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JP4410540B2 - フルオレン骨格含有樹脂組成物およびその成形体 - Google Patents

フルオレン骨格含有樹脂組成物およびその成形体 Download PDF

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JP4410540B2 JP2003400448A JP2003400448A JP4410540B2 JP 4410540 B2 JP4410540 B2 JP 4410540B2 JP 2003400448 A JP2003400448 A JP 2003400448A JP 2003400448 A JP2003400448 A JP 2003400448A JP 4410540 B2 JP4410540 B2 JP 4410540B2
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Description

本発明は、高屈折率などの優れた機能を、簡便に付与するのに有用な樹脂組成物およびこの樹脂組成物で形成された成形体に関する。
フルオレン骨格(9,9−ビスフェニルフルオレン骨格)を有する化合物は、屈折率、耐熱性などにおいて優れた機能を有することが知られている。このようなフルオレン骨格の優れた機能を樹脂に発現し、成形可能とする方法としては、反応性基(ヒドロキシル基、アミノ基など)を有するフルオレン化合物、例えば、ビスフェノールフルオレン(BPF)、ビスクレゾールフルオレン(BCF)、ビスアミノフェニルフルオレン(BAFL)、ビスフェノキシエタノールフルオレン(BPEF)などを、樹脂の構成成分として利用し、樹脂の骨格構造の一部にフルオレン骨格を導入する方法が一般的である。
例えば、特開2002−284864号公報(特許文献1)には、9,9−ビスフェニルフルオレン骨格を有するポリエステル系樹脂で構成された成形材料が開示されている。また、特開2002−284834号公報(特許文献2)には、9,9−ビスフェニルフルオレン骨格を有し、架橋剤で架橋されたポリウレタン系樹脂が開示されている。これらの文献では、樹脂を構成するジオール成分の一部として、9,9−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレンや、9,9−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]フルオレン(ビスフェノキシエタノールフルオレン)などを使用することにより、樹脂中にフルオレン骨格を導入している。
しかし、このような方法では、高い機能を発現することができても、樹脂の骨格をフルオレン骨格で置換するため、煩雑な重合反応を必要とし、また、幅広い樹脂に適用できない。
特開2002−284864号公報(請求項1、実施例) 特開2002−284834号公報(請求項1、実施例)
従って、本発明の目的は、フルオレン骨格(9,9−ビスフェニルフルオレン骨格)が有する優れた機能(高屈折率など)を、簡便にかつ効率よく熱可塑性樹脂に付与して成形可能な樹脂組成物およびその成形体を提供することにある。
本発明の他の目的は、熱可塑性樹脂の種類に拘わらず、幅広い範囲の熱可塑性樹脂であっても、フルオレン骨格が有する機能を付与して成形可能な樹脂組成物および成形体を提供することにある。
本発明者らは、前記課題を達成するため鋭意検討した結果、熱可塑性樹脂に、フルオレン骨格(9,9−ビスフェニルフルオレン骨格)を有する化合物を添加することにより、幅広い範囲の熱可塑性樹脂であっても、高屈折率などの優れた機能を簡便にかつ効率よく付与して成形できることを見いだし、本発明を完成した。
すなわち、本発明の樹脂組成物は、下記式(1)で表されるフルオレン骨格を有する化合物と、熱可塑性樹脂とで構成されている。
Figure 0004410540
(式中、R1〜R4は、同一又は異なって非反応性基又は反応性基を示す。ただし、R1およびR2は、少なくとも反応性基である。k1及びk2は同一又は異なって1〜5の整数を示し、m1及びm2は同一又は異なって0又は1〜4の整数を示す。)
前記式(1)において、反応性基は、ヒドロキシル基、アミノ基などの活性水素を含有する基、これらの活性水素を通じて得られた基などであってもよい。具体的には、式(1)において、基R1及びR2が、同一又は異なって、アルキル基、アリール基、アラルキル基、ヒドロキシル基、アミノ基、又は基−[X−(R5O)n−Y](式中、R5は、アルキレン基であり、基Xは、酸素原子又はイミノ基であり、基Yは水素原子、グリシジル基又は(メタ)アクリロイル基であり、nは0又は1以上の整数を示す。ただし、nが0であるとき、Yは水素原子でない)であり、基R1及びR2が、少なくともヒドロキシル基、アミノ基又は前記基−[X−(R5O)n−Y]を含み、k1およびk2が1〜3であり、m1およびm2が0であってもよい。
前記式(1)で表される代表的な化合物には、9,9−ビス(モノ乃至トリヒドロキシフェニル)フルオレン類、9,9−ビス(モノ乃至トリヒドロキシフェニル)フルオレン類のC2-4アルキレンオキシド付加体、9,9−ビス(モノ乃至トリヒドロキシフェニル)フルオレン類又はそのC2-4アルキレンオキシド付加体のグリシジルエーテル、9,9−ビス(モノ乃至トリヒドロキシフェニル)フルオレン類又はそのC2-4アルキレンオキシド付加体の(メタ)アクリレート、9,9−ビス(アミノフェニル)フルオレン類などが含まれる。
熱可塑性樹脂は、特に限定されず、ポリエステル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、アクリル系樹脂、ポリイミド系樹脂などであってもよい。本発明の具体的な樹脂組成物には、9,9−ビス(モノ乃至トリヒドロキシフェニル)フルオレン類又はそのC2-4アルキレンオキシド付加体のグリシジルエーテルと、芳香環を有する熱可塑性樹脂とで構成された樹脂組成物などが含まれる。前記式(1)で表されるフルオレン骨格を有する化合物の割合は、熱可塑性樹脂100重量部に対して、5〜60重量部程度であってもよい。
また、本発明は、前記式(1)で表されるフルオレン骨格を有する化合物と、熱可塑性樹脂とで構成された樹脂組成物で形成された成形体も包含する。
なお、本明細書において、「非反応性基」とは、エステル結合形成反応、ウレタン結合形成反応、アミド結合形成反応、イミド結合形成反応などの反応に対して非反応性の基を意味する。
本発明の樹脂組成物(およびその成形体)では、熱可塑性樹脂(特に、ポリカーボネート系樹脂などの芳香環含有樹脂)に、9,9−ビスフェニルフルオレン骨格を有する化合物を添加するので、フルオレン骨格が有する優れた機能(高屈折率など)を、簡便にかつ効率よく熱可塑性樹脂に付与して成形可能である。また、樹脂の骨格を置換する必要がないため、熱可塑性樹脂の種類に拘わらず、幅広い範囲の熱可塑性樹脂であっても、フルオレン骨格が有する機能を付与して成形できる。
本発明の樹脂組成物(熱可塑性樹脂組成物)は、フルオレン骨格(9,9−ビスフェニルフルオレン骨格)を有する化合物と、熱可塑性樹脂とで構成されている。
(フルオレン骨格を有する化合物)
フルオレン骨格を有する化合物(以下、単にフルオレン化合物ということがある)は、下記式(1)で表される。
Figure 0004410540
