Nothing Special   »   [go: up one dir, main page]

JP4404760B2 - 潤滑剤を内包のマイクロカプセルを含むねじ溝塗着用組成物と、その応用 - Google Patents

潤滑剤を内包のマイクロカプセルを含むねじ溝塗着用組成物と、その応用 Download PDF

Info

Publication number
JP4404760B2
JP4404760B2 JP2004380013A JP2004380013A JP4404760B2 JP 4404760 B2 JP4404760 B2 JP 4404760B2 JP 2004380013 A JP2004380013 A JP 2004380013A JP 2004380013 A JP2004380013 A JP 2004380013A JP 4404760 B2 JP4404760 B2 JP 4404760B2
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
solid
screw
semi
microcapsules
groove
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Expired - Fee Related
Application number
JP2004380013A
Other languages
English (en)
Other versions
JP2006183825A (ja
Inventor
正宏 兼子
芳計 高島
義行 三村
Original Assignee
株式会社ニッセイテクニカ
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by 株式会社ニッセイテクニカ filed Critical 株式会社ニッセイテクニカ
Priority to JP2004380013A priority Critical patent/JP4404760B2/ja
Publication of JP2006183825A publication Critical patent/JP2006183825A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP4404760B2 publication Critical patent/JP4404760B2/ja
Anticipated expiration legal-status Critical
Expired - Fee Related legal-status Critical Current

Links

Images

Landscapes

  • Application Of Or Painting With Fluid Materials (AREA)
  • Adhesives Or Adhesive Processes (AREA)

