JP4549270B2 - 多層シュリンクフィルム - Google Patents
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特に、食肉やその加工品等の脂肪性食品の多くはその形状が不規則で大きさも不揃いであるため、この様な食品包装分野においては、内容物の鮮度保存や外観性の向上の為に、シュリンク包装としての利用が多く、熱収縮性やガスバリア性等に優れた多層シュリンクフィルムが望まれるところであり、かかる性能の向上を目的として、1)2種の組成の異なるEVOHをブレンドする方法(例えば、特許文献1〜2参照。)、2)EVOHに他樹脂をブレンドする方法(例えば、特許文献3〜8。)、3)EVOHに可塑剤をブレンドする方法(例えば、特許文献9〜10)が提案されている。
[化1]
−〔CH2−C(R1)〕−
|
(X)n
|
HO−C−R2 ・・・(1)
|
HO−C−R3
|
R4
(ここで、Xは結合鎖であってエーテル結合を除く任意の結合鎖で、R1〜R4はそれぞれ独立して任意の置換基であり、nは0または1を表す。)
本発明においては熱可塑性樹脂がポリオレフィン、ポリアミド、ポリエステル、ポリスチレン、およびポリウレタンより選択された少なくとも一種の熱可塑性樹脂であること、EVOHが上記の構造単位(1)を0.1〜30モル%含有すること、ホウ素化合物をホウ素換算でEVOH100部に対して0.001〜1重量部含有すること等が好ましい実施形態である。
本発明の多層シュリンクフィルムに使用されるEVOHは、上記の構造単位(1)、すなわち側鎖に1,2−グリコール結合を有する構造単位を含有することを特徴とするEVOHで、その分子鎖と1,2−グリコール結合構造とを結合する結合鎖(X)に関しては、エーテル結合を除くいずれの結合鎖を適用することも可能で、その結合鎖としては特に限定されないが、アルキレン、アルケニレン、アルキニレンの他、フェニレン、ナフチレン等の炭化水素(これらの炭化水素はフッ素、塩素、臭素等のハロゲン等で置換されていても良い)の他、−CO−、−COCO−、−CO(CH2)mCO−、−CO(C6H4)CO−、−S−、−CS−、−SO−、−SO2−、−NR−、−CONR−、−NRCO−、−CSNR−、−NRCS−、−NRNR−、−HPO4−、−Si(OR)2−、−OSi(OR)2−、−OSi(OR)2O−、−Ti(OR)2−、−OTi(OR)2−、−OTi(OR)2O−、−Al(OR)−、−OAl(OR)−、−OAl(OR)O−、等が挙げられるが(Rは各々独立して任意の置換基であり、水素原子、アルキル基が好ましく、またmは自然数である)、エーテル結合は溶融成形時に分解し、EVOHの熱溶融安定性が低下する点で好ましくない。その中でも熱溶融安定性の点では結合種としてはアルキレンが好ましく、さらには炭素数が6以下のアルキレンが好ましい。また、EVOHのガスバリア性能が良好となる点で、炭素数はより少ないものが好ましく、n=0である1,2−グリコール結合構造が直接、分子鎖に結合している構造が最も好ましい。また、R1〜R4に関しては任意の置換基であり、とくに限定されないが水素原子、アルキル基がモノマーの入手が容易である点で好ましく、さらには水素原子がEVOHのガスバリア性が良好である点で好ましい。
なお、上記の(2)式で示される化合物は、イーストマンケミカル社から、上記(3)式で示される化合物はイーストマンケミカル社やアクロス社から入手することができる。
また、共重合体中にエチレンを導入する方法としては通常のエチレン加圧重合を行えばよく、その導入量はエチレンの圧力によって制御することが可能であり、目的とするエチレン含有量により一概にはいえないが、通常は25〜80kg/cm2の範囲から選択される。
溶媒の使用量は、目的とする共重合体の重合度に合わせて、溶媒の連鎖移動定数を考慮して適宜選択すればよく、例えば、溶媒がメタノールの時は、S(溶媒)/M(モノマー)=0.01〜10(重量比)、好ましくは0.05〜7(重量比)程度の範囲から選択される。
また、共重合反応の反応温度は、使用する溶媒や圧力により40℃〜沸点程度の範囲から選択することが好ましい。