(式中、R1〜R4は、同一又は異なって非反応性基又は反応性基を示す。k1及びk2は同一又は異なって1〜5の整数を示し、m1及びm2は同一又は異なって0又は1〜4の整数を示す。)
非反応性基としては、特に限定されないが、例えば、アルキル基(メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基などのC1-20アルキル基、好ましくはC1-8アルキル基、さらに好ましくはC1-6アルキル基など)、シクロアルキル基(シクロペンチル基、シクロへキシル基などのC5-10シクロアルキル基、好ましくはC5-8シクロアルキル基、さらに好ましくはC5-6シクロアルキル基など)、アリール基[フェニル基、アルキルフェニル基(メチルフェニル基(トリル基)、ジメチルフェニル基(キシリル基)など)などのC6-10アリール基、好ましくはC6-8アリール基、特にフェニル基など)、アラルキル基(ベンジル基、フェネチル基などのC6-10アリール−C1-4アルキル基など)などの炭化水素基;アルコキシ基(メトキシ基などのC1-4アルコキシ基など);アシル基(アセチル基などのC1-6アシル基など);アルコキシカルボニル基(メトキシカルボニル基などのC1-4アルコキシカルボニル基など);N,N−二置換アミノ基[例えば、炭化水素基で置換されたアミノ基(ジメチルアミノ基などのN,N−ジC1-6アルキルアミノ基など)];ハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子など);ニトロ基;シアノ基などが挙げられる。
反応性基としては、例えば、活性水素を含有する基(活性水素含有基)、この活性水素含有基を通じて得られる基などが挙げられる。活性水素含有基としては、例えば、ヒドロキシル基、アミノ基、N−モノ置換アミノ基[例えば、炭化水素基で置換されたアミノ基(メチルアミノ基などのN−モノC1-6アルキルアミノ基など)]、カルボキシル基などが挙げられ、通常、ヒドロキシル基、アミノ基、又はN−モノ置換アミノ基(特に、ヒドロキシル基、アミノ基)である。
活性水素含有基を通じて得られる基としては、前記活性水素含有基(特に、ヒドロキシル基、アミノ基)の活性水素を通じて得られる基が挙げられる。このような基としては、特に限定されないが、ヒドロキシル基又はアミノ基の活性水素を通じて得られる基、例えば、基−[X−(R5O)n−Y](式中、R5は、アルキレン基であり、基Xは、酸素原子(エーテル基)又はイミノ基であり、基Yは水素原子、グリシジル基又は(メタ)アクリロイル基であり、nは0又は1以上の整数を示す。ただし、nが0であるとき、Yは水素原子でない)などが挙げられる。
基R5で表されるアルキレン基としては、特に限定されないが、例えば、C2-4アルキレン基(エチレン基、トリメチレン基、プロピレン基、ブタン−1,2−ジイル基など)などが例示でき、特に、C2-3アルキレン基(特に、エチレン基、プロピレン基)が好ましい。なお、R5は、対応する活性水素含有基基R1(又はR2)において、同一の又は互いに異なるアルキレン基であってもよいが、通常、同一である。
アルキレンオキシ単位の置換数(又は付加数)nは、同一又は異なって、0又は1〜15程度の範囲から選択でき、例えば、0又は1〜12、好ましくは0又は1〜8、さらに好ましくは0又は1〜6、特に0又は1〜4程度であってもよい。なお、nが2以上の場合、ポリアルコキシ基(ポリアルキレンオキシ基)は、同一のアルキレン基で構成されていてもよく、異種のアルキレン基(例えば、エチレン基とプロピレン基)が混在して構成されていてもよいが、通常、同一のアルキレン基で構成されている場合が多い。
基R1およびR2は、通常、少なくとも反応性基である場合が多い。例えば、k1及びk2が2であるとき、2つの基R1のうち1又は2の基が反応性基であるとともに、2つの基R2のうち1又は2の基が反応性基である。
好ましい基R1(又はR2)には、アルキル基(C1-6アルキル基)、シクロアルキル基(C5-8シクロアルキル基)、アリール基(C6-10アリール基)、アラルキル基(C6-8アリール−C1-2アルキル基)、アルコキシ基(C1-4アルコキシ基)、ヒドロキシル基、アミノ基、N−モノ置換アミノ基(N−C1-4アルキルアミノ基)、前記基−[X−(R5O)n−Y]が含まれる。特に、アルキル基(C1-4アルキル基)、アリール基(C6-8アリール基)、アラルキル基(C6-8アリール−C1-2アルキル基)、ヒドロキシル基、アミノ基、前記基−[X−(R5O)n−Y]であり、かつ基R1及びR2が、少なくともヒドロキシル基、アミノ基、又は前記基−[X−(R5O)n−Y]を含むのが好ましい。基R1(又はR2)は、単独で又は2種以上組み合わせてベンゼン環に置換していてもよい。また、基R1およびR2は互いに同一又は異なっていてもよいが、通常、同一である。さらに、基R1(又はR2)は、同一のベンゼン環において、異なっていてもよく、同一であってもよい。
なお、基R1(又はR2)の置換位置は、特に限定されず、フルオレンの9位に置換するフェニル基の2〜6位から選択できる。通常、1つの反応性基(ヒドロキシル基、アミノ基、前記基−[X−(R5O)n−Y]など)が、フルオレンの9位に置換するフェニル基の4位(すなわち、フェニル基に対して4位)に置換していてもよい。
好ましい置換数k1およびk2は、1〜4、さらに好ましくは1〜3(特に1〜2)である。また、好ましい反応性基の数は、基R1、R2のそれぞれにおいて、1〜3、特に1〜2である。なお、置換数k1およびk2は、異なっていてもよいが、通常、同一である場合が多い。
また、基R3およびR4は、通常、アルキル基(C1-4アルキル基、特にメチル基)である。基R3およびR4は互いに異なっていてもよく、同一であってもよい。また、基R3(又はR4)は、同一のベンゼン環において、異なっていてもよく、同一であってもよい。なお、フルオレン骨格を構成するベンゼン環に対する基R3(又はR4)の結合位置(置換位置)は、特に限定されない。好ましい置換数m1およびm2は、0又は1、特に、0である。なお、置換数m1及びm2は、異なっていてもよいが、通常、同一である。
具体的なフルオレン化合物には、例えば、9,9−ビス(ヒドロキシフェニル)フルオレン類又はその誘導体、9,9−ビス(アミノフェニル)フルオレン類又はその誘導体などが含まれる。
(1)9,9−ビス(ヒドロキシフェニル)フルオレン類又はその誘導体
(1a)9,9−ビス(ヒドロキシフェニル)フルオレン類には、9,9−ビス(モノヒドロキシフェニル)フルオレン類、9,9−ビス(ジヒドロキシフェニル)フルオレン類、9,9−ビス(トリヒドロキシフェニル)フルオレン類などが含まれる。
