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JP4457781B2 - 劣化度推定方法及び劣化度推定装置 - Google Patents

劣化度推定方法及び劣化度推定装置 Download PDF

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JP4457781B2 JP2004196410A JP2004196410A JP4457781B2 JP 4457781 B2 JP4457781 B2 JP 4457781B2 JP 2004196410 A JP2004196410 A JP 2004196410A JP 2004196410 A JP2004196410 A JP 2004196410A JP 4457781 B2 JP4457781 B2 JP 4457781B2
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Description

本発明は劣化度推定方法及び劣化度推定装置に係り、特に、車両に搭載されたバッテリの劣化度を推定する劣化度推定方法及び劣化度推定装置に関する。
従来、車両に搭載された鉛電池は、走行中、常にオルタネータによりフロート充電され、また、負荷もランプ類などに限られていたため、あまり深い充電はされず、ほぼ常時満充電付近に保たれ使用されてきた。しかし、近年、環境意識の高まりから、車両からの二酸化炭素の排出を削減する必要が生じ、特に、大型バスやトラック等では、信号待ちなどの停車時にエンジンを停止させるアイドルストップ機能を有するシステム車が増加してきている。
システム車では、エンジン停止中のエアコン、カーステレオなどの負荷はすべてバッテリ(鉛電池)からの電力で賄われるため、従来に比べ深い放電状態が増え、バッテリの残容量が少なくなるケースが増加することが予想される。また、これに伴って、バッテリの劣化も早くなる事態も予測される。一方、バッテリの出力は、残容量や劣化に依存するため、エンジン停止中にバッテリの残容量が小さくなると、エンジンが起動するのに充分な出力がなくなり、アイドルストップ後の再起動時に、エンジンがかからなくなるおそれがある。
従って、システム車では、バッテリの残容量や劣化度を推定し、アイドルストップ前にエンジン再起動に必要な出力の有無を監視する必要性が生じ、更に、バッテリがエンジン再起動に必要な出力を有する場合には、アイドルストップが可能である旨を、エンジン再起動に必要な出力を有しない場合には、アイドルストップを止め、バッテリを充電する必要がある旨を、車両側のコンピュータに報知する必要がある。
このような要請に応えるため、内部抵抗が一定値以上になった時から内部抵抗と残容量の相関関係近似式を求め、これを基に鉛電池の残容量を監視すると共に、残容量が所定値に低下した時にそれ以前の一定期間の内部抵抗の推移から内部抵抗と残容量の相関関係近似式を求め、その近似式により鉛電池の寿命時期を推定する技術が開示されている(例えば、特許文献1参照)。また、エンジン始動時の電圧や内部抵抗を予め測定したマップと比較してバッテリの残容量を算出する技術が開示されている(例えば、特許文献2参照)。更に、満充電状態での開路電圧からバッテリの劣化度を算出する技術も知られている。
特開2002−334725号公報 特開平7−63830号公報
しかしながら、上述した特許文献1の技術では、交流電流を引加し応答電圧、位相差により鉛電池の内部抵抗を測定するため、車載用の鉛電池の監視や寿命推定に適用すると、装置全体の大型化やコスト高を招く、という問題がある。従って、車両に搭載されたバッテリの劣化度を推定する場合には、バッテリの充放電時や休止時に通常計測される直流電流や電圧からバッテリの劣化度を推定ないし判定できることが望ましい。また、特許文献2の技術では、開路電圧から算出した電池状態を放電電圧や内部抵抗から算出した残容量に置き換えたため残容量検出の精度が悪化する場合がある。更に、満充電状態での開路電圧からバッテリの劣化度を算出する技術では、バッテリ使用中や使用直後にバッテリの劣化度を推定できないため、リアルタイムにバッテリ状態の把握が必要なシステム車への適用は難しい。
