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JP4595230B2 - 嫌気性消化装置及び嫌気性消化方法 - Google Patents

嫌気性消化装置及び嫌気性消化方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は嫌気性消化装置及び嫌気性消化方法に係り、特に、有機性汚泥、し尿等の有機性排液を含む原水を、嫌気性微生物を含む汚泥の存在下でメタン発酵により処理するに当たり、発生する嫌気性消化汚泥を効果的に減容化することができる嫌気性消化装置及び嫌気性消化方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
有機性汚泥、し尿、食品排水等のスラリー状の高濃度有機性排液を嫌気性微生物の存在下にメタン発酵することにより処理する嫌気性処理方法は、嫌気性消化法とも呼ばれ、古くから行われている方法である。
【0003】
このような嫌気性消化処理においては、未分解物質及び嫌気性微生物を主体とする汚泥(消化汚泥)が生成する。従来、この消化汚泥は、機械脱水した後、焼却、埋立等により処理されている。
【0004】
嫌気性消化処理により生成する汚泥を減容化する装置として、特開平9−206785号公報には、消化汚泥をオゾン処理により改質した後、この改質液を嫌気性消化槽に返送する嫌気性処理装置が記載されている。この装置は、消化汚泥をオゾン処理して易生物分解性に改質した後、嫌気性消化槽に戻して嫌気性微生物の基質として更に分解するものであり、汚泥の減容化に有効な装置である。この装置で減容化効果を高めるには、嫌気性消化槽における汚泥の滞留時間を保って嫌気性消化処理の効率を低下させないようにしながら、改質処理する汚泥量を増加させる必要がある。そのためには、消化汚泥を固液分離して分離された高濃度汚泥を嫌気性消化槽に返送し、嫌気性消化槽の汚泥濃度を高める必要がある。
【0005】
しかしながら、消化汚泥は固液分離性が悪く、通常固液分離した際に分離液中に多くの固形分が流出してしまう。その結果、嫌気性消化槽の汚泥濃度を十分に高めることができず、従って、減容化効果を大幅に高めることができないという問題がある。また、嫌気性消化処理の分離液をその後段で好気性生物処理する場合には、分離液中に流出する固形分が多いと、その負荷が著しく高くなるという問題もある。
【0006】
また、嫌気性消化処理では、嫌気性消化槽に導入される有機性排液中の有機成分の多くはメタンガスに転換されて系外に除去されるのに対し、無機成分はごく一部が分離液として除去されるのみであるから、消化汚泥を固液分離して、分離汚泥を嫌気性消化槽に戻すと、嫌気性消化槽内に無機成分が蓄積して増加していく。そのため、嫌気性消化槽では有機成分の濃度はほぼ一定で推移するが、無機成分の濃度が経時的に増加するため、有機及び無機成分の和である汚泥濃度が増加する。そして、嫌気性消化槽内の無機成分濃度の増加につれて消化汚泥の粘性が高まり、その結果嫌気性消化槽内の攪拌が不十分になって嫌気性消化処理の効率が低下し、有機成分の分解が十分に行われなくなる。そのため、消化汚泥の一部を余剰汚泥として引き抜く必要が生じ、本来であれば嫌気性消化槽内で分解されるはずの有機成分までも余剰汚泥として排出される結果となるという問題もあった。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、消化汚泥の一部を固液分離して分離汚泥を嫌気性消化槽に返送し、他の一部を改質処理して改質液を嫌気性消化槽に返送する嫌気性消化処理において、消化汚泥の固液分離を効率的に行うことにより、分離液中に流出する固形分を減少させると共に、嫌気性消化槽の汚泥濃度を高め、嫌気性消化処理の効率を低下させることなく改質処理する汚泥量を増加させて、汚泥を大幅に減容化する嫌気性消化装置及び嫌気性消化方法を提供することを目的とする。
