JP4407589B2 - 内燃機関の冷却装置 - Google Patents
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Description
特許文献2の冷却装置では、基準温度を車速に基づいて補正することにより、冷却水温度に対する走行風の影響を基準温度に反映させるようにしている。
(1)請求項1に記載の発明は、ラジエータへの冷却水の供給量を調整するサーモスタットと、前記冷却水の温度を検出する冷却水温度検出手段と、前記冷却水の温度に相当する基準温度を車速に基づいて推定する基準温度推定手段と、前記冷却水温度検出手段を通じて検出された前記冷却水の温度を検出温度として、診断条件が成立したときに前記検出温度と前記基準温度との比較に基づいて前記サーモスタットの作動状態を診断する診断手段とを備える内燃機関の冷却装置において、車両の降坂走行に起因して前記基準温度が正確に推定されていない旨判定したときに前記作動状態の診断を禁止することを要旨としている。
(4)請求項4に記載の発明は、請求項2または3に記載の内燃機関の冷却装置において、車両が降坂走行状態にあるときに前記演算値をその初期値から離間する方向に更新し、車両が一般走行状態にあるときに前記演算値を前記初期値に近接する方向に更新することを要旨としている。
(5)請求項5に記載の発明は、請求項4に記載の内燃機関の冷却装置において、前記診断条件が成立した時点での前記演算値が前記判定値に対して前記初期値とは反対側にあるとき、前記作動状態の診断を禁止することを要旨としている。
(12)請求項12に記載の発明は、請求項10または11に記載の内燃機関の冷却装置において、前記補正手段は、車両が降坂走行状態にあるときに前記演算値をその初期値から離間する方向に更新し、車両が一般走行状態にあるときに前記演算値を前記初期値に近接する方向に更新することを要旨としている。
(13)請求項13に記載の発明は、請求項12に記載の内燃機関の冷却装置において、前記補正手段は、前記診断条件が成立した時点での前記演算値が前記判定値に対して前記初期値とは反対側にあるとき、前記基準温度を補正することを要旨としている。
(15)請求項15に記載の発明は、請求項14に記載の内燃機関の冷却装置において、前記補正手段は、前記条件成立時間に対する前記降坂走行時間の割合が増加するにつれて前記基準温度の補正度合いを大きくすることを要旨としている。
(17)請求項17に記載の発明は、請求項16に記載の内燃機関の冷却装置において、前記補正手段は、前記一般走行時間に対する前記降坂走行時間の割合が増加するにつれて前記基準温度の補正度合いを大きくすることを要旨としている。
(19)請求項19に記載の発明は、請求項18に記載の内燃機関の冷却装置において、前記補正手段は、前記条件成立時間に対する前記特定状態時間の割合が増加するにつれて前記基準温度の補正度合いを大きくすることを要旨としている。
(21)請求項21に記載の発明は、請求項1〜20のいずれか一項に記載の内燃機関の冷却装置において、前記基準温度推定手段は、前記サーモスタットに異常が生じていないことを前提として前記基準温度を推定することを要旨としている。
・上述のように、冷却水温度に対する走行風の影響度合いは、車両の走行状態が降坂走行状態にある場合とそれ以外の走行状態にある場合とで大きく異なる。したがって、基準温度の算出に際して、車速が考慮されている一方で車両の降坂走行状態が考慮されていない場合には、基準温度に対して走行風の影響が十分に反映されない。そして、診断条件の成立までに降坂走行状態が比較的長い期間にわたってなされた場合には、算出された基準温度と本来の基準温度との乖離が許容できないほどに大きくなる。
そして、こうしたことを考慮のうえ、上記(1)または(2)または(6)の発明では作動状態の診断を禁止するようにしているため、また上記(9)または(10)または(14)の発明では、基準温度を補正するようにしているため、サーモスタットの異常を誤って検出することが抑制されるようになる。これにより、サーモスタットの異常の検出精度を向上させることができるようになる。
そして、こうしたことを考慮のうえ、上記(7)の発明では作動状態の診断を禁止するようにしているため、また上記(16)の発明では基準温度を補正するようにしているため、サーモスタットの異常を誤って検出することが抑制されるようになる。これにより、サーモスタットの異常の検出精度を向上させることができるようになる。