本発明は上記事案に鑑み、精度良くリアルタイムにバッテリの劣化度を推定可能な劣化度推定方法及び劣化度推定装置を提供することを課題とする。
上記課題を解決するために、本発明の第1の態様は、車両に搭載されたバッテリの劣化度を推定する劣化度推定方法であって、エンジン始動前に前記バッテリの満充電近傍での開路電圧OCVを測定し、エンジン始動開始時に前記バッテリの放電電圧V及び放電電流Iを測定し、前記エンジン始動開始時から前記バッテリに流れた放電電流の積算値が予め定められた電気量に到達した時の前記バッテリの放電電圧V及び放電電流Iを測定し、前記測定された放電電圧V、V及び放電電流I、Iから前記バッテリの内部抵抗Rを算出し、前記測定された開路電圧OCV及び前記算出された内部抵抗Rを前記バッテリの複数の劣化度に応じて開路電圧OCVと内部抵抗Rとの関係が予め定義されたマップに当てはめて前記バッテリの劣化度を推定する、ステップを含む。
第1の態様において、エンジン始動前にバッテリの放電電流の測定を開始し、該測定された放電電流が所定値に至った時にエンジン始動開始時とするようにしてもよい。また、エンジン始動中の微少時間での測定結果から内部抵抗Rを算出するために、内部抵抗R=(放電電圧V−放電電圧V)/(放電電流I−放電電流I)として算出することが好ましい。
また、上記課題を解決するために、本発明の第2の態様は、車両に搭載されたバッテリの劣化度を推定する劣化度推定装置であって、前記バッテリの満充電近傍での開路電圧OCVを測定するOCV測定手段と、前記バッテリの放電電圧を測定する電圧測定手段と、前記バッテリの放電電流を測定する電流測定手段と、前記バッテリに流れる放電電流の積算値を演算する積算手段と、前記電圧測定手段及び前記電流測定手段で測定された放電電圧及び放電電流から前記バッテリの内部抵抗を算出する内部抵抗算出手段と、前記バッテリの複数の劣化度に応じて開路電圧OCVと内部抵抗Rとの関係が予め定義されたマップを記憶した記憶手段と、前記OCV測定手段で測定された開路電圧OCV及び前記内部抵抗算出手段で算出された内部抵抗Rを前記記憶手段に記憶されたマップに当てはめて前記バッテリの劣化度を推定する劣化度推定手段と、を備え、前記電圧測定手段及び前記電流測定手段は、エンジン始動開始時、及び、前記積算手段により前記エンジン始動開始時から積算された積算値が予め定められた電気量に到達した時のそれぞれの前記バッテリの放電電圧及び放電電流を測定し、前記内部抵抗算出手段は、前記エンジン始動開始時及び前記予め定められた電気量到達時の前記バッテリの放電電圧及び放電電流から前記バッテリの内部抵抗Rを算出する、ことを特徴とする。
第2の態様では、OCV測定手段がバッテリの満充電近傍での開路電圧OCVを測定し、エンジン始動時に電圧測定手段及び電流測定手段がバッテリの放電電流及び放電電圧を測定する。電圧測定手段及び電流測定手段が、エンジン始動開始時、及び、積算手段によりエンジン始動開始時から積算された積算値が予め定められた電気量に到達した時のそれぞれのバッテリの放電電圧及び放電電流を測定し、内部抵抗算出手段が、エンジン始動開始時及び予め定められた電気量到達時のバッテリの放電電圧及び放電電流からバッテリの内部抵抗Rを算出する。そして、劣化度推定手段が、OCV測定手段により測定された開路電圧OCV及び内部抵抗算出手段により算出された内部抵抗Rを、記憶手段に記憶されバッテリの複数の劣化度に応じて開路電圧OCVと内部抵抗Rとの関係が予め定義されたマップに当てはめてバッテリの劣化度を推定する。
