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JP4454885B2 - 免疫測定方法およびそのための試薬 - Google Patents

免疫測定方法およびそのための試薬 Download PDF

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JP4454885B2 JP2001150803A JP2001150803A JP4454885B2 JP 4454885 B2 JP4454885 B2 JP 4454885B2 JP 2001150803 A JP2001150803 A JP 2001150803A JP 2001150803 A JP2001150803 A JP 2001150803A JP 4454885 B2 JP4454885 B2 JP 4454885B2
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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は免疫反応を利用する測定方法、即ち免疫測定方法に関し、詳細には測定感度が良好でありかつ非特異反応が少ないという優れた効果を有する免疫測定方法およびそのための試薬に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、臨床検査等の各種検査では自動化および測定時間の短縮が図られている。その検査の方法として、生体試料中の微量物質を測定するために免疫反応を利用する測定方法が広く用いられている。免疫測定方法としては、RIA法、EIA法、免疫比濁法、ラテックス凝集法、金属コロイド凝集法、イムノクロマト法等多くの方法がある。その中でもラテックス凝集法や金属コロイド凝集法は反応液の分離や洗浄を行わないため、自動化に適している。免疫測定では、一般に、測定する生体試料中の被測定物質濃度に応じた方法の使い分けがされている。ラテックス凝集法や金属コロイド凝集法は免疫比濁よりも微量物質の測定が行えるが、RIA法やEIA法ほどの微量物質の測定は行うことができない。何れの免疫測定方法においても、反応系の微量化や測定時間の短縮が望まれており、測定感度を向上させることが重要な課題である。
しかるに一方、免疫測定において血清、血漿、尿または髄液のような生体試料中に含まれる反応に無関係な物質、例えばリュウマチ因子などが非特異反応を引き起こす場合のあることが知られている。そして、免疫測定において測定感度の向上を図るほど、非特異反応を生じやすくなり、非特異反応は擬陽性の結果を招くという問題がある。特にこの傾向は免疫比濁、ラテックス凝集法や金属コロイド凝集法等のホモジニアス測定系で生じやすい。
【0003】
そのため、自動化を行いやすいラテックス凝集法や金属コロイド凝集法等のホモジニアス測定系で、測定感度の向上と非特異反応の抑制を図る技術が望まれている。血液検体(血清、血漿)中の物質をng/mlのオーダーで測定するほとんどの場合、専用の分析装置とその装置特有の試薬で測定される。専用の測定装置は非常に高価であり、その装置専用の試薬以外の試薬を使用することが出来ないという大きな制約がある。そのため、ラテックス凝集法や金属コロイド凝集法によって非特異反応が少なくかつ測定感度が良好な測定ができるならば、汎用的な自動分析装置を用いて微量物質の測定が可能となり、分析の自動化および測定時間の短縮に対応できる。さらには、専用の測定装置を必要としないため、結果的に安価に測定することができ、臨床検査分野等での有用性が著しく増す。
【0004】
免疫測定において測定感度の向上あるいは非特異反応抑制を図るための技術は多く開示されている。例えば、γ−グロブリンやその変性物を用いる方法(特開昭55−12419)、尿素、N−メチル尿素、N’,N’−ジメチル尿素、N−メチルホルムアミド等を用いる方法(特開昭55−160853)、グアニジン類を用いる方法(特開昭56−2556)、デキストラン硫酸、ヘパリン、ポリスチレンスルホン酸、フタル酢酸セルロ−ス、ヒアルロン酸、コンドロイチン硫酸等のポリアニオンを用いる方法(特開昭57−182169)、ポリエチレングリコールを共存させる方法(特開昭58−47256)、ゼラチン、オボアルブミン、ラクトアルブミン、動物血清アルブミン等の分解物のポリペプチドを添加する方法(特開昭58−144748)、非イオン界面活性剤を用いる方法(特開昭58−187862)、疎水性蛋白の0.1%以上を塩類の存在下に用いる方法(特開昭59−25184)、ブチロラクトン、バレロラクトン、カプロラクトン、ピロリドン等を用いる方法(特開昭59−151061)、デキストランのような多糖類を用いる方法(特開昭59−220646)、マウス血清、マウス腹水等を用いる方法(特開昭61−65162)、メチルセルロ−スやエチルセルロースのようなアルキル化多糖類を用いる方法(特開平2−173567)、ポリアクリル酸等のカルボキシル基含有重合体を含有する方法(特開平2−194360)、二価陽イオンを存在させる方法(特開平2−228560)、カルボキシメチルセルロ−スを用いる方法(特開平2−238360)、コンドロイチン硫酸を用いる方法(特開平2−238361)、アミノ酸を添加する方法(特開平3−148065)、ポリビニルピロリドンを用いる方法(特開平4−20859)、グリコシド誘導体含有重合体を存在させる方法(特開平4−122858)、アルギン酸を用いる方法(特表平4−505510)、ヒドロキシメチルセルロースやヒドロキシエチルセルロースのようなヒドロキシアルキルセルロースを用いる方法(特開平5−172818)、プルランやポリビニルピロリドンを用いる方法(特開平5−180838)、HLBが12から19の非イオン界面活性剤を用いる方法(特開平6−66798)、塩化ナトリウムイオン等のアルカリ金属イオン存在下の方法(特開平6−138124)、プルランやデンプンの分解物のようなマルトトリオ−ス重合体を用いる方法(特開平6−167493)、ヘパリンを含有する方法(特開平7−151754)、1−エチル−3−(3−ジメチル−アミノプロピル)ウレア、1−シクロヘキシル−3−(2−モルホリノエチル)ウレア−メト−p−トルエンスルホネート、ジメチルアミン、ジエチルアミン等を含有する方法(特開平7−253430)、血漿蛋白質等と有機酸とを組合わせる方法(特開平7−270413)、グルコシルエチルメタクリレートやガラクトシルエチルメタクリレートのポリマーのような側鎖に糖類を有する高分子を用いる方法(特開平7−270417)、スレオ−1,4−ジメルカプト−2,3−ブタンジオールを添加する方法(特開平8−86783)、EDTA、塩化ナトリウムを添加する方法(特開平8−105897)、マグネシウムイオンを存在させる方法(特開平8−211057)、ポリエチレングリコールのような凝集促進剤とアミノエタンスルホン酸誘導体等を組合わせて用いる方法(特開平8−278308)、卵アルブミンを含有する方法(特開平9−101309)、高分子非イオン界面活性剤を用いる方法(特開平9−269327)、スルホン酸基を含有する共役ジエン系重合体の存在下に行う方法(特開平9−304384)、ポリエチレングリコールやポリビニルピロリドンを用いる方法(特開平10−26622)、HLBが9−20のモノマーからなる分子量が1000−150万のポリマ−を含む方法(特開平10−282101)、分子量が500−2000でステロイド環を有する界面活性剤を含む方法(特開平10−282102)、硝酸塩やチオシアン酸塩を用いる方法(特開平10−311830)、アルカリ性塩化物、アルカリ性酒石酸塩や改変熱BSAを用いる方法(特開平11−223631)、D−アミノ酸からなるペプチドの使用(特開平11−242028)、シクロデキストリンやその誘導体を含有する方法(特開平11−248706)、親水部に二糖類を有する非イオン性界面活性剤を含有する方法(特開平11−258239)、非特異因子に対する抗体を用いる方法(特開平11−287801)、免疫学的に反応しない抗原を固定化した不溶性担体を用いる方法(特開平11−337551)、リュウマチ因子またはリュウマチ因子様物質を添加する方法(特開平11−344491)等である。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
これら公知の免疫反応の測定感度向上技術では、微量物質の測定に十分な感度を有していない場合が多く、更なる測定感度向上のための新たな技術が切望されている。しかし、前記のとおり、免疫測定において測定感度の向上を図るほど非特異反応を生じやすくなる。
従って、免疫測定においては、測定感度の向上のみならず、それに伴って生じる非特異反応を良好に抑制する技術も合わせて望まれている。
【0006】
【課題を解決するための手段】
このような状況下、本発明者らは、免疫測定においてその測定感度を向上させ、同時に非特異反応を抑制することの可能性を、免疫測定方法のひとつである金コロイド凝集法を用いて検討した結果、被測定物質を含む免疫反応液中に特殊な組合わせの試薬を共存させることで、免疫反応の測定感度を向上させ、同時に非特異反応を抑制できることを見い出した。
