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JP4409065B2 - エンジンのアイドル制御弁の制御装置 - Google Patents

エンジンのアイドル制御弁の制御装置 Download PDF

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JP4409065B2 JP2000227175A JP2000227175A JP4409065B2 JP 4409065 B2 JP4409065 B2 JP 4409065B2 JP 2000227175 A JP2000227175 A JP 2000227175A JP 2000227175 A JP2000227175 A JP 2000227175A JP 4409065 B2 JP4409065 B2 JP 4409065B2
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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、走行時のアイドル制御弁の開度を適正化するエンジンのアイドル制御弁の制御装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
一般に、エンジンのアイドル回転数を最適な状態に維持するため、スロットル弁をバイパスするバイパス通路にアイドル制御弁を介装し、このアイドル制御弁の開度を制御することによりエンジンの吸入空気量を調整する技術が広く採用されている。このアイドル制御弁の開度は、例えば、本出願人による特開平5−195832号公報に開示されているように、冷却水温を代表とするエンジン温度によって定まる基本特性値を各種補正項で補正して設定される。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、駆動補機類の大型化等により、アイドル時の要求トルクが増大する傾向にあり、アイドル制御弁を大容量化してバイパス通路の空気量を増加させることで要求トルクを満たすことができる反面、トルクコンバータ付きAT車においては、減速時にアイドル制御弁の開度が大きくなり過ぎ、吸気管負圧が不十分になるといった問題が生じる。
【0004】
すなわち、減速時にブレーキブースタによるアシスト力が相対的に低下してブレーキペダルの踏力が増加する、エンジンブレーキの効果が低下するといった現象が生じ、また、減速時の燃料カットから復帰した際のトルクショックが大きくなるという問題が生じる。
【0005】
本発明は上記事情に鑑みてなされたもので、走行時のアイドル制御弁の開度を適正化し、減速時の吸気管負圧を確保することのできるエンジンのアイドル制御弁の制御装置を提供することを目的としている。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、請求項1記載の発明は、エンジンの出力軸にトルクコンバータを介して変速機を連設するエンジンのアイドル制御弁の制御装置であって、上記変速機の入力軸回転数に基づいて、上記トルクコンバータの攪拌抵抗によるエンジン負荷を考慮したトルクコンバータ補正量をエアコンデショナー作動時とエアコンデショナー停止時とに対応して別個に設定するトルクコンバータ補正量設定手段と、上記アイドル制御弁に対する制御量を上記トルクコンバータ補正量を用いて上記アイドル制御弁の開度を減少させる方向に補正し、上記アイドル制御弁の開度を制御する開度制御手段とを備えたことを特徴とする。
【0007】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の発明において、上記トルクコンバータ補正量設定手段は、クリープ車速領域以下では、上記トルクコンバータ補正量を補正無しに対応する値とし、クリープ車速を越えた領域では、上記トルクコンバータ補正量を上記変速機の入力軸回転数の上昇に応じて増加させ、上記変速機の入力軸回転数が設定回転数以上の領域では、上記トルクコンバータ補正量を一定値に収束させることを特徴とする。
【0008】
請求項3記載の発明は、請求項1又は請求項2記載の発明において、上記トルクコンバータ補正量設定手段は、上記トルクコンバータ補正量を、車速に基づいて設定した規制値で上限規制することを特徴とする。