【0008】
本発明はまた、このような嫌気性消化処理において、消化汚泥の固液分離において、分離液中に無機成分を優先的に移行させることにより、返送される分離汚泥中の無機成分を低減し、これにより嫌気性消化槽での無機成分の蓄積を抑制して、嫌気性消化槽において有機成分を十分に分解し、生成する汚泥を大幅に減容化することができる嫌気性消化装置及び嫌気性消化方法を提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明の嫌気性消化装置は、嫌気性消化槽と、有機性排液を含む原水を該嫌気性消化槽に送給する原水送給手段と、該嫌気性消化槽から引き抜いた消化汚泥の一部にカチオン性高分子凝集剤又は両性高分子凝集剤を添加する手段と、凝集剤が添加された前記流出液を固液分離する固液分離手段と、該固液分離手段で分離された汚泥を前記嫌気性消化槽に返送する汚泥返送手段と、前記嫌気性消化槽から引き抜いた消化汚泥の他の一部を直接易生物分解性に改質する改質手段と、該改質手段で改質された改質液を該嫌気性消化槽に返送する改質液返送手段とを備える嫌気性消化装置であって、前記改質手段は、前記消化汚泥を、オゾン処理、酸化剤、酸、又はアルカリによる化学的処理、ミルによる磨砕の物理的処理、或いは熱的処理により改質する手段であることを特徴とする。
【0010】
本発明の嫌気性消化方法は、有機性排液を含む原水を嫌気性処理する嫌気性消化工程と、該嫌気性消化工程から引き抜いた消化汚泥の一部にカチオン性高分子凝集剤又は両性高分子凝集剤を添加して固液分離する凝集分離工程と、該凝集分離工程で分離された汚泥を前記嫌気性消化工程に返送する汚泥返送工程と、前記嫌気性消化工程から引き抜いた消化汚泥の他の一部を直接易生物分解性に改質し、改質液を前記嫌気性消化工程に返送する改質工程とを含む嫌気性消化方法であって、前記改質工程において、前記消化汚泥を、オゾン処理、酸化剤、酸、又はアルカリによる化学的処理、ミルによる磨砕の物理的処理、或いは熱的処理により改質することを特徴とする。
【0011】
本発明では、嫌気性消化槽の流出液(以下「消化汚泥」と称す。)を固液分離する際に、凝集剤を添加し、消化汚泥を凝集させた後固液分離するため、良好な固液分離を行うことができ、固形分の流出の少ない清澄な分離液を得ると共に、固形分の系外への流出を抑えて嫌気性消化槽の汚泥濃度を高く維持することができる。このため、嫌気性消化槽における汚泥の滞留時間を保って嫌気性消化処理の効率を低下させないようにしながら、改質する汚泥量を増加することによって改質による汚泥の減容化効果を高めることができる。
【0012】
本発明の嫌気性消化方法において、凝集剤として、カチオン性高分子凝集剤(以下「カチオン性ポリマー」と称す。)を用いる場合には、前述の嫌気性消化槽内での無機成分の蓄積を防止することができる。即ち、嫌気性消化槽内では有機成分が負電荷を帯びているのに対し、無機成分は正電荷を帯びている。このため、凝集剤としてカチオン性ポリマーを添加することにより、負電荷を帯びた有機成分を優先的にフロック化し、有機成分を嫌気性消化槽に返送する分離汚泥側に移行させることができる。一方、正電荷を帯びた無機成分は分離液側に移行させて、無機成分を優先的に系外へ排出することができる。このため嫌気性消化槽での無機成分の蓄積を抑制することができ、これにより、嫌気性消化槽において、必要以上に汚泥濃度が高まることを防ぎ、有機成分を十分に分解して汚泥を大幅に減容化することが可能となる。
【0013】