本発明によれば、エンジン始動開始時の放電電圧V及び放電電流Iと、エンジン始動開始時からバッテリに流れた放電電流の積算値が予め定められた電気量に到達したときのバッテリの放電電圧V及び放電電流Iとから内部抵抗Rを演算しているので、内部抵抗Rを適正に算出することができると共に、測定された開路電圧OCV及び算出された内部抵抗Rをバッテリの複数の劣化度に応じて開路電圧OCVと内部抵抗Rとの関係が予め定義されたマップに当てはめてバッテリの劣化度を推定するので、リアルタイムに、かつ、マップにおけるバッテリの劣化度−開路電圧OCV−内部抵抗Rの相関が高ためバッテリの劣化度を精度良く推定することができる、という効果を得ることができる。
以下、図面を参照して、本発明に係る劣化度推定方法を、車両用鉛電池の劣化度を演算し劣化が進行したときに車両側マイコンに警告を出力する警告装置に適用した実施の形態について説明する。
(構成)
図1に示すように、本実施形態の警告装置11は、鉛電池1のベント栓から離れた側の鉛電池1の側面に固着されており、鉛電池1の劣化度を演算するマイクロコンピュータ(以下、マイコンと略称する。)8を有している。鉛電池1には、例えば、通常自動車用で使用される、容積9リットル、1セルが正極6枚、負極7枚で構成され6セル直列の公称12V液式鉛電池を用いることができる。鉛電池1の電槽中央部の隔壁にはセンサ挿入孔が形成されており、センサ挿入孔にはサーミスタ等の温度センサ7が挿入され接着剤で固定されている。
マイコン8は、一般にバッテリコントローラと呼ばれ、中央演算処理装置として機能するCPU、警告装置11の基本制御プログラムやプログラムデータを記憶したROM、CPUのワークエリアとして働くRAM、A/Dコンバータ、及び、上位の車両側マイコン10と通信するためのインターフェース等を含んで構成されている。
マイコン8のROMには、複数のSOH(State Of
Health)に応じて鉛電池の開路電圧OCVと内部抵抗Rとの関係を示すSOH−OCV−R関係マップ(以下、単に関係マップという。)のマップデータが格納されている。図2に示すように、関係マップは、SOHが小さくなるにつれて、開路電圧OCV−内部抵抗Rの関係が増大する方向にシフトする。図2に示した関係マップでは、SOHがそれぞれ50%、75%、100%で開路電圧OCVと内部抵抗Rとの関係を示している。この関係マップでは、開路電圧OCV−内部抵抗Rの領域が(I)SOH<50%、(II)50%≦SOH<75%(III)75%≦SOH<100%(IV)SOH≧100%の4領域に画定されるため、鉛電池1の現在のSOHの判定を簡便に行うことが可能である。なお、鉛電池が劣化するのは、電極の活物質が劣化することに起因する。すなわち、正極(PbO)では粒子の凝集増大に伴う細孔径の増大による導電性ネットワークの崩壊が生じ、負極では不動態化した不還元性PbSOの蓄積に伴う抵抗増大より、鉛電池の劣化が進行する。
鉛電池1の正極端子は、電流センサ6を介してイグニッションスイッチ(以下、IGNスイッチという。)9の中央端子に接続されている。IGNスイッチ9は、中央端子とは別に、OFF端子、ON/ACC端子及びSTART端子を有しており、ロータリー式に切り替え接続が可能である。
電流センサ6の出力端子はマイコン8に内蔵されたA/Dコンバータに接続されており、電流センサ6から出力されたホール電圧はA/Dコンバータでデジタル値に変換され、マイコン8は鉛電池1に流れる電流をデジタル値として取り込むことができる。また、鉛電池1の両極端子はマイコン8に内蔵された他のA/Dコンバータに接続されており、マイコン8は鉛電池1の両端電圧をデジタル値で取り込むことができる。更に、温度センサ7の出力端子は別のA/Dコンバータに接続されており、マイコン8は鉛電池1の温度をデジタル値で取り込むことができる。なお、警告装置11は、このような配線を含んで構成されている。
一方、車両側には、図示しないクラッチ機構を介してエンジン4の回転軸に回転駆動力を伝達させエンジン4を始動させるスタータ3が配されている。また、エンジン4の回転軸は、不図示のクラッチ機構を介して発電機2に動力の伝達が可能であり、エンジン4が回転状態にあるときは、このクラッチ機構を介して発電機2が作動し発電機2からの電力がエアコン、ラジオ等の補機5乃至鉛電池1に供給(充電)される。このようなエンジン制御等は車両側マイコン10により実行される。