【0009】
請求項4記載の発明は、請求項1又は請求項2記載の発明において、上記トルクコンバータ補正量設定手段は、上記トルクコンバータ補正量を、エンジン温度に基づいて設定した規制値で上限規制することを特徴とする。
【0010】
請求項5記載の発明は、請求項1又は請求項2記載の発明において、上記トルクコンバータ補正量設定手段は、上記トルクコンバータ補正量を、車速に基づいて設定した規制値とエンジン温度に基づいて設定した規制値とのうちの小さい方の規制値で上限規制することを特徴とする。
【0011】
請求項6記載の発明は、請求項1,2,3,4,5のいずれか一に記載の発明において、上記トルクコンバータ補正量設定手段は、上記トルクコンバータ補正量を上限規制するための規制値を、エアコンデショナー作動時とエアコンデショナー停止時とに対応して別個に設定することを特徴とする。
【0012】
すなわち、請求項1記載の発明は、変速機の入力軸回転数に基づいて、トルクコンバータの攪拌抵抗によるエンジン負荷を考慮したトルクコンバータ補正量をエアコンデショナー作動時とエアコンデショナー停止時とに対応して別個に設定し、このトルクコンバータ補正量を用いてアイドル制御弁に対する制御量をアイドル制御弁の開度を減少させる方向に補正することで、走行時のアイドル制御弁の開度を適正化し、減速時の吸気管負圧を確保する。
【0013】
その際、請求項2記載の発明は、クリープ車速領域以下では、トルクコンバータ補正量を補正無しに対応する値として車両停止ないしクリープ走行状態でのスロットル弁全閉時の吸気管負圧の不足ないし吸気管負圧の不足による影響を無視し得る領域での補正を中止し、クリープ車速を越えた領域では、トルクコンバータ補正量を変速機の入力軸回転数の上昇に応じて増加させ、変速機の入力軸回転数が設定回転数以上の領域で、比較的エンジンが高回転にあり、吸気管負圧がさほど変化しない領域では、トルクコンバータ補正量を一定値に収束させることで、制御性を向上する。
【0014】
請求項3記載の発明は、トルクコンバータ補正量を、車速に基づいて設定した規制値で上限規制することで、通常の変速レンジよりも減速比の大きいレンジでの過補正を防止する。
【0015】
請求項4記載の発明は、トルクコンバータ補正量を、エンジン温度に基づいて設定した規制値で上限規制することで、エンジン温度に基づくアイドル制御弁の制御量に対する過補正を防止する。
【0016】
請求項5記載の発明は、トルクコンバータ補正量を、車速に基づいて設定した規制値とエンジン温度に基づいて設定した規制値とのうちの小さい方の規制値で上限規制することで、より規制の厳しい値で上限規制してアイドル制御弁の制御量に対する過補正を確実に防止する。
【0017】
請求項6記載の発明は、トルクコンバータ補正量を上限規制するための規制値を、エアコンデショナー作動時とエアコンデショナー停止時とに対応して別個に設定することで、エアコンデショナー作動時とエアコンデショナー停止時とのエンジン負荷の相違に応じた適正な補正を可能とする。
【0018】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。図1〜図7は本発明の実施の一形態に係わり、図1はエンジン及び駆動系の概略図、図2は電子制御系の回路構成図、図3はISC制御ルーチンのフローチャート、図4はISC制御弁に対する制御量の説明図、図5はAT車トルコン補正量設定ルーチンのフローチャート、図6はトルクコンバータ攪拌抵抗の変化を示す説明図、図7はISC流量減量による吸気管負圧の変化を示す説明図である。
【0019】
図1において、符号1はエンジン(図1においては、直列4気筒型自然吸気式エンジン)であり、このエンジン1のシリンダヘッド2に形成された各吸気ポート2aにインテークマニホルド3が連通されている。このインテークマニホルド3に、各気筒の吸気通路が集合するエアチャンバ4を介して吸気管5が連通され、吸気管5の吸入空気取入れ口側に、エアクリーナ6が取付けられている。尚、エアチャンバ4は、マスタシリンダ7を備えたブレーキブースタ8に連通され、このブレーキブースタ8にブレーキペダル9が連設されている。
【0020】
