JP4551957B2 - 磁気記録媒体の製造方法 - Google Patents
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Description
本発明は、パターンド媒体などの磁気記録媒体の製造方法に関する。
近年、ハードディスクドライブ(HDD)に組み込まれる磁気記録媒体において、隣接トラック間の干渉によりトラック密度の向上が妨げられるという問題が顕在化している。特に記録ヘッド磁界のフリンジ効果を低減することは重要な技術課題である。
このような問題に対して、強磁性層を加工して記録トラック間を物理的に分離するディスクリートトラック(discrete track recording)媒体(DTR媒体)が提案されている。DTR媒体では、記録時に隣接トラックの情報を消去するサイドイレース現象、再生時に隣接トラックの情報を読み出すサイドリード現象などを低減できるため、トラック密度を高めることができる。したがって、DTR媒体は高記録密度を提供しうる磁気記録媒体として期待されている。同様に、ドット状の磁性パターンを有するビットパターンド媒体(BPM)も高記録密度を提供しうる磁気記録媒体として期待されている。
パターンド媒体(DTR、BPM)を製造する方法として、磁気記録層上にカーボンなどからなるハードマスクとレジストとを形成し、インプリント法でレジストに凹凸パターンを転写し、レジストの凹凸パターンをハードマスクに転写し、このハードマスクをエッチングマスクとして磁気記録層をエッチングすることにより凹凸パターンを形成する方法が知られている。
このような方法の例として、特許文献1および2には、Arイオンビームエッチングを用いて、磁気記録層のエッチングとハードマスクの除去とを同一工程で行う技術が開示されている。しかし、開示されているArイオンビームエッチングでは、パターン凹部で露出している磁気記録層を十分に磁性失活させる効果が望めないため、磁気記録層を全膜厚にわたってエッチングすることでパターン凹部を非磁性にする必要がある。この場合、ハードディスクドライブに組み込んだ際のヘッドの浮上性を考慮して、磁気記録層のエッチング後に凹部に非磁性体を埋め込んで平坦化する工程を必要とするため、生産性を大きく損なうという問題が生じる。
特開2005−50468号公報
特開2005−56535号公報
本発明の目的は、生産性に優れ、しかも良好なヘッドの浮上性を確保することができるパターンド磁気記録媒体(DTRおよびBPM)の製造方法を提供することにある。
本発明の実施形態によれば、磁気記録層上に、第1のハードマスク、Al、Ti、Ru、Pt、Co、Au、Ag、Si、Cu、およびこれらの酸化物、合金および混合物、ならびにSiC、NiNbZrTi、CoPt、およびCoCrPtSiO 2 からなる群より選択され、2nm以上15nm以下の膜厚を有する第2のハードマスクおよびレジストを形成し、前記レジストに対してスタンパをインプリントして凹凸パターンを転写し、パターン化されたレジストの凹部に残存している残渣を除去し、パターン化されたレジストをマスクとして、前記第2のハードマスクをエッチングして凹凸パターンを転写し、前記第2のハードマスクをマスクとして前記第1のハードマスクをエッチングして凹凸パターンを転写し、He、N 2 、CF 4 、及びHeとN 2 との混合ガスからなる群より選択されるエッチングガスを用いたイオンビームエッチングにより、凹部で露出している前記磁気記録層の磁性を失活させるとともに前記第2のハードマスクを除去し、このとき前記磁気記録層を15nm以下の深さまでエッチングし、前記第2のハードマスクの膜厚をth、前記磁気記録層のエッチング深さをdm、前記第2のハードマスクのエッチングレートをrh、前記磁気記録層のエッチングレートをrmとして、式th/rh<dm/rmを満足することを特徴とする磁気記録媒体の製造方法が提供される。
本発明の実施形態によれば、パターンド媒体(DTRおよびBPM)の製造において、凹部で露出している磁気記録層の失活と第2のハードマスクの除去とを同一工程で行うことができるうえに凹部に非磁性体を埋め込む工程を省略できるので、媒体の生産性に優れ、しかも良好なヘッドの浮上性を確保することができる。
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態を説明する。
図1に、本発明の方法を用いて製造されるパターンド媒体の一例であるディスクリートトラック媒体(DTR媒体)の周方向に沿う平面図を示す。図1に示すように、パターンド媒体1の周方向に沿って、サーボ領域2と、データ領域3が交互に形成されている。サーボ領域2には、プリアンブル部21、アドレス部22、バースト部23が含まれる。データ領域3には隣接するトラック同士が互いに分離されたディスクリートトラック31が含まれる。
図1に、本発明の方法を用いて製造されるパターンド媒体の一例であるディスクリートトラック媒体(DTR媒体)の周方向に沿う平面図を示す。図1に示すように、パターンド媒体1の周方向に沿って、サーボ領域2と、データ領域3が交互に形成されている。サーボ領域2には、プリアンブル部21、アドレス部22、バースト部23が含まれる。データ領域3には隣接するトラック同士が互いに分離されたディスクリートトラック31が含まれる。
本発明の方法を用いて製造されるパターンド媒体は、図1に示したDTR媒体に限らず、クロストラック方向だけでなくダウントラック方向にも互いに分離されたドット状の磁性パターンを有するビットパターンド媒体(BPM)も含む。
図2(a)〜(h)を参照して、本発明に係る磁気記録媒体の製造方法の一例を説明する。
