後方散乱データで、高い信頼性で鉄の方位が同定された測定点のうち、最も皮膜表面に近い測定点における深さ方向の座標を皮膜鋼板境界、即ちz=0とした。図9(a)は、本発明になる電磁鋼板についてであり、図9(b)は、従来材についてのものである。ここで、F(z)は、次式より求めた。
【0024】
【数1】
【0025】
ここで右辺分母のNは、鋼板深さdがz以下である測定点の数であり、分子のN2は、そのうち二次再結晶方位を示す測定点の数である。ここで、測定点は、信頼性指数が高いもののみを対象とする。信頼性指数は、0.1以上であることが好ましい。これを図9に図示する。図9(a)は、本発明になる材料についてのものであり、図9(b)は、従来の材料についてのものである。これらの図は、図2〜図8に見られた傾向を顕著に、かつ定量的に表していることが分る。即ち、本発明になる材料においては、鋼材表面から5μm程度の範囲の中に一次再結晶方位粒が非常に高い比率で存在する領域がある。また、従来材料においては、そのような領域が存在しない。従来材料の場合、表層において、ほぼすべてが二次再結晶方位である。これらの図より、本材料の特徴は、グラス皮膜・鋼板の共存領域を含む3μm以内の領域において、二次再結晶方位の存在比率が50%以下と表すことができる。
【0026】
以上より、本発明材料と従来材料との違いは顕著であることが分る。即ち、本発明になる鋼板においては、皮膜、鋼板共存領域における鋼板の結晶方位は、{110}〈001〉結晶方位より10度以上の偏差角度を持ったものが大部分であるのに対して、従来品の場合は、10度以下の角度偏差をもったものが大部分である。これは、皮膜、鋼板共存領域における二次再結晶の進行程度が異なることを示す。
【0027】
このような結晶方位分布に対して、脱炭加熱時に昇温速度を大きくし、雰囲気を制御して脱炭時の鋼板の酸化過程を制御することによって形成される酸化皮膜が重要な役割を持っている。このような酸化皮膜は、雰囲気ガスから供給される酸素が関与する鋼材表面の酸化、還元反応と、鋼材内部の酸化物の酸素あるいは鋼中残留酸素が関与する酸化、還元反応のバランスによって形成される。本発明材においては、鋼材内部の酸化物の酸素あるいは鋼中残留酸素が主に関与した鋼材表面直下での酸化反応により、酸化皮膜が形成される。
【0028】
ここで形成される酸化皮膜は、酸化反応の局所的なばらつきを反映し、局所的に凹凸を持った形状で形成される。その後フォルステライト皮膜形成時に、局所的な凹凸は成長し、鋼板内部に1〜5μm程度食い込んだような形状となる。従って、鋼板の表面は、このような皮膜によって三次元的に包まれたような形態となる。
【0029】
二次再結晶焼鈍時に、このような形態の鋼板部分は、複雑な方向性を持った応力を受け、皮膜によって包まれた領域での二次再結晶粒成長は、著しく阻害されることになり、一次再結晶方位が残存することになる。このような複雑な方向性を持った応力は局所的であり、皮膜直下から離れると急激に減衰し、方向のそろった一軸性の応力となり、鋼板内部においては、二次再結晶を阻害するようなことはない。このようにして本発明材における特徴的な皮膜直下の結晶方位分布が形成されることになる。
【0030】
さらに、皮膜、鋼板共存領域における二次再結晶進行程度の相違は、鉄損特性に対して大きな影響を与える。それは、皮膜と鋼板の境界部分に凹凸がある場合、見かけ上の磁荷が誘起されやすくなる。その誘起された磁化によって鋼板内部に磁気的な擾乱が与えられ、鉄損が劣化するのである。本発明材は、従来材より、皮膜の鋼板部への食い込みが深いため、このような、凹凸形状による鉄損の劣化は、深刻な影響をもたらすことが懸念された。
【0031】
しかしながら、そのような、皮膜凹凸部に接する鋼板部分を、上記の手法により一次再結晶粒とすることにより鉄損の劣化を無くし、鉄損の向上が達成された。
【0032】
