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JP4479108B2 - 光電変換素子 - Google Patents

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JP4479108B2
JP4479108B2 JP2001031786A JP2001031786A JP4479108B2 JP 4479108 B2 JP4479108 B2 JP 4479108B2 JP 2001031786 A JP2001031786 A JP 2001031786A JP 2001031786 A JP2001031786 A JP 2001031786A JP 4479108 B2 JP4479108 B2 JP 4479108B2
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Panasonic Electric Works Co Ltd
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  • Hybrid Cells (AREA)

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は光電変換素子に関する。更に詳細には、本発明は電解液の液漏れが起き難い改良された構造を有する光電変換素子に関する。
【0002】
【従来の技術】
太陽電池はクリーンなエネルギー源として大きく期待されており、すでにpn接合型太陽電池などが実用化されている。一方、光励起状態の化学反応を利用して電気エネルギーを取り出す光化学電池は多くの研究者によって開発されているが、実用化に関して言えば、すでに実績の高いpn接合型太陽電池には遙かに及ばなかった。
【0003】
従来の光化学電池の中で、増感剤と電子受容体からなる酸化還元反応を利用したタイプが知られている。例えば、チオニン色素と鉄(II)イオンを組み合わせた系などがある。また、本多−藤嶋効果の発見以来、金属やその酸化物の光電荷分離を利用した光化学電池も知られている。
【0004】
半導体が金属と接触した場合、金属と半導体の仕事関数の関係によりショットキー接合ができるが、半導体と溶液が接している時も同様な接合ができる。例えば、溶液中にFe2+/Fe3+、Fe(CN)6 4-/Fe(CN)6 3-、I-/I2、Br-/Br2、ハイドロキノン/キノンなどの酸化還元系が含まれている時、n型半導体を溶液に浸けると半導体の表面付近の電子が溶液中の酸化剤へ移動し平衡状態に達する。その結果、半導体の表面付近は正に帯電し電位勾配が生じる。これにともない半導体の伝導帯および価電子帯にも勾配が生じる。
【0005】
酸化還元溶液に浸けた半導体電極の表面に光を照射すると、半導体のバンドギャップ以上のエネルギーを持つ光が吸収され、表面付近で伝導帯に電子を、価電子帯に正孔を生成する。伝導帯に励起された電子は上述した半導体の表面付近に存在する電位勾配により半導体内部へ伝達され、一方、価電子帯に生成された正孔は酸化還元溶液中の還元体から電子を奪う。
【0006】
酸化還元溶液に金属電極を浸して金属電極と半導体間で回路を作ると、正孔に電子を奪われた還元体は溶液中を拡散して金属電極から電子を受け取り、再び還元される。このサイクルを繰り返し、半導体電極は負極として、金属電極は正極としてそれぞれ働き、外部へ電力を供給することができる。したがって、光起電力は酸化還元溶液の酸化還元準位と半導体中のフェルミ準位との差になる。
【0007】
光起電力を大きくするためには、▲1▼酸化還元準位の低い、すなわち酸化力の強い酸化還元溶液を用いること、▲2▼酸化還元準位と半導体中のフェルミ準位との間に大きな差を作り出せる、すなわちバンドギャップの大きい半導体を用いることである。
【0008】
しかしながら、酸化還元溶液の酸化力があまり大きすぎると半導体自身の表面に酸化膜を形成し、光電流は短時間のうちにストップする。また、バンドギャップについては、一般にバンドギャップが3.0eV以下さらには2.0eV以下の半導体は光電変換の際に流れる電流により溶液中に溶解しやすい問題がある。例えば、n-Siは水中の光照射で表面に不活性な酸化物被膜を形成し、n-GaAsやn-CdSは酸化的に溶解する。
【0009】