図2(a)に示すように、ガラス基板51上に、下地層(図示せず)および厚さ20nmの磁気記録層52を成膜する。磁気記録層52上に厚さ15nmのカーボンからなる第1のハードマスク53と、厚さ3nmのCuからなる第2のハードマスク54を成膜する。第2のハードマスク54上に、レジスト55をスピンコートする。一方、たとえば図1に示すDTR媒体のパターンに対応する所定の凹凸パターンが形成されたスタンパ60を用意する。スタンパ60は、EB描画、Ni電鋳、射出成形を経て製造される。レジスト55に対向するように、スタンパ60の凹凸面を対向させる。
図2(b)に示すように、レジスト55に対してスタンパ60をインプリントして、スタンパ60の凹凸パターンをレジスト55に転写する。その後、スタンパ60を取り外す。レジスト55に転写された凹凸パターンの凹部の底にはレジスト残渣が残っている。
図2(c)に示すように、ドライエッチングにより、凹部のレジスト残渣を除去し、第2のハードマスク54の表面を露出させる。この際、たとえば誘導結合プラズマ(ICP)RIE装置により、エッチングガスとして酸素ガスを用いてレジスト残渣を除去する。
図2(d)に示すように、パターン化されたレジスト55をマスクとし、イオンビームエッチングを用いて第2のハードマスク54にレジストパターンを転写する。エッチングガスとしては例えばArを用いることができるが、特に限定されない。また、エッチング装置についても特に限定されず、たとえばRIE装置でもよい。
図2(e)に示すように、パターン化された第2のハードマスク54をマスクとして、第1のハードマスク53をエッチングしてパターンを転写し、凹部で磁気記録層52の表面を露出させる。エッチングにはたとえば、誘導結合プラズマ(ICP)RIE装置により、エッチングガスとして酸素ガスを用いる。その際、第2のハードマスク54のパターン上部に残存するレジストの一部または全部が剥離され、主に第1のハードマスク53と第2のハードマスク54とからなる凹凸パターンが形成される。
図2(f)に示すように、イオンビームエッチングにより、残存する第2のハードマスク53を除去するとともに、パターン凹部で磁気記録層52の磁性を失活させて非磁性層56を形成する。第2のハードマスク53を除去する際、パターン凹部の磁気記録層52の一部がエッチングされうる。しかし、凹部の磁気記録層52は磁性を失活して非磁性化しているため、加工後の媒体をハードディスクドライブに組み込んだ際に良好なフリンジ特性を得ることが可能である。なお、この工程に用いられるイオンビーム装置としては、たとえば電子サイクロトロン共鳴(ECR)型のイオンガンを用いることができる。
図2(g)に示すように、残存している第1のハードマスク53を除去する。この際、たとえば誘導結合プラズマ(ICP)RIE装置により、エッチングガスとして酸素ガスを用いて第1のハードマスク53を除去する。
図2(h)に示すように、CVD(化学気相堆積)により厚さ3nmの保護膜57を形成する。
なお、以上の工程において、各種の膜の厚さおよび凹凸の深さは、たとえばAFM(atomic force microscope)、断面TEM(transmission electron microscopy)などを用いて容易に測定することができる。また、メタルマスク種およびその組成比については、EDX(energy dispersive X-ray spectroscopy)分析を行なうことで容易に測定できる。加工完成後媒体をXPS(X-ray photoelectron spectroscopy)分析し、媒体内の残留ガスを分析することで、イオンビームエッチングで用いたエッチングガス種とその効果を調査することが可能である。また、図2に示した製造方法は、DTR媒体の製造に限らず、BPM(bit patterned media)の製造にも適用できる。
ここで、図2(f)の工程をより詳細に説明する。本発明の方法では、図2(f)の工程において、イオンビームエッチングにより第2のハードマスク54を除去するとともに、凹部で露出している磁気記録層52の磁性を失活させて非磁性層56を形成する。その際、パターン凹部の磁気記録層52の一部がエッチングされうる。エッチング深さについては、加工後の媒体をハードディスクドライブに組み込んだ際のヘッドの浮上特性により適宜調整される。すなわち、全加工工程を経て完成した媒体の状態で、磁気記録層52の凹凸がヘッドの安定浮上領域であるように調整される。
具体的には磁気記録層52の凹凸は15nm以下であることが好ましい。15nm以下であれば凹部への非磁性体の埋め込み工程を省略し、かつヘッドを安定浮上することが可能となる。エッチング深さが15nm以下の場合、パターン凹部で磁気記録層52の一部がエッチングされずに残るが、残存したパターン凹部の磁気記録層52は磁性失活により非磁性化されているため、加工後の媒体をハードディスクドライブに組み込んだ際に良好なフリンジ特性を得ることができる。
特許文献1および2には、Arイオンビームエッチングを用いて、磁気記録層のエッチングとハードマスクの除去とを同一工程で行う技術が開示されている。しかし、Arガスを用いたイオンビームエッチングでは、パターン凹部の磁気記録層の磁性を十分に失活させることができない。この場合、良好なフリンジ特性を得るには、凹部の磁気記録層を全膜厚にわたってエッチングする必要がある。このため、加工後の媒体をハードディスクドライブに組み込んだ際のヘッドの浮上性を考慮すると、凹部へ非磁性体を埋め込み、平坦化する工程を必要とする。したがって、従来技術では媒体の生産性が大きく損われる。