また、ケン化時の圧力は目的とするエチレン含有量により一概に言えないが、2〜7kg/cm2の範囲から選択され、このときの温度は80〜150℃、好ましくは100〜130℃から選択される。
酢酸の添加量としてはEVOH100重量部に対して0.001〜1重量部(さらには0.005〜0.2重量部、特には0.010〜0.1重量部)とすることが好ましく、かかる添加量が0.001重量部未満ではその含有効果が十分に得られないことがあり、逆に1重量部を越えると得られる成形物の外観が悪化する傾向にあり好ましくない。
かかる乾燥方法としては、種々の乾燥方法を採用することが可能である。例えば、実質的にペレット状のEVOHが、機械的にもしくは熱風により撹拌分散されながら行われる流動乾燥や、実質的にペレット状のEVOHが、撹拌、分散などの動的な作用を与えられずに行われる静置乾燥が挙げられ、流動乾燥を行うための乾燥器としては、円筒・溝型撹拌乾燥器、円管乾燥器、回転乾燥器、流動層乾燥器、振動流動層乾燥器、円錐回転型乾燥器等が挙げられ、また、静置乾燥を行うための乾燥器として、材料静置型としては回分式箱型乾燥器が、材料移送型としてはバンド乾燥器、トンネル乾燥器、竪型乾燥器等を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。流動乾燥と静置乾燥を組み合わせて行うことも可能である。
構造単位(1)を有するEVOHと構造単位が異なるEVOHとしては、例えばエチレン構造単位とビニルアルコール構造単位のみからなるEVOHや、EVOHの側鎖に2−ヒドロキシエトキシ基などの官能基を有する変性EVOHを挙げることができる。
また、エチレン含有量が異なるものを用いる場合、その構造単位は同じであっても異なっていても良いが、そのエチレン含有量差は1モル%以上(さらには2モル%以上、特には2〜20モル%)であることが好ましい。かかるエチレン含有量差が大きすぎると透明性が不良となる場合があり、好ましくない。
下記の方法によりEVOH組成物(A1)を得た。
冷却コイルを持つ1m3の重合缶に酢酸ビニルを500kg、メタノール35kg、アセチルパーオキシド500ppm(対酢酸ビニル)、クエン酸20ppm、および3,4−ジアセトキシ−1−ブテンを14kgを仕込み、系を窒素ガスで一旦置換した後、次いでエチレンで置換して、エチレン圧が45kg/cm2となるまで圧入して、攪拌した後、67℃まで昇温して、3,4−ジアセトキシ−1−ブテンを15g/分で全量4.5kgを添加しながら重合し、重合率が50%になるまで6時間重合した。その後、重合反応を停止してエチレン含有量38モル%のエチレン-酢酸ビニル共重合体を得た。
該多孔性ペレット100部に対して水100部で洗浄した後、0.032%のホウ酸及び0.007%のリン酸二水素カルシウムを含有する混合液中に投入し、30℃で5時間撹拌した。さらにかかる多孔性ペレットを回分式通気箱型乾燥器にて、温度70℃、水分含有率0.6%の窒素ガスを通過させて12時間乾燥を行って、含水率を30%とした後に、回分式塔型流動層乾燥器を用いて、温度120℃、水分含有率0.5%の窒素ガスで12時間乾燥を行って目的とするEVOH組成物のペレットを得た。かかるペレットは、EVOH100重量部に対して、ホウ酸およびリン酸二水素カルシウムをそれぞれ0.015重量部(ホウ素換算)および0.005重量部(リン酸根換算)含有し、MFR(210℃、2160g)は4.0g/10分であった。
1.0〜1.8ppm:メチレンプロトン(図1の積分値a)
1.87〜2.06ppm:メチルプロトン
3.95〜4.3ppm:構造(I)のメチレン側のプロトン+未反応の3,4−ジア セトキシ−1−ブテンのプロトン(図1の積分値b)
4.6〜5.1ppm:メチンプロトン+構造(I)のメチン側のプロトン(図1の積 分値c)
5.2〜5.9ppm:未反応の3,4−ジアセトキシ−1−ブテンのプロトン(図1 の積分値d)