IGNスイッチ9のON/ACC端子は、補機5及び一方向への電流の流れを許容する整流素子を介して発電機2の一端に接続されている。また、START端子はスタータ3の一端に接続されている。更に、発電機2、スタータ3及び補機5の他端、鉛電池1の負極端子及びマイコン8は、それぞれグランドに接続されている。
(動作)
次に、フローチャートを参照して、本実施形態の警告装置11の動作について、マイコン8のCPUを主体として説明する。CPUは、マイコン8に電源が投入されると、ROMに格納されたプログラム及び上述したマップデータ等のプログラムデータをRAMに展開する初期設定処理を実行した後、鉛電池1の劣化を車両側マイコン10に報知するための劣化報知ルーチンを実行する。
図4に示すように、劣化報知ルーチンでは、まず、ステップ102において、IGNスイッチ9の中央端子がON/ACC端子に接続される(イグニッションがオンとなる)まで待機する。イグニッションがオンとなったか否かは、車両側マイコン10から報知を受けてもよいし、又は、電流センサ6に流れる電流が所定値(例えば、0.05A)以上か否かを判断することで、イグニッションがオンとなったか否かをCPU自体で判断するようにしてもよい。なお、本実施形態では、車両側マイコン10から報知を受けたものとして説明する。
イグニッションがオンとなった旨の報知を受けると、CPUは、ステップ104で、マイコン8に内蔵されたA/Dコンバータを作動させ、鉛電池1の両端電圧及び鉛電池1に流れる電流の測定を開始する。本実施形態では、A/Dコンバータのサンプリング速度が、電圧、電流共に1msのものを用いた。これらサンプリング(測定)された電圧値及び電流値は、RAMに順次格納される。また、ステップ104では、鉛電池1の温度Tの測定も開始する。なお、温度測定用のA/Dコンバータのサンプリング速度は、微少時間での温度変化はないものと考えられるため、電圧、電流測定用のA/Dコンバータのサンプリング速度より遅いもの(例えば、20ms)を使用してもよい。
次のステップ106では、前回、IGNスイッチ9がOFF端子に接続された(イグニッションがオフとなった)ときの鉛電池1のSOH(の演算値)をRAMから読み出す。RAMには、前回、イグニッションがオフとなったときの鉛電池1のSOHが記憶されている。なお、イグニッションがオフとなったか否かは、車両側マイコン10から報知を受けてもよいし、又は、電流センサ6に流れる電流が所定値(例えば、0.05A)未満か否かを判断することで、イグニッションがオフとなったか否かをCPU自体で判断するようにしてもよい。
次に、ステップ108において、ステップ106で読み出した鉛電池1のSOHが50%以上か否かを判断する。肯定判断のときは、次のステップ110で、前回の放電終了(イグニッションがオフとなった)後、鉛電池1の分極が解消され開路電圧OCVの測定が可能な所定時間(例えば、6時間)が経過したか否かを判断し、否定判断のときは所定時間が経過するまで待機し、肯定判断のときは、ステップ112で鉛電池1の満充電近傍での両端電圧を開路電圧OCVとして取り込みRAMに記憶する。なお、ステップ112の後に(ステップ114の前に)、鉛電池1の回路電圧OCVが満充電近傍か否かを判断し、肯定判断のときはステップ114に進み、否定判断のときはステップ108へ戻るステップが存在しているが、図4では、本発明との関係で劣化報知ルーチンを簡潔に表すために、このステップを捨象している。