Description

本発明の第1の発明は、各種の装置でそれぞれの部材を組立てるのに用いられる雄ねじのねじ溝に塗着でき、しかも金属屑片を結着して取り込み、捕獲できる被覆層をねじ山のフランク面、溝谷底に形成することのできる塗着用の液状組成物に関する。詳しくは、この第一の発明は、電子回路を保有する電子機器などの各種の機器を含めて、各種の用途の装置を組立てるのに用いる構成要素を構成する、もしくは取付け用部品を構成する軽金属または軽合金製の比較的軟質な部材(ワークピースとも言う)について、部材(ワークピース)の2個を互いに結合する際に、もしくは部材に、取付け用の別の付属部品または他の取付け部品を取付けて固定する際に、結合の手段として雄ねじを用いる場合に、比較的軟質な該部材(ワークピース work piece)を貫通するように該部材に予じめ開孔されたねじ溝無し素通しに貫通した下穴内に、別個の部材、もしくは該取付け用の付属部品または他の取付け用部品に予じめ開孔させた穴を通して、有頭のタッピングねじ(雄ねじ)をねじ込み、該タッピングねじの回動と前進により該下穴に雌ねじ溝を切削、成形しながらタッピングねじを締込み、これにより1個の部材(ワークピース)(加工体または加工物ともいう)に別個の部材、もしくは取付け用の付属部品または他の取付け用部品を取付け、そのねじで固定して締結することから成る部材の締結技術またはその他の締結技術において用いられる雄ねじのねじ溝の溝谷底部と溝山フランク面に塗着できるところの、ねじ溝塗着用の新規な粘稠な粘着性の液状組成物に関する。
本発明のねじ溝塗着用の粘稠な液状組成物をねじ溝内に塗着した塗着層を乾燥または半乾燥して形成された固体状または半固体状の被覆材層がねじ溝の溝谷底部とフランク面を含めてねじ溝内に設けられた雄ねじは、これを前記の部材(ワークピース)内に貫通するよう予じめ開孔された溝無しの素通し貫通した下穴にねじ込む時に、該雄ねじを下穴中に円滑に小さい締込みトルク力でねじ込むことができる利点をもつ上に、ねじ込み作業中に下穴に切削、成形される雌ねじ溝の壁から剥離されて発生する切削成形屑片、または他の原因で下穴の雌ねじ溝に在る固形屑を、粘着し結合し、取り込み、捕獲できる機能を発揮でき、その機能によって、該成形屑片または他の原因の固形屑が下穴の下方に残る開孔部内を落下して下穴の出口から脱落、飛散することを防止できる効果を前記の被覆材層の働きにより奏することができる利点を有する。
さらに、本発明に係わる別の要旨の発明は、本発明の第1の発明の前記のねじ溝塗着用の粘稠な液状組成物の塗着層から形成された前記の固体状または半固体状の被覆材層をねじ溝内に有することを特徴とするねじに関する。
最近、パソコン、デジタルカメラ、デジタルビデオカメラ、ミニディスク等の電子機器を成す装置を組立てるのに用いる構成要素として、基板、支持枠、ハウジングまたはその他の部品などを成す部材(ワークピース)、あるいはこれに取付ける取付け用の部品の構成材料は、軽量化とリサイクル性を配慮して軽合金、たとえばアルミニウム合金、マグネシウム合金が使用されている。これらの軽合金製の前記部材(ワークピース)の2個を互いに結合して固定する時、もしくは該部材への取付け用の別の付属部品または他の取付け用部品を取付けて固定する時には、締結手段としてねじが使用されることが多い。この場合、互いに結合される2個の部材のうちの一方の部材の中に、または取付け用の付属部品または取付け用の他の部品が取付けられるべき部材(ワークピース)の中に、溝なしの素通し貫通の下穴を予じめ開孔してから、有頭タッピングねじを、片方の部材の中に、または取付け用の付属部品または他の部品の中に設けた1つのねじ溝なしに開孔した穴を通して該部材中の下穴にねじ込み、締め込み、下穴壁面に雌ねじ溝を切削成形しながらタッピングねじをねじ込み通すことによって、2個の部材を結合するか、または取付け用部品を部材(ワークピース)に取り付けて固定することよりなる締結方法が一般的に行われている。
このような締結方法では、有頭タッピングねじを前記部材(ワークピース)の貫通した下穴にねじ込み、下穴に雌ねじ溝を切削、成形しながら締め込むことによって、該ねじで該部材に取付け用部品を取付けて固定するに当って、または2個の部材を結合するに当たって、タッピングねじのねじ込み時の剪断力と摩擦力と降伏点をこえて起る部材(ワークピース)下穴周壁の変形とにより下穴で雌ねじ溝の切削成形が行われる。このため、該部材(ワークピース)の下穴の周壁から摩擦粉や切削成形の剥離片として切削成形屑が発生し、これが脱離して該部材の下穴の下部に残る開孔部内を落下して下穴の出口から脱落したり、飛散したりして電子機器の作動部内に入り込む。また、一旦締め込んだタッピングねじを取りはずす時には、ねじ溝谷、ねじ山に付着して残った切削成形屑または他の固形屑が脱落し落下することがある。これら成形屑または他の固形屑が電子機器の電子回路のプリント基板上に落下すると電子回路がショートすることになり、電子機器全体の装置の機能を故障または破壊させる障害が起る恐れがある。
前記したように、各種の装置の構成要素をなす部材(ワークピース)に貫通するように開孔したねじ溝なし下穴に、別個の部材もしくは取付け用部品に設けた貫通開孔の穴を通して、有頭タッピングねじ(雄ねじ)をねじ込みながら、下穴に雌ねじ溝を切削および成形する作業を行う場合には、発生する切削成形屑または磨耗粉が前記部材中を貫通していて雌ねじ溝成形を受けた下穴の下方に残る開孔部内を落下して脱落、飛散する有害な現象が起り、これにより、脱落した切削成形屑または他の固形屑が装置の作動部に侵入すると、装置の機能に前記した種々な障害が生ずる。
このように有頭タッピングねじのねじ込みの作業の際に、1個の部材または取付け用部品を、装置の各種の構成要素をなす部材(ワークピース)に予じめ貫通して開孔させた溝なし下穴中に有頭タッピングねじをねじ込むことで発生した前記の切削成形屑または他の固形屑が雌ねじ溝成形を受けた前記下穴の下方の開孔部内を落下して脱落、飛散する前記の有害な現象を防止できる技術を開発することが一つの技術的課題として要望されており、このことは、従来、知られている。
その課題の解決を計る一つの手段として、前記の部材(ワークピース)中の下穴を前記の切削成形屑または他の固形屑が落下、脱落する現象を防止できる機能をもつ被覆材をねじ溝内に有するタッピングねじが提案された。これの一例として、エボキシ系接着剤を内包するマイクロカプセルを含む樹脂質接着剤の塗布層を、タッピングねじのねじ溝付きねじ脚部に設けたねじ山フランク溝およびねじ溝の溝谷底部を覆う被覆層の形で設けてあるところの雌ねじ成形タッピングねじが知られる(特許文献1:特開2002-70824号公報)。特許文献1の明細書の段落[0009]および[0012]の記載によれば、前記の雌ねじ成形タッピングねじのねじ山フランク面と溝谷底部に付着した樹脂質接着剤の塗布層は、マイクロカプセルに封入されたエポキシ系接着剤を主成分とする接着性物質から成るものである。そして、該ねじを装置部材(ワークピース)の溝なし下穴にねじ込み、雌ねじを切削成形する時に生じる圧力により該マイクロカプセルを破壊させ、放出されたエポキシ系接着剤で接着効果を発揮させると記載される。このように発揮された接着効果により、雌ねじ溝成形時の切削成形屑をねじ山に接着、保持させる作用効果が奏せられると特許文献1の明細書に記載される。
しかしながら、前記のマイクロカプセルに封入されたエポキシ系接着剤は、マイクロカプセルの破壊により樹脂質接着剤の塗布層内に放出されて該塗布層内を浸透すると推測されるけれども、その浸透は瞬時に起ることができるとは想定できない。従って、マイクロカプセル破壊後のエポキシ系接着剤を主成分とした樹脂質接着剤の塗布層は、その層全体としては、タッピングねじのねじ込み作業中には、十分に有効な接着作用を急速に獲取して発揮できない性質をもつものであり、それ故に、ねじ込み作業中に、発生した切削成形屑の全部を落下、脱落しないように防止するために完全に接着、保持できる能力を発揮できない欠陥を有すると想定される。
また、別の例としては、タッピングねじのねじ山付き脚部のねじ山を含むねじ溝のフランク面と溝谷底部が覆われるように、40〜100センチポイズ(cP)以内の粘度をもつ吸収・吸着剤を主成分として内包するマイクロカプセルを含有する被覆材が塗布されてある雌ねじ成形屑吸着ねじが知られる(特許文献2:特開2002-257121号公報と特許文献3:特開2002-257120号公報)。特許文献2の特許出願(特願2001-398032号)は特許文献3の特許出願(特願2001-55646号)の分割出願である。
特開2002-257121号公報明細書(特許文献2)の段落[0006]、[0009]、[0017]の記載によれば、前記の雌ねじ成形屑吸着ねじに設けた被覆材は、主成分としての吸収・吸着剤と、該吸収・吸着剤を接合する接着剤とから成る溶液であって、しかも長時間の流動性(濡れ性)を有する液状の前記溶液を内包するマイクロカプセルを含有すると記載される。その主成分としての吸収・吸着剤とは、40〜100センチポイズ(cP)の高い粘度をもち、100℃以下の外気温で流動性(濡れ性)を長時間維持する性状の液体であると特許文献2の明細書に定義されてあるけれども、そのような性状の液体を構成する具体的な化学物質の例は全く明示されていない。
前記の被覆材がねじ脚部に塗布された雌ねじ成形屑吸着ねじを、装置部材(ワークピース)の下穴にねじ込み、雌ねじ切削成形時に生じる圧力によりマイクロカプセルが破壊されると、吸収・吸着剤がマイクロカプセルから漏れだし、切削成形屑がねじ山に吸着されて保持される作用が奏せられる旨の説明が特許文献2の明細書に記載される。ここで切削成形屑が吸着・吸収されると記載されるけれども、その「吸着・吸収される」と表現される現象の意味は該明細書の中で一義的に明確に定義されてない。
さらに、別例としては、タッピングねじのねじ山付き脚部のねじ山およびねじ溝のフランク面と谷底部が覆われるように、200〜500センチポイズの高い粘度をもち且つ長時間の流動性(濡れ性)を有する液状の吸着液を内包するマイクロカプセルを含有する被覆剤が塗布されてある雌ねじ成形屑吸着ねじが知られる(特許文献4:特開2004-36733号公報)の請求項1と段落[0009]、[0010]参照)。
前記の特開2002-257121号公報(特許文献2)と特開2002-257120号公報(特許文献3)とに記載される雌ねじ成形屑吸着ねじにおいて、該ねじに塗布された被覆材は、40〜100cPの高い粘度の液体よりなる吸着・吸収剤を内包するマイクロカプセルを含有するものであると記載されるが、マイクロカプセルそれ自体は外観が固体微粉末の性状を有するものである。マイクロカプセル単独だけでは、ねじのフランク面に付着、結合できないから、特許文献2〜3の明細書に開示されないけれども、マイクロカプセルと結合剤樹脂との混和された混合物の形でねじ溝のフランク面と谷底部に塗布されて前記の被覆材をねじ溝内に結合して形成するのであろうと推測できる。
また、前記の特開2004-36733号公報(特許文献4)に記載される雌ねじ成形屑吸着ねじにおいて、該ねじに塗布された被覆材は、200〜500cPの高い粘度をもち且つ流動性をもつ液状の吸着液を内包するマイクロカプセルを含有するものと記載される。ここで言われる被覆材に含有されるマイクロカプセルも、それ自体は微粉末状であるので、それ自体だけではねじ溝フランク面に付着、結合できないから、その明細書に開示されてあるように(特許文献4の[0010]参照)、前記と同様の理由から、前記の被覆材も、マイクロカプセルと結合剤樹脂との混合物の形で塗布されて、被覆材がねじ溝内に結合して形成されてあることが知られる。
従って、前記の特許文献2、3および4に記載された雌ねじ成形屑吸着ねじににおいては、マイクロカプセルと結合剤樹脂との混合物よりなる被覆材がねじ溝内に塗布、結合されてあると想定できる。このように塗布された被覆材を有するねじを下穴にねじ込む作業中には、マイクロカプセルがねじ込みの圧力で破壊され、そしてマイクロカプセル内の高粘度の液体よりなる前記の吸着・吸着剤もしくは吸着液が被覆材中に放出できることは推測できる。
しかしながら、破壊されたマイクロカプセルから放出された高い粘度の前記の吸着・吸収剤もしくは吸着液は、それのもつ高い粘度の故に、被覆材の全体の塗布層の中を急速に浸透できないから、被覆材層内において破壊したマイクロカプセル皮膜壁材の付近に局在できるにすぎない。従って、そのような被覆材の塗布層をもつねじを下穴にねじ込む作業の過程において、ねじの被覆材の塗布層の全体、もしくはその表面層が十分に高い粘着性を瞬時に急速に獲得できるとは推測できないのであって、またそのような理由から、ねじ込み作業中に発生する成形屑の全部を完全に粘着し結合し、取り込み、捕獲する効果を果たすことができない欠陥をもつと推測できる。
さらに、前記の知られた雌ねじ成形屑吸着ねじに塗布された被覆材は、マイクロカプセルと結合剤樹脂との混合物から成ると推測できるものであって、該被覆材をなす混合物(マイクロカプセルと結合剤樹脂を含有)は潤滑性が欠ける。従って、かかる潤滑性のない被覆材をねじ溝内にもつねじは、これを下穴にねじ込む際には、きわめて大きなねじ込みトルク力を必要とするものであり、円滑にはねじ込むことができない欠陥をもつ上に、そして下穴で雌ねじの切削、成形に当って多量の摩擦粉と成形屑の発生を招く欠陥も有する。
さらにまた、タッピングねじのねじ山付き脚部のねじ溝内に塗布された乾燥状態の被覆材であって、油性または水性の液状潤滑成分を主剤とし且つ該潤滑成分を接合するバインダを含むマイクロカプセルであるところの、しかも該液状潤滑成分と該バインダとからなる液状の溶液を内包するマイクロカプセルを含有することを特徴とする被覆材、ならびにタッピングねじのねじ山付き脚部のねじ溝内に前記のマイクロカプセル含有の被覆材が塗布されてあり、しかもこれにより、下穴を有する部材(ワークピース)にタッピングねじのねじ込みにより該下穴に雌ねじを切削、成形する際に成形屑が発生しないよう潤滑性をもたせたことを特徴とする該被覆材が付着の潤滑性ねじが知られる(特許文献5:特開2002-295430号公報、およびその請求項1、請求項3、段落[0001]、[0004]、[0006]、[0009]、[0010]、[0015]の記載、参照)。