【0007】
即ち、本発明は、
(1)被測定物質が含まれる免疫反応液中にコンドロイチン硫酸またはその塩およびポリアクリル酸またはその塩から選ばれる1種または2種と、ブチロラクトン、バレロラクトン、カプロラクトン、バレロラクタム、カプロラクタムおよびピロリドンから選ばれる1種以上とを共存させることを特徴とする、免疫反応を利用して該被測定物質を測定するための免疫測定方法;
好ましくは、コンドロイチン硫酸またはその塩およびポリアクリル酸またはその塩から選ばれる1種または2種の免疫反応液中における全濃度が0.5−10%であることを特徴とする、および/またはブチロラクトン、バレロラクトン、カプロラクトン、バレロラクタム、カプロラクタムおよびピロリドンから選ばれる1種以上の免疫反応液中における全濃度が0.5−10%であることを特徴とする本発明の方法;
【0008】
より好ましくは、免疫反応液中における全濃度が0.01−5%であるデキストラン硫酸またはその塩をさらに含有させることを特徴とする本発明の方法;
さらに好ましくは、免疫反応が免疫凝集反応、より好ましくはラテックス凝集または金属コロイド凝集、さらに好ましくは金コロイド凝集であることを特徴とする本発明の方法;
【0009】
(2)コンドロイチン硫酸またはその塩およびポリアクリル酸またはその塩から選ばれる1種または2種と、ブチロラクトン、バレロラクトン、カプロラクトン、バレロラクタム、カプロラクタムおよびピロリドンから選ばれる1種以上とを含有する免疫測定用試薬;
好ましくは、被測定物質が含まれる免疫反応液中における全濃度が0.5−10%となるような量のコンドロイチン硫酸またはその塩およびポリアクリル酸またはその塩から選ばれる1種または2種を含有すること、および/または被測定物質が含まれる免疫反応液中における全濃度が0.5−10%となるような量のブチロラクトン、バレロラクトン、カプロラクトン、バレロラクタム、カプロラクタムおよびピロリドンから選ばれる1種以上を含有することを特徴とする本発明の免疫測定用試薬;
【0010】
より好ましくは、免疫反応液中において全濃度が0.01−5%となる量のデキストラン硫酸またはその塩をさらに含有することを特徴とする本発明の免疫測定用試薬;
さらに好ましくは、免疫反応が免疫凝集反応、より好ましくはラテックス凝集または金属コロイド凝集、さらに好ましくは金コロイド凝集であることを特徴とする本発明の免疫測定用試薬;および
【0011】
(3)被測定物質を含有する試料を調製するための第1試薬と、該被測定物質に対する免疫学的パートナーを含有する第2試薬とを含有する免疫測定用試薬キットにおいて、第1試薬にコンドロイチン硫酸またはその塩およびポリアクリル酸またはその塩から選ばれる1種または2種と、ブチロラクトン、バレロラクトン、カプロラクトン、バレロラクタム、カプロラクタムおよびピロリドンから選ばれる1種以上とを含有することを特徴とする免疫測定用試薬キット;に関する。
【0012】
上記特開昭59−151061記載のようにγ−ブチロラクトンを加えた場合、γ−ブチロラクトンの添加量に伴って測定感度が著しく低下する。詳細は以下の表1に示す。そこで、本発明者らは、このγ−ブチロラクトンによって低下した測定感度を上げる物質を探索すべく、以下の参考例4に示すベース緩衝液中にγ−ブチロラクトンを3%濃度、さらに各種の試薬を各種濃度になるように添加し、α−フェトプロテイン(AFP)標準に対するAFP抗体結合金コロイド試薬の反応性を調べた。その結果、試薬添加ベース緩衝液中濃度として、5%ポリデキストロース、0.5%カルボキシメチルセルロースナトリウム、8%ポリビニルピロリドン25、6%ポリビニルピロリドンK−30、0.5%アルギン酸ナトリウム(粘度100−150cp)、0.5%ペクチン、3%フィコール(分子量40万)、1%アラビアゴム、0.4%ペクチンでは、AFP標準での測定可能な感度が得られなかった。これに対し、2.2%ポリエチレングリコール20,000、4.8%デキストラン(分子量20−30万)、1.4%ヒドロキシプロピルメチルセルロース、2.3%コンドロイチン硫酸ナトリウム、3%ポリビニルアルコール(n=500)、4.1%プルラン、5.6%ポリアクリル酸アンモニウムでは好ましい測定感度が得られた(データは示していない)。即ち、測定感度を向上させる試薬として使用可能なのは、ポリエチレングリコール、デキストラン、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、コンドロイチン硫酸、ポリビニルアルコール、プルラン、ポリアクリル酸、であることが判明した。