5.2〜5.9ppmに4つのプロトンが存在するため、1つのプロトンの積分値はd/4、積分値bはジオールとモノマーのプロトンが含まれた積分値であるため、ジオールの1つのプロトンの積分値(A)は、A=(b−d/2)/2、積分値cは酢酸ビニル側とジオール側のプロトンが含まれた積分値であるため、酢酸ビニルの1つプロトンの積分値(B)は、B=1−(b−d/2)/2、積分値aはエチレンとメチレンが含まれた積分値であるため、エチレンの1つのプロトンの積分値(C)は、C=(a−2×A−2×B)/4=(a−2)/4と計算し、構造単位(1)の導入量は、100×{A/(A+B+C)} =100×(2×b−d)/(a+2)より算出した。
下記の方法によりEVOH組成物(A2)を得た。
重合例1の3,4−ジアセトキシ−1−ブテンの代わりに3,4−ジアセトキシ−1−ブテンと3−アセトキシ−4−オール−1−ブテンと1,4−ジアセトキシ−1−ブテンの70:20:10の混合物を用いた以外は同様に行い、1,2−グリコール結合を有する構造単位の導入量が2.0モル%、エチレン含有量38モル%、ホウ酸含有量0.015重量部(ホウ素換算)、リン酸二水素カルシウム0.005重量部(リン酸根換算)含有、MFRが3.7g/10分のEVOH組成物(A2)を得た。
下記の方法によりEVOH組成物(A3)を得た。
重合例1のメタノールの仕込量を100kgとしエチレン圧を35kg/cm2とし、3,4−ジアセトキシ−1−ブテンの滴下速度を63g/分とし、全量19kg添加した以外は同様に行い、エチレン含有量29モル%、1,2−グリコール結合を有する構造単位の導入量が4.5モル%で、ホウ酸含有量0.015重量部(ホウ素換算)、リン酸二水素カルシウム0.005重量部(リン酸根換算)含有、MFRが4.0g/10分のEVOH組成物(A3)を得た。
また、再酢化法で得られたエチレン含有量47モル%、ケン化度95.0モル%、MFR=20g/分(210℃、2160g)、ホウ酸、リン酸二水素カルシウム未添加の構造単位(1)を含有しないEVOH組成物(B3)を用意した。
上記で得られたEVOH組成物(A1)をフィードブロック3種5層の多層Tダイを備えた多層押出装置に供給して、ポリエチレン(ノバテックC6/ノバテックEVA=70/30wt%)層/接着樹脂(三菱化学製『モディックAP M533』)層/EVOH層/接着樹脂層(同左)/ポリエチレン層(同左)の層構成(厚み100/20/40/20/100μm)の多層フィルムを得て、該多層フィルムを二軸延伸機にて80℃で縦3.5倍、横3.5倍に逐次ニ軸延伸を行った後、20℃の冷風にてフィルムを冷却固定し、本発明の多層シュリンクフィルムを得た。多層シュリンクフィルムを作成する際の延伸性、得られた多層フィルムの熱収縮性、ガスバリア性、熱収縮後の透明性、耐デラミ性を以下の要領で評価した。
得られた積層体を目視観察して、その外観性を以下のとおり評価した。
○・・・延伸ムラ、偏肉が認められず、外観良好である。
△・・・延伸ムラ、偏肉が若干認められるものの、使用可能。
×・・・延伸時に破断し、延伸フィルムを得る事ができない。
延伸後の多層フィルムを10cmx10cmに切りだして、90℃の熱水に30秒間浸漬させ面積収縮率(%)を下記の様に算出した。
面積収縮率(%)={(S−s)/S}×100
S:シュリンク前のフィルムの面積
s:シュリンク後のフィルムの面積
延伸後の多層フィルムの酸素透過度についてMOCON社製「OXTRAN2/21」を用いて23℃、80%RHの条件下で測定した。
熱水にて熱収縮させた後の多層フィルムの外観性を目視観察して以下の通り評価した。
○・・・外観に異常は無かった
△・・・一部に不透明部が認められた
×・・・不透明部が全体に渡って認められた
熱水にて熱収縮させた後の多層フィルムを、均一な力で1分間手もみを行い、目視観察により多層フィルムにデラミネーションが発生しているか評価した。
○・・・いずれにもデラミは認められなかった。
△・・・フィルムの端部にデラミが認められたが、使用可能。
×・・・フィルム中央部にデラミが認められた。
実施例1において、EVOH組成物(A1)の代わりにEVOH組成物(A2)を使用した以外は同様に多層シュリンクフィルムを作成し、同様に評価を行った。
実施例1において、EVOH組成物(A1)の代わりにEVOH組成物(A3)を使用した以外は同様に多層シュリンクフィルムを作成し、同様に評価を行った。