そして、こうしたことを考慮のうえ、上記(8)の発明では作動状態の診断を禁止するようにしているため、また上記(18)の発明では基準温度を補正するようにしているため、サーモスタットの異常を誤って検出することが抑制されるようになる。これにより、サーモスタットの異常の検出精度を向上させることができるようになる。
本発明の第1実施形態について、図1〜図11を参照して説明する。
本実施形態では、燃焼室へ燃料を直接するエンジンの冷却装置に対して本発明が適用された場合を想定している。
図1に、本発明が適用された車両について、エンジン周辺の構成を示す。
車両1は、エンジン2のクランクシャフト21によるホイール11の回転を通じて走行する。
車両1のキャビン13には、車両1やエンジン2の状態を表示するインジケーターパネル14が備えられている。
図2に、エンジン2の全体構成を示す。
エンジン本体3は、シリンダブロック4とシリンダヘッド5とを備えて構成されている。また、エンジン本体3には、シリンダブロック4及びシリンダヘッド5へ冷却水31を供給するための通路(本体冷却水通路32)が形成されている。
ウォーターポンプ62は、クランクシャフト21を通じて駆動される。また、冷却装置6内の冷却水31を吸引して加圧した後、本体冷却水通路32へ冷却水31を吐出する。
シリンダ41の周囲には、ウォータージャケット42が形成されている。ウォータージャケット42は、本体冷却水通路32の一部として形成されている。
ピストン43は、コネクティングロッド45を介してクランクシャフト21と連結されている。
インテークポート51には、外部の空気を燃焼室44へ向けて流通させるインテークパイプ53が接続されている。
インテークパイプ53には、エアクリーナ57が設けられている。また、エアクリーナ57の下流側且つエアクリーナ57の近傍には、センサユニット58が設けられている。
エンジン2は、電子制御装置9を通じて統括的に制御される。
図3に、冷却装置6の構成を示す。
冷却装置6は、サーモスタット61、ウォーターポンプ62及びラジエータ63を備えて構成されている。
・第1冷却水出口61Bは、サーモスタットバルブ61Vの開閉状態に応じて開放または閉鎖される。
・第2冷却水出口61Cは、サーモスタットバルブ61Vの開閉状態にかかわらず常に開放される。
[A]エンジン本体3の本体冷却水通路32とサーモスタット61の冷却水入口61Aとは、第1冷却水供給管71により接続されている。すなわち、本体冷却水通路32から流出した冷却水31は、第1冷却水供給管71内の通路(第1冷却水通路71R)を介してサーモスタット61内へ流入する。
(A)第1循環回路は、本体冷却水通路32、第1冷却水通路71R、第2冷却水通路72R、第3冷却水通路73R及び第5冷却水通路75Rにより形成されている。第1循環回路においては、冷却水31がラジエータ63を介してエンジン本体3と冷却装置6との間で循環する。
図4及び図5を参照して、冷却水31の循環態様について説明する。なお、図4及び図5において、実線の冷却水通路は冷却水の流れが形成される通路を、破線の冷却水通路は冷却水の流れが形成されない通路をそれぞれ示す。
図4に、冷却水31の第1循環態様を示す。
エンジン2においては、冷却水31の温度が開弁温度THWT以上のときにサーモスタットバルブ61Vが開弁するため、冷却水循環回路の第1循環回路及び第2循環回路が開放された状態となる。これにより、冷却水31が第1循環回路及び第2循環回路を通じて循環するようになる。
図5に、冷却水31の第2循環態様を示す。
エンジン2においては、冷却水31の温度が開弁温度THWT未満のときにサーモスタットバルブ61Vが閉弁するため、冷却水循環回路の第1循環回路が閉鎖される一方で第2循環回路が開放された状態となる。これにより、冷却水31が第2循環回路のみを通じて循環するようになる。
サーモスタット61においては、サーモスタットバルブ61Vが開弁した状態で作動しなくなる現象(開弁固着)が生じることもある。この開弁固着が生じている状態では、冷却水31の温度にかかわらず第1循環回路が開放された状態で保持されるため、冷却水31が常にラジエータ63を介して循環するようになる。したがって、サーモスタット61の開弁固着が生じている場合には、サーモスタット61の異常が生じていないときに比べて冷却水31の温度が上昇しにくくなる。これにより、例えば冷却水31の温度が過度に低くなることに起因してエミッションの悪化等をまねくようになる。