9,9−ビス(モノヒドロキシフェニル)フルオレン類としては、例えば、9,9−ビス(ヒドロキシフェニル)フルオレン[9,9−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレン(ビスフェノールフルオレン、BPF)など]、置換基を有する9,9−ビス(ヒドロキシフェニル)フルオレン{例えば、9,9−ビス(アルキル−ヒドロキシフェニル)フルオレン[9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)フルオレン(ビスクレゾールフルオレン、BCF)、9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3−エチルフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3−ブチルフェニル)フルオレン、9,9−ビス(3−ヒドロキシ−2−メチルフェニル)フルオレン、9,9−ビス(2−ヒドロキシ−4−メチルフェニル)フルオレンなどの9,9−ビス(C1-4アルキル−ヒドロキシフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−ヒドロキシ−2,6−ジメチルフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−ブチルフェニル)フルオレンなどの9,9−ビス(ジC1-4アルキル−ヒドロキシフェニル)フルオレンなど]、9,9−ビス(シクロアルキル−ヒドロキシフェニル)フルオレン[9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3−シクロヘキシルフェニル)フルオレンなどの9,9−ビス(C5-8シクロアルキル−モノヒドロキシフェニル)フルオレンなど]、9,9−ビス(アリール−ヒドロキシフェニル)フルオレン[例えば、9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3−フェニルフェニル)フルオレンなどの9,9−ビス(C6-8アリール−ヒドロキシフェニル)フルオレンなど]、9,9−ビス(アラルキル−ヒドロキシフェニル)フルオレン[例えば、9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3−ベンジルフェニル)フルオレンなどの9,9−ビス(C6-8アリールC1-2アルキル−ヒドロキシフェニル)フルオレンなど]など}などが挙げられる。
9,9−ビス(ジヒドロキシフェニル)フルオレン類としては、上記9,9−ビス(モノヒドロキシフェニル)フルオレン類に対応するフルオレン類、例えば、9,9−ビス(ジヒドロキシフェニル)フルオレン[9,9−ビス(3,4−ジヒドロキシフェニル)フルオレン(ビスカテコールフルオレン(BCAF))、9,9−ビス(2,4−ジヒドロキシフェニル)フルオレン、9,9−ビス(2,5−ジヒドロキシフェニル)フルオレンなど]、置換基を有する9,9−ビス(ジヒドロキシフェニル)フルオレン{例えば、9,9−ビス(アルキル−ジヒドロキシフェニル)フルオレン[9,9−ビス(3,4−ジヒドロキシ−5−メチルフェニル)フルオレン、9,9−ビス(3,4−ジヒドロキシ−6−メチルフェニル)フルオレンなどの9,9−ビス(C1-4アルキル−ジヒドロキシフェニル)フルオレン、9,9−ビス(2,4−ジヒドロキシ−3,6−ジメチルフェニル)フルオレンなどの9,9−ビス(ジC1-4アルキル−ジヒドロキシフェニル)フルオレンなど]、9,9−ビス(アルコキシ−ジヒドロキシフェニル)フルオレン[例えば、9,9−ビス(3,4−ジヒドロキシ−5−メトキシフェニル)フルオレンなどの9,9−ビス(C1-4アルコキシ−ジヒドロキシフェニル)フルオレンなど]、9,9−ビス(アリール−ジヒドロキシフェニル)フルオレン[例えば、9,9−ビス(3,4−ジヒドロキシ−5−フェニルフェニル)フルオレンなどの9,9−ビス(C6-8アリール−ジヒドロキシフェニル)フルオレンなど]など}などが例示できる。
9,9−ビス(トリヒドロキシフェニル)フルオレン類には、上記9,9−ビス(モノ又はジヒドロキシフェニル)フルオレン類に対応するフルオレン類、例えば、9,9−ビス(2,4,6−トリヒドロキシフェニル)フルオレン、9,9−ビス(2,4,5−トリヒドロキシフェニル)フルオレン、9,9−ビス(3,4,5−トリヒドロキシフェニル)フルオレンなどの9,9−ビス(トリヒドロキシフェニル)フルオレンなどが含まれる。
好ましい9,9−ビス(ヒドロキシフェニル)フルオレン類には、多価フェノールのフルオレン、例えば、9,9−ビス(ジヒドロキシフェニル)フルオレン類[特に、9,9−ビス(ジヒドロキシフェニル)フルオレン]、9,9−ビス(トリヒドロキシフェニル)フルオレン類[特に、9,9−ビス(トリヒドロキシフェニル)フルオレン]などが例示できる。
なお、ビス(モノヒドロキシフェニル)フルオレン類は、種々の合成方法、例えば、(a)塩化水素ガス及びメルカプトカルボン酸の存在下、フルオレノン類とフェノール類とを反応させる方法(文献[J. Appl. Polym. Sci., 27(9), 3289, 1982]、特開平6−145087号公報、特開平8−217713号公報)、(b)酸触媒(及びアルキルメルカプタン)の存在下、9−フルオレノンとアルキルフェノール類とを反応させる方法(特開2000−26349号公報)、(c)塩酸及びチオール類(メルカプトカルボン酸など)の存在下、フルオレノン類とフェノール類とを反応させる方法(特開2002−47227号公報)、(d)硫酸及びチオール類(メルカプトカルボン酸など)の存在下、フルオレノン類とフェノール類とを反応させ、炭化水素類と極性溶媒とで構成された晶析溶媒で晶析させてビスフェノールフルオレンを製造する方法(特開2003−221352号公報)などを利用して製造できる。
また、9,9−ビス(ジ又はトリヒドロキシフェニル)フルオレン類は、上記9,9−ビス(モノヒドロキシフェニル)フルオレン類の製造方法において、フェノール類の代わりに、対応する多価アルコール類(ジヒドロキシフェノール類、トリヒドロキシフェノール類)を使用することにより製造できる。これらの方法のうち、特に、塩酸を使用する方法(c)、又は特定の晶析溶媒を使用する方法(d)を応用すると、より高収率でかつ高純度の生成物が得られる場合が多い。
(1b)9,9−ビス(ヒドロキシフェニル)フルオレン類の誘導体としては、9,9−ビス(ヒドロキシフェニル)フルオレン類のアルキレンオキシド付加体、9,9−ビス(ヒドロキシフェニル)フルオレン類又はそのアルキレンオキシド付加体のグリシジルエーテル、9,9−ビス(ヒドロキシフェニル)フルオレン類又はそのアルキレンオキシド付加体の(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
(アルキレンオキシド付加体)
9,9−ビス(ヒドロキシフェニル)フルオレン類のアルキレンオキシド付加体としては、前記例示のビス(モノ乃至トリヒドロキシフェニル)フルオレン類にアルキレンオキシド(C2-4アルキレンオキシド、特にC2-3アルキレンオキシド)が付加した化合物が挙げられる。アルキレンオキシド単位の付加数(前記式におけるn)は、前記と同様(例えば、1〜12、好ましくは1〜8、さらに好ましくは1〜6、特に1〜4程度)であり、特に限定されないが、以下に、一例として、nが1又は2の化合物を例示する。