これらの問題を解決すために、半導体に保護膜を被覆する工夫が試みられており、正孔輸送特性を有するポリピロールやポリアニリン、ポリチオフェンなどのp型導電性高分子を半導体の保護膜に使用する工夫が提案されている。しかしながら耐久性に問題があり、せいぜい数日程度しか安定しなかった。
【0010】
光溶解の問題を解決するために、バンドギャップが3eV以上ある半導体の利用が考えられるが、強度のピークが2.5eV付近にある太陽光を効率よく吸収するには大きすぎる。そのため、太陽光のうち紫外部しか吸収できず、大部分を占める可視域を全く吸収せず、光電変換効率は極めて低くなる。
【0011】
可視光域の有効利用とバンドギャップの大きな半導体の光安定性を両立させるために、半導体のバンドギャップより小さい長波長側の可視光を吸収する増感色素を半導体に担持させた色素増感太陽電池が知られている。従来の半導体を用いた湿式太陽電池と異なるところは、色素に光を照射して電子が励起され、励起電子が色素から半導体へ移動する光電荷分離過程である。
【0012】
色素増感太陽電池は光合成と関連づけてとらえられることが多い。当初、色素としては光合成と同様にクロロフィルが考えられていたが、絶えず新しい葉緑素と交換される自然のクロロフィルと違い、太陽電池に用いる色素では安定性の面で問題があり、また、太陽電池としての光電変換効率も0.5%に満たないものであった。自然界の光合成の過程をそのまま模擬し、太陽電池を構成することは非常に困難である。
【0013】
このように、色素増感太陽電池は、光合成からヒントを得て長波長の可視光を吸収しようというものであるが、実際には電子の伝導機構が複雑になったため、却って損失の増大が問題となった。固体の太陽電池では、光を吸収する層を厚くすれば吸収効率は上げることができる。しかしながら、色素増感太陽電池に関しては、半導体電極に電子を注入できるのは表面上の単分子層のみである。そのため無駄な光の吸収をなくすために、半導体表面上の色素は単分子層とすることが望ましい。
【0014】
しかも励起された色素内の電子が効率的に半導体内に注入されるためには、半導体表面と化学的に結合していることが好ましい。例えば、酸化チタンに関しては、半導体表面と化学的に結合するために、色素にカルボキシル基があることなどが重要である。
【0015】
この点に関して、重要な改善をしたのはFujihiraらのグループである。彼らはローダミンBのカルボキシル基がSnO表面の水酸基とエステル結合することにより,光電流が従来の吸着法の10倍以上になったことを1977年に雑誌Natureに報告している。これは従来のアミド結合よりエステル結合の方が色素内で光のエネルギーを吸収した電子の存在するπ軌道が半導体の表面に近いためとしている。
【0016】
しかしながら、半導体に電子を有効に注入できたとしても伝導帯内にある電子は、色素の基底準位と再結合する可能性や、酸化還元物質と再結合する可能性などがある。このような問題点があったため、電子注入について上記の改善にも関わらず光電変換効率は低いままであった。
【0017】
以上のように、従来の色素増感太陽電池の大きな問題点として、半導体表面に単層で担持された増感色素しか半導体へ電子を注入することができないことである。すなわち、これまで半導体電極によく用いられていた単結晶や多結晶半導体は、表面が平滑で内部に細孔を持たず、増感色素が担持される有効面積は電極面積に等しく、増感色素の担持量が少ない。
【0018】
従って、このような電極を用いた場合、その電極に担持された単分子層の増感色素は最大吸収波長でも入射光の1%以下しか吸収できず、光の利用効率が極めて悪くなる。光捕集力を高めるために増感色素を多層にする試みも提案されているが、概して充分な効果が得られていない。
【0019】
グレッツェル等は、このような問題を解決する手段として、酸化チタン電極を多孔質化し、増感色素を担持させ,内部面積を著しく増大させた(例えば、特許2664194号)。ゾル・ゲル法によりこの酸化チタン多孔質膜を作製し、膜のポロシティーは約50%ほどであり、非常に高い内部表面積を有するナノ多孔性構造が形成されている。たとえば、8μmの膜厚ではラフネスファクター(基板面積に対する多孔質内部の実面積の割合)は約720にも達する。この表面を幾何学的に計算すると、増感色素の濃度は1.2×10−7mol/cmに達し、実に、最大吸収波長で入射光の約98%が吸収されることになる。
【0020】
このグレッツェル・セルとも呼ばれる新しい色素増感太陽電池は、上述の酸化チタンの多孔質化による増感色素の飛躍的な担持量の増大と、太陽光を効率よく吸収しかつ半導体への電子注入速度が著しく速い増感色素の開発した点が大きな特徴である。