しかし、これらとブチロラクトンとの組合わせにおいて、デキストラン、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリビニルアルコール、プルラン、ポリエチレングリコールではリュウマチ因子による非特異反応を抑制する効果が余り認められなかった(以下の実施例2参照)。リュウマチ因子の非特異反応の抑制が効果的に認められたのは、コンドロイチン硫酸とポリアクリル酸のみであった(以下の実施例2参照)。次に、リュウマチ因子による非特異反応を抑制する物質を検索した結果、ブチロラクトン以外にもバレロラクトン、カプロラクトン、バレロラクタム、カプロラクタムおよびピロリドンに非特異反応抑制効果が認められた(実施例3)。
【0013】
また、実際に非特異反応が認められる患者血清において検討した結果、ブチロラクトン以外にも、デキストラン硫酸ナトリウムに非特異抑制効果が認められた。他方、デキストラン硫酸と同じく硫酸基をもつヘパリンには同様の抑制効果は認められなかった(以下の実施例4参照)。さらに、実際に非特異反応が認められる患者血清において検討した結果、ブチロラクトンとデキストラン硫酸とを組合わせることによって、非特異反応がより強く抑制されることが見出された(以下の実施例5参照)。これらのことから、本発明者らは、測定感度の向上および非特異反応の抑制の両方を十分に図るには、コンドロイチン硫酸またはその塩およびポリアクリル酸またはその塩から選ばれる1種または2種と、ブチロラクトン、バレロラクトン、カプロラクトン、バレロラクタム、カプロラクタムおよびピロリドンから選ばれる1種以上との、さらにはデキストラン硫酸を組合わせることのできる特殊な試薬の組合わせのみが有効であることを見い出した。
【0014】
【発明の実施の形態】
本発明は第1の態様として、被測定物質が含まれる免疫反応液中にコンドロイチン硫酸またはその塩およびポリアクリル酸またはその塩から選ばれる1種または2種と、ブチロラクトン、バレロラクトン、カプロラクトン、バレロラクタム、カプロラクタムおよびピロリドンから選ばれる1種以上とを共存させることを特徴とする、免疫反応を利用して該被測定物質を測定するための免疫測定方法に関する。
本発明の免疫測定方法は定量測定あるいは定性測定のいずれにも使用できる。
本発明の免疫測定方法にて測定される被測定物質としては、タンパク質、脂質、糖類があり、それには例えば、各種抗原、抗体、レセプター、酵素などが含まれる。具体的にはC反応性タンパク(CRP)、繊維素分解産物(FDP)、ヘモグロビン、ヘモグロビンA1c、α−フェトプロテイン(AFP)、癌胎児性抗原(CEA)、CA19−9、前立腺特異抗原(PSA)、ペプシノーゲンIおよびII、コラーゲンなどの血液中タンパク質や、B型肝炎ウイルス、C型肝炎ウイルス、ヒト免疫不全ウイルス、ヘリコバクターピロリ、およびこれらに対する抗体などの、感染症に関する抗原や抗体などが挙げられる。
【0015】
「免疫反応を利用して被測定物質を測定する」とは、免疫反応液中にて被測定物質とその免疫学的パートナーとを反応させて当業者に周知の免疫測定方法により被測定物質を測定することを意味する。本明細書において、「免疫学的パートナー」とは免疫反応を引き起こす相手であり、例えば被測定物質が抗原であれば、免疫学的パートナーは抗体となり、被測定物質が抗体であれば抗原となる。当然ながら、被測定物質にはハプテンを含む物質が含まれ、その場合はそのハプテンに対する抗体が該被測定物質の免疫学的パートナーとなる。
【0016】
本発明の免疫測定方法はRIA法、EIA法、免疫比濁法、ラテックス凝集法、金属コロイド凝集法、イムノクロマト法、血球凝集法などの免疫反応を利用する測定方法が包含される。その中でも特に、ラテックス凝集法、金属コロイド凝集法を利用する測定方法が好ましい。金属コロイド凝集法で用いられる金属コロイドは金、銀、セレン等のコロイドがあるが、金コロイドが利用し易く好ましい。
【0017】
例えば、抗原または抗体である被測定物質を測定する場合には、ラテックス凝集法、金属コロイド凝集法では、被測定物質である抗原または抗体に対応する抗体または抗原を担体のラテックスや金属コロイドにあらかじめ結合させておく。その測定の例として、金コロイド凝集法の場合、あらかじめ結合させた金コロイド標識抗体または金コロイド標識抗原が被測定物質である抗原または抗体を介して凝集する。その際に生じる色差(色調変化)を光学的に測定し、抗原量または抗体量を測定する。
【0018】