代表的なアルキレンオキシド付加体には、例えば、9,9−ビス(ヒドロキシアルコキシフェニル)フルオレン[例えば、9,9−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−フェニル]フルオレン(ビスフェノキシエタノールフルオレン,BPEF)、9,9−ビス[4−(3−ヒドロキシプロポキシ)−フェニル]フルオレンなどの9,9−ビス(2−ヒドロキシC2-4アルコキシ)フェニル]フルオレンなど]、置換基を有する9,9−ビス(ヒドロキシアルコキシフェニル)フルオレン{例えば、9,9−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−3−メチルフェニル]フルオレン(ビスクレゾールエタノールフルオレン,BCEF)などの9,9−ビス(ヒドロキシC2-4アルコキシ−C1-4アルキルフェニル)フルオレン、9,9−ビス[(2−ヒドロキシエトキシ)−3,5−ジメチルフェニル]フルオレンなどの9,9−ビス(ヒドロキシC2-4アルコキシ−ジC1-4アルキルフェニル)フルオレン、9,9−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−3−フェニルフェニル]フルオレンなどの9,9−ビス[(2−ヒドロキシC2-4アルコキシ)−C6-8アリールフェニル]フルオレン、9,9−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−3−ベンジルフェニル]フルオレンなどの9,9−ビス[(2−ヒドロキシC2-4アルコキシ)−C6-8アリールC1-2アルキルフェニル]フルオレンなど}などの9,9−ビス[モノ(ヒドロキシアルコキシ)フェニル]フルオレン類、これらの化合物に対応する9,9−ビス[ジ又はトリ(ヒドロキシアルコキシ)フェニル]フルオレン類{例えば、9,9−ビス[3,4−ジ(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]フルオレンなどの9,9−ビス[ジ(2−ヒドロキシC2-4アルコキシ)フェニル]フルオレンなど}などの9,9−ビス[モノ乃至トリ(ヒドロキシアルコキシ)フェニル]フルオレン類;これらの化合物に対応し、ヒドロキシル基にアルキレンオキシド単位が2つ付加した化合物{例えば、9,9−ビス{4−[2−(2−ヒドロキシエトキシ)エトキシ]フェニル}フルオレンなどの9,9−ビス[2−(2−ヒドロキシC2-4アルコキシ)C2-4アルコキシフェニル]フルオレン、9,9−ビス{3,4−ジ[2−(2−ヒドロキシエトキシ)エトキシ]フェニル}フルオレンなどの9,9−ビス{ジ[2−(2−ヒドロキシC2-4アルコキシ)C2-4アルコキシ]フェニル}フルオレンなどの9,9−ビス[モノ乃至トリ(ヒドロキシジアルコキシ)フェニル]フルオレン類など}などの9,9−ビス[モノ乃至トリ(ヒドロキシポリアルコキシ)フェニル]フルオレン類が挙げられる。
好ましい9,9−ビス(ヒドロキシフェニル)フルオレン類のアルキレンオキシド付加体には、多価フェノールフルオレンのC2-4アルキレンオキシド付加体、例えば、9,9−ビス(ジヒドロキシフェニル)フルオレン類[特に、9,9−ビス(ジヒドロキシフェニル)フルオレン]のアルキレンオキシド付加体、9,9−ビス(トリヒドロキシフェニル)フルオレン類[特に、9,9−ビス(トリヒドロキシフェニル)フルオレン]のC2-4アルキレンオキシド付加体などが含まれる。
なお、9,9−ビス(モノヒドロキシフェニル)フルオレン類のアルキレンオキシド付加体の製造方法は、特に限定されないが、例えば、9,9−ビス(ヒドロキシフェニル)フルオレン類と、対応するアルキレンオキサイド(C2-4アルキレンオキシド)又はアルキレンカーボネート(C2-4アルキレンカーボネート)とを、必要に応じて触媒(塩基触媒など)の存在下で反応させる方法や、フルオレノンと対応するフェノキシC2-4アルコール類とを反応させる方法(例えば、特開平11−349657号公報)などにより製造してもよい。また、9,9−ビス(ジ又はトリヒドロキシフェニル)フルオレン類のアルキレンオキシド付加体は、上記製造方法において、9,9−ビス(ヒドロキシフェニル)フルオレン類又はフェノキシC2-4アルコール類に代えて、対応するアルコール類[9,9−ビス(ジ又はトリヒドロキシフェニル)フルオレン類、ジ又はトリ(ヒドロキシC2-4アルコキシ)ベンゼン類など]を使用することにより製造できる。
(グリシジルエーテル)
9,9−ビス(ヒドロキシフェニル)フルオレン類のグリシジルエーテルとしては、前記例示の9,9−ビス(ヒドロキシフェニル)フルオレン類のグリシジルエーテル類が挙げられる。
代表的な9,9−ビス(ヒドロキシフェニル)フルオレン類のグリシジルエーテルとしては、例えば、9,9−ビス(グリシジルオキシフェニル)フルオレン[例えば、9,9−ビス(4−グリシジルオキシフェニル)フルオレン(ビスフェノールフルオレンジグリシジルエーテル,BPFG)など]、置換基を有する9,9−ビス(グリシジルオキシフェニル)フルオレン{例えば、9,9−ビス(アルキル−グリシジルオキシフェニル)フルオレン[9,9−ビス(4−グリシジルオキシ−3−メチルフェニル)フルオレン(ビスクレゾールフルオレンジグリシジルエーテル,BCFG)、9,9−ビス(4−グリシジルオキシ−3−エチルフェニル)フルオレンなどの9,9−ビス(C1-4アルキル−グリシジルオキシフェニル)フルオレンなど]、9,9−ビス(ジアルキル−グリシジルオキシフェニル)フルオレン[9,9−ビス(4−グリシジルオキシ−3,5−ジメチルフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−グリシジルオキシ−2,6−ジメチルフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−グリシジルオキシ−3,5−ジ−t−ブチルフェニル)フルオレンなどの9,9−ビス(ジC1-4アルキル−グリシジルオキシフェニル)フルオレンなど]、9,9−ビス(シクロアルキル−グリシジルオキシフェニル)フルオレン[9,9−ビス(4−グリシジルオキシ−3−シクロヘキシルフェニル)フルオレンなどの9,9−ビス(C5-8シクロアルキル−グリシジルオキシフェニル)フルオレンなど]、9,9−ビス(アリールグリシジルオキシフェニル)フルオレン[9,9−ビス(4−グリシジルオキシ−3−フェニルフェニル)フルオレンなどの9,9−ビス(C6-8アリール−グリシジルオキシフェニル)フルオレンなど]など}などの9,9−ビス(モノヒドロキシフェニル)フルオレン類のジグリシジルエーテル;これらの化合物に対応する9,9−ビス[ジ又はトリ(ヒドロキシ)フェニル]フルオレン類のグリシジルエーテル{例えば、9,9−ビス[ジ(グリシジルオキシ)フェニル]フルオレン[例えば、9,9−ビス[3,4−ジ(グリシジルオキシ)フェニル]フルオレン(ビスカテコールフルオレンテトラグリシジルエーテル)など]などの9,9−ビス(ジヒドロキシフェニル)フルオレン類のテトラグリシジルエーテルなど}が挙げられる。
代表的なアルキレンオキシド付加体のグリシジルエーテルとしては、前記例示の9,9−ビス(モノヒドロキシフェニル)フルオレン類のアルキレンオキシド付加体のグリシジルエーテル、例えば、9,9−ビス(グリシジルオキシアルコキシフェニル)フルオレン[例えば、9,9−ビス(4−グリシジルオキシエトキシフェニル)フルオレン(ビスフェノキシエタノールフルオレンジグリシジルエーテル,BPEFG)などの9,9−ビス(グリシジルオキシC2-4アルコキシフェニル)フルオレンなど]、置換基を有する9,9−ビス(グリシジルオキシアルコキシフェニル)フルオレン{例えば、9,9−ビス(アルキル−グリシジルオキシアルコキシフェニル)フルオレン[例えば、9,9−ビス(4−グリシジルオキシエトキシ−3−メチルフェニル)フルオレンなどの9,9−ビス(C1-4アルキルグリシジルオキシC2-4アルコキシフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−グリシジルオキシエトキシ−3,5−ジメチルフェニル)フルオレンなどの9,9−ビス(ジC1-4アルキルグリシジルオキシC2-4アルコキシフェニル)フルオレンなど]、9,9−ビス(シクロアルキルグリシジルオキシアルコキシフェニル)