【0021】
グレッツェルらは、色素増感太陽電池のためにビス(ビピリジル)Ru(II)錯体を開発した。そのRu錯体は一般式シス−X2ビス(2,2’−ビピリジル−4,4’−ジカルボキシレート)Ru(II)の構造を持つ。XはCl−,CN−,SCN−である。これらについて蛍光、可視光吸収、電気化学的および光酸化還元的挙動について系統的な研究が行われた。これらのうち、シス−(ジイソシアネート)−ビス(2,2’−ビピリジル−4,4’−ジカルボキシレート)Ru(II)は、太陽光吸収剤および色素増感剤として格段に優れた性能を持つことが示された。
【0022】
この色素増感剤の可視光吸収は、金属から配位子への電荷移動遷移である。また、配位子のカルボキシル基は表面のTiイオンに直接配位して、色素増感剤と酸化チタンの間に密接な電子的接触を形成している。この電子的な接触により、色素増感剤から酸化チタンの伝導帯への電子注入が1ピコ秒以下の極めて速い速度で起こり、その逆方向の酸化された色素増感剤による酸化チタンの伝導帯へ注入された電子の再捕獲はマイクロ秒のオーダーで起こるとされている。この速度差が光励起電子の方向性を生み出し、電荷分離が極めて高い効率で行われる理由である。そして、これがpn接合面の電位勾配により電荷分離を行うpn接合太陽電池との違いであり、グレツェル・セルの本質的な特徴である。
【0023】
グレッツェル・セルの構成はフッ素ドープした酸化スズの透明導電膜をコーティングした導電ガラス基板2枚の間に、酸化還元対を含む電解質溶液を封入したサンドイッチ型のセルである。ガラス基板の一方は、透明導電膜上にコロイド状の酸化チタン超微粒子から構成される多孔質膜を積層し、さらに増感色素を吸着させて作用電極としたものである。他方は、透明導電膜上に少量の白金をコーティングして対極としたものである。2枚のガラス基板の間にスペーサを挟み、その間のごくわずかの隙間に毛細管現象を利用して電解質溶液を注入する。電解質溶液は、エチレンカーボネートとアセトニトリルの混合溶媒を使用し、ヨウ化テトラ-n-プロピルアンモニウムとヨウ素を溶質としたもので、I-/I3-の酸化還元対を含む。対極にコーティングされた白金はこの酸化還元対のI3-をI-に陰極還元する触媒作用がある。
【0024】
グレッツェル・セルの動作原理は、基本的に従来の半導体を用いた湿式太陽電池と変わらない。ただし、グレッツェル・セルのような多孔質電極のどの部分においても光電荷分離応答が均一かつ効率的に行われるのは、主に電解質層が液体であるためである。すなわち、色素担持多孔質電極を溶液に浸すだけで溶液が均一に多孔質内に拡散し、理想的な電気化学的界面を形成できるからである。
【0025】
しかし、従来のグレッツェル・セルにおいては、電解液中に水分が微量でも存在すると、増感色素や電解質が分解し、光電変換特性が劣化するなどの問題点が存在していた。そのため、電解液中の水分を完全に取り除いた後に、光電変換素子の電解質層に注入されるのであるが、経時的に電解質層内に水分が発生することがある。また、光電変換素子の使用状態により、時々、半導体層と対電極との接触が生じたり、半導体層と対電極との距離が不均一となって、光電変換特性が劣化することがあった。
【0026】
【発明が解決しようとする課題】
従って、本発明の目的は、電解液中の水分の問題及び半導体層と対電極との間の距離の問題を解決し、光電変換効率及び長期信頼性に優れた光電変換素子を提供することである。
【0027】
【課題を解決するための手段】
前記課題は、少なくとも、一方の面上に半導体層が被着された電極と、この電極の前記半導体層と対峙する対電極と、該電極の前記半導体層と対電極との間に配置された電解質層を有する光電変換素子において、前記電解質層を構成する電解液中に 、H BO 、(CH O) B、(C O) B、(CH O) B−B 、活性アルミナ、ゼオライト、シリカゲル、酸化マグネシウム、酸化カルシウム、無水フタル酸及び無水コハク酸からなる群から選択される、脱水作用及び絶縁性を有し、粒径が0.1μm〜1mmの範囲内の粒子を配合することにより解決される。
【0028】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照しながら本発明の光電変換素子の一例について具体的に説明する。図1は本発明の光電変換素子の一例の概要断面図である。図示されているように、本発明の光電変換素子1は、基板2の一方の表面に形成された電極3を有する。この電極3の一方の表面には色素増感半導体層6が形成されている。更に、この色素増感半導体層6に対峙して対電極4が存在する。対電極4は別の基板7の一方の表面に形成されている。色素増感半導体層6と対電極4との間には電解質層5が存在し、電解質層5は脱水作用及び絶縁性を有する粒子8と電解液9とから構成されている。