第2のハードマスク54の材料と厚さは、レジスト55との密着性および磁気記録層52とのエッチング選択比を考慮して適宜選択される。特に、エッチング選択比に関しては、下記のような点を考慮することが好ましい。例えばイオンビームエッチングにHe−N2混合ガスを用いて磁気記録層52の磁性を失活させる場合、第2のハードマスク54が窒化される。一般的に窒化物はエッチングレートが低いため、第2のハードマスク54を剥離することが困難となる。したがって、第2のハードマスク54の材料は、窒化されても適当なエッチングレートが得られる材料であることが好ましい。
このような観点から、第2のハードマスク54を、Al、Ti、Ru、Pt、Co、Au、Ag、W、Mo、Si、Nb、Cu、Mn、Zr、Pdおよびこれらの窒化物、酸化物、混合物からなる群より選択することが好ましい。これらのうちでも、Cu、Si、CoPtは特に好ましい。
第2のハードマスク54の膜厚th、磁気記録層52のエッチング深さdm、第2のハードマスクのエッチングレートrh、および磁気記録層のエッチングレートrmが、th/rh<dm/rmの関係を満たしていれば、第2のハードマスク54の厚さはできるだけ薄いほうがよく、特に2nm以上15nm以下が好ましい。膜厚が2nmよりも薄いと平坦な膜構造を得ることができず、レジストとの密着性が低く剥がれやすくなるため好ましくない。膜厚が15nmよりも厚いと、パターン凹部の磁気記録層52の磁性を失活させるには、磁気記録層52の凹凸を深くする必要がある。この場合、加工後の媒体をハードディスクドライブに組み込んだ際にヘッドの浮上が安定しないため好ましくない。
イオンビームエッチングに用いるガスは、He、Ne、Kr、Xe、N2、CF4、O2、Cl、H2、およびこれらの混合ガスからなる群より選択することが好ましい。これらのガスをエッチングガスとして用いることにより、パターン凹部の磁気記録層の磁性を十分に失活させることができる。特に、He、N2、He−N2混合ガス、CF4は磁性を失活させる効果が大きいので、エッチングガスとして好ましい。
次に、本発明の実施形態において用いられる好適な材料について説明する。
<基板>
基板としては、たとえばガラス基板、Al系合金基板、セラミック基板、カーボン基板、酸化表面を有するSi単結晶基板などを用いることができる。ガラス基板としては、アモルファスガラスおよび結晶化ガラスが用いられる。アモルファスガラスとしては、汎用のソーダライムガラス、アルミノシリケートガラスが挙げられる。結晶化ガラスとしては、リチウム系結晶化ガラスが挙げられる。セラミック基板としては、汎用の酸化アルミニウム、窒化アルミニウム、窒化珪素などを主成分とする焼結体や、これらの繊維強化物などが挙げられる。基板としては、上述した金属基板や非金属基板の表面にメッキ法やスパッタ法を用いてNiP層が形成されたものを用いることもできる。
基板としては、たとえばガラス基板、Al系合金基板、セラミック基板、カーボン基板、酸化表面を有するSi単結晶基板などを用いることができる。ガラス基板としては、アモルファスガラスおよび結晶化ガラスが用いられる。アモルファスガラスとしては、汎用のソーダライムガラス、アルミノシリケートガラスが挙げられる。結晶化ガラスとしては、リチウム系結晶化ガラスが挙げられる。セラミック基板としては、汎用の酸化アルミニウム、窒化アルミニウム、窒化珪素などを主成分とする焼結体や、これらの繊維強化物などが挙げられる。基板としては、上述した金属基板や非金属基板の表面にメッキ法やスパッタ法を用いてNiP層が形成されたものを用いることもできる。
<軟磁性裏打ち層>
軟磁性裏打ち層(SUL)は、垂直磁気記録層を磁化するための単磁極ヘッドからの記録磁界を水平方向に通して、磁気ヘッド側へ還流させるという磁気ヘッドの機能の一部を担っており、記録層に急峻で充分な垂直磁界を印加させ、記録再生効率を向上させる作用を有する。軟磁性裏打ち層には、Fe、NiまたはCoを含む材料を用いることができる。このような材料として、FeCo系合金たとえばFeCo、FeCoVなど、FeNi系合金たとえばFeNi、FeNiMo、FeNiCr、FeNiSiなど、FeAl系合金、FeSi系合金たとえばFeAl、FeAlSi、FeAlSiCr、FeAlSiTiRu、FeAlOなど、FeTa系合金たとえばFeTa、FeTaC、FeTaNなど、FeZr系合金たとえばFeZrNなどを挙げることができる。Feを60at%以上含有するFeAlO、FeMgO、FeTaN、FeZrNなどの微結晶構造または微細な結晶粒子がマトリクス中に分散されたグラニュラー構造を有する材料を用いることもできる。軟磁性裏打ち層の他の材料として、Coと、Zr、Hf、Nb、Ta、TiおよびYのうち少なくとも1種とを含有するCo合金を用いることもできる。Co合金には80at%以上のCoが含まれることが好ましい。このようなCo合金は、スパッタ法により製膜した場合にアモルファス層が形成されやすい。アモルファス軟磁性材料は、結晶磁気異方性、結晶欠陥および粒界がないため、非常に優れた軟磁性を示すとともに、媒体の低ノイズ化を図ることができる。好適なアモルファス軟磁性材料としては、たとえばCoZr、CoZrNbおよびCoZrTa系合金などを挙げることができる。