これは、以下の理由による。即ち、前述のように、皮膜凹凸部と鋼板の界面に外部から磁場を印加すると、見かけ上の磁荷が誘起されるが、この磁荷は、鋼板部に形成される磁区構造を乱す。この乱れによって鉄損が増加するため、このような磁荷は、小さいほうが鉄損の劣化は少ない。ところで、電磁鋼板に外部磁場を印加した場合、電磁鋼板には、磁化が発生するが、この磁化は、皮膜内部と鋼板内部において大きさが異なる。従って皮膜凹凸部と鋼板の界面において磁化は、不連続となる。このような不連続は、界面に磁荷が形成されることによって補償される。従って界面における磁化の変化、即ち、その不連続性が大きいほど、そこに誘起される磁荷は大きくなる。ここで、皮膜内部の磁化は、それほど大きくなく、真空中に磁場を与えた場合に誘起される磁化の大きさ程度である。従って、鋼板部の磁化の大きさによって、界面に誘起される磁荷が決まってくる。ところで、方向性電磁鋼板においては、鋼板に発生する磁化を大きくしてエネルギー伝達効率をよくするために、その〈100〉結晶軸方向に外部磁場を印加する。即ち、二次再結晶方位における〈100〉軸方向に外部磁場を印加する。これは、Feの磁気異方性、即ち、〈100〉結晶軸方向に大きな磁化を発生しやすい性質に基づくものである。従って、印加磁場方向が〈100〉結晶軸方向から離れるほど発生する磁化は小さくなる。即ち、皮膜凹凸部と鋼板部の界面において誘起される磁荷を小さくするためには、その鋼板部における結晶方位を二次再結晶方位から離れた結晶方位、即ち一次再結晶方位のままとすることにより達成される。本発明材において、このような結晶方位分布となっていることは、すでに見たとおりである。従来材においては、皮膜部の凹凸は小さいものの、それに接する鋼板部の結晶方位がほぼ二次再結晶方位となっているので、その界面に誘起される磁荷がかなり大きくなり、磁区構造が大きく乱れるために本発明材に比較して鉄損特性に劣ることとなるのである。
【0033】
以下に、より厳密に説明する。皮膜、鋼板共存領域における鋼板部の透磁率をμとし、磁束密度ベクトル、磁場ベクトルを各々、列ベクトルB、Hとすれば、次式(2)のように書ける。
【0034】
【数2】
【0035】
と表される。
【0036】
磁場の解析においては、電場の場合とは異なり、真の磁荷は存在せず、磁束密度ベクトルの発散は、ゼロであり、以下の式が成立する。
【0037】
【数3】
【0038】
ここで、divは、ベクトルの発散を表す演算子である。∇は、列ベクトル微分演算子であり、次式(3)のような列ベクトルとして書ける。
【0039】
【数4】
【0040】
また、(2)にあるように、ベクトル或いは行列の右肩の添字Tは、各々の行と列を入れ替えた行ベクトル或いは転置行列を表す。また、ここで、透磁率μは、テンソル量であり、3行3列の行列として表されることを考慮して、式(1)、及び式(3)を式(2)に代入して演算すると、形式的に、次式(5)のように書ける。
【0041】
【数5】
【0042】
ここで、Trace( )は、括弧内の行列の対角要素の和をとる演算子である。
【0043】
ここで、式(4)左辺第二項は、磁場ベクトルHの発散を含む項であり、見かけ上誘起される磁荷を表していると理解できる。このような見かけ上の誘起磁荷をρindと表せば、式(5)は、次式(6)のように書き直すことができる。
【0044】
【数6】
【0045】
ここで、右辺は、概略、透磁率テンソルの勾配と磁場ベクトルの内積と理解することができる。透磁率テンソルの勾配は、皮膜と鋼板の境界のように、透磁率が不連続的に変化するところで大きな値をとる。式(6)は、そのような、媒質の不連続点において、磁場Hの連続性を補償するために、見かけ上の磁荷が誘起されることを表していると理解することができる。さらに、そのような磁荷は、勾配と磁場Hとの内積に比例するため、透磁率勾配が磁場Hに平行方向の時に大きくなることが分る。以上より、皮膜が鋼板に食い込んだ形態における側面上にこのような磁荷が誘起され易いと理解できる。このようにして誘起された見かけ上の磁荷によって鋼板表面において逆磁区などが発生し、磁場が時間的に変化するような場合、渦電流などに起因する磁気的エネルギ損失を起こすこととなり、鉄損特性を劣化させることとなる。また、このような擾乱は、磁区という広がりを持った構造を介して生じるため、鋼板表面の限られた領域に発生した磁区変化の影響は、広がりを持って内部に浸透し、結果的に大きな擾乱となる。
【0046】
ところで、透磁率テンソルμは、材料によって決まる量である。しかし、方向性電磁鋼の場合、磁場Hの方向が、〈100〉結晶軸方向に平行となるように使われ、かつ電磁鋼は、磁気異方性を持つため、透磁率テンソルμは、結晶粒の結晶方位によって大きく変わる。ここで、試料圧延方向をx軸、法線方向をz軸とする。また、電磁鋼は立方晶であるが、立方晶の3個の互いに垂直な結晶軸、〈100〉、〈010〉、〈001〉が各々、x軸、y軸、z軸に平行になるように結晶を配置した場合の透磁率テンソルをμ0で定義する。鉄の磁気異方性に起因して、μ0は、大きな値の対角要素を持ち、その非対角要素は小さい値をとる。また、試料内のある領域において結晶方位が、結晶方位行列Gで表される場合、そこでの透磁率テンソルμは、次式(7)で表される。