【0029】
本発明の光電変換素子の特徴は、図1に示されるように、電解質層5を構成する電解液9の中に、脱水作用及び絶縁性を有する粒子8が配合されていることである。この粒子8の存在により、電解質層5を構成する電解液9中の水分が除去され、水分の存在に起因する弊害を取り除くことができる。また、前記粒子が絶縁作用を持つことにより、粒子の存在が、半導体極と対極との接触を防ぎ、かつ、前記電極間距離を一定に保つ作用を発揮する。以上の作用により、電解液9中に脱水作用および絶縁性の粒子を存在させることにより高い光電変換特性をもつ光電変換素子を得ることができる。
【0030】
本発明の光電変換素子1で使用できる、脱水作用及び絶縁性を有する粒子8は例えば、ホウ素化合物のB、HBO、(CHO)B、(CO)B、(CHO)B−Bなどや、活性アルミナ、ゼオライト、シリカゲル、酸化マグネシウム、酸化カルシウム、無水フタル酸及び無水コハク酸などが挙げられる。これらの粒子は一種類でもよいが、二種類以上を併用することもできる。
【0031】
脱水作用及び絶縁性を有する粒子8の代わりに、脱水剤とガラスビーズ、プラスチックビーズなどの絶縁性粒子からなるスペーサを併用して配置することは課題の解決手段とはならない。なぜなら、電解質層5中は酸化還元体が移動する領域であり、脱水剤やスペーサーの存在は酸化還元体の移動を妨げる効果をもつからである。従って、水分の問題と、電極間距離の問題とを解決することは重要であるものの、酸化還元体の移動を妨げる脱水剤及びスペーサーの添加は逆効果となる。従って、本発明においても、脱水作用しか有しない粒子と絶縁性しか有しない粒子を組み合わせて使用することは好ましくない。
【0032】
本発明の光電変換素子1において、色素増感半導体層6と対電極4との間の距離が1mmを超えると、酸化還元体の移動距離が長くなりすぎて光電変換特性が低下する傾向がある。従って、色素増感半導体層6と対電極4との間の間隔は1mm以下であることが好ましい。よって、脱水作用及び絶縁性を有する粒子8の粒径は1mm以下でなければならない。また、脱水作用及び絶縁性を有する粒子8の粒径が小さいほど、色素増感半導体層6と対電極4との間の距離が短くなることから、それ自体は特に特性に悪影響を及ぼすことはない。しかしながら、前記粒子の径が0.1μm以下になると前記粒子を単層で配置することが困難となり、前記粒子により色素増感半導体層6と対電極4との間の距離を制御することが困難となる。よって、色素増感半導体層6と対電極4との間の距離を制御するという観点から、粒子8の粒径としては0.1μm以上とすることが好ましい。一般的に、光電変換素子1を設計する際、色素増感半導体層6と対電極4との間の距離が予め決定されるので、この設計距離値に基づき、電解質層9内に配置される脱水作用及び絶縁性を有する粒子8の粒径も自ずから決定される。
【0033】
本発明の光電変換素子1において、基板2及び7としては、ガラス又はプラスチックなどを使用できる。プラスチックは可撓性なので、柔軟性を必要とする用途に適する。基板2は光入射側基板として機能するので透明であることが好ましい。一方、基板7は透明でも、不透明でもよいが、両側の基板から光を入射させることができるので、透明であることが好ましい。
【0034】
基板2の一方の面に成膜される電極3は、金属そのものか、またはガラスもしくはプラスチック上に導電剤層を有するものである。好ましい導電剤としては金属(例えば白金、金、銀、銅、アルミニウム、ロジウム、インジウム等)、炭素、もしくは導電性の金属酸化物(インジウム−錫複合酸化物、フッ素をドープした酸化錫等)が挙げられる。
【0035】
電極3は、表面抵抗が低い程よい。好ましい表面抵抗の範囲としては50Ω/□以下であり、より好ましくは30Ω/□以下である。下限に特に制限はないが、通常0.1Ω/□である。
【0036】
電極3は、光透過率が高い程よい。好ましい光透過率としては50%以上であり、より好ましくは80%である。電極3としてはガラスもしくはプラスチック上に導電剤層を有するものが好ましい。電極3の膜厚は0.1〜10μmが好ましい。電極3の膜厚が0.1μm未満の場合、均一な膜厚の電極膜を形成することが困難になる。一方、膜厚が10μm超の場合、光透過性が低下し、十分な光が色素増感半導体層7に入射されなくなる。透明電極3を使用する場合、光は色素増感半導体層6が被着される側の電極3から入射させることが好ましい。