また、吸気管5にはスロットル弁10が介装され、スロットル弁10の上流側と下流側とを連通するバイパス通路11に、アイドル時にその弁開度によってバイパス通路11を流れるバイパス空気量を調整することでアイドル回転数を制御するアイドル制御弁(ISC弁)12が介装されている。ISC弁12は、本形態においては、リニアソレノイド弁からなり、後述するエンジン制御用の電子制御装置50(図2参照)からのデューティ信号に応じて弁開度が調整される。
【0021】
また、インテークマニホルド3の各気筒の各吸気ポート2a直上流側にインジェクタ13が臨まされ、シリンダヘッド2の各気筒毎に、その放電電極部を燃焼室に露呈する点火プラグ14が配設されている。点火プラグ14には、イグナイタ16を内蔵するイグニッションコイル15が接続されている。
【0022】
更に、シリンダヘッド2の各排気ポート2bに連通するエグゾーストマニホールド17の合流部に、触媒コンバータ18が介装され、排気管19に連通されている。排気管19の中途にはサブマフラ20が配設され、終端側にマフラ21が配設されている。
【0023】
一方、エンジン1のクランクシャフト1aには、インペラとタービンとを係合するためのロックアップクラッチ22を備えたトルクコンバータ(トルコン)23を介して変速機24が連設されている。変速機24は、本形態においては、トルクコンバータ23に、各種油圧クラッチや油圧ブレーキ及びプラネタリーギヤ等からなる前後進切換機構25を介して連設されるプライマリプーリ26と、このプライマリプーリ26に駆動ベルト27を介して連結されるセカンダリプーリ28とを備える無段変速機であり、セカンダリプーリ28の出力軸に減速歯車列29を介してデファレンシャル機構30が連設され、このデファレンシャル機構30に駆動軸31を介して駆動輪32が連設されている。
【0024】
次に、運転状態を検出するための各種センサ類について説明する。エンジン1側に装着されるセンサ類としては、吸気管5のスロットル弁10に、スロットル開度を検出するスロットル開度センサ35aとスロットルバルブ全閉でONするアイドルスイッチ35bとを内蔵したスロットルセンサ35が連設されている。また、エアチャンバ4には、スロットル弁10下流の吸気管圧力を絶対圧で検出する吸気管圧力センサ36が取付けられている。
【0025】
また、エンジン1のシリンダブロック1bに、ノックセンサ37が取付けられ、シリンダヘッド2に設けられた冷却水通路2cに冷却水温センサ38が臨まされている。また、シリンダヘッド2のカムシャフト2dに連設されるシグナルロータ39に、クランク角検出及び気筒判別用のカム角センサ40が対設されている。更に、触媒コンバータ18の直上流側に、O2センサ41が配設されている。
【0026】
一方、無段変速機24側に装着されるセンサ類としては、プライマリプーリ26に、トランスミッション入力軸回転数を検出するためのプライマリプーリ回転数センサ42が対設されている。更に、セカンダリプーリ28に、トランスミッション出力軸回転数を検出するためのセカンダリプーリ回転数センサ43が対設されている。
【0027】
次に、以上のエンジン及び駆動系を制御する電子制御系の構成について図2に基づき説明する。先ず、エンジン制御用の電子制御装置(ECU)50は、CPU51、ROM52、RAM53、バックアップRAM54、シリアルインターフェース(SCI)55、カウンタ・タイマ群56、及びI/Oインターフェイス57がバスラインを介して互いに接続されるマイクロコンピュータを中心として構成され、各部に安定化電源を供給する定電圧回路58、I/Oインターフェイス57に接続される駆動回路59及びA/D変換器60等の周辺回路が内蔵されている。
【0028】
尚、カウンタ・タイマ群56は、フリーランカウンタ、気筒判別センサ信号(気筒判別パルス)の入力計数用カウンタ等の各種カウンタ、燃料噴射用タイマ、点火用タイマ、定期割り込みを発生させるための定期割り込み用タイマ、クランク角センサ信号(クランクパルス)の入力間隔計時用タイマ、エンジン始動後の経過時間を計時する始動後時間計時用タイマ、及びシステム異常監視用のウオッチドッグタイマ等の各種タイマを便宜上総称するものであり、その他、各種のソフトウエアカウンタ・タイマが用いられる。
【0029】
定電圧回路58は、2回路のリレー接点を有する電源リレー61の第1のリレー接点を介してバッテリ62に接続されている。電源リレー61は、そのリレーコイルの一端が接地され、リレーコイルの他端が駆動回路59に接続されている。尚、電源リレー61の第2のリレー接点には、バッテリ62から各アクチュエータに電源を供給するための電源線が接続されている。