図6に、サーモスタット61の正常時及び異常時における冷却水31の温度の推移を示す。なお、図6における各時刻tは、それぞれ次のタイミングを示す。
・時刻t61:エンジン2の運転が開始されたとき。
・時刻t62:サーモスタット61の正常時において冷却水31の温度が開弁温度THWTに到達したとき。
(A)サーモスタット61の作動状態が正常であるとの前提のもとで、冷却水31の温度に影響をおよぼすパラメータに基づいて冷却水31の温度変化を模擬する。なお、本実施形態においては、こうして模擬された冷却水31の温度を冷却水温度模擬値THWEとしている。
本実施形態では、エンジン2の運転中において、次のように冷却水温度模擬値THWEの更新を行うようにしている。
[1]所定の演算周期毎に冷却水温度模擬値THWEの変化量(模擬水温変化量△THWE)、すなわちサーモスタット61の正常時における冷却水31の温度変化量に相当する値を算出する。
[2]上記模擬水温変化量△THWEを冷却水温度模擬値THWEに反映させることにより、冷却水温度模擬値THWEをそのときの運転状態等に適合した値へ更新する。
本実施形態では、冷却水31の温度変化に影響をおよぼすパラメータとして以下の(A)〜(C)の各パラメータを採用している。そして、各パラメータと模擬水温変化量△THWEとの関係を予め適合することにより、車両1の走行状態及びエンジン2の運転状態に応じて適切な模擬水温変化量△THWEを算出することができるようにしている。
本実施形態のエンジン2においては、サーモスタット61の作動状態を診断するための処理として「作動状態診断処理」を実行するようにしている。「作動状態診断処理」は、電子制御装置9を通じて所定の演算周期毎に繰り返し実行される。
[ステップS100]冷却水温度模擬値THWEの更新を行うための「模擬水温更新処理(図8)」を開始する。「模擬水温更新処理」の終了後、ステップS200の処理へ移行する。
・いずれかのフラグがオンにされているとき、ステップS310の処理へ移行する。
・いずれのフラグもオンにされていないとき、ステップS320の処理へ移行する。
・異常診断フラグFAがオンにされているとき、ステップS312の処理へ移行する。
・正常診断フラグFBがオンにされているとき、ステップS314の処理へ移行する。
[ステップS314]「作動状態診断処理」の終了を設定する。これにより、ステップS314の処理の終了ととも「作動状態診断処理」が終了される。
・診断保留フラグFCがオンにされているとき、ステップS314の処理へ移行する。
・診断保留フラグFCがオフにされているとき、本処理を一旦終了する。
図8〜図10を参照して、「模擬水温更新処理」の処理手順について説明する。
[ステップS110]今回の演算周期がエンジン2の始動後における最初の演算周期か否かを判定する。
・最初の演算周期のとき、ステップS112の処理へ移行する。
・最初の演算周期でないとき、ステップS114の処理へ移行する。
(a)今回の演算周期の吸気流量計測値GAM及び最大吸気流量GAmaxから算出した吸入空気率GAPをエンジン負荷LEとして設定する。
(b)今回の演算周期の車速計測値SPDMを車速SPDとして設定する。
(c)今回の演算周期の冷却水温度模擬値THWE及び最小吸気温度計測値THAMminから算出した対吸気温度差DfTHWBを対外気温度差DfTHWAとして設定する。
[式11]
THWE ← THWE + △THWE
なお、本実施形態においては、時間に対して冷却水温度模擬値THWEの推移をトレースした曲線(模擬水温曲線LCC)が、サーモスタット61の正常時における実際の冷却水温度THWの推移をトレースした曲線(正常水温曲線LCA)とサーモスタット61の異常時における実際の冷却水温度THWの推移をトレースした曲線(異常水温曲線LCB)との間に位置するように模擬水温変化量△THWEが適合されている。すなわち、模擬水温曲線LCCと正常水温曲線LCAと異常水温曲線LCBとの関係が、図6に示される関係となるように冷却水温度模擬値THWEの更新が行われる。このため、上記[式11]を通じて算出された冷却水温度模擬値THWEは、サーモスタット61の正常時における実際の冷却水温度THWとは異なった値を示す。
(a)エンジン負荷LEが判定値XLE未満(エンジン2が低負荷運転状態)。
(b)車速計測値SPDMが判定値XSPD以上(車速SPDが比較的大きい)。