この特開2002-295430号公報(特許文献5)の請求項1に記載される被覆材に含有されたマイクロカプセルは、それ自体では微粉末性状のものであるから、ねじ溝フランク面に付着、結合できないので明細書に記載がないけれども、前記の被覆材は何らかの結合剤樹脂を配合されてあり、これによって被覆材がねじ溝面に塗着できるものと推測される。また、前記のマイクロカプセルに含有されたところの、液状潤滑成分とこれを接合するバインダとからなる液状の溶液は、必要な潤滑性状を有する液体状の潤滑剤であると記載される(特許文献5の段落[0009]参照)。しかし、前記のバインダを構成する物質の化学名は特許文献5には開示されてない。
前記の特許文献5に示された被覆材の付着した潤滑性ねじを、下穴を有する部材(ワークピース)の下穴にねじ込む作業においては、マイクロカプセルの破壊で放出される前記の液体状潤滑剤の働きによって、下穴に雌ねじを切削、成形する際の成形屑は発生しないか、もしくは少量しか発生しないと推測できる。しかしながら、該マイクロカプセルの破壊後には、放出された液体状の潤滑剤(潤滑成分とバインダとからなる溶液から構成されると記載される)は、乾燥状態の被覆材内を浸透できるから、被覆材は多少とも潤滑性を獲得するけれども、切削成形屑を結合できるに十分な粘着性、接着性を獲得することができない。従って、マイクロカプセルの破壊後に放出された液体状潤滑剤で浸透された被覆材は、タッピングねじのねじ込み作業により下穴周壁の切削で多少でも発生することが避けられない切削成形屑を粘着、結合、取り込み、捕獲する作用を示すことができないのみならず、その被覆材それ自体から磨耗粉を発生するという欠陥を有し、そして下穴の下方の開孔部から切削成形屑またはその他の固形屑が落下、脱落、飛散する現象を完全には防止できない欠点を有する。
他方、各種の液状物質を内包するマイクロカプセルを作製する既知の方法には、in situ重合法、界面重合法、液中硬化法、コアセルベーション(coacervation)法、界面沈殿法またはスプレイドライ法などがある(非特許文献1:近藤保ら著、「マイクロカプセル」pp.34〜75、pp.157〜171、1977年10月15日、三共出版株式会社発行)。マイクロカプセルの壁材には、尿素樹脂、メラミン樹脂、ウレタン樹脂、ゼラチン、アラビアゴム、アルギン酸ナトリウム、ポリアミドまたはその他の重合体が使用できることが知られる(例えば特許文献6:日本特許第3124163号明細書1〜2頁)。
また、互いに接触しながら摺動する2つの固体部材の間の摩擦、磨耗を減少させる潤滑作用をもつ潤滑剤には、常温で液状の潤滑剤、例えば石油系潤滑剤と常温で半固体状の潤滑剤、例えばグリースとがあることは周知である。
さらに、日常生活で例えば物品の包装材の封止に使われる粘着テープは周知である。粘着テープに塗布されると言われる粘着剤は、接着剤の一種であるけれども粘着剤とは明確に定義されて特定できる配合製剤でない。他方、感圧接着剤は明らかに説明できる配合組成物(配合製剤)であり、感圧接着剤をなす配合製剤の中の主成分としては、粘弾性をもつ弾性体すなわちエラストマー物質、例えば天然ゴム、合成ゴム、ポリイソブチレン、ポリビニルエーテル、ポリアクリルエステルまたは各種の重合体、共重合体が用いられることは周知である(例えば非特許文献2:「接着ハンドブック」pp.396〜399、pp.400〜402、1989年8月30日、第2版、日刊工業新聞社発行)。感圧接着剤に配合されて粘着性を高める補助成分としては、粘着性付与剤(tacktifier)(単に粘着付与剤ともいう)と言われる粘稠な樹脂、例えばポリテルペン、ロジン、フエノール樹脂、石油系炭化水素樹脂あるいは粘稠な液状有機物質などが知られて使用され、また可塑剤、例えば鉱油、液状ポリブテン、液状ポリアクリレートなどが配合できることが知られており、また、感圧接着剤には充てん剤、老化防止剤も配合できることは周知である(例えば、非特許文献2のpp.398〜399参照)。感圧接着剤には、大別すると、ゴム系感圧接着剤とアクリル系感圧接着剤があることは周知である。
特開2002-70824号公報(全文) 特開2002-257121号公報(全文) 特開2002-257120号(全文) 特開2004-36733号公報(全文) 特開2002-295430号公報(全文) 日本特許第3124163号明細書(全文) 「マイクロカプセル」pp.34〜75、pp.157〜171、 (1977年10月15日、三共出版株式会社発行) 「接着ハンドブック」pp.396〜399、pp.400〜402、 (1989年8月30日、第2版、日刊工業新聞社発行) なお、「接着」と「粘着」とでは意味が多少とも異なるが、その相違点は、例えば中前ら著の「接着・粘着の化学と応用」(日本化学会編集、1998年2月5日、大日本図(株))発行に説明される。
前記で説明したように、電子機器を含めて、電子回路を含む各種用途の装置を組立てるのに用いる構成要素である軽金属製または軽合金製の比較的軽質な金属部材(ワークピース)中に、ねじ溝のない下穴を予じめ開孔して設け、しかもねじ溝なしの貫通開孔またはねじ溝付きの貫通開孔を予じめ設けて有する取付け用部品を、前記の部材(ワークピース)にねじ手段で取付け固定する組立て作業を行う場合には、有頭タッピングねじ(雄ねじ)を、取付け用部品の前記の貫通開孔を通して該部材のねじ溝のない下穴にねじ込み、該下穴周壁に雌ねじ溝を切削成形しながらタッピングねじを該部材(ワークピース)に締込み、これによって、該部材に取付け用部品をねじ手段で取付け、固定する工程において、雌ねじ溝が切削成形された下穴の下部に残る開孔部中を、剥離した切削成形屑またはその他の固形屑が落下して該開孔部の出口から外に、脱落、飛散するという前述の有害な現象が起ることが多い。
前記の下穴から落下、脱落した切削成形屑またはその他の固形屑は、電子機器などの装置の電気的作動部に侵入すれば、装置の機能を故障または破壊させる障害を起す危険性をもつ。
従って、取付け用部品を固定するために、タッピングねじで装置の部材(ワークピース)の前記の下穴にねじ込む作業中に発生する前記の切削成形屑またはその他の固形屑がねじ溝を切削成形された下穴の下部に残る開孔部中を落下して開孔部から外に、脱落する前記の現象を完全に防止できる技術的手段を開発することは、従来から提案された一つの課題である。
さらに、タッピングねじを前記のねじ溝なし下穴にねじ込む工程では、タッピングねじと下穴周壁との間で大きい摩擦熱が生ずることが多い。この摩擦熱により、ねじ込み作業の途中でタッピングねじが下穴周壁に焼き付き易い。下穴で焼き付き、ねじが凝着した時には、タッピングねじのねじ溝つき脚部の全体が取付け用部品内の開孔の中と、これを取付けられる部材(ワークピース)の下穴との中には完全に貫入、定置できないことになる。その結果として、タッピングねじの頭部座面(ねじ頭部の下向き面とねじ溝つき脚部の上部との間の境界部の下向き表面)が取付け用部品内の開孔の入口の周囲にある部材表面壁、または該開孔の受けラッパ状口の壁に完全に密着した状態で定置できないかまたは完全にかん合できないという所謂、ねじ浮きの状態が起る。このねじ浮きの状態が起ると、タッピングねじによって、取付け用部品とこれを取付けられる部材(ワークピース)との間のねじ手段による固定は、完全に達成できないという障害が起る。それ故、焼き付きによりねじ浮きの状態が起ることを防止できる機能をもつタッピングねじを開発することも、従来知られた一つの技術的課題である。
有頭タッピングねじの脚部における雄ねじ溝を下穴にねじ込む工程中に、該雄ねじ溝山フランク面が十分な潤滑性を発揮または保有できるように工夫することによって、タッピングねじと下穴壁との間に起るタッピングねじの焼き付き、凝着を防止できる一つの解決策として潤滑性ねじがすでに提案された(特許文献5:前記の特開2002-295430号公報)けれども、前記のタッピングねじの凝着防止の課題は未だ完全に解決できていない。
本発明の一つの第1の目的は、取付け用部品もしくは片方の部材を、予じめ開孔されたねじ溝なし下穴を有する部材(ワークピース)の下穴にタッピングねじの捻じ込みによって取付け、固定するのに用いられるタッピングねじであって、しかもタッピングねじにより下穴周壁のねじ溝切削成形で発生した切削成形屑が下穴の下部に残る開孔部中を落下して該開孔部から外に脱落する現象を完全に防止できる機能と特性を有するのみならず、ねじ込まれたタッピングねじが下穴のねじ溝に焼き付き、凝着する現象も完全に防止できる機能と特性をも有するところの、前記の二つの機能・特性を兼備した有頭タッピングねじを提供することにある。
本発明の第2の目的は、取付け用部品もしくは片方の部材を、予じめ開孔された下穴であって且つ雌ねじ溝を刻まれた下穴を有する部材(ワークピース)に、普通の雄ねじのねじ込みによって取付け、固定するのに用いる雄ねじであって、前記のねじ溝つき下穴に残留していた切削成形屑またはその他の固形屑が雄ねじのねじ込み工程中に下穴の下方開孔部中を落下して外に脱落する現象を完全に防止できる機能と特性、ならびに、ねじ込まれた雄ねじが下穴のねじ溝に焼き付き、凝着する現象も完全に防止できる機能と特性を兼備した雄ねじ(タッピングねじ型でない雄ねじ)を提供することである。
さらに、本発明の第3の目的は、本発明の第1の目的を達成できる前述した二つの両方の機能・特性を兼備したタッピングねじ、もしくは本発明の第2の目的を達成できる前述した二つの両方の機能・特性を兼備した雄ねじを作製できる技術を開発する目的のために、雄ねじ(タッピングねじを含めて)のねじ溝内に浸漬法またはロールコーター法などにより塗着できる粘稠な粘着性の液体状組成物であって、ねじ溝内でねじ溝の谷底面および溝山フランク面上に該液体状組成物を塗着、被覆させ、得られた該液体状組成物の塗着層を乾燥または半乾燥させ、こうしてねじ溝内に固体状または半固体状の被覆材層を形成させることができる液体状組成物であるのみならず、しかもそのようにねじ溝内に形成された固体状または半固体状の被覆材層の発揮する種々な有用な性能に基づいて、下穴にねじ込まれる雄ねじの焼き付き、凝着を防止できる十分な潤滑性を雄ねじ溝の被覆表面に付与でき、且つその上に、発生する雌ねじ切削成形屑またはその他の固形屑を該被覆材層中で粘着し、結合し、すなわち粘着して取り込み、捕獲する作用をねじ込み作業中に即時に発揮することができ、これによって成形屑、固形屑の落下、脱落を完全に防止でき粘着性および感圧接着性を発揮できるという有利な諸性質を有する塗着被覆材層を雄ねじ溝内に形成できるところの、新規なねじ溝塗着用の粘稠な粘着性の液体状組成物を提供することにある。
本発明のその他の目的は、本明細書に後述される諸説明から明らかであろう。
従来から問題にされた前記の技術的課題を解決できる有用な性質と性能を有するタッピングねじまたは別用途の雄ねじを作製できる新しい技術を開発する目的で、本発明者らは種々の研究と実験を重ねた。
その研究のうちの第1の実験において、先づ、既知の配合組成をもつ市販の感圧接着剤において既知の主成分として配合されるエラストマー(弾性体)である高い粘着性、接着性をもつアクリル酸エステル共重合体(アクリル系粘着剤として知られる)の適当量を、トルエンと酢酸エチルとの1:1(容量比)の混合物よりなる混合有機溶媒中に1:1の重量比で溶かして、粘稠な粘着性の有機溶液(粘着剤溶液)を調製した。その後に、次のように試験を行った。すなわち、上記のように調製されたアクリル酸エステル共重合体(アクリル系粘着剤)の粘稠な粘着性有機溶液を、スチール基板にはけ塗り法で約100ミクロンの膜厚で塗着し、次に乾燥または半乾燥し、固体状または半固体状の被覆材層を該スチール基板上に形成させた。この形成された被覆材層は、これに対してアルミニウム薄板を軽い圧力下に接触して押圧すると、該被覆材層は良好な感圧接着力を示すことが実験上で知見できた。
更に、前記のように調製されたアクリル酸エステル共重合体(アクリル系粘着剤として知られる)をトルエン−酢酸エチル(1:1容量比)の混合有機溶媒中にとかした粘稠な粘着性の有機溶液(前記の粘着剤溶液と同じ)の中に、別途に調製されたところの真空ポンプ油(潤滑油の一種)を内包するマイクロカプセル(マイクロカプセルの平均粒径は70μであり、マイクロカプセル壁材はユレアーレゾルシン共重合体からなるマイクロカプセル)を分散させて、粘稠で粘着性の分散液を調製した。この分散液中のマイクロカプセルの割合は、分散液液相をなす有機溶液が40重量部であるとみなして、マイクロカプセルが7重量部であるような混合比率にした。
上記のように調製した真空ポンプ油内包のマイクロカプセルを含有した粘稠な粘着性分散液は、これを前記と同じ要領でスチール基板に塗着し、次に乾燥または半乾燥し、固体状または半固体状の被覆材層をスチール基板上に形成させた。このように形成した被覆材層は、これに対してアルミニウム薄板を軽い圧力下に接触して押圧すると、良好な感圧接着力を発揮することが知見できた。さらに、接触されたアルミニウム薄板に加える押圧力を、スチール板上の被覆材層中のマイクロカプセルが破壊されて内包の真空ポンプ油が放出できる程度の高い圧力にまで増大させ、次いでアルミニウム薄板を剥離させた。スチール基板上に残る被覆材層は、その表面が若干の粘着性を示すと共に、良好な潤滑性を有すること、すなわち該表面に別のアルミニウム個片を置いて接触させながら移動させると、アルミニウム個片が円滑に摺動できるという良好な潤滑性をもつことが知見できた。
また、スチール基板上に塗着された前記の固体状または半固体状の被覆材層の粘着性のある表面の上に、少量のアルミニウム金属粉を散布し、金属粉に圧力を加えると、該表面に金属粉が良く粘着接着できて被覆材層の表面層中に取り込まれて捕獲できたことが確認できた。
別途、前記のように調製されたところの、真空ポンプ油内包のマイクロカプセルを含有する前記の粘稠な粘着性分散液を、浸漬法により、タッピングねじのねじ溝内に塗着した。その後に、常温で空気中で自然にねじの乾燥を行うと、タッピングねじのねじ構内には、前記の分散液から形成されたマイクロカプセル含有の被覆材層が形成されたことが認められた。ここで得られた被覆材層は、乾燥した固体状であり、しかもねじ溝の谷底面とねじ山フランク面の下方領域とを覆う凹レンズ状の横断面輪郭をもち、その被覆層の膜厚は全体では均一でないことが認められた。