【0030】
また、バッテリ62には、イグニッションスイッチ63の一端が接続され、このイグニッションスイッチ63の他端がI/Oインターフェース57の入力ポートに接続されている。また、定電圧回路58は、直接、バッテリ62に接続されており、イグニッションスイッチ63のONが検出されて電源リレー61の接点が閉になると、ECU50内の各部へ電源を供給する一方、イグニッションスイッチ63のON,OFFに拘らず、常時、バックアップRAM54にバックアップ用の電源を供給する。
【0031】
また、I/Oインターフェイス57の入力ポートには、アイドルスイッチ35b、ノックセンサ37、カム角センサ40、エアコンスイッチ44、車速センサ45等が接続され、更に、A/D変換器60を介して、スロットル開度センサ35a、吸気管圧力センサ36、冷却水温センサ38、O2センサ41等が接続されると共にバッテリ電圧VBが入力されてモニタされる。また、I/Oインターフェイス57の出力ポートには、ISC弁12、インジェクタ13、電源リレー61のリレーコイルが駆動回路59を介して接続されると共に、イグナイタ16が接続されている。
【0032】
一方、変速機制御用の電子制御装置70(TCU70)は、エンジン制御用のECU50と同様、マイクロコンピュータを中心として構成されている。TCU70には、ECU50と共用するスロットル開度センサ35a及び冷却水温センサ38からの各信号が入力されると共に、プライマリプーリ回転数センサ42からの回転数信号、セカンダリプーリ回転数センサ43からの回転数信号、インヒビタスイッチ46からの図示しないセレクト機構部の操作位置を示す信号、ブレーキスイッチ47からのブレーキ信号等が入力され、エンジン制御用のECU50とSCI55を介して互いにデータ交換可能に接続されている。尚、本実施の形態においては、変速位置として、通常のドライブレンジ(Dレンジ)の他に、Dレンジよりも減速比が大きく、スポーツ走行に適したスポーツレンジ(Dsレンジ)が設けられている。
【0033】
変速機制御用のTCU70では、内部メモリに記憶されている制御プログラムに従って、センサ・スイッチ類からの検出信号を処理し、トルクコンバータ23や変速機24の各機構部へのライン圧やパイロット圧を制御する各種コントロール弁を一体的に形成した油圧制御部24aを介して、ロックアップクラッチ22の締結・スリップ・解放を制御すると共に、変速機24の変速制御を行う。同時に、変速位置やロックアップクラッチ22の制御データ等をエンジン制御用のECU50に送信する。
【0034】
一方、エンジン制御用のECU50では、ROM52に記憶されている制御プログラムに従って、I/Oインターフェイス57を介して入力されるセンサ・スイッチ類からの検出信号、及びバッテリ電圧等をCPU51で処理するとともに、SCI55を介して変速機制御用のTCU70から変速位置やロックアップクラッチ22の制御データ等を受信し、これらの受信データ、RAM53に格納される各種データ、及びバックアップRAM54に格納されている各種学習値データ、ROM52に記憶されている固定データ等に基づき、燃料噴射量、点火時期、ISC弁12に対する制御駆動信号のデューティ比等を演算し、空燃比制御を含む燃料噴射制御、点火時期制御、アイドル回転数制御(ISC制御)等のエンジン制御を行う。
【0035】
この場合、ISC制御においては、各種補機類の駆動によるエンジン負荷の増加に対処するため、大容量のISC弁12を使用してバイパス通路11の空気量を増加させて要求トルクを満たしているが、従来のままの制御では、トルクコンバータを搭載するAT車では減速時にISC弁12の開度が大きくなり過ぎ、吸気管負圧が不十分となる。その結果、減速時にブレーキブースタ8のアシスト力が相対的に低下し、ブレーキペダル9の踏力が増加する、エンジンブレーキの効果が低下するといった現象が生じ、また、減速時の燃料カットから復帰した際のトルクショックが大きくなるという問題が生じる。
【0036】