本発明の測定方法に使用されるコンドロイチン硫酸またはその塩およびポリアクリル酸またはその塩、ならびにブチロラクトン、バレロラクトン、カプロラクトン、バレロラクタム、カプロラクタムおよびピロリドンはすべて、市販品を用いることができる。コンドロイチン硫酸またはその塩としてはコンドロイチン硫酸、コンドロイチン硫酸A、コンドロイチン硫酸Cやそれらのナトリウム塩などが挙げられる。ポリアクリル酸またはその塩としては、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸ナトリウム、ポリアクリル酸アンモニウムなどが挙げられる。その平均分子量が約5,000から1,000,000のもの等が市販されている。分子量等によって好ましい使用濃度は変動するが、免疫反応液中での使用濃度はコンドロイチン硫酸またはその塩とポリアクリル酸またはその塩の1種または2種の全濃度が0.5−10%(重量%、以下同じ)であり、好ましくは1−7%である。
【0019】
ブチロラクトン、バレロラクトン、カプロラクトン、バレロラクタム,カプロラクタムおよびピロリドンから選ばれる1種以上の免疫反応液中の全濃度は0.5−10%であり、好ましくは2−6%であり、より好ましくは3−5%である。
【0020】
コンドロイチン硫酸またはその塩およびポリアクリル酸またはその塩から選ばれる1種または2種と、ブチロラクトン、バレロラクトン、カプロラクトン、バレロラクタム、カプロラクタムおよびピロリドンから選ばれる1種以上とを含有する、免疫反応時に存在させる免疫測定用試薬は、被測定物質に対応する免疫学的パートナーと一緒に、または別々に免疫反応液中に加えることができる。
【0021】
本発明の測定方法ではデキストラン硫酸またはその塩をさらに共存させることにより、非特異反応をより抑制することができる。デキストラン硫酸またはその塩としては、デキストラン硫酸、デキストラン硫酸ナトリウム、デキストラン硫酸カリウム等があり分子量約1,000から10,000のもの等が市販されている。使用濃度は免疫反応液中、0.01−5%であり、好ましくは0.05−1%である。
【0022】
本発明の測定方法における免疫反応にとって、極端な酸やアルカリ条件下は好ましくなく、pHとしては4.5−9.5、好ましくは5.5−8.5の範囲である。pHの維持のためには適当な緩衝剤、例えばリン酸緩衝液、トリス塩酸緩衝液、コハク酸緩衝液、あるいはグリシルグリシン、MES(2−(N−モノホリノ)エタンスルホン酸)、HEPES(N−2−ヒドロキシエチル−ピペラジン−N’−エタンスルホン酸)、TES(N−トリス(ヒドロキシメチル)メチル−2−アミノエタンスルホン酸)、MOPS(3−(N−モルホリノ)プロパンスルホン酸)、PIPES(ピペラジン−1,4−ビス(2−エタンスルホン酸))、DIPSO(3−(N’N−ビス(2−ヒドロキシエチル)アミノ)−2−ヒドロキシプロパンスルホン酸)、Tricine(トリス(ヒドロキシメチル)メチルグリシン)、TAPS(N−トリス(ヒドロキシメチル)メチル−3−アミノプロパンスルホン酸)等のグッド緩衝液が好適に用いられる。使用濃度は5−1000mM、好ましくは20−200mMである。
【0023】
本発明の免疫反応液中にはアジ化ナトリウム、動物血清、γ−グロブリンまたはヒトIgGやIgMに対する特異抗体、アルブミン、塩化ナトリウムやその他の無機塩類、糖類、アミノ酸類、EDTA等のキレート剤、DTT等のSH試薬や界面活性剤等を含有させてもよい。アジ化ナトリウムの濃度としては0.01−1%、好ましくは0.03−0.3%である。動物血清、γ−グロブリンまたは特異抗体やアルブミンは牛、馬、豚、羊、兎、ヒト、ラット等の由来のものが使用でき、それらの変性物や分解物も選択でき、添加濃度も適宜選択できる。塩化ナトリウムは生理的食塩濃度付近が好ましい。その他の物質についても使用濃度は適宜選択できる。
【0024】
さらに、本発明は上記本発明の方法に用いることのできる試薬およびそのためのキットを提供する。
【0025】
【実施例】
以下、実施例に基づいて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらによって限定されるものではない。
【0026】
参考例1:
金コロイド液の調製
95℃の蒸留水1Lに10%塩化金酸溶液2mlを撹拌しながら加え、1分後に2%クエン酸ナトリウム溶液10mlを加え、さらに20分間撹拌した後30℃に冷却した。冷却後、0.1M炭酸カリウム溶液でpH7.1に調節した。
【0027】
参考例2:
抗α−フェトプロテイン(AFP)抗体結合金コロイド試薬の調製