・走行状態が降坂走行状態のとき、ステップS122の処理へ移行する。
・走行状態が一般走行状態のとき、ステップS124の処理へ移行する。
[式12]
Tcnt ← Tcnt + △T
上記[式12]において、右辺の「Tcnt」は、前回の演算周期において算出された降坂走行カウンタ値Tcntを示す。また、「△T」は、前回の演算周期と今回の演算周期との時間間隔を示す。なお、降坂走行カウンタ値Tcntの初期値は「0」に設定されている。
[式13]
Tcnt ← Tcnt − △T
上記[式13]において、右辺の「Tcnt」は、前回の演算周期において算出された降坂走行カウンタ値Tcntを示す。また、「△T」は、前回の演算周期と今回の演算周期との時間間隔を示す。なお、降坂走行カウンタ値Tcntが減算により「0」未満となる場合は、「0」に設定される。
・時刻t101:エンジン2の運転が開始されたとき。
・時刻t102:車両1の走行状態が一般走行状態から降坂走行状態へ変化したとき。
・時刻t103:車両1の走行状態が降坂走行状態から一般走行状態へ変化したとき。
・時刻t104:作動状態の診断を行うタイミングに達したとき。
(A)時刻t101から時刻t102までの期間においては、走行状態が一般走行状態であるため、降坂走行カウンタ値Tcntが初期値の「0」に保持される。
図11を参照して、「異常状態検出処理」の処理手順について説明する。
[ステップS210]サーモスタット61の作動状態の診断を行うタイミングに達したか否か(診断条件が成立したか否か)を判定する。すなわち、冷却水温度計測値THWM及び冷却水温度模擬値THWEのいずれかが診断温度THWDに達したか否かを判定する。なお、以降では、作動状態の診断タイミングにおける冷却水温度模擬値THWEを判定冷却水温度模擬値THWEfinとする。
・冷却水温度計測値THWM及び冷却水温度模擬値THWEのいずれかが診断温度THWDに達しているとき、ステップS220の処理へ移行する。
・冷却水温度計測値THWM及び冷却水温度模擬値THWEのいずれかもが診断温度THWDに達していないとき、本処理を一旦終了する。
(a)降坂走行カウンタ値Tcntが上限時間XT以上のとき、全走行時間Tallに対する降坂走行状態の時間の割合が上限値以上の状態に相当するため、作動状態の診断を正確に行うことができないと判断する。この判定結果が得られたときは、ステップS222の処理へ移行する。
(b)降坂走行カウンタ値Tcntが上限時間XT未満のとき、全走行時間Tallに対する降坂走行状態の時間の割合が上限値未満の状態に相当するため、作動状態の診断を正確に行うことができると判断する。この判定結果が得られたときは、ステップS230の処理へ移行する。
[ステップS230]冷却水温度模擬値THWEが冷却水温度計測値THWMよりも先に診断温度THWDへ到達したか否かを判定する。
・冷却水温度模擬値THWEが先に診断温度THWDへ到達しているとき、ステップS232の処理へ移行する。
・冷却水温度計測値THWMが先に診断温度THWDへ到達しているとき、ステップS234の処理へ移行する。
[ステップS234]正常診断フラグFBをオンにする。なお、ステップS222、ステップS232またはステップS234の処理を通じてオンにされたフラグは、ステップS314による「作動状態診断処理」の終了から次回の「作動状態診断処理」の開始まで間に初期化される(フラグがオフにされる)。
以上詳述したように、この実施形態にかかる内燃機関の冷却装置によれば、以下に示すような効果が得られるようになる。
なお、上記第1実施形態は、例えば以下に示すように変更して実施することもできる。
・上記第1実施形態では、診断タイミングにおいて降坂走行カウンタ値Tcntが上限時間XT以上のとき、作動状態の診断を保留するようにしたが、例えば次の[変更例1]または[変更例2]のように変更することもできる。なお、以下の変更例において、電子制御装置9は補正手段を含めて構成される。
本発明の第2実施形態について、図8、図11及び図12を参照して説明する。
前記第1実施形態では、降坂走行カウンタ値Tcntに基づいて作動状態の診断の実行または保留を選択するようにしている。これに対して、本実施形態では、エンジン2の始動から診断タイミングまでの降坂走行状態の積算時間(降坂走行積算時間TA)に基づいて作動状態の診断の実行または保留を選択するようにしている。