これに対処するため、ECU50では、変速機24の入力軸回転数に基づいて、トルクコンバータ23の攪拌抵抗によるエンジン負荷を考慮したトルクコンバータ補正量(後述するAT車トルコン補正量ITC)を設定し、このトルクコンバータ補正量を用いてISC弁12の開度を減少させる方向にISC弁12に対する制御量を補正することで、減速時にISC弁12の開度が大きくなり過ぎることを防止し、吸気管負圧を確保する。
【0037】
すなわち、ECU50は、本発明に係るトルクコンバータ補正量設定手段、開度制御手段としての機能を実現する。以下、ECU50によって実行されるISC制御に係る処理について、図3及び図5に示すフローチャートを用いて説明する。
【0038】
図3は、システムイニシャライズ後、所定時間毎(例えば、10msec毎)に実行されるISC制御ルーチンであり、先ず、ステップS101で、ISC弁12に対する制御量QISCを設定する。制御量QISCは、周知の各種補正項、例えば、エンジン温度に基づく基本開度としての水温補正量ITW、エンジン冷態始動時のファーストアイドルのための始動後補正量IAS、目標回転数と実回転数との偏差に基づくフィードバック補正量IFB、学習による学習補正量ILRN、エアコン等の補機類による負荷の影響を補正するための負荷補正量ILD、急停車時や耐エンスト性を確保するためのDレンジ補正量IND、スロットル弁10全閉時の要求トルクの増大に対処するためのアイドルアップ補正量IUPを加算項とし、これらの各種補正項を加算した値から、トランスミッション入力軸回転数の上昇に応じて増加するAT車トルコン補正量ITCを減算して設定する(QISC←ITW+IAS+IFB+ILRN+ILD+IND+IUP−ITC)。そして、ステップS102で制御量QISCをセットしてルーチンを抜ける。すなわち、図4に示すように、エンジン温度に基づく基本開度に、各種補機類による負荷補正や走行補正を加算項として加え、プライマリプーリ回転数(トランスミッション入力軸回転数)の上昇と共にAT車トルコン補正量によりISC弁12の開度を減量補正することで、減速時にISC弁12の開度が大きくなり過ぎることを防止し、減速時の吸気管負圧を確保する。
【0039】
次に、以上のAT車トルコン補正量ITCを設定する図5のAT車トルコン補正量設定ルーチンについて説明する。このルーチンは、所定時間毎(例えば、10msec毎)に実行され、先ず、ステップS201で、インヒビタスイッチ46の信号に基づいて現在の変速位置がニュートラルであるか否かを調べる。
【0040】
そして、変速位置がニュートラルである場合には、ステップS201からステップS202へ進んでAT車トルコン補正量ITCを0にクリアして(ITC←0)ルーチンを抜け、変速位置がニュートラルでない場合、ステップS201からステップS203へ進み、エアコンスイッチ44の信号からエアコンがOFFか否かを調べる。その結果、エアコンOFFの場合には、ステップS204以降でエアコンOFF(エアコンディショナー停止時)に対応するAT車トルコン補正量ITCを設定する処理を行ない、エアコンONの場合、ステップS207以降でエアコンON(エアコンディショナー作動時)に対応するAT車トルコン補正量ITCを設定する処理を行なう。
【0041】
すなわち、エアコンON時には、エアコンコンプレッサ駆動に伴うエンジン負荷を補償するため、負荷補正量ILDによりISC弁12の開度を増加させてバイパス空気量を増量し、車両走行時を含むスロットル弁10全閉時のエンジン回転数を高める補正がなされる。このため、吸気管負圧の確保を目的としてバイパス空気量を減少させるためのAT車トルコン補正量ITCをエアコンOFFの状態を基準として設定すると、エアコンON時において、エンジン回転数の低下が過大となってエアコンコンプレッサ駆動に伴うエンジン負荷を補償できなくなり、運転フィーリングが悪化する虞がある。従って、エアコンON時とエアコンOFF時とに対応して個別にAT車トルコン補正量ITCを設定することにより、エアコンのON,OFFに拘らず的確に吸気管負圧を確保すると共にエンストを防止し、且つエアコンON時とエアコンOFF時の運転フィーリングの相違を解消してドライバビリティを向上する。
【0042】
先ず、ステップS204以降のエアコンOFF時におけるAT車トルコン補正量ITCの設定処理について説明する。ステップS204では、プライマリプーリ回転数ZMBMWNPFをパラメータとしてテーブルTITCOFを補間計算付きで参照し、AT車トルコン補正量ITCを設定する。テーブルTITCOFには、予めシミュレーション或いは実験等により、エアコンOFF時にプライマリプーリ回転数ZMBMWNPFをパラメータとして求めた適正な補正量がテーブル値ITCOFとして格納されており、テーブル値ITCOFを補間計算してAT車トルコン補正量ITCを設定する。