【0037】
対電極4は光電変換素子1の正極として機能し、前記の色素増感半導体層6が被着される側の電極3と同義である。本発明における光電変換素子1の対電極4としては、光電変換素子1の正極として効率よく作用するために、電解質の還元体に電子を与える触媒作用を有する素材が好ましい。このような素材は例えば、金属(例えば白金、金、銀、銅、アルミニウム、ロジウム、インジウム等)、グラファイト、もしくは導電性の金属酸化物(インジウム−錫複合酸化物、フッ素をドープした酸化錫等)などである。これらのうち、白金やグラファイトなどが特に好ましい。対電極4が配設される側の基板7は、対電極4の被着面側に透明導電膜(図示されていない)を有することもできる。この透明導電膜は例えば、前記の電極3と同じ材料から成膜することができる。この場合、対電極4も透明であることが好ましい。
【0038】
色素増感半導体層6の膜厚は0.1μm〜100μmの範囲内であることが好ましい。色素増感半導体層7の膜厚が0.1μm未満の場合には、十分な光電変換効果が得られない可能性がある。一方、膜厚が100μm超の場合には、可視光および近赤外光に対する透過性が著しく悪化するなどの不都合が生じるので好ましくない。半導体層6の膜厚の一層好ましい範囲は、1μm〜50μmであり、特に好ましい範囲は5μm〜30μmであり、最も好ましい範囲は10μm〜20μmである。
【0039】
色素増感半導体層6において使用する半導体粒子としては、Cd、Zn、In、Pb、Mo、W、Sb、Bi、Cu、Hg、Ti、Ag、Mn、Fe、V、Sn、Zr、Sr、Ga、Si、Crの酸化物、SrTiO、CaTiOのようなペロブスカイト、または、CdS、ZnS、In、PbS、MoS、WS、Sb、Bi、ZnCdS、CuSの硫化物、CdSe、InSe、WSe、HgS、PbSe、CdTeの金属カルコゲナイド、その他GaAs、Si、Se、Cd、Zn、InP、AgBr、PbI、HgI、BiIが好ましい。または、前記半導体から選ばれる少なくとも一種以上を含む複合体、例えば、CdS/TiO、CdS/AgI、AgS/AgI、CdS/ZnO、CdS/HgS、CdS/PbS、ZnO/ZnS、ZnO/ZnSe、CdS/HgS、CdS/CdSe1−x、CdS/Te1−x、CdSe/Te1−x、ZnS/CdSe、ZnSe/CdSe、CdS/ZnS、TiO/Cd、CdS/CdSeCdZn1−yS、CdS/HgS/CdSが好ましい。
【0040】
また、この半導体粒子に担持させる増感色素としては、従来の色素増感性光電変換素子で常用される色素であれば全て使用できる。このような色素は当業者に公知である。このような色素は例えば、RuL2(H2O)2タイプのルテニウム−シス−ジアクア−ビピリジル錯体又はルテニウム−トリス(RuL3)、ルテニウム−ビス(RuL2)、オスニウム−トリス(OsL3)、オスニウム−ビス(OsL2)タイプの遷移金属錯体若しくは、亜鉛−テトラ(4−カルボキシフェニル)ポルフィリン、鉄−ヘキサシアニド錯体、フタロシアニンなどが挙げられる。有機色素としては、9-フェニルキサンテン系色素、クマリン系色素、アクリジン系色素、トリフェニルメタン系色素、テトラフェニルメタン系色素、キノン系色素、アゾ系色素、インジゴ系色素、シアニン系色素、メロシアニン系色素、キサンテン系色素などが挙げられる。この中でもルテニウム−ビス(RuL2)誘導体が好ましい。
【0041】
半導体粒子へ増感色素を担持させる方法としては、当業者に公知の任意の方法を使用することができる。例えば、特願平2000−092803号明細書に記載されているように、半導体粒子内部に細孔を形成し、多孔質化させた半導体粒子に増感色素を担持させる方法が使用できる。この方法によれば、半導体粒子の外表面の他、細孔内にも増感色素を担持させることができ、増感色素の担持量を増大させることができる。その結果、光電変換効率を増大させることができる。
【0042】