軟磁性裏打ち層(SUL)は、垂直磁気記録層を磁化するための単磁極ヘッドからの記録磁界を水平方向に通して、磁気ヘッド側へ還流させるという磁気ヘッドの機能の一部を担っており、記録層に急峻で充分な垂直磁界を印加させ、記録再生効率を向上させる作用を有する。軟磁性裏打ち層には、Fe、NiまたはCoを含む材料を用いることができる。このような材料として、FeCo系合金たとえばFeCo、FeCoVなど、FeNi系合金たとえばFeNi、FeNiMo、FeNiCr、FeNiSiなど、FeAl系合金、FeSi系合金たとえばFeAl、FeAlSi、FeAlSiCr、FeAlSiTiRu、FeAlOなど、FeTa系合金たとえばFeTa、FeTaC、FeTaNなど、FeZr系合金たとえばFeZrNなどを挙げることができる。Feを60at%以上含有するFeAlO、FeMgO、FeTaN、FeZrNなどの微結晶構造または微細な結晶粒子がマトリクス中に分散されたグラニュラー構造を有する材料を用いることもできる。軟磁性裏打ち層の他の材料として、Coと、Zr、Hf、Nb、Ta、TiおよびYのうち少なくとも1種とを含有するCo合金を用いることもできる。Co合金には80at%以上のCoが含まれることが好ましい。このようなCo合金は、スパッタ法により製膜した場合にアモルファス層が形成されやすい。アモルファス軟磁性材料は、結晶磁気異方性、結晶欠陥および粒界がないため、非常に優れた軟磁性を示すとともに、媒体の低ノイズ化を図ることができる。好適なアモルファス軟磁性材料としては、たとえばCoZr、CoZrNbおよびCoZrTa系合金などを挙げることができる。
軟磁性裏打ち層の下に、軟磁性裏打ち層の結晶性の向上または基板との密着性の向上のために、さらに下地層を設けてもよい。こうした下地層の材料としては、Ti、Ta、W、Cr、Pt、これらを含む合金、またはこれらの酸化物もしくは窒化物を用いることができる。軟磁性裏打ち層と記録層との間に、非磁性体からなる中間層を設けてもよい。中間層は、軟磁性裏打ち層と記録層との交換結合相互作用を遮断し、記録層の結晶性を制御する、という2つの作用を有する。中間層の材料としては、Ru、Pt、Pd、W、Ti、Ta、Cr、Si、これらを含む合金、またはこれらの酸化物もしくは窒化物を用いることができる。
スパイクノイズ防止のために軟磁性裏打ち層を複数の層に分け、0.5〜1.5nmのRuを挿入することで反強磁性結合させてもよい。また、CoCrPt、SmCo、FePtなどの面内異方性を持つ硬磁性膜またはIrMn、PtMnなどの反強磁性体からなるピン層と軟磁性層とを交換結合させてもよい。交換結合力を制御するために、Ru層の上下に磁性膜(たとえばCo)または非磁性膜(たとえばPt)を積層してもよい。
<磁気記録層>
垂直磁気記録層としては、Coを主成分とし、少なくともPtを含み、さらに酸化物を含む材料を用いることが好ましい。垂直磁気記録層は、必要に応じて、Crを含んでいてもよい。酸化物としては、特に酸化シリコン、酸化チタンが好適である。垂直磁気記録層は、層中に磁性粒子(磁性を有した結晶粒子)が分散していることが好ましい。この磁性粒子は、垂直磁気記録層を上下に貫いた柱状構造であることが好ましい。このような構造を形成することにより、垂直磁気記録層の磁性粒子の配向および結晶性を良好なものとし、結果として高密度記録に適した信号ノイズ比(SN比)を得ることができる。このような構造を得るためには、含有させる酸化物の量が重要となる。
垂直磁気記録層としては、Coを主成分とし、少なくともPtを含み、さらに酸化物を含む材料を用いることが好ましい。垂直磁気記録層は、必要に応じて、Crを含んでいてもよい。酸化物としては、特に酸化シリコン、酸化チタンが好適である。垂直磁気記録層は、層中に磁性粒子(磁性を有した結晶粒子)が分散していることが好ましい。この磁性粒子は、垂直磁気記録層を上下に貫いた柱状構造であることが好ましい。このような構造を形成することにより、垂直磁気記録層の磁性粒子の配向および結晶性を良好なものとし、結果として高密度記録に適した信号ノイズ比(SN比)を得ることができる。このような構造を得るためには、含有させる酸化物の量が重要となる。
垂直磁気記録層の酸化物含有量は、Co、Cr、Ptの総量に対して、3mol%以上12mol%以下であることが好ましく、5mol%以上10mol%以下であることがより好ましい。垂直磁気記録層の酸化物含有量として上記範囲が好ましいのは、垂直磁気記録層を形成した際、磁性粒子の周りに酸化物が析出し、磁性粒子を分離させ、微細化させることができるためである。酸化物の含有量が上記範囲を超えた場合、酸化物が磁性粒子中に残留し、磁性粒子の配向性、結晶性を損ね、さらには、磁性粒子の上下に酸化物が析出し、結果として磁性粒子が垂直磁気記録層を上下に貫いた柱状構造が形成されなくなるため好ましくない。酸化物の含有量が上記範囲未満である場合、磁性粒子の分離、微細化が不十分となり、結果として記録再生時におけるノイズが増大し、高密度記録に適した信号ノイズ比(SN比)が得られなくなるため好ましくない。
垂直磁気記録層のCr含有量は、0at%以上16at%以下であることが好ましく、10at%以上14at%以下であることがより好ましい。Cr含有量として上記範囲が好ましいのは、磁性粒子の一軸結晶磁気異方性定数Kuを下げすぎず、また、高い磁化を維持し、結果として高密度記録に適した記録再生特性と十分な熱揺らぎ特性が得られるためである。Cr含有量が上記範囲を超えた場合、磁性粒子のKuが小さくなるため熱揺らぎ特性が悪化し、また、磁性粒子の結晶性、配向性が悪化することで、結果として記録再生特性が悪くなるため好ましくない。
垂直磁気記録層のPt含有量は、10at%以上25at%以下であることが好ましい。Pt含有量として上記範囲が好ましいのは、垂直磁性層に必要なKuが得られ、さらに磁性粒子の結晶性、配向性が良好であり、結果として高密度記録に適した熱揺らぎ特性、記録再生特性が得られるためである。Pt含有量が上記範囲を超えた場合、磁性粒子中にfcc構造の層が形成され、結晶性、配向性が損なわれるおそれがあるため好ましくない。Pt含有量が上記範囲未満である場合、高密度記録に適した熱揺らぎ特性に十分なKuが得られないため好ましくない。