【0043】
すなわち、トルクコンバータ23の攪拌抵抗によるエンジン負荷は、車両走行時のスロットル弁10が全閉の状態では、トルクコンバータ23の入出力軸回転数の速度比(トルクコンバータ出力軸回転数/トルクコンバータ入力軸回転数=トランスミッション入力軸回転数/エンジン回転数)に反比例する(図6参照)。このため、速度比をパラメータとしてAT車トルコン補正量ITCを設定することも考えられるが、ロックアップクラッチ22によりトルクコンバータ23がロックアップ中のときには、一義的に速度比が1.0となり、AT車トルコン補正量ITCを適切に設定することができない。従って、速度比のパラメータであるトランスミッション入力軸回転数すなわちプライマリプーリ回転数ZMBMWNPFをAT車トルコン補正量ITCを設定する際のパラメータとして採用し、AT車トルコン補正量ITCを的確に設定する。
【0044】
この場合、クリープ車速領域以下(例えば、ZMBMWNPF≦400rpm)では、ITC=0としてAT車トルコン補正量ITCによる補正無しの状態とする。すなわち、クリープ車速領域以下は、車両停止ないしクリープ走行状態時であり、スロットル弁10全閉時の吸気管負圧の不足ないし吸気管負圧の不足による影響を無視できるため、ITC=0としてAT車トルコン補正量ITCによる補正無しの状態とする。
【0045】
また、クリープ車速を越えた領域においては、プライマリプーリ回転数ZMBMWNPFの上昇に応じてAT車トルコン補正量ITCを漸次的に増加させ、プライマリプーリ回転数ZMBMWNPFが所定回転数(例えば、1600rpm)以上の領域において、AT車トルコンITCを一定値に収束させる。すなわち、プライマリプーリ回転数ZMBMWNPFが所定回転数以上の領域では、エンジン回転数が比較的高回転にあるため、AT車トルコン補正量ITCを増加させても吸気管負圧はさほど変化しない。このため、クリープ車速を越えた領域でプライマリプーリ回転数ZMBMWNPFが所定回転数に達するまではAT車トルコン補正量ITCを漸次的に増加させ、プライマリプーリ回転数ZMBMWNPFが所定回転数以上の領域でAT車トルコン補正量ITCを一定値に収束させることで、クリープ車速領域からの繋がりをスムーズにし、吸気管負圧を確保すると共にAT車トルコン補正量ITCの急変を防止して制御性の向上及びドライバビリティの向上を図る。
【0046】
次に、ステップS205へ進み、車速ZMBSWNVをパラメータとしてテーブルTITCGDVを補間計算付きで参照し、AT車トルコン補正量ITCを車速に応じて規制するための車速補正上限規制値ITCGDVを設定する。すなわち、本実施の形態においては、通常のDレンジの他に、より減速比の大きいDsレンジが設けられており、このDsレンジでは、同一車速の場合、通常のDレンジに比較してトランスミッション入力軸回転数であるプライマリプーリ回転数ZMBMWNPFが高くなり、ISC弁12の制御量QISCを設定する際にマイナス項として与えるAT車トルコン補正量ITCが増加する。従って、Dsレンジでは、Dレンジよりも相対的にISC弁12の開度が減少し、ブレーキによる減速時にエンジン回転数の低下が速くなり、エンジン回転数落ちによりエンストを生じる虞がある。このため、プライマリプーリ回転数ZMBMWNPFをパラメータとして設定されるAT車トルコン補正量ITCを、車速ZMBSWNVをパラメータとして設定される車速補正上限規制値ITCGDVで規制することにより、Dsレンジでの過補正を防止してエンストを防止する。この場合、エアコンON時とエアコンOFF時とでは、適正な上限規制値が異なるため、テーブルTITCGDVには、予めシミュレーション或いは実験等により、エアコンOFF時に対応して車速ZMBSWNVをパラメータとして求めた適正な規制値が格納されている。
【0047】