本発明の嫌気性消化方法において、凝集剤として、両性高分子凝集剤(以下「両性ポリマー」と称す。)を用いる場合には、無機成分の多い汚泥を効果的に凝集処理して固液分離性を高めることができる。即ち、上述の如く、嫌気性消化槽内では有機成分が負電荷を帯びるのに対し、無機成分は正電荷を帯びているため、無機成分の多い汚泥に対してはカチオン性ポリマーでは弱く小さいフロックしか生成せず、良好な固液分離を行うには添加量を多くする必要がある。これに対して、両性ポリマーはカチオン部とアニオン部が共存しており、カチオン部が汚泥粘質物の荷電中和を行い、アニオン部はカチオン部と反応して見掛けの高分子鎖を大きくして汚泥粒子を結びつける働きを強化するため、無機成分の多い汚泥に特に有効に働き、効率的に良好な固液分離が行われる。
【0014】
【発明の実施の形態】
以下に図面を参照して本発明の実施の形態を詳細に説明する。
【0015】
図1は本発明の嫌気性消化装置及び嫌気性消化方法の実施の形態を示す系統図である。
【0016】
図1において、1は嫌気性消化槽であり攪拌機1Aを備えている。2はポリマー溶解槽であり、撹拌機2Aを備える。3は固液分離装置であり、図1では沈殿槽が用いられている。4はオゾン処理槽であり、攪拌機4Aを備える。5はオゾン発生器である。
【0017】
この嫌気性消化装置では、嫌気性消化槽1に原水路11から有機性排液を含む原水を導入し、返送汚泥路12を通して沈殿槽3から返送される返送汚泥、オゾン処理槽4から改質液返送路20を通して返送される改質液及び嫌気性消化槽1内の嫌気性微生物を含む汚泥と混合し、緩やかに攪拌しながら嫌気性消化処理を行うように構成されている。ここで行われる嫌気性消化処理により、有機物は酸生成菌及びメタン生成菌により分解される。生成するメタンガスを含む消化ガスは排ガス路13から排出される。
【0018】
嫌気性消化槽1内の消化汚泥は移送路14から沈殿槽3に導入されるが、その間にポリマー注入管15よりポリマー溶解槽2から導入されるポリマーと混合され、凝集処理される。
【0019】
沈殿槽3では、移送路14から導入された凝集消化汚泥が固形分と分離液とに固液分離され、分離液は処理水として処理水路16から系外に排出される。固形分(分離汚泥)は必要に応じて一部が余剰汚泥取出路17から系外へ排出され、残部は返送汚泥として返送汚泥路12より嫌気性消化槽1に返送される。
【0020】
オゾン処理槽4は、嫌気性消化槽1から汚泥取出路18を通して取り出した消化汚泥に、オゾン注入管19よりオゾン発生器5のオゾンを吹き込んで接触させてオゾン処理するように構成されている。ここで行われるオゾン処理により、消化汚泥中の有機物は易生物分解性に改質される。改質液は改質液返送路20から嫌気性消化槽1に送られる。この改質液中にはオゾン処理槽4で改質された易生物分解性の固形分が含まれているため、この固形分が嫌気性消化槽1で消化され、処理系から生じる余剰汚泥量が減容化される。
【0021】
本発明において処理対象となる有機性排液は、嫌気性処理によって処理される有機物を含有する排液(汚泥を含む)であり、固形分を含むスラリー状のものでも、固形分を含まない液状のものでもよい。また、難生物分解性の有機物、無機物、セルロース、紙、綿、ウール、布、し尿中の固形物などが含有されていてもよい。このような有機性排液としては下水、下水初沈汚泥、し尿、浄化槽汚泥、家畜糞尿、食品工場排水、ビール廃酵母、その他の産業排液、これらの排液を処理した際に生じる余剰汚泥等の汚泥が挙げられる。
【0022】
嫌気性消化槽1は、嫌気性微生物を含む汚泥の存在下に、このような有機性排液をメタン発酵させる槽である。嫌気性微生物を含む汚泥は酸生成菌とメタン生成菌を含み、嫌気性消化槽1において、有機成分は嫌気性微生物により液化→低分子化→有機酸生成→メタン生成のステップによりメタンガスに転換される。
【0023】