前記の乾燥した被覆材層をねじ溝内に有したタッピングねじを用い、また溝なし開孔を予じめ設けて有するマグネシウム合金の板状の取付け用部品を用い且つ溝なし下穴を予じめ開孔して設けてあるマグネシウム合金の板状部材(ワークピース)を用い、そして前記のタッピングねじを取付け用部品の開孔を通して、取付け用部品の下面上に置かれた前記の板状部材(ワークピース)の下穴の中にねじ込む作業を行った。該タッピングねじのねじ込み作業中は、軽いトルク締め込み力でも円滑に下穴にねじ込むことができてねじの潤滑性が良いことが認められた。下穴に切削成形された雌ねじ溝の下方で下穴に残る開孔部中から切削成形屑が脱落する現象は全く観察されなかった。
このように一旦ねじ込んだタッピングねじを取外した後に、取外したねじのねじ溝の谷底面の所で被覆層を横断するように切断し、その切断された被覆層横断面を拡大鏡下で観察した。その観察の結果、ねじ溝内に在る被覆材層の中に含有されたマイクロカプセルはタッピングねじのねじ込み圧力の下で破壊されたこと、またマイクロカプセル内包の真空ポンプ油は被覆材層の内部全体にわたって浸透していたこと、さらにマイクロカプセル破壊後の被覆材層の全体は、粘着力と高い感圧接着力とを保持すること、さらにまたその被覆材層の内部には、下穴の雌ねじ溝の切削成形で生じた金属粉が取り込まれて分散状態で捕獲されたことが確認できた。
また、第2の実験においては、市販の感圧接着剤に配合される既知の主成分として知られるエラストマー(弾性体)である粘着性のアクリロニトリル−ブタジエン共重合体をアセトン溶媒にほぼ42:31の重量比で溶かし、これによって粘稠な粘着性の有機溶液(アセトン中)を調製した。この有機溶液(アセトン中)はそれの粘着力が少し不足していたので、この有機溶液中に粘着性付与剤(単に粘着付与剤とも言う)として知られるポリテルペン(市販の感圧接着剤中に補助成分として配合できることが知られている)を、該有機溶液のほぼ73重量部に対してポリテルペンのほぼ19重量部の比率で溶解させた。これで得られたポリテルペン含有の粘着性の有機溶液は十分に高い粘着力を有するものであって、アルミニウム板に塗着すると被覆層を形成できた。
前記のポリテルペン含有の粘稠な粘着性有機溶液(アセトン中)に、前記の第1の実験で用いた真空ポンプ油内包のマイクロカプセルを分散させ、これによって粘稠な粘着性分散液を調製した。
この調製された粘稠な粘着性分散液を用いて、第1の実験と同様な一連の試験を行ったところ、タッピングねじのねじ溝内に付着した該分散液の塗着層から形成された被覆材層をねじ溝内に有したタッピングねじは、第1の実験にて作製した被覆材層付きのタッピングねじと同様な所望の性能を有して本発明の目的を達成できることが実験上で確認できた。
さらに、第3の実験においては、市販の感圧接着剤に主成分として配合されるエラストマーである粘着性の酢酸ビニル−アクリル酸アルキルエステル共重合体を、58%(重量)の共重合体濃度で少量の界面活性剤を含む水に分散させてなる粘稠な粘着性の水性エマルジョン型粘着剤(例えば、エマルジョン型粘着剤として市販されるニカゾールTS-590Bの商品名の粘着剤、日本カーバイト株式会社製として入手できる)を用意した。この粘着性の水性エマルジョン型粘着剤と、水とを54:360重量比で混合した。これで粘稠な粘着性エマルジョン液を調製した。
この調製された粘稠な粘着性エマルジョン液は、比較的良い粘着力を有して、アルミニウム板に塗着して乾燥すると、被覆層を形成できた。
前記の粘稠な粘着性エマルジョン液(含水エマルジョンの形の)中に前記の第1の実験して用いたと同じ真空ポンプ油内包のマイクロカプセルを分散させた。これで粘稠な粘着性分散液を調製した。この粘稠な分散液中のマイクロカプセルの割合は、前記の粘着性エマルジョン液(含水エマルジョン)が90重量部であるとみなして、マイクロカプセルが7重量部の混合比率にした。
この調製された粘稠な粘着性分散液を用いて、第1の実験と同様な一連の試験を行ったところ、タッピングねじのねじ溝に浸漬法で塗布された前記の粘着性分散液の塗着層から形成された被覆材層をねじ溝内に有したタッピングねじは、第1の実験にて作製した被覆材層付きのタッピングねじと同様な所望の性能を有することが確認できた。
他方、上記の第3の実験で調整された粘稠な粘着性エマルジョン液(含水エマルジョンの形の)を、アルミニウム板に塗着して乾燥すると、アルミニウム板上に固体状被覆層を形成できることは、前述のように認められた。しかし、その固体状被覆層と下方のアルミニウム板との間の結合性が余り強くなかった。従って、その固体状被覆層は、強い外力ではアルミニウム板から剥離され易いことが知見された。その固体状被覆層が下方のアルミニウム板から剥離されることを防止することが望まれた。この防止の目的のために、次の予備処理をした。すなわち、金属板と、この上に塗布される有機質の被覆層との結合性を増強する用途をもつことがねじ業界で知られたカップリング剤(金属に対する親和性をもつまたは化学的反応による結合力をもつ官能基と、有機質物質に対する親和力をもつまたは化学的反応による結合力をもつ官能基との両方を保有したシラン系重合体(または共重合体)を主成分とする商品名「シランカップリング剤KBE 903」、信越化学(株)製、として入手できるカップリング剤がその一例である)と、エタノールとの1:2(容量比)の溶液状混合物を作り、これを予じめアルミニウム板に塗布して乾燥させた。これによって、上記のカップリング剤よりなる固体状のカップリング剤下地層をアルミニウム板上に形成した。
アルミニウム板に予じめ形成されたカップリング剤下地層の上に、第3の実験で調製の前記の粘稠な粘着性エマルジョン液(含水エマルジョンの形の)中に前記の真空ポンプ油内包のマイクロカプセルを90:10の重量比で混入して得られた前記の粘着性分散液を塗付し、乾燥した。これで前記のカップリング剤下地層上に、前記の酢酸ビニル−アクリル酸エステル共重合体(粘着性エラストマー)と前記の潤滑油内包マイクロカプセルとを含有する固体状被覆層を形成させた。この形成された固体状被覆層は、アルミニウム板から剥離できない高い結合力をアルミニウム板について有することが認められた。
さらにまた、別の一連の実験を行った。すなわち、これら別の一連の実験では、前記の第1の実験で用いた真空ポンプ油に代えて、下記の各種の潤滑油でも実験して検討した。すなわち、強い外力で下穴に雌ねじを切削成形する時生じる大きい摩擦力を、低減させるため、油の吸着膜をつくる油性剤(0〜20重量部)、または反応による固体膜をつくる極圧剤(0〜20重量部)を含む切削油、ギア油を内包するマイクロカプセル(平均径が50〜100μであり且つマイクロカプセル壁材がゼラチンとアラビアゴムとの混合物あるいは尿素−レゾルシン樹脂またはメラミン樹脂であるマイクロカプセル)の各種サンプルを作製した。また、潤滑油として知られるマシーン油またはシリコーン油を内包するマイクロカプセル、ならびに半固体状のグリースを内包するマイクロカプセル、あるいはグリースを軽油またはケロシンと混合、希釈した流動性の液状潤滑剤を内包するマイクロカプセルを含めて、潤滑剤内包のマイクロカプセルの各種サンプルも作製した。
また、既知の粘着性エラストマーを溶解できる有機溶剤または混合有機溶剤、例えばトルエン、キシレン、トルエンとキシレンの混合物、トルエンと酢酸エチルの混合物をそれぞれ内包する有機溶剤内包のマイクロカプセルの各種サンプルを作製した。
さらに、前記の第1の実験で用いたエラストマーである粘着性アクリル酸エステル共重合体に代えて、天然ゴム、合成イソプレンゴム、SBRまたはポリイソブチレンを用い、そしてそれらゴムを各種の有機溶媒または混合有機溶剤に溶かし、これで粘稠な粘着性のエラストマー溶液の各種サンプルを調製した。また、各種の粘着性エラストマーをそれぞれ水に分散、含有する各種の水性エマルジョンの各種サンプル、ならびに各種の粘着性エラストマーを水と水混和性有機溶媒(例えば酢酸エチル)との混合物中に分散、含有する水性エマルジョンの各種サンプルを調製した。
そのように調製された潤滑油内包マイクロカプセルの各種サンプルと、粘着性エラストマーを含有する溶液または水性エマルジョンの各種サンプルと、所望に応じて適量で追加できる既知の粘着性付与剤(tactifier)(または粘着付与剤という)とを用いて、それらを2種またはそれ以上の多種多様な組合わせで混合した。それによって、マイクロカプセルを含有して種々な混合組成をもつ粘稠で粘着性の液状組成物の多数のサンプル品を調製した。
これらの多数の粘着性液状組成物サンプル品を、それぞれタッピングねじのねじ溝内に浸漬法で塗着し、さらに空気中で乾燥させた。こうして、上記の液状組成物サンプル品からそれぞれ生成された固体状または半固体状の被覆材層をねじ溝内にもつ被覆材層付きのタッピングねじの各種の試作物を作製した。
このように作製された被覆材層付きタッピングねじ試作物の各々を、前記の第1、第2、第3の実験と同じ要領で試験した。それぞれ試験によって、上記の第1、第2、第3の実験で得られたと同じまたは実質的に同じ技術的知見と実験成果が前記のタッピングねじ試作物で得られることが判明した。
従って、前記した一連の多数の試験と、これで得られた技術的知見に基づいて、本発明を完成できた。
それ故に、本発明の第1の発明としては、感圧接着剤の主成分であるエラストマー物質を、粘着性付与剤と共に、または該付与剤の添加なしで有機溶媒にまたは水混和性有機溶媒と水との混合溶媒に溶かしてなる粘着性の溶液である液相の中に、もしくは前記のエラストマー物質を粘着性付与剤と共に、または該付与剤の添加なしで水または水性媒質に分散させてなる粘着性の水性エマルジョンまたは水性分散液である液相の中に、常温で液状または半固体状の潤滑剤を内包するマイクロカプセルを均一に分散させて成る粘稠な粘着性の液状組成物から構成されたことを特徴とするものであり、しかも、該液状組成物を雄ねじ溝のフランク面と谷部に塗着してから、塗着された該液状組成物の塗着層を乾燥または半乾燥した時にねじ溝内でねじ溝山フランク面と溝谷底部に形成された固体状または半固体状の被覆材層は、該被覆材層に圧力を加えた場合に、該被覆材層内に在るマイクロカプセルが破壊されてマイクロカプセル内包の潤滑剤を放出でき、該被覆材層内に潤滑剤が浸透し、これにより前記の被覆材層の少くとも表面または全体が潤滑性、粘着性、感圧接着性を呈し得る性質を保有するものであることを特徴とし、さらに前記の固体状または半固体状の被覆材層をねじ溝内にもつ雄ねじを、ねじ溝なしの下穴を予じめ設けた部材の該下穴にねじ込む時に該下穴に切削成形される雌ねじ溝の壁から剥離される切削成形屑片、または雌ねじ溝にある他の固形屑を粘着して結合し且つ該被覆材層中に取り込んで捕獲できる機能を有し、またこの機能により、該切削成形屑片または他の固形屑が下穴内を落下、脱落するのを防止できる作用を示す前記の固体状または半固体状の被覆材層を本組成物が形成できることを特徴とする、ねじ溝塗着用液状組成物が提供される。
前記の第1の発明によるねじ溝塗着用液状組成物に配合されるエラストマー(弾性体)は、ゴム系、アクリル系、シリコーン系またはポリビニルエーテル系のエラストマーであることができる。
第1の本発明の液状組成物からねじ溝内に形成される被覆材層は指先で押す弱い圧力下でも、十分に金属の被着面になじみ、被着面に対する真の接触面積が大きくなるように若干の粘着性をもつと共に引きはがし、ずれで加えられる外力に耐えることのできる弾性をもつことが好ましい。これらのことに適するエラストマーの使用が望ましい。
第1の発明の液状組成物に配合できるアクリル系エラストマーは、その単独でも弾性体、粘着性付与剤および可塑剤の機能を合わせて有する良いエラストマーであると知られる。炭素数2〜12の脂肪族アルコールとアクリル酸とのエステルを、小さい割合量のアクリル酸および(または)アクリルアミドなどの極性モノマーと共に共重合させて作られたアクリル系共重合体よりなるエラストマーが使用に有利である。
ゴム系エラストマーには、天然ゴム、合成イソプレンゴム、SBR、ボリイソブチレン、NBR等が適する。但しゴム系エラストマーでは、粘着性付与剤を追加するのが好ましく、また老化防止剤も配合するのが好ましい。
シリコーン系エラストマーを用いる場合は、ゴム状ポリシロキサンと樹脂状ポリシロキサンとの混合物を用いて、これを過酸化物で架橋反応にかけた反応生成物が適する。これは、金属、テフロン、ポリイミドなどの基材にもよく接着でき、しかも耐老化性、耐熱性、耐溶剤性に優れる。
ポリビニルエーテル系エラストマーには、ビニルエチルエーテルポリマー、ビニルブチルエーテルポリマー、ビニルイソブチルエーテルポリマーを使用でき、これらポリマーは、それの分子量の調節によりポリマーの粘着性、濡れ性を加減できる。
第1の本発明の液状組成物では、使用されるエラストマーは、水、もしくは水と水混和性溶媒、例えば酢酸エチルもしくはエタノール、アセトンまたはMEKとの混合物中に分散してなる水性エマルジョン液の形でも配合できる。アクリル系エラストマーを含む粘着性の水性エマルジョンが適する。エラストマーの水性エマルジョンは、乳化安定剤、増粘剤を配合された場合には金属に対して接着性が余り良くない。この場合、金属物質と有機物質との両方にそれぞれ親和性または化学反応性をもつ複数の官能基を保有するシラン系重合体または共重合体よりなる公知のカップリング剤から成る下地層をねじ溝のねじ面に予じめ設ける対応策で対処できる。
第1の発明の液状組成物で使用される潤滑剤はマイクロカプセル内に封入、内包された形で配合される。そのような潤滑剤内包のマイクロカプセルは、加圧下で破壊すると、潤滑剤を放出して潤滑性を発揮できる。ねじ締込み時に必要なトルクが低減でき、またねじ溝の摩擦発熱を減少できる作用効果がある。
前記の潤滑剤としては、液状の石油系潤滑油、例えば真空ポンプ油、切削油、ギア油、マシーン油を使用でき、あるいはねじの用途に応じて、シリコーン油、ポリフェニルエーテル、ニ塩基酸エステル、フルオロエステルなどを使用できる。