抗AFP抗体(ダコ・ジャパン株式会社)を0.05%アジ化ナトリウムを含む10mM HEPES pH7.1で希釈し50μg/mlの濃度にした。この液100mlを(1)で調製した金コロイド液約1Lに加え、冷蔵で2時間撹拌した。5.46%マンニトール、0.5%BSA、0.05%アジ化ナトリウムを含む10mM HEPES pH7.1を110ml添加し、37℃で90分撹拌した。8,000回転で40分遠心し、上清を除去した後、3%マンニトール、0.1%BSA、0.05%アジ化ナトリウムを含む5mM HEPESpH7.5(A溶液)を約1L加え、抗体結合金コロイドを分散させた後、8,000回転で40分遠心し、上清を除去し、A溶液で抗体結合金コロイドを分散させ全量を160mlとし、抗AFP抗体結合金コロイド試薬を調製した。
【0028】
参考例3:
AFP標準の調製
20mM HEPES、0.9%塩化ナトリウム、1%BSA、0.1%アジ化ナトリウムを含むpH7.5の溶液にAFP抗原(ダコ・ジャパン株式会社)を、0ng/ml、20ng/ml、100ng/mlとなるように添加し、それぞれをマイクロチューブに1.0mlずつ小分け分注し、−40℃で凍結保存した。使用時には室温で融解し使用した。
【0029】
参考例4:
ベース緩衝液の調製
0.9%塩化ナトリウム、0.1%BSA、0.2%EDTA、0.2%トリトンX−100、0.15%ポリアクリル酸(分子量25万)、0.1%アジ化ナトリウムを含む50mM PIPES(ピペラジン−1,4−ビス(2−エタンスルホン酸))pH6.5のベース緩衝液が使用時に得られるように、その2倍濃度の溶液を調製した。
【0030】
実施例1
ポリエチレングリコール20,000またはコンドロイチン硫酸ナトリウムとγ−ブチロラクトンとの組み合わせを被検試薬とし、AFP抗体結合金コロイド試薬によるAFP測定における測定感度への影響を調べた。
(1)試験溶液の調製
被検試薬を、ポリエチレングリコール20,000またはコンドロイチン硫酸ナトリウムが各1.5%およびγ−ブチロラクトンが以下の表1の各濃度となるようにベース緩衝液に添加し、試験溶液を調製した。
【0031】
(2)試験方法
(1)の試験溶液を用い、以下のようにして、AFPに対するAFP抗体結合金コロイド試薬の反応性を調べた。
EIA用マイクロプレートに参考例3にて調製したAFP標準15μlを分注し、上記(1)の試験溶液140μlを添加後、マイクロミキサー(三光純薬株式会社)で約20秒撹拌し、3分間室温放置した。次いで、抗AFP抗体結合金コロイド試薬35μlを添加し、20秒間撹拌した後測定を開始した。測定開始0分と10分後の吸光度(主波長540nm、副波長700nm)をマイクロプレートリーダー(日本モレキュラーデバイス株式会社)を用いて測定した。測定開始0分と10分後の吸光度変化(吸光度の差)をAFPに対するAFP抗体結合金コロイド試薬の反応性の指標とした。得られた結果を表1に示す。
【0032】
【表1】
Figure 0004454885
【0033】
γ−ブチロラクトンの添加濃度を増加させるとともに吸光度変化量が減少し、即ち反応性(測定感度)が著しく低下し、γ-ブチロラクトン共存下ではAFPの低濃度における定量測定は実質的に不可能であった。そのため、γ−ブチロラクトンの共存下で定量測定可能とするにはポリエチレングリコール20,000またはコンドロイチン硫酸ナトリウムの濃度を更に増やす必要があった。
【0034】
実施例2
予備実験において、測定感度を向上させることが確認された試薬はデキストラン(20−30万)、コンドロイチン硫酸ナトリウム、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリアクリル酸アンモニウム、ポリビニルアルコール(n=500)、プルランおよびポリエチレングリコール(PEG)20,000であった。これら測定感度を向上させる試薬とγ−ブチロラクトンとの組み合わせを被検試薬とし、AFP抗体結合金コロイド試薬によるAFP測定においてリュウマチ因子が引き起こす非特異反応に対する影響を調べた。
(1)試験溶液の調製
被検試薬を、γ−ブチロラクトンが3%、および測定感度を向上させる試薬が下記表2の各濃度となるようにベース緩衝液に添加し、試験溶液を調製した。
(2)検体の調製
干渉チェック・RFプラス(国際試薬株式会社)のリュウマチ因子を含有する凍結乾燥物または含有しない凍結乾燥物を、AFP標準0ng/mlの溶液で溶解し、それぞれリュウマチ因子(+)検体、リュウマチ因子(−)検体とした。
(3)試験方法