本実施形態の「作動状態診断処理」について、前記第1実施形態から変更された処理を以下に示す。
[ステップS120]車両1の走行状態が降坂走行状態か否かを判定する。
・走行状態が降坂走行状態のとき、ステップS122の処理へ移行する。
・走行状態が一般走行状態のとき、「模擬水温更新処理」を一旦終了する。すなわち、ステップS124の処理は省略される。
[式21]
TA ← TA + △T
上記[式21]において、右辺の「TA」は、前回の演算周期において算出された降坂走行積算時間TAを示す。また、「△T」は、前回の演算周期と今回の演算周期との時間間隔を示す。なお、降坂走行積算時間TAの初期値は「0」に設定されている。
[ステップS210]サーモスタット61の作動状態の診断を行うタイミングに達したか否か(診断条件が成立したか否か)を判定する。
・冷却水温度計測値THWM及び冷却水温度模擬値THWEのいずれかが診断温度THWDに達しているとき、ステップS212の処理へ移行する。
・冷却水温度計測値THWM及び冷却水温度模擬値THWEのいずれかもが診断温度THWDに達していないとき、「異常状態検出処理」を一旦終了する。
[式22]
TP ← TA/Tall
なお、降坂走行割合TPの算出後はステップS220の処理へ移行する。
(a)降坂走行割合TPが上限割合XTP以上のとき、作動状態の診断を正確に行うことができないと判断する。この判定結果が得られたときは、ステップS222の処理へ移行する。
(b)降坂走行割合TPが上限割合XTP未満のとき、作動状態の診断を正確に行うことができると判断する。この判定結果が得られたときは、ステップS230の処理へ移行する。
図12を参照して、降坂走行積算時間TAの更新態様の一例について説明する。図12の各時刻tは、それぞれ次のタイミングを示す。
・時刻t121:エンジン2の運転が開始されたとき。
・時刻t122:車両1の走行状態が一般走行状態から降坂走行状態へ変化したとき。
・時刻t123:車両1の走行状態が降坂走行状態から一般走行状態へ変化したとき。
・時刻t124:作動状態の診断を行うタイミングに達したとき。
(A)時刻t121から時刻t122までの期間においては、走行状態が一般走行状態であるため、降坂走行積算時間TAが初期値の「0」に保持される。
以上詳述したように、この第2実施形態にかかる内燃機関の冷却装置によれば、先の第1実施形態による前記(1)の効果と同様の効果が得られるようになる。
なお、上記第2実施形態は、例えば以下に示すように変更して実施することもできる。
・上記第2実施形態では、診断タイミングにおいて降坂走行割合TPが上限割合XTP以上のとき、作動状態の診断を保留するようにしたが、例えば次の[変更例]のように変更することもできる。なお、以下の変更例において、電子制御装置9は補正手段を含めて構成される。
本発明の第3実施形態について、図8、図11及び図13を参照して説明する。
前記第1実施形態では、降坂走行カウンタ値Tcntに基づいて作動状態の診断の実行または保留を選択するようにしている。これに対して、本実施形態では、エンジン2の始動から診断タイミングまでの降坂走行状態の積算時間(降坂走行積算時間TA)と一般走行状態の積算時間(一般走行積算時間TB)とに基づいて、作動状態の診断の実行または保留を選択するようにしている。
本実施形態の「作動状態診断処理」について、前記第1実施形態から変更及び追加された処理を以下に示す。
[ステップS122]降坂走行積算時間TAを前回の演算周期からの経過時間に応じた値だけ増加させる。すなわち、下記[式31]を通じて降坂走行積算時間TAの更新を行う。
[式31]
TA ← TA + △T
上記[式31]において、右辺の「TA」は、今回の演算周期以前において算出された最新の降坂走行積算時間TAを示す。また、「△T」は、前回の演算周期と今回の演算周期との時間間隔を示す。なお、降坂走行積算時間TAの初期値は、「0」に設定されている。
[式32]
TB ← TB + △T
上記[式32]において、右辺の「TB」は、今回の演算周期以前において算出された最新の一般走行積算時間TBを示す。また、「△T」は、前回の演算周期と今回の演算周期との時間間隔を示す。なお、一般走行積算時間TBの初期値は、「0」に設定されている。
[ステップS210]サーモスタット61の作動状態の診断を行うタイミングに達したか否か(診断条件が成立したか否か)を判定する。
・冷却水温度計測値THWM及び冷却水温度模擬値THWEのいずれかが診断温度THWDに達しているとき、ステップS212の処理へ移行する。