【0047】
【数7】
【0048】
式(7)を式(6)に代入することにより、次式(8)が得られる。
【0049】
【数8】
【0050】
式(8)より、透磁率テンソルの勾配は、結晶方位行列の勾配として表されることが分る。電磁鋼板における状況を考慮し、磁場Hは、圧延方向、即ちx方向に平行であることを考えると、二次再結晶方位である{110}〈001〉方位、あるいは、それと同等な結晶対称性をもつ方位においては大きな透磁率となり、それ以外の方位の結晶粒においては、小さくなる。従って、二次再結晶結晶方位以外の方位の結晶粒の場合、式(6)及び式(8)に示される、結晶方位変化によって生じる透磁率勾配は小さくなり、見かけ上の誘起磁荷を低下させ、結果的に磁気的な擾乱が小さくなり、鉄損特性の向上につながることになる。
【0051】
さらに、式(8)によれば結晶方位勾配の大きい領域、即ち、結晶粒界において磁荷が誘起される場合もあることを示している。このような効果は、一次再結晶粒と二次再結晶粒が接する結晶粒界において著しいと考えることができる。従って、本発明になる電磁鋼板においては、皮膜、鋼板共存領域に存在する一次粒と二次再結晶粒との境界にも無視できない量の、見かけ上の磁荷が誘起される可能性があり、皮膜と鋼板の境界に誘起される磁荷と合わせて、磁気的な多重極子場が形成され、磁区構造に変化を与え、鉄損の低下につながっていることを示唆するものである。以上、皮膜・鋼板界面に遍在する一次再結晶方位粒による鉄損特性に与える効果について述べたが、重要なのは、皮膜と鋼板が接する境界において、鋼板部が一次再結晶方位であったほうが、二次再結晶方位であった場合より境界において誘起される見かけ上の磁荷が小さいため、鋼板内部の二次再結晶方位部分に与える磁気的な擾乱が小さいということである。特に、皮膜と鋼板の界面法線方向が磁場と平行に近いほど、この効果は顕著となる。
【0052】
元来、電磁鋼板においては、二次再結晶方位の集積度が高ければ高いほど磁気特性、鉄損特性ともに良好となる。しかしながら、皮膜・鋼板界面を凹凸にすることによって密着性を確保する場合、この凹凸界面により発生する磁気的擾乱のために鉄損特性が劣化する。
【0053】
このような困難を避けるために、本発明にあるように、一次再結晶方位を皮膜鋼板界面部に残すことは有効に作用する。
【0054】
しかしながら、このような残留一次再結晶粒の存在比があまりに多いと、鋼板全体として磁化が飽和しにくくなり、B8の低下をもたらすこととなり、磁気特性上好ましくない。このような一次再結晶粒残存領域は、皮膜、鋼板共存部或いは、皮膜直下部に数μmの深さの範囲において、空間的にランダムに分布していることが重要である。
【0055】
【実施例】
〔実施例1〕
重量%で、3.25%Si、0.077%C、0.08%Mn、0.01%P、0.03%S、0.03%Al、0.09%N、0.08%Cu、0.08%Snを含む溶鋼を鋳造し、スラブ加熱後に熱間圧延を行い、2.3mm厚の熱延板を得た。続いて1100℃で3分間焼鈍を行い、酸洗の後、冷間圧延して0.22mm厚とした。なお、冷間圧延中に220℃で5分の焼鈍を施した。
【0056】
圧延されたストリップをA〜Kにわけ、コイルAおよびBに対しては通常の脱炭焼鈍を施した(従来法)。コイルC〜Kについては、通電加熱による脱炭焼鈍の急速加熱処理を施した。昇温速度や昇温帯、均熱帯の雰囲気設定条件は表1に示すとおりである。
【0057】
その後、MgOを塗布し、1200℃、24時間、水素雰囲気中で最終仕上げ焼鈍を行った後、コロイダルシリカと燐酸塩を主体とする絶縁皮膜を形成し、製品とした。
【0058】
得られた諸特性は表1に示されている。本発明条件を満足するコイルC〜Fは、皮膜特性と磁気特性に優れた方向性電磁鋼板となっている。特に、最も好ましい条件を満たすC〜Dでは、より優れた皮膜特性、磁気特性を示している。また、雰囲気条件は、本発明条件を満たすが、単位面積当たりの総流量が本発明条件を満たさないコイルGにおいては、従来材と同程度の特性となる。