次いでステップ114においてエンジン始動が開始したか否かを判断する。図3は、エンジン始動時の鉛電池1に流れる電流を模式的に示したものである。エンジン始動時の鉛電池1の電流波形は、IGNスイッチ9がSTART位置に位置したエンジン始動電流通電開始時(時刻ts)の後、スタータ3への急激な1段目のパルス放電が行われ、電流波形は急激な立下りとなり約50ms経過後にピークが現れる(時刻tp)。その後、減衰する数回の増減を経てエンジン始動が完了する。電流波形は、エンジン4の構造、エンジン4とスタータ3とを繋ぐクラッチの摩擦等に影響されるが、概ね図3に示すような波形となる。エンジンの始動開始の判断は、車両側マイコン10から報知を受けても、又は、測定した電流が所定値(例えば、−200A)以下となったときにエンジン始動開始と判断するようにしてもよい。本実施形態では、車両側マイコン10とマイコン8との通信タイムロスを避けるために、後者を採用している。なお、便宜上、以下、このエンジン始動開始時刻をtという。
ステップ114で否定判断のときは、エンジン始動が開始するまで待機し、肯定判断のときは、次のステップ116において、エンジン始動開始時刻tの鉛電池1の放電電圧V及び鉛電池1に流れる放電電流Iを特定する。すなわち、CPUは、A/Dコンバータに1ms間隔で放電電圧V及び放電電流Iをサンプリングさせ、当該放電電圧V及び放電電流IのRAMへの格納を継続しているが、エンジン始動開始時刻tでの放電電圧V及び放電電流Iを特定してRAMに格納する。
次にステップ118では、エンジン始動開始時刻tから現在(時刻t)まで鉛電池1に流れた放電電流Iの積算値Qを下式(1)により演算し、積算値Qが予め定められた電気量Qp(例えば、D26タイプの自動車用鉛電池(公称容量60Ah)では30Ah)より大きいか否か(電気量Qpに到達したか否か)を判断する。否定判断のときは、積算値Qの演算及び電気量Qpとの比較を繰り返し、肯定判断のときはステップ120へ進む。なお、便宜上、以下、この積算値Qが電気量Qpに到達した時刻を到達時刻tという。
ステップ120では、到達時刻tの鉛電池1の放電電圧V及び鉛電池1に流れる放電電流Iを特定してRAMに格納する。次のステップ122では、鉛電池1の内部抵抗Rを下式(2)により演算する。
次のステップ124では、ステップ112で測定した開路電圧OCV、ステップ122で演算した内部抵抗Rを、到達時刻tに直近の過去の温度Tに対する25°C相当での値に補正する。このような補正は、例えば、予めROMに格納され初期設定処理でRAMに展開されたマップを参照することで行うことができる。
次にステップ126では、ステップ124で温度補正した開路電圧OCV及び内部抵抗Rを図1に示した関係マップに当てはめ、鉛電池1のSOHが(I)〜(IV)のいずれにあるかを演算しRAMに格納して、ステップ108へ戻る。
一方、ステップ108で否定判断のとき、すなわち、鉛電池1のSOHが50%未満の場合(図2の領域(I)に位置する場合)には、ステップ128で、車両側マイコン10に電池交換が必要な旨の警告を出力してステップ108へ戻る。車両側マイコン10は、マイコン8からの警告を受けて、車両のインストールメントパネルを制御する図示しないパネル制御部に伝え(制御し)、インストールメントパネルには電池交換が必要な旨の警告が表示される。従って、ドライバは、インストールメントパネルを見ることで電池交換が必要である旨を知ることができる。なお、システム車では、この警告が表示されると、鉛電池1の残容量にも関係するが、原則として、アイドルストップ後のエンジン再始動が保証されないことになる。劣化報知ルーチンは、イグニッションがオフとなったときに、割込処理により終了する。その際、CPUは、最も新しいSOHを特定してRAMに格納する(ステップ106参照)。
次に、本実施形態の警告装置11の作用等について説明する。