本発明の光電変換素子1における電解質層5で使用される電解質としては、酸化体と還元体からなる一対の酸化還元系構成物質が溶媒中に含まれていれば、特に限定されないが、酸化体と還元体が同一電荷を持つ酸化還元系構成物質が好ましい。この明細書における、酸化還元系構成物質とは、酸化還元反応において、可逆的に酸化体及び還元体の形で存在する一対の物質を意味する。このような酸化還元系構成物質自体は当業者に公知である。本発明で使用できる酸化還元系構成物質は例えば、塩素化合物−塩素、ヨウ素化合物−ヨウ素、臭素化合物−臭素、タリウムイオン(III)−タリウムイオン(I)、水銀イオン(II)−水銀イオン(I)、ルテニウムイオン(III)−ルテニウムイオン(II)、銅イオン(II)−銅イオン(I)、鉄イオン(III)−鉄イオン(II)、バナジウムイオン(III)−バナジウムイオン(II)、マンガン酸イオン−過マンガン酸イオン、フェリシアン化物−フェロシアン化物、キノン−ヒドロキノン、フマル酸−コハク酸などが挙げられる。言うまでもなく、その他の酸化還元系構成物質も使用できる。中でも、ヨウ素化合物−ヨウ素が好ましく、ヨウ素化合物としては、ヨウ化リチウム、ヨウ化カリウム等の金属ヨウ化物、テトラアルキルアンモニウムヨージド、ピリジニウムヨージド等のヨウ化4級アンモニウム塩化合物、ヨウ化ジメチルプロピルイミダゾリウム等のヨウ化ジイミダゾリウム化合物が特に好ましい。
【0043】
電解質を溶解するために使用される溶媒は、酸化還元系構成物質を溶解しイオン伝導性に優れた化合物が好ましい。溶媒としては水性溶媒及び有機溶媒の何れも使用できるが、酸化還元系構成物質をより安定するため、有機溶媒が好ましい。例えば、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、メチルエチルカーボネート、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート等のカーボネ−ト化合物、酢酸メチル、プロピオン酸メチル、ガンマーブチロラクトン等のエステル化合物、ジエチルエーテル、1,2−ジメトキシエタン、1,3−ジオキソシラン、テトラヒドロフラン、2−メチルーテトラヒドラフラン等のエーテル化合物、3−メチル−2−オキサゾジリノン、2−メチルピロリドン等の複素環化合物、アセトニトリル、メトキシアセトニトリル、プロピオニトリル等のニトリル化合物、スルフォラン、ジジメチルスルフォキシド、ジメチルフォルムアミド等の非プロトン性極性化合物などが挙げられる。これらはそれぞれ単独で用いることもできるし、また、2種類以上を混合して併用することもできる。中でも、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート等のカーボネ−ト化合物、3−メチル−2−オキサゾジリノン、2−メチルピロリドン等の複素環化合物、アセトニトリル、メトキシアセトニトリル、プロピオニトリル等のニトリル化合物が特に好ましい。従って、電解質を溶媒に溶解させて得られたものが電解液9である。
【0044】
【実施例】
つぎに、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明する。ただし、本発明はそれらの実施例のみに限定されるものではない。
【0045】
実施例1
界面活性剤を含む水とアセチルアセトンとの混合液(容量混合比=20/1)中に酸化チタン粒子(日本アエロジル社製,P25,粒径20nm)を濃度約38wt%で分散させてスラリー液を調製した。次に、このスラリー液を厚さ1mmの導電性ガラス基板(旭硝子製,F−SnO,10Ω/sq)上に塗布し、乾燥し、得られた乾燥物を500℃で30分間、空気中で焼成し、基板上に厚さ10μmの多孔質酸化チタン膜を形成した。次に、この多孔質酸化チタン膜を設けた基板と共に、[Ru(4,4’-ジカルボキシル-2,2’-ビピリジン)2-(NCS)2]で表される増感色素溶液中に浸漬し、80℃で還流を行いながら色素吸着処理を行った。なお、粒径の測定は走査型電子顕微鏡(日立製S4000)により行い、その電子顕微鏡写真の任意の範囲より100個の粒子を選び、その粒子の径の平均値をもって粒径とした。
【0046】
前記のようにして得た半導体電極とその対極とにより電解液をはさみこみ光電変換素子を構成した。この場合、対極としては、白金を20nm厚さで蒸着した導電性ガラスを用いた。両電極間には、粒径500μmの酸化ホウ素(B)粒子及び電解液を挟み込むことで調製した。電解液としては,テトラプロピルアンモニウムヨーダイド(0.46M)とヨウ素(0.6M)を含むエチレンカーボネートとアセトニトリルとの混合液(容量混合比=80/20)を用いた。
【0047】
比較例1