EIAマイクロプレートにAFP標準(0ng/ml、20ng/ml、100ng/ml)、リュウマチ因子(+)検体およびリュウマチ因子(−)検体15μlを分注し、さらに上記(1)の試験溶液140μlを添加した後、以下、実施例1(2)と同様の方法にて吸光度変化を測定した。AFP標準(0、20、100ng/ml)で得られた検量線から、リュウマチ因子(+)検体およびリュウマチ因子(−)検体の測定値を算出した。
得られた結果を表2に示す。
【表2】
Figure 0004454885
【0035】
表2の結果では、リュウマチ因子がある場合(+)と無い場合(−)とでAFPの測定値に差異がないほど、非特異反応が抑制できていることが示される。
デキストラン(20−30万)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリビニルアルコール(n=500)、プルラン、ポリエチレングリコール20,000では、リュウマチ因子による非特異反応が大きく認められた。これに対し、コンドロイチン硫酸ナトリウムとポリアクリル酸アンモニウムでは、非特異反応はほとんどもしくは全く認められなかった。
【0036】
実施例3
被検試薬を、コンドロイチン硫酸ナトリウム、およびγ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトン、ε−カプロラクトン、ε−カプロラクタム、δ−バレロラクタムまたは2−ピロリドンが下記表3の各濃度となるようにベース緩衝液に添加して調製した試験溶液を使用する以外は、実施例2と同様の方法にて、リュウマチ因子による非特異反応に対する影響を調べた。得られた結果を表3に示す。
【表3】
Figure 0004454885
【0037】
コンドロイチン硫酸ナトリウム1.5−2.8%との各組合わせで、γ−ブチロラクトンでは3%ではリュウマチ因子による非特異反応が僅かに認められたが、4%では認められなかった。γ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトン、ε−カプロラクトン、ε−カプロラクタム、δ−バレロラクタム、2−ピロリドンの各1%ではリュウマチ因子による非特異反応は少なく、3%ではほとんどもしくは全く認めなかった。
なお、対照とした1.5%のコンドロイチン硫酸のみの添加では非特異反応が大きく認められた。
【0038】
実施例4
非特異反応を起こすヒト患者血清(A、BおよびCの3検体)を用いるAFP測定において、γ−ブチロラクトン、デキストラン硫酸ナトリウムおよびヘパリンナトリウムの非特異反応抑制の効果を他社試薬(イアトロメイトAFP:株式会社ダイアヤトロン販売)と比較して調べた。
(1)試験溶液の調製
被検試薬を、コンドロイチン硫酸ナトリウムが1.5%およびγ−ブチロラクトン、デキストラン硫酸ナトリウムまたはヘパリンナトリウムが表4の各濃度となるようにベース緩衝液に添加し、試験溶液を調製した。
(2)試験方法
ヒト患者血清15μlに上記試験溶液200μlを添加し、さらに抗AFP抗体結合金コロイド試薬50μlを添加し、自動分析装置日立7070(株式会社日立製作所)を用いて主波長546nm、副波長700nmで測光ポイント18と31で測定した。測定の標準には正常ヒト血清にAFPを添加したものを用いた。比較用の測定試薬として、他社試薬を用い添付文書の方法で、自動分析装置日立7070で測定した。得られた結果を表4に示す。
【0039】
【表4】
Figure 0004454885
【0040】
被検試薬としてコンドロイチン硫酸ナトリウムのみを添加した対照では、他社試薬と比較して大きな測定値の差があり、非特異反応が認められた。これに対し、コンドロイチン硫酸ナトリウムとともに1%γ−ブチロラクトンを添加または0.25%デキストラン硫酸ナトリウムを添加すると、それぞれ測定値の差が減少し、非特異反応抑制の効果が認められた。γ−ブチロラクトンおよびデキストラン硫酸ナトリウムではそれぞれ、検体による相違があるものの、非特異反応抑制効果が認められた。ヘパリンナトリウム(硫酸基を多く含む多糖)では対照との間に測定値に大差なく、非特異反応抑制効果が認められなかった。
【0041】
実施例5
被検試薬を、コンドロイチン硫酸ナトリウムが2.4%、γ−ブチロラクトンが3.6%、デキストラン硫酸ナトリウムが0.5%となるようにベース緩衝液に添加して調製した試験溶液(本発明試薬)を使用する以外は、実施例4と同様の方法にて測定を行った。同時に他社試薬および対照(コンドロイチン硫酸ナトリウム1.5%のみ)についても測定を行い比較した。得られた結果を5に示す。
【表5】
Figure 0004454885
【0042】
他社試薬と比較し対照は測定値が何れも大きな値となっている。他方、本発明試薬は他社試薬とほぼ同等の測定値であり、非特異反応が抑制されていることが判明した。