・冷却水温度計測値THWM及び冷却水温度模擬値THWEのいずれかもが診断温度THWDに達していないとき、「異常状態検出処理」を一旦終了する。
[式33]
TR ← TA/TB
なお、降坂走行比率TRの算出後はステップS220の処理へ移行する。
(a)降坂走行比率TRが上限比率XTR以上のとき、作動状態の診断を正確に行うことができないと判断する。この判定結果が得られたときは、ステップS222の処理へ移行する。
(b)降坂走行比率TRが上限比率XTR未満のとき、作動状態の診断を正確に行うことができると判断する。この判定結果が得られたときは、ステップS230の処理へ移行する。
図13を参照して、降坂走行積算時間TA及び一般走行積算時間TBの更新態様の一例について説明する。図13の各時刻tは、それぞれ次のタイミングを示す。
・時刻t131:エンジン2の運転が開始されたとき。
・時刻t132:車両1の走行状態が一般走行状態から降坂走行状態へ変化したとき。
・時刻t133:車両1の走行状態が降坂走行状態から一般走行状態へ変化したとき。
・時刻t134:作動状態の診断を行うタイミングに達したとき。
(A)時刻t131から時刻t132までの期間においては、走行状態が一般走行状態であるため、一般走行積算時間TBが初期値の「0」から積算時間TB1まで増加する。一方で、降坂走行積算時間TAが初期値の「0」に保持される。
以上詳述したように、この第3実施形態にかかる内燃機関の冷却装置によれば、先の第3実施形態による前記(1)の効果と同様の効果が得られるようになる。
なお、上記第3実施形態は、例えば以下に示すように変更して実施することもできる。
・上記第3実施形態では、診断タイミングにおいて降坂走行比率TRが上限比率XTR以上のとき、作動状態の診断を保留するようにしたが、例えば次の[変更例]のように変更することもできる。なお、以下の変更例において、電子制御装置9は補正手段を含めて構成される。
その他、上記各実施形態に共通して変更することができる要素を以下に示す。
・上記各実施形態では、降坂走行条件としてステップS120の(a)及び(b)の条件を採用したが、降坂走行条件は例示した条件に限られず適宜変更することができる。また、センサを通じて降坂走行状態を検出することもできる。
2…エンジン、21…クランクシャフト。
4…シリンダブロック、41…シリンダ、42…ウォータージャケット、43…ピストン、44…燃焼室、45…コネクティングロッド。
Claims (21)
- ラジエータへの冷却水の供給量を調整するサーモスタットと、
前記冷却水の温度を検出する冷却水温度検出手段と、
前記冷却水の温度に相当する基準温度を車速に基づいて推定する基準温度推定手段と、
前記冷却水温度検出手段を通じて検出された前記冷却水の温度を検出温度として、診断条件が成立したときに前記検出温度と前記基準温度との比較に基づいて前記サーモスタットの作動状態を診断する診断手段とを備える内燃機関の冷却装置において、
車両の降坂走行に起因して前記基準温度が正確に推定されていない旨判定したときに前記作動状態の診断を禁止する
ことを特徴とする内燃機関の冷却装置。 - ラジエータへの冷却水の供給量を調整するサーモスタットと、
前記冷却水の温度を検出する冷却水温度検出手段と、
前記冷却水の温度に相当する基準温度を車速に基づいて推定する基準温度推定手段と、
前記冷却水温度検出手段を通じて検出された前記冷却水の温度を検出温度として、診断条件が成立したときに前記検出温度と前記基準温度との比較に基づいて前記サーモスタットの作動状態を診断する診断手段とを備える内燃機関の冷却装置において、
車両の走行状態が降坂走行状態にあるか同走行状態以外の走行状態である一般走行状態にあるかに応じて所定の演算値を更新し、この演算値と判定値との比較結果に基づいて前記作動状態の診断を禁止する必要があるか否かを判定する
ことを特徴とする内燃機関の冷却装置。 - 請求項2に記載の内燃機関の冷却装置において、
前記演算値と前記判定値との比較結果として、前記診断条件が成立するまでに冷却水の温度に及ぼされた車両の降坂走行にともなう走行風の影響が許容範囲を超えることを示す結果が得られるとき、前記作動状態の診断を禁止する
ことを特徴とする内燃機関の冷却装置。 - 請求項2または3に記載の内燃機関の冷却装置において、