続くステップS206では、冷却水温TWをパラメータとしてテーブルTITCGDWを補間計算付きで参照し、AT車トルコン補正量ITCをエンジン温度に応じて規制するための水温補正上限規制値ITCGDWを設定する。周知のように、エンジン温度すなわちエンジン冷却水温が低い程、エンジンオイルの粘性等の影響に起因してエンジンのフリクションが大きくなるため、これに対応して冷却水温が低い程、基本特性値としての水温補正量ITWが増加設定され、ISC弁12の開度が大きくされてパイパス空気量が増量され、アイドル回転数の低下が補償される。従って、この水温補正量ITWをベースとする制御量QISCからAT車トルコン補正量ITCによって減少される補正量を規制するため、冷却水温による水温補正上限値ITCGDWを設定する。この場合においても、エアコンON時とエアコンOFF時とでは、適正な上限規制値が異なるため、テーブルTITCGDWには、予めシミュレーション或いは実験等により、エアコンOFF時に対応して冷却水温TWをパラメータとして求めた適正な規制値が格納されている。
【0048】
一方、エアコンON時のステップS207以降の処理では、ステップS207で、プライマリプーリ回転数ZMBMWNPFをパラメータとしてテーブルTITCOFACを補間計算付きで参照し、AT車トルコン補正量ITCを設定する。テーブルTITCOFACには、予めシミュレーション或いは実験等により、エアコンON時に対応してプライマリプーリ回転数ZMBMWNPFをパラメータとして求めた適正な補正量がテーブル値ITCOFACとして格納されており、前述のエアコンOFFに対応するテーブルTITCOFに対し、エアコンONによるエンジン負荷の増加を加味した特性とされている。
【0049】
次に、ステップS208へ進み、車速ZMBSWNVをパラメータとしてテーブルTITCGDVAを補間計算付きで参照し、車速補正上限規制値ITCGDVを設定する。テーブルTITCGDVAには、予めシミュレーション或いは実験等により、エアコンON時に対応して車速ZMBSWNVをパラメータとして求めた適正な規制値が格納されており、前述のエアコンOFFに対応するテーブルTITCGDVに対し、エアコンONによるエンジン負荷の増加を加味した特性とされている。
【0050】
続くステップS209では、冷却水温TWをパラメータとしてテーブルTITCGDWAを補間計算付きで参照し、水温補正上限規制値ITCGDWを設定する。テーブルTITCGDWAには、予めシミュレーション或いは実験等により、エアコンON時に対応して冷却水温TWをパラメータとして求めた適正な規制値が格納されている。この場合、本実施の形態においては、エンジン1は自然吸気式エンジンであり、水温の相違による耐エンスト性が高いため、冷却水温TWの相違、及びエアコンのON,OFFの相違に拘らず、水温補正上限値ITCGDWを一義的な値により設定することが可能である。しかしながら、エンジンの特性は、エンジン型式等の相違により異なり、特に、過給機付きエンジンではアイドル時において、冷却水温TWの相違やエアコンのON,OFFの相違がシビアに影響するため、エアコンのON,OFFに対応して個別に水温補正上限規制値ITCGDWを設定することが望ましい。
【0051】
以上により、AT車トルコン補正量ITC、車速補正上限規制値ITCGDV、水温補正上限規制値ITCGDWを設定した後、ステップS206或いはステップS209からステップS210以降へ進み、車速補正上限規制値ITCGDVと水温補正上限規制値ITCGDWとのうち、低い方の値を上限値としてAT車トルコン補正量ITCの上限規制を行なう。すなわち、ステップS210で、車速補正上限規制値ITCGDVと水温補正上限規制値ITCGDWとを比較し、ITCGDV≦ITCGDWの場合、ステップS211で、車速補正上限規制値ITCGDVを上限値ITCGDとして(ITCGD←ITCGDV)ステップS213へ進み、ITCGDV>ITCGDWの場合、ステップS212で、水温補正上限規制値ITCGDWを上限値ITCGDとして(ITCGD←ITCGDW)ステップS213へ進む。
【0052】
ステップS213では、AT車トルコン補正量ITCと上限値ITCGDとを比較する。そして、ITC≦ITCGDの場合には、そのままルーチンを抜け、ITC>ITCGDの場合、ステップS214で、AT車トルコン補正量ITCを上限値ITCGDに制限して上限規制し(ITC←ITCGD)、ルーチンを抜ける。すなわち、車速補正上限規制値ITCGDVと水温補正上限規制値ITCGDWとのうち、規制の厳しい方を採用することで、確実にAT車トルコン補正量ITCによる過補正を防止し、エンストを解消すると共にドライバビリティの更なる向上を図る。