界面活性剤を含む水とアセチルアセトンとの混合液(容量混合比=20/1)中に酸化チタン粒子(日本アエロジル社製,P25,平均粒径20nm)を濃度約38wt%で分散させてスラリー液を調製した。次に、このスラリー液を厚さ1mmの導電性ガラス基板(旭硝子製,F−SnO,10Ω/sq)上に塗布し、乾燥し、得られた乾燥物を500℃で30分間、空気中で焼成し、基板上に厚さ10μmの多孔質酸化チタン膜を形成した。次に、この多孔質酸化チタン膜を設けた基板と共に、[Ru(4,4’-ジカルボキシル-2,2’-ビピリジン)2-(NCS)2]で表される増感色素溶液中に浸漬し、80℃で還流を行いながら色素吸着処理を行った。
【0048】
前記のようにして得た半導体電極とその対極とにより電解液をはさみこみ光電変換素子を構成した。この場合、対極としては、白金を20nm厚さで蒸着した導電性ガラスを用いた。両電極間の距離は0.1mmとした。これは、光電変換素子の外周部に0.1mm厚のフィルムを挟み込むことで調整した。電解液としては,テトラプロピルアンモニウムヨーダイド(0.46M)とヨウ素(0.6M)を含むエチレンカーボネートとアセトニトリルとの混合液(容量混合比=80/20)を用いた。
【0049】
比較例2
界面活性剤を含む水とアセチルアセトンとの混合液(容量混合比=20/1)中に酸化チタン粒子(日本アエロジル社製,P25,平均粒径20nm)を濃度約38wt%で分散させてスラリー液を調製した。次に、このスラリー液を厚さ1mmの導電性ガラス基板(旭硝子製,F−SnO,10Ω/sq)上に塗布し、乾燥し、得られた乾燥物を500℃で30分間、空気中で焼成し、基板上に厚さ10μmの多孔質酸化チタン膜を形成した。次に、この多孔質酸化チタン膜を設けた基板と共に、[Ru(4,4’-ジカルボキシル-2,2’-ビピリジン)2-(NCS)2]で表される増感色素溶液中に浸漬し、80℃で還流を行いながら色素吸着処理を行った。
【0050】
前記のようにして得た半導体電極とその対極とにより電解液をはさみこみ光電変換素子を構成した。この場合、対極としては、白金を20nm厚さで蒸着した導電性ガラスを用いた。両電極間には、両電極間には、粒径3mmの酸化ホウ素(B)粒子及び電解液を挟み込むことで調製した。電解液としては,テトラプロピルアンモニウムヨーダイド(0.46M)とヨウ素(0.6M)を含むエチレンカーボネートとアセトニトリルとの混合液(容量混合比=80/20)を用いた。
【0051】
比較例3
界面活性剤を含む水とアセチルアセトンとの混合液(容量混合比=20/1)中に酸化チタン粒子(日本アエロジル社製,P25,平均粒径20nm)を濃度約38wt%で分散させてスラリー液を調製した。次に、このスラリー液を厚さ1mmの導電性ガラス基板(旭硝子製,F−SnO,10Ω/sq)上に塗布し、乾燥し、得られた乾燥物を500℃で30分間、空気中で焼成し、基板上に厚さ10μmの多孔質酸化チタン膜を形成した。次に、この多孔質酸化チタン膜を設けた基板と共に、[Ru(4,4’-ジカルボキシル-2,2’-ビピリジン)2-(NCS)2]で表される増感色素溶液中に浸漬し、80℃で還流を行いながら色素吸着処理を行った。
【0052】
前記のようにして得た半導体電極とその対極とにより電解液をはさみこみ光電変換素子を構成した。この場合、対極としては、白金を20nm厚さで蒸着した導電性ガラスを用いた。両電極間には、両電極間には、平均粒径500μmのガラスビーズ及び電解液を挟み込むことで調製した。電解液としては,テトラプロピルアンモニウムヨーダイド(0.46M)とヨウ素(0.6M)を含むエチレンカーボネートとアセトニトリルとの混合液(容量混合比=80/20)を用いた。
【0053】
比較例4
界面活性剤を含む水とアセチルアセトンとの混合液(容量混合比=20/1)中に酸化チタン粒子(日本アエロジル社製,P25,平均粒径20nm)を濃度約38wt%で分散させてスラリー液を調製した。次に、このスラリー液を厚さ1mmの導電性ガラス基板(旭硝子製,F−SnO,10Ω/sq)上に塗布し、乾燥し、得られた乾燥物を500℃で30分間、空気中で焼成し、基板上に厚さ10μmの多孔質酸化チタン膜を形成した。次に、この多孔質酸化チタン膜を設けた基板と共に、[Ru(4,4’-ジカルボキシル-2,2’-ビピリジン)2-(NCS)2]で表される増感色素溶液中に浸漬し、80℃で還流を行いながら色素吸着処理を行った。
【0054】
前記のようにして得た半導体電極とその対極とにより電解液をはさみこみ光電変換素子を構成した。この場合、対極としては、白金を20nm厚さで蒸着した導電性ガラスを用いた。両電極間には、両電極間には、平均粒径500μmのガラスビーズ及び平均粒径20μmの酸化ホウ素(B)粒子と電解液を挟み込むことで調製した。電解液としては,テトラプロピルアンモニウムヨーダイド(0.46M)とヨウ素(0.6M)を含むエチレンカーボネートとアセトニトリルとの混合液(容量混合比=80/20)を用いた。