車両が降坂走行状態にあるときに前記演算値をその初期値から離間する方向に更新し、車両が一般走行状態にあるときに前記演算値を前記初期値に近接する方向に更新する
ことを特徴とする内燃機関の冷却装置。 - 請求項4に記載の内燃機関の冷却装置において、
前記診断条件が成立した時点での前記演算値が前記判定値に対して前記初期値とは反対側にあるとき、前記作動状態の診断を禁止する
ことを特徴とする内燃機関の冷却装置。 - ラジエータへの冷却水の供給量を調整するサーモスタットと、
前記冷却水の温度を検出する冷却水温度検出手段と、
前記冷却水の温度に相当する基準温度を車速に基づいて推定する基準温度推定手段と、
前記冷却水温度検出手段を通じて検出された前記冷却水の温度を検出温度として、診断条件が成立したときに前記検出温度と前記基準温度との比較に基づいて前記サーモスタットの作動状態を診断する診断手段とを備える内燃機関の冷却装置において、
車両の降坂走行がなされた時間を降坂走行時間とし、内燃機関の始動から前記診断条件が成立するまでの時間を条件成立時間として、この条件成立時間に対する前記降坂走行時間の割合が判定値以上のとき、前記作動状態の診断を禁止する
ことを特徴とする内燃機関の冷却装置。 - ラジエータへの冷却水の供給量を調整するサーモスタットと、
前記冷却水の温度を検出する冷却水温度検出手段と、
前記冷却水の温度に相当する基準温度を車速に基づいて推定する基準温度推定手段と、
前記冷却水温度検出手段を通じて検出された前記冷却水の温度を検出温度として、診断条件が成立したときに前記検出温度と前記基準温度との比較に基づいて前記サーモスタットの作動状態を診断する診断手段とを備える内燃機関の冷却装置において、
車両の降坂走行がなされた時間を降坂走行時間とし、車両の降坂走行状態以外の走行状態である一般走行がなされた時間を一般走行時間として、この一般走行時間に対する前記降坂走行時間の割合が判定値以上のとき、前記作動状態の診断を禁止する
ことを特徴とする内燃機関の冷却装置。 - ラジエータへの冷却水の供給量を調整するサーモスタットと、
前記冷却水の温度を検出する冷却水温度検出手段と、
前記冷却水の温度に相当する基準温度を車速に基づいて推定する基準温度推定手段と、
前記冷却水温度検出手段を通じて検出された前記冷却水の温度を検出温度として、診断条件が成立したときに前記検出温度と前記基準温度との比較に基づいて前記サーモスタットの作動状態を診断する診断手段とを備える内燃機関の冷却装置において、
車両の速度が基準車速以上且つ内燃機関の負荷が基準負荷未満の状態を特定状態とし、この特定状態がなされた時間を特定状態時間とし、前記内燃機関の始動から前記診断条件が成立するまでの時間を条件成立時間として、この条件成立時間に対する前記特定状態時間の割合が判定値以上のとき、前記作動状態の診断を禁止する
ことを特徴とする内燃機関の冷却装置。 - ラジエータへの冷却水の供給量を調整するサーモスタットと、
前記冷却水の温度を検出する冷却水温度検出手段と、
前記冷却水の温度に相当する基準温度を車速に基づいて推定する基準温度推定手段と、
前記冷却水温度検出手段を通じて検出された前記冷却水の温度を検出温度として、診断条件が成立したときに前記検出温度と前記基準温度との比較に基づいて前記サーモスタットの作動状態を診断する診断手段とを備える内燃機関の冷却装置において、
車両の降坂走行に起因して前記基準温度が正確に推定されていない旨判定したときに前記基準温度を補正する補正手段を備える
ことを特徴とする内燃機関の冷却装置。 - ラジエータへの冷却水の供給量を調整するサーモスタットと、
前記冷却水の温度を検出する冷却水温度検出手段と、
前記冷却水の温度に相当する基準温度を車速に基づいて推定する基準温度推定手段と、
前記冷却水温度検出手段を通じて検出された前記冷却水の温度を検出温度として、診断条件が成立したときに前記検出温度と前記基準温度との比較に基づいて前記サーモスタットの作動状態を診断する診断手段とを備える内燃機関の冷却装置において、
車両の走行状態が降坂走行状態にあるか同走行状態以外の走行状態である一般走行状態にあるかに応じて所定の演算値を更新し、この演算値と判定値との比較結果に基づいて前記基準温度を補正する必要があるか否かを判定する補正手段を備える
ことを特徴とする内燃機関の冷却装置。 - 請求項10に記載の内燃機関の冷却装置において、
前記補正手段は、前記演算値と前記判定値との比較結果として、前記診断条件が成立するまでに冷却水の温度に及ぼされた車両の降坂走行にともなう走行風の影響が許容範囲を超えることを示す結果が得られるとき、前記基準温度を補正する