嫌気性消化槽1におけるメタン発酵の条件としては、35℃付近に最適温度がある中温メタン生成菌、及び55℃付近に最適温度を有する高温メタン生成菌が増殖するいずれの温度条件も採用可能である。中温メタン生成菌は増殖が遅いため嫌気性消化槽1の滞留時間(SRT)を長くする、即ち、嫌気性消化槽1の容量を大きくする必要があるが、比較的低温での処理が可能なため加温及び保温のための設備が簡単になる。これに対し高温メタン生成菌の場合は加温及び保温の設備が必要になるが、増殖が速いため滞留時間が短くてよく、嫌気性消化槽1の容量を小さくすることができるという利点がある。
【0024】
中温メタン生成菌を主体とする場合は嫌気性消化槽で汚泥の滞留時間は10日以上、好ましくは15〜30日程度必要である。これに対して高温メタン生成菌を主体とする場合は上記範囲よりも短い滞留時間(例えば2日以上)とすることが可能である。
【0025】
嫌気性消化槽1の有機物負荷は0.5〜2.0kg−VSS/m・日、嫌気性消化槽1内のMLSS濃度は5,000〜100,000mg/L、好ましくは30,000〜60,000mg/L、温度は30〜38℃又は45〜60℃の条件とすることが好ましい。
【0026】
本発明では、嫌気性消化槽1の消化汚泥に凝集剤を添加して混合した後、固液分離を行い、分離液を処理水として排出すると共に分離汚泥を嫌気性消化槽1に返送する。このように凝集剤を添加して消化汚泥を凝集させた後に固液分離することによって良好な固液分離が行われ、清澄な分離水が得られると共に、固形分の系外流出を抑え、嫌気性消化槽1の汚泥濃度を高く維持して汚泥の減容化効果を高めることができる。
【0027】
凝集剤としては、添加量が少なくてよいことから有機系凝集剤が好ましい。凝集剤は、図1に示す如く、嫌気性消化槽1から沈殿槽3に汚泥を移送する移送路14に供給して混合してもよく、沈殿槽3その他の固液分離装置に供給して装置内部で混合してもよい。また、嫌気性消化槽1と沈殿槽3等の固液分離装置との間に消化汚泥と凝集剤とを混合して凝集させる混合槽を設けてもよい。
【0028】
固液分離装置としては、沈殿槽3の他遠心分離装置、浮上分離装置、膜分離装置などを用いることができる。
【0029】
嫌気性消化槽1での無機成分や難生物分解性有機成分の蓄積を防ぐために、必要に応じて、図1に示す如く、分離汚泥の一部を余剰汚泥として排出し、脱水、焼却、埋立等の処分を行ってもよい。
【0030】
固液分離した分離液は処理水としてそのまま下水等へ放流することもできるが、好気性生物処理、その他の後処理を行った後放流してもよい。
【0031】
オゾン処理槽4は、嫌気性消化槽1から引き抜いた消化汚泥をオゾン処理によって改質する槽である。オゾン処理は消化汚泥をオゾンと接触させることにより行う。消化汚泥のオゾン処理を嫌気性消化槽1から直接引き抜いた汚泥に対して行うことによって効率よく改質することができる。即ち、沈殿槽3で分離された分離汚泥は、凝集剤の添加により粗大なフロックを形成しているため、汚泥との接触効率が著しく低く、効率よく改質することができないが、嫌気性消化槽1内の汚泥は、槽内の長い滞留時間の間に添加された凝集剤が生物分解されて凝集作用が失われているため、フロックは微細であり、効率よくオゾンと接触させて改質することができる。消化汚泥は嫌気性消化槽1から直接引き抜く他、消化汚泥の移送路14のポリマー注入点より上流側から分岐して引き抜いてもよい。
【0032】
オゾンとの接触方法としては、オゾン処理槽4に消化汚泥を導入してオゾンを吹き込む方法、機械攪拌による方法、充填層を利用する方法などが採用できる。
【0033】
オゾンとしてはオゾン含有ガスの他、オゾン含有水などが使用でき、オゾンの使用量は通常0.01〜0.08g−O/g−VSS、好ましくは0.02〜0.05g−O/g−VSSである。
【0034】
このようなオゾン処理を行うことにより、消化汚泥中の菌体は死滅し、その他の有機物と共に易生物分解性に改質される。
【0035】