第1の発明の組成物に用いる潤滑剤内包のマイクロカプセルは、in situ重合法、界面重合法、液中硬化法、コアセルベーション法、界面沈殿法あるいはスプレイドライ法の公知技法で作製できる。マイクロカプセルの壁材には、尿素樹脂、メラミン樹脂、ウレタン樹脂、あるいはゼラチン、アラビアゴム、アルギン酸ナトリウムポリアミドもしくはこれらの2種またはそれ以上の混合物よりなる公知の壁材を用い得る。マイクロカプセルの粒径は50〜300ミクロンの範囲であることができる。
第1の発明の液状組成物では、前記のエラストマーを含む粘着性のエラストマー溶液が該組成物の液相として、含有され得る。このエラストマー溶液を作るには、使用エラストマーを溶解できる適当な有機溶媒、例えばトルエン、またはトルエン−酢酸エチル混合溶剤に、使用エラストマーを溶解するが、得られたエラストマー溶液がその塗着に必要で所望とされる粘稠度と粘着性とを収得できるのに適するエラストマー濃度でエラストマーを溶解させるのがよい。
上記の粘着性エラストマー溶液には、市販の感圧接着剤中に補助成分として慣用的に配合される粘着性付与剤、可塑剤、着色料の少なくとも1つを追加的に配合してもよい。これら補助成分である粘着性付与剤、可塑材の種類、配合の添加量は、得られる本発明の液状ム組成物で所望とされる物性、ならびに該組成物から形成された被覆材層(ねじ溝内の塗着乾燥された被覆材層)で所望とされる物性を考慮することにより適当に選択、調整できる。着色料が配合されると、ねじ溝内に塗着された被覆層の存在が識別できるから便利である。
さらに、第1の発明の液状組成物では、前記のエラストマーを、水媒質、もしくは水と水混和性溶剤とよりなる水性媒質中に分散、含有する粘着性の水性エマルジョン液が該組成物の液相として、含有され得る。該水性エマルジョン液に配合されるエラストマーの添加量は、該水性エマルジョン液をねじ溝の内面に塗着するのに必要であり且つ所望とされる粘稠度と粘着性を該水性エマルジョン液に与えるように加減ができる。また、前述したと同様な理由から、補助成分として、前記の粘着性付与剤、可塑性、着色料の少くとも1つの適当量を前記の水性エマルジョン液に追加的に配合してもよい。
第1の発明のねじ溝塗着用組成物は、ねじ溝の内面に塗着、結合されて液状の塗着層を形成させることに足る十分な粘稠性と粘着性を有することが必要であるから、その組成物それ自体が適度の粘稠性と粘着性をもつことも必要とされる。しかし、該組成物をなす液相中に溶解して含まれた有機溶媒が必要以上の過剰量で存在するならば、その組成物の全体自体が初めに、過度に高い粘稠性をもち、ベトツキという過度の粘着性をもつ。それで、このような性質をもつ液状組成物をねじ溝に塗着すると、ねじのねじ溝全体がベトツキ状態になり、ベトツキ状態の塗着層をねじ面にもつねじは、それらの複数が互いに団結して1つの塊になる障害が起り易い。
そのような理由から、第1の発明の液状組成物をなす液相に溶解、含有された有機溶媒の含量(濃度)は、必要以上に過剰にならないように加減することを要する。そのように溶解した有機溶媒の含量を加減する目的で、所要量の有機溶媒を、その有機溶媒を内包するマイクロカプセルの形で本組成物をなす液相内に配合することが可能である。この有機溶媒内包のマイクロカプセルは、前記した潤滑剤内包のマイクロカプセルと同じ要領で作製できる。
上記の有機溶媒内包のマイクロカプセルを含有した第1の発明の液状組成物の場合、この組成物をねじ溝の内面に塗着、乾燥することでねじ溝内に形成された被覆材層は、その中に有機溶媒内包のマイクロカプセルを分散して含有することになる。このような被覆材層をもつタッピングねじを、ワークピースの下穴にねじ込む時には、そのねじ込みの圧力で有機溶媒内包のマイクロカプセルは破壊され、有機溶媒が放出される。放出された有機溶媒は、被覆材層の内部を浸透する。このように浸透した有機溶媒は、被覆材層全体の粘着性を高めると共に、潤滑剤内包のマイクロカプセルの破壊で放出された潤滑剤の浸透、拡散を促進できる有利な効果を有する。
第1の発明の液状組成物のうちの液相が溶液型である場合には、該組成物の全体の重量に基づいて、5〜10%(重量)の割合の潤滑油内包のマイクロカプセルと、30〜50%(重量)の割合の溶解された有機溶媒と、25〜45%(重量)の割合の粘着性付与剤(tacktifier)と、0〜15%(重量)の割合の有機溶媒内包のマイクロカプセルとを本組成物中に配合する配合することが可能である。
第1の発明の液状組成物は、これの液相が全体として溶液の型である場合にも、エマルジョン液の型である場合にも、該組成物をねじのねじ溝の内面に塗着し、得られた塗着層を溶媒または(および)の水の蒸発により乾燥または半乾燥させると、固体状または半固体状の被覆材層がねじ溝の谷底面とねじ山フランク面との上に形成される。この形成された被覆材層の内部には、本発明組成物中に含まれていた感圧性接着剤の主成分のエラストマー物質から由来する固体または半固体相、もしくは該エラストマー物質と粘着性付与剤との混合物が由来する固体または半固体相が在り、しかも、潤滑剤内包マイクロカプセルが分散状態で該エラスマー物質含有の前記の半固体相に含有されている状態を示す。
従って、本発明の第2の発明によると、感圧性接着剤の主成分であるエラストマー物質よりなる固体相、もしくは該エラストマー物質と粘着性付与剤との混合物よりなる固体相または半固体相を含有する固体状または半固体状の組成物であって、しかも、常温で液状または半固体状の潤滑剤を内包するマイクロカプセルが分散状態で該エラスマー物質含有の前記の固体相または半固体相の中に包有されてなる該固体状または半固体状の組成物から構成された固体状または半固体状の被覆材層を、ねじ溝内に有することを特徴とするねじが提供される。
また、本発明の第3の発明によると、感圧性接着剤の主成分であるエラストマー物質よりなる固体相、もしくは該エラストマー物質と粘着性付与剤との混合物よりなる固体相または半固体相を含有する固体状または半固体状の組成物であって、しかも、常温で液状または半固体状の潤滑剤を内包するマイクロカプセルが分散状態で該エラスマー物質含有の前記の固体相または半固体相の中に包有されてなる該固体状または半固体状組成物から構成された固体状または半固体状の被覆材層を、ねじ溝内に有し、さらに該被覆材層の下方でねじ溝壁面の上に、金属物質に親和性をもつまたは化学的反応で結合力を示す官能基と、有機質物質に親和性をもつまたは化学的反応で結合力を示す官能基とを保有するシラン系(共)重合体よりなるカップリング剤で形成された下地層が被覆されてあることを特徴とするねじが提供される。
第1の発明のねじ溝塗着用組成物を塗着される雄ねじは、JIS規格で規定されたタッピングねじ(1種、2種、3種、4種、またAB型、B型の種々な型のねじでありうる)であることができ、タップタイトねじであることもできる。タップタイトねじにも、ねじ頭部がほぼ半球状のナベねじと、ねじ頭部がほぼ円錐形のサラねじがある。
本発明の塗着用組成物を塗着できる雄ねじの一例として、ナベねじの側面図解図を添付図面の図に示す。
図1に示されたナベねじ(1)は、ほぼ半球状でねじ頭部(2)をもち、その頭部の下面は平らな座面(3)である。ねじ頭部(2)の頂面には、ねじドライバーと係合用の駆動穴(2´)をもつ。ねじ(1)の足は、雄ねじ溝つき脚部(4)であり、その雄ねじ溝はねじ山頂部(5)、フランク面(6)、ねじ溝谷底面(7)を有する。
図1のナベねじのねじ込みにより、部材(ワークピース)(8)に、取付け用部品(10)を取付け、固定して得られた組立体の部分的縦断面の図解図を図2に示す。図2では、取付け用部品(10)に予じめ設けた溝なし開孔(11)を通して、ねじ(1)を、部材(ワークピース)(8)に設けた溝なし下穴(9)にねじ込む作業を行うことで、下穴(9)に雌ねじ溝を切削成形しながら、取付け用部品をワークピースに固定し、その取付け作業が終了した時の状態が図解的に示される。ねじ(1)の脚部のねじ溝の内に塗着された被覆材層は、図2では図示されない。使用したねじの(1)の脚部は、下穴全体をつきぬけるほどの長さをもたないから、ねじ込み終了後のねじの脚部より下方では、下穴(9)内に開いたまま残る開孔部(引出し線9の先端の個所)がある。
図3は、サラねじ(1´)の側面図解図を示す。
本発明の第1の発明のねじ溝塗着用組成物は、ねじ溝の内面に塗布して乾燥後は、溶媒が揮発して固体状または半固体状被覆材層を形成できる。その被覆材層をねじ溝内にもつ雄ねじで、取付け部品を下穴付きワークピースに締結する場合に、下穴の雌ねじ溝の切削成形で発生する成形屑を即座にかつ完全に粘結して取り込み、捕獲できる。本発明組成物に含まれた潤滑剤内包のマイクロカプセルは、ねじのねじ込み時に、圧力が加わると、潤滑剤内包マイクロカプセルが破壊し、潤滑剤が流出し、被覆材層の表面の潤滑性を向上できる。その結果として、ワークピースの下穴に雌ねじ溝の切削が効率よくでき、切削成形屑の発生もきわめて少なくなる。従って、ねじのねじ込みに要するトルクも減少でき、かつ切削成形屑の発生を減少できる。たとえ、下穴の中に切削成形屑が発生したとしても、これを粘着、付着、取込み、捕獲できるので、これが下穴の下方の開孔部出口から脱落、飛散、落下することがない有利な効果が得られる。
以下に、本発明を実施例を参照して具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
(a) 潤滑油を内包のマイクロカプセルの作製
表題のマイクロカプセルをin situ法で作製する工程を行うために、ユレア42g、レゾルシン3g、塩化アンモニウム3g、マレイン酸系界面活性剤30gを適当量の水に入れて完全に溶解した。得られた水溶液の中に潤滑油の一種、真空ポンプ油(74CSt)の300gを、ディスペンサーを通して少量づつ滴下し、乳化しながら分散させた。得られたエマルジョン液に重縮合触媒としてのホルマリン(37%水溶液)の120gを加えて良く混合した。得られた反応混合物を加熱して40℃にした時点で、反応混合物を塩酸の添加でpH2.5に調整し、さらに重縮合反応を40℃で3時間続けた。
反応液中には、マイクロカプセルが生成した。反応終了後に、水酸化ナトリウム水溶液で反応液を中和し、水で希釈してから、マイクロカプセルを分け取り、遠心分離で脱水し、さらに風乾した。得られたマイクロカプセルは、壁材がユレア−レゾルシン共重合体からなり、内包材が真空ポンプ油であり、70ミクロンの平均粒径を有した。
このように作製された真空ポンプ油内包のマイクロカプセルは、次後の工程で用いた。
(b) 有機溶媒としてのトルエンを内包のマイクロカプセルの作製
上記の(a)の工程で用いた真空ポンプ油の代りに、トルエンの300gを用いたこと、および界面活性剤の使用量を0.5gに減らしたこと以外は、上記の(a)の工程と同じ手法により、in situ法でマイクロカプセルを作った。得られたトルエンを内包のマイクロカプセルは100ミクロンの粒径を有した。
(c) 粘着性付与能と粘弾性をもつアクリル系共重合体のエラストマーの製造
モノマーの形で、アクリル酸ブチルの20重量部、アクリル酸2エチルヘキシルの20重量部、アクリル酸の9重量部、メチルメタアクリレート(MMA)の30重量部、および酢酸ビニルの20重量部を、ベンゼン−酢酸エチル−トルエン−エタノールの3:2:2:3(容量比)の混合溶媒の適当量の中に完全に溶解した。得られたモノマー溶液に、重合開始剤としてアゾビスイソブチルニトリルと過酸化ベンゾイルとの1:1(重量比)の混合物を、1%(重量)の濃度に添加して溶解した。得られた反応混合物を加熱して70℃で7時間にわたり溶液重合で反応を行った。
生成されたアクリル系共重合体よりなるエラストマーを含有する粘着性の溶液(以下、粘着性エラストマー溶液Aという)が得られた。
(d) ねじ溝塗着用の液状組成物の調製
トルエンと酢酸エチルとの1:1(容量比)の混合物よりなる混合有機溶媒の40重量部の中に、上記の(a)の工程で得た真空ポンプ油内包のマイクロカプセルの7重量部と、上記の(b)の工程で得たトルエン内包のマイクロカプセルの10重量部と、上記の(c)の工程で得た粘着性エラストマー溶液Aの40重量部と、油溶性の有機着色料、FPGK-Y(大日精化(株)製品)の3重量部とを加えて、良く混合した。
これによって、外観が均一に見える粘稠な液体混合物が総計100重量部の量で収得できた。この液体状混合物はアルミニウム板に塗着できる適度の粘度と付着性をもち、有色の、粘稠で粘着性の高い液状組成物(以下、組成物Aという)であった。この組成物Aは、アルミニウム板に塗付して乾燥すると、アルミニウム板に良く結合した均一な膜厚の固体状の被覆材層を形成できた。その被覆材層の断面を観察すると、エラストマーを含む固体相よりなる母材(マトリックス)の中に、マイクロカプセル粒子が散在して含有されたことが認められた。
(e) 雄ねじのねじ溝への塗着用液状組成物Aの塗着と、ねじ溝内での被覆材層の作製
タップタイトねじM3×6(ねじAという)と、普通の雄ねじM3×6(ねじBという)とを用意した。これらの2種のねじA、ねじBのそれぞれ複数本のねじ脚部のねじ溝内に、上記の(d)の工程で得た粘着性の高い液状組成物(すなわち、前記の組成物A)を浸漬法で塗着し、さらに空気中で風乾し、さらに60℃に加熱して20分間乾燥した。ねじAに塗着された組成物Aから形成された乾燥した固体状被覆材層をねじ溝内にもつねじ試作品A´が得られた。ねじ試作品A´のねじ溝内の被覆材層は、ねじ溝の谷底面を完全に埋めて、しかもねじ山フランク面のうちの溝谷底隣接の一部領域を覆う形であると観察された。ねじBにも、同様に組成物Aを塗着し、次いで同様に後処理して、固体状被覆材層をねじ溝内にもつねじ試作品B´を得た。
(f) ねじ溝内に被覆材層をもつねじ試作品A´およびB´の性能の試験
(i) ねじ溝なしの下穴口径(2.7mm)が予じめ開孔された厚さ5mmのアルミニウム板をワークピースとして用意した。そのワークピースの下穴中に、上記の(e)の工程で作製された被覆材層付きのねじ試作品A´を、直接に(取付け用部品の開孔を通さずに)ねじ込む作業を行って、ワークピース下穴の周壁に雌ねじ溝を切削成形した。
ねじ試作品A´を下穴にねじ込むに要した締め込みトルクは、ほぼ約4kgf-cmの低い値で済んだ。ねじ込み作業中には、ワークピース下穴の下方出口から脱落した切削成形屑の量がきわめて少ないことが認められたので、ねじ込んだねじ試作品A´のねじ溝内に形成された被覆材層が、発生した切削成形屑の大部分と粘着、結合して被覆材層内部に取り込み、捕獲できたと推定できる。