垂直磁気記録層は、Co、Cr、Pt、酸化物のほかに、B、Ta、Mo、Cu、Nd、W、Nb、Sm、Tb、Ru、Reから選ばれる1種類以上の元素を含むことができる。上記元素を含むことにより、磁性粒子の微細化を促進し、または結晶性や配向性を向上させることができ、より高密度記録に適した記録再生特性、熱揺らぎ特性を得ることができる。上記元素の合計の含有量は、8at%以下であることが好ましい。8at%を超えた場合、磁性粒子中にhcp相以外の相が形成されるため、磁性粒子の結晶性、配向性が乱れ、結果として高密度記録に適した記録再生特性、熱揺らぎ特性が得られないため好ましくない。
垂直磁気記録層としては、CoPt系合金、CoCr系合金、CoPtCr系合金、CoPtO、CoPtCrO、CoPtSi、CoPtCrSi、ならびにPt、Pd、Rh、およびRuからなる群より選択された少なくとも一種を主成分とする合金とCoとの多層構造、さらに、これらにCr、BおよびOを添加したCoCr/PtCr、CoB/PdB、CoO/RhOなどを使用することもできる。
垂直磁気記録層の厚さは、好ましくは5ないし60nm、より好ましくは10ないし40nmである。この範囲であると、より高記録密度に適した磁気記録再生装置を作製することができる。垂直磁気記録層の厚さが5nm未満であると、再生出力が低過ぎてノイズ成分の方が高くなる傾向がある。垂直磁気記録層の厚さが40nmを超えると、再生出力が高過ぎて波形を歪ませる傾向がある。垂直磁気記録層の保磁力は、237000A/m(3000Oe)以上とすることが好ましい。保磁力が237000A/m(3000Oe)未満であると、熱揺らぎ耐性が劣る傾向がある。垂直磁気記録層の垂直角型比は、0.8以上であることが好ましい。垂直角型比が0.8未満であると、熱揺らぎ耐性に劣る傾向がある。
<保護膜>
保護膜は、垂直磁気記録層の腐食を防ぐとともに、磁気ヘッドが媒体に接触したときに媒体表面の損傷を防ぐ目的で設けられる。保護膜の材料としては、たとえばC、SiO2、ZrO2を含むものが挙げられる。保護膜の厚さは1から10nmとすることが好ましい。これにより、ヘッドと媒体の距離を小さくできるので、高密度記録に好適である。カーボンは、sp2結合炭素(グラファイト)とsp3結合炭素(ダイヤモンド)に分類できる。耐久性、耐食性はsp3結合炭素のほうが優れるが、結晶質であることから表面平滑性はグラファイトに劣る。通常、カーボンの成膜はグラファイトターゲットを用いたスパッタリング法で形成される。この方法では、sp2結合炭素とsp3結合炭素が混在したアモルファスカーボンが形成される。sp3結合炭素の割合が大きいものはダイヤモンドライクカーボン(DLC)と呼ばれ、耐久性、耐食性に優れ、アモルファスであることから表面平滑性にも優れるため、磁気記録媒体の表面保護膜として利用されている。CVD(chemical vapor deposition)法によるDLCの成膜は、原料ガスをプラズマ中で励起、分解し、化学反応によってDLCを生成させるため、条件を合わせることで、よりsp3結合炭素に富んだDLCを形成することができる。
保護膜は、垂直磁気記録層の腐食を防ぐとともに、磁気ヘッドが媒体に接触したときに媒体表面の損傷を防ぐ目的で設けられる。保護膜の材料としては、たとえばC、SiO2、ZrO2を含むものが挙げられる。保護膜の厚さは1から10nmとすることが好ましい。これにより、ヘッドと媒体の距離を小さくできるので、高密度記録に好適である。カーボンは、sp2結合炭素(グラファイト)とsp3結合炭素(ダイヤモンド)に分類できる。耐久性、耐食性はsp3結合炭素のほうが優れるが、結晶質であることから表面平滑性はグラファイトに劣る。通常、カーボンの成膜はグラファイトターゲットを用いたスパッタリング法で形成される。この方法では、sp2結合炭素とsp3結合炭素が混在したアモルファスカーボンが形成される。sp3結合炭素の割合が大きいものはダイヤモンドライクカーボン(DLC)と呼ばれ、耐久性、耐食性に優れ、アモルファスであることから表面平滑性にも優れるため、磁気記録媒体の表面保護膜として利用されている。CVD(chemical vapor deposition)法によるDLCの成膜は、原料ガスをプラズマ中で励起、分解し、化学反応によってDLCを生成させるため、条件を合わせることで、よりsp3結合炭素に富んだDLCを形成することができる。
次に、本発明の実施形態における各工程の好適な製造条件について説明する。
<インプリント>
記録トラックとサーボ情報のパターンが埋め込まれたスタンパを、レジストが塗布された基板に圧着しながらレジストを硬化させることで、レジストにその凹凸パターンを転写する。
記録トラックとサーボ情報のパターンが埋め込まれたスタンパを、レジストが塗布された基板に圧着しながらレジストを硬化させることで、レジストにその凹凸パターンを転写する。
レジストとしては、UV硬化樹脂や、ノボラックを主成分とした一般的なレジストなどを用いることができる。UV硬化樹脂を使用する場合は、スタンパ材は石英や樹脂などの光を透過させるものがよい。UV硬化樹脂に紫外線を照射することで硬化させることができる。紫外線の光源としては例えば高圧水銀ランプを用いればよい。ノボラックを主成分とした一般的なレジストを使用する場合は、スタンパにNi、石英、Si、SiCなどの材質を用いることができる。レジストは熱や圧力を加えることで硬化させることができる。
<残渣除去>