フルオレン[9,9−ビス(4−グリシジルオキシエトキシ−3−シクロヘキシルフェニル)フルオレンなどの9,9−ビス(C5-8シクロアルキルグリシジルオキシC2-4アルコキシフェニル)フルオレン]、9,9−ビス(アリールグリシジルオキシアルコキシフェニル)フルオレン[9,9−ビス(4−グリシジルオキシエトキシ−3−フェニルフェニル)フルオレンなどの9,9−ビス(C6-8アリールグリシジルオキシC2-4アルコキシフェニル)フルオレンなど]、これらの化合物に対応する9,9−ビス(グリシジルオキシポリアルコキシフェニル)フルオレン類[例えば、9,9−ビス{4−[2−(2−グリシジルオキシエトキシ)エトキシ]フェニル}フルオレンなどの9,9−ビス{[2−(2−グリシジルオキシC2-4アルコキシ)C2-4アルコキシ]フェニル}フルオレンなど]などの9,9−ビス(モノヒドロキシフェニル)フルオレン類のアルキレンオキシド付加体のジグリシジルエーテル;これらの化合物に対応する9,9−ビス[ジ又はトリ(ヒドロキシ)フェニル]フルオレン類のアルキレンオキシド付加体のグリシジルエーテル{例えば、9,9−ビス[3,4−ジ(2−グリシジルオキシC2-4アルコキシ)フェニル]フルオレンなどの9,9−ビス[ジ(ヒドロキシアルコキシ)フェニル]フルオレン類のテトラグリシジルエーテル、9,9−ビス{3,4−ジ[2−(2−グリシジルオキシC2-4アルコキシ)C2-4アルコキシ]フェニル}フルオレンなどの9,9−ビス[ジ(ヒドロキシポリアルコキシ)フェニル]フルオレンのテトラグリシジルエーテルなど}などが挙げられる。
なお、グリシジルエーテルは、9,9−ビス(ヒドロキシフェニル)フルオレン類又はそのアルキレンオキシド付加体と、エピクロルヒドリンとを反応させることにより得ることができる。
((メタ)アクリレート)
9,9−ビス(ヒドロキシフェニル)フルオレン類の(メタ)アクリレートとしては、前記例示の9,9−ビス(ヒドロキシフェニル)フルオレン類の(メタ)アクリレートが挙げられる。
代表的な9,9−ビス(ヒドロキシフェニル)フルオレン類の(メタ)アクリレートとしては、前記例示のグリシジルエーテルのグリシジル基を(メタ)アクリロイル基で置換した化合物、例えば、9,9−ビス((メタ)アクリロイルオキシフェニル)フルオレン[例えば、9,9−ビス(4−(メタ)アクリロイルオキシフェニル)フルオレンなど]、置換基を有する9,9−ビス((メタ)アクリロイルオキシフェニル)フルオレン{例えば、9,9−ビス(アルキル−(メタ)アクリロイルオキシフェニル)フルオレン[例えば、9,9−ビス(3−メチル−4−(メタ)アクリロイルオキシフェニル)フルオレンなどの9,9−ビス(C1-4アルキル−4−(メタ)アクリロイルオキシフェニル)フルオレンなど]など}などの9,9−ビス(モノヒドロキシフェニル)フルオレン類のジ(メタ)アクリレート;これらの化合物に対応する9,9−ビス[ジ又はトリ(ヒドロキシ)フェニル]フルオレン類の(メタ)アクリレート{例えば、9,9−ビス(ジ(メタ)アクリロイルオキシフェニル)フルオレン[9,9−ビス(3,4−ジ(メタ)アクリロイルオキシフェニル)フルオレンなど]などの9,9−ビス(ジヒドロキシフェニル)フルオレン類のテトラ(メタ)アクリレートなど}などが挙げられる。
また、9,9−ビス(ヒドロキシフェニル)フルオレン類のアルキレンオキシド付加体の(メタ)アクリレートには、例えば、9,9−ビス((メタ)アクリロイルオキシC2-4アルコキシ)フェニル)フルオレン[例えば、9,9−ビス(4−(2−(メタ)アクリロイルオキシエトキシ)フェニル)フルオレンなど]、置換基を有する9,9−ビス((メタ)アクリロイルオキシC2-4アルコキシ)フェニル)フルオレン[例えば、9,9−ビス(3−メチル−4−(2−(メタ)アクリロイルオキシエトキシ)フェニル)フルオレンなどの9,9−ビス(アルキル−(メタ)アクリロイルオキシC2-4アルコキシ)フェニル)フルオレン]、これらの化合物に対応する9,9−ビス((メタ)アクリロイルオキシポリC2-4アルコキシフェニル)フルオレン[例えば、9,9−ビス(4−(2−(メタ)アクリロイルオキシジエトキシ)フェニル)フルオレンなど]などの9,9−ビス(モノヒドロキシフェニル)フルオレン類のアルキレンオキシド付加体のジ(メタ)アクリレート;これらの化合物に対応する9,9−ビス[ジ又はトリ(ヒドロキシ)フェニル]フルオレン類のアルキレンオキシド付加体の(メタ)アクリレート{例えば、9,9−ビス[3,4−ジ(2−(メタ)アクリロイルオキシエトキシ)フェニル]フルオレンなどの9,9−ビス[ジ(2−(メタ)アクリロイルオキシC2-4アルコキシ)フェニル]フルオレン、9,9−ビス{3,4−ジ[2−(2−(メタ)アクリロイルオキシエトキシ)エトキシ]フェニル}フルオレンなどの9,9−ビス{ジ[2−(2−(メタ)アクリロイルオキシC2-4アルコキシ)C2-4アルコキシ]フェニル}フルオレンなどの9,9−ビス[ジ(ヒドロキシ)フェニル]フルオレン類のアルキレンオキシド付加体のテトラ(メタ)アクリレートなど}などが例示できる。
なお、これらの(メタ)アクリレートの製造方法は、特に限定されないが、例えば、対応する9,9−ビス(ヒドロキシフェニル)フルオレン類又はそのアルキレンオキシド付加体と、(メタ)アクリル酸又はその誘導体((例えば、(メタ)アクリル酸クロライドなどの(メタ)アクリル酸ハライド、(メタ)アクリル酸メチルなどの(メタ)アクリル酸低級アルキルエステルなど)とを、必要に応じて触媒の存在下で、反応させることにより製造できる。
(2)9,9−ビス(アミノフェニル)フルオレン類又はその誘導体
9,9−ビス(アミノフェニル)フルオレン類としては、前記9,9−ビス(ヒドロキシフェニル)フルオレン類に対応する化合物、すなわち、9,9−ビス(ヒドロキシフェニル)フルオレン類のヒドロキシル基が、アミノ基又はN−置換アミノ基である化合物などが挙げられる。
代表的な9,9−ビス(アミノフェニル)フルオレン類としては、9,9−ビス(モノアミノフェニル)フルオレン類、例えば、9,9−ビス(モノアミノフェニル)フルオレン[9,9−ビス(4−アミノフェニル)フルオレン(ビスアニリンフルオレン)など]、置換基を有する9,9−ビス(モノアミノフェニル)フルオレン{例えば、9,9−ビス(アミノ−アルキルフェニル)フルオレン[9,9−ビス(4−アミノ−3−メチルフェニル)フルオレン、9,9−ビス(3−アミノ−2−メチルフェニル)フルオレンなどの9,9−ビス(アミノ−C1-4アルキルフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−アミノ−3,5−ジメチルフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−アミノ−2,6−ジメチルフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−アミノ−3,5−ジ−t−ブチルフェニル)フルオレンなどの9,9−ビス(アミノ−ジC1-4アルキルフェニル)フルオレンなど]、これらの9,9−ビス(アミノ−アルキルフェニル)フルオレンのアルキル基が、シクロアルキル基(C5-8シクロアルキル基)やアリール基(C6-8アリール基など)である化合物など}、これらの化合物に対応し、アミノ基がN−モノ置換アミノ基(例えば、N−C1-4アルキルアミノ基)である9,9−ビス(モノアミノフェニル)フルオレン類などが挙げられる。