(ii) ワークピース下穴に一旦ねじ込み終わった上記のねじ試作品A´を、ねじ戻すことによりワークピースから外した。取り外されたねじ試作品A´のねじ溝内にある被覆層を切断したが、その被覆層横断面中に散在した切削成形屑の金属粒子を観察できた。従って、前記の被覆材層付きのねじ試作品A´のねじ溝内にある被覆材層は、ワークピース下穴の切削成形された雌ねじ溝から発生した成形屑を確実に取り込み捕獲できる機能を有効に発揮したことが認められた。
(iii) 他方、比較のため、前記の(e)の工程で用意されたねじA(そのねじ溝内に前記の組成物Aを塗着する処理を受けなかった未加工のねじである)を、前記したアルミニウム板ワークピースの下穴(口径2.7mm)に直接にねじ込む作業を行った。この際、ねじ込みに要した締め込みトルクは、ほぼ24kgf-cmというきわめて高い値になり、しかも下穴の下方出口から脱落した切削成形屑の量は多量であったことが観察された。
(iv) 雌ねじ溝M3を切削成形された5mmのアルミニウム板をワークピースとして用意した。そのワークピースの雌ねじ溝M3である下穴の中に、直接に、上記の(e)の工程で作製された被覆材層つきのねじ試作品B´をねじ込む作業を行った。その下穴にねじ試作品B´をねじ込み、締め込むのに要したトルクは、最大でもほぼ200gf-cmという小さい値であったので、円滑にねじ込み作業が進行した。また、当然にも、ワークピース下穴から脱落する固形屑を見ることができなかった。
なお、ワークピースの雌ねじ溝M3である下穴から、一旦ねじ込んだねじ試作品B´をねじ戻して外した。取り外されたねじ試作品B´のねじ溝内にある被覆層の切断横断面を観察すると、その中に少量の金属粉が取り込まれ、捕獲されて散在するのが認められた。そのように取り込まれた少量の金属粉は、ワークピースに雌ねじ溝を切削成形した時に発生した切削成形屑として、ワークピースの雌ねじ溝の内面に付着、残留していた金属粉に由来したと推測できた。
(v) さらに、上記の(iv)で用意された雌ねじ溝M3を予じめ開孔されたアルミニウム板のワークピースの該雌ねじ溝に、比較のため、上記の(e)の工程で用意した雄ねじM3×6(すなわち、ねじBであって、被覆層をねじ溝内に設けられなかったねじ)に、直接にねじ入れた。そのワークピース雌ねじ溝M3の出口から、少量の固形屑が脱落したのが認められた。
(a) 潤滑油として切削油を内包するマイクロカプセルの作製
表題のマイクロカプセルをコアセルベーション法で作製する工程を行うために、ゼラチンの10%水溶液との200gと、アラビアゴムの10%水溶液200gとを良く混合した。得られた液状混合物の中に潤滑油の一種、切削油(30CSt)の60gを、ディスペンサーを通して少量づつ滴下し、乳化しながら分散させた。得られたエマルジョン液に必要量の水を加えて良く混合した。コアセルベーションの反応が起きた。得られた反応混合物をほぼ+2℃に冷却し、硬化剤としてホルマリンを加えた。
得られた液状混合物を、水酸化ナトリウム水溶液の添加でpH9.0に調整すると、ゼラチンとアラビアゴムとの硬化により生成したマイクロカプセル壁材をもち且つ切削油を内包したマイクロカプセルが生成した。
こうして得られたマイクロカプセル含有のスラリー状混合物を、1〜2℃/分の昇温速度で加熱して50℃の温度に加熱した。その後、加温されたスラリー液をスプレイドライ法で乾燥すると、マイクロカプセルを収得できた。得られたマイクロカプセルは、壁材がゼラチン−アラビアゴムの硬化物からなり、内包材が切削油であり、90ミクロンの平均粒径を有した。
このように作製された切削油内包のマイクロカプセルは、次後の工程で用いた。
(b) 粘着性付与能と粘弾性をもつアクリロニトリル系共重合体のエラストマーの溶液の調製
市販された粘着剤、商品名「EC-776」の粘着剤(住友3M(株)製品)を用意した。この市販粘着剤は、粘着性のアクリロニトリル−ブタジエン共重合体を主成分とし、これとフェノール樹脂をメチルエチルケトン−アルコール混合溶剤に溶かしてある溶液であり、それの固形物含量が24%(重量)のものである。
この市販粘着剤(EC-776)の約43重量部を、アセトンの約31重量部と混和することにより、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体を主剤とするエラストマーを含有する粘着性の溶液(以下、粘着性エラストマー溶液Bという)が得られた。
(c) ねじ溝塗着用の液状組成物の調製
上記の(a)の工程で得た切削油内包のマイクロカプセルの7.4重量部と、上記の(b)の工程で得た粘着性エラストマー溶液Bの73.2重量部と、ポリテルペン(粘着付与剤)の18.3重量部と、油溶性の有機着色料、ETBlue(大日精化(株)製品)の1.1重量部とを加えて、良く混合した。
これによって、外観が均一に見える粘稠な液体混合物が総計100重量部の量で収得できた。この液体状混合物はアルミニウム板に塗着できる適度の粘度と付着性をもち、有色の、粘稠で粘着性の高い液状組成物(以下、組成物Bという)であった。この組成物Bは、アルミニウム板に塗付して乾燥すると、アルミニウム板に良く結合した均一な膜厚の固体状の被覆材層を形成できた。その被覆材層の断面を観察すると、エラストマーを含む固体相よりなる母材(マトリックス)の中に、マイクロカプセル粒子が散在して含有されたことが認められた。
(d) 雄ねじのねじ溝への塗着用液状組成物Bの塗着と、ねじ溝内での被覆材層の作製
タップタイトねじM3×6(ねじAという)を用意した。このねじAの複数本のねじ脚部のねじ溝内に、上記の(c)の工程で得た粘着性の高い液状組成物(すなわち、前記の組成物B)を浸漬法で塗着し、さらに空気中で風乾し、さらに60℃に加熱して20分間乾燥した。ねじAに塗着された組成物Bから形成された乾燥した固体状被覆材層をねじ溝内にもつねじ試作品Cが得られた。ねじ試作品Cのねじ溝内の被覆材層は、ねじ溝の谷底面を完全に埋めて、しかもねじ山フランク面のうちの溝谷底隣接の一部領域を覆う形であると観察された。
(e) ねじ溝内に被覆材層をもつねじ試作品Cの性能の試験
(i) ねじ溝なしの下穴(口径2.7mm)が予じめ開孔された厚さ5mmのマグネシウム合金をワークピースとして用意した。そのワークピースの下穴中に、上記の(d)の工程で作製された被覆材層付きのねじ試作品Cを、直接に(取付け用部品の開孔を通さずに)ねじ込む作業を行って、ワークピース下穴の周壁に雌ねじ溝を切削成形した。
ねじ試作品Cを下穴にねじ込むに要した締め込みトルクは、ほぼ約5kgf-cmの低い値で済んだ。ねじ込み作業中には、ワークピース下穴の下方出口から脱落した切削成形屑の量がきわめて少ないことが認められたので、ねじ込んだねじ試作品Cのねじ溝内に形成された被覆材層が、発生した切削成形屑の大部分を粘着、結合して被覆材層内部に取り込み、捕獲できたと推定できる。
(ii) ワークピース下穴に一旦ねじ込み終わった上記のねじ試作品Cを、ねじ戻すことによりワークピースから外した。取り外されたねじ試作品Cのねじ溝内にある被覆層を切断したが、その被覆層横断面中に散在した切削成形屑の金属粒子を観察できた。従って、前記の被覆材層付きのねじ試作品Cのねじ溝内にある被覆材層は、ワークピース下穴の切削成形された雌ねじ溝から発生した成形屑を確実に取り込み捕獲できる機能を有効に発揮したことが認められた。
(iii) 他方、前記の(d)の工程で用意されたねじA(そのねじ溝内に前記の組成物Aを塗着する処理を受けなかった未加工のねじである)を、前記したアルミニウム板ワークピースの下穴(口径2.7mm)に直接にねじ込む作業を行った。この際、ねじ込みに要した締め込みトルクは、ほぼ22kgf-cmというきわめて高い値になり、しかも下穴の下方出口から脱落した切削成形屑の量は多量であったことが観察された。
(a) 潤滑油として真空ポンプ油を内包するマイクロカプセルの作製
表題のマイクロカプセルをin situ法で作製する工程を行うために、メラミン6g、マレイン酸系界面活性剤1.4gを適当量の水に入れて完全に溶解した。得られた水溶液の中に潤滑油の一種、真空ポンプ油(80CSt)の60gを、ディスペンサーを通して少量づつ滴下し、乳化しながら分散させた。得られたエマルジョン液に重縮合触媒として37%ホルマリン16gを加えて良く混合した。得られた反応混合物を加熱して65℃にした時点で、反応混合物を塩化アンモニウム1.6gの添加でpH4.5に調整し、さらに重縮合反応を続けた。反応液中には、マイクロカプセルが生成した。
反応終了後に、水酸化ナトリウム水溶液で反応液を中和し、水で希釈してから、マイクロカプセルを分け取り、遠心分離で脱水し、さらに風乾した。得られたマイクロカプセルは、壁材がメチロールメラミン重合体からなり、内包材が真空ポンプ油であり、60ミクロンの平均粒径を有した。
このように作製された真空ポンプ油内包のマイクロカプセルは、次後の工程で用いた。
(b) 粘着性付与能と粘弾性をもつ酢酸ビニル−アクリル酸アルキルエステル共重合体のエラストマーを含む水性エマルジョン液の調製
市販されたエマルジョン型粘着剤、商品名「ニカゾール TS-590B」の粘着剤(日本カーバイト(株)製品)を用意した。この市販粘着剤は、粘着性の酢酸ビニル−アクリル酸アルキルエステル共重合体を主成分とし、これを分散して含み且つ界面活性剤を水に溶かしてなる水性エマルジョンの形であり、それの固形物含量が58%(重量)のものである。
この市販粘着剤(ニカゾール TS-590B)の約54重量部を、水の約36重量部と混和することにより、前記の共重合体を主剤とするエラストマーを含有する粘着性の水性エマルジョン液(以下、粘着性エラストマー・エマルジョンAという)が得られた。
(c) ねじ溝塗着用の液状組成物の調製
上記の(a)の工程で得たポンプ油内包のマイクロカプセルの7.3重量部と、上記の(b)の工程で得た粘着性エラストマー・エマルジョンAの73.2重量部と、水溶性の有機着色料、EPBlue(大日精化(株)製品)の2.5重量部と水の17.0重量部を加えて、良く混合した。
これによって、外観が均一に見える粘稠な液体混合物が総計100重量部の量で収得できた。この液体状混合物はアルミニウム板に塗着できる適度の粘度と付着性をもち、有色の、粘稠で粘着性の高い液状組成物(以下、組成物Cという)であった。この組成物Cは、アルミニウム板に塗付して乾燥すると、アルミニウム板に良く結合した均一な膜厚の固体状の被覆材層を形成できた。その被覆材層の断面を観察すると、エラストマーを含む固体相よりなる母材(マトリックス)の中に、マイクロカプセル粒子が散在して含有されたことが認められた。
(d) 雄ねじのねじ溝への塗着用液状組成物Cの塗着と、ねじ溝内での被覆材層の作製
タップタイトねじM3×6(ねじAという)の複数本のねじ脚部のねじ溝内に、上記の(c)の工程で得た粘着性の高い液状組成物(すなわち、前記の組成物C)を浸漬法で塗着し、さらに空気中で風乾し、さらに60℃に加熱して20分間乾燥した。ねじAに塗着された組成物Cから形成された乾燥した固体状被覆材層をねじ溝内にもつねじ試作品Dが得られた。ねじ試作品Dのねじ溝内の被覆材層は、ねじ溝の谷底面を完全に埋めて、しかもねじ山フランク面のうちの溝谷底隣接の一部領域を覆う形であると観察された。
(e) ねじ溝内に被覆材層をもつねじ試作品Dの性能の試験
(i) ねじ溝なしの下穴(口径2.7mm)が予じめ開孔された厚さ5mmのアルミニウム板をワークピースとして用意した。そのワークピースの下穴中に、上記の(d)の工程で作製された被覆材層付きのねじ試作品Dを、直接に(取付け用部品の開孔を通さずに)ねじ込む作業を行って、ワークピース下穴の周壁に雌ねじ溝を切削成形した。
ねじ試作品Dを下穴にねじ込むに要した締め込みトルクは、ほぼ約4kgf-cmの低い値で済んだ。ねじ込み作業中には、ワークピース下穴の下方出口から脱落した切削成形屑の量がきわめて少ないことが認められたので、ねじ込んだねじ試作品Dのねじ溝内に形成された被覆材層が、発生した切削成形屑の大部分と粘着、結合して被覆材層内部に取り込み、捕獲できたと推定できる。
(ii) ワークピース下穴に一旦ねじ込み終わった上記のねじ試作品Dを、ねじ戻すことによりワークピースから外した。外されたねじ試作品Dのねじ溝内にある被覆層を切断したが、その被覆層横断面中に散在した切削成形屑の金属粒子を観察できた。従って、前記の被覆材層付きのねじ試作品Dのねじ溝内にある被覆材層は、ワークピース下穴の切削成形されたねじ溝から発生した成形屑を確実に取り込み捕獲できる機能を有効に発揮したことが認められた。
(iii) 他方、比較のため、前記の(e)の工程で用意されたねじA(そのねじ溝内に前記の組成物Dを塗着する処理を受けなかった未加工のねじである)を、前記したアルミニウム板ワークピースの下穴(口径2.7mm)に直接にねじ込む作業を行った。この際、ねじ込みに要した締め込みトルクは、ほぼ25kgf-cmというきわめて高い値になり、しかも下穴の下方出口から脱落した切削成形屑の量は多量であったことが観察された。
(f) なお、前記の(b)の工程に用いたねじM3×6(ねじA)のおねじ溝内に、市販のシランカップリング剤KBE903(信越化学(株)製品)とエタノールとの1:2の重量比の液状混合物を塗着し、次いでほぼ10分間自然間乾燥し、カップリング剤下地層を設ける予備処理を行った。このようにカップリング剤下地層をねじ溝内にもつねじAに対して、上記の(d)工程と同様にして、(d)工程で用いた液状組成物を浸漬法で塗着した。
さらに、前記の(d)工程と同様にさらに処理をして、ねじ試作品E(第3の発明による)を作製した。
このねじ試作品Eを、ねじ試作品Dでの前記の(e)の工程と同様にねじの性能試験にかけたところ、ねじ試作品Eは、ねじ試作品Dと同じ性能を有することが認められた。
図1は、本発明の塗着用組成物を塗着できる雄ねじの一例として、ナベねじの側面図解図を示す。 図2は、本発明の塗着用組成物から形成された被覆材層(図示しない)をねじ溝内にもつナベねじのねじ込みにより、下穴をもつワークピースに開孔をもつ取付け用部品を取り付け、固定した状態にした組立体の部分的縦断面の図解図を示す。 図3は、本発明の塗着用組成物を塗着できる雄ねじの一例であるサラねじの側面図解図である。