嫌気性消化槽1から引き抜いてオゾン処理する消化汚泥の量は、汚泥の減容効果を十分に確保するため、消化汚泥中に含まれる固形物(VSS)の量として、嫌気性消化槽1へ導入される固形物(VSS)量の1/3〜5倍、好ましくは1/2〜3倍に相当する量とするのが好ましい。また、一日当たりにオゾン処理する消化汚泥の量は嫌気性消化槽1の全保有汚泥量の1/5〜1/50に相当する量とするのが好ましい。一日当たりのオゾン処理量を上記の量にすることにより、嫌気性消化処理に必要な微生物量を嫌気性消化槽1内に保持することができ、嫌気性消化処理の効率を高く保つことができる。
【0036】
なお、消化汚泥の改質手段としては、オゾン処理槽の他、過酸化水素等の酸化力の強い酸化剤や、酸、アルカリなどによる化学的処理、ミルによる磨砕のような物理的処理、熱的処理のいずれであっても良い。
【0037】
ところで、本発明において、固液分離する消化汚泥に添加する凝集剤としては、カチオン性ポリマー或いは両性ポリマーを用い、それぞれ次のような効果が奏される。
【0038】
前述の如く、嫌気性消化槽1内では有機成分が負電荷を帯びるのに対し、無機成分は正電荷を帯びているため、カチオン性ポリマーを用いることにより、有機成分を優先的にフロック化することができる。そのため、消化汚泥中の有機成分は固液分離後の分離汚泥側に優先的に移行して嫌気性消化槽1に返送され、一方、無機成分は分離液側に移行して系外に排出される。このようにして、無機成分を優先的に系外に排出することによって嫌気性消化槽1での無機成分の蓄積を抑制することができる。
【0039】
使用するカチオン性ポリマーは、カチオン性モノマーの単独重合、或いはカチオン性モノマーとノニオン性モノマーとの共重合により製造することができる。
【0040】
ここで、カチオン性モノマーとしては、例えばジメチルアミノメチルアクリレート又はメタクリレート、ジメチルアミノエチルアクリレート又はメタクリレート、ジメチルアミノプロピルアクリレート又はメタクリレート、ジメチルアミノ−2−ヒドロキシプロピルアクリレート又はメタクリレート、ジエチルアミノメチルアクリレート又はメタクリレート、ジエチルアミノエチルアクリレート又はメタクリレート、ジエチルアミノプロピルアクリレート又はメタクリレート、ジエチルアミノ−2−ヒドロキシアクリレート又はメタクリレート、ジメチルアミノメチルアクリルアミド又はメタクリルアミド、ジメチルアミノエチルアクリルアミド又はメタクリルアミド、ジメチルアミノプロピルアクリルアミド又はメタクリルアミド、ジメチルアミノ−2−ヒドロキシプロピルアクリルアミド又はメタクリルアミド、ジエチルアミノメチルアクリルアミド又はメタクリルアミド、ジエチルアミノエチルアクリルアミド又はメタクリルアミド、ジエチルアミノプロピルアクリルアミド又はメタクリルアミド、ジエチルアミノ−2−ヒドロキシプロピルアクリルアミド又はメタクリルアミドなどの第三級塩や四級化物などが挙げられる。第三級塩に用いられる酸としては、例えば塩酸、硫酸、硝酸、ギ酸、酢酸などが挙げられ、一方、四級化剤としては、例えば塩化メチル、ヨウ化メチル、塩化ベンジル、ジメチル硫酸、ジエチル硫酸、塩化エチル、ヨウ化エチルなどが挙げられる。これらのカチオン性モノマーは1種を用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0041】
また、ノニオン性モノマーとしては、例えば、アクリルアミド、メタクリルアミド、ジメチルアクリルアミド、ジメチルメタクリルアミドなどのビニル基含有アミド類、アクリロニトリルやメタクリロニトリルなどのシアン化ビニル系化合物、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチルなどの(メタ)アクリル酸のアルキルエステル類、酢酸ビニルなどのカルボン酸のビニルエステル類、スチレン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレンなどの芳香族ビニル化合物などが挙げられる。これらのノニオン性モノマーは1種を用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0042】