【0053】
図7は、エアコン作動時において、AT車トルコン補正量ITCによるISC弁12の制御量に対する減量補正の実施結果を示す例であり、図中実線の補正無しに対し、AT車トルコン補正量ITCによる補正を採用することで破線で示すように、低中車速域での吸気管負圧を適正化して減速時の適切なエンジンブレーキ感を得ると共に、ブレーキングの際に十分なブレーキブースタ8のアシスト力を得ることができる。また、減速中のエンジンの吸入空気量を適切な値まで減量できるため、燃料カットから復帰したときのトルク発生量を抑え、燃料リカバー時のショックを軽減することできる。
【0054】
【発明の効果】
以上説明したように本発明によれば、走行時のアイドル制御弁の開度を適正化して減速時の吸気管負圧を確保することができ、減速時の適切なエンジンブレーキ感を得ると共に、ブレーキングの際に十分なブレーキアシスト力を得ることができる。また、減速中のエンジンの吸入空気量を適切な値まで減量できるため、燃料カットから復帰したときのトルク発生量を抑え、燃料リカバー時のショックを軽減することできる。
【図面の簡単な説明】
【図1】エンジン及び駆動系の概略図
【図2】電子制御系の回路構成図
【図3】ISC制御ルーチンのフローチャート
【図4】ISC制御弁に対する制御量の説明図
【図5】AT車トルコン補正量設定ルーチンのフローチャート
【図6】トルクコンバータ攪拌抵抗の変化を示す説明図
【図7】ISC流量減量による吸気管負圧の変化を示す説明図
【符号の説明】
1 エンジン
12 アイドル制御弁
23 トルクコンバータ
24 変速機
50 電子制御装置(トルクコンバータ補正量設定手段、開度制御手段)
QISC アイドル制御弁に対する制御量
ITC AT車トルコン補正量(トルクコンバータ補正量)

Claims (6)

  1. エンジンの出力軸にトルクコンバータを介して変速機を連設するエンジンのアイドル制御弁の制御装置であって、
    上記変速機の入力軸回転数に基づいて、上記トルクコンバータの攪拌抵抗によるエンジン負荷を考慮したトルクコンバータ補正量をエアコンデショナー作動時とエアコンデショナー停止時とに対応して別個に設定するトルクコンバータ補正量設定手段と、
    上記アイドル制御弁に対する制御量を上記トルクコンバータ補正量を用いて上記アイドル制御弁の開度を減少させる方向に補正し、上記アイドル制御弁の開度を制御する開度制御手段とを備えたことを特徴とするエンジンのアイドル制御弁の制御装置。
  2. 上記トルクコンバータ補正量設定手段は、
    クリープ車速領域以下では、上記トルクコンバータ補正量を補正無しに対応する値とし、
    クリープ車速を越えた領域では、上記トルクコンバータ補正量を上記変速機の入力軸回転数の上昇に応じて増加させ、
    上記変速機の入力軸回転数が設定回転数以上の領域では、上記トルクコンバータ補正量を一定値に収束させることを特徴とする請求項1記載のエンジンのアイドル制御弁の制御装置。
  3. 上記トルクコンバータ補正量設定手段は、
    上記トルクコンバータ補正量を、車速に基づいて設定した規制値で上限規制することを特徴とする請求項1又は請求項2記載のエンジンのアイドル制御弁の制御装置。
  4. 上記トルクコンバータ補正量設定手段は、
    上記トルクコンバータ補正量を、エンジン温度に基づいて設定した規制値で上限規制することを特徴とする請求項1又は請求項2記載のエンジンのアイドル制御弁の制御装置。
  5. 上記トルクコンバータ補正量設定手段は、
    上記トルクコンバータ補正量を、車速に基づいて設定した規制値とエンジン温度に基づいて設定した規制値とのうちの小さい方の規制値で上限規制することを特徴とする請求項1又は請求項2記載のエンジンのアイドル制御弁の制御装置。
  6. 上記トルクコンバータ補正量設定手段は、
    記トルクコンバータ補正量を上限規制するための規制値を、エアコンデショナー作動時とエアコンデショナー停止時とに対応して別個に設定することを特徴とする請求項1,2,3,4,5のいずれか一に記載のエンジンのアイドル制御弁の制御装置。
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