O2ガスRIE(反応性イオンエッチング)でインプリント後のレジスト残差除去を行う。プラズマソースは、低圧で高密度プラズマが生成可能なICP(inductively coupled plasma)が好適であるが、ECR(electron cyclotron resonance)プラズマや、一般的な並行平板型RIE装置を用いてもよい。
O2ガスRIE(反応性イオンエッチング)でインプリント後のレジスト残差除去を行う。プラズマソースは、低圧で高密度プラズマが生成可能なICP(inductively coupled plasma)が好適であるが、ECR(electron cyclotron resonance)プラズマや、一般的な並行平板型RIE装置を用いてもよい。
<保護膜形成および後処理>
カーボン保護膜は、凹凸へのカバレッジをよくするためにCVD法で成膜することが望ましいが、スパッタ法または真空蒸着法により成膜してもよい。CVD法によれば、sp3結合炭素を多く含むDLC膜が形成される。保護膜上に潤滑剤を塗布する。潤滑剤としては、たとえばパーフルオロポリエーテル、フッ化アルコール、フッ素化カルボン酸などを用いることができる。
カーボン保護膜は、凹凸へのカバレッジをよくするためにCVD法で成膜することが望ましいが、スパッタ法または真空蒸着法により成膜してもよい。CVD法によれば、sp3結合炭素を多く含むDLC膜が形成される。保護膜上に潤滑剤を塗布する。潤滑剤としては、たとえばパーフルオロポリエーテル、フッ化アルコール、フッ素化カルボン酸などを用いることができる。
次に、上記磁気抵抗効果素子を用いた磁気記録再生装置(HDD)について説明する。図3は、本発明によって製造された磁気記録媒体を搭載した磁気記録装置を示す斜視図である。
図3に示すように、本発明の実施形態に係る磁気記録装置150は、ロータリーアクチュエータを用いた形式の装置である。パターンド媒体1は、スピンドルモータ140に装着され、図示しない駆動装置制御部からの制御信号に応答する図示しないモータにより矢印Aの方向に回転する。磁気記録装置150は、複数のパターンド媒体1を備えたものでもよい。
パターンド媒体1に対して情報の記録再生を行うヘッドスライダー130は、薄膜状のサスペンション154の先端に取り付けられている。ヘッドスライダー130の先端付近には磁気ヘッドが設けられている。パターンド媒体1が回転すると、サスペンション154による押付け圧力とヘッドスライダー130の媒体対向面(ABS)で発生する圧力とがつりあい、ヘッドスライダー130の媒体対向面は、パターンド媒体1の表面から所定の浮上量をもって保持される。
サスペンション154は、図示しない駆動コイルを保持するボビン部などを有するアクチュエータアーム155の一端に接続されている。アクチュエータアーム155の他端には、リニアモータの一種であるボイスコイルモータ156が設けられている。ボイスコイルモータ156は、アクチュエータアーム155のボビン部に巻き上げられた図示しない駆動コイルと、このコイルを挟み込むように対向して配置された永久磁石及び対向ヨークからなる磁気回路とから構成することができる。アクチュエータアーム155は、ピボット157の上下2箇所に設けられた図示しないボールベアリングによって保持され、ボイスコイルモータ156により回転摺動が自在にできるようになっている。その結果、磁気ヘッドをパターンド媒体1の任意の位置にアクセスできる。
実施例1
図1に示すDTR媒体に対応する凹凸パターンを有するスタンパを用い、図2(a)〜(h)に示した方法でDTR媒体を作製した。各工程の条件は以下の通りであった。
図1に示すDTR媒体に対応する凹凸パターンを有するスタンパを用い、図2(a)〜(h)に示した方法でDTR媒体を作製した。各工程の条件は以下の通りであった。
図2(c)のレジスト残渣を除去する工程は、ICP−RIE装置により、O2を用いて、ガス圧0.1Pa、アンテナ電力100W、バイアス電力20W、エッチング時間9秒の条件で行った。
図2(d)の第2のハードマスク54をエッチングして第1のハードマスク53の表面を露出させる工程は、イオンビームエッチング装置により、Arを用いて、ガス圧0.04Pa、プラズマパワー500W、加速電圧600V、エッチング時間10秒の条件で行った。
図2(e)の第1のハードマスク53をエッチングして磁気記録層52の表面を露出させる工程は、ICP−RIE装置により、O2を用いて、ガス圧0.1Pa、アンテナ電力100W、バイアス電力20W、エッチング時間20秒の条件で行った。
図2(f)のイオンビームエッチングにより第2のハードマスク54の除去とパターン凹部の磁気記録層52の磁性失活を行う工程は、ガス圧0.04Pa、プラズマパワー1000W、加速電圧1000V、エッチング時間20秒の条件で行った。エッチングガスはHe−N2混合ガスを用いた。
図2(g)の第1のハードマスク53を除去する工程は、ICP−RIE装置により、O2を用いて、ガス圧1.5Pa、アンテナ電力400W、バイアス電力0W、エッチング時間20秒の条件で行った。
加工後の磁気記録層52の凹凸深さをTEM観察で調べたところ、13nmであった。
製造したDTR媒体に潤滑剤を塗布しハードディスクドライブに搭載して評価したところ、隣接記録前のエラーレートは10の−6乗という良好な値が得られた。隣接トラックに10000回記録を行った後、フリンジ耐性を評価したところ、エラーレートは10の−4.8乗が得られ、DTR媒体への適合性を確認できた。
比較例1
図2(f)に対応する工程において、イオンビームエッチングで第2のハードマスク52を除去する際、エッチングガスとしてArを使用した。エッチングは、ガス圧0.04Pa、プラズマパワー500W、加速電圧600V、エッチング時間12秒の条件で行った。加工後の磁気記録層52の凹凸深さをTEM観察で調べたところ、13nmであった。それ以外は実施例1と同様の手法でDTR媒体を作製した。