カチオン性ポリマーは0.05〜0.3重量%、特に0.2重量%程度の濃度に溶解して添加するのが好ましく、その添加量は、消化汚泥のSSに対して、0.2〜2重量%、特に0.4〜1.2重量%とするのが好ましい。
【0043】
一方、両性ポリマーであれば、カチオン部とアニオン部が共存しており、カチオン部が汚泥粘質物の荷電中和を行い、アニオン部はカチオン部と反応して見掛けの高分子鎖を大きくして汚泥粒子を結びつける働きを強化するため、無機成分の多い汚泥に特に有効に働き、良好な固液分離が行われる。
【0044】
使用する両性ポリマーは、前述のカチオン性モノマーと下記のアニオン性モノマーとの共重合により、或いは、必要に応じて、更に前述のノニオン性モノマーを共重合させることにより製造することができる。
【0045】
ここで、アニオン性モノマーとしては、例えばアクリル酸、メタクリル酸、エタクリル酸(α−エチルアクリル酸)などの不飽和カルボン酸及びそれらのナトリウム塩、カリウム塩、アンモニウム塩、さらにはビニルスルホン酸、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸及びそのナトリウム塩、カリウム塩、アンモニウム塩などが挙げられる。これらのアニオン性モノマーは1種を用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0046】
両性ポリマーは0.05〜0.3重量%、特に0.1重量%程度の濃度に溶解して添加するのが好ましく、その添加量は、消化汚泥のSSに対して、0.2〜1.5重量%、特に0.4〜1.0重量%とするのが好ましい。
【0047】
【実施例】
以下に実施例及び比較例を挙げて本発明をより具体的に説明する。
【0048】
実施例1,2
下水処理場より採取した混合生汚泥(VSS濃度11,500mg/L)を原水として、図1の嫌気性消化装置により50L/dayの処理量で処理を行った。
嫌気性消化槽の処理条件は次の通りとした。
[嫌気性消化槽の処理条件]
嫌気性消化槽容量:1m
有機物負荷量:0.6kg−VSS/m・日
MLSS濃度:60,000mg/L
MLVSS濃度:36,000mg/L
水理学的滞留時間:20日
温度:35℃
【0049】
この嫌気性消化槽からは、嫌気性消化槽に導入される固形分(VSS)量の1.5倍、1日当たりの嫌気性消化槽の全保有汚泥量の1/40に相当する量の消化汚泥を引き抜き、オゾン処理槽にて0.04g−O/g−VSSのオゾン使用量でオゾン処理した後嫌気性消化槽に返送した。
【0050】
また、嫌気性消化槽から引き抜いた消化汚泥100L/dayに対して、表1に示すポリマーを0.1%水溶液とし、表1に示す量添加して遠心分離器で固液分離し、分離液65L/dayを系外へ排出した。一方、分離汚泥のうち一部を余剰汚泥として系外へ引き抜き、残部を嫌気性消化槽に返送し、MLSS濃度が60,000mg/Lを超えないようにした。
【0051】
この処理において、固液分離により得られた分離液及び分離汚泥の性状と、排出される余剰汚泥量(分離液として排出された分を含む)を調べ、結果を表1に示した。
【0052】
比較例1
凝集剤を添加しなかったこと以外は実施例1と同様に嫌気性消化処理を行い、得られた分離液及び分離汚泥の性状と、排出される余剰汚泥量を調べ、結果を表1に示した。
【0053】
【表1】
Figure 0004595230
【0054】
表1より、消化汚泥に凝集剤を添加して固液分離することにより、固液分離性を高め、分離液中へのSSの流出を防止すると共に、分離汚泥の濃度を高めることができ、これにより汚泥の減容化率を向上させて、余剰汚泥量を低減することができることがわかる。