また、9,9−ビス(アミノフェニル)フルオレン類の誘導体としては、上記9,9−ビス(アミノフェニル)フルオレン類のアルキレンオキシド付加体、このアルキレンオキシド付加体のグリシジルエーテルおよび前記アルキレンオキシド付加体の(メタ)アクリレートなどが含まれる。
なお、9,9−ビス(アミノフェニル)フルオレン類の製造方法は、特に限定されないが、例えば、前記ビス(ヒドロキシフェニル)フルオレン類の製造方法において、フェノール類に代えて、対応するアニリン類を用いることにより製造できる。
好ましいフルオレン化合物には、9,9−ビス(モノ乃至トリヒドロキシフェニル)フルオレン類[特に、9,9−ビス(モノ又はジヒドロキシフェニル)フルオレン類、さらに好ましくは9,9−ビス(ジヒドロキシフェニル)フルオレン類]、9,9−ビス(モノ乃至トリヒドロキシフェニル)フルオレン類のC2-4アルキレンオキシド付加体[特に、9,9−ビス(モノ又はジヒドロキシフェニル)フルオレン類のC2-4アルキレンオキシド付加体、さらに好ましくは9,9−ビス(ジヒドロキシフェニル)フルオレン類のC2-4アルキレンオキシド付加体]、9,9−ビス(モノ乃至トリヒドロキシフェニル)フルオレン類又はそのC2-4アルキレンオキシド付加体のグリシジルエーテル[特に、9,9−ビス(モノヒドロキシフェニル)フルオレン類又はそのC2-4アルキレンオキシド付加体のジグリシジルエーテル、9,9−ビス(ジヒドロキシフェニル)フルオレン類又はそのC2-4アルキレンオキシド付加体のテトラグリシジルエーテル]、9,9−ビス(モノ乃至トリヒドロキシフェニル)フルオレン類又はそのC2-4アルキレンオキシド付加体の(メタ)アクリレート[特に、9,9−ビス(モノヒドロキシフェニル)フルオレン類のC2-4アルキレンオキシド付加体のジ(メタ)アクリレート、9,9−ビス(ジヒドロキシフェニル)フルオレン類のC2-4アルキレンオキシド付加体のテトラ(メタ)アクリレート]、9,9−ビス(アミノフェニル)フルオレン類などが含まれる。
これらのうち、特に、9,9−ビス(モノ乃至トリヒドロキシフェニル)フルオレン類又はそのC2-4アルキレンオキシド付加体のグリシジルエーテル{特に、9,9−ビス(モノヒドロキシフェニル)フルオレン類又はそのC2-4アルキレンオキシド付加体のジグリシジルエーテル、9,9−ビス(ジヒドロキシフェニル)フルオレン類又はそのC2-4アルキレンオキシド付加体のテトラグリシジルエーテル}が好ましい。
本発明の樹脂組成物では、フルオレン骨格を有する化合物を熱可塑性樹脂に添加するので、煩雑な重合反応によりフルオレン骨格を導入する必要がなく、簡便にかつ効率よく優れた機能(高屈折率、耐熱性など)を樹脂組成物(およびその成形体)に付与できるとともに成形可能である。
熱可塑性樹脂は、特に限定されず、幅広い範囲の樹脂を使用できる。熱可塑性樹脂としては、例えば、オレフィン系樹脂(ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメチルペンテン、非晶質ポリオレフィンなど)、ハロゲン含有ビニル系樹脂(ポリ塩化ビニルなどの塩素含有樹脂、フッ化樹脂など)、アクリル系樹脂(ポリメタクリル酸メチルなど)、スチレン系樹脂(ポリスチレン、アクリロニトリル−スチレン樹脂など)、ポリカーボネート系樹脂(ビスフェノールA型ポリカーボネートなど)、ポリエステル系樹脂(ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリシクロヘキサンジメチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートなどのポリアルキレンアリレート系樹脂、ポリアリレート系樹脂、液晶ポリエステルなど)、ポリアセタール系樹脂、ポリアミド系樹脂(ポリアミド6、ポリアミド66、ポリアミド46、ポリアミド6T、ポリアミドMXDなど)、ポリフェニレンエーテル系樹脂(変性ポリフェニレンエーテルなど)、ポリスルホン系樹脂(ポリスルホン、ポリエーテルスルホンなど)、ポリフェニレンスルフィド系樹脂(ポリフェニレンスルフィドなど)、ポリイミド系樹脂(ポリエーテルイミド、ポリアミドイミド、ポリアミノビスマレイミド、ビスマレイミドトリアジン樹脂など)、ポリエーテルケトン系樹脂(ポリエーテルケトン、ポリエーテルエーテルケトンなど)、熱可塑性エラストマー(ポリアミド系エラストマー、ポリエステル系エラストマー、ポリウレタン系エラストマー、ポリスチレン系エラストマー、ポリオレフィン系エラストマー、ポリジエン系エラストマー、ポリ塩化ビニル系エラストマー、フッ素系熱可塑性エラストマー)などが挙げられる。熱可塑性樹脂は、単独で又は2種以上組み合わせてもよい。
これらのうち、ポリエステル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、アクリル系樹脂、ポリイミド系樹脂などが好ましい。
また、これらの熱可塑性樹脂のうち、芳香環(ベンゼン環)を含有する熱可塑性樹脂、例えば、芳香族ポリカーボネート系樹脂(ビスフェノールA型ポリカーボネートなど)、ポリエステル系樹脂[ポリアルキレンアリレート系樹脂;芳香族ジカルボン酸(テレフタル酸など)と芳香族ジオール(ビフェノール、ビスフェノールA、キシリレングリコール、これらのアルキレンオキシド付加体など)を重合成分として用いたポリアリレート系樹脂など]、ポリスルホン系樹脂(ポリスルホン、ポリエーテルスルホンなど)、ポリフェニレンスルフィド系樹脂(ポリフェニレンスルフィドなど)も好ましい。これらの芳香環含有樹脂は、芳香環を有しているため、前記フルオレン化合物との相溶性が高く、そのため、樹脂に対する分散性が高い。
前記式(1)で表されるフルオレン骨格を有する化合物の割合は、熱可塑性樹脂(特に、芳香環を有する熱可塑性樹脂)100重量部に対して、例えば、1〜80重量部、好ましくは5〜60重量部、さらに好ましくは20〜60重量部程度であってもよい。
本発明の樹脂組成物は、熱硬化性樹脂を含んでいてもよい。熱硬化性樹脂としては、例えば、フェノール樹脂、アミノ樹脂(尿素樹脂、メラミン樹脂など)、フラン樹脂、不飽和ポリエステル系樹脂、エポキシ樹脂、熱硬化性ウレタン系樹脂、シリコーン樹脂、熱硬化性ポリイミド系樹脂、ジアリルフタレート樹脂、ビニルエステル樹脂などが挙げられる。熱硬化性樹脂は、単独で又は2種以上組み合わせてもよい。さらに、本発明の樹脂組成物は、熱硬化性樹脂の種類に応じて、硬化剤や硬化促進剤などを含有していてもよい。
本発明の樹脂組成物は、さらに機能を発現させるために、機能発現剤を含んでいてもよい。機能発現剤としては、特に限定されず、成形体の用途に応じて、例えば、カーボン材料(カーボンブラック、黒鉛、カーボン繊維、活性炭、フラーレン、カーボンナノチューブなど)、着色剤などが挙げられる。機能発現剤は、単独で又は2種以上組み合わせてもよい。