図2(f)に対応する工程において、イオンビームエッチングで第2のハードマスク52を除去する際、エッチングガスとしてArを使用した。エッチングは、ガス圧0.04Pa、プラズマパワー500W、加速電圧600V、エッチング時間12秒の条件で行った。加工後の磁気記録層52の凹凸深さをTEM観察で調べたところ、13nmであった。それ以外は実施例1と同様の手法でDTR媒体を作製した。
比較例1の媒体も実施例1の媒体も、磁気記録層の凹部の深さは13nmで等しい。しかし、比較例1の媒体では、実施例1の媒体とは異なりパターン凹部の磁性失活は行なわれていない。
製造したDTR媒体に潤滑剤を塗布しハードディスクドライブに搭載して評価したところ、隣接記録前のエラーレートは10の−6乗という良好な値が得られた。隣接トラックに10000回記録を行った後、フリンジ耐性を評価したところ、エラーレートは10の−3.6乗であり、フリンジ耐性が不十分で磁気記録媒体として不適合であることがわかった。これは、パターン凹部の磁気記録層の磁性失活が不十分であったことが原因であると考えられる。
比較例1の方法との比較から、本発明のパターンド媒体の製造方法では、第2のハードマスクの除去とともにパターン凹部の磁気記録層を磁性失活しているので、ハードディスクドライブに組み込んだ際にフリンジ耐性の優れたパターンド媒体を製造できることがわかる。
実施例2
第2のハードマスクに、Cu、Co、CoPt、Al、Si、Ti、SiC、NiNbZrTi、CoCrPtSiO2、Au、Ag、Ru、Ptを用い、13種類のDTR媒体を作製した。第2のハードマスクの膜厚をそれぞれ2nmとして、実施例1と同様の方法で作製した。エッチング時間は、第2のハードマスク材料の各々に対して適宜調整した。加工後の磁気記録層凹凸深さをTEM観察で調べたところ、すべての媒体で13nmであった。
第2のハードマスクに、Cu、Co、CoPt、Al、Si、Ti、SiC、NiNbZrTi、CoCrPtSiO2、Au、Ag、Ru、Ptを用い、13種類のDTR媒体を作製した。第2のハードマスクの膜厚をそれぞれ2nmとして、実施例1と同様の方法で作製した。エッチング時間は、第2のハードマスク材料の各々に対して適宜調整した。加工後の磁気記録層凹凸深さをTEM観察で調べたところ、すべての媒体で13nmであった。
製造したDTR媒体に潤滑剤を塗布しハードディスクドライブに搭載して評価したところ、隣接記録前のエラーレートはすべての媒体で10の−6乗という良好な値が得られた。隣接トラックに10000回記録を行った後、フリンジ耐性を評価したところ、エラーレートはすべての媒体で10の−4.8〜−5.0乗が得られ、DTR媒体への適合性を確認できた。
比較のために、第2のハードマスクにFeを用いた。この場合、図2(b)のインプリント後にスタンパを取り外す際に、レジストと媒体の密着性が悪く、レジストの一部が剥離した。その結果、マスクを形成することができずDTR媒体の作製ができなかった。
これらの結果を表1に示す。表1から、第2のハードマスクにFe以外の上記材料を用いることにより、ハードディスクドライブに組み込んだ際にヘッドの浮上性がよくフリンジ耐性に優れたパターンド媒体を製造できることがわかる。
実施例3
図2(f)のイオンビームエッチングにエッチングガスとしてHe、N2、He−N2混合ガス、CF4を用いて4種類のDTR媒体を作製した。なお、エッチング時間については、それぞれのガスによるエッチングレートで、加工後の断面TEM観察における磁気記録層のエッチング深さが13nmとなるように適宜調整した。それ以外は実施例1と同様の方法で作製した。
図2(f)のイオンビームエッチングにエッチングガスとしてHe、N2、He−N2混合ガス、CF4を用いて4種類のDTR媒体を作製した。なお、エッチング時間については、それぞれのガスによるエッチングレートで、加工後の断面TEM観察における磁気記録層のエッチング深さが13nmとなるように適宜調整した。それ以外は実施例1と同様の方法で作製した。
製造したDTR媒体に潤滑剤を塗布しハードディスクドライブに搭載して評価したところ、隣接記録前のエラーレートはすべての媒体で10の−6乗という良好な値が得られた。隣接トラックに10000回記録を行った後、フリンジ耐性を評価したところ、エラーレートはすべての媒体で10の−4.8〜−5.1乗が得られ、DTR媒体への適合性を確認できた。
一方、比較例1のようにエッチングガスとしてArを用いた場合には、上記のようにフリンジ耐性が不十分になる。
これらの結果を表2に示す。表2から、イオンビームエッチングにAr以外の上記のエッチングガスを用いることにより、第2のハードマスクを除去するとともにパターン凹部の磁気記録層の磁性を失活できるため、ハードディスクドライブに組み込んだ際にフリンジ耐性の優れたパターンド媒体を製造できることがわかる。
実施例4
図2(f)のイオンビームエッチングのエッチング時間を20sec、23secまたは31secとして磁気記録層のエッチング深さの異なる3種類のDTR媒体を作製した。それ以外は実施例1と同様の方法で作製した。加工後の磁気記録層の凹凸深さをTEM観察で調べたところ、それぞれ13nm、15nmまたは20nmであった。
図2(f)のイオンビームエッチングのエッチング時間を20sec、23secまたは31secとして磁気記録層のエッチング深さの異なる3種類のDTR媒体を作製した。それ以外は実施例1と同様の方法で作製した。加工後の磁気記録層の凹凸深さをTEM観察で調べたところ、それぞれ13nm、15nmまたは20nmであった。