【0043】
本実施例では、0.15%のポリアクリル酸を含有するベース緩衝液を使用している。他方、この0.15%ポリアクリル酸の代わりに0.3%コンドロイチン硫酸ナトリウムを含むベース緩衝液に、コンドロイチン硫酸ナトリウムを2.4%、γ−ブチロラクトンを3.6%およびデキストラン硫酸ナトリウムを0.5%になるように添加した試験溶液(コンドロイチン硫酸ナトリウム全濃度は2.7%)を使用しても同様の非特異反応抑制の効果が得られた。
【0044】
【発明の効果】
免疫測定において、コンドロイチン硫酸またはその塩、ポリアクリル酸またはその塩から選ばれる1種または2種と、ブチロラクトン、バレロラクトン、カプロラクトン、カプロラクタム、バレロラクタム、ピロリドンから選ばれる1種以上を反応液中に共存させることにより、さらにデキストラン硫酸またはその塩を共存させることにより、測定感度の上昇および非特異反応の抑制が図られる。従って、本発明によれば、臨床検査分野等での測定精度の向上や測定の自動化および測定時間の短縮等に寄与することができる。

Claims (15)

  1. 被測定物質が含まれる免疫反応液中にコンドロイチン硫酸またはその塩およびポリアクリル酸またはその塩から選ばれる1種または2種と、ブチロラクトン、バレロラクトン、カプロラクトン、バレロラクタム、カプロラクタムおよびピロリドンから選ばれる1種以上とを共存させることを特徴とする、免疫反応を利用して該被測定物質を測定するための免疫測定方法。
  2. コンドロイチン硫酸またはその塩およびポリアクリル酸またはその塩から選ばれる1種または2種の免疫反応液中における全濃度が0.5−10%であることを特徴とする請求項1記載の方法。
  3. ブチロラクトン、バレロラクトン、カプロラクトン、バレロラクタム、カプロラクタムおよびピロリドンから選ばれる1種以上の免疫反応液中における全濃度が0.5−10%であることを特徴とする請求項1または2記載の方法。
  4. 免疫反応液中における全濃度が0.01−5%であるデキストラン硫酸またはその塩をさらに含有させることを特徴とする請求項1から3までのいずれかに記載の方法。
  5. 免疫反応が免疫凝集反応であることを特徴とする請求項1から4までのいずれかに記載の方法。
  6. 免疫凝集反応がラテックス凝集または金属コロイド凝集であることを特徴とする請求項5記載の方法。
  7. 金属コロイド凝集が金コロイド凝集であることを特徴とする請求項6記載の方法。
  8. コンドロイチン硫酸またはその塩およびポリアクリル酸またはその塩から選ばれる1種または2種と、ブチロラクトン、バレロラクトン、カプロラクトン、バレロラクタム、カプロラクタムおよびピロリドンから選ばれる1種以上とを含有する免疫測定用試薬。
  9. 被測定物質が含まれる免疫反応液中における全濃度が0.5−10%となるような量のコンドロイチン硫酸またはその塩およびポリアクリル酸またはその塩から選ばれる1種または2種を含有することを特徴とする請求項8記載の免疫測定用試薬。
  10. 被測定物質が含まれる免疫反応液中における全濃度が0.5−10%となるような量のブチロラクトン、バレロラクトン、カプロラクトン、バレロラクタム、カプロラクタムおよびピロリドンから選ばれる1種以上を含有することを特徴とする請求項8または9記載の免疫測定用試薬。
  11. 被測定物質が含まれる免疫反応液中において全濃度が0.01−5%となる量のデキストラン硫酸またはその塩をさらに含有することを特徴とする請求項8から10までのいずれかに記載の免疫測定用試薬。
  12. 免疫反応が免疫凝集反応であることを特徴とする請求項8から11までのいずれかに記載の免疫測定用試薬。
  13. 免疫凝集反応がラテックス凝集または金属コロイド凝集であることを特徴とする請求項12記載の免疫測定用試薬。
  14. 金属コロイド凝集が金コロイド凝集であることを特徴とする請求項13記載の免疫測定用試薬。
  15. 被測定物質を含有する試料を調製するための第1試薬と、該被測定物質に対する免疫学的パートナーを含有する第2試薬とを含有する免疫測定用試薬キットにおいて、第1試薬にコンドロイチン硫酸またはその塩およびポリアクリル酸またはその塩から選ばれる1種または2種と、ブチロラクトン、バレロラクトン、カプロラクトン、バレロラクタム、カプロラクタムおよびピロリドンから選ばれる1種以上とを含有することを特徴とする免疫測定用試薬キット。
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