実施例2において、EVOH組成物(A2)を、4種6層のTダイを備えた多層押出装置に供給して、エチレンー酢酸ビニル共重合体層/接着樹脂(三菱化学製『モディックAP M533』)層/ポリアミド(三菱化学社製『ノバミッド2030』)層/EVOH組成物層/接着樹脂(同左)層/エチレンー酢酸ビニル共重合体(同左)層の4種6層の(厚みが100/20/40/40/20/100 μm)の多層シュリンクフィルムを作成した以外は同様に評価を行った。
実施例1において、EVOH組成物(A1)に変えて、EVOH組成物(B1)を用いた以外は同様にして多層シュリンクフィルムを作成し、同様に評価を行った。
実施例1において、EVOH組成物(A1)に変えて、EVOH組成物(B2)を用いた以外は同様にして多層シュリンクフィルムを作成し、同様に評価を行った。
実施例4において、EVOH組成物(A2)に変えて、EVOH組成物(B1)を用いた以外は同様にして多層シュリンクフィルムを作成し、同様に評価を行った。
実施例1において、EVOH組成物(A2)に変えて、EVOH組成物(B1)とEVOH組成物(B3)の70/30重量部の溶融混合物を用いた以外は同様にして多層シュリンクフィルムを作成し、同様に評価を行った。
Claims (12)
- エチレン含有量が20〜60モル%であり、下記の構造単位(1)を含有するエチレン−ビニルアルコール共重合体を有する層の片面または両面に熱可塑性樹脂含有層を積層してなることを特徴とする多層シュリンクフィルム。
[化1]
−〔CH2−C(R1)〕−
|
(X)n
|
HO−C−R2 ・・・(1)
|
HO−C−R3
|
R4
(ここで、Xは結合鎖であってエーテル結合を除く任意の結合鎖で、R1〜R4はそれぞれ独立して任意の置換基であり、nは0または1を表す。) - 熱可塑性樹脂がポリオレフィン、ポリアミド、ポリエステル、ポリスチレン、およびポリウレタンからなる群より選択された少なくとも一種の熱可塑性樹脂であることを特徴とする請求項1記載の多層シュリンクフィルム。
- 上記構造単位(1)のR1〜R4がそれぞれ独立して水素原子、炭素数1〜8の炭化水素基、炭素数3〜8の環状炭化水素基又は芳香族炭化水素基のいずれかであることを特徴とする請求項1または2記載の多層シュリンクフィルム。
- 構造単位(1)のR1〜R4がいずれも水素原子であることを特徴とする請求項1〜3いずれか記載の多層シュリンクフィルム。
- 構造単位(1)のXが炭素数6以下のアルキレン基であることを特徴とする請求項1〜4いずれか記載の多層シュリンクフィルム。
- 構造単位(1)のnが0であることを特徴とする請求項1〜4いずれか記載の多層シュリンクフィルム。
- 構造単位(1)が共重合によりエチレン−ビニルアルコール共重合体の分子鎖中に導入されたものであることを特徴とする請求項1〜6いずれか記載の多層シュリンクフィルム。
- エチレン−ビニルアルコール共重合体の分子鎖中に構造単位(1)を0.1〜30モル%含有することを特徴とする請求項1〜7いずれか記載の多層シュリンクフィルム。
- エチレン−ビニルアルコール共重合体が3,4−ジアシロキシ−1−ブテン、ビニルエステル系モノマーおよびエチレンの共重合体をケン化して得られたものであることを特徴とする請求項1〜8いずれか記載の多層シュリンクフィルム。
- エチレン−ビニルアルコール共重合体が3,4−ジアセトキシ−1−ブテン、ビニルエステル系モノマーおよびエチレンの共重合体をケン化して得られたものであることを特徴とする請求項1〜9いずれか記載の多層シュリンクフィルム。
- エチレン−ビニルアルコール共重合体中にエチレン−ビニルアルコール共重合体100重量部に対してホウ素化合物をホウ素換算で0.001〜1重量部含有することを特徴とする請求項1〜10いずれか記載の多層シュリンクフィルム。
- 90℃の熱水に30秒浸漬したときの面積収縮率が20〜90%であることを特徴とする1〜11いずれか記載の多層シュリンクフィルム。
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