磁気記録層の凹凸深さが13nmまたは15nmであるDTR媒体に潤滑剤を塗布しハードディスクドライブに搭載して評価したところ、隣接記録前のエラーレートはそれぞれ10の−6乗という良好な値が得られた。隣接トラックに10000回記録を行った後、フリンジ耐性を評価したところ、それぞれエラーレートは10の−4.8乗、10の−5.1乗が得られ、DTR媒体への適合性を確認できた。
磁気記録層の凹凸深さが20nmであるDTR媒体に潤滑剤を塗布しハードディスクドライブに搭載して評価したところ、ヘッドの浮上が安定せずドライブを破損し特性評価することができなかった。これは、磁気記録層のエッチング深さが深すぎたことが原因と考えられる。
上記のように、磁気記録層のエッチング深さが15nm以下であれば、加工後の媒体をハードディスクドライブに組み込んだ際に、ヘッドの浮上安定性とフリンジ耐性が優れたパターンド媒体を製造できることがわかる。
実施例5
第2のハードマスクの膜厚を1nm、2nm、5nm、15nm、20nmとしてDTR媒体の作製を試みた。
第2のハードマスクの膜厚を1nm、2nm、5nm、15nm、20nmとしてDTR媒体の作製を試みた。
第2のハードマスクの膜厚を1nmとした場合、図2(b)におけるインプリント後のスタンパ取り外しの際に、レジストと媒体の密着性が悪く、レジストの一部が剥離した。その結果、マスクを形成することができずDTR媒体の作製ができなかった。これは、第2のハードマスクの膜厚が薄すぎて膜厚がばらつくことに起因すると考えられる。
第2のハードマスクの膜厚を1nm以外とした場合、第2のハードマスクの膜厚に合わせてエッチング時間を適宜調整した。図2(f)のイオンビームエッチング時間についてはすべて23secの条件で行なった。
第2のハードマスクの膜厚を2nm、5nm、15nmとして作製したDTR媒体について、加工後の磁気記録層のエッチング深さをTEM観察で調べたところ、すべての媒体で15nmであった。
製造したDTR媒体に潤滑剤を塗布しハードディスクドライブに搭載して評価したところ、隣接記録前のエラーレートはそれぞれ10の−6乗という良好な値が得られた。隣接トラックに10000回記録を行った後、フリンジ耐性を評価したところ、エラーレートは10の−4.9乗が得られた。
なお、Cuのエッチングレートrhは0.75nm/sec、磁気記録層のエッチング深さdmは15nm、エッチングレートrmは0.65nm/secであり、第2のハードマスクの膜厚を2nm、5nm、15nmとして作製した媒体はすべてth/rh<dm/rmの関係を満たすことを確認した。
第2のハードマスクの膜厚を20nmとして作製したDTR媒体をTEM観察で調べたところ、磁気記録層のエッチング深さは15nmであったが、加工後の凹凸深さは33nmであり、磁気記録層上に約3nmのCuと15nmのカーボンハードマスクが残存していることがわかった。
第2のハードマスクの膜厚を20nmとして製造したDTR媒体に潤滑剤を塗布しハードディスクドライブに搭載して評価したところ、ヘッドの浮上が安定せずドライブを破損し特性評価することができなかった。これは、加工後のパターンの凹凸が深すぎたことが原因と考えられる。なお、Cu膜厚thが20nmであるのに対し、Cuのエッチングレートrhは0.75nm/sec、磁気記録層のエッチング深さdmは15nm、エッチングレートrmは0.65nm/secであり、th/rh>dm/rmであった。
以上の結果から、第2のハードマスクの膜厚が2nm以上15nm以下に設定すれば、加工後の媒体をハードディスクドライブに組み込んだ際に、良好なヘッド浮上安定性と優れたフリンジ耐性が得られることがわかる。
1…パターンド媒体、2…サーボ領域、3…データ領域、21…プリアンブル部、22…アドレス部、23…バースト部、31…ディスクリートトラック、51…ガラス基板、52…磁気記録層、53…第1のハードマスク、54…第2のハードマスク、55…レジスト、56…非磁性層、57…保護膜、60…スタンパ、130…ヘッドスライダー、140…スピンドルモータ、150…磁気記録装置、154…サスペンション、155…アクチュエータアーム、156…ボイスコイルモータ、157…ピボット。
Claims (1)
- 磁気記録層上に、第1のハードマスク、Al、Ti、Ru、Pt、Co、Au、Ag、Si、Cu、およびこれらの酸化物、合金および混合物、ならびにSiC、NiNbZrTi、CoPt、およびCoCrPtSiO 2 からなる群より選択され、2nm以上15nm以下の膜厚を有する第2のハードマスクおよびレジストを形成し、
前記レジストに対してスタンパをインプリントして凹凸パターンを転写し、
パターン化されたレジストの凹部に残存している残渣を除去し、
パターン化されたレジストをマスクとして、前記第2のハードマスクをエッチングして凹凸パターンを転写し、
前記第2のハードマスクをマスクとして前記第1のハードマスクをエッチングして凹凸パターンを転写し、
He、N 2 、CF 4 、及びHeとN 2 との混合ガスからなる群より選択されるエッチングガスを用いたイオンビームエッチングにより、凹部で露出している前記磁気記録層の磁性を失活させるとともに前記第2のハードマスクを除去し、このとき前記磁気記録層を15nm以下の深さまでエッチングし、前記第2のハードマスクの膜厚をth、前記磁気記録層のエッチング深さをdm、前記第2のハードマスクのエッチングレートをrh、前記磁気記録層のエッチングレートをrmとして、下記式
th/rh<dm/rm
を満足することを特徴とする磁気記録媒体の製造方法。
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