一般に、車両用鉛電池の内部抵抗Rは、測定精度を高めるために、大電流が流れたときの(電圧変化量ΔV)/(電流変化量ΔI)で定義される。車両用鉛電池に最も大きな電流が流れるのはエンジン始動時であり、車両用鉛電池の内部抵抗Rを測定する最適の契機である。しかしながら、エンジン始動時の測定タイミングは、図3を参照して説明したように、時刻tsから時刻tpの間の約50msの短い時間内に限られ、この短時間内で内部抵抗Rを適正に演算することは難しい。すなわち、内部抵抗RをΔV/ΔIで適正に算出するには、電圧変化量ΔV及び電流変化量ΔIが概ね直線状に変化することが前提である。しかし、車両によって、又は、補機5の使用状況等によって、電流変化量ΔIが直線的連続性に欠く場合がある(図3の−100A近傍参照)。従って、例えば、エンジン始動時の電流波形の急激な立ち下がり時間内での任意の時間でこれらを測定する場合には、上記のような直線的連続性に欠く電流波形が存在すると、その影響が大きく電流変化量ΔIを適正に測定することができなくなる。このことは、鉛電池の放電電圧が放電電流に依存する性質を考慮すると、電圧変化量ΔVについても同じである。
本実施形態の警告装置11では、エンジン始動開始時の放電電圧V及び放電電流Iと、積算値Qが予め定められた電気量Qpに到達したときの放電電圧V及び放電電流Iとから内部抵抗Rを演算している(ステップ114〜ステップ120)。このため、エンジン始動時の電流波形の急激な立ち下がり時間内での任意の時間でこれらを測定する場合に比べ、本実施形態の警告装置11は、直線的連続性に欠く電流波形(電圧波形)でも、その影響を小さくすることができ、内部抵抗Rを適正に演算することができる。また、エンジン始動時を補機5の影響の小さい放電電流が所定値(−200A)以下(絶対値で所定値以上)となったときとしたので、内部抵抗RをΔV/ΔIで算出する際の直線的連続性を確保することができる。従って、本実施形態の警告装置11は、高精度に鉛電池1の内部抵抗Rを算出(演算)することができる。
また、本実施形態の警告装置11では、測定された開路電圧OCV及び算出された内部抵抗Rを、鉛電池の複数の劣化度(50%、75%、100%)に応じて開路電圧OCVと内部抵抗Rとの関係が予め定義された関係マップ(図1参照)に当てはめて鉛電池1の劣化度を演算(推定)するので(ステップ126)、リアルタイムに鉛電池1の劣化度を推定できると共に、この関係マップは、SOH−(満充電近傍の)OCV、SOH−Rの相関が高いことから、関係マップ自体(SOH−OCV−R)の相関が高いため、測定した開路電圧OCV及び演算した内部抵抗Rを当てはめると、鉛電池1の劣化度を高精度に推定することができる。
更に、本実施形態の警告装置11では、関係マップを50%、75%、100%のSOHで領域(I)〜(IV)に分けSOHが50%未満のときに警告を出力するようにしたので、関係マップの構成が簡便でマップデータを少なくすることができると共に、鉛電池1の劣化度の演算(関係マップへの当てはめ)を高速に行うことができる。
また、本実施形態の警告装置11では、測定された開路電圧OCV及び算出された内部抵抗Rを温度補正しているので(ステップ124)、鉛電池1の劣化度の演算(推定)精度を高めることができる。
なお、本実施形態では、警告装置11が鉛電池1の劣化の警告を出力する例を示したが、図1に示したように、マイコン8は関係マップでSOHを演算しているので、鉛電池1のSOHを車両側マイコン10に出力するようにしてもよい。このようにすれば、インストールメントパネルに鉛電池1の状態をレベルメータ等で常時表示することができる。
また、本実施形態では、関係マップを50%、75%、100%のSOHに応じて開路電圧OCVと内部抵抗Rとの関係が予め定義された関係マップを例示したが、更に、細かくSOHの領域を区分することにより、より精度の高いSOHをインストールメントパネル等に表示するようにしてもよい。
更に、本実施形態では、割込処理により劣化報知ルーチンを終了する際に、SOHをRAMに格納する例を示したが、RAMに格納することに代えて、例えば、マイコン8の外部バスに接続された不揮発性RAM等に格納するようにしてもよい。このようにすれば、警告装置11への電源供給が停止した場合でも、最も新しいSOHを保存することができる。