着色剤には、無機顔料や有機染顔料などが含まれる。無機顔料としては、黒色顔料[カーボンブラック(例えば、アセチレンブラック、ランプブラック、サーマルブラック、ファーネスブラック、チャンネルブラック、ケッチェンブラックなど)など]、白色顔料[チタン系白色顔料(二酸化チタンなど)、亜鉛系白色顔料(酸化亜鉛、硫化亜鉛など)、複合白色顔料(リトポンなど)、体質顔料(ケイ酸マグネシウム、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、水酸化アルミニウム、ベントナイトなど)など]、クロムエローなどの黄色顔料、酸化鉄赤などの赤色顔料、モリブデートオレンジなどの橙色顔料、クロムグリーンなどの緑色顔料、紺青などの青色顔料、マンガンバイオレットなどの紫色顔料、カドミウム系顔料、鉛系顔料、コバルト系顔料などが挙げられる。有機染顔料又は色素としては、アゾ系染顔料(ピグメントイエロー、ハンザイエロー、ベンジジンイエロー、パーマネントレッド、ブリリアントカーミン6Bなど)、フタロシアニン系染顔料(フタロシアニンブルー、フタロシアニングリーンなど)、レーキ系染顔料(レーキレッド、ウォッチャンレッドなど)、シアニン系染顔料、カルバゾール系染顔料、ピロメテン系染顔料、アンスラキノン系染顔料、ナフトキノン系染顔料、キナクリドン系染顔料、ペリレン系染顔料、ペリノン系染顔料、イソインドリン系染顔料、ジオキサジン系染顔料、スレン系染顔料などが挙げられる。これらの着色剤は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。
なお、着色剤は、機能性色素又は顔料(アゾ系染顔料、フタロシアニン系染顔料、シアニン系染顔料、カルバゾール系染顔料、ピロメテン系染顔料など)として、例えば、カラーレジスト、近赤外線吸収色素、キャリア輸送剤、太陽電池用電化移動剤などの用途に使用してもよい。
本発明の樹脂組成物は、成形目的に応じて、他の成分、例えば、滑剤、安定剤(酸化防止剤、紫外線吸収剤、熱安定剤)、離型剤(天然ワックス類、合成ワックス類、直鎖脂肪酸やその金属塩、酸アミド類、エステル類、パラフィン類など)、帯電防止剤、着色剤(前記例示の着色剤など)などの添加剤を含んでいてもよい。これらの他の成分は、単独で又は2種以上組み合わせてもよい。
また、添加剤には、充填剤(フィラー)、難燃剤、可塑剤(ポリオール、ポリサルファイド、ウレタンプレポリマーなど)、分散剤、流動調整剤、レベリング剤、消泡剤、表面改質剤(シランカップリング剤やチタン系カップリング剤など)、低応力化剤(シリコーンオイル、シリコーンゴム、各種プラスチック粉末、各種エンジニアリングプラスチック粉末など)、液状ゴム(カルボキシル基末端ブタジエン−アクリロニトリル共重合ゴム、エチレン-酢酸ビニル共重合体など)、耐熱性改良剤又は撥水性改良剤(硫黄化合物、ポリシラン、シリコーン樹脂など)なども含まれる。これらの添加剤は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。
充填剤又はフィラーとしては、シリカ、アルミナ、ジルコニア、マイカをはじめとする酸化物系無機物または炭化ケイ素、窒化ケイ素などの非酸化物系無機物の微粉などが挙げられる。また用途によってはアルミニウム、亜鉛、銅などの金属粉末の添加も可能である。
より詳細には、充填剤には、ケイ砂、石英、ノバキュライト、ケイ藻土などのシリカ系;合成無定形シリカ;カオリナイト、雲母、滑石、ウオラストナイト、アスベスト、ケイ酸カルシウム、ケイ酸アルミニウムなどのケイ酸塩;ガラス粉末、ガラス球、中空ガラス球、ガラスフレーク、泡ガラス球などのガラス体;窒化ホウ素、炭化ホウ素、窒化アルミニウム、炭化アルミニウム、窒化ケイ素、炭化ケイ素、ホウ化チタン、窒化チタン、炭化チタンなどの非酸化物系無機物;炭酸カルシウム;酸化亜鉛、アルミナ、マグネシア、酸化チタン、酸化ベリリウムなどの金属酸化物などが含まれる。充填剤の形状は、繊維状、針状(ウィスカーを含む)、粒状、鱗片状などであってもよい。繊維状充填剤には、炭素繊維、活性炭素繊維、ガラス繊維、アルミノケイ酸繊維、酸化アルミニウム繊維、炭化ケイ素繊維、金属繊維、ボロン繊維、チタン酸カリウム繊維等の無機繊維、アラミド繊維などの有機繊維なども含まれる。これらの充填剤は、単独でまたは2種以上組み合わせて用いることができる。
難燃剤としては、ホウ酸系難燃剤、リン系難燃剤、前記ホウ酸系難燃剤及び前記リン系難燃剤以外のその他の無機系難燃剤、チッソ系難燃剤、ハロゲン系難燃剤、有機系難燃剤、コロイド難燃物質などが含まれる。難燃剤は、単独で又は2種以上組み合わせてもよい。
ハロゲン系難燃剤としては、例えば、テトラブロモ・ビスフェノールA誘導体(TBA)、テトラブロモ・ビスフェノールS誘導体、ヘキサブロモベンゼン、デカブロモジフェニルエーテル、テトラブロモエタン(TBE)、テトラブロモブタン(TBB)、ヘキサブロモシクロデカン(HBCD)などの臭素系難燃剤、塩素化パラフィン、塩素化ポリフェニル、塩素化ジフェニル、パークロロペンタシクロデカン、塩素化ナフタレンなどの塩素系難燃剤が挙げられる。これらのハロゲン系難燃剤は、三酸化アンチモンなどと併用することにより、さらに良好な難燃効果を発揮する。
リン系難燃化合物としては、例えば、リン酸アンモニウム、リン酸メラミン、赤燐、リン酸エステル、トリクレジルホスフェート、トリ(β−クロロエチル)ホスフェート、トリ(ジクロロプロピル)ホスフェート、トリ(ジブロモプロピル)ホスフェート、2,3−ジブロモプロピル−2,3−ジクロロプロピルホスフェートなどが挙げられる。
その他の無機系難燃剤としては、例えば、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、水酸化ジルコニウム、水酸化カルシウム、水酸化バリウム、塩基性炭酸マグネシウム、ドロマイト、酸化スズの水和物、ホウ砂などの無機金属水和物、硼酸亜鉛、メタ硼酸バリウム、炭酸亜鉛、炭酸マグネシウム−カルシウム、炭酸バリウム、酸化マグネシウム、酸化モリブデン、酸化ジルコニウム、酸化スズ、膨張黒鉛などが挙げられる。
本発明では、他の成分(機能発現剤、添加剤など)が芳香環を有する化合物であっても、樹脂組成物中に効率よく分散できる。前記添加剤のうち、このような芳香環を有する化合物としては、例えば、カーボンブラック、黒鉛、カーボン繊維(炭素繊維)、活性炭、フラーレン、カーボンナノチューブなどのカーボン材料(炭素材)や、カラーレジスト用着色色素(赤、青、緑など)、近赤外線吸収色素、キャリア輸送剤や太陽電池用電化移動剤などの機能性色素や機能性顔料(フタロシアニン系染顔料、カルバゾール系染顔料、シアニン系染顔料、アゾ系染顔料、ピロメテン系染顔料など)などが挙げられる。
機能発現剤又は添加剤の割合は、熱可塑性樹脂100重量部に対して、例えば、0.1〜40重量部、好ましくは0.5〜20重量部、さらに好ましくは1〜15重量部程度であってもよい。また、機能発現剤の割合は、熱可塑性樹脂とフルオレン化合物との総量100重量部に対して、例えば、0.05〜30重量部、好ましくは0.3〜25重量部、さらに好ましくは0.5〜10重量部程度であってもよい。
本発明の樹脂組成物は、フルオレン骨格を有する化合物又はその誘導体、熱可塑性樹脂、及び必要により他の成分(前記機能発現剤などの添加剤、溶媒など)を混合することにより製造又は調製できる。混合方法としては、特に限定されず、例えば、リボンブレンダ、タンブルミキサ、ヘンシェルミキサなどの混合機や、オープンローラ、ニーダ、バンバリーミキサ、押出機などの混練機による混合手段などを用いた溶融混練による方法が利用できる。これらの混合方法は、単独で又は2種以上組み合わせてもよい。