【0055】
特に凝集剤としてカチオン性ポリマーを用いた場合には、無機成分を分離液中に移行させて、嫌気性消化槽内の無機成分の蓄積を防止することができる。
【0056】
また、凝集剤として両性ポリマーを用いた場合には、良好な凝集性が得られ、分離汚泥を高濃縮化することができる。
【0057】
【発明の効果】
以上詳述した通り、本発明の嫌気性消化装置及び嫌気性消化方法によれば、消化汚泥の一部を固液分離して分離汚泥を嫌気性消化槽に返送し、他の一部を改質処理して改質液を嫌気性消化槽に返送する嫌気性消化処理において、消化汚泥に凝集剤を添加して凝集させた後固液分離するため、良好な固液分離を行うことができ、固形分の流出の少ない清澄な分離液を得ると共に、固形分の系外への流出を抑えて嫌気性消化槽の汚泥濃度を高く維持することができる。このため、嫌気性消化処理の効率を低下させることなく改質処理する汚泥量を増加させて、汚泥を大幅に減容化することができる。
【0058】
特に、凝集剤としてカチオン性ポリマーを添加することにより、負電荷を帯びた有機成分を優先的にフロック化し有機成分を嫌気性消化槽に返送する分離汚泥側に移行させ、一方、正電荷を帯びた無機成分は分離液側に移行させて、無機成分を優先的に系外へ排出することができる。このため嫌気性消化槽での無機成分の蓄積を抑制することができ、これにより、嫌気性消化槽において、有機成分を十分に分解して汚泥を大幅に減容化することが可能となる。
【0059】
また、カチオン部とアニオン部が共存する両性ポリマーを用いて、カチオン部で汚泥粘質物の荷電中和を行い、アニオン部で汚泥粒子を結びつける働きを強化することにより、無機成分の多い汚泥を有効に凝集処理し、固液分離性を高め、系内の汚泥濃度をより一層確実に高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の嫌気性消化装置及び嫌気性消化方法の実施の形態を示す系統図である。
【符号の説明】
1 嫌気性消化槽
2 ポリマー溶解槽
3 沈殿槽
4 オゾン処理槽
5 オゾン発生器

Claims (2)

  1. 嫌気性消化槽と、
    有機性排液を含む原水を該嫌気性消化槽に送給する原水送給手段と、
    該嫌気性消化槽から引き抜いた消化汚泥の一部にカチオン性高分子凝集剤又は両性高分子凝集剤を添加する手段と、
    凝集剤が添加された前記流出液を固液分離する固液分離手段と、
    該固液分離手段で分離された汚泥を前記嫌気性消化槽に返送する汚泥返送手段と、
    前記嫌気性消化槽から引き抜いた消化汚泥の他の一部を直接易生物分解性に改質する改質手段と、
    該改質手段で改質された改質液を該嫌気性消化槽に返送する改質液返送手段と
    を備える嫌気性消化装置であって、
    前記改質手段は、前記消化汚泥を、オゾン処理、酸化剤、酸、又はアルカリによる化学的処理、ミルによる磨砕の物理的処理、或いは熱的処理により改質する手段であることを特徴とする嫌気性消化装置。
  2. 有機性排液を含む原水を嫌気性処理する嫌気性消化工程と、
    該嫌気性消化工程から引き抜いた消化汚泥の一部にカチオン性高分子凝集剤又は両性高分子凝集剤を添加して固液分離する凝集分離工程と、
    該凝集分離工程で分離された汚泥を前記嫌気性消化工程に返送する汚泥返送工程と、
    前記嫌気性消化工程から引き抜いた消化汚泥の他の一部を直接易生物分解性に改質し、改質液を前記嫌気性消化工程に返送する改質工程と
    を含む嫌気性消化方法であって、
    前記改質工程において、前記消化汚泥を、オゾン処理、酸化剤、酸、又はアルカリによる化学的処理、ミルによる磨砕の物理的処理、或いは熱的処理により改質することを特徴とする嫌気性消化方法。
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