Claims (5)

  1. 感圧接着剤の主成分であるエラストマー物質を、粘着性付与剤と共に、または該付与剤の添加なしで有機溶媒にまたは水混和性有機溶媒と水との混合溶媒に溶かしてなる粘着性の溶液である液相の中に、もしくは前記のエラストマー物質を粘着性付与剤と共に、または該付与剤の添加なしで水または水性媒質に分散させてなる粘着性の水性エマルジョンまたは水性分散液である液相の中に、常温で液状または半固体状の潤滑剤を内包するマイクロカプセルを均一に分散させて成る粘稠な粘着性の液状組成物から構成されており、前記潤滑剤を内包するマイクロカプセルは、その壁材が、尿素樹脂、尿素−レゾルシン樹脂、メラミン樹脂、ウレタン樹脂、ゼラチン−アラビアゴム、アルギン酸ナトリウム及びポリアミドより選択される重合体、或いはこれらの2種以上の混合物からなり、且つ、50ないし300μmの平均粒径を有し、さらには、前記エラストマー物質及び粘着性付与剤と前記潤滑剤を内包するマイクロカプセルとの重量比が0.78:0.22ないし0.83:0.17の範囲にあることを特徴とするものであり、しかも、該液状組成物を雄ねじ溝のフランク面と谷部に塗着してから、塗着された該液状組成物の塗着層を乾燥または半乾燥した時にねじ溝内でねじ溝山フランク面と溝谷底部に形成された固体状または半固体状の被覆材層は、該被覆材層に圧力を加えた場合に、該被覆材層内に在るマイクロカプセルが破壊されてマイクロカプセル内包の潤滑剤を放出でき、該被覆材層内に潤滑剤が浸透し、これにより前記の被覆材層の少くとも表面または全体が潤滑性、粘着性、感圧接着性を呈し得る性質を保有するものであることを特徴とし、さらに前記の固体状または半固体状の被覆材層をねじ溝内にもつ雄ねじを、ねじ溝なしの下穴を予じめ設けた部材の該下穴にねじ込む時に該下穴に切削成形される雌ねじ溝の壁から剥離される切削成形屑片、または雌ねじ溝にある他の固形屑を粘着して結合し且つ該被覆材層中に取り込んで捕獲できる機能を有し、またこの機能により、該切削成形屑片または他の固形屑が下穴内を落下、脱落するのを防止できる作用を示す前記の固体状または半固体状の被覆材層を本組成物が形成できることを特徴とする、ねじ溝塗着用液状組成物。
  2. 請求項1に記載の液状組成物の液相中には、有機溶媒を内包するマイクロカプセルが追加的に含有されてある、請求項1に記載の組成物。
  3. 請求項1に記載の液状組成物の液相中には、可塑剤、着色剤、老化防止剤の少くとも一つが追加的に配合されてある、請求項1に記載の組成物。
  4. 感圧性接着剤の主成分であるエラストマー物質よりなる固体相、もしくは該エラストマー物質と粘着性付与剤との混合物よりなる固体相または半固体相を含有する固体状または半固体状の組成物であって、しかも、常温で液状または半固体状の潤滑剤を内包するマイクロカプセルが分散状態で該エラスマー物質含有の前記の固体相または半固体相の中に包有されてなる該固体状または半固体状の組成物から構成されており、前記潤滑剤を内包するマイクロカプセルは、その壁材が、尿素樹脂、尿素−レゾルシン樹脂、メラミン樹脂、ウレタン樹脂、ゼラチン−アラビアゴム、アルギン酸ナトリウム及びポリアミドより選択される重合体、或いはこれらの2種以上の混合物からなり、且つ、50ないし300μmの平均粒径を有し、さらには、前記エラストマー物質及び粘着性付与剤と前記潤滑剤を内包するマイクロカプセルとの重量比が0.78:0.22ないし0.83:0.17の範囲にあることを特徴とする固体状または半固体状の被覆材層を、ねじ溝内に有することを特徴とするねじ。
  5. 感圧性接着剤の主成分であるエラストマー物質よりなる固体相、もしくは該エラストマー物質と粘着性付与剤との混合物よりなる固体相または半固体相を含有する固体状または半固体状の組成物であって、しかも、常温で液状または半固体状の潤滑剤を内包するマイクロカプセルが分散状態で該エラスマー物質含有の前記の固体相または半固体相の中に包有されてなる該固体状または半固体状組成物から構成されされており、前記潤滑剤を内包するマイクロカプセルは、その壁材が、尿素樹脂、尿素−レゾルシン樹脂、メラミン樹脂、ウレタン樹脂、ゼラチン−アラビアゴム、アルギン酸ナトリウム及びポリアミドより選択される重合体、或いはこれらの2種以上の混合物からなり、且つ、50ないし300μmの平均粒径を有し、さらには、前記エラストマー物質及び粘着性付与剤と前記潤滑剤を内包するマイクロカプセルとの重量比が0.78:0.22ないし0.83:0.17の範囲にあることを特徴とする固体状または半固体状の被覆材層を、ねじ溝内に有し、さらに該被覆材層の下方でねじ溝壁面の上に、金属物質に親和性をもつ、または化学的反応で結合力をもつ官能基と有機質物質に親和性をもつまたは化学的反応で結合力をもつ官能基とを保有するシラン系重合体または共重合体よりなるカップリング剤製の下地層が被覆されてあることを特徴とするねじ。
JP2004380013A 2004-12-28 2004-12-28 潤滑剤を内包のマイクロカプセルを含むねじ溝塗着用組成物と、その応用 Expired - Fee Related JP4404760B2 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2004380013A JP4404760B2 (ja) 2004-12-28 2004-12-28 潤滑剤を内包のマイクロカプセルを含むねじ溝塗着用組成物と、その応用