【0055】
前記実施例1及び比較例1〜4で組立てた光電変換素子の光電変換効率及び長期信頼性を評価した。光電変換効率に関しては、光電変換素子に45mW/cmのキセノンランプ光を照射し、光電流−電圧特性を測定し求めた。長期信頼性は、JISC8917付属書9記載の耐熱性(高温保存)試験B−1の試験前後の変換効率より変換効率保持率を求め、これを指標とし判断した。なお、JISC8917付属書9記載の耐熱性(高温保存)試験B−1の方法を下記に示す。また、測定結果を表1に要約して示す。
【0056】
耐熱性(高温保存)試験法
耐熱性(高温保存)試験には、C8917結晶系太陽電池モジュールの環境試験方法及び耐久性試験方法附属書9記載の耐熱性(高温保存)試験B−1に準じて行った。下記にその試験方法を記す。
(1) 試験に先立ち,試料の変換効率を測定する。
(2) 恒温槽にて,室温より85℃まで加温後、温度85±2℃で、1000±12h保持する。試験槽内の出力端子は、開放状態に保つ。
(3) 試験後,清浄な布などで表面を清掃した後、室温に24h以上放置し、試料の変換効率を評価する。
(4) 試験前後の変換効率の値より、下記式で定義する変換効率保持率を求めた。
(変換効率保持率)={(耐熱性試験前の変換効率)―(耐熱性試験後の変換効率)}×100/(耐熱性試験前の変換効率)
【0057】
【表1】
試 料 光電変換効率(%) 変換効率保持率(%)
実施例1 5.4 99
比較例1 5.2 2
比較例2 3.0 98
比較例3 5.3 1
比較例4 2.8 85
【0058】
前記の表1に示された結果から明らかなように、本発明の実施例1では比較例1に比較し、ほぼ同等の光電変換効率を示し、かつ高い変換効率保持率を示す。また、本発明の平均粒径500μmの酸化ホウ素粒子を用いた実施例1では、平均粒径3mmの酸化ホウ素粒子を用いた比較例2と比較し、光電変換効率は高い値を示した。前記に関しては、酸化ホウ素の平均粒径を小さくしたことにより半導体層と対極との間の距離が短くなり、酸化還元対を媒介とした電子の授受反応が速やかに行われるようになったことが原因であると推察する。
【0059】
また、多孔質酸化チタン膜を設けた電極と白金を設けた電極との間に酸化ホウ素粒子を設けた実施例1では、ガラスビーズを設けた比較例3と比較し、光電変換効率はほぼ同程度であるが、変換効率保持率に関しては高い値を示した。前記の光電変換効率に関してはどちらも平均粒径が500μmのものを用いたため同程度の値を示したと推察する。変換効率保持率に関しては、酸化ホウ素粒子にはガラスビーズにはない脱水作用があることが変換効率保持率の向上に寄与していると推察する。
【0060】
また、比較例3に脱水作用をもつ平均粒径20μmの酸化ホウ素粒子を添加した比較例4では、比較例3に比べ変換効率保持率の向上は見られたが、同時に光電変換効率の減少する傾向にあった。
【0061】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、電解質層内に脱水作用及び絶縁性を有する粒子を配置することにより、優れた光電変換効率と長期信頼性を有する光電変換素子を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の光電変換素子の一例の概要断面図である。
【符号の説明】
1 本発明の光電変換素子
2,7 基板
3 電極
4 対電極
5 電解質層
6 色素増感半導体層
8 脱水作用及び絶縁性を有する粒子
9 電解液

Claims (1)

  1. 少なくとも、一方の面上に半導体層が被着された電極と、この電極の前記半導体層と対峙する対電極と、該電極の前記半導体層と対電極との間に配置された電解質層を有する光電変換素子において、前記電解質層を構成する電解液中に 、H BO 、(CH O) B、(C O) B、(CH O) B−B 、活性アルミナ、ゼオライト、シリカゲル、酸化マグネシウム、酸化カルシウム、無水フタル酸及び無水コハク酸からなる群から選択される、脱水作用及び絶縁性を有し、粒径が0.1μm〜1mmの範囲内の粒子を配合したことを特徴とする光電変換素子。
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