また、樹脂組成物は、溶媒を混合した塗布液の形態であってもよい。塗布液を構成する溶媒としては、特に限定されず、熱可塑性樹脂に応じて、慣用の溶媒、例えば、炭化水素類(ペンタン、ヘキサンなどの脂肪族炭化水素類、シクロヘキサンなどの脂環族炭化水素類、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素類など)、ハロゲン系溶媒(ジクロロメタンなどのハロアルカン、モノクロロベンゼンなどのハロアレーンなど)、アルコール類(メタノール、エタノール、プロパノールなどのアルキルアルコール類など)、ジオール類(エチレングリコール、プロピレングリコールなどのアルカンジオール類、ジエチレングリコール、ポリオキシエチレングリコールなどの(ポリ)オキシアルキレングリコールなど)、エーテル類(ジエチルエーテルなどの鎖状エーテル類、テトラヒドロフランなどの環状エーテル類など)、エステル類(エチルアセテートなどの酢酸エステル類など)、ケトン類(アセトン、エチルメチルケトンなどのジアルキルケトン類、シクロペンタノン、シクロヘキサノンなどの環状ケトン類など)、グリコールエーテルエステル類(エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、セロソルブアセテートなど)、セロソルブ類(メチルセロソルブ、エチルセロソルブなど)、カルビトール類(カルビトールなど)などが挙げられる。これらの溶媒は、単独で又は二種以上組み合わせて用いてもよい。
溶媒の割合は、塗布性を損なわない範囲であればよく、樹脂組成物の固形分1重量部に対して、溶媒1〜100重量部、好ましくは2〜50重量部、さらに好ましくは3〜30重量部程度であってもよい。
本発明の成形体は、前記樹脂組成物の形態(樹脂ペレット、塗布液など)に応じて、公知の成形方法(例えば、射出成形法、射出圧縮成形法、押出成形法、トランスファー成形法、ブロー成形法、加圧成形法、キャスティング成形法など)を利用して前記樹脂組成物を成形することにより得ることができる。
本発明の樹脂組成物およびその成形体は、高い光学的特性(高屈折率や低複屈折率など)を有している。そのため、光学レンズ、光学フィルム、光学シート、ピックアップレンズ、ホログラム、液晶用フィルム、有機EL用フィルムなどに好適に利用できる。また、機能発現剤(色素など)を含有する樹脂組成物およびその成形体は、塗料、帯電防止材、帯電トレイ、導電シート、保護膜(電子機器、液晶部材などの保護膜など)、光ディスク、インクジェットプリンター、デジタルペーパ、有機半導体レーザー、感熱記録材料、ホログラム記録材料、色素増感型太陽電池、EMIシールドフィルム、フォトクロミック材料、有機EL素子、有機感光体、カラーフィルタ、摺動部材、自動車部品材料、航空・宇宙材料、キャリア輸送剤、インキ、接着剤、粘着剤、建材、内装材、樹脂充填材、着色ガラス、発光体、センサーなどに好適に利用できる。
以下に、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。
(実施例1)
ポリカーボネート(帝人化成(株)製 パンライトAD5503)100重量部とビスフェノールフルオレンジグリシジルエーテル(大阪ガスケミカル(株)製)40重量部をモノクロロベンゼン/ジクロロメタン(混合比1/1)の混合溶媒に固形分濃度が20重量%となるように溶解し、その後、この溶液を用いて、ガラス基板上にキャスト膜を形成した。100℃で2時間加温して、溶媒を除去し、ガラス基板上から剥がすことによりキャストフィルムを形成した。得られたキャストフィルムは、無色透明であった。得られたフィルムの屈折率をアッベ屈折率計(アタゴ(株)製)で測定したところ1.59であった。
(比較例1)
ポリカーボネート(帝人化成(株)製 パンライトAD5503)100重量部をモノクロロベンゼン/ジクロロメタン(混合比1/1)の混合溶媒に固形分濃度が20重量%となるように溶解し、その後、この溶液を用いて、ガラス基板上にキャスト膜を形成した。100℃で2時間加温して、溶媒を除去し、ガラス基板上から剥がすことによりキャストフィルムを形成した。得られたキャストフィルムは、無色透明であった。得られたフィルムの屈折率をアッベ屈折率計(アタゴ(株)製)で測定したところ1.58であった。
(実施例2)
ポリカーボネート(帝人化成(株)製 パンライトAD5503)100重量部とビスフェノールフルオレンジグリシジルエーテル(大阪ガスケミカル(株)製)30重量部をドライブレンドし、押出機(テクノベル(株)製 20mm押出機)を用いて樹脂温度270℃で溶融混練し、樹脂ペレットを得た。次に、得られた樹脂ペレットを用いて、樹脂温度290℃で、卓上型ホットプレス機(神藤金属工業(株)製、型式NSF−50)で成形したところ、透明なプレート(厚み0.1mm)を得ることができた。
(実施例3)
ポリカーボネート(帝人化成(株)製 パンライトAD5503)100重量部とビスフェノールフルオレンジグリシジルエーテル(大阪ガスケミカル(株)製)40重量部をシクロペンタノン(和光純薬(株)製)400重量部に溶かし、色素として、「IRG022」(日本化薬(株)製)3.5重量部、「MIR101」(みどり化学(株)製)1.2重量部、「810K」(日本触媒(株)製)1.2重量部を加えて、溶解した。その後、得られた溶液を用いて、ガラス基板上にスピンコート膜(0.5μm)を形成した。100℃で2時間加温して、溶媒を除去し、1000nmの透過率を測定したところ、透過率が30%以下であった。
参考例
ビスフェノールフルオレンジグリシジルエーテル(大阪ガスケミカル(株)製)の代わりにビスフェノキシエタノールフルオレン(大阪ガスケミカル(株)製)を用いる以外は実施例1と同様にしたところ、無色透明のキャスト膜が得られた。
(実施例
ビスフェノールフルオレンジグリシジルエーテル(大阪ガスケミカル(株)製)の代わりにビスフェノキシエタノールジアクリレート(9,9−ビス(4−(2−アクリロイルオキシエトキシ)フェニル)フルオレン、大阪ガスケミカル(株)製)を用いる以外は実施例1と同様にしたところ、無色透明のキャスト膜が得られた。

Claims (5)

  1. ルオレン骨格を有する化合物と、熱可塑性樹脂とで構成された樹脂組成物であって、
    前記フルオレン骨格を有する化合物が、(i)9,9−ビス(モノ乃至トリヒドロキシフェニル)フルオレン類又はそのC 2−4 アルキレンオキシド付加体のグリシジルエーテル、及び(ii)9,9−ビス(モノ乃至トリヒドロキシフェニル)フルオレン類又はそのC 2−4 アルキレンオキシド付加体の(メタ)アクリレートから選択された少なくとも1種であり、
    前記熱可塑性樹脂が、ポリエステル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、アクリル系樹脂、およびポリイミド系樹脂から選択された少なくとも1種であり、
    前記フルオレン骨格を有する化合物の割合が、前記熱可塑性樹脂100重量部に対して、5〜60重量部である樹脂組成物
  2. フルオレン骨格を有する化合物が、9,9−ビス(モノ乃至トリヒドロキシフェニル)フルオレン類又はそのC2−4アルキレンオキシド付加体のグリシジルエーテルである請求項1記載の樹脂組成物。
  3. 熱可塑性樹脂が、芳香族ポリカーボネート系樹脂、ポリアルキレンアリレート系樹脂、および芳香族ジカルボン酸と芳香族ジオールを重合成分として用いたポリアリレート系樹脂から選択された少なくとも1種である請求項1記載の樹脂組成物。
  4. さらに、機能発現剤又は添加剤として、カーボン材料、機能性色素、および機能性顔料から選択された少なくとも1種の芳香環を有する化合物を、熱可塑性樹脂100重量部に対して0.1〜40重量部含む請求項1記載の樹脂組成物。
  5. 請求項1記載の樹脂組成物で形成された成形体。
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