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2004380013A JP4404760B2 (ja) 2004-12-28 2004-12-28 潤滑剤を内包のマイクロカプセルを含むねじ溝塗着用組成物と、その応用

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JP2006183825A JP2006183825A (ja) 2006-07-13
JP4404760B2 true JP4404760B2 (ja) 2010-01-27

Family

ID=36737072

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2004380013A Expired - Fee Related JP4404760B2 (ja) 2004-12-28 2004-12-28 潤滑剤を内包のマイクロカプセルを含むねじ溝塗着用組成物と、その応用

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP4404760B2 (ja)

Families Citing this family (7)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP4722798B2 (ja) * 2006-09-14 2011-07-13 株式会社南部製作所 タッピングねじ及びその製造方法
JP4742007B2 (ja) * 2006-10-11 2011-08-10 株式会社トープラ タッピンねじ用皮膜形成剤、同皮膜形成剤を用いてタッピンねじの外周を被覆する皮膜を形成する皮膜形成方法、および、同皮膜形成剤にて形成された皮膜付きタッピンねじ
JP4824002B2 (ja) * 2007-11-26 2011-11-24 勝行 戸津 切削屑等の保持機能を有する緩み止め締結具
KR101163126B1 (ko) * 2011-07-01 2012-07-06 주식회사 서울금속 나사
JP2014037893A (ja) * 2013-11-29 2014-02-27 Nitto Seiko Co Ltd ねじ部品
US20220002505A1 (en) * 2018-10-31 2022-01-06 Solvay Specialty Polymers Italy S.P.A. Curable composition of elastomers
JP2022026389A (ja) * 2020-07-31 2022-02-10 日東精工株式会社 成形屑吸着ねじ

Also Published As

Publication number Publication date
JP2006183825A (ja) 2006-07-13

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JP4404839B2 (ja) ねじ溝内の金属切削屑を捕獲でき且つ雄ねじを雌ねじ溝に固着できる被覆材層の形成に用いる雄ねじ溝塗着用組成物とその応用
JP4824002B2 (ja) 切削屑等の保持機能を有する緩み止め締結具
EP2000680B1 (en) Coating film forming agent for tapping screw, method of preparing the coating film forming agent, method of forming coating film provided on outer circumference of tapping screw with use of the coating film forming agent, and tapping screw with coating film formed with use of the coating film forming agent
JP4404760B2 (ja) 潤滑剤を内包のマイクロカプセルを含むねじ溝塗着用組成物と、その応用
CA2273048C (en) Connecting element for the frictional connection of components
CN102105551B (zh) 压敏粘合剂组合物和压敏胶带
EP1955370B1 (de) Verfahren zum bearbeiten eines wafers
US20080308365A1 (en) Friction lining
DE10325332A1 (de) Material für eine Wärmeleitfähige Zwischenlage
JP2004036733A (ja) 雌ねじ成形屑吸着ねじ
JP2010106222A (ja) 水性コーティング剤組成物
JP2007284666A (ja) 加熱剥離性粘着テープ
WO2016002525A1 (ja) 重合性封着組成物
JP2016506482A5 (ja)
JP2008094957A (ja) 粘着剤及び粘着シート、並びにワークの剥離方法
CN108137996A (zh) 切向接合方法
JP4571107B2 (ja) 被覆材及び当該被覆材付きネジ式締結具
JP2019214739A (ja) アクリル粘着剤及び電子機器用粘着シート
JP2014040614A (ja) 粘着剤組成物及び粘着テープ
JPH04175356A (ja) 粘着剤組成物およびこれを用いた粘着テープもしくはシート
TW202316038A (zh) 具有頭下塗層的螺絲
JP7206008B2 (ja) 感圧接着剤テープ
US20100236694A1 (en) Method and Tape for Adhesive Locking of a Threaded Fastener
JP4266306B2 (ja) 粘着シート用下塗剤組成物及び粘着シート
JP3649288B1 (ja) はんだ付け用耐熱性マスキングテープおよびプリント基板のはんだ付け方法

Legal Events

Date Code Title Description
A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20061018

A977 Report on retrieval

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007

Effective date: 20080930

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20090701

A521 Written amendment

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20090827

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20091007

A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20091102

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20121113

Year of fee payment: 3

R150 Certificate of patent or registration of utility model

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20131113

Year of fee payment: 4

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

LAPS Cancellation because of no payment of annual fees