ことを特徴とする内燃機関の冷却装置。 - 請求項10または11に記載の内燃機関の冷却装置において、
前記補正手段は、車両が降坂走行状態にあるときに前記演算値をその初期値から離間する方向に更新し、車両が一般走行状態にあるときに前記演算値を前記初期値に近接する方向に更新する
ことを特徴とする内燃機関の冷却装置。 - 請求項12に記載の内燃機関の冷却装置において、
前記補正手段は、前記診断条件が成立した時点での前記演算値が前記判定値に対して前記初期値とは反対側にあるとき、前記基準温度を補正する
ことを特徴とする内燃機関の冷却装置。 - ラジエータへの冷却水の供給量を調整するサーモスタットと、
前記冷却水の温度を検出する冷却水温度検出手段と、
前記冷却水の温度に相当する基準温度を車速に基づいて推定する基準温度推定手段と、
前記冷却水温度検出手段を通じて検出された前記冷却水の温度を検出温度として、診断条件が成立したときに前記検出温度と前記基準温度との比較に基づいて前記サーモスタットの作動状態を診断する診断手段とを備える内燃機関の冷却装置において、
車両の降坂走行がなされた時間を降坂走行時間とし、内燃機関の始動から前記診断条件が成立するまでの時間を条件成立時間として、この条件成立時間に対する前記降坂走行時間の割合が判定値以上のとき、前記基準温度を補正する補正手段を備える
ことを特徴とする内燃機関の冷却装置。 - 請求項14に記載の内燃機関の冷却装置において、
前記補正手段は、前記条件成立時間に対する前記降坂走行時間の割合が増加するにつれて前記基準温度の補正度合いを大きくする
ことを特徴とする内燃機関の冷却装置。 - ラジエータへの冷却水の供給量を調整するサーモスタットと、
前記冷却水の温度を検出する冷却水温度検出手段と、
前記冷却水の温度に相当する基準温度を少なくとも車速に基づいて推定する基準温度推定手段と、
前記冷却水温度検出手段を通じて検出された前記冷却水の温度を検出温度として、診断条件が成立したときに前記検出温度と前記基準温度との比較に基づいて前記サーモスタットの作動状態を診断する診断手段とを備える内燃機関の冷却装置において、
車両の降坂走行がなされた時間を降坂走行時間とし、車両の降坂走行状態以外の走行状態である一般走行がなされた時間を一般走行時間として、この一般走行時間に対する前記降坂走行時間の割合が判定値以上のとき、前記基準温度を補正する補正手段を備える
ことを特徴とする内燃機関の冷却装置。 - 請求項16に記載の内燃機関の冷却装置において、
前記補正手段は、前記一般走行時間に対する前記降坂走行時間の割合が増加するにつれて前記基準温度の補正度合いを大きくする
ことを特徴とする内燃機関の冷却装置。 - ラジエータへの冷却水の供給量を調整するサーモスタットと、
前記冷却水の温度を検出する冷却水温度検出手段と、
前記冷却水の温度に相当する基準温度を車速に基づいて推定する基準温度推定手段と、
前記冷却水温度検出手段を通じて検出された前記冷却水の温度を検出温度として、診断条件が成立したときに前記検出温度と前記基準温度との比較に基づいて前記サーモスタットの作動状態を診断する診断手段とを備える内燃機関の冷却装置において、
車両の速度が基準車速以上且つ内燃機関の負荷が基準負荷未満の状態を特定状態とし、この特定状態がなされた時間を特定状態時間とし、前記内燃機関の始動から前記診断条件が成立するまでの時間を条件成立時間として、この条件成立時間に対する前記特定状態時間の割合が判定値以上のとき、前記基準温度を補正する補正手段を備える
ことを特徴とする内燃機関の冷却装置。 - 請求項18に記載の内燃機関の冷却装置において、
前記補正手段は、前記条件成立時間に対する前記特定状態時間の割合が増加するにつれて前記基準温度の補正度合いを大きくする
ことを特徴とする内燃機関の冷却装置。 - 請求項15〜19のいずれか一項に記載の内燃機関の冷却装置において、
前記補正手段は、前記基準温度を小さくする方向へ補正する
ことを特徴とする内燃機関の冷却装置。 - 請求項1〜20のいずれか一項に記載の内燃機関の冷却装置において、
前記基準温度推定手段は、前記サーモスタットに異常が生じていないことを前提として前記基準温度を推定する
ことを特徴とする内燃機関の冷却装置。
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