そして、本実施形態では、電気量Qpを30Ahとして例示したが、本発明はこれに限定されるものではない。この電気量Qpは、例えば、鉛電池1の容量、鉛電池1が搭載される車種等を考慮して任意に設定できることは云うまでもない。更に、本実施形態では、開路電圧OCV及び内部抵抗Rの両者に温度補正をする例を示したが、内部抵抗Rのみに御温度補正を行っても良く、また更に、開路電圧OCV及び内部抵抗Rに温度補正を行わず、複数の温度下での関係マップをROMに記憶しておき、測定温度下で関係マップを再構成し、測定された開路電圧OCV及び演算された内部抵抗Rを再構成された関係マップに当てはめるようにしてもよい。
本発明は、精度良くリアルタイムにバッテリの劣化度を推定可能な劣化度推定方法及び装置であり、本発明を適用乃至具現した装置は製造、販売に寄与するので、産業上の利用可能性を有する。
本発明が適用された実施形態の警告装置の概略ブロック図である。 鉛電池の複数のSOHに応じて開路電圧と内部抵抗との関係を示すSOH−OCV−R関係マップのグラフである。 エンジン始動時に鉛電池に流れる電流を模式的に示すグラフである。 実施形態の警告装置のCPUが実行する劣化報知ルーチンのフローチャートである。
符号の説明
1 鉛電池(バッテリ)
6 電流センサ(電流測定手段の一部、積算手段の一部)
8 マイコン(OCV測定手段、電圧測定手段、電流測定手段、積算手段、内部抵抗算出手段、記憶手段、劣化度推定手段)
11 警告装置(劣化度推定装置)

Claims (4)

  1. 車両に搭載されたバッテリの劣化度を推定する劣化度推定方法であって、
    エンジン始動前に前記バッテリの満充電近傍での開路電圧OCVを測定し、
    エンジン始動開始時に前記バッテリの放電電圧V及び放電電流Iを測定し、
    前記エンジン始動開始時から前記バッテリに流れた放電電流の積算値が予め定められた電気量に到達した時の前記バッテリの放電電圧V及び放電電流Iを測定し、
    前記測定された放電電圧V、V及び放電電流I、Iから前記バッテリの内部抵抗Rを算出し、
    前記測定された開路電圧OCV及び前記算出された内部抵抗Rを前記バッテリの複数の劣化度に応じて開路電圧OCVと内部抵抗Rとの関係が予め定義されたマップに当てはめて前記バッテリの劣化度を推定する、
    ステップを含む劣化度推定方法。
  2. エンジン始動前に前記バッテリの放電電流の測定を開始し、該測定された放電電流が所定値に至った時に前記エンジン始動開始時と定義することを特徴とする請求項1に記載の劣化度推定方法。
  3. 前記内部抵抗Rを、(放電電圧V−放電電圧V)/(放電電流I−放電電流I)により算出することを特徴とする請求項2に記載の劣化度推定方法。
  4. 車両に搭載されたバッテリの劣化度を推定する劣化度推定装置であって、
    前記バッテリの満充電近傍での開路電圧OCVを測定するOCV測定手段と、
    前記バッテリの放電電圧を測定する電圧測定手段と、
    前記バッテリの放電電流を測定する電流測定手段と、
    前記バッテリに流れる放電電流の積算値を演算する積算手段と、
    前記電圧測定手段及び前記電流測定手段で測定された放電電圧及び放電電流から前記バッテリの内部抵抗を算出する内部抵抗算出手段と、
    前記バッテリの複数の劣化度に応じて開路電圧OCVと内部抵抗Rとの関係が予め定義されたマップを記憶した記憶手段と、
    前記OCV測定手段で測定された開路電圧OCV及び前記内部抵抗算出手段で算出された内部抵抗Rを前記記憶手段に記憶されたマップに当てはめて前記バッテリの劣化度を推定する劣化度推定手段と、
    を備え、
    前記電圧測定手段及び前記電流測定手段は、エンジン始動開始時、及び、前記積算手段により前記エンジン始動開始時から積算された積算値が予め定められた電気量に到達した時のそれぞれの前記バッテリの放電電圧及び放電電流を測定し、
    前記内部抵抗算出手段は、前記エンジン始動開始時及び前記予め定められた電気量到達時の前記バッテリの放電電圧及び放電電流から前記バッテリの内部抵抗Rを算出する、
    ことを特徴とする劣化度推定装置。
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