【0059】
【表1】
【0060】
〔実施例2〕
実施例1で得たコイルのうちB,C,F、Iにつき、更に、磁区細分化処理を行った。すなわち、歯形ロールを用いて、通板方向に対して直角方向(C方向)とのなす角が12°の方向に、5mm間隔で深さ15μm、幅90μmの溝を形成した。各コイルの鉄損特性を表2に示したように極めて低い鉄損値を与えている。
【0061】
【表2】
【0062】
【発明の効果】
本発明により、皮膜密着性に優れかつ磁気特性の極めて良好な方向性電磁鋼板を製造するための方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の鋼板と比較例の鋼板における板厚と膜密着性および鉄損との相関を示す図。
(a)板厚と皮膜密着性との相関を示す図。
(b)板厚と鉄損の相関を示す図。
【図2】本発明材と従来材における結晶方位の{110}〈001〉結晶方位からの偏差角度分布を示す図。
(a)本発明材
(b)従来材
【図3】本発明材と比較材における結晶方位の{110}〈001〉結晶方位からの偏差角度の累積頻度を示す図。
(a)本発明材
(b)従来材
【図4】本発明材と従来材での断面における被膜・鋼板界面近傍の結晶方位マップ。
(a)本発明材
(b)従来材
【図5】本発明材の被膜・鋼板界面から板厚方向の結晶方位分布を示す図。
【図6】本発明材の被膜・鋼板界面から板厚方向の結晶方位分布を示す図。
【図7】従来材の被膜・鋼板界面から板厚方向の結晶方位分布を示す図。
【図8】従来材の被膜・鋼板界面から板厚方向の結晶方位分布を示す図。
【図9】本発明と従来材における鋼板深さ方向に対する二次再結晶の累積比率を表わす図。
(a)本発明材
(b)従来材
Claims (3)
- 質量%で、
C:0.005%以下、
Si:2.0〜7.0%
を含み、残部がFe及び不可避的不純物からなる鋼板の表面にMg、Si、Alを主とする酸化物からなる焼鈍皮膜を有し、皮膜と鋼板の境界より3μm以内の鋼板部分、あるいは、皮膜と鋼板結晶粒の混在領域における鋼板結晶粒の結晶方位分布が、Goss方位からの偏差角度が10度以内の結晶方位粒の存在割合が50%以下である方向性電磁鋼板を製造する方法であって、
脱炭焼鈍工程の昇温段階の少なくとも600℃以上の温度域を95℃/s以上の昇温速度で800℃以上に加熱し、かつ、この温度域の雰囲気が体積分率で10 −6 〜10 −1 の酸素を含有する不活性ガスで構成され、脱炭焼鈍の均熱時における雰囲気の構成成分をH 2 とH 2 OもしくはH 2 、H 2 Oと不活性ガスとし、かつ、H 2 O分圧のH 2 分圧に対する比PH 2 O/PH 2 を0.05〜0.75とし、また、単位面積当り雰囲気流量を、0.83Nm 3 /min・m 2 から1Nm 3 /min・m 2 の範囲とすることを特徴とする方向性電磁鋼板を製造する方法。 - 質量%で、
C:0.005%以下、
Si:2.0〜7.0%
を含み、残部がFe及び不可避的不純物からなる鋼板の表面にMg、Si、Alを主とする酸化物からなる焼鈍皮膜を有し、皮膜と鋼板の境界より3μm以内の鋼板部分、あるいは、皮膜と鋼板結晶粒の混在領域における鋼板結晶粒の結晶方位分布が、Goss方位からの偏差角度が10度以内の結晶方位粒の存在割合が50%以下である方向性電磁鋼板を製造する方法であって、
脱炭焼鈍工程の昇温段階の少なくとも600℃以上の温度域を95℃/s以上の昇温速度で800℃以上に加熱し、かつ、この温度域の雰囲気が雰囲気の構成成分をH 2 OとH 2 もしくはH 2 Oと不活性ガスもしくはH 2 OとH 2 と不活性ガスとし、かつ、H 2 O分圧が8×10 −5 〜5×10 −1 であり、また、脱炭焼鈍の均熱時における雰囲気の構成成分をH 2 とH 2 OもしくはH 2 、H 2 Oと不活性ガスとし、かつ、H 2 O分圧のH 2 分圧に対する比PH 2 O/PH 2 を0.05〜0.75とし、また、単位面積当り雰囲気流量を、0.83Nm 3 /min・m 2 から1Nm 3 /min・m 2 の範囲とすることを特徴とする方向性電磁鋼板を製造する方法。 - さらに、磁区細分化処理を施すことを特徴とする、請求項1または2に記載の方向性電磁鋼板を製造する方法。
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